遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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第11話 コンボを超えて

 

「いらっしゃいませー!」

 

「……元気だなあいつ。 昨日の夜遅くに帰ってきたばかりなのに……しかも、ちょっと雰囲気も違うな」

 

「…今でも少し納得出来ないが、クラッシュの考えは悪くはなかったらしい。 サテライトという環境で、フレアは大きく成長したようだ」

 

フレアとフリントがクラッシュタウンに戻った夜、フレアは沢山の土産話を遅くまでストークに話し、朝には早起きして店を走り回っている。

 

「まあ、とりあえずフリント、お前さんには感謝してるよ。 そのチーム”サティスファクション”っていう奴等にもな。 妹のお守り、ありがとよ!」

 

ストークは椅子から立ち上がると、料理を運んでいるフレアに声をかける。

 

「フレア、今日はもう上がっていいぞ。 ニコとウェストに土産があるんだろ? それを渡して、そのまま遊んで来い」

 

「はーい! 兄さんありがとう!」

 

フレアは料理を運び終えた後、エプロンを外し、自分の部屋へ駆け込むと、決闘盤とサインカードを持って店から飛び出し、北へと駆けて行く。

行き先はニコとウェストが待つ、何時もの秘密基地だろう。

 

「さてと、バイトはまだ来ないし、俺がフレアの分まで働くとしますか!」

 

「俺は定位置にいる。 何かあったら呼んでくれ」

 

ストークに一声掛けると、フリントも店から出る。

フリントが言った”定位置”とは、サザンライトの店先に置かれた丸椅子の事であり、フリントは普段この椅子に座っている。

 

 

フリントは強いし、威圧感あるから、店の前に置いておくだけで防犯になるんじゃないかな? きっと悪い奴は皆逃げてくよ!

 

 

そう言って、フレアが考案したものらしい。

それでは客も寄って来ないのではないかとフリントは心配したが、既に”用心棒フリント”の名はクラッシュ・タウン中に広がっており、逆にフリントを見ようと客が集まってきた程であった。

始めてから大分経った今でも、時折フリントに挨拶しに来る町民がいる。

 

「(俺は見られる側じゃなく、見る側なんだがな……)」

 

「フリントさん、こんにちは」

 

さっそく声を掛けてきたのは、この南地区に住む老婆。

一人息子と二人暮らしで、息子は鉱山で働いているらしい。

最近ではここを通る度にフリントに挨拶をしてくれる。

 

「こんにちは」

 

「ここ……4日かえ? 見なかったわね~」

 

「……ここ数日、町を離れていた」

 

フリントと老婆が暫く会話していると、老婆が突然思い出したように不安そうな顔を見せる。

 

「フリントさん、気をつけなさいね。 さっきラモンさんとこの酔っ払いが、フリントさんがどうたらこうたら言いながらブラブラしているのを見たのよ」

 

「……解った」

 

フリントは老婆と別れ、歩いて行く姿を見送る。

その時、老婆が歩いていった道とは反対方向から、不規則な足音と耳障りな大声が聞こえてくる。

 

「ウィ~ヒック……フリントォ~! 出できやがれい! ヒック……」

 

「噂をすればなんとやら……」

 

フリントがその方向を見ると、顔を赤くした男が千鳥足でこちらに向かってくる。

明らかに酔っ払っていた。

 

「おお~! フリントォ~! 見つけたぜぃ! この間はよくもやりやがったなこんチキショーめ!!!」

 

「…お前は何時ぞやの酔っ払いか」

 

フリントは目の前の酔っ払いに見覚えがあった。

フリントがサテライトに向かう数日前、今の様に酔っ払ってサザンライトに乗り込んできたところをフリントに撃退された男である。

 

「あん時のリベンジに来たぜぃ~! 今度は負けねぇ~! 今度のコンボは本物だぁ~! おれっちの新しいコンボでおめぇをぶっ飛ばしてやらぁ~!」

 

「…こちらは構わないが、そんな状態で決闘が出来るのか?」

 

「へっ! それどころか絶好調でぃ! 酒はおれっちのパワーだぁ~! ヒック…」

 

男はフラフラと後方へ下がり、フリントとの距離を取る。

この時、騒ぎを聞きつけたストークが店から出てくる。

 

「決闘か?」

 

「ああ、すぐに終わらせる……おい、ここじゃ店に迷惑が掛かる。 広場でやるぞ」

 

 

* * *

 

 

「何所だっていいだろうがぁ~! ヒック…」

 

男を引っ張って広場まで来たフリント。

男と距離を取り、決闘銃を取り出して上に構える。

 

「上に向かってカードを撃つ。 それが地面に落ちたらスタートだ」

 

「へっへっへ……見せてやるぜぃ~! ラモン・グループNo.2であるスコッチ様の真の実力を~!」

 

フリントは上空にカードを撃つと、再び決闘銃をホルスターにしまう。

暫くして、二人の間にカードがひらひらと舞い降り、地面に落ちる。

 

「……俺の先攻だ」

 

