Fate/avarus stulti   作:夜明色のイチカ

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プロローグ

 とある七人について、まずは語ろう。

 

 彼ら彼女らは、生まれ育ちも、その生き様も全てが似通りながらも違う者たちである。

 

 

 

 彼らの人生を一言で表すなら平凡。いや、どちらかと言えば"脱落者"と言う言葉が一番しっくりとするだろう。

 

 人生は、長いようで短い。

 誰もが大なり小なり理不尽の壁にぶつかり、時には絶望という谷底に落ちる事だってある。それでも多くの人々は、歯を食いしばり再び歩き出す為に立ち上がるのだ。

 

 だが、彼らは違った。

 それぞれが何かを諦め、立ちはだかる目の前の理不尽から目を逸らし、立ち上がる事すらを一度やめた者達である。

 

 

 ある者は、努力する事を青春の日々と共に諦めた。

 

 ある者は、他者を信頼する事を友と共に諦めた。

 

 ある者は、勝利する事をあの日から諦めた。

 

 ある者は、愛する意味を知らず愛する事を諦めた。

 

 ある者は、すべてが嫌になって生きる事を諦めた。

 

 ある者は、面倒さから人との関わりを諦めた。

 

 ある者は、虐げられ自身を失い変わる事を諦めていた。

 

 

 そして彼らは、人生の幕引きを突然に迎えたのだった。

 ある日のある場所、とある時刻。

 それぞれが、様々な理由で失った。

 自業自得に来るはずの明日を捨てた者がいて、何の予兆も一切の予告すらなく、突然で必然的な災難として理不尽に奪われた者がいた。

 本来ならば、そこで終幕を迎える筈の人生であった。

 

 だが、彼らには次が用意された。

 それは、ある意味では幸運であり不幸な事でもあった。

 本来ならば、あり得ることのない人生のやり直しを行える機会を得たのだ。喜ばない者が何処にいようか。

 それも、己の求めた異能までも付いてくるというのだ。誰もが、その事に喜び歪んだ希望を抱き、中には自身の最期を祝福する者までいた。

 

 そう、誰もが浮かれていたのだ。

 自身を見送ったモノが何かも知らず、確認も疑いもせずに次の生に期待していたのだ。誰から見ても明らかに優位な自身の立ち位置を思いながら、心を躍らせ異世界へと第二の人生と言い張り旅立った。

 そんな、彼らを何者かが嗤った。

 

 

 世の物事など、そう簡単に上手くなどいく筈がないのだ。

 それが人生と言うなら当たり前であるし、彼らの言う最初の人生など他の者の半分すら生きてはいない。そんな彼らが果たして、人生や生涯について他者に対して何を語れるというのだろうか。

 それも脱落者の話など誰が聞くのだろうか。

 

 人は、失敗の痛みから学ぶという。

 

 では、痛みから逃れた彼らは学んだのだろうか。

 

 

 

 答えは、否である。

 

 

 

 己の一生を思い描いている通りに歩むのは、思っている以上に難しい。いくら異能があり優位であろうとも上手くいかない事は存在する。

 

 自身が本当に欲するモノを全て得るための道は、常に困難が大きな壁となり行き先を塞ぐ。困難の壁を越えた、その先に続く道のりは険しく様々な痛みが求める者を襲う。

 

 だからこそ人は諦めを知り、少しずつ求めるモノを減らし現実と向き合い妥協を良しとして生きるのだ。

 人間だから仕方がないと言ってしまえば、それまでだ。どんな困難な道の横にも常に楽な逃げ道は用意されている。

 それでも祈りや願い、理想を求め進むの困難と知り再び諦めるというのもいいだろう。諦め自体は、悪ではないのだから。

 

 問題なのは、その後なのだろう。

 彼らの生き様が脱落者となったのは、再び転ぶことを恐れ立ち上がる事をやめてしまった事なのだ。そして、立ち上がらないままに幸運がきてしまった事での思考の停止。

 

 彼らの時間は、はたして最期のあの瞬間から動きだしているのだろうか。

 本当の意味で今いる世界で生き居るのだろうか。

 考えることを止め振り返らない者に問うだけ無駄な事なのかもしれない。

 

 

 

 彼らは、愚かなままだ。

 

 

 そして、望む。

 人の領分を超えた願いを強欲に欲する。

 けれど、それが人なのだ。

 

 

 いつか人は、立ち直る時が来る。

 それが今日なのか、または明日であるのかは自分以外に知る事は出来ない。

 

 ある者達は、二度目の生で立ち上がり希望の未来を思い描き万能へと手を伸ばす。

 また、ある者は今この時に初めて自身の願いの為に立ち上がろうと小さな一歩を踏み出そうとしている。

 

 

 

 求めるは、万能の力があると言われるただ一つの盃。

 

 その盃を出現させるための儀式。

 

 そして、その盃を手にするに相応しい者を決める争い。

 

 名を別の世界軸での魔術師は、聖杯戦争と呼んだ。

 

 

 

 色のない盃は、儀式の挑戦者に幾度となく問う。

 善悪ではなく己が望みが正しく真の願いであるかを問いかける。

 

 裁定者は沈黙し、彼の無機質な瞳に映る世界は駆け足で終焉へと進み行く。

 観測者は最後の分岐点を傍観する事に決め、世界は最後の選択肢を異世界の部外者達に放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2018年1月1日―深夜零時

 

 年明けの鐘が世界中で鳴り響き人々が新たな年の訪れを祝福する夜。

ビル明かりで霞んだ星々の中で人知れず、青い流星が七つに砕け夜空に散った。

 

 日本のとある市内にバラバラの場所に彼らは、この世界に降り立った。

 

 そして今、始まる。

この世界での最初で最後の長い聖杯戦争が幕を開ける。 

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