遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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第15話 奪われた絆

「……出来たな、遊星」

 

「ああ……これで間違いなく完成だ」

 

Dホイールの前で、フリントと遊星が笑みを交わす。

最初の試運転から数日後、何度かの修正や改造、そしてテストを繰り返し、ようやく満足出来るものに仕上がった。

 

「皆の協力で、ようやくここまで来れた。 ありがとう。 明日は最終テストだ」

 

「うん! 何だか燃えてきたね!」

 

「ああ!」

 

「俺達が運転する訳じゃないけどよ。 何かこう―――」

 

「力、入っちまうな!」

 

遊星の言葉に、フレア、ナーヴ、ブリッツ、タカはそれぞれ気合を入れる。

その時、ふとフレアが辺りを見回す。

 

「あれ…? そういえばラリー何処行ったのかな? 何か最近どっか行っちゃうよね?」

 

フレアが心配そうな顔でナーヴ達に尋ねると、タカとブリッツが面白く無さそうな表情を浮かべる。

 

「……それがさ、最近あいつジャックのところに出入りしてるらしいぜ」

 

「…ったく、とんだ蝙蝠だな」

 

「止めろ。 ラリーが誰と一緒にいようと、自由だ」

 

遊星はそう言うと、Dホイールを押して車庫として使っているスペースへ向かう。

 

「……とにかく、ラリーにも完成した事伝えなきゃ。 フリント、どうせ付いてくるんでしょ? 行こう」

 

「解ってるじゃないか。 手間を掛けさせないでくれて助かる」

 

 

* * *

 

 

「あ……フレア」

 

フレアとフリントはラリーを捜しにジャックの住処方面へと向かおうとしていたが、遊星の住処からそんなに離れていない位置で帰ってきたラリーと遭遇した。

 

「あ、よかった! すぐに見つかって! ラリー完成したよ!」

 

「ああ……うん。 最後見た時にはもうラストスパートだったから、もう出来てるとは思ってたよ」

 

「? ……どうしたの?」

 

フレアの応答するラリーは何処か元気が無い。

フレアはその理由を聞いてみた。

 

「今、ジャックを誘いに行ったんだ……一緒にDホイールの試運転を見よう、って。 一緒に決闘しよう、って……皆はいい気がしないだろうけど、ジャックだって仲間なんだ。 放っておけないよ……」

 

「……うん。 あんな事はあったけど、私にとってもジャックは大事な仲間だよ。 いい考えだと思う。 ……それで、ジャックは?」

 

「……”俺とあいつは違う。 目指すものが違う”……って。 ……訳解んないよ……俺はただ、皆と仲良くして欲しいだけなのに……」

 

「”目指すもの”……か……」

 

フリントはそれを聞いて、胸の奥が疼くのを感じる。

ぼやけているが確かにあった記憶。

その中で違えた自分と友。

”目指すもの”の違い―――

 

「ぐっ…!?」

 

「フリント!? どうしたの!?」

 

「……いや、何でもない。 ……忘れ物と……朝飯を食って無い事を思い出しただけだ」

 

突然頭を抱えたフリントに、フレアが驚いて振り向く。

フリントは頭痛を抑え、何とか平静を保つ。

 

「なーんだ。 フリントったらもう! 私をどうこう言う前に自分がしっかりしなきゃ駄目でしょ!」

 

フレアはフリントが心配かけまいと咄嗟に考えた嘘を信じて笑う。

その後ラリーに向き直り、ラリーの肩を軽く叩く。

 

「大丈夫! 仲間だもん! ジャックはきっと来てくれるよ!」

 

「…うん! ありがとうフレア! よし、完成したDホイールを見せてもらおう!」

 

そう言ってラリーとフレアは遊星の住処へと駆けて行く。

それを追いながら、フリントは静かに考える。

 

「(あの時のジャックの様子……一度、ジャックと話をした方がいいな。 あのままでは、どうにも気持ちが悪い……)」

 

 

* * *

 

 

その日の晩、ジャックは自身の居城の王座にて、背もたれと肘掛に体を預けながら眠りに入ろうとしていた。

崩れた天井から射し込む月明かりによって、王座の周りは明るい。

まどろむ意識の中、ジャックは部屋に響く扉を開ける音と足音を聞く。

それに気付き、下げていた頭を僅かに上げると、目の前を照らしている月明かりに影が射したのが見えた。

それらにより、ジャックは意識を完全に覚醒させる。

 

