Shadow Princess コズミックプリキュア After Story 作:k-suke
みなみ「あの子は影。一体どういう意味なのかしら」
きらら「ディスダークは闇、プリキュアが光ってのはわかるんだけど…」
あれから五日
シャムールの出した宿題に未だにはるか達は答えを見出せないでいた。
トワ「彼女は自分でディスダークではないとおっしゃっていましたが、そういうことなのでしょうか? ディスダークとは違う敵だと」
はるか「なんか違う気がする… この答えも立派なレッスンだっていうんだよね」
パフ「そう言ってたパフ。影はどこにどうやってできるかがヒントだって…」
この五日間パフもまた考えていたのだが、どうしても答えが出ないでいた。
アロマ「影も闇も同じような暗いものだロマ。光の戦士のプリキュアにとっての敵には違いない、それでいいロマ!!」
どうしてもイマイチ四季ゆう キュア・デッドにいい感情を持てないアロマは憤慨したようにそう叫んだ。
ゆい「…そうじゃないと思う。うまく言えないけど、四季さんが本当に悪い人じゃないことと関係あるのかも…」
そして、どうしてもゆうのことを悪人だと思えないゆいが擁護するようにつぶやいた。
みなみ「影がどこにどうやってできるかというと… 光が物を照らした時にできるもの… 裏を返せば光がなければ存在できないもの」
トワ「彼女はプリキュアを破壊するものだとおっしゃっていましたが、つまり…」
きらら「プリキュアがいなければ存在できないやつだって意味? 確かにそれならなんかかわいそうなやつだけど…」
そこまで話が進んだとき、はるかが立ち上がりながら力強く叫んだ。
はるか「きっと、あの子をなんとか説得しようってことなんだよ。きっと分かり合えると思う」
そんなはるかを見て、一同はやっぱりというような笑みを浮かべた。
きらら「まーったく、はるはるらしい」
トワ「私の時と同じですわね」
みなみ「でもそれがはるかだわ」
きらら「ほんじゃま行きますか、あの子探しに。どーせこの近くにいるんだろうし、特徴のある奴だからすぐ見つかるでしょ」
ニーッと微笑みながらのきららの言葉に頷くと、はるか達は街へと繰り出していった。
きららの言ったとおり、ゆうはかなり特徴のある容姿に加え、ハープを背負うという目立つ格好をしている。
探すにあたっては苦労しないだろうとタカをくくっていたのだが…
はるか「はぁはぁ、一体どこにいるんだろう…。 こんなに探しても見つからないなんて…」
きらら「いろんな人に聞いてみたけど、誰も見てないっていうし… あんな目立つ格好してりゃ、すぐ見つかると思ったのに…」
トワ「もしかして、もうこの近辺にいないのでしょうか…」
みなみ「考えてみれば、彼女どこの誰が作ったとかまるで知らなかったわ。ロボットなんだから学校とかにも行ってないでしょうし、どう探せばいいのかしら」
町中を駆けずり回ったにもかかわらず、ゆうの姿を見かけたという人間すら見つからず、はるか達は疲れ切っていた。
ゆい「そういえば、私と初めて会った時も裏路地のダンボールの中にいたりしましたが、もしかしたら無駄にエネルギーを使わないようにそういうところにいるとか…」
パフ「それじゃ探しようがないパフ…」
ゆいの言葉を聞いて、パフもがっくりと調子を落とした。
はるか「よーし、じゃあもう一度探してみようよ。今度は人があんまり行かなさそうなところを中心に」
しかし、はるかは全くめげることなく力強くそう言い放った。
皆もやれやれというように頷いた。
するとそこに、アロマが大慌てで叫びながら飛び込んできた。
アロマ「た、大変ロマ!! ゼツボーグロマ!!」
はるか・きらら・みなみ・トワ「「「「!!!!」」」」
きらら「えぇい、毎度毎度…」
トワ「仕方ありません、そちらを先に」
みなみ「ええ、行きましょう」
ゆい「私はしばらく四季さんを探してみます。はるかちゃんも行って!!」
はるか「ありがとうゆいちゃん!!」
そうしてはるか達はアロマの案内に従ってゼツボーグの暴れている場所へと走って行った。
パフ「でも、どこを探すパフ?」
はるか達を見送った後、ゆいに抱かれたパフは素朴な疑問を口にした
ゆい「そうだよね… 何か四季さんが興味のありそうなものでもあれば…」
そこまでつぶやいた時、ゆいはハッと気がついた。
ゆい「四季さんが興味のあるもの… って、まさか!!」
