「今日が3日目……あいつ等大丈夫かな?」
ストークは3日前に置いてきたフレアとフリントを案じながら、サテライトの街中で車を走らせていた。
やがて遊星の住処に近づくと、3日前と同じ場所でフレアが手を振っており、フリントもその隣でこちらを見ている。
ストークは安心して一息つくと、2人の前に車を止める。
「お待たせ。 …その様子だと、解決したみたいだな!」
「うん! もう大丈夫だよ!」
「そうかそうか! どれ、いっちょその遊星さんに挨拶するとしますか! 身内が世話になった礼を―――」
「兄さん発進!」
ストークが車から降りようとすると、フレアが助手席に乗り込み、ストークを止める。
フリントは代わりに後部座席へと乗り込む。
「ええ!? な、何でそんなに急いでんだ? 挨拶くらい―――」
「駄目! 遊星は今忙しいの! それに私達も急いで戻って、またここに来なきゃいけないの!」
「はあ!? また来るって……解決したんじゃないのか?」
「いいから早く!」
「……フリント」
ストークが後ろのフリントに助けを求め、困ったような眼を向ける。
フリントも小さく溜息をつき、事情をストークに話した。
「……遊星が、”Dホイール”を作るんだ」
* * *
「……成る程な。 それでダインをうちの”ダイン”を持っていってやりたいと?」
「うん!」
現在、フレア達はクラッシュの屋敷に来ていた。
フレアは遊星のDホイール作りに協力する為、一刻も早くクラッシュ・タウン産のダインを届けたかった。
機械の事がさっぱりのフレアにとって、これが唯一協力出来る方法なのである。
「遊星が言ってたの―――」
フレームやエンジンは問題無い。 ツテがあるからな。 CPUは自作する。 だが、問題は駆動部だ。 難しい説明は省くが、ここは丈夫な素材でなければならない……ジャンクパーツで作るのは不安なんだ。
「ダインって駆動パーツに向いた鉱石なんでしょ? だから遊星に持っていってあげたいの! お願いお爺ちゃん! ダインをちょっとだけ分けて欲しいの!」
フレアは両手を合わせ、クラッシュに頭を下げる。
「おいおい、俺が可愛い孫に石ころをケチるような男に見えるか? …石ころをくれ、だなんて遠慮するな。 ……シーゲル」
「はい!」
クラッシュの呼びかけにシーゲルが返事をすると、シーゲルは何処かへと行ってしまう。
暫くして、シーゲルが台車を押しながら戻ってきた。
台車の上には布が掛けられている。
「こいつをやろう」
クラッシュが合図をすると、シーゲルが上の布を取り去る。
そこには何かの部品の様な物が詰め込まれた箱があった。
「Dホイールの駆動パーツだ。 予備パーツも含めて、これをダチ公に持って行ってやりな」
「ウソー! 凄い! お爺ちゃんありがとう! ……でもうちにはDホイール一台も無いのに、何でお爺ちゃんが持ってるの?」
「ふふ……何でだろうな?」
* * *
「シーゲルさん急いで急いで!」
「せ、急かさないでください……ここですね」
フレア達がクラッシュ・タウンに戻った翌日。
流石に店を休む訳には行かないので、今回はシーゲルがフレア達の足となった。
シーゲルは遊星の住処の前に車を止め、パーツの入った箱を車から降ろす。
「それじゃあ自分はここで待ってます。 何時ごろ戻られますか?」
「Dホイールが出来るまで!」
「……は?」
「Dホイールが出来るまで! だからシーゲルさんは先に帰ってていいよ!」
「……はあ、解りました。 止めても無駄でしょう……ボスと若旦那に伝えておきます。 フリント、これを渡しておくから、何かあったら連絡を……」
シーゲルはフリントに携帯電話の使い方を教えて手渡し、クラッシュ・タウンへと引き返していった。
* * *
「す、すげぇ……これ売ったら幾らになるかな……」
「売るなー! 遊星が使うんだぞ!」
ラリーがタカの尻を蹴飛ばす。
フレア達が持ってきたパーツを見て、遊星達は大層驚いた。
「どれもこれ以上無い程のパーツだ……本当に使わせて貰っていいのか?」
「いいのいいの! 私達に出来るのはこれ位だもん! これでいいDホイールを作ってね!」
「……ありがとう! ありがたく使わせてもらう」
