「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします。」
そう言ってさわやかに微笑みながら一礼。とても様になっている。どこかの王子様のようだ。
…そう。王子様のようなのである。
「…お、男?」
と誰かが、余裕がなかったのだろうか遠慮がちに無遠慮に聞く。
「はい、こちらに僕と同じ境遇の方が居るということで本国より転入を…」
瞬間、震撼。これが噂に聞く音の波、ソニックウェーブというやつであろうか。人好きのしそうな微笑み、礼儀正しい仕草。そして金髪。冗談ではなく皇子、貴公子などの印象を受ける。
「男子!男子!」
「三人目!しかも立て続けにうちのクラス!」
「美形!守ってあげたい系の!」
「お父さん、お母さん、私、幸せに生きてるよ…!」
それにしても相も変わらず元気なクラス。IS学園の顔こと1年1組です。皆さんこんにちは。
「やっぱり探したら案外居るもんなんだな〜」
「そのようですね…」
と、事の重大さが他の半分も分かっていない男子二人組である。
「あー、騒ぐな。静かにしろ。」
めんどくさそうに千冬がボヤく。本気で止めようとはしていないらしい。正しい判断である。何せ止まる気配がない。
「み、皆さんお静かに!まだもう一人居ますから〜!」
対して山田先生は必死に暴走気味の生徒達に語りかける。功を奏したのは山田先生の努力か、もう一人への好奇心か、
「・・・・・・」
…それともこの、先程とは正反対の絶対零度の視線か。…ともかく、クラスは一旦落ち着いたようである。
「挨拶をしろ、ラウラ。」
これまためんどくさそうに千冬が促す。
「はい、教官」
言われた途端、二人目の転校生はザッ!と音が鳴る勢いで姿勢を正し、
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」
挨拶、終了。
「お前も挨拶をろくに出来んのか…それとここでは織斑先生だ。そう呼べ。」
「は、了解しました。」
余りの異質な空気感に一同沈黙。と、不意に一夏とラウラの目が合う。
「貴様が…!」
合うや否やつかつかと歩み寄る。目と目が合った瞬間好きだと気付いた…
パァン!
…訳では断じてない。断じて。代わりに示すは容赦ない平手打ちである。一瞬混乱する一夏。周りも同様。
「い、いきなり何しやがる!」
「ふん…」
再度睨みつけ、空いている端っこの席に座ると腕を組んで目を閉じる。清々しいまでのガン無視である。
「…色々と言いたいことはあるが時間が押している。ここでHRを終わりとする。各人すぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。以上、解散!」
「…!やっべ!」
言い終わるや否や一夏、ダッシュ。…と思ったら戻ってきて一言、
「ルイス!シャルル頼む!お前なら大丈夫だろ!」
「畏まりました。シャルル・デュノアさん。私はルイス・ルースと申します。さあ、どうぞこちらへ。時間も押しておりますのでお早めに。」
「う、うん…?」
一夏、再度ダッシュ。因みに、これは一夏が無責任なのではない。実績に基づいた判断である。というのも…
「織斑くん発見!者共!出会え出会え〜!」
「きゃー織斑くーん!」
「待てー☆」
「やっぱりこれかよ!」
移動教室の度に一夏は追い回される。追い回す彼女らはノリは軽いが目は
対して、
「お!ルイスくん発見!者共!出会え出会え〜!」
「きゃールイスくーん!」
「…申し訳ありません。お話したいお気持ちは分かるのですが何分今日は急いでいる上にお客人もいらっしゃいますので…」
「「「あ、はい。」」」
本当に申し訳なさそうに謝るルイスに何かできる訳では無いようだ。
「あ、隣にいるの、もしかして…!」
「はい、今日からの転入生だそうです。彼に案内をしなければなりませんので。通していただけませんか?」
「「「あ、どうぞ。」」」
「ありがとうございます。」
「えと、あ、ありがとう?」
美少年二人からの感謝の言葉でほっこりする女子一同であった。
「お、ルイス。それと、デュノアもお疲れ!俺は織斑一夏だ。一夏って呼んでくれ。よろしくな。」
「うん、ありがとう一夏。二人とも僕のことはシャルルでいいよ?」
「一夏様もご無事で何よりです。それから私もルイスで構いませんよ、シャルル様。」
「様、かぁ。なんだか歯がゆいね。」
一戦乗り越えた戦友たちはこうして友好を深めるのであった。
「うわ!時間ギリギリだ!急がないとだぞ!」
といって制服を脱ぎ、上半身裸になる一夏。
「わあっ!?」
それをみてあたふたするシャルル。
「では、私はあちらで。」
「あ、えと、僕はあっちで!」
渡りに船とはこの事か。それぞれロッカーを挟んで三列着替えである。
その後、着替えに手間取った一夏だけが遅れ、ありがたいご指導(出席簿アタック)を頂戴した。シャルルくん、よく見ておくのだ。あれがこのクラスの掟だ…と誰かが囁いた。その娘も叩かれた。中々インパクトの強い初日である。
珍しく注意すべき独自設定がない回。