ゆうが唯一興味を持っているもの。
それに思い当たったゆいは、慌ててはるか達を追いかけようとした。
その時、曲がり角から、白と紺色のパンツスーツを着用して黒いヒールを履いた長身の女性が出てきた。
ゆい「シャ、シャムールさん!?」
シャムール「イエス。ちょ〜っと、レッスンパッドから抜け出してたのよ。それよりどう? 五日経ったけど宿題の答えは見つかりそうかしら?」
慌てていたゆいだが、シャムールの問いかけに律儀に答えた。
ゆい「は、はい。何とか四季さんと話し合って一緒に戦ってもらおうって。トワさんも自分と同じような人を増やしたくないって言って…」
そこまで聞いて、シャムールはため息とともに首を横に振った。
シャムール「う〜ん、まだまだね。合格には程遠い答えよん」
パフ「パフ? あの子はトワ様とは違うパフ?」
シャムール「そうねん。トワ様は絶望という闇に囚われていたから光で照らすことができた。でもあの子は闇じゃなくて影なのよ」
ゆい「そ、それがよくわからないんです。闇と影は違うんですか? どっちも光の反対じゃ…」
ゆいがずっと考えていた疑問を尋ねると、シャムールは少し考えると、ややあって口を開いた。
シャムール「本当は自分達で考えて欲しかったんだけど、まぁいいわ。闇も影も確かに光の反対。でも闇は光がなくても存在できるものだけど、影は違うわん」
ゆい「え、ええ。影は光があって初めて存在できる。みなみさんもそう言ってました」
シャムール「そこまで行けばあと一歩なんだけどねん」
ゆい「えっ?」
戸惑いの声を上げたゆいに対して、シャムールは続けた。
シャムール「つまり裏を返せば、光がある限り必ず影は生まれるもの。光で闇を照らして消すことはできても、影は消せないのよん。 そして光と影は決して同じ方向にできないものよ」
ゆい「それじゃ… 絶対にわかり合えないってことですか?」
ゆいの愕然とした言葉にシャムールはこくりと頷いた。
パフ「じゃあ、どうして話をするべきだなんて言ったパフ?」
当然とも言えるパフの疑問にシャムールはゆっくりと答えた。
シャムール「影は光とは相容れないものなのねん。けれども影は必ず向き合わなければならない光の暗い部分。目を背けたくなることもあるけれど、時には静けさと安らぎをもたらす大切なものなのよん。だから光の戦士として影には向かい合って欲しいのよん」
パフ「パフ〜?」
哲学的なシャムールの言葉にパフは首をひねっていた。
シャムール「まぁ、じきにみんなもその答えにたどり着くでしょうねん。きっとあの先にはあの子が来るだろうから」
シャムールは、はるか達の走って行った先を見てそう微笑んだ。
ゆい「わかってたんですか…」
シャムール「もちろん♪」
某所
シャット「シャット・ユア・ドリーム!! 行きなさい、ゼツボーグ!!」
シャットが人を絶望の檻の中に閉じ込めて、ゼツボーグを生み出し暴れさせていた。
そんな中、息を切らせてはるか達が駆けつけた。
シャット「来たか、プリンセスプリキュア!!」
きらら「ったく、懲りもせずに…」
みなみ「これ以上はやらせられないわ」
はるか「うん!!」
はるか達は頷きあうと、プリンセスパフュームを取り出しドレスアップキーを刺し、パフュームの中に光の香水を溜めていった。
「「「「プリキュア、プリンセスエンゲージ!」」」」
その掛け声とともにまばゆく優しい光に包まれ、光の香水を吹き付けるようにして四人は変身した。
フローラ「咲きほこる花のプリンセス、キュア・フローラ!!」
マーメイド「澄みわたる海のプリンセス、キュア・マーメイド!!」
トゥインクル「きらめく星のプリンセス、キュア・トゥインクル!!」
スカーレット「深紅の炎のプリンセス、キュア・スカーレット!!」
フローラ「強く!!」
マーメイド「優しく!!」
トゥインクル「美しく!!」
スカーレット「Go!!」
フローラ・マーメイド・トゥインクル・スカーレット「「「「プリンセスプリ…」」」」
〜♪〜♫〜♪〜〜♪〜♫〜♪〜♫〜♫〜♪〜♪〜♪〜
そこまで名乗った瞬間、どこからともなくハープの美しくも冷たいメロディーが流れてきた。
マーメイド「!! このメロディーは!!」
スカーレット「まさか!!」
シャット「ん? どうしたプリキュア?」
目に見えて戸惑い始めたプリンセスプリキュアにシャットも首をかしげていたが、直後に響いた轟音に目を見開いた。
