Shadow Princess コズミックプリキュア After Story 作:k-suke
パフが何者かに攫われたとアロマから聞いたはるか達は、息急き切って指定された夢ヶ浜公園にやってきた。
かなりの広さがあるこの公園だったが、一足先に向かったアロマが上空を旋回して探してくれたおかげで、割合早くパフの居場所が見つかったのである。
はるか「パフ!! 大丈夫!?」
心配という文字を顔に貼り付けたはるかが、プラチナブロンドのロングヘアの少女に抱きかかえられたパフに声をかけた。
だが、パフに至ってはのんきそうに笑いながら返事をした。
パフ「大丈夫パフ。この人と一緒だったパフ」
それを聞いてホッとしたはるか達だったが、すぐに冷や汗が吹き出し真っ青になった。
きらら「ちょっ!! 何知らない人の前で喋ってるのよ!! バレたら大変じゃん!!」
はるか「あ、あの、その犬はちょっと変わった鳴き声で、人が話してるみたいに聞こえるでごじゃいまするが、その、どこにでもいる普通の犬でごじゃりまして、だからそのえと…」
しどろもどろになりながらも、めちゃくちゃな言い訳を始めたはるかに、少女は小さく微笑んだ。
宝石のように輝く赤と青のオッドアイ。
透けるような白い肌に、コントラストの効いた黒光りのするスーツ。
そしてみなみやきららに負けず劣らず整った顔立ち。
そんな少女の笑みを見たはるかは、同性にあるにもかかわらず思わず見惚れてしまった。
そんなはるかに対して、少女は言い聞かせるように淡々と話しかけた。
「推奨する。落ち着け、お前達がプリキュアだということは確認している。この犬がただの犬ではないこともな」
はるか「へっ!?」
少女の言葉にはるかは戸惑いの声を上げ、みなみは警戒するような口調で尋ねた。
みなみ「あなたは何者!? 私達がプリキュアだって知ってるみたいだけど…」
「通達する。私の認証IDコードは四季ゆうだ」
トワ「!! そのお名前は!!」
つい先ほどパンプキンカフェでパンプルルから聞いた名前。パンプキン王国を救ったという人物だった。
きらら「ってことは… あんたもプリキュア!?」
ゆう「肯定する」
先ほどの話から推測したことを尋ねたきららに、ゆうはあっさりと肯定した。
はるか「うっわ〜!! どうやってプリキュアになったんですか? それに5個目のパフュームがあったってことですよね!! それは一体どこから…」
ゆうがプリキュアだということを聞いて、興奮気味に話しかけたはるかだったが、アロマがそれを遮った。
アロマ「ま、待つロマ」
きらら「どうしたの?」
アロマ「その声… 話し方… さっき聞いたロマ。パフを攫った奴ロマ!!」
みなみ「なっ!?」
トワ「あなたがパフを… 一体どういうおつもりですか!?」
アロマの言葉にみなみとトワの顔つきは変わり、詰問するように叫んだ。
ゆう「回答する。お前達をここに呼ぶためだ。この場所ならば周囲への影響が最も少ないと判断した」
はるか「私達を呼ぶって… 一体どういうことですか? パフを返してください!!」
パフを返すよう訴えたはるかに対して、ゆうは無表情に告げた。
ゆう「返答する。お前達がこちらの要求に従うことが条件だ」
パフ「えっ!? どういうことパフ!?」
ゆうに抱きかかえられながら混乱していたパフを見て、きららはありったけの想いを込め、ゆうを睨み付けながら叫んだ。
きらら「要求って何よ!! はっきり言いなさいよ!!」
だが自分を睨み付けてくる視線などお構いなしに、ゆうは無表情に告げた。
ゆう「要求する。勝負しろ、プリキュアに変身して私と戦え」
はるか「…はい?」
てっきりドレスアップキーをよこせとでも言ってくるかと思ったはるかは、斜め上をいく要求に一瞬考え込んでしまった。
みなみ「ずいぶん変わった要求ね。人質を取っておいて…」
ゆう「否定する。これは人質ではない、そんな弱者の行うような下劣な手段など取るつもりもない」
みなみの言葉をゆうは否定したが、それははるか達を余計に混乱させた。
きらら「ええい、なんだかわかんないけど。やってやろうじゃない!!」
はるか達は頷きあうと、プリンセスパフュームを取り出しドレスアップキーを刺し、パフュームの中に光の香水を溜めていった。
「「「「プリキュア、プリンセスエンゲージ!」」」」
その掛け声とともにまばゆく優しい光に包まれ、光の香水を吹き付けるようにして四人は変身した。
フローラ「咲きほこる花のプリンセス、キュア・フローラ!!」
マーメイド「澄みわたる海のプリンセス、キュア・マーメイド!!」
