遅咲きの桜も散り始める4月下旬のこと。
(来い、白式)
織斑一夏は右腕のガントレットに左手を添えて目を瞑り、集中して相棒の名を呼ぶ。あれから更に一週間の猛特訓(本人談)によって格段にISの展開速度は速まった。一瞬の浮遊感の後、圧倒的な全能感が体を包み込む。見れば隣のセシリア・オルコットも既に展開を終えていた。
「よし、二百メートルほど上空へ飛べ」
本日は織斑千冬先生によるアリーナでの実践授業である。一般生徒ならともかく、専用機持ちともなればその指導は一層厳しいものとなる。故に、そう言われてすぐさまセシリアは動く。この程度のことでダメ出しなどされては代表候補生の名が泣く。それはもう重力など感じさせないほどスムーズな機動である。一方、一夏の方はというと、セシリアよりも…かなり遅かった。
「何をやっている、スペック上の出力は白式の方が上のはずだぞ」
経験を蓄積し学んでいくどちらかというと努力型の一夏にとって、昨日習ったばかりの急上昇、及び急下降は難題であった。現在実習中なのは例の『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』である。なんとか追いついた一夏に対し見かねたセシリアが
「一夏さん、イメージは所詮イメージですわ」
とアドバイスしてくれるが、そもそも浮いている感覚自体があやふやな一夏にとってはまだまだ過大な課題であった。
そもそも、
『反重力力翼と流動波干渉が…』
『こう、くいってかんじだ。』
前日まで粘って教えてくれる、今一番頼りになる教官達は素晴らしいセンスをお持ちのようである。とても真似できるようなものではない。
その後、
『ズドオォォォンッ!!』
アリーナの地面に大穴を開けたことと
「遅い、0.5秒で出せるようにしろ」
自信があった武装展開にダメ出しをされて心に少しダメージを負ったことを除けば、
何も問題なく授業は進み、アリーナを一人で片付けて無事本日の実習は終了となる。
「遅かったな」
待っていてくれた(それなら手伝ってくれても良かったのではと一瞬思ったが)篠ノ之箒と共に寮に帰宅する。
時を同じくして
「ふうん、ここがIS学園ね…」
小柄な少女が大きなボストンバッグを抱えて正面ゲート前に立っていた。
「えーと、受付受付っと…」
くしゃくしゃになった紙切れを一瞥し、再び握り込みポケットにしまった後、よく分からない広い敷地を歩き始める。
(お、ラッキー)
「ねえねえ、貴方ここの人?…整備科?まあいいや、本校舎一階総合事務受付…?ってどこにあるか知ってたら教えてよ」
入ってすぐ、たまたま見つけた男子に声を掛ける。この少女、コミュ力の塊である。
「?ああ、ちょうど私もそこに行くところです。どうぞ、着いてきてください。」
「そう?良かった~ここ広くてさ。分かりにくいのよねぇ。」
「ああ、確かに。もしかして(もう一人の)転入生の方ですか?地図などは…」
と他愛もない(?)会話をしつつ無事目的地に辿り着く。私はこちらですので、と先の男子は別れを告げ去っていった。
「ええと、それではこれで手続きは完了です。IS学園へようこそ、凰鈴音さん。」
転入手続きを済ませ、指定された寮へと向かう。
「さってと、あ、さっきの人にお礼言い忘れてたなぁ。…また会った時にでいっか。」
サバサバと切り替え、スタスタと歩き出す。尚その後、知らない女子(箒)と親しげに喋る一夏を見かけ、会話内容から一夏がクラス代表だと見抜き、静かに怒る彼女であった。
翌朝のSHR時間、鈴が一組に顔を出し宣戦布告、織斑先生に鎮圧され、絶妙に締まらない様子ですごすごと退散した後、
「はーい、今日はなんと皆さんお待ちかねの転校生を紹介しちゃいまーす!」
異様に高いテンションの副担任山田真耶先生によって紹介されたセカンド転校生は
「ルイス・ルースと申します。皆様どうかよろしくお願い致します。」
世界を驚かせたセカンド男子であった。
因みに、予め彼がこの日に来ると本国より知らされており、終始微妙な顔をしていたセシリアを除いた全生徒が驚愕と歓喜に包まれた(何故か他学年他クラスからも雄叫びが聞こえた)。
やっとルイスくんを出すことができました。誰視点か不安定な地の文を書くのは難しいものですね。違和感も多々あったかと思います。尤も、次から治るという保証もできないのがアレですが…。
次回は軽く専用ISの公開の方もしていきたいと考えてます。クラス対抗戦まで行けるかどうかといったところです。