みほside
お祖母ちゃんがくれたこのチャンス……絶対に物にしないと。
「みんな準備はいいですか?」
「あぁ、いつでも行けるぞ」
「準備万端です、西住殿」
「私も大丈夫です」
「えへへ〜この試合に勝ったらイケメンで優しい歳上の彼氏ゲット〜ちょっと年の差がありすぎるような気もするけど大人の彼氏っていうのも良いよね〜えへへ、楽しみだなぁ〜」
あれ?沙織さんは何を言っているのカナ?
「……沙織さん?」
「え?なに〜みぽり――ひぅ!?」
「準備は大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ!!ごめんね!!ちょっと浮かれちゃってて!!(顔が!!みぽりんの顔が!!)」
「そう……気を付けてね?」
「う、うん……ほっ」
「でもね、沙織さん」
「は、はい!!」
「おじさんを独り占めしようとするのはいけないと思うんだ」
「ヒィッ!!」
沙織さんとはお話する必要があるかも。
試合前だけどちょっとⅣ号の車内から出て向こうの茂みで――
「西住さんの言う通りだぞ、沙織。この試合で廉太さんの車輌を撃破出来れば廉太さんとの交際権をもらえるが、それはあくまでもチームに対しての話だ。チーム内の誰が交際権を得るかはまた別の話なんだからな」
「そうですよー武部殿。抜け駆けはダメであります」
良かった。麻子さんと優花里さんはちゃんと話が分かってるみたいで。
「ご、ごめんなさい。反省してます」
うん。沙織さんも分かってくれたみたいだからお話はもういいかな?
「フフッ、皆さん楽しそうです」
「楽しそうって……あのね、華。私は今まさに命の危険に晒されていたんだけど……」
「フフフッ」
「笑って誤魔化された……やだもー!!」
さてと、後は試合が始まるのを待つだけだよね。
「そういえば西住殿、我々はこの戦いどう動くのですか?」
「えっと、とりあえず……会場の中央付近まで進んで後は様子見かな」
「え?私達は動かないの?みぽりん」
「うん。他のチームの動きを見てから動こうと思って」
4時間もある戦いで最初から飛ばしていたらバテて肝心な時に動けなくなっちゃうし。
それに体力と気力が十分にあるおじさんを捉え(狩)るのは難しいから弱った頃合いを狙わなきゃ。
「で、でも、私達と蝶野さん達以外の36輌で攻められたらあっという間に辻さんが撃破されちゃうんじゃ……」
「大丈夫だよ。沙織さん。おじさんはそんなに柔じゃないから」
「そうなの?辻さんって何だかちょっと気弱そうな感じだし、あんまり強くないんだと思ってたんだけど」
「えっとね……多分だけど、おじさんに勝てるのは各流派の家元クラスの人だけだと思う」
あのお母さんだって苦戦するって言ってたし。
「え゛……そんなに強いの辻さんって!?」
「そんな事も知らなかったのか?沙織は」
「廉太殿の強さは戦車道界隈では有名ですよ?今でこそ戦車道から遠退いているために話題にはなりませんけど昔は常勝不敗のSタンク乗りとして伝説になっていたぐらいですし、異名も沢山あって……無幻機動とか。それに100輌潰しや跳弾での2輌同時撃破なんて逸話もありますね」
あーそう言えばそんな話もあったっけ、すっかり忘れてたなぁ。
だって昔の話をしようとするとおじさんいつも頭を抱えて蹲っちゃうから。
そのせいでウチではおじさんの昔の話はタブーみたいになってたし。
「へぇーそうだったんですか」
「で、伝説……」
あ、そうだ。あの事を沙織さんに伝えておかなきゃ。
「それとね、沙織さん。これも知っておいて欲しいんだけど……おじさんは戦車に乗ると性格が変わるから沙織さんの知っているおじさんが相手だと思わない方がいいかも」
「戦車に乗ると性格が変わるって、流石にそれは冗談でしょ?みぽりん」
冗談じゃないんだけどなぁ……。
『――……本当の戦車道というモノを皆に教えてあげましょうかッ!!』
ほらね。
「……うん。ごめんね、疑ったりして」
何か沙織さんが影を背負ってるけど大丈夫かな?
あ、試合開始の合図だ。
「それじゃあ、気合いを入れて行こうね。みんな」
「あぁ」
「もちろんです!!」
「分かりました」
「うん!!分かった!!」
絶対に逃がさないからね?おじさん。