「ん……うん……?」
天井が大きく開いた玉座の間で、フレアは目を覚ます。
「おお! 気が付きなさったか!」
隣にはトルンカが立っている。
トルンカの皺くちゃな顔に、喜びが溢れていた。
「トルンカ……皆は……龍可ちゃんは?」
「心配しなさんな。 龍可ちゃんはやりおったよ。 ”地縛神”を見事倒したのじゃ! ほれ!」
トルンカが指差した方を見ると、そこには沢山の精霊達が笑い合っていた。
龍可が”地縛神”を倒し、吸収された精霊達が解放されたからである。
「レグルス殿は龍可ちゃんの元へ行きなさった。 これからは、レグルス殿が龍可ちゃんを守ってくれるじゃろう」
「龍可ちゃん…! レグルス…! よかった………!? トルンカ! 黒蠍盗掘団は!?」
「それも心配無用じゃ。 奴等もちゃんと帰ってきておる。 今は猿達が精霊達から奪っていた金品食糧をそれぞれの町や村に返しに行っておるよ」
「そうなんだ……よかった。 皆無事で……」
フレアはホッと胸を撫で下ろすと、ある重要な事を思い出す。
「……そういえばさ、これで私の使命は終わったけど、これからどうやって人間世界に帰ればいいの?」
「それなんじゃがな……」
トルンカは難しい顔をしながら、フレアに説明する。
トルンカによると、現時点でフレアが人間世界に帰す事は出来ないらしい。
実体を持ってしまっているからである。
「フレア殿は最初、精神体でこの世界に来たわけじゃな? つまり、人間世界にはあなたの体が残っている事になる……その体は精神が入っていないだけで、ちゃんと生きている体なのじゃ」
「それで……どうして私が帰れないのと関係があるの?」
「今の人間世界には、フレア殿がちゃんと存在しておる……同じ存在が同じ世界にいる事はタブーなのじゃ。 今のフレア殿を人間世界に帰せば、色んなものが捻じ曲がってしまうかもしれん……」
「え~!? じゃ、じゃあ私、このまま精霊世界で生きていかなきゃならないの?」
それも楽しそうだが、自分は人間としてしたい事が沢山あり、人間世界には共にいたい人達が沢山いる。
やはり、人間世界に帰りたかった。
「いや、帰る方法はある。 フレア殿に実体を与えた者がおるじゃろ? その者にまた精神体に戻して貰えばいいのじゃ」
「でも、その人と自由に話せる訳じゃないし、何処にいるかも―――」
フレア、聞こえますか? フレア。
「あ!?」
「うお! どうしたんじゃ!?」
突然聞こえてきたあの時の声。
ゼーマンを倒したせいか、以前よりもはっきり聞こえる。
フレア……ありがとう。
あなたのおかげで、シグナーの少女は見事”地縛神”を倒す事が出来ました。
「ううん! あれは龍可ちゃんが頑張ったからよ! 私はそのお手伝いをしただけ……ってそうだ! あなたなんでしょ? 私をここに連れて来て、実体をくれたの?」
ええ……その通りです。
そのままではあなたは元の世界へは戻れません。
「だったらお願い! 私を元の精神体に戻して!」
元より、そのつもりです。
ですが、その為には私の元へ来て貰わなければなりません。
「あなたのところに…? 何処にいるの?」
遥か西の果て……荒野に佇む神殿……私はそこに封印されています。
「ふ、封印って……ゼーマンは倒したよ!?」
……ゼーマンに封印されていた訳ではありません。
友人達に協力して貰い……私自ら封印を施したのです。
「自分で!? 何でそんな事……一体何があったの?」
ごめんなさい、フレア……そろそろ……限界のようです。
「限界!? どうしたの!?」
全ては……神殿で……フレア…………おねが――――
それ以降、声が聞こえる事はなかった。
「……」
「フレア殿。 ……”例の者”と会話していたのじゃな?」
「うん……最後、辛そうにしてて……声が聞こえなくなっちゃった」
「ふむ……むしろ、まだそこまでの”力”が残っていたとは。 流石じゃ……」
「!? トルンカ! あの人の事知ってるの!?」
何やら知っている様な素振りのトルンカに対して詰め寄るフレア。
トルンカは声の主について何か知っているのは間違いなかった。
レグルスと揉めた川岸での会話でも、何かを知っている様な素振りを見せたからである。
「ああ……あれは、十年程前じゃったかのう―――」
トルンカは語り始める。
十数年前、5000年周期で行われるシグナーとダークシグナーの戦いまで残すところ僅かという時期。
エンシェント・フェアリー・ドラゴンを初めとする高位精霊達は精霊界を脅かす”悪なる者の意思”への対抗策を考える為に、精霊界の中心で話し合いを行っていた。
「”悪なる者の意思”って…?」
「闇から生まれる、災厄の根源じゃ……話を続けるぞ」
その時、急に精霊界上空の空が裂けると、その間から1体の精霊が現れた。
「その者は人間界に住む精霊じゃった。 しかも、人間達に”土地神”と呼ばれて信仰される程の、高貴なる精霊だったのじゃよ」
「へぇ~! 凄い人なのね!」
「うむ。 その精霊は裂けた空を修復すると、力尽きて倒れてしまった――――」
精霊は満身創痍であり、高位精霊達は急いでその精霊を保護し、治療を試みた。
エンシェント・フェアリー・ドラゴンの”力”により、外傷的な傷は何とかなったのだが、ある重要なものがどうにもならなかったのである。