「誰だ!」

 

ジャックが立ち上がり、大声で呼び掛けるも聞こえて来るのは足音のみ。

その足音は徐々に近づいて来る。

 

「初めまして。 ジャック・アトラス」

 

ようやく聞こえてきた返事は何と後方から。

ジャックが驚いて振り返ると、自身の王座の後ろから道化師の様なメイクを施した、子供の様に小柄な男が現れる。

 

「私、”イェーガー”と申します。 治安維持局長官”レクス・ゴドウィン”様の使いで参りました」

 

イェーガーと名乗る男はジャックに対して恭しく礼をする。

 

「…治安維持局が何の用だ?」

 

「貴方を”シティ”へとお誘いするようにと……」

 

「!」

 

イェーガーは詳細を話す。

話によると、治安維持局長官はシティの発展と治安の為、眠らぬ決闘の街”ネオ童実野シティ”の象徴となる”王”として、ジャックを招き入れたいのだという。

 

「……貴方にやって頂きたいのですよ。 何より……その右手の痣こそが”王”の印……ヒッヒッヒッヒ」

 

イェーガーは特徴的な笑い声を上げ、ジャックの右腕を指差す。

長袖に隠れて見えないが、ジャックがそれに反応して袖越しに右腕の一点を見た事から、本当にジャックの右腕には痣があるらしい。

 

「明日の夕方5時、一時間だけパイプラインの流出が止まります。 我々には貴方を迎え入れる準備がある……しかし、シティへのパスポートとして、必要な物が二つ―――」

 

イェーガーはジャックの王座に腰掛け、今度は偉そうに脚を組む。

 

「それは、”レッド・デーモンズ”と”スターダスト”のカード……」

 

「!?」

 

「勿論、貴方が”スターダスト”を持っていない事は承知しています。 ですが、その2枚が必要なのです……カードの入手手段は問いませんがね。 ……ジャック、貴方が信じるか否かは自由。 ですが、よくお考えください。 チャンスは1度切り……このままスラムのキングで終わるか、それとも本物のキングとしてシティに君臨するか……それは貴方次第……ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!」

 

この瞬間、ジャックが一瞬眼を離した隙にイェーガーはその場から姿を消す。

 

「では、何れシティで……」

 

姿無き声だけが、王座の間に響いた。

この時、イェーガーは既に空の上。

袖の中から出した大きい風船で空を飛んでいる。

そんなイェーガーは、外からジャックの居城を覗いていた。

崩れた壁の小さな隙間から見える、王座の間に続く廊下。

そこに立っている一人の青年―――

 

「おやおや、私とした事が……まさかネズミを一匹見逃しているとは。 それとも、ネズミの方を褒めるべきですかねぇ……」

 

その瞬間、イェーガーは素早い身のこなしで姿を消す。

イェーガーの言う”ネズミ”が振り向き、小さい隙間越しに銃を構えたからであった。

 

 

* * *

 

 

「も~! フリントもラリーも何処行ったのよ!」

 

翌日の午後4時頃。

遊星、ナーヴ達3人が工場での仕事を終え、Dホイールの最終テストを行う為に何時もの試験場へと集まったのだが、そこにはフレアしかおらず、フリントとラリーの姿は見えなかった。

 

「ラリーは大方ジャックの所にでも行ってるんだろ」

 

「じゃあフリントは何処行ったんだ? フリントがいなきゃ始められないじゃないか」

 

ブリッツとタカが辺りを見回すも、フリントが来る気配は一向に無い。

もう配置にいるんじゃないかと屋上まで見に行ったナーヴが戻ってくるが、首を横に振る。

 

「フレアは何か知らないか? 俺達が仕事の間はずっとラリーといたんだろ?」

 

「うん……だけど急にどっか行っちゃって……ジャックの所かなって思って、お城に行ってみたんだけど、ジャックすらいなかったし……フリントは解んない。 皆も知ってる通り、朝からいないまま。 昨日までは意地でも私から離れなかったのに、何でかなー…?」

 

その時、Dホイールのモニターにジャックの顔が映し出される。

Dホイールには映像通信の機能が付けられており、遊星のDホイールは自作のPDAと通信出来る様になっている。

だがそのPDAを持っているのは同じ住処の4人と、フレアとフリントにのみであり、ジャックが遊星のDホイールと通信するには、6人の誰かしらからPDAを借りなければならない。