トゥインクル「きらめく星のプリンセス、キュア・トゥインクル!!」
スカーレット「深紅の炎のプリンセス、キュア・スカーレット!!」
フローラ「強く!!」
マーメイド「優しく!!」
トゥインクル「美しく!!」
スカーレット「Go!!」
「「「「プリンセスプリキュア!!」」」」
フローラ「さぁ、パフを返して…」
ゆう「解放する。行け」
四人が変身したのを確認すると、ゆうはそっとパフを抱き下ろしてフローラ達の元に行くように優しく促した。
パフ「パ、パフ?」
そんなゆうの態度にパフは戸惑いながらもフローラ達の元へと走って行った。
トゥインクル「…くれちゃったよ。あっさりと」
あまりにもあっけなくパフを解放したゆうに、トゥインクルは唖然としてつぶやいた。
マーメイド「どういうつもりなの? 一体何のためにパフを攫ったの!?」
ゆう「回答したはずだ、お前達をここに呼ぶためだと。 そしてお前達が要求を飲んだ以上、こちらにこの犬を抱えておく理由はない」
当然とも言えるマーメイドの問いかけに、ゆうもまた当然というように返した。
スカーレット「…ただ私達と戦うためだけ。そういうことですか?」
ゆう「肯定する」
フローラ「ま、待って。一体何のためにそんなことを…」
何とか事情を聞こうとしたフローラだったが、ゆうは聞く耳を持たなかった。
ゆう「…宣告する。行くぞ」
無表情のまま、地面を踏みしめるようにゆうはゆっくりとフローラ達に向かっていった。
フローラ「う、うあ…」
トゥインクル「な、何? この威圧感…」
スカーレット「息苦しさを感じますわ…」
ただ歩いてきているだけ。
にもかかわらず、呼吸すら困難になる凄まじいプレッシャーがゆうからは発せられていた。
そして
マーメイド「えっ!?」
突如、目の前を歩いていたゆうの姿がかき消えるように見えなくなり、戸惑いの声を上げた。
しかし、一瞬ののち驚愕に包まれた。
衝撃波のようなものが発生したかと思うと、十数メートルは離れていたはずのゆうが、いきなり自分達の目の前でアッパーパンチを繰り出した状態で出現していたのだ。
フローラ「ご、ごふっ…」
それだけでなく、数秒後殴り飛ばされたらしいフローラがうめき声とともに地面に叩きつけられていた。
トゥインクル「な、何が起きたの…!?」
マーメイド「い、一瞬で距離を詰めて… フローラを殴り飛ばした… んでしょうけど…」
スカーレット「ま、全く見えませんでした…」
嫌な汗が全身から噴き出し始めた中、ギロリという音がするかのようにゆうが視線を向けてきたことに、マーメイド達は背筋に寒気が走り本能的に危険を感じた。
そしてほとんど反射的にドレスアップキーを取り出した。
マーメイド「バ、バブル!!」
トゥインクル「シュ、シューティングスター!!」
そしてクリスタルプリンセスロッドにキーを差し込もうとした瞬間、キーを持つ手に激痛が走った。
マーメイド「うああっ…」
トゥインクル「グゥッ…」
ゆうが一瞬で二人の懐に飛び込み、キーを持つ手を掴み取り捻りあげていた。
その腕の痛みに二人はキーを取り落としてしまい、それを見たゆうは地面に落ちたキーをどこかに蹴り飛ばした。
パフ「ああっ!!」
アロマ「ドレアップキーが!!」
キーがどこかに飛ばされたのを見たパフとアロマは、大慌てで拾いに行った。
マーメイド「くっ、振りほどけない…」
トゥインクル「ば、馬鹿力…」
一方腕を掴まれた二人はなんとか振りほどこうと足掻いていたが、ゆうの握力は凄まじく、引きはがすどころか腕が握りつぶされ今にもへし折られそうなほどだった。
おまけにそうして二人がかりで必死に足掻いているのに関わらず、ゆうは涼しい顔をしたままであり力を入れているような様子もなかった。
と、ゆうはそのまま二人を軽々と片手で持ち上げ自分の頭上で激突させた。
マーメイド「がっ!!」
トゥインクル「げっ!!」
二人は互いに頭突きをしあう格好になり、目から火花が飛び散り一瞬意識が遠くなった。
そしてゆうはそのまま二人を振り回して大きく放り投げた。
スカーレット「ああっ!!」
投げ飛ばされた二人を見て驚きの声を上げたスカーレットだが、なんとか気を取り直すとスカーレットバイオリンを取り出した。
スカーレット「ハナビ!! プリキュア・スカーレット…」
ハナビキーをセットし、スカーレットバイオリンを奏でようとした瞬間、スカーレットバイオリンはハナビキーごと明後日の方向に跳ね飛ばされた。
スカーレット「えっ!? がふっ…」
驚く暇もなく、懐に飛び込んでいたゆうが膝蹴りを食らわせてきたため、スカーレットは小さく嘔吐物を吐き出しうずくまってしまった。