フリントは何時も通りの早抜きを見せたが、スコッチの方は決闘銃を腕に装着させるところから手間取っており、フリントが先攻を宣言する頃にようやく決闘盤へと変形させていた。

 

「掛け声も無理か……まずはその酔いを冷まさせなければな。 俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:5→6

 

「《ヴォルカニック・エッジ》を召喚!」

 

フリントのが召喚したのは、ヴォルカニックの尖兵であるヴォルカニック・エッジ。

場に現れると、炎を噴き出しながら咆哮を上げる。

 

ATK:1800

 

「ヴォルカニック・エッジの効果発動! このターン、このカードの攻撃を放棄する事で相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

ヴォルカニック・エッジがスコッチに向かって火球を吐き出す。

 

「おわぁ~!? な、何するんでぃ!」

 

スコッチ LP:4000→3500

 

「アルコールを飛ばしてやっただけだ。 俺はカードを伏せてターンエンド」

 

LP:4000

手札:4

モンスター

・ヴォルカニック・エッジ

魔法・罠

・セット

 

「こんチキショーめ! おれっちのターン! ドロー!」

 

スコッチ 手札:5→6

 

さっきまでフラフラしていたスコッチの喋りや動作がはっきりしたものになっている。

どうやらフリントの思わぬ先制攻撃に驚き、酔いが冷めたようだ。

 

「速攻魔法《手札断殺》を発動! お互いは手札2枚を墓地に送り、2枚ドローするぜぃ!」

 

スコッチが捨てたカード

ゾンビキャリア

ゲルニア

 

フリントが捨てたカード

ヴォルカニック・バレット

ヴォルカニック・リボルバー

 

「永続魔法《ミイラの呼び声》を発動! おれっちの場にモンスターが存在しない場合、手札からアンデット族1体を特殊召喚出来るぜぃ! 来やがれい! おれっちのマイフェイバリットカード! 《酒呑童子》!」

 

スコッチが特殊召喚したのは、立派な黄金の髪を逆立てた赤鬼。

その手には”酒”と書かれた大きいひょうたんを持っている。

 

ATK:1500

 

「さっき墓地に送った《ゾンビキャリア》の効果発動! 手札を1枚デッキトップに置く事で、墓地から特殊召喚するぜぃ!」

 

続けて、様々な動物の体を繋ぎ合わせたようなゾンビが現れる。

 

ATK:400

 

「こっからがおれっちの新しい戦術! よーく見てろい! 魔法カード《モンスター・スロット》を発動! まずは自分の場のモンスター1体を選択! 選択するのは《酒呑童子》だぜぃ!」

 

スコッチの場に現れたのは怪物の様な3リールスロット。

そのリールが回り始め、スコッチがモンスターを選択すると左側のリールが止まり、そこには酒呑童子の絵が描かれていた。

 

「次に選択したモンスターと同じレベルのモンスターを墓地から1体除外! 酒呑童子のレベルは4! さっきゾンビキャリアと一緒に墓地に送ったレベル4の《ゲルニア》を除外するぜぃ!」

 

今度は中心のリールが止まり、そこには除外したゲルニアが描かれている。

 

「最後におれっちはカードをドロー! それが選択したモンスターと同じレベルのモンスターだった場合、場に特殊召喚出来るぜぃ! ドローしたカードは―――」

 

最後のリールが止まった瞬間、モンスタースロットからファンファーレが鳴る。

モンスタースロットが喜ぶような動作をした後、口から光が発せられ、その光の中から1体の赤いアンデットモンスターが飛び出した。

 

「レベル4の《ブラッド・サッカー》! 特殊召喚だぜぃ!」

 

ATK:1300

 

「(成る程……そういうコンボか)」

 

スコッチがドローしたのは、ゾンビキャリアの効果で自分の手札からデッキトップに置いたカード。

つまり、スコッチはモンスタースロットの効果が成功するように仕掛けていたのだ。

 

「レベル4《ブラッド・サッカー》に、レベル2《ゾンビキャリア》をチューニング!」

 

ゾンビキャリアが自身を2つの光輪へと変え、ブラッド・サッカーを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「シンクロ召喚! 《蘇りし魔王 ハ・デス》!」

 

光の柱から現れたのは、ボロボロの装束を着た悪魔の魔王。

その大きな体もボロボロであり、眼には”怨念の業火”が燃えているように見える。

 

ATK:2450

 

「シンクロ素材となったゾンビキャリアの効果! 自身の効果で特殊召喚され場から離れた時、ゲームから除外される! …まだまだおれっちのコンボは続くぜぃ! ここでおれっちのフェイバリットカード、酒呑童子の効果発動! ゲームから除外されているアンデットを1体、デッキトップに置くぜぃ! 置くのは《ゾンビキャリア》!」

 

「またデッキトップにだと…!」

 

またもやカードをデッキトップに置くスコッチ。

先程のコンボからして、スコッチがやろうとしている事は明白だった。

 

「永続魔法《デーモンの宣告》を発動! LPを500払う事でカード名を宣言! デッキを捲り、それが宣言したカードだった場合、手札に加えるぜぃ! おれっちが宣言するのは《ゾンビキャリア》でぃ! 手札に加えてこのまま通常召喚!」

