遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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また始めさせていただきました、荒巻高原です。
頑張って書いていくので、よろしければ見てやってください。



第1章 漂流
第1話 荒野のデュエリスト


何処までも広がる荒野、その荒野の中心で、岩やサボテンだらけの、代わり映えの無い景色を見ながら青年は呟く。

 

「ここは……どこなんだ……?」

 

照りつける日差しの中、薄汚れて少しボロボロなマントを羽織り、同じ様な状態のカウボーイ・ハットを被ったその青年は、この広い荒野を一人で歩いていた。 

何時から歩いていたのか、何故こんな所を歩いているのか、青年にはまったく解らない。

 

「(俺は……俺だ。 大事な物も……持っている)」

 

青年はマントの下に隠れている、自分の腰に巻かれたガンベルトに手を伸ばす。

青年が持っているのはそれだけ、それ以外の物―――水も食糧も持っていない。

 

「(こんな……解らないまま……死んで……堪……るか……)」

 

とうとう青年は力尽きて倒れる。

このまま青年は干からびてミイラになるか、荒野に巣くう獣の餌食になるかのどちらかだった。

だがこの青年を”神”は見放さなかった。

遠くから何かが近づいて来る。

車のようだ。

 

「(いや~遅くなっちまった。 まさか今日に限ってあんなに込んでいるとは……もう昼頃か、客が入り始めるから、フレアは今頃目ぇ回してんじゃないかな~)……ん?」

 

車を運転している男が、荒野の真ん中で倒れている青年を見つける。

男は慌てて車から降りると、青年を抱き起こす。

 

「おい! どうした!? しっかりしろ! …こりゃいけねぇ!」

 

男は急いで車の中から水の入ったタンクを取り出すと、青年にそれを飲ませてやる。

 

「……とにかく、置いては行けん」

 

男は青年を車に乗せると、アクセルを踏み込み、先を急いだ。

 

 

* * *

 

 

クラッシュタウン  南地区  レストラン・サザンライト

 

クラッシュタウン―――D・ホイールの製造に必要な鉱石、”ダイン”が眠る鉱山、その麓にある町。

その昔、鉱石を求めた荒くれ者達が決闘を繰り広げた場所でもある。

現在では決闘に勝利し、鉱山の所有権を手にした”クラッシュ・ファミリー”が睨みを利かせている為、小さな縄張り争いが起こる程度であった。

 

その町の南側、その地区にある他の建物よりも比較的大きな店―――レストラン・サザンライト。

昼時には労働者や町民達で賑わう憩いの場。

その店の中で一人の少女が忙しそうに駆け回っていた。

 

「フレア~! こっち注文~!」

 

「もう作ってあるからカウンターから持ってって! は~い! 今行きま~す!」

 

後頭部の高い位置で結んだ金髪の髪を揺らしながら、カウガールスタイルの少女――

――フレアは精力的に働いていた。

 

「(遅いな~も~! 兄さんは何処まで買いに行ったのよ~!) はい! ご注文は? 今人手不足だから食べ物だったらサンドイッチにしてね!」

 

「それじゃあ注文聞く意味ないじゃないか……まあ好きだからいいけど」

 

フレアは急いで厨房へと駆け込むと、すぐに具材を挟んだ食パンを運んでくる。

 

「はいブロンソンさん! お待ちどう様!」

 

「あ、あれ? 卵は? 何時も入ってるのに……」

 

「売り切れ! 兄さんが帰らなきゃありません! 苦情は兄さんにね!」

 

「え~!? また遅かったか! …何時もこんなんだ」

 

ブロンソンは残念そうな顔をしてサンドイッチに噛り付く。

ブロンソンは約半年前、クラッシュタウンにて開かれたレンタル・デュエル大会に参加する為ここに訪れた決闘者なのだが、時間を大幅に間違えて遅刻してしまい、大会に参加する事が出来なかった。

