Fate/avarus stulti   作:夜明色のイチカ

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あれこれとプロットを書き直していたら、こんなに経ってしまった。


01.始まりの刻

除夜の鐘の音が、鳴り響く夜空。

梵鐘(ぼんしょう)が104回目をつき終わった頃、駆け足で青色を帯びた流れ星が見え、思わず足を止めた。

後、梵鐘(ぼんしょう)をつく音が3回、聞こえれば今年が終わる。

 

いつものように視界を通りすぎる異形を無視し、ふと俺は想う。

 

いったい俺は、何の為に生まれてきたのだろうか?

俺は、きっと普通ではない。だが、特別でもない。

 

前世という他者には証明不可能な、もう1つの記憶がある。

その記憶のおかげで、今世でプラスとなったことは1つだけある。学校での勉強だ。

既に知ってい事を行うのは、全く知らない状態より優位になる。勉強のやり方や覚え方を知っている分、数学と歴史以外は容易にまだできる。

 

転生した直後は、容易に変われるなんて楽観的に考えていた。

前世で得た知識に厳しいながらも優しい両親。転生時に貰った魔眼、そして魔術の存在。それに、転生する前に出会った()()()()()()()()()に貰った魔眼という力。それらさえあれば、次こそは、()い人生を生きていくことできる…など愚かにも想ってしっまった。

 

でも、違った。

世界の在り方は、変わらずに全てを平等に見下ろす。そこに、善も悪もない。

どうしようもない理不尽は、ある日突然その人を襲い己の無力さを再確認させられる。

 

俺の前世に対して、語るような事など…ほとんどない。

ありふれた平凡な人生。

他者に誇れる事など、何1つもない。

 

今の人生は、ただ前世の延長線を真っ直ぐに歩んでいるだけだ。俺は、昔も今も変わることはない有害な傍観者のままだ。

環境が変わろうと、容姿が変わろうと俺は、前世(過去)恐怖(トラウマ)の断片を覚えている。

だから、必死に誰かに嫌われないよう笑顔の仮面を被る。周囲から浮く事がないように常に気を張り時には、(自身)を殺す。

そんな人生、辛くないか?と言われれば、もちろん辛い。

 

でも、それ以上に転生してもなお、鮮明に残る恐怖(トラウマ)の記憶。それは、脳裏から離れることなく常に己の跡を影の様に追いかけてくる。繰り返し見る悪夢が、諦めろと心を何度も折ってくる。悪夢を見た日は、決まって冷や汗をかき飛び起きる。心は、悲鳴を上げ絶望で押しつぶされる。

そんな思いをしながらも俺は、希望を捨てたくないと想ってしまう。

 

前世の俺が、死を迎える刹那の瞬間に出会った恩人。

あの人に出会えたから俺の最後の瞬間は、後悔はあっても決して惨めではなかった。

 

この人生で15度目になる、除夜の鐘。

その鐘が、108回目をつき、年明けを知らせる音が響き終わるのと同時に左手に焼ける様な痛みが走った。

まるで火鉢で熱した五寸釘を手に打ち込まれたかの様な強烈な痛みに、運んでいた木箱が手から滑り落ちた。重い木箱は、派手な音をたてひっくり返るり廊下に参拝者に配る御守りを辺りにばら撒く。急いで拾おうと腰を落とそうと、その瞬間に血の気の引いた体は、重力に従い崩れ落ちた。

緩やかに景色が、下へ下へと流れていく。既に眠気と貧血で朦朧としていた意識は、電池が切れたかの様に一瞬で暗転した。

 

 

 

 

 

____ここは、どこだ。

 

辺りを見まわす。

自分がいる周囲に見えるのは、色の無い幾億のも光の点が星空のごとく散らばっている広い空間であった。

 

光は、まるで都会から辛うじて見える夜空に浮かぶ星の様に頼りない光を放っている。

その光に手を伸ばそうとした、その瞬間に初めて気が付いた。この空間に自分の体が、どこも存在していないということに。

 

暗い空間に、光の線が走り光の点と共に消える。一瞬、流れ星かと思ったが、どうやらそうではないらしい。その光の線は点を目指し進み、点は線が通過すると消える。そして、少しの間をおいて光の点が再び浮かび上がってくる。その点は、ある所では折り重なり。また、ある所では、交わり。時に、点と点が打ち消しあい、弾かれ消えていく。

この空間は、何かを象徴している。

 

知らない筈のこの空間を俺の直感は、知っていると答えた。

 

身体はなく、剥き出しの心の世界。

 

『久しいね、未来なき世界の子よ』

 

何処かで、聞いた事のない筈なのに耳に馴染む声が聞こえた。その声は、近くにいるかのようで、遠い。

 

その声のあまりの不気味さに、今は無い両腕を抱え言い知れむ恐怖に身を震わせる。

周囲を見渡すが、声の主は見からない。

今、自分の視界を埋め尽くすのは、霧の様な色の分からない(もや)と何かが複数。

 

よく目を凝らせば、朧げに何かが居ると認識ができた。

その何かは、自分と近いが、違う存在のモノが6つ。だが、そのどれもが声の主のものではない気がした。

 

『輪廻の逸脱者よ。君等に再度、再起のチャンスを与えようじゃないか』 

 

何処にいるかも分からない声の主は、陽気で優し気な口調でありながらも、何処か機械的で平坦な声色で話を続ける。

 

『大丈夫、大丈夫。君等は、知っている筈のものだよ。前世で何処かしらで見たことがあるんじゃないかな』

 