「ゼツ…ボー…グ…」
ゼツボーグの土手っ腹には巨大な穴が開いており、すでに瀕死状態となっていたのだ。
そして、真正面からの突撃でゼツボーグの体をぶち抜いたらしいプラチナブロンドのロングヘアの少女が片膝を立てて着地していた。
そしてその少女がゆっくりと立ち上がるのに合わせるかのように、ゼツボーグはゆっくりと倒れ、人を捕えていた絶望の檻共々黒い霧となって消滅していった。
シャット「なん…だと…」
トゥインクル「あ、あいつ… い、一撃でゼツボーグを…」
フローラ「ゆうさん… やっぱりすごい…」
突如目にも留まらぬ速度で懐に入り込んだ挙句、一瞬でゼツボーグの体をぶち抜いて倒してしまったプラチナブロンドのロングヘアの少女 四季ゆうに、フローラ達は驚愕と感嘆の声を上げていた。
目の前の光景が信じられず唖然としていたシャットだったが、正気に戻るとゆうを睨み付けた。
シャット「貴様!! プリンセスプリキュアの仲間か? 邪魔を…」
そこまで叫んだ瞬間、ゆうもまたシャットを静かに睨み返した。
シャット「すると…いうのならば…」
ゆう「…」
シャット「き、貴様…も…」
ゆう「…」
無表情ながらもどこか凄みを感じるゆうの視線に、シャットはだんだんと気圧されていっていた。
シャット「う……」
手出しをしてくるのならば殺す
何も口にしていないにも関わらず、目つきと身にまとった雰囲気だけで、それが容易に可能かつ間違いなく実行してくることを雄弁に語ってくるゆうに、シャットはついに何も言えなくなっていった。
シャット「お、覚えていなさい」
必死に自分を奮いたたせると、捨て台詞とともに作り出した鍵穴を通って引き上げた。
トゥインクル「あいつ、シャットを睨み付けただけで追い返しちゃったよ…」
スカーレット「た、確かにあの方の雰囲気にはものすごいものがありましたが…」
マーメイド「空気があの場所だけ完全に別のものに変わったみたいだったわ。とんでもないわね…」
シャットをあっさりと撤収させた光景に、プリンセスプリキュアは改めてゆうの底知れぬ強さに舌を巻いていた。
そしてシャットが撤収したことを確認したゆうは、絶望の檻に捕えられていた女性が離れて行ったのを見届けると、プリンセスプリキュアに向かって淡々と告げた。
ゆう「要求する。これで憂いはあるまい、ボディの破損も修復完了したと判断する。私と勝負しろ」
トゥインクル「やっぱしそれか… ちょっとは期待したんだけどね」
ゆう「肯定する。私の目的はプリキュアの破壊あるのみだ」
全くブレることのない主張をゆうが告げる中、フローラは意を決したように話しかけた。
フローラ「ねぇ、やっぱりやめようよそんなこと。あなたが誰にどういう理由で作られたのか知らないけど、そんなこと何にもならないよ」
ゆう「反論する。貴様が私を否定するのならば、それは貴様を破壊する理由にもなる。 そもそも勝負を申し込んだのは貴様だ、今更逃げるつもりか」
フローラ「そうじゃないよ!! もっとあなたにはもっと意味のあることをしてほしいの!!」
フローラはなんとかしてゆうに理解してもらいたくて、必死に訴えた。
ゆう「確認する。お前の目標はグランプリンセスになることだったな」
フローラ「? そうだけど…」
突然振られた質問に、フローラは首をかしげた。
ゆう「質問する。その目標に自己満足以上の意味が存在しているのか?」
フローラ「!!!!」
続けざまに放たれたゆうの質問に目を見開くこととなった。
ゆう「肯定したと判断する。お前が目的を遂行するのにそれ以上の意味を求めないのと同様、私は私の目的を遂行するのみ」
ゆうが一方的に会話を打ち切る中、フローラは体を抱きしめるようにしてガタガタと震え始めており、マーメイド達は必死に元気付けようとしていた。
マーメイド「フ、フローラ!! しっかりして!!」
スカーレット「お気を確かに!!」
トゥインクル「あ、あ、あんた、なんてこと言うのよ!!」
トゥインクルはゆうを睨み付けながら叫んだが、肝心の本人は淡々した返事を返すだけだった。
ゆう「否定する。私は事実を述べただけだ。自身の行動原理を自覚していなかったのはそいつ自身だ」
トゥインクル「くっ…」
必死に強がっていたものの、トゥインクルも先のゆうの言葉にはかなりのダメージがあった。
先日言われた、かつて自分がそうだった目標以外の可能性の否定という言葉と相まって、精神的にはかなり参り始めていた。