そう思った遊星は発信先のIDを確認すると、それはラリーのPDAのIDであった。

 

「遊星。 今俺はラリーが落としたPDAでそちらに連絡している。 ……ラリーが何者かにさらわれた」

 

「何だと!?」

 

ジャックの言葉に、遊星達一同は驚愕する。

 

「俺の目の前でな……俺も奴等を探し出す。 お前達も手伝ってくれ」

 

そう言ってジャックは通信を切る。

遊星は脇に置いてあったヘルメットを被ると、Dホイールに乗り込む。

 

「手分けして捜そう!」

 

「「「おう!」」」

 

遊星はDホイールを走らせると、ナーヴ達4人はそれぞれ分かれてラリーの捜索に入った。

フレアは何処を捜そうか考える。

 

「……港!」

 

思えばフレアがサテライトで最初に訪れたのはB.A.Dエリアの港であり、最初の災難に見舞われたのも港、そしてチーム”サティスファクション”と出会ったのもB.A.Dエリアの港の近くである。

ここはB.A.Dエリアではないが、港ならきっと何かがある―――フレアは何となくそう思った。

 

「(私がちゃんとラリーについていれば……絶対見つけなきゃ! 待っててラリー!)」

 

フレアはB.A.Dエリア以外の港を知らない。

なので、とにかく海を目指して走り出した。

 

 

* * *

 

 

「あ! 海!」

 

暫く走り続けて、ようやく見えてきた海。

近くに寄ると、どうやらここは防波堤のようだ。

 

「あれ? おーい! ジャック―――!?」

 

そこで、フレアがジャックの姿を見つける。

フレアは急いで防波堤の階段を駆け下り、ジャックに声を掛けるが―――

 

「……お前か」

 

フレアが近寄って見たのは、ジャックが陸地に縄で繋がれている今にも転覆しそうな小船に、縛られている上気絶しているラリーを乗せ、小船と陸を繋いでいる縄をナイフで切ろうとしている所であった。

 

「な、何してるの…? 何でラリーにこんな事してるの……」

 

「……こいつは人質だ。 先程、遊星にここまで来るよう連絡した。 その時に奴のDホイールと”スターダスト”のカードと取引する為だ」

 

「だ、だから……何で……そんな事するの…?」

 

フレアは混乱して上手く声が出ない。

 

「俺はシティへ行く。 その為の足としてDホイールが必要であり、パスポートとして”スターダスト”が必要なのだ」

 

「ジャ、ジャック…!? ここから出て行くの!? どうして!? 仲間達はここにいるのに……」

 

「そんなもの俺には必要ない」

 

冷たく突き放すジャックにフレアは一瞬よろけるが、負けじと踏ん張り、ジャックに言葉を返す。

 

「どうして!? どうしてそんな事言うの! 必要だよ! 今まで仲間達と頑張って来たじゃない! それでサテライト制覇だって達成したじゃない!」

 

フレアは必死になってジャックに訴えるが、ジャックの表情は冷たいまま。

 

「……とにかく、こんな事は止めて! ジャックがこんな事したら遊星だって悲しむよ……こんな事してまでシティに行きたいならさ、遊星に相談しよ? 真剣に相談すれば遊星だって力を貸してくれるよ! 私達仲間だもん! 友達だもん! 皆で協力した方が絶対上手くいくよ!」

 

フレアがそう言うと、ジャックは一息ついた後、フレアの肩に手を置き、笑みを浮かべる。

 

「ジャック! 解って―――!」

 

次の瞬間、フレアの視界は真っ暗になった。

薄れていく意識の中、僅かに感じる首筋の痛み。

自分は殴られた―――そう確信しながら、フレアの意識は途絶えた。

 

 

* * *

 

 

ジャックは遊星から奪ったDホイールを”パイプライン”へと走らせていた。

パイプラインとは、シティとサテライトを繋ぐ遠距離地下トンネルであり、そこから毎日の様にシティのゴミがサテライトへと送られてくる。

本来なら通行路にはなりえないはずなのだが、今は治安維持局が急遽パイプラインの大規模点検を行うといい、パイプラインは動きを止めている。

だが、そこには整備員もいなければ警備員もいない。

全てはジャックをシティへと迎え入れる為だ。

 