余程悔しかったのか、来年の大会に遅刻しないようにする為、このクラッシュタウンに留まり、すっかり馴染んでしまった。

 

「もうここに来て半年になるけれど、もはや第二の故郷の様な気がするよ。 俺にあった場所だ」

 

「ふふ! そうだよね! 私も大好き! この町!」

 

フレアとブロンソンが笑っていると、店のウエスタン・ドアが勢いよく開かれる。

フレア達が振り向くと、そこには先程の青年を背負った男が入ってきた。

 

「兄さん! 遅いじゃない……!? どうしたのその人!」

 

「荒野の真ん中で倒れてたんだ! 奥へ運ぶから手伝ってくれ!」

 

フレアは頷いて青年を奥の部屋へ運ぶのを手伝った。

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

 

「しっかし、何処から来たんだろうなこの人。 …服装からして荒野の人のはずだが……」

 

マントと帽子を脱がせ、ベッドに横たわらせた青年の服装を見る。

首に巻いたネッカチーフにウエスタン・シャツ。

ジーンズにウエスタン・ブーツと、時代を間違えたかのような格好を見れば、完璧にこの荒野の住人だという事が解る。

 

「兄さん、この人ここ(クラッシュタウン)の人よ」

 

「はあ!? どうしてそう言える? あったことも無いぞこんな人!」

 

「だってホラ! ”決闘銃(デュエルガン)”!」

 

フレアが青年の腰に巻かれたガンベルト、そこに収められた物を指差す。

決闘銃(デュエル・ガン)とは、クラッシュタウンに住む決闘者の証であり、ここで”決闘(デュエル)”をするには、これが無ければ話しにならない。

 

「決闘銃? …いやいや! でかいだろ! どう見ても普通の”決闘盤(デュエル・ディスク)”位はあるぞ!」

 

普通の決闘銃は拳銃サイズの小型な物であるのに対し、青年の腰に提げられている物は明らかに大きい。

ガンベルトのホルスターの中にあるのでどういう形をしているのかは分からないが、普通の決闘銃の3、4倍はあるだろう。

 

「う……こ、ここは……?」

 

二人が話しているうちに、青年が目を覚ます。

ぼやけた視界の中に、男と少女が映った。

 

「おお! よかった!」

 

「おはよう!」

 

青年はしっかりと意識を覚醒させると、体を起こして辺りを見回す。

 

「ここは…? 俺は一体……」

 

「ここはクラッシュタウンだよ、荒野のど真ん中で倒れていたあんたを俺がここまで運んできたんだ。…食糧も水も持たないで荒野をうろつくなんて、随分と命知らずだな。 一体どうしたんだ?」

 

フレアの兄が青年に尋ねると、青年は顔を顰めて俯く。

 

「……解らない、どうして俺はあそこにいたのか、俺は何をしていたのか……まったく解らないんだ」

 

「何!? もしや”記憶喪失”ってやつか? おい! 自分の事も解らないのか!?」

 

「……俺は……解る。 俺の名は”フリント”。 …決闘者(デュエリスト)だ」

 

決闘者(デュエリスト)!? 決闘(デュエル)出来るの!? ならやっぱりそれ決闘銃!?」

 

フレアが目を輝かせてフリントのガンベルトを見る。

フレアが眼を離さず、ずっと凝視しているので、フリントは立ち上がり、その中にある物を抜き放つ。

 

「わぁ~! やっぱり決闘銃!」

 

「こ、こんなにでかいのがあるのか……」

 

フリントが見せたごつくて大きい決闘銃。

軽々と構えられたそれの迫力は相当なものだった。

 

「…お前達は決闘銃の事を知っているのか?」

 

「知ってるも何も、決闘銃はこの町で作られたのよ? …あれ? あなたこの町の人じゃないの?」

 

「…解らない、俺が覚えているのは自分の名前と―――」

 

フリントは銃口を虚空に定めて、構える。

 

