遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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第25話 剣の女神と勇者達

長い階段を駆け上がり、フレアはついにエアトスが封印されている広間に辿り着く。

その広間はこれまでと同様に美麗かつ荘厳。

だが、これまでの広間には無い”神聖な気”が漂っているのを感じ、広間を見渡しているフレアは言葉に出来ないような感動を覚えていた。

 

「凄い……」

 

フレアは広間の奥を見ると、そこには祭壇が設けられており、その壇上にはフレアの身長を大きく上回る程の巨大な結晶(クリスタル)が置かれている。

 

「あれ……剣?」

 

フレアが祭壇に近づき、その結晶を見上げると、根元に一振りの剣が突き刺さっていた。

その剣をもっと近くで見ようとフレアは祭壇を昇る。

 

「!? これって……」

 

フレアが壇上に立つと、剣ではなく結晶に眼を奪われた

その結晶の中に何かが閉じ込められているのだ。

 

「……鳥?」

 

結晶の中には1羽の大きな鳥獣が閉じ込められていた。

鋭い眼をこちらに向け、大きな翼は体の前面を隠すようにたたまれている。

 

 

フレア……ここまで、よく来てくれました。

 

 

「!? エアトス! あなたがエアトスなの?」

 

フレアは目の前の結晶に向かって驚いた表情で声をかける。

聞こえて来る声と、目の前の鳥獣がまったく噛み合わないからだ。

 

 

その通りです。

フレア……あなたのおかげで私は”力”を取り戻すことが出来ました。

本当に……ありがとう。

 

 

「ううん、私だけじゃないよ。 皆がエアトスに元気になってほしいって頑張ったから、あなたを助けられたの」

 

フレアはデッキから7枚のカードを取り出し、結晶の前に掲げる。

その瞬間、カード達が喜びの声を上げた―――フレアはそんな風に感じた。

 

 

そうですね……本当に……私には勿体無い”友人達”です。

 

 

エアトスは泣いているのか、少しだけ掠れた声を出す。

 

「エアトス……でも、これは一体何なの? 見た感じまだ元気そうには見えないけど……」

 

フレアはエアトスが閉じ込められている結晶に手を置く。

召喚師もエアトスも”力”を取り戻したと言っていたが、とてもそうには見えない。

 

 

これは、私自身が施した封印。

この封印を解けば、私は自由となります。

 

 

「それはどうやって解くの?」

 

 

結晶の根元に剣があるはずです。

それを引き抜いてください。

フレア……あなたにしか出来ない事です。

 

 

「私にしか……」

 

フレアは一瞬疑問に思ったが、すぐにそれは頭から消える。

剣を抜けば、エアトスが助かる―――それだけで十分であった。

フレアは剣を掴み、ありったけの力を腕に込める。

 

「む…むむぅ……」

 

すると、少しずつ剣は動き出す。

それを見たフレアは全力で腕を引くと、剣は勢いよく結晶から引き抜かれた。

 

「きゃあ!?」

 

一方、力を入れすぎたフレアは後ろに仰け反り、剣を持ったまま尻餅をついてしまう。

 

「痛ぁ~……え? きゃ!?」

 

フレアは打ち付けた尻を撫でながら立ち上がると、目の前の結晶が眩い閃光を放つ。

咄嗟に目を閉じるフレア。

その瞬間、肌で”風”を感じた。

窓一つ無い神殿内で風――――フレアはゆっくりと眼を開けると、そこには限りなく広がる大空と、何処までも続く地平線が見えた。

 

「嘘…!? さっきまで神殿にいたのに……」

 

故郷を思わせる風景に驚き、動揺しながらフレアは辺りを見渡す。

見覚えのある床、そして自分が立っている場所は祭壇の上。

 

「ここは……広間! 嘘でしょ……壁と天井が無い!?」

 

フレアは外に移動したのではない。

あの閃光が放たれた瞬間、壁と天井が消失したのだ。

フレアがいた広間は一瞬にして神殿の屋上となった。

 

「あ、あれ? そういえばエアトスは…?」

 

フレアの目の前にあった結晶は既に無くなっている。

つまり、エアトスの封印は解かれたはずなのだ。

再び辺りを見渡していると、頭上から何かが舞い落ちてくる。

 

「……羽?」

 

