その日、IS学園、いや、全世界に激震が走った。
「…はぁ、やっぱり上手くいかねぇなぁ…」
愚痴を零しながら歩く少年。今や本人の意思とは関係なく世界中に名を、顔を、性格を知られることとなったビッグネーム。
織斑一夏その人である。
一週間前のクラス代表決定戦。イギリスの代表候補生セシリア・オルコットとの模擬戦闘においてファースト・シフトを遂げた彼専用のIS「白式」の展開及び武装訓練を終えた帰り道であった。
「大体なんだよ、『手の中に剣が現れるイメージ』って…」
IS〈インフィニット・ストラトス〉の展開には想像力と僅かに才能が必要になる。ここでいう後者、才能とは、言わば適正ランクのことである。この時点での一夏の適正ランクはB。そこに問題はなかった。
つまり問題なのは前者、想像力。イメージする力である。
登校初日に再配布された分厚い参考書には『手の中に剣が現れるイメージ』と書いてあった。故に大真面目に『手の中に剣が現れるイメージ』をし続けているのだが中々上手くは行かない。この前の最高記録である3秒掛けての雪片弐型展開には心踊らせたが箒には懐疑的な視線を、セシリアには微妙な微笑みを、織斑先生には出席簿アタックを頂戴した。解せぬ。
…余談だが、その参考書のイメージはかなり理屈的というか捻りのないものである。万人受けするように作られているのかもしれないが特に『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』(急上昇、急下降)は意味不明である。
そんなことをつらつらと考えながら寮に帰宅。部屋には同室で幼馴染の篠ノ之箒が居るはずだ。最初こそ心身ともに成長した幼馴染みとの相部屋には困惑したが、2週間経った今となっては入室くらいは手馴れたものである。相手が着替え中の可能性を見越してノック。返事が無いのでシャワー中か。先に食堂にでも行こうかな。などと軽く考え、足をそちらに向ける。
食堂にはテレビが設置してある。そう、食堂にはテレビが設置してあるのである。何故二回言ったかというと、そのテレビには大量の人だかりが出来ており、外からは見えないからだ。理由は気になるが流石に同年代女子が群がる空間へ突撃していく勇気を一夏は持ち合わせてなどいない。故に、遠くからその様子を眺めるのみ。
「うっそ!二人目の男子…!?」
「二人目の男子だって!」
「うちに来るのかなぁ!?来るのよねぇ!?」
「二ツ目の男子…?」
などと聞こえる。最後はともかく、そうかぁ二人目の男子かぁ。と注文したうどんを啜りながらふわふわと考える。暖かい鰹出汁が疲れた体に染み渡るなぁ。
…ん?うちに来る?二人目?男子?…いやまさかな。
因みに帰宅しても箒は居なかった。これ幸いとばかりに手早くシャワーを済ませ、明日も頑張らなければ…と一人意気込んで就寝するのだった。
セシリア・オルコットはそのニュースを見た時、それはもう露骨に狼狽していた。具体的に言うと食堂に入ってきた愛しの一夏に気付かないほどに。(まあ周りもほとんどが気付いていなかったが…。)
「む、どうした。そんなに驚くことか…?いや、まあ確かに一夏以外にISを動かせる男子が見つかったというのは驚きだが…」
「い、いえ…なんといいますか。その…」
流石に訝しんだ箒が声をかける。かけられたセシリアの方はというと何かを悩むような、しかし決意した面持ちで
「彼…身内でして。」
その日IS学園に二度目の激震が走った。
セシリア・オルコットはイギリスの名家オルコット家の現当主である。彼女の母は幾つもの会社を経営する敏腕実業家であったが、三年前のとある事故で父とともに他界した。その座を継ぐため、偉大な母の名と家を守るためにセシリアは若くして勉学を極めた。箔をつけるため受けたIS適性検査ではA+を記録。これを見たイギリス政府から、国籍保持のため破格の好待遇で代表候補生の座を受けた。
そんなエリート街道まっしぐらなセシリアだが、その支えとなった人物が”二人”居た。一人目は彼女の専属メイドであるチェルシー・ブランケット。
そしてもう一人が噂の彼である。
オルコット家に古くから仕える執事家系であり、親子共々忠誠心の厚いルース家の一人息子。
名をルイス・ルースという。
諸注意
・処女作です。誤字脱字、タグの付け忘れ、質問等々何かあればコメントいただけると私が喜びます。
・深夜テンションで書いているので後日恥ずかしくなって訂正することが多々あると思います。
・長い間読み専だったので、他作者様の影響が所々見えるかも知れません。無いように気を付けてはいるので、平にご容赦を。
次回はオリ主転校、鈴転校、クラス代表就任パーティあたりです。この小説を書くにあたって原作を読み直して、個人的に意外だったのは、一夏くんクラス代表就任が4/8(推定)、パーティが四月下旬と、実はかなり期間が離れていたこと。場所の確保とか厳しかったんでしょうか。