「その精霊は、人々の思い……”信仰”を糧にする種族だったのじゃ」
話によると、その精霊を信仰していた部族が”悪なる者の意思”によって動かされた邪神を崇拝する部族に襲われ、戦いとなった。
精霊を信仰する部族は戦いに慣れておらず、次第に追い詰められていく。
精霊は部族を守る為、仲間達と共に邪神の部族を操る”悪なる者の意思”を倒そうとしたが、敵は想像以上に強大だった。
一人、また一人と仲間が倒れ―――最後には部族が滅ぼされた。
精霊を残して、全てが滅んだのである。
一人生き残った精霊はそれ以降、糧を得られないまま徐々に”力”を失っていってしまった。
だが、それでも精霊は”悪なる者の意思”と戦い続け、傷つき、追い詰められた結果、この精霊世界に逃げ込んだのだという。
精霊界に留まり、傷を治しても体は日々弱っていく――――そんな中、精霊はある決断をする。
静かな土地を、この私にお与えください。 ”力”がまだ残されている内に自身を封印し、”力”の消費を押さえます。
「……多くの高位精霊が笑いおったよ。 ”そこまでして生に縋るか”と、”守るべきものを守れなかったくせに、それでも高位精霊なのか”と……」
トルンカは皺だらけの顔を怒りで歪める。
トルンカの真面目な顔も珍しいが、ここまでの怒り顔も珍しい。
「……彼女は、そんな事の為に生を選んだのではない。 彼女は……”戦う為”に生を選んだのじゃ。 もう失わない為に、自身に残された僅かな”可能性”を信じてな……レグルス殿も当時、こう言っておったよ―――」
あの精霊の眼は”戦う者の眼”だ。 断じて生にしがみつく者の眼では無い。 誇り高き戦士だ。
「……その精霊がしばしの眠りにつく日。 わし等は彼女を西の地へ送り出してやったのじゃ。 その時、彼女が最後に言った言葉―――」
私は、多くのものを失いました……ですが、まだ守らなくてはならないものがある……だから、私は諦めません。 愛すべき自然が、人が、世界がある限り……”希望”は消えないのですから。
「……この言葉を聞いていなければ、わしは子供の姿でゼーマンに抗おうとは思わなかったじゃろうなぁ…」
「……トルンカ。 その人の名前は?」
フレアに尋ねられると、トルンカは姿勢を正し、フレアの正面に向き合う。
フレアもそれに応じる様に姿勢を正し、トルンカの眼を真っ直ぐに見る。
「よく覚えておくのじゃ……”守る者”………その名は”ガーディアン・エアトス”!」
「ガーディアン……エアトス……」
その瞬間、上空から1羽の赤く鋭い眼をした鳥獣族が降りてきた。
その鳥獣はフレアに向かって背中を向ける。
「おお、”イーグル・アイ”ではないか! 今の話、聞いておったのか? …フレア殿、この者が連れて行ってくれるそうじゃ」
フレアは眼を輝かせると、イーグル・アイの背に飛び乗る。
「ありがとう! 時間が無いから、急いでお願いね! トルンカ、行ってきます!」
イーグル・アイは頷いて見せると、翼を羽ばたかせて上昇する。
「フレア殿! エアトス殿はここまで”力”をかなり使ってきておる! 声が途絶えてしまったのも、余裕が無くなったからじゃ! エアトス殿がフレア殿を呼んだのは、フレア殿を元の世界に戻すだけではなく、きっとフレア殿を必要としているからじゃ! エアトス殿を頼みましたぞ~!」
トルンカに見送られ、フレアは西の果てにあるという神殿へと向かった。
エアトスは今、少なくなった”力”をさらに失って苦しんでいる。
フレアの中では、自分が帰る事よりも”彼女を助けたい”という気持ちが勝っていた。
* * *
「わぁ……」
現在、精霊界の西の果て、そこに広がる荒野の上空を飛ぶイーグル・アイ。
その上で荒野を見渡すフレアは、自分の故郷に思いを馳せる。
「(皆……エアトスを助けたらすぐ戻るから、待っててね!)」
その瞬間、イーグル・アイがフレアの方へ首を捻り、鳴き始める。
「どうしたの? ……あ!」
フレアが前方をよく見ると、岩山に囲まれた大きな神殿が見える。
イーグル・アイは神殿の入り口へ接近し、ゆっくり降下して地上に降りた。
「ここがエアトスがいる神殿………」
フレアがイーグル・アイから降りて辺りを見渡す。
すると、神殿の入り口の前にローブを纏った男が立っていた。
フードを深く被っている為、顔がよく見えない。
「お持ちしておりました。 フレア殿……」
「!? 私の事を知ってるの?」
「はい……あなたの事は”ガーディアン・エアトス”からお聞きしています」
男は礼儀正しくフレアに礼をすると、フレアも慌ててお辞儀をする。
「もしかして、あなたがエアトスが言っていた”友達”…! 私、エアトスに呼ばれてここへ来たの! 早くしないとエアトスが……お願い! エアトスの所まで案内して!」
フレアがローブの男を急かすが、ローブの男はそれに答えず、左腕を上げてローブの袖をずらす。
顕になった左腕には、決闘盤が装着されていた。
「……残念ですが、ここを通す事は出来ません。 私達の使命に反します」
「え!? な、何でですか!? エアトスは今大変なんです! 早く行かなきゃ!」
「なりません。 我々はガーディアン・エアトスから”封印”の使命を授かっています」