フレアが上を見上げると、大きな翼を羽ばたかせながら何かが舞い降りてくる。

それがフレアの前に立つと、フレアは驚きのあまり息をのんだ。

それは民族衣装の様な服を身に纏った美しい女性。

日の光によって輝いている金髪の上に鳥獣の頭を模した被り物を被り、背中には純白の大きな翼を生やしている。

その姿は正に”天使”―――”女神”とも言っていいかもしれない。

フレアはその姿に思わず見惚れてしまった。

 

「……あなたが、エアトス?」

 

「フレア……逢いたかった」

 

エアトスはフレアを両腕と翼で抱きしめる。

フレアにとって、世界で一番力強く、優しい抱擁だと感じた。

エアトスに包まれたフレアは、受け入れる様にエアトスを抱き返す。

 

「私も……逢いたかったよ、エアトス……」

 

暫くそのままでいた二人。

喜びを存分に噛み締めた後、二人は同時に離れる。

 

「ねえエアトス……これで、全部終わりだよね?」

 

フレアは不安そうな顔でエアトスを見上げる。

 

「エアトスが戦ってた”悪なる者の意思”って、多分”地縛神”や”ダークシグナー”の事でしょ? 龍可ちゃんが倒したよ? きっと遊星達も勝つ……もう、エアトスは戦わなくていいんでしょ?」

 

再びエアトスが戦いに赴けば、また同じ様に傷つき、倒れてしまうかもしれない。

フレアは本気でエアトスの身を案じていた。

 

「……いいえ、まだ終わりではありません」

 

「え…?」

 

エアトスは東の空を睨む。

まるで、倒すべき”宿敵”を見る様に。

 

「地縛神は倒れました。 しかし、”邪悪なる気”はまだ消えていない………そして、その気は”力”を求め、もうじきここへやって来るでしょう」

 

「!? どういう事なの……」

 

「……”悪なる者の意思”は考えました。 シグナーが生まれいずる前に、地縛神を復活させようと。 その為の”生贄”として選んだのが、私と……私が守るべき”部族”でした…!」

 

エアトスが悔しそうに体を震わせる。

エアトスの怒りと悲しみが、側にいるフレアにも痛いほど伝わってきた。

 

「結局、私を逃した事により計画は失敗し、5000年周期で行われる”宿命の戦い”を待つことになりました。 そして……シグナーに敗れた」

 

「龍可ちゃんが勝ったんだもんね!」

 

フレアは小さくガッツポーズをとる。

エアトスは一瞬だけ微笑むと、すぐに表情を戻して話を続けた。

 

「ですが、地縛神が倒れても、”悪なる者の意思”は未だに存在しています。 そして……それはここにやって来る。 私を取り込み、”力”を得て、再び地縛神を復活させる為に…!」

 

「そんな…!?」

 

エアトスは再び視線を東へ向ける。

その瞬間、エアトスの表情が険しくなった。

フレアも顔を東へと向けると、遠くの空から黒い雲が広がってくるのが見えた。

雲は瞬く間に太陽や青い空を隠す。

それだけではなく、あの雲は見る者の”心”も覆ってしまうのではないか―――そう思えるほどの不安をフレアは感じていた。

 

「……フレア、あなたを戦いに巻き込みたくはなかった……ですが、私は無力…! 一人では、大切な者達を誰一人守ることが出来ない…!」

 

エアトスは苦しそうに胸を押さえる。

高位精霊でありながら、人々に頼らなければ満足に戦う事も出来ない。

そんな自分への怒りや悲しみが、エアトスの中で渦巻いている。

 

「……勝手な事ばかり言って、本当にごめんなさい……ですが、私が頼れるのはフレア、あなただけなのです……どうかお願いします! 私と共に……戦ってください!」

 

エアトスがフレアに哀願すると、フレアは小さく息をつき、エアトスに笑いかける。

 

「今更何言ってるのよ。 私は、その為にここへ来たのよ?」

 

「フレア……」

 

「エアトスを助ける……私は、エアトスの力になりたいの。 それに……私だけじゃなく、皆も!」

 

フレアは決闘銃を抜いてエアトスに見せる。

エアトスはその銃から、懐かしい友の”鼓動”を感じ取った。

 

「……ああ、感じます。 皆の”魂”を。 フレアの”心”を……」

 

エアトスは目に涙を滲ませる。

そんなエアトスにフレアは微笑むと、東に向かって決闘銃を構える。

いよいよ、邪悪な気配が強まってきた。

 

「来ます!」

 

黒い雲の中から、黒い気の塊が飛び出す。

その塊がフレア達がいる神殿の屋上に降り立つと、人の形となる。

 

