いつもより長めです。二倍くらい?まあいつも少ないのであまり変わらないと思うかも知れませんが。
「タッグマッチ?」
「はい、先ほど告知されたようです。…ちょうどそこの掲示板にも。」
放課後。飛び出して行ったセシリアを捕まえてルイスが報告。
「…何故いきなりそのような…ん?」
その時、セシリアの脳裏に電流走る。
(これはつまり…一夏さんとタッグを組むチャンス!?)
「…何を考えているか手に取るように分かりますが一夏さんとタッグを組むことは出来ませんよ。」
「どうしてですの!」
「残念ですが本国より通達が来ております。…このように。」
「な、私のところには…!…来てますわね…。」
まるで見透かしたようなタイミングでイギリス本国からのお便り一枚。おそらく各国には事前にIS学園から連絡が行っていたのだろう。…多分。
正式な文書らしい、長ったらしい文章が延々と連なっているが、要約すると『セシリア・オルコット、及びルイス・ルース両名はIS学園タッグマッチトーナメントにおいてお互いをパートナーとし、相互連携を強化せよ。』とのこと。
「くぅぅ、折角のチャンスでしたのに…!」
忌々しそうに歯噛みするセシリア。そのままたっぷり数分悩んだ後、
「…はぁ。しょうがないですわね。本国からのお達しでは従うのがわたくし達の責務。それに…
「お気遣い痛み入ります。」
直前まで『本国からのお達し』の粗を探していた事実からは華麗に目を逸らし、こうして公平性の欠片もない代表候補生同士のペアが生まれた。
「一夏、今日も放課後訓練するよね?」
「おう、もちろんだ。今日使えるのは、確か…」
「第三アリーナだ。」
「「うわっ!?」」
放課後(三度目)、こちらは慌てる訳でもなく、二人並んで話しながら歩くシャルルと一夏。完全に無防備だったのか、突然現れた箒に大分驚いて素っ頓狂な声を上げる。
「…そんなに驚くほどの事か、失礼だぞ。」
眉間にしわを寄せる箒。老けるぞ…なんて思っていた一夏の思考を見抜き、更に凄む。こわい。
箒としては、ただでさえあの日から数日経過し、それなのにその後全くリアクションのない一夏と、周りで囁かれている妙な噂に焦っていた。しかも、本人はそんな思惑を意に介さず(気付けというのも酷な話だが)、男子と仲良く歩いているのである。
「お、おう。すまん。」
「ご、ごめんね。いきなりの事でびっくりしちゃって…」
「あ、いや、別に責めているわけではないが…」
そんな箒も、折り目正しく頭を下げるシャルルには流石に気勢を削がれた。話題転換の為か、咳ばらいを一つ。ごほん。
「ともかく、だ。第三アリーナへ向かうぞ。今日は使用人数も少ないと聞いている。場所が空いていれば、模擬戦の一つも出来るだろう。」
「おお、それはありがたい。」
気を取り直し、三人で第三アリーナへと足を向ける。…で、
「箒さんや、今日は空いてるんじゃなかったか…?」
「あ、ああ。そう聞いていたのだが…」
第三アリーナに向かうにつれ、徐々に人が多くなっていく。流石に全員が訓練に来たわけではないと思うのだが…何やら慌ただしい。騒ぎはまさに第三アリーナで起きているようである。
「一体なんだ…?」
「何かあったのかな。先に観客席から様子を見ておく?」
確かにピットから入るよりもそちらの方が早い。二人とも頷く。
そこに広がっていた光景は…
「…鈴!?」
‐警告 機体ダメージ 大 これ以上の戦闘継続は推奨できません‐
「うるさいわねえ、分かってるわよ…」
唇を噛む。先ほどからこちらの攻撃はほとんど相手には通じていない。対して、向こうからの攻撃は恐ろしく正確かつ多角的であり、避けづらい。なるほど、あの自信も分かるというものである。せめてあの手から出ている(?)謎バリアだけでも攻略出来ないものか…。
一方、ラウラも決め手に今一欠けていた。思い出すのは、AICに甲龍を捕らえ、至近距離で砲撃を食らわせた瞬間。確かに機体も武装も動かなくなり、確実に大ダメージを与える…予定であった。
忌々しきはあの
それからというもの、ラウラは鈴を拘束する際には非固定武装の内部構造まで静止させなければならなくなった。そこまで集中させられては同時に攻撃など出来たものではない。脳の許容限界である。無敵だと思っていた戦法が、たかが小娘(思いきりブーメランby千冬)である代表候補生に破られるのは相当な屈辱であった。
