自殺の少女   作:漆黒のマカロン

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自殺の少女5

私の人生、不自由は無かったけれど、自由もありませんでした。

私の家は裕福でした。

それはもう漫画の中の世界のようなほどのお金持ちでして。

お菓子が欲しいと言えばケーキやクッキー、パフェ、マカロン...様々なものが運ばれ、あれがほしいなどといえばすぐに手配してもらてる...何一つ不自由のない、恵まれた家系でした。

けれども私は決して......決して自由ではないのです。

どれほどのものを与えられ、両親に愛されようとも、私に自由はないのです。

両親は私をとてもよく愛してくれます。

えぇ、それはもう、とてもとても、少し過保護すぎるぐらいでして。

それ故に、私は『友達』という存在が居ませんでした。

学校にはもちろん通っています。

ちゃんと毎日、みんながいる教室へと向かい、みんなと同じように授業を受けています。

けれどそれでも、私には『友達』が出来ませんでした。ーーいえ、出来ることが許されなかったのです。

両親は私に言うのです。

『友達なんて作ってはいけない。お前に悪影響を及ぼすから』と。

確かに人間関係と言うものは複雑だと思います。

信じていたそばから裏切られたり、誰かと仲良くなるが故に誰かに恨まれたり...確かに私に悪影響を及ぼすかも知れません。えぇ、両親の言ってることは決して間違いではないのです。

けれども必ずしも悪影響だけでは無いと思うのです。

『友達』が嬉しいと自分も嬉しい。

『友達』が楽しいと自分も楽しい。

『友達』が寂しければ、悲しければお互い寄り添い合い、半分に出来る。

悪いことだってあるだろうけど、いいことだってあるのです。

私の言ってることは綺麗事なのでしょう。

そんな夢のような友情関係を現実で結ぶのは難しいのでしょう。

だからこそ両親は私に言うのでしょう。

『友達』を作るのなんてやめなさいと。

分かっています。頭では分かっています。ちゃんと理解もしているのです。

けれどクラスメイト達のやり取りを見ていると、羨ましく感じるのです。

あんなふうに楽しくお喋りとかができるのが、妬ましく思ってしまうのです。

私は名家の家の令嬢です。

私の他に兄弟はおりません。

だからいずれは私がこの家を継ぐのです。

だからこそ、『友達』などを作って弱みを見せてはならない...。

将来に悪影響を及ぼしてしまうから...