「ウウ……ガァァァ!!! 見つけたぞぉ! エアトスッ!」

 

出来上がったのは、黒に黄色のラインが入った装束を着た髪の無い褐色肌の男。

その白目が無い黒い瞳でエアトスを睨みつけている。

 

「”ディマク”……」

 

「ディマクって……龍可ちゃんが倒したダークシグナー!? どうしてここに……」

 

「ディマク……ダークシグナーの一人にして、”闇の部族”の若き戦士……」

 

「闇の部族……って事はあいつが…!」

 

フレアは決闘銃を構えたままディマクを睨みつける。

闇の部族、しかも戦士と言う事は、この男が前に出てエアトスの部族を滅ぼしたに違いなかった。

 

「ですが、既に彼は彼でなくなっているようです」

 

「どういう事?」

 

エアトスがフレアに説明する。

フレアが知っている通り、ディマクは地縛神と共に龍可と龍亜に倒され、消滅した。

しかし、闇の部族であるディマクに取り憑いていた”悪なる者の意思”は完全に滅びず、消滅しかけていたディマクと同化し、この精霊界へ復活の為の”力”を求めてやってきたという訳である。

 

「もう逃げられんぞォ! 貴様はここで我に倒され、地縛神……そして偉大なる我が主”冥界の王”の生贄となるのだァ!!!」

 

「黙りなさい! あなたが幾ら足掻こうと、シグナーに勝つ事は出来ません! そして、私達にも!」

 

エアトスの言葉と同時に、フレアが決闘銃を腕に装着し、決闘盤へ変形させる。

 

「ハッハッハ! 愚か者めェ! 我に歯が立たなかった貴様が何を言う! 無様に敗れ、”力”の元となる部族を失った貴様など我の敵ではないわァ! その”力”も一時的なものであろう? 無駄に消費する前に渡して貰おうかァ!」

 

”悪なる者の意思”に操られたディマクが両手をエアトスに向けると、黒い波動を放つ。

だが、エアトスはフレアを守るように前へ出ると、何時の間にか手にしていた剣で目の前を一閃。

すると、ディマクから放たれた波動が掻き消えてしまった。

 

「何…!?」

 

「確かに、私の部族は滅びました……ですが、まだ”希望”は残されていたのです」

 

エアトスは後ろにいるフレアに眼を向けた。

ディマクもフレアに眼を向けると、何かに気付いた様に眼を見開き、驚愕する。

 

「!? まさか……決闘神官(ディアク・ウム)!? 馬鹿な……あの部族は滅ぼしたはず……」

 

「その通り。 フレアはその中でも特別な存在……決闘巫女(デュエル・シスター)です」

 

「ちょ、ちょっと待って!? どういう事なのエアトス!?」

 

いきなり訳の解らない話が始まり、混乱するフレア。

 

「ごめんなさいフレア……今は説明している暇はありません」

 

「ぐうぅ…! そうか、急に貴様の”力”が戻ったのは、そういう訳か……」

 

悔しそうに歯を食いしばるディマク。

その姿は何かに”恐怖”しているようにも見えた。

 

「フレアがいる限り、私は滅びない……フレアから与えられた命で、私はフレアを守り……”悪なる者の意思”! お前を滅ぼす!」

 

「フ、フン! 決闘巫女といえどまだ小娘! その”力”が覚醒する前に葬り、エアトスと共に主への生贄にしてくれるわァ!」

 

ディマクは吼えると、腕に付けている決闘盤を展開させる。

 

「やれるものならやってみなさい! 私にはエアトスが……”仲間達”がいる! だから絶対に負けない!」

 

「その通りですぞ! お嬢サンダー!」

 

突然、上空から響いてきた声。

フレアが見上げると、そこには大きな怪鳥に乗った黒蠍盗掘団と、彼等と偶然出会い、ここまで先導してきてくれたイーグル・アイが神殿の屋上に降り立つ。

 

「皆! 来てくれたのね!」

 

「いやぁ、間に合ってよかったですぞ! どうやら無事にエアトス殿をお助け出来たようですな! …エアトス殿! 我等はお嬢サンダーに仕える黒蠍盗掘団! 我々も微力ながら加勢いたしますぞ!」

 

「「「「お任せを!!!」」」」

 

「は、はぁ……」

 

