お、試合開始ですね。
「始まったな。……これからどうするんだ?」
「とりあえず市街地に隠れて時間を稼ぎましょう。Sタンクは車高が低いので下手な所に隠れない限り見付かる事はないでしょうし」
「そうだな」
序盤から正面切って戦うのもありですが、何かあった場合に備えて体力を温存しておくに越した事はないですからね。
「では、移動――」
『ファイアーッ!!』
え?
「……なぁ、今の掛け声は何だと思う?」
「……さぁ?」
何か無線機からケイ君の勇ましい声が聞こえたんですけど。
向こうで何かあったんでしょうか?もしかして同士討ちでも始め――って!!このロケット推進音はまさかッ!?
「た、対ショック姿勢!!」
「へ?」
あぁ、もう来ました!!M8ロケット弾の嵐が!!
「ッ!?うわぁああああッ!!」
「ぬおぉおおおおッ!!」
何で私がこんな目にー!!何で砲撃の嵐を浴びねばいけないんですかー!!
「……はぁはぁ」
「……ふぅ」
お、終わったんですかね?
……うわぁ、辺り一面焼け野原になってますよこれ。無傷で済んだのが奇跡です。
いや……流石に無傷とはいきませんでしたか。至近弾で右の履帯が切れてしまっています。
まぁ、直撃しなかっただけマシですか。
しかし、初っぱなからとんでもない目に合いましたね。
『た、隊長?今さらなんですけど試合の開始直後に不意討ちでロケット弾なんて使って良かったんですか?』
『いいのよ、アリサ』
『しかし、これでは隊長がよく言っているフェアプレイじゃないような……』
『アリサ。これは戦車道の試合じゃないの……戦争よ。何が何でもどんな手段を使ってでも勝つの。いいわね?』
『イ、イエス、マム!!』
……ケ、ケイ君?え?戦争?
「なぁ、1つ言っていいか?」
「……何です?」
「完全に殺りにきてるじゃないか!!」
「私も予想外ですよ、こんな展開は」
まさかシャーマンの派生型の1つであるカリオペの装備を引っ張り出して来るなんて。
使ってくるとは思っていなかっただけに不意を突かれてしまいました。
「ここに居たら巻き添えになって僕まで殺される!!僕は降りるぞ!!」
「あ、この!!逃がしませんよ!!こうなったら死なば諸共です!!」
「嫌だー!!頼むから離してくれー!!僕はまだ死にたくないんだー!!」
「大丈夫です!!この世界に硬◯戦はありませんから!!死にはしません!!だから早く通信手席に戻って下さい!!」
至極安全な世界なんですから最後まで付き合ってもらいますよ!!
「意味不明な事を言ってないでその手を放してくれー!!というか、その言い方だと死なないだけで死にそうな目には合うんじゃないか!!」
「うっ!?それは、その……あ。そうだ!!貴方としほさんの結婚の時は私が骨を折ってあげたじゃないですか!!私があの時どんな苦行に耐えたと思っているんです!!」
「その件についてはありがとう!!……だが、それとこれとは話が別だー!!」
「えぇい!!いい加減に諦めて下さい!!」
おっさん2人で無駄に争っている暇なんて無いんですよ!!
早く履帯を直して移動を――また推進音!?
「うへっ!!」
「ひぃっ!?」
今度は2発だけでしたが……威力が先程とは桁違いでしたね。
って、あーあ。今度は左の履帯が切られてしまいました。不味いですね、完全に行動不能です。
……しかし、今度は誰がロケット弾による攻撃を行ったんでしょうか?
『手応えなかったってさ、ミカ』
『残念だったね』
『ま、そういう事もあるさ。風は気紛れだからね』
あ、まさか……ミカくんの所のBT-5って本当は420㎜の大型ロケット弾を2発搭載しているRBT-5だったりします?
……はぁ、この分だとみんな車輌に何らかの改造を施していると見ておいた方がいいですね。
そうしないと予想だにしない攻撃を受けかねません。
全く、この先……一体どうなるんでしょうか。