ジャックはフレアへの予告通り、やってきた遊星に取引を持ちかけた。

自分とシティ行きを掛けて決闘をし、友を見殺しにするか。

それとも、Dホイールと”スターダスト”を置いて友を助けに行くか。

遊星は迷わず後者を選択。

上着とデッキを置いて海へと飛び込んだ。

ジャックは遊星のエクストラデッキから”スターダスト”を抜き出して自分のデッキケースへしまうと、横で気絶しているフレアを余所に、遊星のDホイールを奪い去っていった。

 

やがてパイプラインが見えてくる。

イェーガーが言った通り、門は全て開け放たれ、人っ子一人いない状態―――迎え入れる準備は万全であった。

だがジャックはDホイールを止める。

突然死角から男が飛び出してきたからだ。

その男は帽子を被り、その身に纏ったマントを風になびかせながら、静かに佇んでいる。

ジャックがDホイールから降りて、その男と対峙すると、男は鋭い眼をジャックに向け、マントを肌蹴させた。

 

「……フリント。 何故貴様がここにいる? ……どうやら、事が洩れていたようだな。 それで、お前は俺を引き止めにでも来たのか?」

 

「ジャック。 俺はお前を止めはしない。 Dホイールはまた作ればいい。 それに乗って何処へでも行け………だがな」

 

フリントは険しい顔で決闘銃を抜き放ち、ジャックに向けて構える。

 

「俺達の夢を……(スターダスト)を奪って行く事だけは許さん! 俺と決闘だ! ジャック!」

 

フリントはそう叫ぶと、左腕に持っていた決闘盤をジャックに投げ渡す。

ジャックはそれを受け止めると、笑みを浮かべて装着し、自分のデッキをセットする。

 

「…いいだろう! あの時の約束を果たすとしよう!」

 

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

 

フリントとジャック、お互いの信念を掛けた決闘が始まる。

先攻はフリント。

 

「俺のターン!」

 

フリント 手札:5→6

 

「モンスターをセット、カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:4

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

 

「フン! 俺のターン!」

 

ジャック 手札:5→6

 

「そんな消極的な決闘でこの俺を止められると思うな! 来い! 《サファイアドラゴン》!」

 

ジャックの場に現れたのは、体がサファイアで覆われた美しいドラゴン。

その体は眩く輝いている。

 

ATK:1900

 

「バトル! サファイアドラゴンで攻撃!」

 

サファイアドラゴンがセットモンスターにブレスを放つと、そこからマグマが噴き上がる。

 

「何だ…?」

 

マグマはみるみる広がり、フリントの場にマグマの池が出来上がる。

 

「セットモンスター《火口に潜む者》の効果発動! このカードが場で破壊され、墓地に送られた時、手札から炎族モンスターを特殊召喚出来る! 来い! 《ヴォルカニック・ハンマー》!」

 

マグマの池が再び噴き上がると、その中からヴォルカニック・ハンマーが姿を現す。

 

ATK:2400

 

「ほう……こちらの攻撃を利用して上級モンスターを呼び出したか。 カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:4

モンスター

・サファイアドラゴン

魔法・罠

・セット

 

「俺のターン!」

 

フリント 手札:3→4

 

「《ヴォルカニック・ロケット》を召喚!」

 

フリントが召喚したのは、ヴォルカニックのアタッカーであるヴォルカニック・ロケット。

自分より大きなサファイアドラゴンに怯む事なく、突撃の構えを見せる。

 

ATK:1900

 

「その効果により、デッキから《ブレイズ・キャノン》を手札に加える! …バトルだ!  ヴォルカニック・ハンマーで攻撃! 【ヴォルカニック・ブラスター】!」

 

ヴォルカニック・ハンマーが燃え盛る火炎をサファイアドラゴンに吐き出すと、サファイアドラゴンは炎に包まれて消えてしまう。

 

「こんなものか……」

 

ジャック LP:4000→3500

 

「これだけではない! ヴォルカニック・ロケット! 【ヴォルカニック・チャージ】!」

 

ヴォルカニック・ロケットがジャックに向かって突進。

だがこの瞬間、場に鐘の音が鳴り響くとヴォルカニック・ロケットは動きを止め、フリントの場に引き返してしまう。

そして、ジャックの場に何時の間にか鐘を鳴らしたであろう悪魔が現れていた。

 

DEF:0

 

「何!?」

 

「手札から《バトルフェーダー》の効果発動! 相手の直接攻撃宣言時、このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる! …お前が小賢しい手を使って反撃に出る事は読めている」