そんなスカーレットの髪をゆうは左手で無造作に掴み引っ張り上げた。
そしてそのまま右手を振り上げ、「足」を受け止めた。
フローラ「えっ!?」
なんとか復活したフローラがスカーレットを助けようと、大ジャンプとともにかかと落としを放っていたのだ。
完全に不意打ち。しかも死角からの攻撃だったにもかかわらず、ゆうは振り向くこともせず、来るのがわかっていたかのようにそれをあっさりと受け止めた。
さすがにこの攻撃が受け止められると思わなかったフローラは、混乱してしまっており、どうしたらいいかとっさに行動できなかった。
ゆう「軽蔑する。背中から攻撃してくるとはな」
ゆうはそんなフローラを汚いやつだというように睨みつけると、足を掴んだまま思い切り地面に叩きつけた。
フローラ「がはっ…」
そして、そのままフローラとスカーレット共々を掴んだまま大きくジャンプした。
スカーレット「グゥッ…」
フローラ「う、動けな…」
ただのジャンプではなく何かの力で飛行しながら上昇しているらしく、二人の体には強烈なGがかかり息をすることすら困難になっていた。
そしてそのまま空中で二人を抱えたまま大車輪のように大きく一回転し、その勢いで地面に向かって投げつけた。
直後轟音とともに砂煙がもうもうと巻き起こり、地面には巨大なクレーターができていた。
そしてその中心には大の字になり、うめき声を上げているスカーレットとフローラがいた。
スカーレット「あ… ぐ…」
フローラ「うあ…」
マーメイド「フローラ!!」
トゥインクル「スカーレット!!」
体勢を立て直したマーメイドとトゥインクルは、二人を助けようとクレーターに向かって駆け寄ろうとしたが、そこにゆうが空中から自由落下に加速度を加えた状態でラリアートを食らわせて、大きく吹き飛ばした。
フローラ「こ、こうなったら…」
痛みに痺れている体をさすりながらなんとか立ち上がったフローラは、モードチェンジをしようとプリンセスパフュームを取り出したが、そこであることに気がついた。
フローラ「あ、あれ!? ドレスアップキーが!! 嘘、なんで!?」
持っていたはずのキーが一本もなく、慌ててあちこちを弄ったが見つからなかった。
ゆう「確認する。これを探しているのか」
そんなフローラに対して、ゆうは懐から三本のドレスアップキーを取り出した。
トゥインクル「い、いつの間に…」
マーメイド「まさか、最初に攻撃した時に… っ!!」
ゆうとフローラがまともに接触したのは、最初にゆうがフローラを殴り飛ばしたであろう時である。
あの一瞬で攻撃をするとともにキーを奪ったことに驚愕したマーメイドだったが、あることに思い当たり顔色を変えて全身を弄った。
トゥインクル「まさか!!」
スカーレット「そんなことが!!」
一瞬遅れてそのことに思い当たったトゥインクルとスカーレットも慌てて全身を弄ったが持っていたはずのキーがどこにもなかった。
マーメイド「私達のキーまで攻撃した瞬間に…」
信じられないというように絞り出したその言葉に答えるように、ゆうは懐から全員のキーを取り出した。
ゆう「肯定する。これがなければ武器が使えないことは確認しているからな」
フローラ「か、返して!! それは大切なものなの!!」
必死の形相でキーを奪い返そうと飛びかかったフローラをゆうは蠅でも払うかのように跳ね飛ばした。
あっさり跳ね飛ばされ地面を転がっていったフローラを見て、ゆうは小さく首をかしげるように疑問を口にした。
ゆう「質問する。大切なものだというならば、なぜ奪い返すことに全力を出さない。それに武器なしでも私の叔母はもっとまともな戦いができたぞ」
スカーレット「お、叔母様…?」
トゥインクル「わけのわかんないことを言いたい放題…」
マーメイド「みんな、一斉に行くわよ!!」
何としてでもキーを奪い返さなければならない。
その思いからマーメイドの声に全員頷きあうと一斉に飛びかかった。
フローラ「タァアアアア!!」
気合を込めて繰り出されたフローラのパンチだが、ゆうは軽く首をひねって避けた。
マーメイド「ハァアアア!!」
続けて放たれたマーメイドの蹴りも、軽く体を反らしただけでかわした。
「「「「ヤァアアアア!!」」」」
ならばとばかりに四人がかりで四方八方から一斉にラッシュを浴びせたが、ゆうは体を小さくゆするようにするだけで、一歩たりとも動くことなくその攻撃を全て紙一重でかわしきった。
トゥインクル(な、なによこいつ…)
スカーレット(こちらの動きが完全に見切られている!?)
