遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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*今回は決闘がありません。 ご了承ください。

*今回はチーム”サティスファクション”において避けられないあの話です。 なので全体的に暗いです。 ご了承ください。


第12話 現実の夢

 

「ここ……何所……?」

 

フレアは一人、荒廃した街の広場に立っていた。

辺りは真っ暗で、殆ど何も見えない。

聞こえるのはけたたましいサイレンの音と、雨が降る音。

 

「雨……? でも、私は濡れてない……どうなってるの?」

 

その瞬間、突然明かりが点き、その場を照らす。

 

「俺がチーム”サティスファクション”のリーダーだ! セキュリティ本部を襲ったのは俺だ! 他の3人は関係ない! 俺を捕らえろ!」

 

「チーム……”サティスファクション”……遊星……皆……」

 

車のライトで照らされ、明るくなっている広場でフレアが見たものは、逃げられないように何かの制服を着た男達に囲まれているジャックとクロウ。

制服の二人に抑えられ、何処かへと連れて行かれそうになっている鬼柳。

そして、制服の男達に何かを叫んでいる遊星。

その遊星に近づき、何かを言っている、制服の中でも一番偉そうな男。

 

「待ってくれ! 違うんだ!」

 

「見ろ、セキュリティへの反逆は第一級犯罪だ。 奴には二度と逢えないぞ。 ハッハッハ…」

 

偉そうな男が馴れ馴れしく遊星の肩を叩く。

その瞬間―――

 

「遊星ーーーーー!!!」

 

耳と心を貫くような怒声が広場に響く。

 

「裏切ったのか!? 俺をッ……売ったのか!?」

 

「!? 違う! 俺は―――」

 

怒声を放ったのは鬼柳。

鬼柳は鉄の箱の様な車の中に放り込まれる。

 

「ぐあ…! ……遊星ぇーーー!!!」

 

鬼柳が遊星に詰め寄ろうとするが、制服の男達によって箱の扉が閉じられ、車が動き出す。

鬼柳の怒声は扉が閉じられようとも、車が遠く離れようとも、それらを貫き、飛び越え、遊星とフレアの胸に突き刺さる。

 

「鬼柳……鬼柳ーーーーー!!!」

 

普段クールで無愛想な遊星の顔が、悲しさと悔しさで一杯になり、顔に流れる雨が全て涙に見える。

そしてフレアは気付く、自分の声が出ない事に、体が動かない事に。

胸が張り裂けそうなくらい心が痛いのに。

振り続ける雨と、鳴り止まないサイレンの様に泣いて叫びたいのに。

膝を付き、らしくない程泣いている遊星に声を掛けてあげたいのに。

今すぐでも走り出して鬼柳を助けに行きたいのに。

やがて、視界が暗くなっていく。

悲しみの中に落ちていくように。

フレアはもがき、叫ぼうとする。

自分自身の悲しみを全て吐き出そうとして―――叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イヤァァァーーーーー!!!」

 

フレアの悲鳴が、夜のクラッシュ・タウンを駆け抜けた。

 

「フレア!!!」

 

「フレア!!! どうした!?」

 

悲鳴が止んでから、最初にフレアの部屋に乗り込んできたのはフリント。

決闘銃を構えながらドアを蹴破り、その後ろにはストークが続いている。

どうやら、何者かが侵入してきてフレアを襲ったのだと思ったようだ。

 

「誰もいない…? フレア! 何があったんだ!」

 

ストークがフレアに声を掛けるが、泣きじゃくっているばかりで何も答えない。

 

「これは痛みではない……悲しみの涙だ。 フレアに何があったんだ…?」

 

「……もしかして!」

 

突然、ストークが合点のいったように立ち上がると、部屋から出ようとする。

 

「フリント! しばらくフレアを看ていてくれ! 俺はフレアの友達を連れてくる!」

 

「ストーク、これの原因が解るのか? 一体フレアに何があったんだ?」

 

「……”夢”を見たんだ。 久しぶりにな」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「フレア……大丈夫よ」

 

「フレア大丈夫なの? 何があったの?」

 

ストークが連れて来たニコとウェストが心配そうに震えているフレアを見詰める。

ニコとウェストだけではなく、フレアの悲鳴を聞きつけた南地区の住民達が、心配してサザンライトの前に集まってきていた。

 