「封印の使命…?」
ローブの男が言うには、神殿には4つの扉があり、それを全て通った先にエアトスが眠っているのだという。
「ガーディアン・エアトスは4つの扉に、我々という”封印”を施しました。 外敵を防ぐ為、そして……何れやって来るあなたに”試練”を与える為」
「わ、私に”試練”…? な、何で? どういう事なの? どうしてエアトスがそんな事を…?」
自分は弱っているエアトスを助けるつもりで来たはずなのに、何故”試練”など受けなければならないのか―――状況が解らず、混乱と焦りでフレアはすっかり動揺してしまっている。
「だからこそなのです! ガーディアン・エアトスには、あなたの助けが必要……だが、あなたが”力無き者”では意味が無い! 我々”4つの試練”を乗り越え、その”力”を証明して見せよ!」
ローブの男は力強い口調で言い放つと、決闘盤を展開させ、構える。
フレアは心を落ち着かせ、考える様に眼を閉じた。
やがて眼を開くと、自分のガンベルトから決闘銃を引き抜き、決闘盤に変形させる。
「…そうよね。 これ位乗り越えられなきゃ、エアトスの”力”になんてなれない……エアトスが私の”力”になってくれた様に、私もエアトスの”力”になりたい! この試練、受けるわ!」
「よろしい! 第一の試練! この”武器庫の召喚師”がお相手する!」
「「デュエル!!!」」
フレアの”力”を試す為の試練。
その第一の試練、”武器庫の召喚師”との決闘が始まる。
先攻は召喚師。
「私のターン! ドロー!」
召喚師 手札:5→6
「魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札のモンスター1体を墓地に送り、デッキ・手札からレベル1モンスターを1体特殊召喚! 現れよ! 《レベル・スティーラー》!」
召喚師の場にレベル・スティーラーが現れる。
条件下での自己再生能力により、シンクロ素材、アドバンス召喚、壁などの多くの役割を果たせる為、フレアもよく使用している。
ATK:600
「さらに、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚出来る! 現れよ! 《ジェスター・コンフィ》!」
続けて現れたのは、太った道化師。
玉乗りをしながらフレアに対してヘラヘラと笑う。
ATK:0
「そして永続魔法《冥界の宝札》を発動! …2体のモンスターをリリース! 《雷魔神-サンガ》をアドバンス召喚!」
2体のモンスターが光の中へと消えると、その光の中から現れたのは巨大な上半身。
大きな両腕を持ち、頭部には大きく”雷”という文字が書かれている。
ATK:2600
「いきなり最上級モンスターを!?」
「これがあなたが乗り越えるべき”壁”の一つ……ここで永続魔法《冥界の宝札》の効果発動! 2体以上のリリースによるアドバンス召喚に成功した時、カードを2枚ドローする!」
召喚師 手札:1→3
「カードを2枚伏せてターンエンド!」
LP:4000
手札:1
モンスター
・雷魔神-サンガ
魔法・罠
・冥界の宝札
・セット
・セット
「(最上級モンスターを召喚した上、手札まで補充するなんて……だけど、倒せない事なんて無い!)私のターン! ドロー!」
フレア 手札:5→6
「私は《マイン・モール》を召喚!」
フレアの場に現れたのはマイン・モール。
戦闘破壊耐性を持つが、攻撃するには向かないモンスターである。
ATK:1000
「ここで魔法カード《フォース》を発動! モンスターを2体選択! 片方の攻撃力を半分に減らして、もう片方の攻撃力をその分アップさせる! 半分にするのは《雷魔神-サンガ》! パワーアップさせるのは《マイン・モール》!」
サンガの体からオーラが抜け出し、そのオーラがマイン・モールを包み込む。
たった1枚の魔法で、フレアの下級モンスターが最上級モンスターを上回ってしまった。
雷魔神-サンガ ATK:2600→1300
マイン・モール ATK:1000→2300
「サンガの攻撃力を……」
「これで倒せる! バトル! マイン・モールで雷魔神-サンガを攻撃!」
マイン・モールが穴を掘り進み、サンガの目の前で地面から出ると、そのまま跳び上がってつるはしを振るう。
だが、フレアの前に立ち塞がる”壁”は予想以上に高かった。
「雷魔神-サンガの効果発動! ダメージ計算時、場に存在する限り一度だけ相手攻撃モンスターの攻撃力を0にする! 〈リフレクト・サンダー・バリケード〉!」
サンガが電磁シールドを前方に張ると、それに触れたマイン・モールが感電し、動けなくなる。
ATK:2300→0
「そんな!? こんな能力があったなんて……」
「サンガよ! 返り討ちに! 【雷衝弾】!」
サンガが掌に電気を集中させて球体にすると、動けないマイン・モールに向かって放つ。
マイン・モールは電撃を受けると弾き飛ばされ、電気を帯びたままフレアに衝突する。
「きゃあ!? ……だけど、マイン・モールは1ターンに一度、戦闘では破壊されない!」
フレア LP:4000→2700
