さてさて。あらんかぎりの技術を駆使しつつ追ってくるみほちゃん達との追いかけっこが楽しくて夢中になっていた所、いつの間にか30分も経ってしまっていました。
……通りでハンドルを握る手が震えている訳です。
歳は取りたくないものですね。若い頃ならまだまだ余裕だったはずなんですが。
『麻子さん。もう少ししたら仕掛けるので、合図したらSタンクにぶつけるつもりで走ってもらえますか?』
『分かった』
まぁ、平地で逃げ回って雨霰と砲弾の雨を浴び続けるよりはマシかと思って起伏が激しい丘陵地帯に逃げ込んだせいでもあるんでしょうけど。
『華さんと優華里さんは今の内におじさんの回避の癖を掴んでおいて下さい。その時が来たら必殺の一撃をお願いします』
『分かりました』
『了解です!!』
『沙織さんはその調子でそのまま機関銃でおじさんにプレッシャーを与え続けて下さい』
『分かったよ、みぽりん!!』
しかし、丘陵地帯に逃げ込んだお陰で思惑通りに砲弾の雨は浴びずに済んでいますが、代わりに機関銃の弾をこれでもかと浴びているんですよね。
装甲を減らしているせいでこれが地味に痛いです。
それに加えて……。
『オラオラー!!』
『食らえ!!』
「うーん。偏差射撃の腕前は申し分ありませんが、ウィークポイントに弾を当てなければ意味はありませんよ?ですから、もう少し距離を詰めてから撃つか相手の癖を読み取り機動予測を的確にするように」
『この状況で敵に助言とか、さすがおやっさん。余裕っすねぇ!!オラァ!!』
『クッソー!!どうやったらそんな動きが出来るんすか!!』
ペパロニ君とカネロリ君がタンケッテの小回りが効く車体性能を生かしつつ、連発出来る20mm対戦車ライフルの弾丸を情け容赦なく叩き込んでくるのも痛いです。
まぁ、エンジンや足回りなどの重要区画には弾が当たらないように立ち回っているので今のところ戦闘行動に支障はありませんが。
っと、不味いです。
もしかしてとは薄々感じていましたが、やはり機関銃の弾幕で誘導されていた様ですね。
まんまと丘陵地帯を抜けて平原地帯に出てしまいました。
『チャンス!!エンジン規定はあるけどモーターは無いもんね!!』
『リミッター外しちゃいますわよ!!』
おっと!?好機とばかりに追っ手集団からポルシェティーガーとクルセイダーが突出して一気に距離を詰めて来ました。
このままでは追い付かれてしまいますので、こちらも奥の手を使いましょう!!
「スイッチ、オン」
『あ、しまった!?』
『なんですのあれは!?』
フハハハッ!!遅い遅い!!
Sタンクは2種類のエンジン(ディーゼルエンジンとガスタービンエンジン)を搭載している唯一無二の戦車!!
通常は車体右側のロールス・ロイスK60ディーゼルエンジンのみで走行していますが、今のように必要に迫られた場合は車体左側のボーイング502ガスタービンエンジンを併用する事によって高速走行を可能とするんです!!
『不味い、このままじゃ!!っ、あ、あちゃ〜……』
『逃がしませんわよ!!っ、おろろろろ!?』
あらら、スピード勝負を始めようとしたら2輌ともエンジンから黒煙を吹いてしまいました。
あぁ、みるみるうちに失速していきます。
ここからが面白い所だったのですが……あの様子では戦線に復帰するのにも時間が掛かるでしょうし。うーん、残念です。
「不本意ながら勝負ありのようですね。さて、追っ手も居なくなりまし――」
『逃がさないよ、おじさん』
「え?」
そ、そんな!?距離を詰めて来たのがポルシェティーガーとクルセイダーだけだと思っていたら、その2輌の後ろにスリップストリームでみほちゃん達がみんな付いて来ているなんて!!
しかもⅣ号とヘッツァーがやけに距離を詰めた状態で――って、まさか!!
『会長!!麻子さん!!お願いします!!』
『ほーい。河嶋ーやっちゃってー』
不味い!!ここで空砲ブーストアタックですか!?
『了解です!!せいッ!!』
来るッ!?
「……あ、あれ?」
えっと、一応空砲の音はしたんですけどね。
『『『『……』』』』
『……桃ちゃん……目の前なのにどうやって外したの?』
『河嶋、帰ったらあんこう躍りな』
『そ、そんな!?会長〜!!』
なんとも締まらない結果になりましたね。しかし、劇場版とかでもそうでしたが河嶋君は魔法でも使えるんですかね。
砲身の向きからは飛ばないであろう方向に砲弾を飛ばせるという意味で。
『あぁ、もう!!私達がやるから退きなさい!!西住さん、行くわよ!!』
『お願いします!!みどり子さん!!』
っと、危ない!!
「ほわっ!?」
『チッ、避けたか』
『撃て!!』
「っ!?……やってくれますね、みほちゃん」
『やりました!!直撃です!!』
『でも、まだ動いています。……次こそは仕留めます』
体当たりを避けるので精一杯だったせいで、回避がギリギリ間に合わずガスタービンエンジンに砲弾が直撃してしまいました。
被弾するなんて久しぶりの事でワクワクしてしましたが……これは普通に不味いです。
っと、足回りにも違和感が。
「常夫!!」
「ごめんなさいごめんなさい……あれ?僕は何を」
ようやく正気に戻ってくれましたか。
逃げ回っている間ずっとフラッシュバックに苦しむなんて過去にどんな折檻を受けていのやら。
知っていましたが……しほさん恐い……。
「ちょっとばかり操縦で手一杯なので後方警戒を頼みます」
うーん……ダメですね、ガスタービンエンジンが完全に止まってしまいました。
はぁ、せっかく逃げ切れるかと思ったのですが手負いの状態で追いかけっこ再開です。
「分かった。あっ、なぁ……悪い知らせがあるんだが」
「……どんな?」
この状況で更に悪い知らせとか聞きたく無いんですけども。
「Ⅳ号戦車の後部に支持架が取り付けてあってその先に爆薬が積んである。多分Ⅰ号戦車が障害物を除去するのに使っていた爆薬の投下装置をⅣ号戦車用に手直しした奴だ」
あぁ……追いかけっこが始まる時にドッカン作戦とかみほちゃんが言っていましたし、大方仕掛けた爆薬の元に私を誘導して吹き飛ばすつもりで用意していたモノでしょう。
……完全に殺る気じゃないですか。