「……ストーク、”夢”とは?」

 

「……ここ数年はまったく無かったんだ。 ……今更になって、何で見るようになったんだろうな」

 

ストークがフレアの”夢”について話す。

数年前、フレアがまだ小さい頃、よく夜中に起きては”夢”を見たと騒いだそうだ。

 

「恐い”夢”を見たと言っては泣きじゃくり、楽しい”夢”を見たと言えば興奮して寝ずに騒いでいたり……」

 

「それって普通の事じゃないの? ウェストだって小さい頃はよく恐い夢を見たって泣いていたけど……」

 

「な、泣いてなんかないやい!」

 

「……問題はここからだ」

 

フレアはその”夢”の内容を鮮明に覚えており、興奮が冷め切った後はよくその話をストークに話していた。

 

「……その話を聞いていたある日の事、その時は”恐い夢”の話だった」

 

 

 

お薬屋のおじさんが、暗い穴の中に落っこっちゃったの。

 

 

 

「……それからすぐに噂を聞いた。 薬屋の主人が薬草を取りに行ったまま帰ってこないと。 フレアは小さかったから、穴と崖の区別が付かなかったんだろうな」

 

数日後、捜しに行った者が谷底で主人の遺体を発見したという。

その話を聞いて、フリントは眼を見開き、ニコは口元を押さえ、ウェストは震え上がっている。

 

「……しまった。 子供の前でする話じゃなかったな。 すまない。 明るい話で行こう」

 

ある日、フレアが店先の地面を掘ってくれとストークに頼んだ事があった。

フレアによると、そこに地区長がお宝を隠す”夢”を見たのだという。

 

「実はその半年前くらいに南地区でちょっとした祭りがあってさ。 その時にこの町最年長でもある南地区長がお宝を隠したから見つけた奴にそれをやるって言い出してな。 南地区長は若い頃に冒険家をやってて、もしかしたら本物のお宝かもって皆張り切って捜したんだけど、全然見つからなくて、挙句の果てには南地区長まで隠し場所が分からなくなって、結局半年間忘れたままになってたんだよな」

 

フレアがあまりにもしつこかった為、ストークは渋々フレアが指差した場所を掘り返してみると、そこには本当に南地区長が隠したお宝が眠っていた。

 

「南地区長に確認をとったから、間違いなかった。 高価な物じゃなくて、ただの弁当箱だったんだけどな………さて、ここまで話せば解るだろ? フレアはな、実際に起こった事を”夢”で見る事が出来たんだ。 最近のものから、ずっと昔のものまで……数年前まではな」

 

「……それが今になって、また見るようになったと?」

 

「ああ。 ちょっと今回のは悲しみ方が大きいが、昔”恐い夢”を見た時と似ている……おそらく、”夢”だ」

 

「フレア、大丈夫?」

 

フリント達がフレアに眼を向けると、どうやら落ち着きを取り戻したようであり、少し震えてはいるが泣き止んでいる。

 

「大丈夫かフレア? 話せるか?」

 

「うん……ありがとう兄さん……フリント……お願いがあるの……」

 

「…何だ?」

 

「……今すぐ……私と一緒にサテライトへ……」

 

「!? どういう事だ! 何故サテライトなんだ!」

 

フレアがサテライトに行きたがる理由は一つ。

フリントの中で、以前感じた”嫌な予感”が蘇る。

 

「……ニコ、ウェスト、席を外してくれ。 ここから先はお前達には聞かせられない」

 

「ええ!? どうして?」

 

「……解りました。 ほらウェスト、行くよ」

 

ニコは納得できない様子のウェストを引っ張って部屋の外へと出て行く。

 

「私……見たの……チーム”サティスファクション”の最期を」

 

「どういう事だ! 何を見たんだ!」

 

「見た……最期……!? 違う……見た……全部……そう……最期だけじゃない……」

 

フレアは何かを思い出そうと頭を抱える。

 

「全部……そう全部! 私達が帰った後から、遊星が泣くまで……」

 

フレアは頭を抱えたまま俯き、また泣きそうな顔をする。

 

「フレア! 無理に思い出さなくていい! 無理はするな!」

 