突然、個性の強い集団が目の前に現れたので、流石のエアトスも呆気にとられた表情をする。

滅多に見られないであろうその表情に、フレアは少しだけ噴き出す。

雲が空を覆った時から感じていた”不安”は、もう無かった。

 

「よーし! 皆、行くよ!」

 

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

 

辿り着いた先で待っていた、最後の試練。

ディマク―――”悪なる者の意思”とフレア達の、”宿命の決闘”が始まる。

先攻はフレア。

 

「私のターン! ドロー!」

 

フレア 手札:5→6

 

「私はモンスターをセット! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:4

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

 

「我のターン!」

 

ディマク 手札:5→6

 

魔法カード《手札抹殺》を発動! お互いに手札を全て捨て、捨てた枚数分ドロー!」

 

ディマクが墓地へ送ったカード

マジシャンズ・エイプ

アクロバットモンキー

巨大ネズミ

チェーンドッグ

野生の咆哮

 

ディマク 手札:0→5

 

フレア 手札:0→4

 

「《トロイホース》を召喚!」

 

ディマクの場に現れたのは、トライスも使用していたダブルコストモンスター、”トロイホース”。

使う決闘者のせいか、以前見たものよりも邪悪な顔付きをしているように見える。

 

ATK:1600

 

「バトルだ! トロイホースでセットモンスターを攻撃!」

 

トロイホースがフレアのセットモンスターに飛びかかるが、トロイホースが触れる瞬間、セットカードのソリッドビジョンが消える。

 

「何…!?」

 

見ると、何時の間にかトロイホースの背に女が立っている。

女は手に持った鞭でトロイホースの首を締め上げた。

 

「残念だったわね。 さあ、元の場に戻りな!」

 

女は苦しんでいるトロイホースを解放すると鞭で叩き、相手の場へと追い払う。

 

「セットモンスターは守備力1800の《黒蠍-棘のミーネ》! よって相手に200ポイントの反射ダメージを与えるわ!」

 

「フン! この程度は傷にも入らん!」

 

ディマク LP:4000→3800

 

「いい出だしねお嬢サンダー! さっそく受け取ってちょうだい!」

 

「ええ! ここでミーネの効果発動! 相手に戦闘ダメージを与えた時、自分のデッキか墓地から黒蠍と名の付いたカードを1枚手札に加える! 私はデッキから《黒蠍-罠はずしのクリフ》を手札に!」

 

フレア 手札:4→5

 

「そんな雑魚を手札に加えられたところでどうという事はない! カードを伏せてターンエンドだ!」

 

LP:3800

手札:3

モンスター

・トロイホース

魔法・罠

・セット

 

「フフン! 我等の”力”を侮っているな! お嬢サンダー! 我等の力、見せ付けてやりましょう!」

 

「ええ! 私のターン!」

 

フレア 手札:5→6

 

ザルーグの言葉に応える為、フレアは力強くカードをドローする。

そのカードを確認した瞬間、フレアは笑みを浮かべた。

 

「魔法カード《増援》を発動! デッキからレベル4以下の戦士族1体を手札に! 私はレベル4の《首領・ザルーグ》を手札に! そして召喚!」

 

「おお! この流れは……野郎共! 準備しとけ!」

 

後ろで待機していたザルーグがフレアの場へ躍り出る。

フレアの狙いに気付いたようであり、意気揚々と二丁拳銃を構えた。

 

ATK:1400

 

「行くよ! 魔法カード《黒蠍団召集》を発動! 自分の場に《首領・ザルーグ》がいる時、手札から黒蠍と名の付くモンスター全てを特殊召喚出来る! 来て皆!」

 

「黒蠍一の力持ち! ”強力のゴーグ”!」

 

ATK:1800

 

「黒蠍団の紅一点、”棘のミーネ”!」

 

「どんな罠でも朝飯前! ”罠はずしのクリフ”!」

 

ATK:1200

 

「お宝頂きゃ、後はトンズラ! ”逃げ足のチック”!」

 

ATK:1000

 

 

「「「「「我等! 黒蠍盗掘団!!!」」」」」

 

 

「やった! 凄い!」

 

ザルーグを中心に、黒蠍盗掘団全員が場に現れる。

フレアが彼等を全て場に揃えたのは初めての事であり、少々興奮した様子でそれを眺めていた。

 

「何をしてくるのかと思いきや、そんな雑魚を並べて喜んでいるとはな。 やはり小娘に過ぎん!」

 

ディマクがフレアを嘲笑うと、フレアも不敵な笑みで返す。

 