攻撃がかすりもしないことに焦りだしたトゥインクルとスカーレットは、頷きあうと少し距離を取り、左右から同時に襲いかかった。
トゥインクル・スカーレット「「ダアアアア!!」」
渾身の力で同時に繰り出されたパンチだが、ゆうはその拳を軽く捌いて軌道を変え、トゥインクルとスカーレットを同士討ちさせた。
スカーレット「ぐっ!!」
トゥインクル「うあっ!!」
そしてダメージを受けて一瞬動きが止まったのを見逃さず、二人を蹴り飛ばした。
トゥインクル・スカーレット「「キャアアア!!」」
フローラ「トゥインクル!!」
マーメイド「スカーレット!!」
思わず叫び声をあげるも、間髪入れず放たれたゆうのローリングソバットにフローラとマーメイドも大きく蹴り飛ばされた。
ダメージも蓄積していく中、肩で息をしながら必死に立ち上がろうとしていた四人は、言い知れぬ恐怖を感じ始めていた。
トゥインクル「な、なに!? この強さ…」
スカーレット「ゼツボーグなど比べ物にならないほど…」
事ここに至るまで一発の攻撃も当たっておらず、いいようにされっぱなしである。
四人は今目の前にいる少女が、これまでの相手とは別次元の存在であると認識し始めていた。
マーメイド「でも、なんとかキーを取り戻さないと…」
フローラ「あきらめちゃ、だめだよ…」
フローラの言葉に必死に全身を奮いたたせ、お互いに支え合いながらなんとか立ち上がろうとしていたが、そこに予想外のものがバラバラと降ってきた。
フローラ「えっ!?」
マーメイド「ドレスアップキー…?」
戸惑いながらも前を見やると、無表情ながらもどこかつまらなさそうな顔をしたゆうが、まるでガラクタのようにキーを投げ捨てていた。
ゆう「謝罪する」
フローラ「しゃ、謝罪!?」
ゆう「それで全力だったようだな。お前達の実力を高く見積もりすぎたようだ。 失礼なことを言った」
それだけ言い捨てると、もはやプリンセスプリキュアに興味をなくしたように踵を返して立ち去り始めた。
スカーレット「どういうおつもりですか? 一体?」
困惑しつつも何度目かになる疑問を絞り出したスカーレットだが、ゆうは歩みを止めぬまま振り向くこともなく淡々と告げた。
ゆう「回答する。自分達で強いと名乗るからにはどれほどかと思っただけだ。 その程度ならば戦う価値もない」
トゥインクル「自分で喧嘩売っといて失礼にも程があんでしょ!! 人を馬鹿にして!!」
完全に馬鹿にされている。
その思いから怒鳴るように叫んだトゥインクルだが、ゆうにとっては蛙の面に水だった。
ゆう「否定する。私は事実を述べただけだ。 それに能力を見積もり損ねたことについて謝罪はした」
マーメイド「ここまで誠意の感じられない謝罪は生まれて初めてだわ…」
あまりにも淡々としたゆうの言葉にマーメイドは露骨に不快な顔をしたが、今の自分達の状況で言い返すことができないこともわかっていた。
かなり長時間戦っているようだが、実際にはまだ3分もたっていないだろう。
そのわずかな時間でここまでボロボロにされたのでは言い返す言葉もなかった。
アロマ「し、しっかりするロマ!!」
パフ「キーを見つけてきたパフ!!」
そんな中、パフとアロマが先ほど蹴り飛ばされたキーを見つけてきた。
それを見た四人は勇気付けられ、気合い一発立ち上がった。
そしてゆうもまた、歩みを止めて振り返った。
ゆう「警告する。戦闘を続行するつもりならばこちらも反撃行動に出る。 結果の見えている行動でエネルギーの浪費を避けるためにも速やかに撤収することを推奨する」
トゥインクル「うっさい!! 回りくどい言い方して、そんな余裕も今のうちよ!!」
どうせ勝負にもならないのだからさっさと失せろ
つまるところそう言われていることに、四人は最後の意地があるとばかりに、パフュームを取り出しドレスアップキーをセットした。
「「「「エクスチェンジ!! モードエレガント!!」」」」
フローラ「リリィ!!」
マーメイド「バブル!!」
トゥインクル「シューティングスター!!」
スカーレット「フェニックス!!」
すると四人のコスチュームはかなりのボリュームがあるドレスとなり、必殺技の体勢に入った。
スカーレット「羽ばたけ、炎の翼!! プリキュア・フェニックスブレイズ!!」
スカーレットは、フェニックスキーをセットしたスカーレットバイオリンを奏でて巨大な火の鳥を召喚させ、ゆうに向かって突撃させた。
フローラ達も負けじと各々のミラクルドレスアップキーをクリスタルプリンセスロッドにセットし光るリボンを出現させた。
「「「輝け、三つの力!! プリキュア・トリニティエクスプロジオン!!」」」
三人はロッドを頭上で重ね合わせ、そのままリボンを振ることで巨大なティアラを出現させ、強力な光を放出した。
ゆう「!!!」
とっさに顔を両腕でかばい防御体勢をとったものの、この同時攻撃の光と爆炎の中にゆうの姿は飲み込まれていった。
スカーレット「やった…」
トゥインクル「ザマアミロって…」
その光景に勝利を確信した四人だったが、光が収まり煙も晴れていくに従って表情が凍りついていった。