フリントは苦しそうなフレアを見てそう声を掛けるが、フレアは首を横に振り、自分が”夢”で見てきた事を話し始める。

フレアとフリントが帰った後、チーム”サティスファクション”に何があったのかを。

 

「……鬼柳がまた暴走して……喧嘩して……クロウとジャックがもう付いていけないって……」

 

「やはり…! 恐れていた事が……くっ!」

 

フレアはそのまま続ける。

クロウとジャックは鬼柳から離れていったが、遊星は離れなかった。

どんな事があろうとも、鬼柳を見捨てたくはない―――遊星はそう思っていた。

 

「ここで一回暗くなって……次に見えたのはアジト。 夜遅くに鬼柳が遊星に話してた。 ”見つかったんだよ、フリントが言っていた次の目標……ドデカイ事がな”……って」

 

「な…!? それは!?」

 

鬼柳が見つけたドデカイ事。

それはチーム”サティスファクション”以外に残っている強大な組織を潰す事。

未だ誰も成し遂げたことが無い、ある巨大組織の討伐、それは―――

 

「……セキュリティ」

 

「何だとッ!?」

 

鬼柳は遊星に持ちかけた。

共にセキュリティを潰そう、そして本当のサテライト制覇を成し遂げよう、と。

 

「……それで、遊星も鬼柳に付いていけない、って……」

 

「俺の言葉が仇になったか…! ……だが、これで鬼柳もそんな無茶は―――」

 

「……」

 

「……まさか!?」

 

フリントが驚愕を顔に表すと、フレアは無言で頷く。

鬼柳は遊星を失った後、一人でセキュリティ襲撃の準備を行い、セキュリティ本部を襲撃。

爆撃により、セキュリティに多大な損失を与えた後、逃走した。

だが、セキュリティ達の最新型のDホイールやパトカーに追跡され、逃げに逃げた後、鬼柳はついに追い詰められる。

 

「……もしや鬼柳は……捕まってしまったのか?」

 

「……”サティスファクション”のね……”絆”はまだ断ち切れてなかったんだよ。 ジャックにクロウ、遊星が鬼柳を助けに来たの。 一緒に逃げよう、って……鬼柳は納得出来てなかったけど、皆で何とか逃げ出す事が出来たの。 でも―――」

 

 

 

奴等を決闘で拘束せよ!!!

 

 

 

セキュリティの追跡はやはり激しく、4人で容易く逃げられるような相手ではなかった。

とうとう万策尽きた時、遊星がある行動をとった。

 

「遊星がセキュリティの前に進み出て……俺がチームのリーダーだって……俺が犯人だって……」

 

「駄目だッ…遊星…! それはッ……!」

 

後は一番最後に見た、一番はっきりしている”夢”。

チーム”サティスファクション”の最期。

フレアの胸に焼きついた言葉の一つ一つを、フリントに伝えていく。

 

「まさか……こんな……最悪な形でッ…!」

 

フリントは体を悔しさで震わせ、拳を固く握り締める。

 

「誤解なの……遊星は鬼柳を助けようとしたのに……助けたかったのに……それが鬼柳に伝わらなかった事が……誤解が出来た事が……私……悲しくて……悔しくて……」

 

フレアは再び大量の涙を流す。

その話を聞き終えたストークは突然立ち上がる。

 

「……サテライトだな。 よし! 車を出してやる!」

 

「兄さん……いいの?」

 

「俺だってそのチームに恩がある。 それに……友達は何時も大事にしろと言ってるだろ?」

 

そう言ってストークは部屋から飛び出していった。

フリントはフレアを抱きかかえ、ストークの後に続く。

 

「(フレアの話が本当なら、これは俺達が帰った後、すぐに起こった出来事……つまり、もう事が起こってから半年以上経っているのか……)」

 

そう、フレアとフリントがサテライトに向かってから、既に半年。

フリントがクラッシュタウンにやってきてからもうじき1年が経過しようとしていた。

フレアは大分前からサテライトに行きたいと駄々を捏ねており、ようやく行けそうになったところで、この”夢”であった。

 

「(フレアの思いが一層強くなったから、今になってサテライトの”夢”を見たのかもしれないな)」

 

フリントは店を出て、心配する人々を掻き分けながら、ストークの車の後部座席にフレアを寝かせ、自分は助手席に乗り込んだ。

フレアは泣きつかれたのか、何時の間にか寝息を立てていた。

 