遊星はフレア達に礼を言うと、ひとまずパーツをテントの中にしまい、CPU制作に戻る。
「さてと、他に私達に出来る事はないかな?」
「あ、そうだフレア! ジャックを誘いに行こうよ!」
辺りをキョロキョロと見回すフレアに、ラリーがそう提案する。
「ジャック? いいね! きっと暇だろうし、誘ってあげよう!」
* * *
「遊星がDホイールを作ってるって言ったら、ジャック驚くぞ~!」
「このジャック・アトラスがテストホイーラーになってやる! …って言い出すかもね! …って、何あれ!?」
ラリーとフレアがジャックの住処へと向かっていると、突然建物の向こう側から大きな竜が現れる。
その竜は赤く恐ろしい、”悪魔”の様な姿をしており、辺りの空気を震わせるような大咆哮を上げる。
「ジャックの住処の辺りだ! 行ってみようフレア!」
「うん!」
2人が急いで駆けつけると、そこでは決闘が行われていた。
竜を従えているのはジャック。
対戦相手の場にはドラゴン族である”砦を守る翼竜”が召喚されている。
だが悲しきかな、ジャックの場のドラゴンと比べれば、もはやトカゲにしか見えない。
「このジャック・アトラスに挑んだ事を後悔するがいい! バトル! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》で攻撃! 【アブソリュート・パワーフォース】!」
ジャックのドラゴン―――”レッド・デーモンズ・ドラゴン”は右腕に炎を纏うと、砦を守る翼竜目掛けて掌低を放つ。
それを受けた砦を守る翼竜は一瞬で灰になり、その炎が相手プレイヤーを襲う。
「ぐあぁぁぁ!!!」
LP:1600→0
ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響いた。
相手は恐れをなし、決闘盤のカードも片付けないまま逃げて行ってしまった。
「ひぇ~…何なんだ今のドラゴン……」
「ジャックがこんなカードを持っていたなんて……」
「あんなカードを持っていたという話は聞かない……最近手に入れたものか」
「きゃあフリント!? 何時の間に!?」
フレアとラリーが見入っている間に、2人を心配して追いかけてきたフリントが追いついていた。
「ここはサテライトだぞ。 勝手に出歩くな」
「ジャックの家は近いんだから平気よ! それにサテライトはもう慣れたもん! 何時までも子供扱いしないでくれる?」
フリントとフレアが話し合っている中、ラリーが愉快そうに高笑いを上げているジャックに近づく。
「ハッハッハッハッハ! これだ! これこそがキングたる俺に相応しいカードだ!」
「や、やあジャック!」
「…ラリーか。 どうした? 決闘なら相手になってやってもいい! 今俺は最高に昂っているのだ! ん? おおフリントもいるではないか! 丁度いい! あの時の約束を果たすぞ! 決闘だ!」
そう言ってジャックは再び決闘盤を構える。
「(私が眼中に無いのが腹立つけど……)ジャック! 私達は決闘しに来たんじゃなくて、誘いに来たの!」
「誘い? 何だ?」
フレアはジャックに遊星が立ち直った事、そして新たに進む目標としてDホイールを制作している事を伝えた。
ジャックは先程まで昂っていた気を抑え、何かを考える様に腕を組み、目を閉じている。
「だからジャックも一緒にどう? 出来たら遊星が乗せてくれるかもよ?」
「……行こう」
* * *
「ただいまー! …あ!? フレームにエンジン!」
3人がジャックを連れて遊星の住処へと戻ると、ナーヴとタカがフレームを、ブリッツがエンジンを運んでいるのが見えた。
「ふう……おおラリー達、それにジャックも」
「ようやくフレームとエンジンが店に届いたって言うから、俺達で取りに行ってたんだ。 あんな店があるなんてな~! ちょっと値が張ってたが……」
「疲れた~……エンジンって重いんだな~……階段じゃ台車使えないから苦労したぜ」
ナーヴ達3人が汗を流しながらラリー達に振り向く。
テントの中で作業していた遊星も話し声を聞きつけて出てきた。
「3人とも、すまないな………! ジャック……」
遊星はジャックの姿を見ると、近づいて軽く頭を下げる。