が、それはそうとしてやはりラウラの実力は圧倒的であった。離れていればレールカノンとワイヤーブレード、近づけばプラズマ手刀とワイヤーブレードと、アリーナ程度の広さではどの距離においても二つ以上の攻撃手段でもって手数で相手を制する戦い。確立された戦闘スタイルであった。対して鈴は、相手の謎バリアに有効な攻撃手段がなく、圧倒されっぱなし。シールドエネルギーなど、とうにレッドラインである。
そして遂に均衡が破れる。ラウラはAICではなく、ワイヤーブレード四本でもって鈴を拘束、残りの二本で非固定武装を貫く。今度こそ、とばかりにレールカノンは腹部にぴったりと、まるで押し付けるように狙いをつける。
「存外長く耐えたな?だが、ここまでだ。」
朦朧とする意識の中、それでもラウラを睨む鈴。これが直撃すれば、エネルギーが残っていた序盤ならまだしも、機体へのダメージだけでは済まないだろう。ゆっくりと、エネルギーが収束していき…
「やめろおおおおおおおお!!」
遅れて舞い降りるヒーロー。その手に握るバリアー無効化攻撃を可能とする剣でアリーナ内壁を破砕(二度目)し、駆け付けた一夏であった。そのまま切りつけてきたので、咄嗟にラウラは飛び退き、距離を取る。レールカノンはまたしても獲物を捕らえ損ねた様である。
「鈴!大丈夫か!」
「まあまあね…」
ラウラと対峙し、こちらに背を向けながら尋ねる一夏に対し最低限強がった返答をする。その頼もしい背中に、思わず昔を思い出す。小学生の頃。名前の事で軽く虐められ、諦めて返答せず耐えていた、あの頃。突然間に立ちはだかり、彼らに威勢よく啖呵切っていた少年を。その姿が今、重なって目に映る。ああ、その背中を、
(好きになっちゃったんだなぁ…)
鈴は安心して意識を手放した。
気絶した鈴を、一夏が開けた穴から一緒に入ってきたシャルルが端まで運ぶ。
「てめえよくも…!」
「ほう、最近は乱入者が多いな。よほど友達ごっこがお好きと見える。そのお友達が倒れたが、感想はどうだ?」
「ふざけんな!」
忘れがちだが、ラウラの本懐は一夏を叩き伏せることである。願ったり叶ったりとばかりに一夏を煽る。それに乗って、一夏は
「感情的で直線的…ふん。絵に描いたような愚図だな。」
そう吐き捨て、AICを起動する。いくら速くても来る場所が分かればそこに網を張るだけである。まもなくもれなく一夏はその結界に捕まる。
「な、なんだ!?くそ、体が…!」
「…フン、やはりこの私とシュバルツェア・レーゲンの前では、貴様も有象無象の一つでしかない。目障りだ、消えろ。」
「一夏っ、離れて!」
レールカノンはまたしても以下略。大量にばら撒かれたシャルルからの銃弾によりラウラはAICの停止を余儀なくされる。
「ちっ雑魚が…!」
一夏が離れるまで、そして離れた後もシャルルは変わらず銃弾をばら撒き続ける。弾丸を撃ちきっては次の銃、撃ちきっては次へと、とめどなく続ける。
「面白い、ならばこの私が教えてやろう、世代差というものをな!」
そういって身をかがめるラウラ。おそらくあちらも瞬時加速だろう。シャルルは盾に持ち替え、身構えた。シュバルツェア・レーゲンという大質量の弾丸が弾かれるように加速した瞬間…!
「!?くっ!」
ガイィン!!!とラウラが飛び出してきた小柄な黒い影に弾かれ…いや、
「ふう、これだからガキの相手は疲れる。」
「ち、千冬n…うひぃ!?」
「学校では織斑先生だ。」
狙い澄ました様に頭部に真っ直ぐに高速で飛来する出席簿を紙一重で避ける。生身にIS用近接ブレード一本で瞬時加速中の機体を逸らしたり、ISでないと知覚出来ない速さでモノを投げつけたりと、控えめに言ってバケモノである。
「模擬戦をやるのは一向に構わん。だが…それが怪我人やアリーナのシールド破壊に繋がるのであれば、教師として黙認しかねる。決着は学年別トーナメントで付けてもらおうか?」
「…教官がそう仰るなら。」
そう言ってラウラは素直にISを解除する。
「お前たちも、それで構わないな?」
「は、はい!」
「僕もそれで構いません。」
一夏としては言いたいことは色々あったが、ここで辞めた方がいいという賢明な判断三割、凄まれた七割で肯定の返事を返す。
「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」
パンッ!と強く手を叩く。その音はやけに大きくアリーナ中に響くのであった。
AICについてはまた後程書きます。
気付けばお気に入りが50件に到達。ありがたい限りです。現金な話ですが作者のモチベーションに繋がりますので、感想、評価等も合わせて、これからも拙作をよろしくお願いします。