 

「……ターンエンド!」

 

LP:4000

手札:4

モンスター

・ヴォルカニック・ハンマー

・ヴォルカニック・ロケット

魔法・罠

・セット

 

「教えてやろう! キングの決闘は2歩先を行く事を! 俺のターン! ドロー!」

 

ジャック 手札:3→4

 

「《バトルフェーダー》をリリースし、魔法カード《モンスターゲート》を発動! 通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキをめくり、そのモンスターを特殊召喚する!」

 

ジャックが最初のカードをめくって笑みを浮かべると、そのめくったカードをモンスターゾーンに置く。

 

「めくったカードは《ストロング・ウィンド・ドラゴン》! 特殊召喚だ!」

 

ジャックの場に強力な上級ドラゴンであるストロング・ウィンド・ドラゴンが現れる。

 

ATK:2400

 

「くっ…!」

 

「さらにチューナーモンスター《ドレッド・ドラゴン》を召喚!」

 

続けてジャックの場に現れたのは名前の通りドレッド・ヘアをしたドラゴン。

これでジャックの場にチューナーとそれ以外のモンスターが揃った。

 

「バトル! ストロング・ウィンド・ドラゴンでヴォルカニック・ロケットを攻撃! 【ストロング・ハリケーン】!」

 

ストロング・ウィンド・ドラゴンが竜巻の様な炎をヴォルカニック・ロケットに放つと、ヴォルカニック・ロケットは跡形も無く消し飛ばされる。

 

「ぐう…! (どういう事だ? 何故シンクロ召喚をしない…? ジャックは持っているはずだ。 ストロング・ウィンド・ドラゴンよりも強力なレベル8の”あのドラゴン”を…)」

 

フリント LP:4000→3500

 

「フリント、顔に出ているぞ! どうやら、俺は2歩どころか3歩先を行ってしまったようだ! 罠カード《緊急同調》を発動! バトルフェイズ中にモンスターをシンクロ召喚する!」」

 

「!? しまった……」

 

これがジャックの狙い。

こうする事で強力なモンスターで連続攻撃が可能となり、フリントの場を全滅させる事が出来る。

 

「どれ、もう一つ驚かせてやろう! お前達の”絆”とやらの力を見せて貰おうではないか! レベル6《ストロング・ウィンド・ドラゴン》に、レベル2《ドレッド・ドラゴン》をチューニング!」

 

ドレッド・ドラゴンが自身を2つの光輪へと変え、ストロング・ウィンド・ドラゴンを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「大いなる風に導かれた翼を見よ! シンクロ召喚! 響け! 《スターダスト・ドラゴン》!」

 

光の柱から現れたのは紛れも無くスターダスト・ドラゴン。

敵に回ろうと、変わりの無い見事な輝きを放っていた。

 

ATK:2500

 

「馬鹿な……スターダスト・ドラゴン!? デッキに加えていたとは…!」

 

「ヴォルカニック・ハンマーを攻撃!」

 

ジャックが命令すると、スターダスト・ドラゴンはヴォルカニック・ハンマーに向かって衝撃波を放ち、破壊する。

 

「ぐ……こんな事が……」

 

フリント LP:3500→3400

 

「俺はカードを伏せてターンエンド! …覚えておけ。 貴様も遊星も、カードに”絆”など見出している時点で、俺には及ばぬのだ!」

 

LP:3500

手札:1

モンスター

・スターダスト・ドラゴン

魔法・罠

・セット

 

「……ジャック、何故”絆”を否定する? 初めて会った時のお前は、鬼柳達と共に道を行く……”絆”と共に”夢”を追いかける男だったじゃないか」

 

「……前にも言ったが、鬼柳は俺達にとって”救世主”だ。 くすぶっていた俺達を救い、サテライト制覇という魂を揺るがす様な生き方を俺に与えてくれた。 …俺は思った。 奴とならサテライトだけではなく、何れシティでさえ支配出来るだろうと! ……そんな”希望”を与えてくれる男だった」

 

ジャックは先程の様な自信満々の余裕な顔から一変して、悔しそうに顔を歪めている。

 

「……俺は、今でも鮮明に思い出せる……あの熱き日々を! 熱き思いを! 俺は成し遂げたいのだ! 鬼柳と目指した”頂点”を! そして俺自身の夢でもある”決闘のキング”となる事を! だからこそ、俺はシティへと行く!」