「……ジャック、礼を言う。 お前はあの問いの答えについて、何も言わなかった……だが、今なら解る気がする」
「……遊星。 話はフレアから聞いた。 何故Dホイールを作ろうと思った?」
「……俺は、立ち止まっていてはいけない。 進まなければならない。 だが、どの様な道を進めばいいのか、解らない………何か大きい事に挑戦すれば、それが見えて来るのではないか……そう思って仲間達と共に、未だ誰もが成し遂げた事が無い”サテライト初のDホイール制作”をしようと思ったんだ」
遊星は後ろにいる6人と、横に置かれているフレームとエンジンに眼をやる。
フレームは新品の白いボディ。
エンジンは出来るだけ良い物を遊星が選んだ。
「……それで、完成したらお前はこのサテライトを出るのか?」
「!……いや、そう言う訳じゃない。 Dホイールは一人乗りだ。 ここには仲間達がいる。 仲間を置いては行けない……外へ行ってみたいという気持ちはあるが、それは今じゃない。 何れ全員分作れるようになったら……それが次の目標になるな」
「わぁ! 素敵! そうなったら皆でツーリングに行こうね! 私あの荒野をDホイールで駆け抜けてみたかったの!」
遊星の言葉に、フレア達は自分達がDホイールに乗っている未来を思い浮かべる。
だが、ジャックだけは険しい表情をしていた。
「とりあえず、今はこれを完成させる。 どうだ? ジャックも一緒に―――」
遊星がジャックに振り返った瞬間、ジャックが壁に立てかけて置いてあったフレームを蹴り倒す。
壊れはしなかったものの、フレームは激しい音を立てて倒れた。
「!? 何をするんだジャック!」
「立ち直ったと聞いて期待したが……残念だ遊星。 何時までもこのサテライトでそうしていろ!」
そう言ってジャックは踵を返して去っていく。
フレアとフリントが急いでフレームの状態を確かめた。
「何て事するのよ~…あー! 傷付いちゃってる!」
「表面が剥げただけだ。 問題ない。 この程度なら色を塗ってやれば隠れる」
全員がフリントの言葉に安堵するとナーヴ、ブリッツ、タカはジャックが去って行った方を睨む。
「ジャックの奴、何で…!」
「羨ましかったんじゃねぇの? で、気に食わなかったから蹴飛ばした」
「ガキ見たいな事しやがって…!」
「ジャック……」
ジャックは地上へと出ると、階段の下を睨みつける。
「(鬼柳が死んで……俺達の道は分かれた。 遊星……お前は俺が変わったと思うだろうが、俺からすれば逆だ。 俺とお前は違う……”目指すもの”が違うのだ)」
* * *
数ヵ月後―――遊星達はようやく完成させたDホイールの試運転を行おうとしていた。
「頑張って遊星! 必ず……俺達の”夢”を飛ばしてくれよ!」
ラリーがガッツポーズで白いDホイールに跨った遊星を応援する。
「しっかし、思ったよりも早く出来たよな」
「ああ。 まさかフリントがあそこまで出来るとは……」
タカとブリッツが感心した様子で頷き合う。
店の仕事を任せてもからっきしであったフリントだったが、いざ手順を教えてDホイールを弄らせてみると、作業の手際が非常に良く、遊星も”初めて触ったとは思えない”と驚いていた。
工学の知識がある訳ではないので、あくまで手伝いだけだが、それが完成の時間を縮めたのは間違いなかった。
「(多分、フリントはDホイールを弄った事がある……だってライディング・デュエルを知ってるんだもん)」
フレアはそう思いながら、自分の後ろの方を見る。
後ろの建物の更に奥、そこにある大きめな建物の屋上にはフリントがいるのだ。
フリントは屋上で、決闘盤と繋いだノートパソコンを操作しながら、手に取った無線機に話しかける。
「遊星、準備はいいか?」
「ああ、何時でもいいぞ!」
そう言って遊星はヘルメットを被ると、エンジンを起動させる。
「《スピード・ワールド》! セット!」
デュエルモード”ON” マニュアルモード
遊星がDホイールに取り付けられた決闘盤を操作すると、デュエル・モードが起動し、場が”スピード・ワールド”に支配される。
「まず一周だ。 ライディング・デュエル―――」
アクセラレーション!!!