ゆう「宣告する。勝負だ」
マーメイド「ま、待ちなさい!! こ、こんな状態で戦えるわけが…」
フローラは完全に戦意喪失してしまっており、目がうつろになりかけている。
とてもではないが戦える状態ではないと訴えたマーメイドだったが、ゆうはバッサリと切って捨てた。
ゆう「否定する。先ほど通達した通り、ボディの修復は完了しているはずだ」
スカーレット「で、ですから、体調や怪我ではなくて…」
なんとか状況を理解してもらおうとしたスカーレットだったが、ゆうは冷徹な宣告を行ってきた。
ゆう「警告する。戦うつもりがないならば動くな。破壊に使うエネルギーの浪費が抑えられる」
トゥインクル「ぐっ… どうしてもやろうっての?」
歯噛みをしたトゥインクルに、ゆうは端的な回答を行った。
ゆう「肯定する」
そしてその回答とともに無表情に左手を親指・人差し指・中指の三本を立てて前に突き出した。
ゆう「チェインジ!!」
そう叫ぶと、突き出した左手の指を立てたまま、手の甲を内向きにして顔の前へと横向きに持って行き、人差し指と中指の間から赤い右目を光らせた。
ゆう「スイッチ・オン!!」
次の瞬間、黒い電流のようなものが火花をあげてゆうの全身を走り、一瞬ののちにその姿は変わっていた。
彼女の姿は、フリルのない落ち着いたデザインのロングスカートの黒一色のドレスとなっており、同じく黒一色の肘まである手袋とブーツを着用していた。
その黒さは抜けるような色の白い肌やプラチナブロンドのロングヘアと相まってより一層黒く、そしてどこか美しく光を放っていた。
デッド「バトルスタイルコードネーム、キュア・デッド。 破壊する、ターゲット プリンセスプリキュア」
非情な宣告とともに、デッドはデスサイズを構えて目にも留まらぬスピードで突っ込んでいった。
しかしその宣告が行われた瞬間、トゥインクル達はもはや条件反射に近い行動でとっさに目の前のフローラを抱えて大ジャンプしたため、振るわれたデスサイズが髪の毛を掠めたレベルでギリギリかわすことができた。
トゥインクル「あ、危なかった…」
マーメイド「危機一髪とはまさにこのこと…」
多少なりとも安堵したトゥインクル達だったが、直後壁を切り裂かれたことで轟音とともに崩れていった建物を見て血の気が引いた。
スカーレット「なぁっ…」
トゥインクル「ゲェッ…」
目の前の光景に呆然とした一同だったが、マーメイドがハッと気がついた。
マーメイド「!! デッドがいない!! どこに!?」
スカーレット・トゥインクル「「!!!」」
一瞬前まで崩れる建物の前にいたはずのデッドが姿を消しており、マーメイドの叫びを聞いてそのことに気がついた瞬間には既に遅かった。
デッドはトゥインクル達の頭上に飛び上がってきており、右手を左腕で支えるようにして狙いを定めていた。
デッド「警告する。よそ見をするな」
その警告とともに、デッドの右手のマシンガンが火を吹き全員撃ち落とされた。
トゥインクル「…ぐふっ」
マーメイド「ぐぁ…」
スカーレット「うぅ…」
受身も取れないまま地面に落下したトゥインクル達に対して、デッドは攻撃の手をゆるめることなく飛びかかっていった。
マーメイド「あうっ!!」
スカーレット「ゴフゥ…!!」
トゥインクル「ケボッ…!!」
一瞬で懐に入り込んだデッドは、プリンセスプリキュアを遥かに凌駕するパワーの攻撃を目にも留まらぬスピードで的確に急所に叩き込んでいった。
結果、トゥインクル達は回避どころか防御もまともにできないまま一方的に攻撃を受ける羽目になり、たちまちのうちにズタボロになっていき、デッドの両手も赤く染まり始めていた。
そんな仲間達の悲鳴を聞き、ようやく正気に返ったフローラだったが、その時には既に全員起き上がる力もなく地面に倒れ伏していた。
フローラ「み、みんな…」
目の前の光景に愕然とし、恐怖に震えつつも、フローラは必死になって叫んだ。
フローラ「もうやめて!! それ以上… それ以上はやらせな…」
しかし、言い終わる前にデッドが一瞬で距離を詰めて蹴りを放ってきたため、地面をゴム毬のように弾んでいくことになった。
フローラ「うぐぐ…」
全身に走る激痛に顔をしかめながらも、フローラは必死に立ち上がろうとしていた。
デッド「要求する。立て、ここまで簡単に終わってはつまらん」
フローラ「くっ、言われなくても…」