 

スコッチ LP:3500→3000

 

スコッチはデッキからカードをドローし、確認もせずに召喚する。

デッキトップが何のカードなのか、スコッチにもフリントにも解りきった事である。

 

ATK:400

 

「レベル4《酒呑童子》に、レベル2《ゾンビキャリア》をチューニング!」

 

ゾンビキャリアが自身を2つの光輪へと変え、酒呑童子を囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「シンクロ召喚! もういっちょ! 《蘇りし魔王 ハ・デス》!」

 

光の柱から現れたのは、もう1体のハ・デス。

たったの1ターンでスコッチの場に2体の魔王が並んだ。

 

ATK:2450

 

「覚悟しやがれい! バトル! 蘇りし魔王 ハ・デスでヴォルカニック・エッジを攻撃! 【リベンジ・デストラクト・ハンド】!」

 

ハ・デスがヴォルカニック・エッジに近づくと、その大きな手でヴォルカニック・エッジの胴体を掴んで持ち上げると、ヴォルカニック・エッジの鎧の様な体を握りつぶし、消滅させてしまった。

 

「く…!」

 

フリント LP:4000→3350

 

「今度はテメェだ! 2体目で【リベンジ・デストラクト・ハンド】!」

 

次に2体目がフリントに掴みかかり、紫のオーラをフリントに流し込む。

 

「…ぐうぅぅぅ…! ぐっ…!」

 

フリント LP:3350→900

 

「へっ! どんなもんでぇ! おれっちはターンエンドでぃ!」

 

LP:3000

手札:0

モンスター

・蘇りし魔王 ハ・デス

・蘇りし魔王 ハ・デス

魔法・罠

・ミイラの呼び声

・デーモンの宣告

 

「……俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:4→5

 

「俺は永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《ヴォルカニック・エッジ》を特殊召喚! そして効果発動!」

 

再び現れたヴォルカニック・エッジ。

ハ・デス2体の合間から見えるスコッチに狙いを定め、火球を放つ。

 

ATK:1800

 

「おわぁ!? …そんなしょぼい事しても無駄だぜぃ! おれっちのLPはまだ大量だ!」

 

スコッチ LP:3000→2500

 

「俺は墓地に存在する《ヴォルカニック・バレット》の効果発動! LPを500払い、デッキから同名モンスター1体を手札に加える」

 

フリント 手札:5→6 LP:900→400

 

「魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスターを墓地に送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する! 手札から《ヴォルカニック・バレット》を墓地に送り、デッキから《ヴォルカニック・バレット》を特殊召喚!」

 

フリントの場に現れたのはヴォルカニックの弾丸、ヴォルカニック・バレット。

その小さい鎧の体は、熱い炎に包まれている。

 

ATK:100

 

「ヴォルカニック・エッジをリリース! 《ヴォルカニック・ハンマー》をアドバンス召喚!」

 

ヴォルカニック・エッジが光の中に消えると、その光の中からヴォルカニック・エッジよりも一回り大きい、肩や尾に炎を纏ったヴォルカニックが姿を現す。

 

ATK:2400

 

「へっ! 中々のを出したみてぇだが、ハ・デスより下じゃ―――」

 

「ヴォルカニック・ハンマーの効果発動! このターン、このカードの攻撃を放棄する代わりに、自分の墓地にいるヴォルカニック1体につき、200ポイントのダメージを与える! 俺の墓地のヴォルカニックは4体! よって800ポイントのダメージを与える!」

 

ヴォルカニック・ハンマーが肩の炎を燃え上がらせると、スコッチに向かって肩の炎を放つ。

 

「どわぁ!? …べらぼうめぇ! しょぼい事しても無駄だって言ってんだろうがこんちくしょう! しかもハ・デスより下だ! テメェに勝ち目はねぇ!」

 

スコッチ LP:2500→1700

 

「無駄な事など無い。 全ては勝利への布石……魔法カード《死者蘇生》を発動! お前の墓地にある《ゾンビキャリア》を俺の場に特殊召喚!」

 

フリントの場にスコッチのチューナーモンスター、ゾンビキャリアが現れる。

 

ATK:400

 

「お、おれっちのカードを…!」

 

「まさか、スタンディング用のデッキでシンクロ召喚を行う事になるとはな……レベル5《ヴォルカニック・ハンマー》と、レベル1《ヴォルカニック・バレット》に、レベル2《 ゾンビキャリア 》をチューニング!」

 

ゾンビキャリアが自身を2つの光輪へと変え、ヴォルカニック・ハンマーとバレットを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「天国と地獄、その間……死者が彷徨う荒野の龍よ! 現世の全てを無に帰せ! シンクロ召喚! 煉獄より現れよ! 《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》!」

 

光の柱から現れたのは、フリントの謎多きシンクロモンスター、煉獄龍 オーガ・ドラグーン。

その禍々しい爪や眼を光らせ、咆哮を上げる。

 

ATK:3000

 

「な、何でい!? 攻撃力3000!?」

 

