東京新星市奇譚   作:内原

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エンディング

 戦闘は終わり、危機は去った。

 遅まきながらも、上階での騒ぎに気付いた警備員や警官隊(イヌ達)が上がってきて、戦闘員の逮捕や周囲の取りまとめをしている。

 その様子を見ながら、正宗が僕たちの方に尋ねてきた。

 

「さて。これで区切りはついたわけだが、二人はどうする? 俺はクリスにプレゼントを渡してくるが?」

 

「自分はここの片付けとブラッドリーの落としまえかな~? まあ、悪いようにはしないつもりだよ~」

 

「それじゃあ、ここで解散かな? 僕はこっそりと退散することにするよ」

 

 僕たちが答えると、三人で頷きあい、それぞれの方へ動き始めるのだった。

 

 

※※※※※※

 

 

 日ノ守はテロリストたちを拘束している警官隊たちの傍に寄る。

 そこには、やはり拘束されているブラッドリーの姿もあった。

 彼は日ノ守を見ると、全てを悟ったかのような目をして、話し始めた。

 

「俺は間違った。自分の悪夢を、他人を傷つけて解決しようとした。俺は裁かれなければならない(バニッシュ)

「お前はいい警官だよ、日ノ守。こんな俺が言えた義理じゃないが、俺の分まで、この都市を……頼む(ファイト!)

 

 ブラッドリーは自分自身を『guilty―有罪』とし、己を闇に消える存在だと規定した。そのうえで日ノ守にミストレスの神業『ファイト!』を日ノ守のイヌに使い、その裁きが妥当かを尋ねた。

 

 ミストレスは信頼と愛情の象徴だ。イメージは部下に信頼される上司、“あねご”肌の女性、バーのママ、統率力の高い指揮官などだろうか。その神業の効果は他のキャラクターが持つ神業の使用回数を1回増やす。これは、すでに使用されていようと、まだ使われていなくともかまわない。もちろん、アクトの終了後に持ち越すことはできない。ファイトを使った側は増やした神業の使い方をアドバイスできるが、どう使うかは使われた側にある。

 

「全く考えすぎなんだよ~。機動捜査課は人手不足なんだよ~? 正気に戻った優秀な捜査官を、そうそう失うわけにはいかないんだよ~?」

 

 日ノ守の答えはその裁きを打ち消すものだった。日ノ守はブラッドリーの拘束を外すと、腕を掴んで立ち上がらせる。

 

「自分はここの後始末をしておくから、先に戻って、書類整理をおねがいね~。あ、あと、始末書も待ってるだろうけど、その前にレイ課長にぶっ飛ばされるのが先かな~?」

 

 かくして、“災厄の都市”の猟犬は、再び日常に――犯罪と硝煙に満ちた日々に、戻っていくのだった。

 

 

※※※

 

 

 正宗は皆と離れると、退避させていた子供たちの方へ近づく。

 隠れていた子供たちが、怯えつつも警官隊たちに促され、顔を出す。そうした中、クリスが近づく正宗に気が付き、自分から傍に寄っていった。

 

「おわった、の……?」

 

「ああ。」

 

「パパは、テロリストじゃなかったんだよね?」

 

「ああ。里志は攫われながらも、通報したヒーローだよ」

 

「え? パパの名前……。もしかして、前にパパが言っていた、お人好しの探偵さんっておじさんのこと?」

 

「お人好しか……そう言われても仕方がないな。前に里志から頼まれていたんだ。誕生日おめでとう。パパからのプレゼントだ」

 

 クリスに望遠鏡と添えられていたメッセージカードを手渡す。それを受け取ったクリスは思わず涙ぐむ。

 

「……あ、ありがとう……ございます……パパ……!」

 

 

 その夜――N◎VAでは珍しい、驚くほどたくさんの星が輝いて見えた。

 二宮里志からの最後のプレゼント、添えられたメッセージカードには、こう書かれていた。

 

「見上げてごらん夜空の星を」

 

 

※※※※※※

 

 

 スカイツリーを出てからカーロスと連絡を取り、今はこの静かなバーで酒を酌み交わしている。

 

「随分と静かな所も知ってるんだね。今朝あった所のような場所しか知らないと思ったよ」

 

「まあ、今回みたいなタフな事件を憩おうというなら、こんな所の方がいいだろ? 先ずはお疲れさん」

 

「ありがと。現場から立ち去るのに一苦労するかと思ったけど、スカイツリー周りの照明が点いてなかったから、抜け出すのも楽だったけどね」

 

「それか。スカイツリーをライトアップして誇示しようという稲垣司政官の方針のため、周辺の照明は切られていたんだ。さらに、今回の事件のせいでスカイツリーのライトアップも中止になったから、N◎VAにしては珍しく夜空に星がまたたいてやがる」

「どうだい、ヒーローをやって来た感想は」

 

「そうだね……まあ、どうにかできたなって所かな? やるせない気持ちはあるけど、それでもこの街は廻っているんだから」

 

「……そうかい。なるほどな」

「お前さんは、よくやったさ。名誉火星人に迎えてもいいくらいだ」

「どうだい、次はもっとにぎやかな店でも?」

 

 そんな受け答えをして、最後は冗談めかした物言いでカーロスはグラスを掲げた。

 

「それじゃあ、星空が見えるところで乾杯しようか。折角の機会なんだから、普段は見れないものを見ながらってのは乙な物じゃない?」

 

 僕もグラスを掲げつつ、星空を映した液体を飲み干したのだった。

 

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