ふらつきながらもなんとか立ち上がったフローラを見て、デッドは満足そうに口角を上げた。
デッド「評価する。やはり多少は歯ごたえがなければ面白くない、無論お前達もな」
デッドの言葉に霞む目を必死に凝らすと、デッドの後方では肩で息をしながらも、お互いに支え合い立ち上がってくる仲間達の姿がフローラには見えた。
フローラ「み、みんな…」
トゥインクル「当然… この程度で…」
スカーレット「倒れるわけには… まいりません…」
マーメイド「フローラを… これ以上傷つけさせないわ…」
デッド「賞賛する。腐っても戦闘モードというだけのことはあるな」
ふらつきながらも立ち上がってきたプリンセスプリキュアを見て、無表情ながらもどこか嬉しそうに微笑んだデッドだったが、その言葉にフローラは敏感に反応した。
フローラ「違うよ… プリキュアの力は… ものを壊すためのものじゃない… 夢を守るためのものだよ!!」
デッド「反論する。お前達の自己満足を叶えるために邪魔なものを破壊するためではないのか?」
トゥインクル「んなわきゃないでしょ!!」
デッドの言葉にトゥインクルは噛み付いた。
トゥインクル「最初は私の夢以外どうでもいいって思ってたよ。でもね、みんなに会ってそんなんじゃないってわかったんだから!!」
マーメイド「その通りよ。私はまだ具体的なものは見つかっていない。でもだからこそ、多くの夢を守りたい。叶えようとしている人を守りたいのよ!!」
デッド「…質問する。そのための行為があの木偶の坊の破壊ということか?」
トゥインクル「ゼツボーグを木偶の坊って… まぁそういうことよ!!」
ゼツボーグを雑魚呼ばわりするデッドの言い様に多少戸惑ったトゥインクルだが、堂々と言い返した。
しかし、そんなトゥインクル達をデッドは鼻で笑うかの様に言い返した。
デッド「嘲笑する。そんな勘違いをしているとはな」
マーメイド「勘違いですって!?」
トゥインクル「どういう意味よ!!」
さすがにカチンときて言い返したが、デッドの続けての言葉に顔色が変わった。
デッド「回答する。お前達は目的以外の可能性を否定することを他者に押し付けているだけだ。現状を肯定することを是としそれ以外を認めずそれ以上のことをしていない、そんなこともわかっていないのか」
マーメイド「なっ!?」
トゥインクル「そ、そんなことは…」
目を見開き必死にデッドの言葉を否定しようとしたが、即座に言葉が出てこなかった。
スカーレット「そ、そうかもしれませんが、それでもディスダークの言う絶望の世界が正しいわけがありません!! 希望と夢に溢れたこの世界をホープキングダムの二の舞にさせるわけには…」
デッド「反論する。現状に変化をもたらすという意味では連中のしていることはお前達の行為よりも意味がある。結果として国が滅んだのならそれはその国が脆弱だっただけだ」
スカーレット「〜!!! い、言いたい放題…」
一度は絶望に負けてしまった身の上として、スカーレットはその言葉に咄嗟に反論できなかった。
フローラ「違うよ!! ホープキングダムは夢に溢れた美しい国だったんだよ。それをディスダークが夢を奪ったから…」
デッド「否定する。夢、すなわち目標が多様性に富んだ国だったというのならば、なぜすぐにそれが枯渇した。所詮その程度ということだ」
フローラ「違う!! ロボットのあなたにはわからないかもしれないけど、夢は守らなくちゃいけない大切なものなの」
デッドの言葉をフローラは必死になって否定したが、デッドは話を続けた。
デッド「否定する。お前の発言した通り、目標は多数ある可能性の一つならば、たとえ一つをなくしても、次を見つけることなど容易なはずだ。なぜたった一つの目標に執着する。 それに多く溢れているものならば、一つ一つの価値など数に反比例して軽くなるはずだ」
その言葉に、フローラは肩を震わせながら必死の思いで叫んだ。
フローラ「違う…夢は…夢は… そんな簡単に取り替えができる軽いものじゃない!!」
その叫びとともに、フローラはデッドを否定するかのように飛びかかっていった。
がむしゃらに繰り出されたフローラのパンチを、デッドは軽く首をひねって避けた。
デッド「?」
しかし、完全にかわしきることができず軽く頬を拳がかすめた。
フローラ「ウワァアアア!!!」
続けて放たれたフローラの蹴りを小さなバックステップで避けようとしたが、予想以上の伸びを見せた蹴りはデッドの胸に軽くヒットした。
