表れたのは漆黒のIS。今となってはほぼ見なくなった
「全生徒へ緊急放送!速やかにアリーナを出ろ!」
織斑千冬教諭の対応は速かった。場慣れしているかのような手際の良さに頼もしさすら感じる。
だが、
「ダメです!遮断フィールド全閉鎖!放送機器までハッキングを受けています!」
相手の対応の方が速かった。
「…ならばアリーナへの直通を利用して試合中の両名へ連絡しろ、教員が行くから下がっていろ、とな。」
「はい!…『織斑君!凰さん!…』」
(このIS学園に侵入どころかハッキングまで仕掛けるか…この時点で絞り込めるが、隠す気などないということか)
山田真耶教諭の勧告中、千冬は思考する。
「いや、先生たちが来るまで俺たちで食い止めます。」
弟の勇ましい言葉。気に食わないがそれが一番理に適っている。これもすべて相手の思惑通りなのかも知れないが。
「本人たちがやるといっているなら、やらせるしかないだろう。」
「な、何を悠長なことを言っているんですか!?」
「まあ、コーヒーでも飲んで落ち着け。」
「…織斑先生。それ、塩なんですけど…」
「…いや、そんなことは無い。さあ、飲め。私は要らん。」
「そんなぁ…」
「熱いので一気に飲み干すといい。」
悪魔である。
「織斑先生!わたくしに出撃許可を!」
それから少しして状況を見て取ったセシリア、箒、ルイスが指令室内に駆け込んでくる。
「そうしたいところだがこれを見ろ。」
次々に表示される遮断シールドの情報は全て
誰もが思考する中、おもむろにルイスが口を開く。
「でしたら…」
「…なあ鈴。アイツの動き、何だか機械じみてないか?」
「ISは機械よ。」
何言ってんの、と息を吐く鈴。避けながら呆れるとはなかなか器用である。
「いや、そうじゃなくてだな…なんというか、人間らしさを感じないんだ。あれ、本当に人が乗ってんのか?」
「言われてみればそうかもしれないけど…ううん、ISは人が乗らなければ動かない。そういう風に出来ているはずよ。」
「だけど、例えば今だって俺たちが話していると攻撃してこないし…仮にだ、もし無人機だとしたら」
「勝算はあるってわけ?」
「ああ、何せ思いっきりやれる。」
「…OK、じゃああれを無人機だと仮定して…」
『織斑一夏様、聞こえますか?』
「ん?ルイスか!?」
『はい、ご無事そうで何よりです。時間がないので手短に。現在の第二アリーナCブロックは生徒全員の避難が終わっています。その近辺のシールドに零落白夜を当ててもらえないでしょうか。』
「え…シールドに、って…良いのか?」
『はい、既に織斑先生からの許可も取ってあります。ご健闘を。』
「あ、おい、ちょっと!?」
唐突に切れるプライベート・チャネル。
「どうする一夏。」
「…やるしかない、か。隙を見計らって行くぞ!」
ルイスの提案した作戦案はいっそとてもシンプルだ。生徒の退避が完了したブロックに教員IS組を集結させ、一夏の零落白夜で開かれた場所から突入していくというもの。既にクラックを終えた場所はいくつか存在するし、十分可能な範囲だった。問題があるとすれば一夏のエネルギー残量くらいか。チャンスは一度きりである。
かくして、鈴が決死の覚悟で繋いだ数秒間を使い、一夏はアリーナの遮断シールドの一部を無効化するのであった。
~世界のどこかで~
「あぁ~そんな簡単に済まされちゃうかぁ。最適解だけど面白くなぁ~い!」
彼女にしてみれば計画は九割方成功していた。織斑一夏の実力確認、織斑千冬へのアピール、新型の実験。だが残り一割がとてもとても重要なことだった。「篠ノ之箒に無力さを実感させること」である。これだけはあやふやで終わってしまった。
「んー、まいっかあ!箒ちゃんを信じてお姉ちゃんは待ってるからね~!」
かくしてこの事件の黒幕にして天災と謳われた兎は満点の笑顔を満天の星空に向けるのであった。
今話も独自解釈が結構盛り込まれております。原作で描写されなかったところにアングルを向けるとどうしてもこうなりますね。大目に見てください。
まずこの事件中、上級生はどうしていたのかですが、第一~第三アリーナ全て使って各学年対抗戦をしており、対戦者以外はどの試合を見ても構わなかった、ということにしました。当時第二アリーナに居なかった上級生は(外から介入するクラック組以外は)手も足も出ない、そんな感じ。
アリーナの遮断シールドのレベル4が緊急閉鎖となっているのも独自設定です。なんとなく簡単には開かなそうってだけです。
アリーナ席のブロック分けも独自設定です。ただしこちらはどこのアリーナでも基本そうなっていそうではあるのであまり違和感はない。…はず。
そして大きすぎる改変点、ルイスくんの作戦ですが、原作では相手を無人機だと”仮定”し、"機能中枢が焼き切れるまで"に破壊していました。これには流石に、仮定しただけなのにやり過ぎでは?と疑問を持った故の変更です。
※前書きと後書きを修正
※誤字修正