「なんだ、また眠っちまったのか。 また”夢”見て泣かないでくれよ~……フリント、フレアの話、信じられるのか?」

 

「……少なくとも、フレアの悲しみは本物だ。 ……信じてやらなければな」

 

「……ありがとう、フリント」

 

こうして、フリントとフレアを乗せて、車がサテライト目指して動き出す。

真実を確かめる為に。

 

 

* * *

 

 

「……ここら辺か?」

 

「うん。 あの下が遊星の家」

 

夜通しで車を走らせ、サテライトに着いたのは朝9時頃。

車は遊星の住処である地下鉄ホームへの入り口で止まった。

 

「……ストーク。 ここに一人で待つのは危険だ。 お前は一旦クラッシュ・タウンに戻ってくれ」

 

「ええ!? お前達帰りはどうするんだ?」

 

「すまないが3日後、ここにまた迎えに来てくれ。 …長引きそうな予感がする」

 

「……分かった。 思えば店をほったらかしにして来ちまったから、俺は戻った方がいいだろう。 …フレアを頼んだぞ」

 

そう言ってストークは2人を下ろし、車を発進させた。

 

「……もう大丈夫なのか?」

 

「うん……何時までも、悲しんでいられないからね。 行こうフリント」

 

「フリント!? フレア!? どうしてお前達がここに……」

 

2人が階段を下りていこうとすると、後ろから声が聞こえてくる。

2人が振り向くと、そこには私服姿の遊星が立っていた。

 

 

* * *

 

 

「……まさか、本当にその”夢”を…!?」

 

「うん……今話した通り……合ってるでしょ? ……私は外れて欲しいけど」

 

フレアは遊星の住処にて、”夢”の内容を全て話す。

それを聞いた遊星は驚いた様子でフレアを見詰め、後ろのラリー達4人も同様に驚いている。

 

「凄いやフレア……それでこっちに来てくれたんだ」

 

「うん……遊星。 あれからどうしたの? 私、そこから先は見てないの……」

 

「……」

 

フレアが尋ねるが、遊星は俯いて何も答えない。

その顔には”夢”で見た時よりも深い悲しみが見えた。

 

「遊星。 教えてくれ。 あの後どうなったんだ? 思い出すのは辛いだろうが……俺達もチーム”サティスファクション”だ。 どうしても知りたい……知らなくちゃいけない」

 

 

 

 

 

 

「……鬼柳が……死んだ……」

 

 

 

 

 

 

遊星の震えた小さい声が、何よりも大きい音として二人の耳に入る。

その音は心を中心に体中を暴れ回り、弾ける。

 

「フレア!?」

 

「フレア…ってフリント!? 何所に行くんだ!?」

 

隣で泣き崩れるフレアを置いて、フリントは一人でホームから走り去る。

改札機を踏み越え、階段を駆け上がり、走り続ける。

何所へ向かっているかは、フリントにも解らない。

 

「(走れ……走れ……もっと速く疾走(はし)れ!!!)」

 

走りに走って、辿り着いたのはカード漁りを行ったジャンク置き場。

フリントはその中の、一番高いゴミ山の頂上へと登る。

 

「……うおぉぉぉーーー!!!」

 

フリント達の心とは正反対に、珍しく晴れ渡ったサテライトの空。

フリントはその空に向かって咆えると、決闘銃を抜き放ち、空へ向かって引き金を引く。

放ったのはカードではなく、護身用の発砲音弾。

けたたましい音が、ジャンク置き場に響く。

フリントはラリー達が心配して捜しに来るまで、その場を動かず、険しい顔で青い空を睨みつけていた。

 

「………友よ……」

 

 

* * *

 

 

「……よう。 元気だったか?」

 

「元気な訳ないじゃない……私達も、クロウも……」

 

落ち着きを取り戻したフレアとフリントは現在、サテライト収容所の面会室に来ていた。

そこに収容されているクロウに会う為である。

鬼柳が捕まった後、チーム”サティスファクション”のメンバーは何度も面会する為に、この収容所へと通っていた。

だが彼等に鬼柳との面会は許されず、通い始めてから数ヶ月後に鬼柳が死亡。

自ら命を絶ったと伝えられた。

クロウはそれを信じられず、収容所内に殴り込み、看守を2、3人殴り倒した事で捕縛された。

 