「”決闘”の事だけだ……」

 

フリントは決闘銃をガンベルトに収めると、壁に掛けられていた帽子とマントを身に付ける。

 

「世話になった。 今は何も出来ないが、きっと何時か借りを返す」

 

そう言って出て行こうとするフリント。

 

「ま、待ってよフリント! そんなに急がなくてもゆっくり―――わっ!」

 

フリントを慌てて追いかけようとしたフレアは、急に立ち止まったフリントに衝突してしまう。

フリントは何事も無かったように突っ立っていると、二人の方に振り向く。

 

「…何か表が騒がしいぞ」

 

「何? 喧嘩か何かか? 見てくる!」

 

フレアの兄は壁に掛けていた自分の決闘銃を手に取ると、急いで表へと向かった。

 

 

* * *

 

 

「いてて……ここはお前の様な奴が来るとこじゃないだろ!」

 

「誰がそんなルール決めたんだ?」

 

フレアの兄が表に出ると、そこには殴られて地面に倒れているブロンソンと、その前に褐色肌で後髪を縛った大柄の男が立っていた。

 

「ブロンソンさん! 大丈夫ですか!」

 

フレアの兄がブロンソンを助け起こす。

 

「こ、こいつが君達の店に入ろうとしたから……呼び止めたらこのザマさ……」

 

「いいじゃねえか、ここには話があってきたんだ」

 

男はいやらしい笑みを浮かべてフレアの兄に近づく。

 

「ブロンソンさんの言う通りだ! お前に何の用があってここへ来たんだ! ロットン!」

 

ロットン――クラッシュタウンに存在する3大勢力、”マルコム・ファミリー”のリーダー、マルコムの実弟である。

3大勢力とは言え、他の2勢力は実質的に北の”クラッシュ・ファミリー”の制圧下に置かれており、残りの2勢力である西の”マルコム・ファミリー”と東の”ラモン・ファミリー”がお互いの縄張りで小競り合いをしているだけである。

だがこのロットンという男は決闘の実力が高く、兄のマルコムでさえ敵わないと言われており、狡猾で頭も切れる。

ラモン・ファミリーどころか、クラッシュ・ファミリーですら手を焼く程の危険人物である。

 

「お願いがあって来たんだよ。 …今日からこの南地区はこのロットンの支配地だ。 ここを拠点にするんでな。 今すぐこの店を立ち退いて貰おうか」

 

「何だって!? 冗談じゃない! ここは死んだ両親から引き継いだ大事な店だ! お前なんかに渡して堪るか! …それにこんな事して、”お爺さん”が黙っているとでも思っているのか!」

 

フレアの兄はロットンに対して一歩も引かない姿勢を見せるが、ロットンは余裕の表情で笑みを浮かべている。

 

「お前達の爺さんがここの支配者、”クラッシュ”だという事は勿論解っている……だから何だ? もはやこの町で俺の力を知らない奴はいない……俺に恐いものなんてないんだよ。 …兄貴の弱腰にも愛想が尽きたんでな、ここらで独立を、って訳だ」

 

「何だと…!」

 

その瞬間、店のウエスタン・ドアからフレアが飛び出し、ロットンの前に立ち塞がる。

その腰に巻かれたガンベルトから決闘銃を引き抜くと、ロットンに対して勇ましく構える。

 

「ロットン! また悪さしてるのね! 兄さん任せて! お爺ちゃんに頼らなくてもこんな奴私がやっつけてやる!」

 

「馬鹿フレア! 遊びじゃないんだ! 下がれ!」

 

「そうだぜお嬢ちゃん、北に帰って爺さんに甘えてな」

 

「馬鹿にして! 絶対に許さないんだから!」

 

尚も戦おうとするフレアの腕を、兄が力強く引き戻す。

 

「遊びじゃないと言っているだろう!!! 子供がでしゃばるんじゃない!!!」

 

「…」

 

兄の物凄い剣幕に押され、フレアは少し涙を浮かべながら大人しく下がる。

 

「……ロットン、俺もクラッシュの孫だ、そう簡単に引き下がりはしない! そんなにここが欲しければ俺を倒してからにしろ!」

 

「……いいだろう、十字路に行くのは面倒だ(兄貴やラモンに見つかったら面倒だからな)。 ここでやろうじゃないか」

 

二人の言葉に、店の客や集まって来た野次馬が騒がしくなる。

 

 

 

おい、”決闘”だ!