「なら受けてみなさい! どんな困難も打ち破る、彼等の”コンビネーション”を! 罠カード発動! 《必殺!黒蠍コンビネーション》! このカードは場に黒蠍盗掘団が全て揃った時、このターン黒蠍盗掘団は戦闘ダメージを400にする事で相手に直接攻撃が出来る!」

 

「何だと!?」

 

「ミーネを攻撃表示に変更! バトル! ゴーグとチックで直接攻撃!」

 

「【ごうりきハンマー】!!!」

 

「【元気槌】!!!」

 

ゴーグがその巨体に似合わぬ俊敏な動きでディマクに近づき、手に持ったハンマーを振り下ろす。

 

「ぐおッ!」

 

ディマク LP:3800→3400

 

そこへチックがゴーグの大きな背中を駆け上がり、踏み台にして跳躍。

槌を構え、同様にディマクへ殴りかかる。

 

「ぐがぁ!」

 

ディマク LP:3400→3000

 

「ゴーグの効果発動! 戦闘ダメージを与えた時、相手の場のモンスター1体をデッキトップに戻すか、デッキトップのカード1枚を墓地に送ることが出来る! 私は場にいる《トロイホース》をデッキトップへ!」

 

ゴーグが続けてハンマーを振り回すと、それがトロイホースに命中し、場から弾き飛ばす。

 

「我のモンスターをデッキトップにッ!?」

 

「今度はチックの効果発動! 戦闘ダメージを与えた時、場のカード1枚を手札に戻すか、相手のデッキトップを確認し、トップかボトムに送る事が出来る! 私は今デッキトップに送ったトロイホースをデッキボトムへ!」

 

「戻ってくんなよ!」

 

チックが槌でディマクの決闘盤を叩くと、デッキトップのカードがボトムへと送られる。

 

「クリフ、ザルーグ!」

 

「【トラップナイフ】!!!」

 

「【ダブルリボルバー】!!!」

 

クリフがディマクに詰め寄り、ナイフを一閃させた後、ディマクの伏せカード《キャトルミューティレーション》にナイフを突き立て、破壊する。

その後、クリフがナイフを引き抜いて素早くディマクから離れると、ザルーグが二丁拳銃から弾丸を2発撃ち出し、ディマクとディマクの手札を撃ち抜く。

 

「ぬおぉ!」

 

ディマク LP:3000→2600→2200

 

「クリフの効果発動! 戦闘ダメージを与えた時、場の魔法・罠を1枚破壊するか、相手のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る事が出来る! 私は伏せカードを破壊! そしてザルーグの効果発動! 戦闘ダメージを与えた時、相手の手札をランダムに1枚捨てさせるか、クリフと同じ様にデッキの上からカードを2枚捨てさせる! 私は手札を捨てさせるわ!」

 

「おのれ…!」

 

捨てられたカード

キング・オブ・ビースト

 

黒蠍盗掘団はディマクの場を一掃しただけでなく、ディマクやその手札にもダメージを与えた。

雑魚だと馬鹿にしたモンスターに傷を付けられたディマクは怒りで顔を歪める。

 

「最後にミーネ!」

 

「【棘の鞭】!!!」

 

「フン!」

 

ディマク LP:2200→1800

 

ミーネはディマクに向かって鞭を振るうが、ディマクは怒りの表情のままその鞭を決闘盤をつけた左腕で払いのける。

 

「ミーネの効果により、墓地から《必殺!黒蠍コンビネーション》を手札に! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:0

モンスター

・首領・ザルーグ

・黒蠍-棘のミーネ

・黒蠍-強力のゴーグ

・黒蠍-罠はずしのクリフ

・黒蠍-逃げ足のチック

魔法・罠

・セット(必殺!黒蠍コンビネーション)

・セット

 

地縛神が無いとは言え、ディマクは闇の部族の中からダークシグナーに選ばれた”強者”である。

そのディマクをフレアは圧倒的な手数で追い詰めた。

精霊界での戦い、そして4度に渡る試練はフレアを大きく”成長”させた。

そこに精霊達との”結束”が加わり、フレアは以前とは比べ物にならない程の”力”を身に付けていたのである。

 

「調子に乗るな小娘ぇーーー!!!」

 

ディマク 手札:2→3

 

怒号と共にカードをドローするディマク。

引いたカードを確認し、先程のフレアと同様に笑みを浮かべる。

 