「そのような攻撃では、サンガを崩す事は出来ない! …そして覚えておけ! サンガはこの決闘における”第一の門”に過ぎぬという事を!」
「くっ…! …カードを2枚伏せてターンエンド!」
LP:2700
手札:2
モンスター
・マイン・モール
魔法・罠
・セット
・セット
召喚師の言葉が本当ならば、このサンガの他にも強力なモンスターがいる事になる。
フレアは気を引き締めながら決闘盤を構え直す。
「私のターン! ドロー!」
召喚師 手札:1→2
「私は墓地に眠る《レベル・スティーラー》2体の効果発動! このモンスターは自分の場のレベル5以上のモンスターのレベルを一つ下げる事で墓地から特殊召喚する事が出来る! サンガのレベルを2つ下げ……蘇れ! 《レベル・スティーラー》!」
サンガの体から2体のレベル・スティーラーが飛び出す。
雷魔神-サンガ レベル7→5
ATK:600
ATK:600
「(2体…!? そっか、ワン・フォー・ワンのコストも”レベル・スティーラー”だったのね……)」
「2体のレベル・スティーラーをリリース! 《風魔神-ヒューガ》をアドバンス召喚!」
2体のモンスターが光の中へと消えると、その光の中から腕が生えた緑の球体が現れる。
体と頭部が一体となっており、顔面の上部に大きく”風”という文字が書かれている。
ATK:2400
「また最上級モンスター!? それに、これって……」
「冥界の宝札により、2枚ドロー! …そうだ。 私の場に最上級モンスター、そして墓地にレベル・スティーラー2体がいる限り、新たなる最上級モンスターを連続で繰り出す事が出来る! これぞ第一試練、”最上級召喚の試練”! これを打ち破り、”力”を証明して見せよ! バトル!」
召喚師 手札:1→3
「雷魔神-サンガでマイン・モールを攻撃! 【雷衝弾】!」
「罠カード《和睦の使者》を発動! このターン、私のモンスターは戦闘破壊されず、戦闘ダメージも0になるよ!」
サンガが再びマイン・モールへ雷衝弾を放つが、マイン・モールは地面に潜ってそれをかわす。
「防がれたか……だが、守っていては”扉”を開く事など出来はしない! カードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
手札:2
モンスター
・雷魔神-サンガ
・風魔神-ヒューガ
魔法・罠
・冥界の宝札
・セット
・セット
・セット
召喚師の言う通り、守っているばかりでは勝利出来ない。
フレアは目の前の”番人”を打ち倒し、越えて行かなければならないのだ。
フレアは”番人”の後ろにそびえ立つ神殿を見上げる。
「(エアトス……私、必ずそっちに行くから!) 私のターン!」
フレア 手札:2→3
「それなら私だって! 魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスターを墓地に送り、デッキからレベル1モンスター《レベル・スティーラー》を特殊召喚!」
フレアの場にレベル・スティーラーが現れる。
召喚師とまったく同じ方法での特殊召喚であった。
ATK:600
「……ワン・フォー・ワンにレベル・スティーラー……そして2体のモンスター……同じ最上級モンスターのアドバンス召喚で対抗する気なのか?」
「ううん! 私がするのはこっち! 永続罠《リミット・リバース》を発動! 自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚するよ! 私はワン・フォー・ワンで墓地に送ったチューナーモンスター《キーマウス》を特殊召喚!」
続けて現れたのはキーマウス。
今、フレアの場にチューナーとそれ以外のモンスターが揃った。
ATK:100
「レベル3《マイン・モール》と、レベル1《レベル・スティーラー》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」
キーマウスが首輪の錠に自分の尻尾を差込み開錠させると、1つの光輪へと姿を変え、光輪はマイン・モールとレベル・スティーラーを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風と交わりて、彼方へ続く地平を駆けよ! シンクロ召喚! 嘶け! 《サンダー・ユニコーン》!」
光の柱から現れたのはサンダー・ユニコーン。
場に降り立つと、高らかに前足を上げて嘶き、蹄を鳴らす。
ATK:2200
「シンクロ召喚か……だがその攻撃力ではヒューガも倒せない!」
「獣族シンクロモンスターの素材となったマイン・モールの効果で1枚ドロー! …そんな事ないよ! この子なら、サンガだって倒せる! 墓地の《レベル・スティーラー》の効果発動! サンダー・ユニコーンのレベルを一つ下げて、守備表示で特殊召喚!」
フレア 手札:1→2
サンダー・ユニコーンの体からレベル・スティーラーが飛び出し、フレアの場に再び現れる。
サンダー・ユニコーン レベル5→4
DEF:0