マーメイド「…え?」
そこには服がボロボロになったゆうがおり、四人を睨みつけるようにして立っていた。
ゆう「立腹する。よくも私の服を…」
フローラ「き、効いてない!!」
フローラの驚愕の言葉通り、着ていた黒いスーツと背負っていたハープがボロボロになりブスブスと黒い煙を発していただけであり、ゆうそのものは完全にノーダメージのようだった。
スカーレット「そ、そんな…」
ゆう「…了承した、貴様らには戦闘を続行する意思があると判断する。武装の対抗のため、こちらも兵装の安全装置を解除する」
トゥインクル「いいっ!? って、今まで本気じゃなかったっての!?」
マーメイド「!! ま…まさか!?」
全く抑揚のない声でつぶやかれた物騒なことに、マーメイドはあることに思い当たった。
だがゆうはそんなことなどお構いなしに、無表情のまま左手を親指・人差し指・中指の三本を立てて前に突き出した。
ゆう「チェインジ!!」
そう叫ぶと、突き出した左手の指を立てたまま、手の甲を内向きにして顔の前へと横向きに持って行き、人差し指と中指の間から赤い右目を光らせた。
ゆう「スイッチ・オン!!」
次の瞬間、黒い電流のようなものが火花をあげてゆうの全身を走り、一瞬ののちにその姿は変わっていた。
彼女の姿は、フリルのない落ち着いたデザインのロングスカートの黒一色のドレスとなっており、同じく黒一色の肘まである手袋とブーツを着用していた。
その黒さは抜けるような色の白い肌やプラチナブロンドのロングヘアと相まってより一層黒く、そしてどこか美しく光を放っていた。
マーメイド「や、やっぱり…」
アロマ「プ、プリキュアロマ…」
デッド「肯定する。バトルスタイルコードネーム、キュア・デッド」
そして左手に黒い靄のようなものをまとわせると、それをいわゆるデスサイズへと変化させて構えた。
トゥインクル「キュア・デッド… 確かにプリキュアだって言ってたけど… で、でもなによあれ… まるっきり…」
透けるような白い肌
黒光りのするコスチューム
背中まで伸びたプラチナブロンドの美しい髪
そして携えたデスサイズ
それらから連想される単語はただ一つだった。
フローラ「し…死神…」
デッド「肯定する。私はプリキュアを破壊する死神である」
フローラの怯えたような言葉をデッドは無表情に肯定すると、左手のデスサイズをかざして冷たく宣言した。
デッド「破壊する。ターゲット、プリンセスプリキュア」
マーメイド「!! いけない、逃げ…」
その死の宣告を聞くや否や、ほぼ反射的にマーメイドはとっさに逃げることを皆に促そうとしたが、一瞬早くデッドはデスサイズを大きく横薙ぎに一振りし、黒い波動のような斬撃を発射した。
「「「「キャアアアアア!!」」」」
いきなり体を襲った衝撃に、全員体を真っ二つに切り裂かれたかのような感覚を覚えた。
そのため
フローラ「えっ? あっ、き、切れてない!! ちゃ、ちゃんとついてる…」
体を押さえて無事であったことを確認できたことでフローラを始め全員が心底安堵していた。
しかし、直後後ろから聞こえてきた何かが倒れる音に、恐る恐る振り返ると血の気が引いた。
ここは公園であり、何本も木が植えられている。そのうち自分達の後方にあった大木がまるで割り箸のように何本も真っ二つになっていた。
スカーレット「なっ…」
驚愕のあまり呆然としていた一同だったが、デッドは続けざまに間髪入れず右手を向け指先から弾丸をマシンガンのように発射して攻撃してきた。
「「「「ガァアア!!」」」」
一般的な機関銃をはるかに上回る威力の銃弾であり、普通の人間なら1秒とかからず血だるまの蜂の巣になったであろうそれになんとか耐えられたのは、さすがといったところか。
フローラ「…ぐふっ…」
マーメイド「う、撃たれた…?」
トゥインクル「何? この武器…」
しかし威力としては十分すぎるほどであり、四人は出血こそしていないものの、全身があざだらけになってしまい倒れこんでしまった。
そんな四人を見て、デッドはつぶやいた。
デッド「評価する。防御力はこちらの想定レベルに達していたようだな。だが、それだけだ」
そう告げると、デッドは四人の目の前に一瞬で飛び込み、マーメイドを蹴り飛ばし遠方にあった木に叩きつけた。
マーメイド「がぶっ…(この痛み…あばらが…) えっ?」
折れたらしいあばらの痛みに顔をしかめた瞬間、ぶつけられた大木がメキメキという音とともにマーメイドの上に倒れこんできた。
そんなマーメイドを一瞥もせず、すぐ近くにいたスカーレットに対して、デッドはデスサイズを棒術のように振るってきた。
スカーレット「げふっ!! ぐあっ!!」
軌道すらほとんど見えないほどの高速で振るわれたデスサイズに、スカーレットは防御すらまともにできないまま一方的に叩きのめされた。
フローラ・トゥインクル「「スカーレット!!」
そんなスカーレットを助けようと飛び込んでいったフローラとトゥインクルに対して、デッドは手にしていたデスサイズを投げつけてきた。
