デデ砂漠。
そこはハンター達の間では旧砂漠という名称で親しまれている場所である。
砂漠とはいうものの実際はギルドが定めた10のエリアのうちクーラードリンクという暑さを和らげるアイテムが必要な場所はたった2つだけである。
ただしその2つのエリアは他のエリアに比べてとんでもなく広いのだが。
余談ではあるが、大陸の南部に位置するのがデデ砂漠、大陸の北部に位置するのがセクメーア砂漠である。
そして、今この砂漠には1人のハンターがいた。
「クーラードリンクは…忘れていないな。なぜかここにくる時にはよく忘れてしまう」
燦々と照りつける太陽の光を反射して一層輝いて見えるその防具の名前は『シルバーソルシリーズ』であり、火竜『リオレウス』と呼ばれるモンスターの特殊な亜種の希少種から作られるものである。武器も同じモンスターから作られた太刀であり、銘は『飛竜刀【銀】』と呼ばれるものだ。
だが、このリオレウス希少種というモンスターはとんでもなく強くその装備を作るとなるととてつもない時間と技量が必要になる。
しかし、それを揃えたハンターがここに出向いているということは、そのハンターの実力以上のモンスターがここ『デデ砂漠』にいるということにもなる。
「ツノが一本折れた状態のディアブロスねぇ。とんでもなく強いらしいが聞いただけでは実感がわかないな」
ツノが一本折れたディアブロス。
通称マ王と呼ばれ、数年に一体現れるのだが元となったディアブロスとは一線を画す強さを持つ。
本来ディアブロスは出産期のメスを除き基本的におとなしい性格の為、ツノを折られた場合一通り怒り散らしたあとツノを治すためにじっとしているのだが、このマ王という個体はツノが折られた状態のまま生活し、そのままツノが治ることはないと言われている。
そのため、ディアブロス似て非なる違う個体なのではないかという説もあり、その場合は『ディアソルテ』と呼ばれる。
このハンターはそのマ王を今日狩る為にここを訪れたのであった。
ハンターというのは、当たり前だが狩る為には見つけなければいけない為モンスターを探すことから始める。
ハンターの安全を考えてか50分以上の狩りはギルドが認めていない為、効率よく探す必要がある。実際、どのエリアにモンスターがいるかわかるスキルが用意されているほどだ。
このハンターはそのスキルを身につけていない為に自分の足で探すことになる。
エリアを転々と移動していき、そろそろクーラードリンクが必要になるなという場所でモンスターを見つけることができた。
ただ、驚くべきは
「(でっか!なんだよ、あの大きさ。目測だが金冠サイズを超えてるぞ!)」
サイズである。
その大きさは優に30mを超えており通常のディアブロスとは桁違いの大きさである。
なお、金冠サイズとはその種族のモンスターの平均的な大きさとは比べもにならないほど大きい場合に使われる一種の指標である。
サイズが大きいさらに金冠サイズともなると、1つ1つの攻撃が重くなっていたり、体力も多いのでハンターとしては金冠サイズには会いたくないのである。
「まずはペイントボールで見失わないようにしないと」
ペイントボール。
それはモンスターに投げつけることで強烈な匂いを発する。その匂いはしばらく取ることができなく、モンスターの位置を把握する為に用いられる。
ペイントボールをモンスターに投げ、なおかつ匂いもつけられた。これでモンスターが気づかないはずがない。
ハンターの方に体を向けて体をグッと落としたモンスターが行ったのは
グオォォォォォォォ‼︎
咆哮である。
基本的に咆哮というのは大きい音を出すだけ、である。
しかし単純故に、強力。
大きな音というものは生物の原始的な恐怖を呼び起こすものである。
もしこのモンスターと対峙したものがこの恐怖に囚われてしまった場合待つのは死、のみである。
別にこのモンスターに限ったわけではないのだが。
「その咆哮っていう動作は対策をしていれば、隙だらけなんだよ!」
そう言いながら、走ってきたハンターはマ王の足元まで行くと走った勢いそのまま滑らかに太刀を振り下ろす。
振り下ろしただけでハンターの攻撃は終わらず
突き、斬り上げ、斬り降ろし。まるでそれで1つの動作かと錯覚させるほど躊躇いなく、止まることなく、行う。
その頃にはマ王は咆哮の動作を終わらしており、足元でチクチクと何かをしている敵を排除する為に攻撃を行う。
自分の頭についているツノを地面に突き刺し、そのまま上に振り抜く。言葉では弱く見えるが、実際30mもの巨体とそれについているツノの大きさを考えるととてつもない威力だ。