 

「ならば何故遊星達と袂を分かつ! 何故その心を打ち明けなかった! 俺も遊星も、友の事を考えない男ではないぞ!」

 

ここでフリントも感情を前に出す。

ジャックはそんなフリントを見て小さく笑った。

 

「……フレアにも同じ様な事を言われたな。 だからこそ! 俺はお前達を捨てたのだ!」

 

「何…!?」

 

「遊星を見てみろ! 鬼柳を思う余り半年間も腑抜け、ようやく立ち直ったと思えば”仲間を置いてはいけない”だと!? ふざけるな! ……フリント。 俺が以前、遊星に言った事を覚えているか?」

 

「……決闘とは、モンスターだけでは勝てない。 罠だけでも、魔法だけでも勝てはしない。 全てが一体となってこそ、意味をなす……そして、その勝利を築き上げる為に、もっとも必要な物は……ここにある」

 

フリントがその時のジャックを真似て自信の胸を親指で指し示す。

 

「そうだ。 そしてその答えとは―――」

 

ジャックも同じ様に胸を指差し、声を張り上げる。

 

「己を高め、己を信じ、己の道を突き進む! ”揺ぎ無い熱き決闘者の魂”だ!!!」

 

「(……それがお前の言葉の……お前の答えか……)」

 

ジャックらしいジャックの答えに、フリントは心の中で頷く。

 

「……遊星は”絆”に奪われたのだ! 牙も爪も! 熱き闘争心も! ”絆”という鎖で縛り付けられたのだ! このサテライトにな!」

 

この言葉にフリントは思わず頷いてしまいそうになった。

遊星は自分よりも友を優先する。

遊星は優しすぎる。

自分に対する欲が無いのだ。

遊星の美点ではあるが、それは決闘者としての遊星の可能性を狭める事となる。

 

「(だからこそ、俺はDホイール制作を全力で手伝った。 これからもそうだ……”絆”と共に遊星が進めるように……)」

 

「俺は縛られてなるものか! 俺は進まなければならない! 俺の為に! 夢の為に! その為ならば、友も故郷も全て捨ててやる!」

 

「……ジャックよ。 俺から言える事は二つ。 ”絆”は己を縛るものではない……共に進んで行くものだ。 そして……お前の言葉の、俺達の答え……それは―――」

 

フリントも先程のジャックの様に声を張り上げる。

己の信じた答えを伝える為に。

 

「己とカードの”絆”……共に戦う”全てのカードを信じる決闘者の魂”だ! ”絆”は力となる! ”絆”は決して枷とはならない! その歩みが遅くなろうとも、確実に進んで行ける! 俺はそれを証明してみせる!」

 

「ならばやってみるがいい! 今のお前に俺を止める事など出来ん!」

 

こうして、ジャックとフリントの決闘は再開される。

フリントは力強く、デッキトップに指を掛けた。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:4→5

 

「……俺は必ずお前に勝利し、(スターダスト)を取り戻してみせる! 手札からモンスター1体を墓地に送り、魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! デッキからレベル1の《ヴォルカニック・バレット》を守備表示で特殊召喚!」

 

墓地に送ったカード

ヴォルカニック・バックショット

 

フリントの場にヴォルカニックの弾丸、 ヴォルカニック・バレットが現れる。

守備表示なので防御の為に出したのだろうが、その守備力は非常に頼りない。

 

DEF:0

 

「《ヴォルカニック・バックショット》の効果発動! 墓地に送られた時、相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

フリントは決闘盤を銃に変形させると、ジャックに対してヴォルカニック・バックショットを放つ。

 

「小賢しい真似を…!」

 

ジャック LP:3500→3000

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:3400

手札:2

モンスター

・ヴォルカニック・バレット

魔法・罠

・セット

・セット

 

「俺のターン!」

 

ジャック 手札:1→2

 

「そんなもので俺を止められると思っているのか! そんな雑魚モンスターはこいつで十分だ! 《ミッド・ピース・ゴーレム》を召喚!」

 

ジャックの場に現れたのは中くらいのゴーレムであるミッド・ピース・ゴーレム。

ビッグ・ピース・ゴーレム程ではないが、それなりの威圧感を持つ。

 

ATK:1600

 

「バトル! ミッド・ピース・ゴーレムで攻撃!」

 

ミッド・ピース・ゴーレムがヴォルカニック・バレットを掴み、そのまま握りつぶして破壊する。

 

