IS‐涙なくして瞳輝かず‐   作:三三三 三雲

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二十五話「強者と器用者」

一夏たちの動きが変わった。それは誰もが悟ったことであった。観戦者サイドはもちろん、当の本人たちでさえも分かる程に。当然の事だろうと頷くもの、そう来たかと感心するもの、そして、焦るもの。この場でただ一人焦っているその人物。箒である。

 

作戦はいたってシンプル。一夏がラウラの気を引いている間に、シャルルが箒を先に仕留めてしまおうというもの。成功すればラウラを二対一という有利状況に巻き込む事が出来る。シャルルは近接特化の箒に対して有利な中距離戦闘型、加えて代表候補生だ。残念だが箒の勝ち目は薄い。突破口はラウラが妨害することだが…そもそも彼女は一夏との戦闘をご所望だ。むしろ喜んで乗ってくるだろう。

 

そして見事、一夏はラウラの猛攻を耐え抜いた。健闘むなしく敗れた箒に悪いと思いながらも、即座に一夏のもとへ駆けつけるシャルル。見事なスイッチングで後退した一夏。乱れた呼吸を整え、再び戦線に加わった。

 

 

「一夏さんたちの作戦はうまくいったようですわね。」

 

「ええ、そのようです。篠ノ之様も善戦したのですが…」

 

「お友達、という立場からは少々心苦しいですわね…」

 

まったく、と肩をすくめるセシリア・オルコット。まったくです、と苦笑するルイス。二人とも前試合から直後の試合のため、アリーナ控室にてモニターを眺め、観戦していた。

 

「いずれにしても、」

 

「ここからがスタートライン、ですわね。」

 

 

 

状況は二対一、シールドエネルギーは、余裕とは言えないがまだある。加えて、

 

「よし、行くぞ!」

 

「うん、勝とう一夏!」

 

頼れる仲間がいる。

 

「よし、決めるぞ!」

 

零落白夜。剣に宿され、零落してなお輝く、沈まぬ太陽の輝き。一撃必殺の刃で突撃する。

 

「触れればシールドエネルギーを消し去るらしいが…ならば当たらなければいい」

 

いうやいなやAICによる捕縛網が一斉に飛んでくる。不可視のそれを、ラウラの視線、一挙一頭足から予測しつつ避ける。急停止、転身、急加速。難しい姿勢制御をこなしていく。地道な特訓の賜物であった。

 

「ちっ…小癪な真似を!」

 

「一夏!前方二時の方向に離脱!」 

 

焦れてきたラウラが、停止結界に加えてワイヤーブレードを射出。不利を悟ったシャルルから声が飛ぶ。自分の攻防に意識を傾けつつ一夏の援護をする。二対一でなお互角なラウラもだが、それに並ぶほどの優秀さである。

 

やがて、一夏はついにラウラを射程に捕らえる。

 

だが、

 

一夏が近づくほどラウラからも捉えやすくなる訳で、

 

瞬間、一夏の全身が硬直する。逃げ回る蝶を網に入れたがごとく。

 

ラウラの表情が歪む。

 

…しかしその歪みは、喜悦ではなかった。

 

「知らなかったか?これはタッグマッチだ!」

 

AICには弱点が一つ存在する。それは、対象に意識を最大限まで傾けなければならないことだ。一夏を捕らえたラウラの意識は全てそこに注がれた。その隙を突き、肉薄する影。言わずもがな、シャルルである。正確なショットガンの六連射が大口径レールガンを粉砕する。

 

「一夏!」

 

「おう!」

 

開放された一夏が零落白夜を構えなおし、必殺の、勝利を確信した一撃を放つ。

 

ラウラの顔が初めて驚愕に染まり…

 

 

…ここで一つ注意しなければならないことがある。一夏はこの攻防の間、常時零落白夜を発動させていた。シールドエネルギーが万全ならば何も問題は無かった。が、それは…

 

キュゥゥゥゥ…ン

 

「なっ、ここで!?」

 

零落白夜はラウラのシールドを浅く切り裂き…そこで力尽きた。

 

「限界までシールドエネルギーを消耗してはもはや戦えまい!」

 

一転、反撃に出たラウラのワイヤーブレードを必死に弾く。

 

「させないよ!」

 

「邪魔をするな!」

 

ここぞとばかりにその高い技量でもって二人を同時に圧倒する。

 

「ぐっ」

 

「シャルル!」

 

被弾したシャルルに気を取られた一瞬。

 

「これで終わりだ!」

 

一夏を一夏を蹴り飛ばし、ワイヤーブレードで止めを刺そうとする。

 

「まだ!」

 

「な…!?瞬時加速(イグニッション・ブースト)だと!?」

 

これぞシャルルの奥の奥の手…という訳ではなく。どうやらこの戦いで覚えたらしい。器用さもここに極まれり、である。

 

慌ててシャルルに対処するためAICを発動しようとする一瞬、今度は一夏の、正真正銘、奥の奥の手が発動。シャルルがわざと残談を残してばら撒いておいたアサルトライフルを拾い上げ、発砲。ここでも特訓が生きた形である。シャルルがどんどん肉薄していき…

 

 

 

「…驚きましたわ、シャルルさん…いつの間に瞬時加速をお覚えに?」

 

「分かりませんが、この短期間で習得されたのでしょうか…だとしたら驚くべきことですが。それとも前から使えたものをお隠しに…?」

 

後にこの戦闘で覚えたと聞いた時、彼らは腰を抜かすことだろう。それほど規格外なのだ。未完成とはいえ、一国の代表を剣一本で世界最強に君臨させる立役者を習得するというのはそれだけ難しいことなのである。

 

「なにはともあれ…勝ちましたわね、一夏さん」

 

「そのようです。ツーマンセルであることを見事に活かした勝利ですね。」

 

第二世代最強威力にして最低命中率を誇るパイルバンカー『盾殺し(シールド・ピアース)』。それがシャルルのIS『ラファール・リヴァイブ』に搭載されていることを彼らはデータ上で知っている。不意を突いた瞬時加速からの、不意を突いた盾殺し…決まれば確殺であろう。そして今決まった。

 

異変はここから始まる。

 

「な…!?なんですの、あれは!?」

 

突如、負けたラウラが黒い物体に覆われ、旧式ISを纏った女性を形取っていく。

 

「まさか…」

 

「あれは、まるで…」

 

誰もが知る、そのシルエット。IS操縦者ならば一度といわず幾度も見る、その威容。世界最強の座に一時君臨していたその姿は…

 

黒い全身に、黒い眼。その黒曜の瞳に、何故かモニター越しに捉えられたような感覚を、ルイスは感じた…。




キーボードを叩く手が寒くて仕方がない今日この頃。

「零落白夜 意味」で検索。やはり変わらず正確な意味は存在しないのでしょうか。ということで、迷った時の独自解釈。おそらく、白夜=太陽が沈まない日=沈まぬ太陽、零落=落ちぶれること=天体から刀(雪片)へと太陽を落とす(移す)こと。で、沈まぬ太陽が宿った刀、と…おおイタい…(笑)
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