 

ストークとロットンが”決闘”するってよ

 

大丈夫なの…?

 

 

 

ストークとロットンが距離を離して向かい合うと、その中心にブロンソンが進み出る。

 

「いいか? このコインが地面に落ちたら、スタートだ……行くぞ!」

 

ブロンソンがコインを弾き上げて身を引くと、二人は自身の決闘銃に手を伸ばす。

これこそがクラッシュ・タウンの”決闘”。

合図と共に”決闘銃”を引き抜き、先に”決闘盤”に変形させ、手札をドローした方が先攻となる。

コインが落下していき―――地面に落ちた。

 

「(よし! 先攻は…) !? うわぁぁぁ!!!」

 

「兄さん!?」

 

フレアの兄―――ストークが決闘銃を変形させようとした瞬間、ストークの体が一瞬光り、その場に倒れてしまう。

 

「……悪いが、お前と決闘ごっこしてる暇はないんだよ」

 

ロットンが引き抜いたのは決闘銃ではなく、背中に隠してあった電磁銃。

それをストークに向けて撃ったのだ。

 

「ぐ……ひ、卑怯だぞ……」

 

「おお、タフだな。 流石はクラッシュのお孫様、ってところか。 …それじゃ今度こそ眠って貰おうか……アディオス」

 

ロットンはストークに近づき、再び電磁銃を構える。

 

「やめて!!!」

 

フレアが兄を庇ってロットンの前に立つが、それでもロットンは引き金を引こうとする。

 

「(誰か……助けて!)」

 

フレアはそう願いながら目を閉じる。

その瞬間、聞こえてきたのは電磁銃の発砲音ではなく―――

 

「うおっ!?」

 

ロットンの同様した声、そして電磁銃が地面に落ちる音。

恐る恐る目を開けてみると、ロットンが手の甲を押さえて自分達の店の方を睨んでいる。

ロットンの手の甲には細い切り傷、その近くに落ちている電磁銃と1枚のカード。

そしてロットンが睨んでいる店の入り口には一人のガンマン―――”決闘者”が立っていた。

 

「……何だお前は」

 

「真剣勝負を挑んできた相手にその仕打ち……それでもお前は”決闘者”か!」

 

「”決闘者”? ……違うな、俺は”リアリスト”だ。 お前こそなんだ? 」

 

”決闘者”は構えていた決闘銃を下げる。

 

「俺はフリント! ”決闘者”のフリントだ! …俺と”決闘”しろ! …俺が勝ったら二度とここへは来るな!」

 

「……そうかい!」

 

ロットンは素早く電磁銃を拾い上げようとするが、電磁銃がロットンの手に触れる前に、電磁銃がフリントの決闘銃から撃ち出されたカードによって弾き飛ばされた。

撃ち出されたカードはフレアの前に落ち、フレアはそれを拾い上げる。

 

「”ヴォルカニック・バレット”……」

 

フレアが目の前のカードに気を取られている間、他の者達は信じられないといった眼でフリントを見ていた。

ロットンが足元の銃を拾おうとした瞬間、眼にも止まらぬ速さであの大きな銃を構え直し、精確に(カード)を撃って、ロットンの銃を弾き飛ばしたのだ。

驚かぬものはいない。

 

「もう一度言う……俺と”決闘”だ。 …それとも、お前はそんな手を使わなければならない程、弱いのか?」

 