フローラ「うわっ!!」
トゥインクル「あぶな!!」
このデスサイズの切れ味は容易に想像が付いており、とっさにフローラは大ジャンプしトゥインクルは身をかがめて必死にかわした。
そして一瞬できた隙に、デッドはスカーレットをサッカーボールキックで蹴り飛ばした。
トゥインクル「この…!!」
その光景にカッとなり、睨みつけるように顔を上げた瞬間、続けて飛んできた「左手」がトゥインクルの顎を直撃して顔を跳ね上げた。
殴り飛ばされながらも視界の端に捉えたものに、トゥインクルは混乱した。
そこにあったものは「左腕」とそれにつながったワイヤーだけであったからだ。
トゥインクル「ロ、ロケットパンチ!?」
殴り飛ばされる中トゥインクルの首はその腕に掴まれ、ワイヤーを引き戻す力で引っ張られていった。
トゥインクル「ッ!! 何!?」
そして当然引き寄せられた先にはデッドが待ち構えており、そのまま右のカウンターで顔面を思い切り殴られた。
トゥインクル「ぶおごっ…」
首の骨が折れるかというような衝撃に一瞬意識が飛び、トゥインクルはおかしな悲鳴ととともに回転しながら派手に地面を転がっていった。
フローラ「このおー!!」
なんとか一矢報いようと、フローラはデッドに向かって空中から突撃してパンチを繰り出したが、先ほど投げたデスサイズが、ブーメランのように戻ってきた為、回避行動をとらざるを得ず出鼻をくじかれてしまった。
そしてその隙を狙ってデッドも飛び上がりフローラの顎にアッパーを食らわせてさらに上空に跳ね上げた。
そして上空に殴り飛ばしたフローラに対して落下していく隙も与えまいと、デッドは続けざまにパンチやキックを無慈悲かつ無表情で次々と叩き込んでいった。
いわゆる格闘ゲームの空中コンボであり、フローラは防御も回避も取れないまま一方的に攻撃を受け続け、うめき声すらあげられなかった。
マーメイド「くっ!! いけない!!」
下敷きになった木からなんとか這い出したマーメイドは、フローラを助けようと、あばらの痛みを必死にこらえつつクリスタルプリンセスロッドを取り出しバブルキーを差し込んだ。
マーメイド「バブル!! プリキュア・バブルリップル!!」
その掛け声とともにデッドの動きを止めようとロッドの先端から大きな水の泡が放たれた。
それはデッドにかわされてしまったが、それもマーメイドの想定の範疇であった。
一瞬ではあるがフローラに対する攻撃の手が緩んだことを確認すると、大ジャンプして助け出した。
マーメイド「フローラ、しっかりして。 トゥインクル、スカーレットも」
マーメイドはぐったりしてしまっていたフローラを抱えて地面に着地し、地面に倒れ伏していたボロボロの仲間達にも声をかけた。
それはある意味正しく、しかしこの場に限っては大きく誤った判断だった。
マーメイド「えっ!?」
何かが飛来する音に顔を上げた瞬間、白煙とともに目前に迫ってきていたミサイルが着弾して大爆発を起こし、全員吹っ飛ばされたのだから。
デッドはマーメイドがフローラを助け出した瞬間、左膝を折り曲げて左太ももに内蔵されているミサイルを発射していたのだ。
もちろん、マーメイドが仲間を助けた後、どこにどのタイミングで着地するかを完全に読んだ上で、である。
ミサイルの爆発をモロにくらい、大ダメージとともに地面に叩きつけられた四人はもはや立ち上がる力すら残っていなかった。
マーメイド「い、今の攻撃は、完全にこちらの動きを読んでいた… まさか、昨日ゼツボーグとの戦いで感じた視線は…」
デッド「肯定する。貴様達の攻撃、防御、回避、連携パターン、すべてモニターさせてもらった」
トゥインクル「準備万端だったってか… やるじゃん…」
もはや逃げることもままならない中、諦めの境地のようにトゥインクルは自嘲気味につぶやくしかなかった。
フローラ「だ、だめだよ… あきらめちゃ… 頑張ればきっと…」
この状況下でもくじけることなく必死に自身を奮い立たせようとするフローラだったが、
デッド「否定する。現在貴様達のボディの損傷では、反撃はもとより回避・逃走も不可能であると判断する」
デッドはバッサリと切って、無表情にデスサイズを手に近づいていった。
デッド「確認する。警告を無視した以上覚悟はできているな」
パンプルル「お、お待ちくださいませ!! キュア・デッド様!!」
そんな中、肩で息をしながらパンプルルがプリンセスプリキュアをかばうように飛び込んできた。
マーメイド「あ、あなたは…」
スカーレット「危険です… 離れて…」
なんとか絞り出すように避難を促したが、デッドもまた淡々と警告した。
デッド「警告する。パンプルルそこから離れろ。 無関係のお前を傷つける意図はない」
パンプルル「ど、どきません!! あなたはこんなことをするようなお方ではないはずです。 私の国を、父と母を救ってくださったではありませんか」
先ほどまでの戦いを見ていたのか、多少震えながらもあらん限りの勇気を振り絞り、パンプルルは叫んだ。
しかしデッドの返事はあまりにも冷たいものだった。