男性の様に低くも、女性の様に高くも聴こえる声の主が、嗤ったような気がした。 

声の主は、続ける。此方の返事など聞いていない、とでもいう様に声の主は、話を続ける。まるで、大群衆に演説を行なっているかのように。

 

『さぁ、はじめよう。

この世界で最初で最後の聖杯戦争を。

その盃を手にした者は、あらゆる願いを実現させる。

だが、盃は1つきり。

そして、儀式への参加条件は2つ。

 

1つ目は、魔術回路を持つ者であること。

2つ目は、寄り代である令呪を左手に宿し、使い魔(サーヴァント)を召喚する事。

 

選ばれるマスターは、7人。

与えられるサーヴァントも剣士(セイバー)弓兵(アーチャー)槍兵(ランサー)騎乗兵(ライダー)魔術師(キャスター)暗殺者(アサシン)狂戦士(バーサーカー)などの7つ。

 

さぁ・・・奇跡を欲するのなら、汝。

自らの力を以って、最強を証明せよ 』

 

『赤い令呪は、すでに刻まれている。

それでは、始めよう貪欲な者達よ。愚かな妄信者よ。

この欲望の聖杯戦争は、これより始まる。

なに…安心したまえ。この願望器は、勝利する事が出来ればなんだって叶うのだから。

・・・そう・・・根源への到達すらもね』

 

 

 

その声は、最後に付け足すように言った。

根源への到達と言う、不吉なワードに嫌な予感しかしない。

もしや、この世界は・・・と思考を巡らせようとした意識を傾けた俺は、次第に大きくなる1つの光に気づかなかった。

肥大化した光は、周囲の空間を飲み込み気づいた時には意識が引き込まれ世界が暗転していた。

 

 

いつもと違う外の騒がしさに次第に意識が浮上すし、閉じていた瞳を薄らと開いた。

ぼやけた視界は、時間と共に鮮明に目の前にある物を写し込む。そこに広がっていた光景は、随分と見慣れた木目の天井であった。それは、この家に生まれてから使っている自室の天井であった。

あの後、倒れた俺を誰かが発見して不憫に思い、わざわざ此処まで運んでくれたのだろう。でなければ、この部屋から25mも離れた廊下で倒れていた筈の俺が此処で寝ている訳がない。それに、掛け布団さえあれば充分の俺が、わざわざ敷布団を用意するはずがないのだ。

 

重いであろう俺をここまで運び、丁寧に布団まで敷き寝かせてくれた誰かに心の中で感謝をする。ただ絶対に、おじじ様と父さんではないのは確かだ。あの2人なら、見つけ次第に俺を踏みつけるか蹴飛ばしてくる。

 

段々と大きくなっている気のする外の騒ぎにいい加減、どうしたのかと不安になってくる。障子を開け、廊下から騒ぎを見ようと勢いよく布団から起きあがろうとして、起き上がる事に失敗した。勢いをつけ上げた頭と反比例をするかの様に血圧が下がり、立ちくらみを起こし布団へリターンする羽目となった。

 

もう1度ゆっくりと起き上がろうとするも腕に力が入らす、どうすることも出来ないので、仕方なく布団の中で大人しく外の騒ぎに耳を立てる事にした。

 

先程からドタバタと聴こえる音が、揺れと共に体全体へ不規則なリズムでの揺れが床から伝わってくる。それは、まるで船酔いになったかのような気持ち悪さであった。

 

どんな理由があって、この時間帯に普段は、歩くか早歩きをしている人達が大きな足音を立てて走っているかは分からない。が、俺としては今すぐに走るのをやめて頂きたい。もしくは、静かな早歩きをして頂きたい。

 

今は、丑の刻くらいだ。寝ている人もいる筈だから、騒ぐなら静かに騒いで欲しいと思うのは俺の我儘なのだろうか。それに、俺の耳がたしかなら何故か1人2人と走り回っている人が増えている気がする。

 

音と揺れで、鈍く頭痛が始まった。そして、鮮明だった視界もブレ始め、天井の木目が、ゆるりと回りっている様に見合いくる。自分が回っているのか、それとも周囲の物が回っているのか段々と判らなくなり、胸から熱い液体が迫り上がってくる感覚に襲われる。

 

着実に近づく足音と大きくなる振動に安眠妨害かな。と、思いながらも迫り上がってくる物をなんとか堪えることができた。喉が空気を吸い込む度に焼けかの様な痛むが、吐き気が治り安心した事で体の力が一気に抜けた。

 

新年に向けての準備やらで、何かと忙しく三徹をしていた体だは限界だった。回復する事なく蓄積していった眠気と疲労、そして献血かと思う程に血を喪失している今の状態では、意識を保つ事は不可能に近かった。

夢と現実の間をゆらりゆらりと行き戻りつする意識は、それでもゆっくりと微睡(まどろ)みへと落ちて行き着実に夢の世界へと向っている。

ゆらゆらと揺れ滲む視界を薄桃色の何かが通過した。

それは、まるで花弁の様であった。

 

薄桃色の花弁が頭上に触れた瞬間。ぐらりと意識が夢へと降下していった。

 

だから、俺は再び起きるまで気が付きもしなかった。

無意識に握りしめていた黒い封筒の存在と、その手にいつの間にか刻まれていた赤い令呪の存在に。

 

 

 

 




Fate/GOのデータが1回、全部消えた時の絶望感は想像以上にヤバかった・・・。
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