あぁ……空が青いです。
「おーい。いい加減に現実を見てくれないか?」
何て酷い奴なんでしょうか、常夫は。現実を見ろだなんて。
しかし、常夫が言うようにいつまでもこうしている訳にもいきませんか。
「はぁ……分かりましたよ」
さて。私は今かほさんに言われたケジメを付けるため戦車道における聖地――東富士演習場にやって来ています。
相棒であるStrv.103――通称Sタンクと共に。
常夫はオマケみたいなものです。
「しかしお前も大変だな。お義母さんの命令で花嫁選びの試合をやる事になるなんて」
「花嫁選び等ではありません!!ただ私との交際権が賭けられているだけです!!」
「……どっちにしろ、ほとんど一緒じゃないのか?」
……それを言わないで下さいよ。
はぁ、頭が痛い。ケジメを付けてもらうとは言われましたが……まさかこっちのケジメと事を絡めてくるとは。
時間も機会もあったのにいつまでも相手を決めない貴方が悪いのよ。と、かほさんには言われましたが……あの方は絶対に面白がってやっているだけです。
黒い笑みを浮かべながら相手は見繕っておいたから。とか言ってましたし。
「それにしても4時間逃げ切ればお前の勝ちとはいえ、この試合設定は少々きつくないか?」
「まぁ……それなりに」
何せ対戦相手がこんな感じですからねぇ。
大洗女子学園代表
Ⅳ号戦車・駆逐戦車ヘッツァー・B1 bis・ポルシェティーガー。
聖グロリアーナ女学院代表
チャーチル歩兵戦車・マチルダ歩兵戦車・クルセイダー巡航戦車・トータス重駆逐戦車。
サンダース大学付属高校代表
M4シャーマン(75mm砲搭載型)・M4A1シャーマン(76mm砲搭載型)・シャーマンファイアフライ×2。
アンツィオ高校代表
P40重戦車・CV33カルロヴェローチェ(20mm対戦車ライフル搭載型)×2・M40セモベンテ。
プラウダ高校代表
T-34/85×2・KV-2・IS-2。
黒森峰女学園代表
ティーガーI・ティーガーII・パンターG型×2。
知波単学園代表
九七式中戦車(新砲塔)チハ×2・九五式軽戦車ハ号×2。
継続高校代表
BT-42・BT-5・T-34/76・ティーガーII。
大学選抜代表
センチュリオン×4。
自衛隊代表
10式戦車×4
文部科学省代表
ヤークトパンター×4
何だかみんなのヤる気が伝わってくるような気がして怖いです。
特にダージリン君なんて私が手配したトータスを投入してきていますし。
というか、蝶野一尉や高島君まで参戦してくるなんて……どうなっているんでしょうか。
「見れば見るほど厳しいよな。1チームに付き4輌までと言っても11チームがエントリーしてるから44対1。それに残り1時間になってからの参戦にはなってるけど自衛隊代表の最新鋭戦車――10式戦車を4輌も相手にしないといけないし……勝算はあるのか?」
「もちろん。仮にも西住流の元師範代ですよ?この程度で負けていたらやってられませんよ。……というか負けられません」
「……モテる男は辛いねぇ。で、一番聞きたかったんだが何で僕がSタンクに同乗する事になってるんだ?」
「ハンデです」
「ハンデ?」
「えぇ、私が本気を出すとつまらないからとかほさんが」
戦車道の事となるとあの方は本当に自分が楽しめるかどうかでしか物事を考えなくなりますからね。
困ったものです。
「あぁ……そういう事か……お義母さんもお人が悪い」
「本当にですよ」
「おっと。喋っている間にそろそろ試合開始の時間だぞ」
「では乗り込みましょうか」
ふむ。少々気合いを入れますかね。
「あぁ……って、その前に確認なんだが。本当に積み込むのは榴弾が4発と発煙弾が36発、空砲が10発でいいのか?」
「はい。元より逃げるだけですし戦後戦車の大砲を攻撃に使うのは卑怯ですからね。まぁ、流石に10式戦車には榴弾を使わせてもらいますけど」
「それなら以前の時みたいに砲を旧式の物に変えれば良かったのに。というか、装甲もほとんど外しているから防御力的な意味合いでは同等なのにこれじゃあハンデが過ぎるんじゃないか?」
「そうかもしれませんが……ま、何とかなるでしょう」
「……お前がいいならいいけど」
そんなに不安そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。
「じゃあ、始めましょうか」
「了解」
では、久し振りに頼みますよ。相棒。
「よいしょっと。ふぅ……各部チェックはどうですか?」
「問題なし」
「そうですか。それでは……本当の戦車道というモノを皆に教えてあげましょうかッ!!」
うーん。流石に昂って来ましたね。
久しく感じる事の無かった感覚ですが……この感覚はやはり心地いいです。
「お前って本当に戦車に乗ると性格変わるよな」
「放っといてください」
さぁ、やってやりますよ。