しかし、ハンターも黙ったままではない。攻撃がくるとわかるやいなや、前転のような動きでマ王からは離れている。
躱すためだけに前転というには無駄が大きい動きと思うかもしれないが、ハンター達が相手にするのは基本的に人間と比べた場合話にならなほど巨体である。
そのため、ステップや歩いて下がるなどといった距離の取り方では相手の間合いから逃れられないのだ。
なので多少はスタミナを消費してしまったとしても、かなり長い距離を取れる前転の方がいいのである。
「さて、ここからが本番だな」
実際マ王は蚊に刺されたよりもダメージを感じていないのだ。もちろんハンターもダメージを受けていない。しかし、この行動でハンターの方はともかくモンスターの方はハンターのことを認識したのである。ここからが、互いの生死を賭けた死闘が始まる。
20分後、何度もマ王の攻撃をもらったもの回復薬などでダメージを回復させ、マ王からしたらチクチクとしかし、ハンターからしたら着実に与えていったダメージが実を結ぶ。
「グルルル…」
ハンターに背を向けて自分の巣へと足を引きずりながら戻り始めたのだ。
この行為はモンスター全般に見られ、弱ったサインとされている。この行動が出始めてようやく捕獲といったことができる。
ただし、ハンターは捕獲を行うつもりはなくあくまでも狩るつもりである。
「逃してたまるかよ…!」
足を引きずる始めたマ王を見たハンターは太刀を納刀し走り出す。
そして、マ王の元に来ると抜刀する。
しかし、マ王はそんなハンターの攻撃に対処するよりも、自分の巣に戻ることを優先する。
そうすると、またハンターとマ王の距離が開いて行く。
それをハンターがまた納刀し走り出して、マ王の元で抜刀。マ王は気にせず巣に向かう。
これを2回ほど繰り返す。そしてハンターは
「うん、無理」
そう判断すると、素早くペイントボールをマ王に当てる。
補足すると、この無理というのは、マ王が砂の中に潜って巣に移動する前に倒すのが無理という意味である。
なぜこのハンターがペイントボールを当てたのかというと、潜って移動されるとどこのエリアに向かうが確実には分からないのだ。
ペイントボールの匂いを追っていけば簡単にわかるのだが、移動中にペイントボールの効果が切れたとなるとめんどくさいので、もう一度マ王に投げつけたのだ。
ペイントボールを当てられた直後には、すでにマ王は潜り出しておりすぐに完全には見えなくなった。しかし、ペイントボールから発せられる匂いを追えばすぐにマ王の居場所はわかるのだが
ハンターは異変に気付いた。
「…ペイントボールの匂いがしない?」
そんなことはありえない。ペイントボールの効力がこのごくごく短時間で切れることは考えられないのである。
「今このことを考えても仕方ないか…。エリアを回ってディアブロスを探そう」
そうしてハンターはエリアを全て回ったのだが
「本当におかしい。どこにもいない」
どこにもいないのである。
ハンターははこれを非常にやばいと考えて、ギルドに報告する為にベースキャンプと呼ばれる、ハンター達の休息地に向かった。
しかし、そこでも異常が発生した。
「なんだこれ…」
ベースキャンプに黒い孔があるのである。
その孔がどこかに繋がってるような様子もなく広がるのはただの黒色である。
ハンターは長年の勘で今回の異常の原因は全てこれのせいだと捉え、近づかないように動いたのだが
「⁉︎」
目の前にいきなりその孔が現れたのである。
為すすべもなく、ハンターはその孔に触れてしまい、それどころかその孔に入ってしまったのだ。
「(これは…どうしようもない!)」
そう考えながらハンターは意識を落としていった。
この時同時に世界各地で黒い孔が確認されてはいるものの実際の被害はハンターが1人と討伐依頼が出されていたモンスター達が何百匹がいなくなったとされている。この後も、黒い孔の目撃情報は寄せられている。ギルド側はハンター達に黒い孔には近づかないように喚起し、ハンター側もそれに注意するようになる。
クーラードリンク…旧砂漠の時になぜかよく忘れる。謎。
マ王…説明どうり片ツノが折れたディアボロス。実際の正式名称はディアソルテ(らしい)
攻撃力4倍、体力2倍、ダメージカット40パーセント、部位耐久値1.3倍(ディアブロス比)とかいう化け物。G級になると攻撃倍率5倍とかいう意味不明なことになる。この数字はマガジンティガと並ぶ。
ディアブロスに火属性武器…オススメはしない。オススメ属性は氷(だったはず)