デッド「否定する。私の存在理由はプリキュアの破壊、ただそれだけだ。 あのウォープなどと名乗る下衆にプリキュアを破壊されるなど許せることではなかっただけだ」
パンプルル「そんな…」
フローラ「さ、下がって… ください…」
なんとか立ち上がったフローラは愕然としているパンプルルに下がるよう告げ、ふらつきながらも前に出た。
パンプルル「し、しかし…」
フローラ「あなたの目的は私達でしょう!! この人に手を出さないで!!」
必死に訴えたフローラだが、デッドは首を軽くかしげた。
デッド「反論する。私は初めからそう言っている。破壊ターゲットはプリキュアのみだ」
トゥインクル「えぇい… 律儀なんだか、なんなんだか…」
ふらつきながらもなんとか立ち上がった四人に対してデッドは大きくデスサイズを振り上げた。
もはや避ける余力などなく、デスサイズが振り下ろされるであろうことに四人もさすがに覚悟を決めた。
アロマ「ああっ!!」
パフ「パフー!!」
その光景に思わずアロマ達も叫び声をあげたが、そのままデッドの動きが止まった。
マーメイド「…えっ?」
デッド「中断する。勝負は預ける」
そう言い残すと、デッドは大ジャンプを繰り返してどこへともなく去っていった。
スカーレット「たす…かっ…た…?」
突然戦闘を中断し立ち去っていったキュア・デッドに四人は狐につままれたような気持ちであったが、同時に緊張の糸が切れ、これまで受けたダメージも相まってそのまま気絶してしまった。
パフ「プ、プリキュアー!!」
アロマ「しっ、しっかりするロマ!!」
パンプルル「お気を確かに!! プリンセス!!」
はるか「う、う〜ん」
アロマ「よ、よかった!! やっと気がついたロマ!!」
うっすらと目を開けたはるかの目には、心配そうに自分達を覗き込むアロマとパフの姿があった。
きらら「アロマ… ここは…公園か… !!イタタ…」
なんとか起き上がろうとしたが、全員あざだらけであり、わずかな動きでも痛みが全身に走っていた。
特にきららに至っては首に激痛が走るため、無理なことはできなかった。
ロマ「あまり動かないほうがいいロマ。3時間近く気絶してたし、簡単な手当をしただけロマ」
みなみ「ありがとうアロマ。それに…パンプルルさんも。あなたも私達を?」
パンプルル「…はい」
みなみの問いかけに、パンプルルはうつむきながら小さな声で返事をした。
トワ「あの… あのお方とは、一体どういうご関係なのですか?」
口の中の鉄の味に顔をしかめながらのトワの当然とも言える質問にも、パンプルルは歯切れの悪い答えをぼそぼそと返すだけだった。
パンプルル「いえ、本当にあの方は私の国を父と母を救ってくださった方で… 本当に大切なものを改めて教えてくださった方です。私達や妖精達にもとても優しく、誰かを傷つけたりするようなお方にはとても…」
きらら「いやいや、私らをここまでボロボロにしといて、そんなことはないって」
首を動かすのが辛いのか、その代わりに手をパタパタと振りながらのきららの言葉には、みなみもトワももっともだというようにウンウンと頷いた。
アロマ「そうロマ。パフをいきなり攫ったりして、汚いやつロマ!!」
アロマも憤慨したように叫んだが、パフが口を挟んできた。
パフ「でも、パフは何にもされなかったパフ」
その言葉に、はるか達も考え込んでしまった。
はるか「確かにすぐにパフを返してくれたし、人質にも取らなかったけど…」
トワ「私達を、プリキュアを倒すことだけが、目的だともおっしゃってました…」
みなみ「ドレスアップキーも返してくれたし、ディスダークにしては妙ね…」
パフ「ディスダークとは違う気がするパフ。一緒にいたけど全然嫌な感じがなかったパフ」
パフのその言葉に一同はさらに混乱した。
きらら「って、ディスダークじゃなかったらあいつ一体何なのよ!?」
アロマ「新しい敵… ということロマ?」
みなみ「何にせよ、今はまだ情報が少なすぎるわ。とりあえず怪我を治すことに専念しましょう」
そうしてパンプルルに向き合うと申し訳なさそうに謝った。
みなみ「せっかくお誘いくださったのに、こんなことになってしまって申し訳ありませんでした。ぜひまた機会がありましたら…」
パンプルル「いえ、こちらこそよろしくお願い致します。その際にはぜひとも五人でお越しください」
きらら「五人って… まさかあいつが入ってるの?」
その発言に耳を疑ったきららだが、当のパンプルルは全く迷いのない顔で言い切った。
パンプルル「はい。やはりどうしても私にはゆう様が悪人だとは思えません。プリンセスと呼ぶにふさわしい方だと思っています。 何より皆様と同じプリキュアなのですから」
きらら「いや、でもねぇ…」
某所
ゆい「思ったより時間がかかっちゃったな。早く帰らないと…」
画材を大切そうに抱きかかえ時間を気にしながら、七瀬ゆいは小走りに学園への道をかけていた。
予想外に時間がかかったこともあり、近道をしようと裏道を行き、挙句にちらっと腕時計を見たのがまずかった。