その事実にデッドは無表情ながらもどこか嬉しそうに口元を歪めた。
デッド「賞賛する。以前より性能がアップしているようだな。そうでなければな」
そしてデスサイズを構えてフローラに向かって突っ込んでいった。
振るわれたデスサイズを全力のバックステップでギリギリかわしたフローラだったが、それもデッドの想定の範疇だった。
というよりもフローラが避けられるギリギリのラインでデッドが攻撃してきたらしく、振るったデスサイズの勢いを利用した回し蹴りが飛んできた。
反射的にガードを上げたフローラだが、デッドのパワーのことを失念してしまっていた。
フローラ「うぁあああ!!!!」
蹴りの直撃は回避できても衝撃までも防ぎきれず、フローラは大きく蹴り飛ばされた。
マーメイド・トゥインクル・スカーレット「「「フローラ!!」」」
フローラの叫びにトゥインクル達は一斉に飛びかかっていった。
そんな三人に対してデッドは右手の指のマシンガンを斉射した。
しかし、トゥインクル達は必死の身のこなしで弾丸を回避してフローラを救出した。
マーメイド「フローラしっかり!!」
スカーレット「大丈夫ですか?」
デッド「立腹する。 これまで全力を出していなかったとはな」
先ほどまでは回避すらできなかったはずの攻撃を事も無げに回避して見せたトゥインクル達に、デッドは静かな怒りを見せた。
トゥインクル「そんなんじゃない!! フローラを、友達を助けたかっただけよ!!」
デッド「理解不能。それと身体機能と何の関係がある」
堂々と言い切ったトゥインクルに対して、デッドは理解ができないというような言葉を返した。
マーメイド「…キュア・デッドあなたは確かに強い。そして私達に似ているのも否定しない。でも、あなたにはない力が私達にはある!!」
スカーレット「その通りです。私を闇から救ってくださった力、それがある限り私達は負けません!!」
デッド「了解した。ならばお前達の全力を見せてみろ。 だが私はそれを破壊する、死神として」
デッドは手近なところにいたスカーレットに対して、デスサイズを振りかざして一瞬で距離を詰めた。
スカーレット「なんの!!」
しかしスカーレットは回避するのではなく、あえて自分もデッドに対して向かっていった。
スカーレット(フローラが私を絶望の闇から救ってくださった。そのおかげで私はかけがえのないものを手に入れられました)
受けるダメージは覚悟の上で、スカーレットは両腕でガードするようにデスサイズの柄の部分を受け止めた。
スカーレット「クゥッ…腕が…」
折れはしなかったまでも、腕の骨にひびが入ったらしい痛みに顔を歪めたスカーレットだったが歯を食いしばってデスサイズを力の限り握りしめ、そのままデッドを全力で蹴り飛ばすことで、武器を奪うことに成功した。
しかし、吹っ飛んでいったように見えたデッドだったが、当たる直前自分で後ろに飛んだらしくダメージには殆どなっていなかった。
スカーレット「くっ、さすがに…」
悔しそうに歯噛みをする間もなく、デッドは左手のワイヤー型ロケットパンチを射出してきた。
トゥインクル「この!!」
スカーレット「トゥインクル?」
とっさにスカーレットの前に割って入ったトゥインクルが、ロケットパンチに殴られながらも、なんとかその拳を掴んでいた。
トゥインクル(モデルになるって夢以外どうでもいいって思ってた。でも、他のことにも目を向けられるようになったのはフローラのおかげだよ)
左腕を掴まれたデッドだったが、動揺することなくワイヤーを巻き取る力を利用して、トゥインクルに対して右拳を握りしめて突進していった。
トゥインクル「オリャアアア!!!」
そんなデッドの姿を見たトゥインクルは負けじと右拳を握りしめてパンチを繰り出した。
結果お互いにクロスカウンターの形になり、その威力にデッドとトゥインクルは大きく吹き飛ばされた。
もっとも、デッドの受けたダメージよりもトゥインクルのダメージの方がはるかに上であり、多少後ろに下がりよろめいただけのデッドに対して、トゥインクルは大きく殴り飛ばされた挙句、大の字になって倒れ立ち上がることもままならなかったが。
マーメイド「ヤァアアア!!!」
ダメージを受けたらしいデッドを見て、チャンスと判断し間髪入れずマーメイドが気合を込めて突撃してきた。