「これで終わりだ。 速攻魔法《突進》と、永続魔法《強者の苦痛》を発動! 突進はモンスター1体の攻撃力を700ポイント上げ、強者の苦痛は相手モンスターの攻撃力をそのレベル×100ポイントダウンさせる!」

 

フリントが2枚の魔法を発動させると、オーガ・ドラグーンがさらに大きい咆哮を上げ、2体のハ・デスは竦み上がって動けなくなる。

 

煉獄龍 オーガ・ドラグーン ATK:3000→3700

 

蘇りし魔王 ハ・デス レベル6

ATK:2450→1850

ATK:2450→1850

 

「バトル! 煉獄龍 オーガ・ドラグーンで攻撃! 【煉獄の混沌却火(インフェルニティ・カオス・バースト)】!」

 

オーガ・ドラグーンがハ・デスの1体を獄炎で焼き尽くし、地獄へと送り返す。

 

「うぎゃあああ!!!」

 

スコッチ LP:1700→0

 

ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響いた。

フリントの逆転勝ちである。

スコッチは膝をつき、がっくりと項垂れた。

 

「チ、チキショーめ……負けちまうとは……俺のコンボの何がいけなかったんでい……もしかして酒か?」

 

「俺から言える事は……酒も決闘も正しくやれ。 お前は酒にもコンボにも溺れてしまっている。 大事なものが見えていない」

 

「大事なもの……酒か?」

 

幾ら優れたコンボでも、使い時を間違えれば簡単に覆される。

モンスター効果を上手く利用し、強力なシンクロモンスターを2体並べたスコッチのコンボ。

だが、それは多くの手札を消費してしまい、それ以降のサポートが難しくなってしまう。

幾ら強力なシンクロモンスターと言えども、単体ではどうしようも無い時がある。

スコッチはフリントの手が多く残された状態でこのコンボを行い、その結果フリントの強烈な反撃を防げずに敗北した。

フリントが言いたかったのは、”幾らコンボが優れていても、それを行う決闘者が相手と場―――決闘全体を見極められなければ意味が無い”という事だったのだが、スコッチはよく理解出来ていないようである。

 

「いや~お見事。 先生……」

 

フリントが決闘盤を変形させて銃に戻していると、北の方から細身で長髪の男が拍手をしながらやって来る。

にやけた顔で、どこか人を馬鹿にしたような眼をフリントに向けている。

 

「あ!? リーダー!」

 

スコッチが慌てて立ち上がり、その男を”リーダー”と読んだ。

それを見たフリントは確信する。

この男こそが、クラッシュ・タウン3勢力の一角―――

 

「……お前が”ラモン・ファミリー”の頭か」

 

「ええそうです……それと、うちは”ファミリー”ではなく”グループ”。 ”ラモン・グループ”です。 ファミリーだなんて……マルコムやクラッシュの様な古臭い呼び方は止めてくださいよ」

 

ラモン・グループのリーダー、”ラモン”はにやけた顔のまま手を軽く振る。

 

「リーダー直々にお出ましとは……このNo.2を迎えに来たのか?」

 

フリントは軽くスコッチに眼をやる。

スコッチは緊張した様子で、その場に突っ立っていた。

先程のラモンの言葉から、おそらく今の決闘を見ていたに違いない。

スコッチは逆転負け決闘をリーダーに見られていたのである。

もうNo.2の座にはいられないだろう。

 

「まあ、それもありますが……こいつだけではありません。 どうです? 先生もご一緒に…」

 

どうやらラモンはフリントの腕を見込み、自分のグループに引き入れるつもりでいるらしい。

 

「クラッシュの所よりも報酬は弾みますぜ? それにうちには酒も女も、他と比べ物にならない程ある。 そこの元No.2が昼間から飲んだくれてるのが証拠だ」

 

「ひいっ!?」

 

ラモンの言葉を聞いて、スコッチが怯えた様な声を出す。

降格は確実のようだ。

 

「俺はクラッシュ・ファミリーに身を置いている訳ではない。 だからと言って、お前にもマルコムにも付こうとは思わない。 俺には金も酒も女も必要無い。 …さっさと帰るんだな」

 

「これはこれは……先生程の若い方が金も酒も女もいらないと。 ご心配はいりませんぜ? 酒は上等な物を用意してありますし、女も若くて色っぽい娘ばかりです。 クラッシュやマルコムの所とは質も段違いですよ?」

 

「くどいぞ」

 

「そうですか……もしかして、先生はクラッシュの所の乳臭い孫娘みたいのが好みで―――!?」

 

「失せろ」

 

何時の間にか、フリントはラモンの喉元に決闘銃を突きつけていた。

その早業に、スコッチは恐れをなして後ずさりを始めている。

ラモンは汗を浮かべて眼を泳がせていたが、やがて冷静さを取り戻し、元のニヤケ顔に戻る。

 

「……撃たないでくださいよ? 俺は店で暴れた訳ではないし、先生も面倒事は嫌でしょう? ……今回は引きましょう。 何時でも待ってますんで、気が向いたら東のバーにどうぞ。 それと……身の置き所は、慎重に選んだ方がいいですよ? 先生……」