たまたま前を歩いていた数人のチンピラ風の男性にぶつかってしまったのだ。
「イッテー!!!」
ゆいのぶつかったチンピラは大げさに倒れ込み、わざとらしく大声をあげた。
ゆい「す、すみません。大丈夫ですか?」
声をかけたゆいに対して、そのチンピラ達はわざとらしく騒ぎ出した。
「おい、しっかりしろよ!!」
「ちょっと待て!! 骨が折れてんじゃねぇか」
「大変だぜ!! 医者にいかねぇと!!」
常識的に考えればそんなことがありえないのは誰の目にも明らかなのだが、慌てていたことと突然騒ぎ出されたこともあり、ゆいは多少混乱して信じ始めていた。
ゆい「ごめんなさい!! あ、あのすぐに病院に。 お詫びはなんでも…」
そのため、言ってはならない言葉を言ってしまった。
「そうだな。治療代とか慰謝料とかで百万ぐらいは払ってもらわねぇとなぁ」
ゆい「えっ!? そんな…」
「当たり前だろうが!! こいつの腕テメェがぶつかったせいでボッキボッキなんだぜ!!」
「イテーよー イテーよー」
見るからに臭い三文芝居と言いがかり以外何者でもない言葉だったが、ゆいはその勢いに押されていた。
ゆい「で、でもそんなお金…」
「ん? まだガキだが、よく見りゃかわいい顔しるじゃねぇか」
「本当だ。じゃあ体で払ってもらうってのはどうだ?」
この台詞を聞いたゆいは、本能的に後ずさりを始め、やがて脱兎のごとく逃げ出した。
「待ちやがれ!!」
「逃がすかよ!!」
必死になって走ったゆいだが、逃げ切れるはずもなくすぐに取り囲まれてしまった。
ゆい「あ… あ…」
「どこに行くんだよ」
「なんでもするって言ったのはテメェだろうが」
ゆい「い、いや… 助けてー!!!」
必死に助けを求めて叫んだ瞬間、裏路地に積んであったダンボール箱の山が崩れていき、ボロボロの服をまとった少女がその中から出てきた。
「強制スリープによる、AI最適化終了。再起動および動作確認… 異常なし」
淡々とつぶやいたその少女は体の異常を確認するかのように、軽く肩や足首を回すと目の前の状況など関係ないというように立ち去ろうとした。
「ん? なんだテメェは?」
「回答する。私の認証IDコードは四季ゆうだ」
「ああそうかい。で、チクリに行こうってか!?」
凄んだチンピラだったがゆうに対してそんなものは効果がなかった。
ゆう「回答する。私に貴様らの行動など興味はない」
「あん? ふざけんな。こんなとこ見といてタダで済むと思ってんのかよ」
「おい、こっちもそそる格好してんじゃかよ」
「一緒にヤッちまおうぜ」
そうガラ悪く叫びゆうの肩を掴んだチンピラだったが、途端にゆうの目つきが変わった。
ゆう「確認する。その行動の意味はわかっているのか」
「グチャグチャうるせぇな!!」
ゆうの言い様にイラついた様にチンピラは拳を繰り出したがそれはあっけなく受け止められた。
驚くチンピラをよそに、ゆうは無言のまま肩を掴んでいた腕をあっさり引っぺがすとそのまま両腕をおかしな方向にねじり上げた。
当然鈍い音がしてチンピラの腕はへし折れた。
「ギャアアアア!! 腕が腕がー!!」
このチンピラはさっき腕が折れたと臭い芝居をしていたものだが、今度のはどう見ても演技ではなかった。
「テメェ!!」
「やりやがったな!!」
もはや取り囲んでいたゆいの事など眼中になく、チンピラ達は一斉にゆうに殴りかかった。
しかし生身の人間がゆうに敵うはずもなく、一瞬でケリがついてしまった。
ある者は軽く突き飛ばされただけで十数メートルは吹っ飛び、またある者は軽く殴られただけで下顎が割れ、またある者は鼻がへし折られ顔面が陥没していた。
「お、覚えてやがれ」
「ヂ、ヂギジョー」
そうしていかにも小物臭い捨台詞とともに這う這うの体で逃げていった。
目の前の超展開にあっけにとられていたゆいだが、正気に戻るとゆうに向かって頭を下げた。
ゆい「あ、ありがとうございました。助けていただいて」
だがゆうはそれをあっさり否定した。
ゆう「否定する。私に対して攻撃を仕掛けてきたものを排除しただけである。お前を助けたわけではない。 無論礼を言われる理由はない」
ゆい「あ〜… で、でもおかげで助かったのも確かです。ありがとうございます」
そこでゆいは改めて、目の前の少女がどこか薄汚れボロボロの服を着ているのに気がついた。
ゆい「あ、あの… そんなボロボロで何があったんですか?」
ゆう「回答する。戦闘力を見積もり損ねたことによる先の戦闘の結果である」
その言葉に何かが引っかかったゆいだが、兎にも角にも自分を助けてくれた少女がボロボロの状態でいるのを放ってはおけなかった。
ゆい「あの、よろしければ一緒に来ていただけませんか? 私学校の寮に住んでるんですけど替えの服ぐらいはありますし、よかったらお風呂も…」
その言葉にゆうは少し間考えを巡らせていたが
ゆう「了承した。ボディの洗浄を行うことで運動性能を維持する必要があると判断する」
ゆい「あっ、自己紹介がまだでしたね。四季ゆうさん、私ノーブル学園一年の七瀬ゆいと言います」
To be continued…