「サンダー・ユニコーンの効果発動! このターン、このカード以外の攻撃を封じる事で、相手の場のモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時まで自分の場のモンスター1体につき500ポイントダウンさせる! 私の場のモンスターは2体! 《雷魔神-サンガ》の攻撃力を1000ポイントダウンさせるよ! 〈サンダー・スクレイプ〉!」
サンダー・ユニコーンが角からサンガに向かって電撃を放つと、サンガはその電気を吸収しようとするが、あまりのエネルギー量にサンガの体が受け切れず、体から溢れ出して逆に多くの電気を放出してしまう。
ATK:2600→1600
「成る程……」
「バトル! サンダー・ユニコーンで雷魔神-サンガを攻撃! 【サンダー・スピアー】!」
サンダー・ユニコーンが角に電気を纏わせると、そのままサンガに向かって突進する。
既に効果を使ったサンガではサンダー・ユニコーンの攻撃力を0に出来ない。
ようやく攻撃が通るとフレアは思った――――が、やはり簡単に崩せる相手ではなかった。
「甘い! 罠カード《シフトチェンジ》を発動! 自分のモンスターが魔法・罠の効果対象、または攻撃対象となった時、その対象を自分の場の他のモンスターに移し替える! 攻撃対象を《雷魔神-サンガ》から《風魔神-ヒューガ》に変更!」
サンダー・ユニコーンが突進する方向にいたサンガだったが、突然ヒューガと位置が入れ替わる。
当のサンダー・ユニコーンは敵が入れ替わった事に気付かない。
「そんな!? 駄目! サンダー・ユニコーン!」
「それだけではない! ヒューガはサンガと同じ効果を持つ! ダメージ計算時にサンダー・ユニコーンの攻撃力を0にする! 〈リフレクト・ストーム・バリケード〉!」
ヒューガが腕から強風を放つと、サンダー・ユニコーンは強烈な向かい風を受けて動きを止める。
ATK:2200→0
「また攻撃力を…!?」
「吹き飛ばせ! 【魔風波】!」
ヒューガはさらに強烈な突風を放つと、サンダー・ユニコーンを彼方へと吹き飛ばし、さらにその風はフレアを襲う。
「きゃあああ!?」
フレア LP:2700→300
強烈なダメージに、フレアは膝をつく。
最上級モンスター2体を前にして、残ったモンスターがレベル・スティーラー1体、LPが300。
圧倒的に不利な状況であった。
「これでもう、後は無い。 ……諦めるのなら、それも良い。 そこまでだったという事だ……」
「……私は諦めない! カードを伏せてターンエンド!」
LP:300
手札:1
モンスター
・レベル・スティーラー
魔法・罠
・リミット・リバース
・セット
「ならば最後まで見せてみよ! 私も最後まで手を抜かない! 私のターン! ドロー!」
召喚師 手札:2→3
「ヒューガのレベルを2つ下げ、2体の《レベル・スティーラー》を墓地から特殊召喚! この2体をリリースし、《水魔神-スーガ》をアドバンス召喚!」
風魔神-ヒューガ レベル7→5
2体のレベル・スティーラーが光の中へと消えると、その光の中から現れたのは青色の怪物。
他の2体と違って恐ろしげな顔と両手足を持ち、顔の上部に大きく”水”という文字が書かれている。
ATK:2500
「冥界の宝札の効果により2枚ドロー!」
召喚師 手札:2→4
壁がレベル・スティーラーのみであり、LPが残り僅かのフレアを倒すには、サンガとヒューガだけで十分である。
なので、この状況で召喚師がスーガを召喚する必要性は感じられない。
だが、これには召喚師の思惑があった。
「(極限まで追い詰めれば、その”力”を本能的に呼び覚ますかもしれない……”運命の子”、フレア……その”力”をこの”三魔神”で引き出してみせる!) バトル! 風魔神-ヒューガでレベル・スティーラーを攻撃! 【魔風波】!」
「罠カード《聖なるバリア -ミラーフォース-》を発動! 相手攻撃表示モンスターを―――」
「そうはさせない! 伏せていた速攻魔法《我が身を盾に》! LPを1500ポイント払い、相手が発動した”場のモンスターを破壊する効果”を持つカードを無効にし、破壊する!」
召喚師 LP:4000→2500
「!?」
召喚師が発動した魔法の効果により、ミラーフォースが破壊されると、ヒューガがレベル・スティーラーを吹き飛ばす。
「(これで終わってしまうか……) 水魔神-スーガで直接攻撃! 【流水波】―――」
「手札から《速攻のかかし》の効果発動! 相手の直接攻撃宣言時、手札から捨てる事でバトルフェイズを強制終了させる!」
スーガが攻撃しようとした瞬間、目の前を何かが高速で横切ると、それに驚いた三魔神達は動きを止めてしまう。
「なんと……まだ防ぐ手段を持っていたとは……カードを伏せてターンエンド!」
LP:2500
手札:3
モンスター
・雷魔神-サンガ
・風魔神-ヒューガ
・水魔神-スーガ
魔法・罠
・冥界の宝札
・セット
・セット
「(負けられない……お願い! 私のカード達……) 私のターン! ドロー!」
フレア 手札:0→1
「魔法カード《マジック・プランター》を発動! 自分の場にある表側永続罠《リミット・リバース》を墓地に送り、2枚ドロー!」
フレア 手札:0→2
「(……ありがとう! 皆!) 相手の場にモンスターが存在し、自分の場にカードが存在しない場合、このカードはレベル4モンスターとして特殊召喚する事が出来るよ! 来て! チューナーモンスター《こけコッコ》!」