そう自分に言い聞かせることで、私は今日も自分を自分で納得させるのです。

そんな毎日が続いたある日のことでした。

帰り道で私は一人で本を読んでいる女の子を見かけました。

いつもの私なら通り過ぎるはずですけれど私は何故か、話しかけてしまったのです。

えぇ、その女の子に。

「あの...なんの本を読んでおられるのですか?」

「......なに。急に。」

「いえ。なんの本を読まれているのか、気になりましたので。」

「......小説よ。」

「まぁ!なんの作品なんですの?」

「な、なんなのあんた...教えたじゃない。もう私に用はないからいいでしょ?」

「まぁまぁ。そんなことを仰らずに、教えてくださいな」

「あーもう!......し、仕方ないわね...これ説明したらはやくどっか行きなさいよ!」

彼女は私にとても丁寧に接してくださった。

なんだかんだ私たちは仲良くなり、毎日帰り道に彼女の元へと立ち寄り話すのが日課になってゆきました。

彼女と話すのはとても楽しいです。

これが、『友達』というものなのでしょうか?...だとしたらこんな素晴らしいものを封じてしまうお父様とお母様に私はますます疑問を抱かずにはいられません。

いつも通りの放課後でした。

学校の校門にお父様と迎えの車がきておりました。

お父様は私を車の中へと招き入れると険しい表情をしました。

「ここのところ毎日帰りが遅くなっているが、何をしているんだ。」

「そ、それは...学校で勉強をしておりましたの。」

「嘘をつくな!」

突如お父様が大声をあげ、私に一つの写真を差し出しました。

「この少女と会っているんだろう?」

「そ、それは...ち、違います!そんな少女...存じておりません...」

「お父さんはお前に『友達』などというものは作らなくていいと言ったはずだが?」

「し、しかし...!!将来家を継ぐものとしてコミュニケーションや相手の人心掌握などを鍛えた方が...」

「お前には必要ない。将来お前が家を継いだ時は優秀な側近をつける。そういうことはそのものに任せる。お前は領主という立場に在ればいい」

「私は......なにも...ですか...ただ...在るだけなんですか...」

「そうだ。お前は領主と言う立場らしく在ればいい」

「それは領主という立場だけで...私には...なにも残らないのでは...」

「お前はなにを言っている?」

お父様は私を見て笑ったのですーーまるで嘲笑うかのように。

「お前に残るものなど最初からなにもないだろう?...最初から、なにも与えていないのだから」

「え...?おと...さ...ま?」

頭が真っ白になりました。

「お前には最初からなにも与えていない。社会の繋がり、人との繋がり、そして...愛情も。」

「え...だって...お父様......で、ですが...お父様やお母様は私のわがままも笑顔で聞いて...あ、愛してくださったでは...ない...ですか...」

「あんなもの。お前を満足させるだけの行為だ。あれに愛情などはない。」

お父様がなにを話されているのか理解できない。

理解してはいけない、と頭が拒絶している。

「そ...んな......お、お父様...」

「私やその他のものに1度でもいい...1度だけでも...お前に『愛してる』と言った者は居たか?」

「............」

「分かったか。お前はあくまで跡取り。それ以外には何も無い。...手間をかけさせるな。」

「.........」

目の前が真っ暗になりました。

私は最初から...愛されてなど居なかったのですね...それなのに.....私...お父様の為に...お母様の為に...今まで......

「お前に『友達』を作らせてないのは『友達』を作ることでお前が自分は愛されていないと気づく恐れがあったのとお前の心の拠り所を作らせない為だ。」

「そ、そ...ん、な...」

もう何も考えられませんでした。

「あの少女には2度と会うな。分かったな」

「.........」

「ふん。ショックで言葉も出ないか。よっぽどおめでたい頭をしていたんだな」

その後車を降ろされた私は、彼女の元へと自然と足が向いていました。

「2度と会うな。」と言われてしまいましたが、今の私には...もう...彼女にしか...

「いない...どうして...いつもなら居るのに...」

いつもの場所へ行っても彼女は居ませんでした。

「あぁ...私は全ての人に見放されたのね...お父様やお母様や、彼女にすらも...」

私はカバンの中からはさみを取り出しました。

せめて。せめて死ぬなら彼女と出会ったこの場所で...

私ははさみを自分に突き刺しました。

痛い...立っていられない...熱い...。

私が倒れ込んだ時、私の元へと走ってくる音が聞こえました。

「なにしてるの!!!」

「あ、あぁ...きて、くれ...た...」

来てくれたのは紛れもない待ち望んだ少女だった。

「な、なんで...こんなこと......と、とりあえず...い、今救急車を...」

「そういえば...あなたの名前...聞いてなかったわ...」

喋っている間も私の体から流れる血は止まらない。

「黙って!!そんなの後でいくらでも教えてあげるから!!!」

「死ぬ前に...知りたいわ...」

「死ぬ前になんて言わないでよ!!!」

彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれ、私の頬へと降りかかる。

「教えて...?」

「っ...!!」

意識がもうろうとしてる...もう、なにも聞こえない...ぼんやりとしか見えない...

あぁ...あなたの名前...聞きたかっ...

「や、やだよ...なんで.....こんな目に...やっと....やっと出来た友達なのに...!!」

私は彼女の死体を抱きしめ、泣き崩れ、しばらく声を出しながら泣いていた。

泣きおわった後も意識はぼーっとしたままで何も考えられない。

ふと、彼女の傍に置いてあるはさみが目に入った。

考えるより前に体が動いていた。

「私も...そっちに...行くね...」

私は死に絶えた彼女の手を握るとはさみを自分へと突き刺した。

 

次の日。通学路のそばの大木の傍で死んでいる二人の少女が発見された。

昨日はこのあたりはいつも以上に人通りが少なく、彼女達の死後から1晩も経過していた。

彼女たちはお互いの手を握りあって寄り添うように死んでいた。

彼女達はそばに置いてあったはさみで心中したのだろう。

一人の少女は学校で高嶺の花と呼ばれている名家の令嬢だった。

成績優秀な美人で誰にも寄せ付けない雰囲気から高嶺の花と呼ばれていたらしい。

もう1人の少女は孤児院の少女だった。

幼い頃に両親を亡くし、孤児院で育てらた女の子。

「何故この二人が心中だなんて...」

令嬢の少女の家族は家族の死を酷く嘆いていた。

しかし私には分かった。

この人達は彼女の死を嘆いているのではない。

跡取りが居なくなったことを嘆いているのだと。

基本跡継ぎは息子がなるもの。

だがこの家に生まれたのは娘だった。

両親はそれをとても憎んでいたらしい。

少女は両親に洗脳されていた。

自分は愛されている、恵まれている、と。

二人の少女の死体を見つめる。

この二人は孤独だった。

それが二人を結びつけたのかもしれない。

死んでいる二人の少女の顔はとても幸せそうで。

最後の最後に二人は幸せを感じたのだろうと思った。

 

自分を愛してくれる人がいる幸せを。

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