3年生は今後の指標が、2年生は1年間の研鑽が、1年生は企業からの一時評価が確定する、本日は学年別トーナメント開催日。ある者は不安を抱え、ある者は闘志を燃やし、ある者は自分と向き合う。生徒達が思い思いの過ごし方をする一方、男子達は…
「…なぁ、なんで俺達はトーナメント直前だってのにこんなことしてるんだ?」
「えっと…仕方ないよ、先生方曰く、力仕事は男に任せるもの、らしいし…」
「…これも仕事と割り切って手早く済ませましょう。」
実況席への機材搬入、休憩室への食糧運搬、その他よく分からない荷物をどこからどこへと運ぶ。人はコレを雑用と呼ぶ。
それだけならばまあ愚痴を少々零すのみで済む3人。元々バイトの掛け持ちで鍛えた足を武器にする一夏+代表候補生2人は伊達ではない。だが、先程から気になる点がもう一つ。
「そうだよな、居心地悪いしな…」
周囲を見渡せば人、人、人。生徒ではない。アリーナ観客席に集った企業のお歴々である。向けられる視線は実に多様であり、大まかに興味と値踏み、そして差別の三種類である。
結局視線は、当然といえば当然だが、最後まで追ってきて、彼らを少し疲弊させた。腑に落ちない3人であった。
「…いいんですか?織斑先生。彼ら、トーナメント始まる前から凄く疲れそうですけど…」
「あぁ、良いんだ。今のうちに慣れた方が、な。」
「それもそうですけど…」
試合開始直前になってこの視線のレーザーに晒されるよりは、今のうちに慣れておいた方がいい。そういう配慮だった。
「ふう、やれやれ。やっと終わったか…」
「さすがに僕もちょっと疲れたよ。」
溜息をつく一夏と、苦笑を零すシャルル。中々絵になる光景である。それはさておき、雑務をしたのは彼らだけではないのだが、やはり視線は1点(3点?)集中。ダイレクトなその目線は、やはり精神に大なり小なり負担を強いるものであった。その手のアレやコレやには多少慣れた代表候補生2人に対し、一夏には少し刺激が強かったようである。
一方こちらは、
「お疲れ様、ルイス。お偉方の視線を釘付けにした気分は如何?」
「ありがとうございます、セシリア様。いやはや、参ったものです。私の帰属先は既に決まっているのですが…」
「仕方ありませんわ、彼らも人材集めに必死ですもの。笑って手でも振っておやりなさいな。」
「これはまた難しいご注文です。…冗談ですよね?」
「期待していますわ。」
結構余裕そうであった。
余談だが、実は彼らは本人達が思っている以上に人の視線というのには強い方である。こちらはもう慣れたものだが、学園中の注目の的である彼らは自室を出れば常に誰かに見られているのである。そんな彼らだからこそ、大会に支障を来すほど疲労しなかったとも言える。
着替えを済ませ、準備を終えた一夏&シャルルペア。充分休憩できたようで、静かに闘志を燃やしていた。
やがて、男子更衣室(今は二人しかいない)の電光掲示板が灯り、学年別タッグトーナメント開催を告げる旨が生徒会長より発言される。
「いよいよか。」
「そうだね。…ふふっ、一夏はボーデヴィッヒさんとの対戦の事しか頭にないみたいだけどね?」
苦笑混じりにシャルルが笑う。考えを読まれた一夏もポリポリと頬を掻き、
「まあな」
と呟く。
結局鈴は出場許可が降りなかった。まだ1年生とはいえ、努力の結果を試すこともできないのは辛いことだ。しかも、彼女は普通の生徒ではなく、国家を背負った代表候補生である。結果を残すどころか出場すらできないというのは、立場を悪くする要因にもなることは明白であった。
自然、拳に力が入る。
「余り感情的にならないでね。彼女は恐らく、1年生の中でもトップクラスの実力者だから…。」
「分かってるさ、ここまで来て負けるんじゃ、かっこ悪いしな?」
そう言って笑う。気合いは充分であった。
生徒会長挨拶を終えた電光掲示板は、やがてペア発表へと進行。先ずは組んでいない生徒達の抽選登録だ。対象者の中にはラウラ・ボーデヴィッヒの字もある。
ピッ、と。画面が切り替わり抽選結果が表示される。そこに表示された名前は…
篠ノ之箒は、女子更衣室にてその模様を見守っていた。こちらは二人しか居ない男子更衣室と違い、女子特有の騒がしさに包まれていた。が、抽選発表のこの瞬間は皆注目する。祈りをこめて、結果を求めて、戦力分析のため…やがて画面は切り替わる。
「…最悪だ…」
目を見開き、信じられない、という表情で呟く。可能性としては、あった。覚悟もしていた。だが、さすがに無いだろうとも、心のどこかでは思っていた。
だが、現実は非常である。
篠ノ之箒の隣。ペアとなった相手の名は、ラウラ・ボーデヴィッヒであった。
ラウラ「人を疫病神みたいに扱うな」
とある兎「弄っちゃった☆」