東京新星市奇譚   作:内原

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空中庭園に忍び寄る影

 

※※※※※

 

 夜。N◎VAアサクサ。スカイツリー前。

 生憎、夜空は曇っているが、N◎VAスカイツリーの下には、大勢の報道陣と野次馬が詰めかけている。招待された斑鳩第二小学校の生徒、そして案内役のドロイドは、既に最上階の展望フロア“空中庭園”に向かっている。

 三人の男たちが警備員の制止を振り切って、最上階へのエレベーターに乗り込む。

 

 高速で上昇するエレベーターは、外側が全面ガラス張りで、N◎VAの夜景が良く見える。上を見上げると――スカイツリーの外壁を陽炎のような揺らめきが高速で上がってゆく――熱光学迷彩だ!

 

※※※

 

 “空中庭園”は壁だけでなく、床や天井の大部分も透明な素材で作られた、まるで空中に浮かんでいるようなフロアだ。

 子供たちが歓声を上げて周囲を見回し、それを引率の教師や案内役のドロイド、少人数の報道陣が見守っている。

 突然、外周の強化ガラスが砕け散り、子供たちが悲鳴を上げる。

 熱光学迷彩が解除され、多脚型のヴィーグルと、登攀用ワイヤーを装備した戦闘部隊が現れる。中心に立つのは“エクリプス”から降り立った黒衣の女。ブラックウィドウ。その手にはウィルス兵器“ワンダリングスパイダー”の入った筒を持っている。

 背後でエクリプスを操る“レッドバック”、そしてブラッドリーもいる。

 ――そして、エレベーターが登り切り、扉が開く。

 

※※※※※

 

 “空中庭園”にたどり着くと、ブラックウィドウからの挨拶がとんできた。

 

「おやおや、招かれざる客、といったところですわね」

「いったいどういうお仲間なのかしら?」

「ここまで辿り着いたのはお見事ですけれど、もう、こちらの計画は止められませんよ」

 

「それはどうかな?これからばらまく時間など、与えたりはしない」

 

 正宗がタンカを切ったが、ブラックウィドウは気にもせず

 

「さっ、始末は任せましたよ。ブラッドリー」

 

 ブラッドリーに指示を出した

 

「日ノ守……なぜお前が」

 

「そりゃあテロは未然に防ぐのが一番だからね~。わかっているだろ~? ブラッドリー」

 

「もう、俺は戻れないんだ」

「何十年も、毎晩夢を見るんだ。父さんと母さんが殺された時の夢を……もう無理だ。俺にはもう、この都市には耐えられない」

 

 ん? 日ノ守とブラッドリーの会話は成り立っているようでかみ合っていない。おそらく、中にたまっていたものを吐き出しただけで、周りの声は届いていないということか。

 ブラッドリーと日ノ守の会話は、ブラッドリーが意思を固めてMP21(オートマチックピストル)の引き金を引くことで打ち切られる。カブトワリの神業『とどめの一撃(クーデグラ)』だ!

 

 カブトワリは狭義でスナイパー、大雑把に言えば射撃武器使いだ。ガードを(カブト)撃ち抜く(ワリ)使い手なのだから、その能力は恐ろしいの一言だ。代表例なら、13の人とか、某泥棒3世の相棒とか、人間災害とか、3秒で昼寝が出来る少年とかかな?

 神業の効果はシーンに登場しているひとり(トループなら1グループ)に任意の肉体ダメージを与えることだ。しかも、このダメージは神業でないと防ぐことも治療することもできない。ちなみに、似たような効果を持つ神業にカタナの『死の舞踏(ダンス・マカブル)』がある。こちらは近接白兵型だが、イメージはコンニャク以外をすぱすぱ切る某3世の協力者かな?

 

 しかし日ノ守は()()()()()()()()()()身体を半歩ずらして銃弾を避けた。なるほど、『守護神(ガーディアン)』か。それなら今の避け方も理解できる。

 

「手下に任せて軍師気取りか。安心しろ。お前には閻魔の裁きが待っている」

 

 正宗がホルスターからR6u(リボルバー)を抜き出すと、ブラックウィドウに向けて構える。

 

「……おかしな人たちですね。いいでしょう、貴方たちを片付けてから、この不浄な都市を丸ごと“毒”で浄化してさしあげます」

 

「里志を攫って何を吹き込んだ」

 

「ああ、二宮里志さんね。優勝な研究者でした。娘さんのために自作自演でヒーローになる、そんな“毒”でゆれて……思ったより抵抗されたので、お薬もだいぶ使いましたけどね?」

「おかげで、“ワンダリングスパイダー”は進化しました。この都市の人間を殺す毒にね」

 

「スラムだけでなく、N◎VAの全市民を殺すということか? ブラッドリーに嘘を言ったという事になるぞ?」

 

「ええ、もちろん、スラムだけなんてわけがありません。全員ですよ、すべて殺します。根こそぎね……無駄ですよ、その男はもう、洗脳されています。私たちの命令しか反応しませんよ」

 

「ああ、こちらの言葉は届かないだろうな。だが、真実(トゥルース)()()()()()()()()?」

 

「……馬鹿な。そんなはずは……嘘だろ。日ノ守……俺は……」

 

 語られた内容を聞いてしまったブラッドリーは銃を構えていられず、頭を抱えて呻き始めた。

 

「やっと自分の声が聞こえるようになったようだね~。ほら。周りの子供たちを連れて脇に隠れててね~。まだ、『普通の一般市民』を守らなきゃいけないんだから~」

 

 これは、イヌの神業『制裁(バニッシュ)』だな。イヌは法の番人であり、法曹界の関係者であることを表すスタイルだ。裁判官、検事、弁護士なども含まれる。が、この(N◎VA)では警察関係者を指す。その神業はキャラクターひとり(トループなら1グループ)に任意の社会戦ダメージを与える。または、社会戦ダメージをひとつ治癒することができる。対象に法の裁きを与えることが出来るのだ。

 今回は対象(小学校の皆さんたち)をここから退場させることが目的で、ブラッドリーはその先導役かな? まあ、ブラッドリーが残っていても、薬の後遺症で判断に遅れが出るだろうから、子供たちを逃がすついでにブラッドリーにも、と言ったところか。

 

「信じられませんね……友情という名の、解毒剤……」

「いずれにせよ、貴方たちを皆殺しにすれば、計画は完遂できます!」

 

 ワンダリングスパイダーは呆然としながらもすぐに立ち直り、戦闘員たちに声をかける。

 

「……総員、戦闘配置」

 

 それに答えるように、“エクリプス”から声が聞こえる。それに合わせて機銃もせり出した。

 

「ちょうどいい。このまま終わったのでは退屈だと思ってました」

 

 機体からの声が終えるのと同時に熱光学迷彩がふたたび起動する。それを見て、逃げ出していた子供たちは驚き、辺りは悲鳴などで騒然としだした。

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