「……上等だ! ぶっ潰してやる!」

 

ストークに代わって、フリントがロットンの向かい側へと立つ。

 

「誰だか知らないけど……頼んだぜ!」

 

ブロンソンが再びコインを弾き飛ばし―――地面に落ちる。

ロットンが素早く決闘銃を引き抜くが―――

 

「(何ィ!?)」

 

その時、既にフリントは腕に決闘銃を装着し、変形を開始させていた―――だが。

 

 

 

 

「……悪いな兄ちゃん、俺が先攻だ」

 

この時、ロットンが何かした訳ではない。

純粋な速さで、ロットンがフリントより先に決闘銃を決闘盤に変形させ、手札をドローしたのだ。

 

「何てこった! あんたの決闘銃でかすぎだよ! 何て変形の遅さだ!」

 

ブロンソンが頭を抱える。

普通の決闘銃はこのルールを前提にして作られている為、高速で変形する。

だがフリントの決闘銃は大きすぎる為か、変形スピードが遅く、せっかくロットンより速く引き抜き装着しても、変形させている間に追い抜かれてしまう。

 

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

 

悪名高きリアリスト、ロットンと、謎のデュエル・ガンマン、フリントの決闘が始まった。

 

「そんな不恰好な決闘銃を使ってるお前が悪いんだぜ? 俺のターン! ドロー!」

 

ロットン 手札:5+1

 

「魔法カード《デビルズ・サンクチュアリ》を発動! これにより生まれるメタルデビル・トークンをリリースし、《サイバー・オーガ》をアドバンス召喚!」

 

ロットンの場に装甲で覆われた、機械の鬼が現れる。

 

ATK:1900

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

LP:4000

手札:2

モンスター

・サイバー・オーガ

魔法・罠

・セット

・セット

 

「お前の決闘銃がノロマなせいで先攻を取れちまったが、これはついてねぇ。 先攻は最初に攻撃できねぇからな……次のターンでお前は終わりだ」

 

ロットンがフリントに対して自信が満ちた笑みを浮かべる。

ロットンが伏せたカードは”リミッター解除”、そして”聖なるバリア―ミラーフォース―”。

手札には”ダブル・アップ・チャンス”、そしてもう一枚の”サイバー・オーガ”。

フリントが攻撃してくればミラーフォースで防ぎ、返しのターンで”リミッター解除”、または”サイバー・オーガ”と”ダブル・アップ・チャンス”のコンボでワンターン・ショットキルを決める。

悪党だがその実力は本物、万全な布陣でフリントを迎え撃つ。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:5+1

 

「……俺からも言う事がある。 ……お前に次のターンは来ない! このターンでお前の(LP)を撃ち抜く!」

 

「……笑えねぇ冗談だな、ハッタリはつけばいいってもんじゃねぇぞ」

 

ロットンが笑みを消してフリントを睨むと、何故かフリントは決闘盤を再び決闘銃へと変形させる。

 

「おいあんた! まさかホントに撃つ気じゃ…!?」

 

ブロンソンが慌ててフリントに声を掛けるが、フリントは構わずカードを装填し、照準をロットンに合わせる。

 

「幾らこいつが悪党だからってあんたまでそんな事―――」

 

「《サイバー・オーガ》をリリースし、《ヴォルカニック・クイーン》をお前の場に特殊召喚!」

 

フリントの決闘銃からカードが撃ち出されると、見事にロットンの決闘盤のモンスターゾーンに収まる。

 

「何!? 俺の場にだと!?」

 

サイバー・オーガが炎に包まれると、その炎の中から一体の竜が現れる。

その竜は体に炎を纏い、頭頂部には人間の女性の様な形をした炎が燃え盛っている。

 

ATK:2500

 

「(リミッター解除にダブル・アップ・チャンス、サイバー・オーガまで潰しやがった…!)……随分といいモンスターをくれるじゃねーか。 ありがとうよ」

 