「さあくらうがいい! スターダスト・ドラゴンで直接攻撃!」

 

スターダスト・ドラゴンがフリントに衝撃波を放とうと口にエネルギーを溜め始める。

 

「罠カード《好敵手(とも)の記憶》! 相手の攻撃宣言時、自分は攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを受ける! 来いスターダスト!」

 

スターダスト・ドラゴンがフリントに衝撃波を放ち、直撃させる。

 

「ぐあぁぁぁ!!! ……くっ! そして攻撃モンスターを除外する!」

 

フリント LP:3400→900

 

「何だと…!?」

 

衝撃波を撃ち終えたスターダスト・ドラゴンが徐々に光の粒子となって消えていく。

 

「そして次の相手のターン終了時に、除外された攻撃モンスターを自分の場に特殊召喚する!」

 

「……そうか、取り返すとはこういう事か。 ハッハッハッハ! 次のターンで戦力を整え、奪い返したスターダストと共に攻め込むつもりか! ターンエンド!」

 

LP:3000

手札:1

モンスター

・ミッド・ピース・ゴーレム

魔法・罠

・セット

 

「俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:2→3

 

「《炎帝近衛兵》を召喚!」

 

フリントの場に現れたのは、赤い竜人の様な炎族モンスター。

下半身は蛇の様になっており、隙の無さそうな鋭い眼光を目の前のミッド・ピース・ゴーレムに向ける。

 

ATK:1700

 

「炎帝近衛兵の効果発動! 召喚に成功した時、墓地に存在する炎族モンスター4体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

デッキに戻したカード

火口に潜む者

ヴォルカニック・ハンマー

ヴォルカニック・バックショット

ヴォルカニック・バレット

 

フリント 手札:2→4

 

「(…よし、来てくれたか!) 俺は永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《ヴォルカニック・ロケット》を特殊召喚!」

 

フリントの場に再びヴォルカニック・ロケットが現れる。

一度は撃墜されたが、その勢いは衰える事を知らない。

 

ATK:1900

 

「効果によりデッキから《ブレイズ・キャノン-トライデント》を手札に!」

 

フリント 手札:4→5

 

「行くぞジャック! 永続魔法《ブレイズ・キャノン》! 発動したこれを墓地に送り、《ブレイズ・キャノン-トライデント》! そしてこれをも墓地に送り……現れよ! 《ヴォルカニック・デビル》!」

 

フリントの場が噴火すると、その中からフリントの切り札”ヴォルカニック・デビル”が姿を現す。

決着をつける為、気合の咆哮を上げる。

 

ATK:3000

 

「これを止められるか! バトル―――」

 

これが全て通ればフリントの勝利。

だが、ジャックも甘くは無い。

 

「跪け! 罠カード《威嚇する咆哮》! このターンお前は攻撃宣言を行う事は出来ない!」

 

ジャックの場から放たれた大咆哮に、フリントのモンスターは全て動きを止める。

 

「……カードを伏せてターンエンドだ!」

 

LP:900

手札:1

モンスター

・炎帝近衛兵

・ヴォルカニック・ロケット

・ヴォルカニック・デビル

魔法・罠

・リビングデッドの呼び声

・セット

 

「俺のターン!」

 

ジャック 手札:1→2

 

「流石だなフリント……それだけのモンスターを並べ、さらに次のターンにはスターダストが加わるのか……フフフ……ハッハッハッハ!」

 

ジャックは高らかに笑う。

フリントの様な強者と戦い、気が昂ってきたのか。

それとも―――”王”の前で無駄に抗う愚か者に対しての笑いか。

 

「フリント! お前は一時もスターダストを取り返す事は出来ん! 何故なら……お前に次のターンは無いからだ!」

 

「何だと…!?」

 

ジャックは絶対的な自信を顔に浮かべている。

そう、ジャックはまだ切り札を見せていないのだ。

その瞬間、フリントの横から異形の悪魔が飛び出し、フリントの永続罠”リビングデッドの呼び声”を丸飲みしてジャックの場に移動する。

そしてフリントの場にいたヴォルカニック・ロケットは苦しみだし、空中で爆散する。

 

「何だ!?」

 

「お前の罠を1枚墓地へ送り、手札からチューナーモンスター《トラップ・イーター》を特殊召喚! これによりリビングデッドの効果を受けていたヴォルカニック・ロケットは破壊される」