「魔法カード《アカシックレコード》を発動! デッキから2枚カードをドローし、そのカードがこの決闘中に使用したカードだった場合、ゲームから除外する! 我がドローしたカードはこの2枚!」

 

ドローしたカード

クローザー・フォレスト

茫漠の死者

 

「どちらも使用していないカードだ! よって手札に加える……LPが2000ポイント以下の時、このカードを手札から特殊召喚出来る! 来い! 《茫漠の死者》!」

 

ディマクの場に現れたのは体に包帯を巻いた、所謂”ミイラ男”。

恐ろしげな呻き声を上げながら黒蠍盗掘団と対峙する。

 

「このカードの攻撃力は相手のLPの半分となるが……そんな事はどうでもいい」

 

ATK:2000

 

「これは”贄”に過ぎん! 《DT(ダークチューナー) ダーク・エイプ》を召喚!」

 

続けてディマクの場に猿の形をした奇妙なチューナーモンスターが現れる。

 

ATK:0

 

「さらに魔法カード《ダーク・ウェーブ》を発動! 自分の場のモンスター1体のレベルを”マイナス”にする! 《茫漠の死者》のレベルをマイナスに!」

 

茫漠の死者 レベル5→-5

 

「ダークチューナー? マイナスレベル? 一体何なの―――」

 

「フレア! 来ます!」

 

警戒の声を上げるエアトス。

それを聞いたフレアは咄嗟に身構える。

一体何が来るというのか。

 

「レベル-5となった《茫漠の死者》に、レベル2の《DT ダーク・エイプ》をダーク・チューニング!」

 

ダーク・エイプが2つの星を体から放出し、消滅すると、その星が茫漠の死者の体に入り込み、黒い星へと変わる。

やがて茫漠の死者の体が消し飛ぶと、その中から7つの黒い星が飛び出し、円を描くように飛び回ると、その中心に漆黒の柱が立つ。

 

「暗黒より生まれし者、万物を負の世界へと誘う覇者となれ! ダークシンクロ! もう一度、この世界を支配せよ! 《猿魔王ゼーマン》!」

 

漆黒の柱から現れたのは、精霊界を支配し、全てをマイナス化する為に動いていたディマクの僕 、”猿魔王ゼーマン” 。

忘れもしない、自分が龍可やレグルス達と協力して倒した魔王である。

 

ATK:2500

 

「そんな…!? 何で倒したはずのゼーマンが……」

 

「ゼーマンは”悪なる者の意思”が創り出した”悪霊”……創造主を倒さない限り、何度でも蘇るのです」

 

倒したはずの強敵の出現に動揺するフレア。

その様子を見て、ゼーマンは言葉を発さずに邪悪な笑みを浮かべる。

 

「《DT ダーク・エイプ》の効果発動! ダーク・シンクロの素材となった時、デッキから1枚ドローする!」

 

ディマク 手札:1→2

 

「フハハハ! 魔法カード《死者蘇生》を発動! 我の墓地から《キング・オブ・ビースト》を特殊召喚!」

 

続けてディマクの場に巨大な獣が現れる。

その獣は全身が濃い体毛で覆われており、見えるのは顔と4本の脚だけである。

 

ATK:2500

 

「2体目の最上級モンスター…!?」

 

「これで終わりではないぞ! フィールド魔法《クローザー・フォレスト》を発動!」

 

ディマクがフィールド魔法を発動させると、神殿の屋上が不気味な森へと変わった。

その木々の隙間からは不気味な気配が漂ってきている。

 

「フィールド魔法…!?」

 

「クク……ようこそ我が世界へ! クローザー・フォレストの効果! 自分の場の獣族の攻撃力を、自分の墓地に存在するモンスターの数×100ポイントアップさせる! 我の墓地にモンスターは5体! よって獣族であるゼーマンとキング・オブ・ビーストの攻撃力は―――」

 

猿魔王ゼーマン    ATK:2500→3000

キング・オブ・ビースト ATK:2500→3000

 

「3000…!? (さっきの手札抹殺はこれの為…!?)」

 

「力の差を思い知らせてやろう! バトル! ゼーマンで黒蠍-強力のゴーグを攻撃! 【アンスロポイド・エボリューション】!」

 

ゼーマンが手に持ったカースド・ニードルを構えると、その先から邪悪な炎をゴーグに向けて放つ。

 

「させない―――!?」

 