「そりゃそうだ……悪かった。 ありがとよ、こんなとこまで会いに来てくれてよ」

 

「……クロウなんでそんなにボロボロなの? それにマーカー……」

 

クロウの顔には殴られた跡や、新しいマーカーが付けられている。

 

「そりゃ看守を殴ればな。 嫌われるさ。 これから久々に再教育プログラムだってよ」

 

クロウはどこか慣れた様子で適当に言い放つ。

実はクロウが収容所に入るのはこれで51回目であり、額の大きいM字マーカーはセキュリティの悪ふざけで50回分を重ねた結果らしい。

流石にもう重ねられなくなったので、今回から新しい場所に付けられたという訳である。

 

「ねえクロウ。 クロウがこんなとこいて……リリちゃん……子供達は大丈夫なの?」

 

「心配いらねぇ。 ”マーサハウス”……俺達の実家みてぇなとこだ。 そこに連れて行くよう遊星に頼んだ。 …戻ったら、遊星に伝えてくれ。 あんまり気に病むなってよ。 ……どうしようも無かったんだ。 俺達には……」

 

 

* * *

 

 

「……お前達か。 久しいな」

 

「ジャック……」

 

フレアとフリントが次に訪れたのはジャックの住処。

ジャックは他の二人とは違い、何時もと変わらない様子で王座に腰掛けていた。

 

「ジャック……鬼柳の事……」

 

「……遊星から聞いたか。 それで、お前達は何の用でここまで来たんだ?」

 

「え…? だからジャックは鬼柳の事……」

 

フレアが戸惑った様子を見せると、ジャックは溜息を付く。

 

「……お前達も遊星と同じか。 何時まで死んだ奴の事を引きずるつもりだ」

 

「!? ジャック! 何て事を言うの! 鬼柳は仲間でリーダーでしょ! ジャックは何とも思わないの!」

 

「思わない訳無かろう!!!」

 

フレアに対してジャックが一喝。

その声には遊星と同様の悔しさと、ジャックの怒りが込められていた。

 

「奴は……俺達と共に全てを制覇するはずだったのだ! 道を踏み外そうとも、必ずな! 奴は……そういう”希望”を持たせてくれる奴だった! だからこそ俺はあの時戻ってきたのだ…!」

 

ジャックは悔しそうに王座を蹴飛ばす。

ジャック達はフレア達よりも鬼柳との付き合いが長い。

何も思っていないはずがないのだ。

 

「ジャ、ジャック……ごめんなさい……」

 

「……奴が死んだからといって、俺達が止まってていいはずがない! それこそ奴は望まん! 俺は……必ず成し遂げる! 奴と共に行くはずだった”王者”の道をな! ……もう俺に話す事はないだろう。 帰るんだな……」

 

 

* * *

 

 

「フリント……どうしよう……」

 

フレアとフリントはすっかり暗くなった道を歩きながら、遊星の住処へと向かっている。

クロウの元へ向かう頃には既に日が傾き始めていたので、遊星達が”滞在するなら泊まっていけ”と、寝床と食事を提供してくれたのだ。

 

「……お前はどうしたい?」

 

「私は……遊星に元気になって欲しい……一番辛いのは遊星だから」

 

フレアとフリントが地下鉄ホームに下りると、テントの前にラリー達4人が暗い顔でたむろしていた。

 

「あれ? 皆どうしたの?」

 

「ああ、戻ったか……締め出されちまったんだよ」

 

ナーヴが困ったように頭を掻く。

 

「遊星が考え事したいから一人にしてくれって……遊星……」

 

ラリーが落ち着かない様子でテントを見詰める。

余程心配なのであろう。

 

「ねえフリント! どうにかならないかな…?」

 

「……今、俺達に出来る事は無い。 遊星の動きを待つ以外はな」

 

そう言ってフリントはテントから離れていく。

 

 

 

「(遊星……このまま沈むんじゃないぞ…!)」

 

 




今回からサテライト編第2章”2年前”となります。

描写してませんでしたが、3話と4話の間で結構時間経ってました。数ヶ月くらい。
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