 

ラモンは踵を返すと、元来た道を引き返していく。

スコッチも躓きながら、その後を追いかける。

 

「フ、フリント……久しぶり……一体何があったんだ?」

 

フリントの後方から、物陰に隠れたブロンソンが恐る恐る尋ねてくる。

どうやら事の一部始終を遠くから見ていたらしい。

フリントはその詳細をブロンソンに話す。

 

「成る程……ラモンもマルコムも、戦力集めに必死だからな。 フリントみたいに強い決闘者がいれば、そりゃ勧誘するさ」

 

「どういう事だ? 奴等はそんなに数が少ないのか?」

 

「逆逆。 数が多いくせに弱い奴ばっかって事。 スコッチ見たいのがNo.2の時点で解るだろ?」

 

No.2であるスコッチの決闘への理解を見れば、その下の者達のレベルもたかが知れている。

そんなラモン・グループと小競り合いを続けているマルコム・ファミリーも同様であろう。

 

「まあ何にせよ、クラッシュ・ファミリーがいてくれれば何も問題は無い。 クラッシュ・ファミリーの決闘者の質が高いし、何より”シーゲル”さんがいるからな」

 

「シーゲル?」

 

「知らないのか? クラッシュ・ファミリーの実質的なNo.2だよ。 頼りになる人だ。 マルコムとラモンが大人しくしてる要因の一つだろうな」

 

「……それは山の様な形の頭をした、人がよさそうな男か?」

 

「ん? …ああそうだな、その人だよ。 見た事はあるのか?」

 

「……見たどころか―――」

 

フリントはその事についてブロンソンに話す。

シーゲルはブロンソンの言う通り、クラッシュ・ファミリーのNo.2であり、側近でもある。

クラッシュがシティに行った際にも同行し、フリントに帰還の事を報せに来たのも彼である。

フリントはその時に彼を知った。

 

「……奴の帰り際に、俺は決闘を挑んだ。 クラッシュの近辺を守る決闘者の実力を知りたくてな。 だが奴は―――」

 

 

お、俺はそんなに決闘は強くないんだ。 だからやる事はないよ。 そ、それじゃ急ぐからこれで!

 

 

「シーゲルさんがそんな事を? ハッハッハ! 謙虚だなぁ!」

 

「……そうなのか?」

 

「シーゲルさんは忙しいんだ。 あんまり困らせちゃ悪いぜフリント。 …それにしても腹減ったな。 サザンライトに行こうぜ!」

 

「ああ……」

 

 

* * *

 

 

「ぐ……くそぉ…!」

 

「シーゲルさん! やっちゃいなよ!」

 

「……(うう……どうする……)」

 

ここはサテライトの北地区。

ウェストの声援を受けながら今、シーゲルは焦りに焦っていた。

事の始まりは、シーゲルが用事を終え、クラッシュの屋敷に戻る途中、マルコム・ファミリーの一員がフレアとその友達であるニコとウェストに絡んでいるのを見かけたところから始まる。

自分のボスの孫娘の危機を見て咄嗟に割り込んだのはいいが、自分の決闘の腕が大した事がない事を思い出し、この状況をどう切り抜けるかで非常に悩んでいる最中である。

 

「(どうする…? 決闘になってしまったら……正直勝てる自信が無い。 くそ~…どうして俺はあの時”セルーガ”にまぐれで勝利してしまったんだ……おかげで仲間からは変に祭り上げられるし、ボスに正直に話しても”そのままハッタリかましてろ”だなんて……ここでばれたら他の勢力を調子付かせる事になる……帰る場所が無かった俺を拾ってくれたボスの為にも、秘密を守り通さなければ…!)」

 

セルーガとはマルコム・ファミリーのNo.2であり、数年前にシーゲルはそのセルーガを倒した事がある。

セルーガは魔法カードを封じる強力なモンスター、”サイレント・ソードマン”の使い手であり、敵味方双方から恐れられていた男であったが、その時決闘していたシーゲルは魔法カードを殆ど使わず、罠中心のデッキ構成をしていた上、それが面白いほどセルーガの戦術に刺さり、そのまま圧倒してシーゲルが勝利してしまった。

それ以来、シーゲルは敵味方双方が恐れるクラッシュ・ファミリーのNo.2となり、セルーガは自信を喪失し、何とかNo.2の座は守り抜いているが、本来の実力を殆ど出せないようになってしまったのだという。

 

シーゲルが必死に考えを巡らせている最中、マルコムの手下も必死に考えを巡らしていた。

 

「(くそ~…まさか因縁つけた相手がクラッシュの身内だったとは…! しかも目の前にはセルーガさんを倒したシーゲル! こいつはやべぇ…!)」

 

対峙したまま中々動かない2人。

暫くして、ようやく動いたのはシーゲル。

 

「お前の様な下っ端を相手にしてやるほど暇ではない! 今回は見逃してやる! とっとと失せろ!(頼む! 逃げてくれ…)」

 

シーゲルがありったけの気迫を込めて言い放つと、マルコムの手下は後ろに仰け反るが、やがて覚悟したように決闘銃に手を掛ける。

 

