東京新星市奇譚   作:内原

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痕跡

 木更タタラ街の外れに来た。

 得体の知れないテナントで埋まった雑居ビルの一角。ここで、テロリストとSSSの警官隊が銃撃戦を行ったという。

 「KEEP OUT」のホログラムが表示され、ブラックハウンドが警備と封鎖を行っており、関係者以外の立ち入りを拒んでいる。が、日ノ守が声掛けをする事で問題なく中に入ることが出来た。

 雑居ビルの一室は、まるで病院か生物化学系のラボのような改装が施されていた。

 

「銃撃戦の跡が残っているけど、それほど大きなダメージは無いんだよね~」

 

「隠れ家というよりは隠しラボか。嫌な予想しか思い浮かばないな」

 

 日ノ守ののんきな口調に、正宗の苦り切った声がかぶさる。

 

「で、そこの隅のパーテーションに据え置き型のトロンが置いてあるんだけど、起動してくれなくてね~」

 

 そう言いながら日ノ守が案内してくれたトロンの前に行くと、正宗が持っていた望遠鏡から光が放たれ、トロンが起動しだした。

 

「ここからは俺にやらせてくれ。里志の置き土産なんだ。……さあ、教えてくれ。あいつに何があったのか、その真実(トゥルース)を」

 

 これがフェイトの神業『真実(トゥルース)』だ。その効果は誰か一人から真実を聞き出すこと。質問された者は知っていることを正直に話さなければならない。答えたくないならば、別の神業を使って対抗するしかない。ただし、気を付けなくてはならないのは、知っていることしか話さないということだ。間違った事実をを信じているものは、その通りの事を話す。

 

 

 事件に関係しそうな映像データが、断片的にではあるが復元できた。

 一つ目には薄型の眼鏡を着け、ボサボサの髪に無精ひげを生やした三十代後半の男性に、黒衣のドレスを身に着けた女が語り掛けている映像だ。

 

「里志だ。女は誰だ?」

 

「ブラックウィドウだろうね。“毒”の流し込みかな?」

 

 正宗の疑問に僕が答えると、そのまま続きを見ることにする。

 

『多大な犠牲が出る。そうでしょうね。でも、そこで貴方が治療薬を持って娘を助ければ、ヒーローになれる……そうでしょう?』

 

 二宮は苦しげに呻いている。そこで場面は変わり、二つ目の映像が流れる。短髪できつい感じの顔つきをした二十代後半の白人男姓がブラックウィドウに囁かれている。

 

『貴方の両親を殺した未登録市民とスラムだけをこのN◎VAから消し去ることが出来る。貴方が守るべき“普通の市民”には、何の被害も無い。そうでしょう?』

 

「ブルースだね~。さっきのも含めて二人とも朦朧としているね~」

 

「薬物だろうね。“得意技”らしいから。なんにしろ、テロリストお得意の焦点のはぐらかしは見事だね」

 

 日ノ守が気が付いたことをつぶやき、それに僕が答える。そこに正宗が注意を呼び掛ける。

 

「三つ目があるようだ。続きを見るぞ」

 

 そこには二宮がカメラに向かって告白する……いや、懺悔といった方が正しいかもしれない画像だった。

 

「……このワンダリングスパイダーには、治療薬は無い。ヤツに渡すわけにはいかない。そもそも、ヤツの計画に一瞬でも耳を傾けたのがおかしかったんだ。いつもそうだ、いつも俺は間違う。今から警察に通報する。俺は殺されるだろう。クリス……」

 

 二宮の苦し気な呻きとともに画像データは暗転する。これで終わりらしい。

 

「どうやら、この場所を通報してくれた匿名の人物は二宮里志だったらしいね~」

 

 そう言いながら、SSSから受け取っていたらしい音声データを再生する。内容はこのラボの場所と違法な実験が行われているので捜査して欲しいと押し殺した声で告げている。

 

「確認しておこう。テロリストたちの戦力は?」

 

「恐らくだけど、ブラックウィドウに腹心のレッドバック、戦闘員の集団(トループ)が何組かとブルース・ブラッドリーってところかな?」

 

「それぞれの戦闘方法は判明しているか?」

 

「ブラックウィドウが精神戦。レッドバックは……多脚型ウィーグルの“ハーフエクリプス”を操るそうだよ。光学迷彩装甲で都市内でもばれずにブラックウィドウを運ぶらしいね。戦闘は射撃がメインだろうね、搭載火器があるだろうし」

 

「ブルースは射撃のはずだよ~。まあ、説得出来れば、戦闘しなくても済むかもね~」

 

 正宗の問いかけに、僕や日ノ守が答えていく。

 

「ここからはさらに重要だ。お互いに出来る事を教えてくれないか?そうでなければ、相談も出来ないからな」

 

 それにも僕たちはうなずく。

 

「なら、俺からいこう。R6u(リボルバー)での援護射撃、あとは誰か一人を早めに動くことが出来るようにする(加速装置)位だな」

 

「僕は最大範囲火力とエニグマ(グレゴリー)による援護かな。あ、こいつ(グレゴリー)に戦闘能力は無いから」

 

 正宗に続いて僕も戦闘力を伝える。それを受けて日ノ守が、

 

「あ~、エニグマ持ちなんだ~。自分もその系統の力(マヤカシ)を持っているからわかるよ~。一応自分は幻覚を使っての束縛だね~」

 

「ふむ、それほど動きが被るような事はないか。なら、そろそろ出よう。動かなければ、時間の無駄になる」

 

 答え返すと、正宗が提案をしてくる。問題は無いので、うなずくとこのラボを出ていくことにした。

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