フリントの合図と共に、遊星はDホイールを走らせる。
まずは、廃墟達を囲む様に引かれた道路を一周する。
決闘以前に、走れなければ意味が無い。
フリントは屋上から遊星とDホイールを観察し、パソコンのモニターと照らし合わせながら異常が無いか確認する。
フリントがいる屋上では、フレア達がいる方向は建物に阻まれて見えないが、それ以外の方向は建物が崩れていて、走るDホイールを眼で追う事が出来る。
「(そっちをしっかり見ていてくれ、皆……) よしいいぞ、次はオートパイロット」
オートパイロット スタンバイ
遊星が再び操作を加えると、Dホイールが自動で走り始める。
「スピード……ルート……問題ない。 次はソリッドビジョンのテストだ。 そちらはまずモンスターをセット、罠カードを伏せてくれ」
「モンスターをセット、カードを伏せる」
遊星がDホイールに取り付けられた決闘盤のモンスターゾーン、魔法・罠ゾーンそれぞれにカードをセットする。
すると、遊星のモンスターゾーンにセットされたカードのソリッドビジョンが、魔法・罠ゾーンにはセットされたカードのソリッドビジョンが一瞬現れた後、見えなくなる。
「よし、次はフェイズ、そしてターン移行とSPCだ。 順に頼むぞ」
「バトルフェイズ……メインフェイズ2……ターンエンド!」
遊星が順に宣言していくと、Dホイールのモニターのフェイズ表示が変わっていき、ターンが終了する。
「俺のターン!」
そしてフリントがパソコンに繋いだ決闘盤からカードをドローする。
そしてフェイズ表示がスタンバイフェイズに変わると、遊星のSPCが一つ増える。
「よし……俺はモンスターをセット、カード伏せてターンエンド!」
「俺のターン!」
フリントがターンを終え、遊星のターン。
スタンバイフェイズになると、遊星のSPCがさらに増える。
「次はSpと罠カード。 手順通りに頼む」
「《Sp-サイクロン》を発動! SPCを2つ取り除き、伏せカードを破壊する!」
遊星の場から竜巻が発生すると、フリントの場にある伏せカード《黄金の邪神像》が破壊され、その効果によりトークンがフリントの場に生成される。
邪神トークン ATK:1000
「罠カード《サンダー・ブレイク》を発動! 手札を1枚捨てて《邪神トークン》を破壊!」
捨てたカード
ボルト・ヘッジホッグ
遊星の場から、今度は電撃が放たれると邪神トークンに直撃し、破壊する。
「次は召喚、特殊召喚、反転召喚」
「《ジャンク・シンクロン》を召喚! その効果で《ボルト・ヘッジホッグ》を特殊召喚!」
遊星の場にジャンク・シンクロン、ボルト・ヘッジホッグの2体が並ぶ。
ジャンク・シンクロン ATK:1300
ボルト・ヘッジホッグ DEF:800
「《シールド・ウォリアー》を反転召喚!」
続けて、大きな槍と盾を持った戦士がセットカードから飛び出し、姿を現す。
ATK:800
「ここまで異常無し……遊星、シンクロ召喚だ」
「レベル2《ボルト・ヘッジホッグ》と、レベル3《シールド・ウォリアー》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」
ジャンク・シンクロンが背中に背負っているエンジンをかけると、姿が3つの光輪へと変わる。
その3つの光輪がボルト・ヘッジホッグとシールド・ウォリアーを囲むと、6つの光、そして光の柱へと変える。
「集いし願いが、新たに輝く星となる……光さす道となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ!