「お、俺もマルコム・ファミリーの男だ! 引いて溜まるか! やってやる! やってやるぞ! (よくよく考えれば、ここでシーゲルを倒せば大手柄! 勝負は時の運! 勝てる可能性は0じゃない! 分の悪い賭けだが……やってやる!)」

 

「ええ!?」

 

相手の思わぬプラス思考に、シーゲルの目論見は見事に外れてしまった。

手下は決闘を始める為に、シーゲルとの距離を取る。

 

「(マズイ……このままでは……ええい! なるようになれ!)」

 

「ねえ、ちょっと待ってシーゲルさん」

 

シーゲルが覚悟を決めた瞬間、シーゲルの前にフレアが立つ。

 

「この決闘、私にやらせて貰えないかな?」

 

「ええ!? そりゃ願っても……じゃない! 駄目ですよ! お嬢さんに何かあったら―――」

 

「シーゲルさん、私はまだまだシーゲルさんには及ばないけど、サテライトに行って強くなったの! その成長をシーゲルさんに、そしてシーゲルさんを通してお爺ちゃんに見て貰いたいの! これは自惚れ何かじゃない! 大丈夫! 大事な事は解ってる! だからお願い!」

 

「お、お止めください! 分かりました!」

 

フレアがシーゲルに対して拝む様に頭を下げると、シーゲルは慌てて場所を譲る。

シーゲルがあっさりとフレアに譲った理由は、自分が戦いたくないというのもあるが、シーゲルはフレアの実力と才能を知っており、下っ端相手なら問題ないと判断したからである。

 

「(大丈夫だ。 お嬢さんは間違いなく俺より強い……それにボスのお孫さんだ! きっと、大丈夫だ! ……申し訳ありませんボス、もっと実力が付くように精進します……)」

 

「お、俺とは戦うに値しないって事かよ…! だ、だが代わりの相手はクラッシュの身内か! これはこれで手柄になるぜ!」

 

「行くよ! ニコ! 合図よろしく!」

 

「うん! それっ!」

 

ニコがコインを上に向かって放り投げると、フレアと手下は決闘銃に手を伸ばす。

そしてコインが地面に落ち、音が鳴る。

 

「よし! 私の先攻!」

 

「は、速ぇ…!」

 

フレアは得意の早抜きを決め、先攻を勝ち取る。

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

「私のターン! ドロー!」

 

フレア 手札:5→6

 

「モンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:3

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

 

「俺のターン! ドロー!」

 

手下 手札:5→6

 

「(んん? おお! これも日頃の行いか……)」

 

手下はニヤリと笑うと、手札からモンスターを特殊召喚させる。

 

「こいつは俺の場にモンスターが存在しない時、手札から攻守を半分にして特殊召喚出来る! 来い! 《太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)》!」

 

手下の場に、上にも下にも帆を付けた船が現れる。

 

ATK:800→400

 

「そしてチューナーモンスター《ヴァイロン・プリズム》を通常召喚!」

 

続けて現れたのは、水晶で出来た四角いロボット。

その体には僅かに電気が流れている、

 

ATK:1500

 

「行くぜ! レベル5《太陽風帆船》に、レベル4《ヴァイロン・プリズム》をチューニング!」

 

ヴァイロン・プリズムが自身を4つの光輪へと変え、太陽風帆船を囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「今までこいつを出せた事が無かった! 喜べ! こいつの餌食になるのはお前が最初だ! シンクロ召喚! 現れろ! 《ヴァイロン・アルファ》!」

 

光の柱から現れたのは巨大な球体型のロボット。

その球体には頭部らしき物と両手、そして天使の様な翼が生えている。

 

ATK:2200

 

「いきなりシンクロ召喚!? それにレベル9……の割には、攻撃力が低い?」

 

「フン! 攻撃力なんざ後からどうにだって出来るんだよ! 墓地に送られたヴァイロン・プリズムの効果発動! モンスターゾーンから墓地に送られた場合、500LPを払う事で自分の場のモンスターに装備カード扱いとしてこのカードを装備する!」

 

手下 手札:4000→3500

 

ヴァイロン・アルファの前にヴァイロン・プリズムが現れると、ヴァイロン・プリズムはヴァイロン・アルファの中へと吸収されていく。

 

「(何も変わった様子はないけど……500も払ったんだからきっと何かあるはず! 相手をよく見て……)」

 

「さらに俺は装備魔法を4枚装備させる! 《ヴァイロン・セグメント》! 《ヴァイロン・コンポーネント》! 《ヴァイロン・マテリアル》! 《ミスト・ボディ》!」

 

手下は一度に幾つもの装備魔法をヴァイロン・アルファに装備させた為、ヴァイロン・アルファはメチャクチャな光を放っている。

 

「そ、そんなに装備させるの…?」

 

「ああ! これで最強のモンスターが完成したぜ! まずは《ヴァイロン・マテリアル》の効果で攻撃力が600ポイントアップ!」

 

ATK:2200→2800

 