体勢を立て直すのが数瞬遅れたデッドはマーメイドを懐に入れてしまい、繰り出されたアッパーで顎を跳ね上げられた。
マーメイド(私は立派な人間になりたかった。でも頑張るほどに孤独になっていった。そんな私にフローラは友達として接してくれた)
大きくのけぞったデッドは、その崩れた体勢を利用して回し蹴りを放ったが、マーメイドはアッパーを放つと同時にヒットアンドウェイの要領で後ろに下がっていたため、かろうじてそれをかわすことができた。
回し蹴りが空振りしたことで、デッドの体勢はさらに大きく崩れることになり目に見える隙が生じた。
それを見たトゥインクル達は、力を振り絞ってデッドに掴みかかり、大きく投げ飛ばした。
マーメイド・トゥインクル・スカーレット「「「ヤァアアアア!!!」」」
だがデッドは上空で一回転してあっさり姿勢を立て直すと、左膝を折り曲げた。
マーメイド「!! あれは!!」
スカーレット「させません!!」
左太ももからミサイルが発射されると判断するや否や、スカーレットは反射的にハナビキーを取り出しスカーレットバイオリンにセットした。
スカーレット「ハナビ!! プリキュア・スカーレットスパーク!!」
バイオリンの弓から吹き出した炎は一直線にデッドに向かっていき、発射直前だったミサイルを暴発させた。
デッド「!!!」
偶然とはいえ、自身のミサイルが発射直前に暴発したデッドは爆炎に吹き飛ばされるような形になり、さらに上空へと打ち上げられていった。
プリンセスプリキュアの必殺技の直撃にも難なく耐えたデッドも、自分自身の武器の暴発には耐えられず、コスチュームに加えて人工皮膚が多少破れ内部メカニックがむき出しになっていた。
デッド「ダメージレベル2… 戦闘続行は可能… だがなんだ? 計算した動きを超えている…」
受けた損傷を確認し、戦闘可能であると判断したデッドだったが、計算を超えるプリンセスプリキュアの戦闘力に困惑し始めていた。
そんなデッドに対して、フローラは大ジャンプをして上を取りつつ、ドレスアップキーをパフュームにセットした。
フローラ「エクスチェンジ!! モードエレガント!!」
モードチェンジするや否や、間髪入れず渾身の力を込めた。
フローラ「舞え、花よ!! プリキュア・フローラル・トルビヨン」
全力を込めただけあり、普段よりもはるかに大量の花びらが螺旋状に発射された。
そして、がむしゃらに放ったためほとんど狙いもつけられなかったにもかかわらず、デッドの人工皮膚が剥離し内部メカニックがむき出しになった箇所にたまたまピンポイントで命中し、デッドのボディを貫いた。
デッド「!!!!」
偶然にクリティカルヒットしたとはいえ、この一撃には流石のデッドも参ったらしく、全身から黒い火花のようなものが噴き出し始め、バチバチと音を立て始めた。
フローラ「…や、やった?」
肩で大きく息をしながら、火花を噴き出しながら目の前をゆっくりと落下していくボロボロのデッドを見て、フローラは信じられないというようにつぶやいた。
そんなフローラに対して、デッドは声をかけた。
デッド「賞賛する」
フローラ「えっ?」
デッド「お前達は可能性を切り捨てたのではなく、ありえたはずのすべての可能性を一つのものにつぎ込んだのだな…」
フローラ「そ、そうなのかな?」
夢を馬鹿にされた怒りから、ただがむしゃらに攻撃しただけのフローラは今のデッドの言葉を素直に肯定できなかった。
デッド「通達する。お前達はやがて自身の目標以上のものを手に入れられるだろう。計算を超えるだけの可能性とともに進み続けるのならば」
フローラ「デッド…」
デッドのかけた言葉にフローラは自分の中の怒りが急速に薄らいでいくのを感じた。
デッド「感謝する。私を倒したのがお前達でよかった」
そんな優しくそして充実したような言葉とともに、デッドは地面に向かって落下していった。
フローラ「!!!」
その光景にフローラは慌てて手を差し出したが、デッドは最後の力を振り絞るかのように右手のマシンガンを発射し、その差し出された手をはじいた。
フローラ「デ…」
そのまま穏やかな笑みを浮かべつつデッドは地面に止まっていたトラックの上に墜落した。
フローラ「デッドー!!!!」
そのフローラの叫びも、直後に起きた大爆発の轟音にかき消された。
私立 ノーブル学園 女子寮 はるかとゆいの部屋
ゆい「そうですか… やっぱり四季さんと… それで、皆さんが勝ったってことなんですね…」