「魔法カード《融合》を発動! 手札の《ヴォルカニック・エッジ》と《リボルバー・ドラゴン》を融合!」

 

フリントの場に角ばった体を持つ恐竜の様なモンスターと、その名の通り頭が巨大なリボルバーとなっている機械竜が現れると、2体の間の空間がねじれ、そこに2体が吸い込まれていく。

 

「融合召喚! 《重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス》!」

 

ねじれた空間から現れたのは大きな火の鳥。

その胴体には顔がついており、そのせいで火の鳥の脚は魔人の腕にも見える。

 

ATK:2800

 

「カードを一枚伏せる……ボム・フェネクスの効果発動! 自分のメインフェイズ時、場に存在するカード1枚につき300ポイントダメージを相手LPに与える事が出来る! 場には合計5枚のカード! よって1500ポイントのダメージを与える! 《不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビッグ・エアレイド)》!」

 

ボム・フェネクスがロットンの頭上へと移動すると、火炎弾の嵐を浴びせる。

 

「ぐおぉ! やりやがったな…!」

 

ロットン LP:4000→2500

 

「伏せていた魔法カード《融合回収(フュージョン・リカバリー)》を発動! 自分の墓地に存在する《融合》と、 融合素材1体を手札に加える! 俺は《リボルバー・ドラゴン》を回収!」

 

フリント 手札:1+2

 

「再び《融合》を発動! 場の《重爆撃禽 ボム・フェネクス》と、手札の《リボルバー・ドラゴン》を融合!」

 

リボルバー・ドラゴンが再び現れ、 ボム・フェネクスと共に空間のねじれに吸い込まれる。

 

「融合召喚! 《起爆獣 ヴァルカノン》!」

 

ねじれた空間から現れたのは、体中に改造を施された機械怪獣。

場に降り立つと、凄まじい咆哮を上げる。

 

ATK:2300

 

「あれ? さっきの融合モンスターの方が強かったのに、何故融合を……」

 

ブロンソンの言う通り、ボム・フェネクスの方が攻撃力が500ポイントも高い。

フリントの理解しがたい行動に、ロットンは再び笑みを浮かべる。

 

「おいおい、意味の無い事をするのが”決闘者”様のする事なのか?」

 

「俺は一度も意味の無い行動などしていない。 全ては勝利の為の準備、”弾の装填”……後は”引き金”を引くだけだ!  ヴァルカノンの効果発動! 融合召喚に成功した時、相手の場に存在するモンスター1体を選択! 選択した相手モンスターとこのカードを破壊して墓地へ送る!」

 

ヴァルカノンがエンジンを点火させると、燃え盛るヴォルカニック・クイーン目掛けて飛び掛かる。

 

「そして墓地へ送られたモンスターの攻撃力分のダメージを相手LPに与える! 《融爆》!」

 

「何だとぉ!?」

 

ヴァルカノンがヴォルカニック・クイーンに触れると、大爆発を起こす。

 

「ぐおぉぉぉ!!!」

 

ロットン LP:2500→0

 

ソリッド・ビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴る。

クラッシュ・タウンでも屈指の実力を誇るロットンに、フリントはワンターンキルを成し遂げてしまった。

周りの客と野次馬から大歓声が上がる。

 

「やったぁーーー!!! 兄さん! フリントが勝ったよ!」

 

「ああ……だが信じられん、あのロットンを、しかもワンターンキルで倒してしまうとは……あいつは一体何者なんだ……」

 

「ぐぐ……くそ!」

 

ロットンは急に走り出す、その先には電磁銃。

 

「させん!」

 

フリントはロットンの前方、ギリギリ当たらないようにカードを撃ち出し、動きを牽制する。

 

「それ以上動いたら今度は当てるぞ!」

 

フリントは銃を突きつけたまま、電磁銃とロットンの決闘盤から”ヴォルカニック・クイーン”を回収する。

ロットンもフリントの射撃の精確さをよく知っているので、迂闊に動けない。

 

「……約束だ、もう二度とここへは来るな! 行け!」

 

「……覚えていろ」

 

ロットンはそう呟くと、西の方へと駆けて行った。

 

「(フリントとかいったな……覚えていろ! ……次は何もさせねぇ! 何も出来ないまま俺の前に跪かせてやる!)