 

ATK:1900

 

「フハハハハ! 見よ! これが王者の姿だ! レベル4《ミッド・ピース・ゴーレム》に、レベル4《トラップ・イーター》をチューニング!」

 

トラップ・イーター が自身を4つの光輪へと変え、ミッド・ピース・ゴーレムを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「王者の鼓動! 今ここに列をなす! 天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚! 我が魂! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》!」

 

光の柱から現れたのは紅蓮魔竜、”レッド・デーモンズ・ドラゴン”。

運命で結ばれた、ジャックの新しい切り札である。

 

ATK:3000

 

「ここで来たか…!  ”レッド・デーモンズ”…!」

 

「見よ! この禍々しくも美しい、我が僕を! シティを降す、最強の切り札を! 同じ悪魔でも、地を這う惨めなお前の切り札とは格が違うのだ!」

 

ジャックに指を差されたヴォルカニック・デビルは、唸るように レッド・デーモンズ・ドラゴンを威嚇している。

 

「さて、ここで炎帝近衛兵を攻撃すれば俺の勝利だが……装備魔法《デーモンの斧》を《レッド・デーモンズ・ドラゴン》に装備! 攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴンの頭上に禍々しい斧が現れると、それは粒子となってレッド・デーモンズ・ドラゴンに吸収される。

 

ATK:3000→4000

 

「切り札を捻じ伏せてこそ、本当の勝利というものだ! フリント、己の無力を”絆”などで隠せはしない! キングの前に平伏せ! レッド・デーモンズ・ドラゴンでヴォルカニック・デビルを攻撃! 【灼熱のクリムゾン・ヘルフレア】!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴンがヴォルカニック・デビルに向かって灼熱の火炎を吐き出す。

フリントは自分の伏せカードに眼を落とした。

 

「(ジャック……お前が俺達との”絆”を捨てようとも、俺達はお前との”絆”を忘れはしない……)」

 

フリントはこの展開を読んでいた。

自信家で負けず嫌いなエンターテイナー、ジャック・アトラスはフリントが行った決死のスターダスト奪還作戦を妨害する為、スターダストがフリントの場に特殊召喚される前に決着を付けに来る―――と。

 

「(言ったはずだ……”必ずお前に勝利し、(スターダスト)を取り戻してみせる”……と)」

 

フリントが伏せていた最後の罠カード”魔法の筒”。

このカードでジャックを返り討ちにする為、フリントは誘導の為の”奪還作戦”を行っていた。

最初から決闘中でスターダストを奪還する気は無かったのである。

ジャックの性格を知っていて、自分のカードを信じたからこそ、出来た作戦だった。

 

「(知っているさ……まだ短い付き合いだが、一度”絆”を交し合った仲間だからな……ジャックよ、焦るな……焦らずとも、あの仲間達となら必ず道は切り開ける!)」

 

ジャックの手札は0、場に伏せカードも無し。

墓地にも警戒するカードは無く、フリントの勝利は確定であった。

今、フリントが罠を発動しようとしたその時―――

 

「ぐっ!? か……あ……」

 

突然な首筋の痛み、ぶれる視界、動かぬ体、出ない声。

迫る炎の前で、フリントは何も出来なくなった。

そして炎は、ヴォルカニック・デビルとフリントを飲み込む。

 

フリント LP:900→0

 

フリントは声を出せぬまま、仰向けに倒れる。

まだ何とか見える視界。

見えるのは曇った空、そして黄色い大きな風船―――

 

「(あ……あいつは……)」

 

動けないフリントの耳に、ジャックの声が聞こえて来る。

 

「さらばだ……我が忌まわしき故郷。 さらばだ……我が親友達よ……」

 

その後にバイクの走行音。

その音はどんどん離れていく。

 

フリントが受けたのは痺れ薬が塗られた吹き矢。

命には関わらないが、当分動くには苦労する代物である。

 

「フリント!? どうしたフリント!? フリントォ!!!」

 

ここでフリントが前もって連絡しておいた遊星がやって来る。

”絆”を取り戻せず、無様に倒れたフリントは、遊星に肩を担がれながらその場を後にした。

 

 




これにて、サテライト編第2章”2年前”が終了、それと同時にサテライト編、ひっくるめれば回想編の終了です。
次回から2年後、本編の時系列となります。
まあ本編どおりに進むかは解りませんが(汗)
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