フレアの場に現れたのは、何時見ても丸々としているこけコッコ。
目の前に立ち塞がる三魔神を見て驚き、こけて転がってしまう。
ATK:1600
「そして《サンライト・ユニコーン》を通常召喚!」
続けてフレアの場にサンライト・ユニコーンが現れる。
龍可もこのモンスターを持っていたが、よく見るとそれぞれの特徴があり、フレアと龍可のサンライト・ユニコーンは別個体なのが分かる。
ATK:1800
「サンライト・ユニコーンの効果発動! デッキトップをめくり、それが装備魔法だった場合手札に加え、違った場合はデッキボトムに送る!」
フレアは顔に緊張の色を浮かべ、デッキトップをめくる。
そのカードは―――
「!? 私がめくったカードは装備魔法《団結の力》! よって手札に加える!」
フレア 手札:0→1
「な、何!?」
「今度こそ私の番よ! レベル4《サンライト・ユニコーン》に、レベル4《こけコッコ》をチューニング!」
こけコッコが自身を4つの光輪へと変え、サンライト・ユニコーンを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野を駆ける雷よ! 常闇を貫き、閃光の如く大地を駆け抜けよ! シンクロ召喚! 照らせ! 《ライトニング・トライコーン》!」
光の柱から現れたのは、三角獣”ライトニング・トライコーン”。
場に降り立つと、赤い三本角から眩い電光を放つ。
ATK:2800
「墓地にいる《レベル・スティーラー》の効果発動! ライトニング・トライコーンのレベルを下げて墓地から守備表示で特殊召喚!」
ライトニング・トライコーンの体からレベル・スティーラーが飛び出すと、フレアの場で守備体勢をとる。
ライトニング・トライコーン レベル8→7
DEF:0
「そして! さっき手札に加えた装備魔法《団結の力》を《ライトニング・トライコーン》に装備! このカードは自分の場のモンスターの数だけ、装備モンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる! 私の場のモンスターは2体! よって1600ポイントアップ!」
ATK:2800→4400
「(何も無い状況から、ここまで……この”力”……本物…!)」
「ライトニング・トライコーンで雷魔神-サンガを攻撃! 【ギガボルト・チャージ】!」
ライトニング・トライコーンが電気を角に集中させ、サンガに向かって突進し、角を突き刺して大量の電気を流し込む。
それを受けきれなくなったサンガはエネルギーが暴走し、跡形も無く爆散してしまった。
「ぐあぁぁぁ!!!」
召喚師 LP:2500→700
ようやく一矢報いたフレア。
効果を使用し、無防備となっているサンガを撃破し、召喚師に大ダメージを与える。
「これでターンエンド!」
LP:300
手札:0
モンスター
・ライトニング・トライコーン
・レベル・スティーラー
魔法・罠
・団結の力(ライトニング・トライコーン)
「……このエンドフェイズ時に罠カード《奇跡の残照》を発動! このターンに戦闘破壊された《雷魔神-サンガ》を特殊召喚!」
召喚師の場に光が降り注ぐと、その光の中からサンガが姿を現す。
ATK:2600
「サンガが!? …でも、ライトニング・トライコーンの方が攻撃力は上よ!」
「……私のターン!」
召喚師 手札:3→4
「……フレア殿。 ここまでの戦い、見事。 ……そして、ここからが本番!」
召喚師は手札から1枚のモンスターカードを取り出す。
「これこそが”第一の扉”を守る最強の守護者! あなたはこれを越えられるか? ……行くぞ! 場に存在する三魔神をリリースし、手札から特殊召喚! 出でよ! 《ゲート・ガーディアン》!」
召喚師の場にいる三魔神が召喚師の言葉に反応すると、サンガが上半身、ヒューガが胴体、スーガが下半身となり、1体の巨神となる。
これこそが三魔神の本来の姿。
”第一の扉”―――そして、この神殿を外的から守り続けてきた守護神、”ゲート・ガーディアン”である。
ATK:3750
「が、合体……!? で、でもまだ―――」
「まだ終わりではない! 魔法カード《死者転生》を発動! 手札を1枚捨て、墓地からモンスター1体を手札に加える! 私は《雷魔神-サンガ》を手札に!」
召喚師 手札:2→1→2
「……サンガ!? まさか……」
「その通り! 墓地の《レベル・スティーラー》2体の効果発動! ゲート・ガーディアンのレベルを2つ下げ、2体を墓地から特殊召喚! その2体をリリース! 《雷魔神-サンガ》をアドバンス召喚!」
ゲート・ガーディアン レベル11→9
召喚師の場に、再びサンガが現れる。
しかも再召喚された為、再び能力が使える様になっている完全な姿で。
ATK:2600
「冥界の宝札の効果により2枚ドロー!」
召喚師 手札:1→3
「そんな……」
「さあ……行くぞ! 雷魔神-サンガでレベル・スティーラーを攻撃! 【雷衝弾】!」
サンガが雷衝弾をレベル・スティーラーに向かって放つと、レベル・スティーラーはあっという間に消滅してしまう。