 

この時の雪辱を果たす為、後にロットンは修行の旅に出た。

そして数年後、恐ろしき秘策”ガトリング・オーガ”を引っ提げてこの町に戻ってくる事となる。

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「ロットンを倒しちゃうなんて凄い! しかもワンターンキル! フリントは凄い決闘者なのね!」

 

フレアが尊敬の眼差しをフリントに向けると、フリントは静かに笑い、決闘盤を決闘銃へと変形させ、ガンベルトに収める。

 

「…普段の俺では、あんな事は出来ない。 決闘者の仁義を踏みにじった奴に対する俺の怒りを、デッキが感じ取ったんだ。 ……デッキが応えたからこそ、俺は勝利を掴めたのだ」

 

フリントの言葉に、ストークとフレアは納得したように頷く。

 

「ロットンが勝てない訳だ。 …自己紹介が遅れたな、俺はストーク、こっちは妹のフレア」

 

「よろしくね! …ねえフリント、これからどうするつもりなの?」

 

フレアに問われると、フリントは暫く空を見上げて何も言わなかったが、やがて諦めた様に溜息をつき、兄妹に向き直る。

 

「……未だに名前と決闘以外、何も思い出せない……どうするべきかも、分からない……」

 

「なら思い出すまでうちにいろよ、遠慮はするな、あんたは俺達の恩人だ!」

 

「兄さん本当!? やったぁ! これからもよろしくねフリント! じゃあ私の友達紹介するから来て! この町の案内もしてあげる!」

 

フレアはフリントの返事も聞かないで無理やり引っ張って行ってしまう。

ストークは笑いながら二人の背に声を掛ける。

 

「フリントはまだ起きたばっかで本調子じゃないんだからな! 無理に引き回すなよ!」

 

多くの謎に包まれた青年、フリント。

分かっているのは名前と、彼が”決闘者”であるという事のみ。

それ以外は本人ですら分からない。

 

「(急いでいる訳ではない……この町で、ゆっくりと自分を探してみるか)」

 

フリントは心に”希望の風”を感じながら、フレアと共に町を歩くのであった。

 

 




という訳で始めてしまいました。
第1話……いきなりワンキルで申し訳ありません(汗)

初戦の相手は強力な奴にしたい→思いついたのがロットン→ロットンと言ったらワンキル

1話でやることじゃないかもしれませんが、ロットンとのデュエルにおける最大のテーマはワンキルだと思っているので。
今回だけの事なのでそんなにワンターンキルを連発するような小説では無い事をご了承くださいm(_ _)m

主人公について少し
・フリント
物語の主人公です。
彼が持っている決闘銃はGXの某勇者の物と大体同じだと思ってください。
ヴォルカニックまで使っておいてなんですが、某傭兵勇者とは何の関わりも持っていません。
ご了承ください。

・フレア
ヒロイン……というか彼女もどちらかと言うと主人公の位置づけです。
彼女のデュエルは次回です。
彼女はオーバー・ザ・ネクサスの主人公をイメージしています。 

その他
ロットンにサイバー・オーガを使わせたのはオーガ繋がりと、声優さんが鮫島校長と同じだったからです。 それだけです(笑) サイバー・オーガはサイバー流のカードですが、まあ宝玉獣が量産されて屑カード扱いされてしまう世界なので(単にファンサービスの可能性もありますが)、サイバー流にも色々あったんじゃないかという事でお願いします。
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