希望と欲望と、絶望と野望が入り混じる街。
一人の青年の失踪。それはストリートを巻き込む大きな事件の始まりだった。
奇妙なアヤカシによる連続強盗。
アサクサに跳梁跋扈する化け物たちの姿。
心と命を利害の天秤に乗せ、冷徹なる思惑が事件を裏から支配する。
果たして哀れな青年の心は救われるのか。
本当の“怪物”を倒すことはできるのか?
「
かくて運命の扉は開かれた
―――アクトトレーラーより抜粋
オープニング
かの騒動から二月。どうやら裏稼業も行える人材だとストリートには認識されたらしく、ちょっとした厄介事などが入ってくるようになった。
それに合わせて、たまに路地裏などで辻占いなどをやってたりするのだが、何故か来るのは厄介事ばかりだ。どうも、カモフラージュで店を開いてるのだと思われているらしい。結構自信あるんだけどね、タロット占い。的中率もかなりの物よ?
そんな客の来ない辻占いを開いていると、腰までの長い黒髪に、釣り目がちで冷たい目をしたスーツ姿の女が寄ってきた。
「失礼、朱岩様とお見受けする。私の事は吹雪と呼んで頂きたい。貴方に依頼したい案件があり、声をかけさせてもらった」
女性はニコリともせずに、仕事の話を始める。ポケットから
「私たちは、このアヤカシを“キマイラ”と呼称している。あなたには、このアヤカシを回収して貰いたい。もし死んでいても、死体さえあれば構わない」
アヤカシは吸血鬼や狼男、悪魔や妖精といった伝説の怪物、あるいはその血を引く者たちの事を表す、マヤカシに対するマイナスナンバーだ。永劫の闇に生きる伝説の住人であることを示すスタイルであり、基本的にはこうしたアストラルの存在は一般には認知されていない。が、角や牙、翼や尻尾が生えていても、『変わった人がいる』としか思われないのがニューロエイジだ。信じる、信じないは人それぞれであり、信じる人はたいてい〈社会:アストラル〉を持っているだろう。
「これが前金だ。首尾よくいけば、相応の報酬を約束しよう」
そう言うと、
「キマイラを探す理由と、僕を指名する訳は?」
「利益のため、とだけ答えておこう。余計な詮索はしない方が、お互いのためだ」
こちらから疑問をぶつけてみたが、ありきたりの冷たい答えが返ってきた。立ち振る舞いから言って、“
「わかったよ。捕まえることが出来たら、連絡を入れれば良いんだね。
「連絡はこちらから行う。よい報告を期待している」
そう言って吹雪はゴールドをテーブルに置くとそのまま道の奥に消えていった。
さて、クグツの説明をしておこう。クグツは企業に忠誠を捧げる人間である。
その神業は
「さて。
そんな事をつぶやきながら手元のタロットカードを1枚めくる。出てきたのは太陽の正位置。
「行動し、突き進むが吉か。さぁて、どんな出会いが待っているかね?」
店をたたんで、探索に出ましょうか。