「フフフ……さあバトル! ここで《ヴァイロン・コンポーネント》の効果! ヴァイロン・アルファは貫通効果を得るぜ! セットモンスターを攻撃!」

 

「2800での貫通!? させない! 罠カード《聖なるバリア -ミラーフォース-》を発動! ヴァイロン・アルファを破壊―――」

 

「おおっと! ヴァイロン・アルファの効果! 装備カードを装備したこいつを魔法・罠で破壊する事は出来ねぇ! さらにダメージステップ時、装備カードとなったヴァイロン・プリズムの効果により、この時だけ攻撃力を1000ポイントアップ! やっちまいなヴァイロン・アルファ!」

 

ヴァイロン・アルファがフレアに向かって強大な光線を放つと、フレアが発動したミラーフォースを突き破り、セットモンスターごとフレアを襲う。

 

ヴァイロン・アルファ ATK:2800→3800

セットモンスター:ぴよコッコ DEF:200

 

「きゃあああ!!!」

 

フレア LP:4000→400

 

「「フレア!?」」

 

「お嬢さん!?」

 

あまりにも凄まじい一撃にセットモンスターは吹き飛び、フレアも地面に倒れこむ。

 

「ハッハッハ! どうだ! ついでに教えてやる! こいつに装備された《ヴァイロン・セグメント》はこいつを罠・モンスター効果の対象にさせず、《ミスト・ボディ》は戦闘破壊から守る!」

 

「え~!? 何だよそれ! ズルイよそんなの!」

 

「黙れ小僧! これが俺の最強の装備マジックコンボだ! こいつさえいればNo.2……いや! 天下だって狙えるぜ! ハッハッハ!」

 

「フレア! 大丈夫!? しっかりして!」

 

「う……く…!」

 

ニコがフレアに呼びかけると、フレアはゆっくりと立ち上がる。

 

「痛った~…びっくりして転んじゃった……私はリバースモンスター《ぴよコッコ》の効果発動! デッキからレベル5以上のチューナーモンスターを特殊召喚! 来て! 《こけコッコ》!」

 

フレアの場にこけコッコが現れる。

こけコッコも場に下りた瞬間、足を滑らせて転び、その丸めの体がコロコロと転がる。

 

DEF:2000

 

「俺はこれでターンエンド! こいつを倒せるなら倒してみな!」

 

LP:3500

手札:0

モンスター

・ヴァイロン・アルファ

魔法・罠

・ヴァイロン・プリズム

・ヴァイロン・セグメント

・ヴァイロン・コンポーネント

・ヴァイロン・マテリアル

・ミスト・ボディ

 

「私のターン! ドロー!」

 

フレア 手札:3→4

 

「(”最強”の装備マジックコンボ……でも”無敵”じゃない。 倒す方法があるはず……どんなカードなら……)」

 

「フ、フレアが考え込んじゃった! どうにかならないの姉ちゃん!」

 

「…フレアならきっと大丈夫。 信じましょう……」

 

「ハッハッハ! 祈ったって無駄だ! 俺のコンボは破れねぇ! 泣いて謝るなら許してやるぜ?」

 

ウェストとニコは祈るように目を閉じ、手下は愉悦の表情で高笑いをする。

フレアは手下の場と自分の手札を何度も見比べ、”勝利への道”を探した。

 

「(私を見て、相手を見て……きっとあるはず、”光差す道”が!)」

 

フレアの中で自分のカードと相手のカードが並ぶ。

そこに一筋の光が複数のカードを繋ぐ様に走る。

その光が最後に行き着いたカードは―――

 

「(装備マジックコンボを破るカードは―――装備魔法!) 私はデッキの上から1枚カードを墓地に送って魔法カード《アームズ・ホール》を発動! このターン通常召喚をしない代わりに、デッキ・墓地から装備魔法を1枚手札に加える! 私はデッキから《ビッグバン・シュート》を手札に加え、《ヴァイロン・アルファ》に装備! 攻撃力を400ポイント上げるよ!」

 

ATK:2800→3200

 

「何ぃ!? 俺のコンボをより完璧にするだとぉ!? 馬鹿かテメェは! それとも勝負を諦めて”ありがとう”とでも行って欲しいのか? ああ?」

 

「そうだよフレア! どうしてあいつを強くしちゃうのさ!」

 

「心配しないでウェスト。 後はもう”引き金”を引くだけだよ! 私は永続罠《リミット・リバース》を発動! 墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を特殊召喚! 来て! 《ぴよコッコ》!」

 

フレアの場にこけコッコの雛であるぴよコッコが現れる。

 

ATK:300

 

「お爺ちゃん―――」

 

 

 

おう、サテライトでよく生き残ったな。 お前も何時の間にか強くなったもんだ。 それじゃご褒美に、こいつをやろう。 大事に使えよ。

 

 

 

「(お爺ちゃんがくれたこのカードで!) レベル1《ぴよコッコ》に、レベル5《こけコッコ》をチューニング!」

 

こけコッコが自身を5つの光輪へと変え、ぴよコッコを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。

 

「火を司りし獣の鍛冶師よ! 未来を切り開く神剣を鍛えよ! シンクロ召喚! これが私の新しい力! 《獣神ヴァルカン》!」

 