フレアが伏せていたカードを発動させようとするが、フレアの伏せカードは黒い霧の様なものに包まれ、カードのソリッド・ビジョンが起き上がらない。

 

「無駄だァ! ゼーマンの効果により、ゼーマンの攻撃中、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠を発動出来ない!」

 

「そんな!? ゴーグ!」

 

ゼーマンの炎がゴーグの身を焼くと、ゴーグは堪らず場からフレアの後方へ転がり出た。

すると、ゴーグに纏わりついていた炎が離れ、今度はフレアに襲い掛かる。

その瞬間、エアトスがフレアの前に結界をはり、フレア自身へのダメージを防ぐ。

 

「ありがとうエアトス!」

 

フレア LP:4000→2800

 

「小賢しい真似を…!」

 

ディマクは憎らしげにエアトスを睨む。

 

「私はフレアを守る……それが私の”使命”であり、”ヴァンとクヴェルの願い”です」

 

「!?」

 

エアトスの言葉にフレアは反応を示す。

その事をエアトスに問いたかったが、今はその時ではないと、フレアは出掛かった言葉を飲み込む。

 

「ならば続けて受けろ! キング・オブ・ビーストで黒蠍-棘のミーネを攻撃!」

 

フレアの伏せカードを警戒せず、強気で攻撃を仕掛けてくるディマク。

キング・オブ・ビーストは唸り声を上げると、その巨体をミーネに近づけた。

フレアは自分の伏せカードを見る。

 

「(このカードを使っても、ミーネを守れない―――)」

 

キング・オブ・ビーストが脚を上げ、ミーネを踏み潰そうとする。

ミーネはそれをかわすが、別の脚がミーネを場外へと蹴り飛ばす。

 

「くうっ…!」

 

「ミーネ!?」

 

フレア LP:2700→700

 

ゴーグが飛ばされてきたミーネを受け止める。

ミーネは何とか立ち上がると、心配そうにこちらを見ているフレアの眼を真っ直ぐに見返す。

 

「お嬢サンダー! アタシ達は破壊されたって死ぬわけじゃない! だから気にする必要はないわ! だから、あなたは思うように決闘しなさい!」

 

「でも…!」

 

「大丈夫だ。 俺達は、お嬢サンダーを信じている……だから、お嬢サンダーも俺達を信じてくれ」

 

ゴーグもミーネと同様に、フレアを見ながら頷く。

フレアを安心させる為、二人は笑みを浮かべた。

 

「二人共……」

 

「フン! 非力な下等精霊が! もう先程の小細工(コンビネーション)は使えんぞ! ターンエンドだ!」

 

LP:1800

手札:0

モンスター

・猿魔王ゼーマン

・キング・オブ・ビースト

魔法・罠

・無し

 

フィールド

クローザー・フォレスト

 

強力な”獣の王”を2体並べたディマク。

その力によってフレアの布陣は崩され、残りLPは僅か700。

”必殺!黒蠍コンビネーション”も封じられてしまった。

だが、フレアの顔に焦りは無い。

 

「(大丈夫、私には……”仲間達”がいる!)私のターン!」

 

フレア 手札:0→1

 

「! …私はモンスターをセット! そして全員守備表示に変更してターンエンド!」

 

残った黒蠍盗掘団は全員相手の攻撃に対して身構える。

 

LP:700

手札:0

モンスター

・首領・ザルーグ DEF:1500

・黒蠍-罠はずしのクリフ DEF:1000

・黒蠍-逃げ足のチック DEF:1000

・セット

魔法・罠

・セット(必殺!黒蠍コンビネーション)

 

「ごめん皆! このターンを何とか凌いで!」

 

 

「「「お任せあれ!!!」」」

 

 

強い意志を宿したフレアの声に、残った黒蠍盗掘団のメンバーは力強く応える。

 

「フハハハ! 手が尽きたか! そんな雑魚の壁! この”獣の王”達がすぐに打ち砕いてくれる! 我のターン!」

 

ディマク 手札:0→1

 

「フンッ! 何が”獣の王”だ! 同じ獣の王なら”おジャマ・キング”の方がよっぽど恐ろしかったわ!」

 

ディマクの言葉に、ザルーグは強気な態度を示し、鼻で笑う。

フレアは”おジャマ・キング”を知らないので首を傾げたが、ディマクは怒りで顔を引きつらせている。

 

「…よかろう! ならば身をもって解らせてやる! バトル! ゼーマンで首領・ザルーグを、キング・オブ・ビーストで黒蠍-罠はずしのクリフを攻撃!」

 