《スターダスト・ドラゴン》!!!」
光の柱から現れたのは絆の証、”スターダスト・ドラゴン”。
7人全員の希望と夢を乗せて、今飛翔する。
ATK:2500
「「「「「飛んだぁーーー!!!」」」」」
地上からフレア達5人の歓声が上がる。
「次は攻撃だ」
「バトル! スターダスト・ドラゴンでセットモンスターを攻撃! 【シューティング・ソニック】!」
スターダスト・ドラゴンが空高く舞い上がると、屋上にいるフリントのセットモンスター目掛けて口から衝撃波を放つ。
フリントのセットモンスターが表になって姿を現すと、そのモンスターは衝撃波をかわし、スターダスト・ドラゴンに跳び付こうとする。
「セットモンスターは《人喰い虫》! そのリバース効果により《スターダスト・ドラゴン》を破壊する!」
「スターダスト・ドラゴンの効果発動! このカードをリリースする事で、破壊効果を無効にし、破壊する! 〈ヴィクテム・サンクチュアリ〉!」
本当に人を食べてしまえそうな巨体の虫がスターダスト・ドラゴンに取り付こうとするが、スターダスト・ドラゴンの体に触れた瞬間、スターダスト・ドラゴンと人喰い虫は光の粒子となって消えてしまった。
「ターンエンド! そしてこのエンドフェイズ、自身の効果によってリリースされたスターダスト・ドラゴンは復活する! 舞い戻れ! 《スターダスト・ドラゴン》!」
遊星の場に、光の粒子が集まると、それはスターダスト・ドラゴンへと変わる。
ATK:2500
「俺のターン! カードを伏せてターンエンド! 次は直接攻撃とLP変動」
「俺のターン! バトル! スターダスト・ドラゴンで直接攻撃! 【シューティング・ソニック】!」
スターダスト・ドラゴンが再び舞い上がり、フリントに向かって衝撃波を放つ。
「ぐおぉぉx……うん? ……罠カード《自業自得》を発動! 相手のモンスター1体につき500ポイントのダメージを与える!」
フリント LP:4000→4000
今度はフリントの方から衝撃波が遊星に向かって放たれる。
「くっ……バグか……」
遊星 LP:4000→4000
デュエルモード”OFF”
遊星はデュエルモードを解除し、フレア達の前で止まる。
フリントも機器を抱え、急いでフレア達の元へと戻ってきた。
「凄かったよ! スターダスト・ドラゴンがバァーーーって!」
「俺感動しちゃったよ!」
フレアとラリーが遊星に称賛を送る。
「ありがとう。 だが、まだバグがあった。 ダメージがお互いに通じない」
「Dホイールと決闘盤の構造は微妙に違うからな……仕方が無い。 むしろ初めてにも関わらず、ここまでに仕上げた遊星は見事だ」
フリントがノートパソコンとテスト用のカードを片付けながら遊星を励ます。
「”ハイブリット・タイプ”に出来れば、決闘盤のシステムをそのまま流用出来るんだが……予算がな」
現実的な理由に、ラリー達はがっくりと肩を落とす。
ラリーはもどかしそうに足踏みしながら、縋る様な眼でフレアの方を見た。
「金~……ねえフレア。 そっちの方も何とか……」
「私のお小遣いでなら幾らでも協力するけど、全然足しにならないでしょ? それにお爺ちゃん、そっち方面は厳しいから……」
「でもよ、ここまで出来たならもう完成でいいんじゃないか? バイクとしてはもう十分すぎるくらいだし、今急いで決闘部分を作らなくても、相手がいないだろ?」
ブリッツがそう言うが、遊星は首を振る。
「俺は、一瞬でも手を抜きたくない……今を全力で挑むからこそ、意味がある」
「そうだよブリッツ! それにもしかしたら、明日にでもDホイーラーが現れて遊星に勝負を挑んでくるかもしれないじゃない? そういう時の為に万全にしておかないと!」
「いや……幾らなんでも明日はないだろ……だけど、心構えとしては正しいかもな」
楽しげにDホイールを撫でるフレアに、ナーヴは突っ込みながらも納得したように頷く。
「よし……修正を終えたら、またテストをしよう。 フリント、協力してくれ」
「ああ。 まだ試す事も残っているしな。 今度こそ完璧にしよう」
こうして、遊星達は住処へと戻っていった。
結局、彼等は試運転の様子を影から見ている男がいたという事に、最後まで気付かなかった。
「……”スターダスト・ドラゴン”……か」
フリントが使っていた決闘盤は遊星がDホイールと同様の構造で作った特別仕様のものです。
なのでライディング・デュエルに対応していて、バグも同じものが発生していました。