光の柱から現れたのは、柄の短いハンマーを持った虎の獣人。

手に持ったハンマーを地面に打ち付け火花を散らした後、虎らしい咆哮を上げる。

 

ATK:2000

 

「獣神ヴァルカンの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、自分と相手の場の表側カードを1枚ずつ手札に戻すよ!」

 

「何!? …っと、驚く事はねぇ! 俺のヴァイロン・アルファはモンスター効果の対象にはならねぇ! もう一体はだせねぇだろ? 精々装備魔法をこのターンだけ1枚減らす程度だ!」

 

「うん。 ヴァイロン・アルファは対象に出来ない……だから、装備魔法を対象にするよ! 私は《ビッグバン・シュート》と《ヴァイロン・コンポーネント》を手札に! 〈バウンス・イラプション〉!」

 

獣神ヴァルカンがハンマーを先程よりも強く地面に打ち付けると、それぞれの場から火柱が上がり、それぞれの装備魔法を打ち上げて手札に戻す。

 

「何だ? 結局それ手札に戻しちまうのかよ。 まあ別にいらなかったからいいけどよ」

 

「……撃ち抜いた! 装備魔法《ビッグバン・シュート》の効果発動! このカードが場を離れた時、装備モンスターを除外する!」

 

「な、何ィーーー!!?」

 

ヴァイロン・アルファが突然機能を停止させると、そのまま消滅する。

魔法・罠による破壊と、罠・モンスター効果の対象を防げても、魔法の対象、そして除外は防げない。

自分を見て、相手を見て、”決闘”を見抜いたフレアの、装備マジックコンボの隙を突いた見事な戦術である。

 

「く、くそ……墓地に送られた《ヴァイロン・マテリアル》と《ヴァイロン・セグメント》の効果発動! 場に表側表示で存在するこのカード達が墓地に送られた場合、デッキからヴァイロンと名の付いた魔法を1枚手札に加える! 俺は~~~…《ヴァイロン・マター》と《ヴァイロン・フィラメント》を手札に…」

 

手下 手札:0→2

 

手下は装備魔法の効果で手札を増強するが、時既に遅し。

この男もスコッチと同様、序盤から高燃費のコンボを展開し、そして自分のコンボが破られる事を想定していなかった為、無防備な姿を晒す事となった。

 

「これで場はがら空き! 決着をつけるよ! 私は墓地にいる《レベル・スティーラー》の効果発動! 《獣神ヴァルカン》のレベルを一つ下げる事で特殊召喚出来るよ!」

 

フレアの場にレベル・スティーラーが現れる。

フレアはこのターン、アームズ・ホールの効果により通常召喚して前線を強化出来ないが、特殊召喚ならばそれが可能である。

 

獣神ヴァルカン レベル6→5

ATK:600

 

「レ、レベル・スティーラー!? そんなもん何時……!? …アームズ・ホールの時か…!」

 

「ご名答! そして魔法カード《破天荒な風》を発動! 《獣神ヴァルカン》の攻撃力を1000ポイントアップ!」

 

ATK:2000→3000

 

「ひぃ~~~!!! 待った! 1ターン待ってくれ!」

 

「駄目! 真剣勝負に待った無し! バトル!  レベル・スティーラーで直接攻撃!」

 

レベル・スティーラーが手下の腹に向かって突進をかます。

 

「ぐえ!?」

 

手下 LP:3500→2900

 

「これで止め!  獣神ヴァルカンで直接攻撃! 【獣神魂鉄槌】!!!」

 

獣神ヴァルカンが破天荒な風に乗って高く飛び上がると、手下に向かってハンマーを振り下ろす。

 

「ぎゃあああーーー!!!」

 

手下 LP:2900→0

 

ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響いた。

 

「くそ~~~!!! せっかく出せたのに! チキショ~~~!!!」

 

手下は半べそをかきながら何処かへと走り去ってしまった。

 

「やったぁ! フレアの勝ちだぁ!」

 

「おめでとうフレア!」

 

「お嬢さん……こんなに強くなられて……ボスもきっと喜びます」

 

3人が笑いながらフレアに駆け寄ってくる。

シーゲルは肩の荷が下りたような顔で、ほっと一息を吐いた。

 

「ありがとう皆! 今日の最強カードは”獣神ヴァルカン”!」

 

「かっこいい! …それじゃあ悪者もやっつけた事だし、フレアの家に行って遊ぼうよ! 今日は風が強くて、秘密基地の中まで砂まみれなんだもん!」

 

「本当? それじゃ家で遊ぼうか! 何だか調子がいいから、今日は決闘しまくろうね!」

 

そう言ってフレア達はサザンライトへと向かって走り出す。

友達や家族と過ごす、何気ない日常。

だが、その日常を破る出来事がサテライトで起きそうになっている事を、フレアとフリントは知る由も無かった。

 




今回登場したシーゲルですが、元ネタのWCS2011ではただの労働者となっていますが、この小説ではクラッシュ・ファミリーという事になっています。
ご了承ください。
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