帰ってきたはるか達に事情を聞いたゆいだったが、素直にプリキュアの勝利を喜べず暗い表情で俯いてしまった。
きらら「まぁ…ね。勝ったっちゃ勝ったんだけど…」
トワ「素直に喜べませんわ…」
勝利できたのもほとんどたまたま。
実力では完全に負けていた。
それだけならまだしも…
みなみ「結局私達は彼女に対して明確な答えを何一つ返せなかった…。自分達を否定されるのが怖くて、力で黙らせた形になってしまったわ…」
キュア・デッド 四季ゆうははるか達に対して何度も問いを投げかけてきた。
人間のくせに機械のようにすべての可能性を切り捨てているのかと
お前達のしていることにどれだけの意味があるのかと
自分の正義を他者に押し付けているだけではないのかと
夢というものの価値とはどこにあるのかと
それらすべてに対して、ただ違うと否定しただけではっきりとした答えを返せなかった。
それだけでなく、答えを返すことなく力に訴えた。
まるでわがままが通らなかった子供が、癇癪を起こしたかのように…
きらら「…プリンセス失格かな、私ら」
沈んだ空気の中、きららがポツリとつぶやいた。
はるか「…わからない。でも…」
暗い空気の中、はるかは絞り出すように話し始めた。
はるか「私は進むことをやめないよ。絶対夢を叶えてみせる」
ゆい「はるかちゃん…」
はるか「わかってる。それで、すっごく辛い思いしたりさせたりするかもしれない。それでも夢を叶えるために、ううん、そのもっと先にあるものを目指して進む」
みなみ「はるか…」
きらら「はるはる…」
はるか「それが正しいからとか意味があるからとかじゃなくて、私が本当にやりたいことだから」
パフ「パフゥ…」
アロマ「ロマァ…」
トワ「…」
はっきりと言い切ったはるかに、シャムールはパチパチと拍手を送った。
シャムール「OK!! 合格よん。影のプリンセスと出会ったことはいい刺激になったみたいねん」
きらら「まぁね。世の中きれいごとだけで回らないってのは仕事柄知ってるけどさ…」
トワ「同じ暗いものでも影は絶望の闇ではありません。こうして光と同じように希望の素晴らしさを再認識させてくださいました」
みなみ「ええ、あの子に恥じないよう頑張りましょう。これから先、ディスダークとの戦いはもちろん夢を追っていく中でも、大きな絶望が迫ってくることがあるかもしれない。けれど決して夢をあきらめないと」
はるか「うん、絶対に負けないよ!! ゆうさんが教えてくれたもの、私達には計算では計れない大きな可能性があるってことを…」
その言葉に、全員力強く頷き改めてこれから先のことを心に誓った。
そしてはるかは感謝の思いを込めて天井を見上げた。
はるか(約束する。私達絶対に忘れない、夢を諦めないよ。ありがとう、ゆうさん…)
?????
「「キャアアア!!!」」
二人の少女が悲鳴とともに大きく吹き飛ばされていた。
その少女達は二人ともツインテールのヘアスタイルに赤を基調としたドレスのようなコスチュームに身を包んでいたが、一方的に攻撃を受け続けた結果、髪はボサボサに乱れコスチュームも泥だらけのボロボロになっていた。
「うう…強い…」
「くぅっ…この力、魔法じゃないわ」
地面に倒れ伏しなんとか立ち上がろうとしていたが、二人とも相当のダメージを受けていることは明らかだった。
「す、すごい力モフ…」
「そんな…」
そんな二人の少女達の戦いを物陰から見ていたくまのぬいぐるみと小さな妖精が驚愕の声を上げていた。
「い、いったいなんでこんなことするんですか? 目的はリンクルストーン? それともはーちゃん?」
二人の少女のうち金色の髪をした少女が、自分達に攻撃を仕掛けてきた目の前にいるプラチナブロンドのロングヘアの少女に向かって問いを投げかけた。
「回答する。お前達がプリキュアだからだ。私はプリキュアを破壊する」
しかし、その少女は淡々とした返事をするだけだった。
「プリキュアを破壊? なんなのよあんたは!?」
当然というべき疑問を投げかけた紫の髪の少女だったが、当の少女は全く感情のこもらない赤と青のオッドアイで倒れ伏している二人を見つめると、淡々と名乗った。
「通達する。私はプリキュアを破壊する死神であり、影のプリンセスと呼ばれたこともある。私の認証IDコードは…」
コズミックプリキュアAfter
Shadow Princess
終