「モンスターが減った事により、 団結の力の効果が弱まる! これでゲート・ガーディアンの攻撃力が上回った!」
ATK:4400→3600
「ゲート・ガーディアンでライトニング・トライコーンを攻撃! 【ゲート・デストラクション】!」
ゲート・ガーディアンを構成している三魔神それぞれが電撃、風撃、水撃を一斉に放つと、ライトニング・トライコーンに全て命中させ、破壊してしまう。
「まだ……まだ終わってない! ライトニング・トライコーンの効果発動! 相手によって破壊された場合、墓地にいる《サンダー・ユニコーン》、または《ボルテック・バイコーン》1体を特殊召喚出来る! 私は《サンダー・ユニコーン》を特殊召喚!」
フレア LP:300→150
ライトニング・トライコーンに代わり、フレアの場にサンダー・ユニコーンが再び現れる。
ATK:2200
「そんな効果が……だが、そのモンスターではゲート・ガーディアンを倒す事は出来ない! 私はカードを3枚伏せてターンエンド!」
LP:700
手札:0
モンスター
・ゲート・ガーディアン
・雷魔神-サンガ
魔法・罠
・冥界の宝札
・セット(メタル・リフレクト・スライム)
・セット(安全地帯)
・セット(フォトン・サンクチュアリ)
・セット(デビルズ・サンクチュアリ)
フレアの状況は絶望的だった。
手札は0、LPはたったの150。
場にはサンダー・ユニコーン1体、伏せカードは1枚も無い。
そして、目の前には攻撃力3750のゲート・ガーディアン、2600の雷魔神-サンガ、威圧するように並ぶ伏せカード4枚。
ゲート・ガーディアンはサンダー・ユニコーンだけではとても倒せない。
隣のサンガなら攻撃力を上回れるが、攻撃した瞬間こちらの攻撃力を0にされて終わりである。
そんな中、フレアは3年前の、サテライトに滞在していた時のフリントを思い出していた。
クラッシュから預かったフレアを守る為に必死だったフリント。
フレアは当時、表面にはあまり出さなかったが、煩い位”離れるな”と言っていたフリントを少しだけ疎ましく感じていた。
だが、今ではその時のフリントの気持ちがよく解る。
「(この不安と焦り……フリントも、私が危なくなった時にはこんな思いだったのかな?)」
これが”守る者”の責任感。
龍可との冒険、そしてエアトスの危機によって芽生えた、フレアの新しい感情。
フレアはその感情を腕に集中させ、デッキトップに指を掛ける。
「(私は……勝ちたい! 守りたい人の為に………だから、もう一度だけお願い…!) 私のターン! ドロー!!!」
フレア 手札:0→1
「……魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地のモンスターを5体デッキに戻してシャッフル! その後2枚ドロー!」
デッキに戻したモンスター
マイン・モール
キーマウス
サンライト・ユニコーン
速攻のかかし
ライトニング・トライコーン
フレア 手札:0→2
「このカード…!」
フレアは引き当てたカードから、”光差す道”が放たれる。
だが、”道”は右往左往していて、中々”勝利”を見つけられない。
「(探すのよ…! きっと、きっと何処かにあるはず……)」
フレアも道が繋がるべき場所を探す。
そこは自分なのか、相手なのか。
場なのか、手札なのか、墓地なのか。
暫くして、”道”があるものと繋がる。
「(相手の……墓地?)」
フレアは記憶を探る。
見ていたはずだ――――”勝利の鍵”を。
まだ終わりではない! 魔法カード《死者転生》を発動! 手札を1枚捨て、墓地からモンスター1体を手札に加える! 私は《雷魔神-サンガ》を手札に!
「(見た……私は……あの人が”あのカード”を捨てるのを!)」
この瞬間、フレアの中の”光差す道”が完成する。
フレアは迷う事無く、カードを手にとった。
「魔法カード《
捨てたカード
リロード
「な!?」
この瞬間、召喚師の墓地から1枚の魔法カードが飛び出す。
フレアは飛んできたそれを手に取り、掲げる―――
「速攻魔法《スケープ・ゴート》! このターンの召喚を全て放棄する事で、私の場に羊トークン4体を守備表示で生成!」
フレアの場に丸々とした羊が4体現れる。
DEF:0
DEF:0
DEF:0
DEF:0
「壁を増やした……だが所詮は時間稼ぎ――――!? しまった!?」
フレアの考えに気付き、驚愕する召喚師。
フレアは笑みを浮かべると、決着を付ける為に動き出す。
「サンダー・ユニコーンの効果発動! 相手モンスター1体の攻撃力を、自分の場のモンスター1体につき500ポイントダウンさせる! 私の場のモンスターは5体! よって2500ポイントダウン! 対象は勿論《ゲート・ガーディアン》! 〈サンダー・スクレイプ〉!!!」
サンダー・ユニコーンがゲート・ガーディアンに向かって、電撃を放つと、雷族であるサンガ以外は痺れて動けなくなる。
ATK:3750→1250
「な、何という事だ……まさか、こんな事が……」
予想もしなかった事態に、召喚師は大分うろたえてしまっている。
あの様子では、大した魔法・罠も無く、ゲート・ガーディアンもパワーとの引き換えで三魔神の様な効果を持っていないだろう。
