東京新星市奇譚   作:内原

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 真教浄化派。
 N◎VAの破滅を願うテロ組織。
 邪悪な毒蜘蛛がN◎VAに陰謀の糸を張り巡らせ、致死の毒を注入しようとする。
 陰謀は、N◎VAに生きる人々の理性を、運命を歪ませて―――。

 離れた娘を思い、酒に溺れる男を。
 過去の悪夢に苦しむ、若き猟犬を。
 毒の滴る糸が絡め取っていく。

 けれど、陰謀の闇の中でも。
 ほんの少しの良心が、微かに光る星のように、運命の先を照らし出す。

 「見上げてごらん、夜空の星を」
  かくて運命の扉は開かれた。

       ―――アクトトレーラーより抜粋


見上げてごらん、夜空の星を
オープニング


 ヤロールに入ろうとした時にポケットロンの呼び出し音が鳴る。相手はカーロスだ。

 

「ヤロールに行く用事がつぶれてしまったんでな。悪いがこっちに来てくれないか?」

 

「まあ、入る前だからいいけど。合流場所は?」

 

「ちょっと明るいクラブだよ。暗いどっしりした所は性に合わなくてね」

 

 確かに、あの明るいラテン系のノリにはヤロールの落ち着いた暗闇というものは似合わないだろう。となると、呼び出し先の場所がどれほど騒々しいか予想がつくものだ。朝っぱらからなのにね。もしかして、24時間営業とか?

 

 改めて呼び出された場所は、騒々しいナイトクラブだった。騒音のようなBGM、目を眩ませるストロボライトの中で、扇情的な服装をした男女が影絵のように踊っている。

 奥の席でショットグラスの酒(テキーラ)を片手にこちらに手を振るカーロス・マウリシオ・ダ・シルバが居た。

 

「よう、お友達(バディ)。振り回して悪かったな」

 

「全くだよ。けどまあ、先にお仕事のお話をしようか。どんな用件なんだい?」

 

 僕の返答を聞くとカーロスはニヤリと笑いながら

 

「浄化派のテロ計画を阻止して欲しい。簡単な仕事だろ?」

 

 こんなことを言ってくる。まだ続きがある筈だから、黙って先を促す。

 

「昨日、タタラ街で、SSS(スリーエス)の警官隊が銃撃戦をやったってニュースは見たかい?」

 

「いや。引っ越してから一週間、引きこもっていたからね。時事情報は薄いよ」

 

「そうか。なら、その相手が浄化派のテロリストだ。だが、肝心の指揮官だった幹部―――ブラックウィドウはそこに居なかった」

 

「よくそこまで知ってるね。やっぱり伝手ってやつ? それとも噂かな?」

 

 僕が水を向けてやると、自慢にもならないとばかりに続けてくる。

 

「……でだ、恐らくブラックウィドウはまだN◎VAに居る。そして計画をあきらめちゃいない」

 

「妙に自信満々だけど、ソース(情報源)はあるの?」

 

 僕の切り返しには、ニヤリと笑い、親指で自分を指さしながら、

 

「火星人の勘さ」

 

 と、得意満面の笑み。半分あきれながらジト目を向けると

 

「ついでに言えば、あいつら(テロリスト)がやりかけの仕事(ビス)をほっぽり出して逃げ帰るとは思えないしな。アンタにはそのブラックウィドウを探して、計画を阻止して欲しいのさ。報酬は奮発してゴールド(5報酬点)だ。依頼人は、N◎VAの平和を望むエグゼグ(金持ちの重役)、ってとこさ」

 

「まあ、()()()()()()()()は聞かないことにするけど。普通、こういう話はイヌ(警察)の所に持っていく話だよね?」

 

 と、至極真っ当な疑問をぶつけてみる。帰ってきた返答は頭の痛い事態だった。

 

むこう(警察)はすぐには動けないぜ。なんでも、テロリストのラボから、イヌの一人がウィルス兵器を持ち逃げしたらしい。今はそっちの対応で大変なはずさ。……噂だがね」

 

「了解。全く頭の痛い話だよ。で、相手の顔とかは判ってるの?」

 

 これにもカーロスは顔をしかめて返事をする。

 

「あいにくホロ(映像)は無い。異常に用心深い女で、画像データのひとつも残ってないのさ」

 

「本当に無茶を言うねぇ。コードネームしか判らない女を探し出せなんて。ついでに荒事もかい?」

 

 愚痴を言ってみるが、カーロスは真面目な顔をして

 

「それでも、あんたならこの都市を救うヒーローになれると思うぜ。俺が言うんだから間違いないさ」

 

 そう言うと、ウェイトレスが持ってきたショットグラス(ショットガン)を手で蓋をして持ち上げる

 

「じゃ、頼んだぜ、異世界人!」

 

 言うと同時にグラスをテーブルに叩きつけると、グラスの酒を一気に飲み干した。

 本当にこの陽気さにはかなわない。了承の印としてゴールドを受け取り、ナイトクラブを出ることにした。

 

 

 

「ああ、そうだ。本来ヤロールで話すはずだった内容って?」

 

「ん? そっち()と顔をつなげたいクロマクが居たんだが、向こうの都合が急に付かなくなってね。お流れになったんだよ。」

 

 何か巻き込まれ始めたなぁ……。

 

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