IS‐涙なくして瞳輝かず‐   作:三三三 三雲

18 / 29
十七話「噂話と憂さ晴らし」

「…よし。」

 

放課後、第三アリーナにて。赤と黒に彩られたIS、その操縦者が一人つぶやく。タイミング的に考えてSHRが終わり次第すぐに来たようだ。走ったのだろう。

しかし他の教員に見咎められることもなく到着するという、無駄に良い運が発揮されていた(ここで見つかれば、良くて足止め悪くて織斑先生へ通報である)。その場にいるのは見事に彼女一人。勝ち誇ったような表情である。

 

「さて、始めましょうか。」

 

と言って彼女、中国代表候補生にして甲龍専属操縦者、凰鈴音はすぐさま訓練を開始する。普段は一夏と共に行っていた特訓を放り出してまで一人で訓練とは近々の彼女からは考えられない行動であるが、これには朝のちょっとした会話が影響していた。

 

 

 

「そ、それは本当ですの!?」

 

「う、ウソついてないでしょうね!?」

 

朝の喧騒は高校という空間には当たり前に存在するもので、まして生徒が九割九分女子のIS学園では普通科よりもそのボリュームは三割増しである。いくらエリートとはいえ、全員がおしとやかな訳ではないようである。

 

そこにあってなお大きな声。出所は一年一組の教室の一角。人物はイギリス代表候補生と中国代表候補生。話題は…

 

「ホントだって!学園中この噂で持ちきりなのよ?月末の学年別トーナメントで優勝したら男子三人の誰かと付き合えるって!」

 

…ということらしい。噂話は加速し、本人たちも知らぬ間に対象を一人増やしつつ学園中に広まっているようである。

 

「…どうしてこんなことに…!」

 

言い出しっぺである箒は頭を抱え、

 

「な、なんだ?何の話だ?」

 

「さあ?」

 

当の対象者たちは首を捻るばかりであった。

 

 

 

さて、というような話題を知ってからというもの、鈴もセシリアもそれはそれは張り切り、鈴はこうして誰よりも早くアリーナにスタンバったということである。因みにセシリアは先ほどルイスに捕まっていた。

 

この第三アリーナには少し特殊なギミックがある。とある一角には射撃訓練用の的が出る装置があり、上空には飛行訓練用のコースラインがあったりと、実に多機能である。今回鈴が使用するのは射撃訓練用のスペースらしい。設定をし、使用開始するところで、

 

ピピピ!

 

「っ!?」

 

警告と同時に回避。横を掠めていく弾丸。発砲元に居たのは漆黒の機体。

 

機体名『シュバルツェア・レーゲン』。登録操縦者‐

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ…!」

 

そこには先日一夏を襲った張本人が居た。

 

「どういうつもり?いきなりぶっ放すなんて良い度胸してるじゃない。」

 

甲龍を戦闘態勢へとシフトさせつつ、連結式青龍刀『双天牙月』を構える。

 

「中国の『甲龍』か。…ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな。」

 

「何?やるっての?わざわざドイツくんだりからノコノコやってきてボコられたいなんて大したマゾっぷりね?イマドキのジャガイモ農場じゃそんなのが流行ってんの?」

 

先に仕掛けられたこと、そして続く暴言によりカッとなるがそこは代表候補生、ここで何かやらかしてトーナメント出場停止になどなってはたまったものではない。その怒りの矛先を何とか言葉に変換し吐き出す。

 

「ハッ。二人掛かりで量産機に負けるような力量しか持たない割にはよく吠える。その程度で代表候補生とは数しか能のない国の人材の質が見えるというものだな?」

 

「…ふーん、なるほど。要はスクラップがお望みみたいね?誰にも構ってもらえなくて寂しいのかしら?これだから子守りは大変なのよねえ。」

 

「ッ!」

 

図星…とまでは行かないまでも何かの琴線に触れたらしく、ラウラは忌々しそうに顔を歪める。心理的優位を取ったかと一瞬思ったが、

 

「つべこべ言わずさっさと来たらどうだ?もっとも、下らん種馬を取り合うメスに私が負けるなどとは思わんが?」

 

「…今なんて言った?私には『どうぞ好きなだけ殴ってください』って聞こえたけど?」

 

この場に居ない想い人まで侮辱され、怒りは頂点に達した。

 

「とっとと来い。」

 

「上等!」

 

そうして始まる、中々見られない代表候補生同士の苛烈な戦い。

小手調べと鈴が衝撃砲『龍咆』を放つ。さりとて強力な砲撃。が、ラウラが前方に手をかざすと何故か無効化された。幾度か繰り返したが、結果は全て同じ。加えてあちらからはレールカノンの弾丸が飛んでくる。埒が明かないと、双天牙月を手にし、距離を詰める。ラウラは変わらず、今度は鈴に向けて手をかざす。

 

「ッ!?」

 

まずいと思い、とっさに飛び退こうとしたが遅かった。鈴の全身が何故か硬直し、動かない。

 

「攻め時を誤ったな?」

 

「な…!」

 

目の前にはレールカノンの砲口。わざとらしい程にゆっくりと照準を付けられ、

 

ゴオオン!!

 

アリーナ中に爆音が響き渡った。




ラウラはこの日、織斑先生に叱責されています。あの『ドイツでもう一度教官として~』のくだりです。構ってもらえない云々に反応したのはそのせいです。

どうでもいい余談ですが、戦闘前の掛け合い?舌戦?貶し合い?的なの、凄い勢いで思いつくんですよね…(シャルルvsラウラの時しかり)。そんな自分に苦笑している今日この頃。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。