「扉を開いて! サンダー・ユニコーンでゲート・ガーディアンを攻撃! 【サンダー・スピアー】!」
サンダー・ユニコーンが角に電気を纏わせ、ゲート・ガーディアンに突進。
真下に潜り込むと、刃状の角を一気に振り上げ、角から放った衝撃波でゲート・ガーディアンを真っ二つにする。
「……見事」
召喚師 LP:700→0
ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響いた。
フレアと召喚師はお互いにカードと決闘盤を収め、歩み寄る。
「あなたの”力”……見させて頂きました。 これなら、問題なくここをお通しする事が出来ます」
召喚師は最初の時の様な礼儀正しい口調に戻り、フレアに対して頭を下げる。
「こんな時だけど……ありがとう! とっても楽しい決闘だったわ! あ、これ……」
フレアは手に持っていた”スケープ・ゴート”を召喚師に差し出す。
だが、召喚師はそれを受け取らず、首を左右に振る。
「……いえ、そのカードは差し上げます。 よろしければ、残る”試練”にてあなたの”力”としてください」
「あ! そういえばまだ終わりじゃなかったんだっけ!? 急がなきゃ!」
閉まっている扉に向かって走って行こうとするフレアを、召喚師は腕で制止する。
「大丈夫ですよ。 ガーディアン・エアトスは休眠状態に入っているだけです。 急がなければならないという事はありません」
「え……そうなの?」
「ええ……ですが、あなたを今すぐ必要としている事には変わりありません。 ですから、この後も焦らずに、あなたらしい決闘をして、この後の試練を乗り越えて行ってください」
そう言って召喚師は扉に振り向くと、呪文を詠唱してから扉を指差す。
すると、扉が大きな音を立てながら徐々に開き始めた。
「この先には、さらに厳しい試練が待ち受けています。 お気をつけて……」
「…はい! ありがとうございました! カード、大事にします! イーグル・アイ! またね!」
フレアは召喚師にお辞儀をし、イーグル・アイに手を振ると、神殿の中へと入っていった。
「……”運命の子”よ。 ガーディアン・エアトスを、よろしくお願いします……」
* * *
「わぁ~……外から見た時も凄かったけど、中も凄い……」
フレアは長い通路を抜けて辿り着いた神殿内部の大広間を見渡す。
美麗かつ、荘厳な雰囲気で、フレアは自身の身が引き締まるのを感じる。
「あ、また扉……それと……」
フレアが大広間の奥に眼を向けると、そこには大きな扉が見え、その前には2体の精霊らしき人物がいた。
フレアはその精霊達に声をかけようと近づく。
「止まれ! ここから先は通さん!」
「ひゃ!? ご、ごめんなさい…」
「駄目よシール。 女の子相手にそんな怒鳴っちゃ……こんにちはフレア」
「あ……こんにちは」
フレアの前に立ち塞がる精霊―――いきなり怒鳴ってきた精霊は、赤い鎧を着た竜人。
その全身からは常に少量の火が噴き出している。
フレアに対して微笑んで挨拶した精霊は、上半身が人間で、下半身が魚の人魚。
その為か、地面に体を付けずに魔力で浮遊している。
「力無き者にここを通る資格は無い! ガーディアン・エアトスの元へ行きたいのなら、我々の”試練”を乗り越えてから行け!」
竜人はそう言うと、腕に弓の様な形をした決闘盤を出現させ、フレアに対して構える。
「……ごめんなさいね。 この人、融通が利かないから……私がこの”第二の試練”の説明をするわ……っと、その前に自己紹介。 私は”ケースト”、こっちが”シール”。 この”第二の扉”を”守る者”よ」
ケーストが”第二の試練”以降のルールを説明する。
それは変則タッグフォースルールで行われる2対1の決闘。
”守る者”側は2人で交代し合って決闘を行い、フレアは一人で相手をする代わりに、初期手札を上限の6枚から始める。
「ちょっと待って!? 2人相手に私一人!? 手札が1枚増えたからってそれはずるくない?」
「ならば去れ! 臆病者にこの試練を受ける資格など無い!」
不利な条件に怯んだフレアを、シールが一喝する。
フレアはその言葉を聞いて、自分が何の為にここへ来て、何の為にこの”試練”を受けているのかを思い出す。
「(そうだった……これは試練! 不利な位が当たり前なんだわ!) この”試練”、やります! そして絶対に勝ちます!」
フレアは意気込んで決闘銃を抜き、決闘盤に変形させて腕に装着する。
「その意気や良し! 行くぞケースト!」
「解ってるわ。 よろしくねフレア……」
ケーストは細長い板の様な物を出現させ、それを手に取る。
どうやら決闘盤のようだ。
見方によっては杖にも見える。
「「「デュエル!!!」」」
この2人はどれ程の実力者なのか。
フレアの長き”試練”、その2戦目が今始まる。
最初の試練なのに、ちょっと厳しい戦いのしすぎたかも……まあ神殿の周りを守ってずっと戦ってきた人だから強くてもいいか。
この小説でのガーディアン達はDMで出てきたガーディアン達とは別個体です。
マハードとトルンカみたいな?もんですかね。
ケーストが出した決闘盤は、クロノス先生達が使ってる物を細長くしたイメージです。