ゼーマンが炎を、キング・オブ・ビーストは先程とは違い、衝撃波のようなブレスを放つ。

攻撃されるのを読んでいたザルーグは炎を受けた後、すぐに後方へ下がった。

先程のゴーグの様に、場から出れば炎は消えるのである。

クリフはブレスを受け、場外に吹き飛ばされるが、受身をとって体へのダメージを軽減する。

 

「カードを伏せ、ターンエンド! さあ、絶望をゆっくりと味わうがいい……」

 

LP:1800

手札:1

モンスター

・猿魔王ゼーマン

・キング・オブ・ビースト

魔法・罠

・無し

 

「熱つ……申し訳ないお嬢サンダー、私はここまでです」

 

「ううん、ありがとう! これで次に繋がったよ!」

 

「ひぃ~! 俺一人かぁ~!」

 

ただ一人、場に残されたチックは情けない声を上げる。

”逃げ足”のあだ名を持つ彼が最後まで場に残っている事に、フレアは少し可笑しく感じる。

 

「大丈夫よチック、私を信じて! 私のターン!」

 

フレア 手札:0→1

 

「フレア……”彼”が、そこにいるのですね?」

 

「うん! …エアトス、今こそあなたの”力”を貸して!」

 

エアトスは頷くと、光となってフレアのデッキに宿る。

 

「…セットモンスターを反転召喚! 来て! ”武器庫の召喚師”……《ウェポンサモナー》!」

 

セットされたカードから姿を現したのは、青いローブを纏い、同じく青いフードを深く被った男。

捨てられた神殿を守りし、忠実なる召喚師―――”ウェポンサモナー”である。

 

ATK:1600

 

「…私の”力”が、必要なのですね?」

 

「ええ! …お願い、エアトスをここまで導いて!」

 

「了解しました。 主人(マスター)

 

「…リバースしたウェポンサモナーのリバース効果発動! デッキからガーディアンと名の付くモンスター1体を手札に加える! 私がデッキから加えるのは《ガーディアン・エアトス》!」

 

ウェポンサモナーの手に、フレアが引き抜いた物と同じ剣が握られると、彼は静かに呪文を詠唱する。

詠唱が終わると、剣を高々と掲げ、一声―――

 

「気高き守護者よ! 我が主の下へ!」

 

ウェポンサモナーは剣を地面に突き刺す。

その瞬間、フレアのデッキから1枚のカードが選び出され、デッキトップへと置かれた。

フレアはそのカードを引き抜く。

 

「ディマク……いえ、”悪なる者の意思”! 私は絶対にあなたを倒す! 私の場にいるチックとウェポンサモナーをリリース!」

 

フレアの場にいたチックとウェポンサモナーが光の中へと消えると、その光の中から聖なる気を纏った”守護者”が現れ、目を閉じたまま空中で静止する。

 

「私と一緒に戦って! アドバンス召喚! 《ガーディアン・エアトス》!!!」

 

その守護者は開眼すると、フレアの側に降り立ち、ウェポンサモナーが残していった剣を抜いて構える。

自然を愛し、人々を愛する気高き守護者―――”ガーディアン・エアトス”の降臨である。

 

ATK:2500

 

「とうとう姿を現したか……だがその程度の攻撃力しか持たない貴様に何が出来る!」

 

「確かに、私だけではどうにもなりません……ですが、私には”友”と、そしてフレアがいる! フレア!」

 

「うん! 魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地から5体のモンスター……”黒蠍盗掘団”をデッキに戻してシャッフル! そして2枚ドロー!」

 

フレア 手札:0→2

 

「(! …繋がった!) 行くよエアトス! 装備魔法《流星の弓-シール》と、《重力の斧-グラール》を《ガーディアン・エアトス》に装備!」

 

エアトスの前に、シールの魂が宿った弓と、グラールの魂が宿った斧が現れる。

 

「(シール、グラール……今一度、私に”力”を!)」

 

「エアトスの効果発動! 装備された装備魔法1枚を墓地へ送る事で、相手の墓地に存在するモンスターを3枚まで選択し、除外する! 私は《流星の弓-シール》と《重力の斧-グラール》を墓地に送り、あなたの墓地のモンスター5体全てを除外する!」

 

「〈聖剣のソウル〉!」

 

弓と斧が光に変わり、エアトスの剣を包み込む。

エアトスがその剣を掲げると、ディマクの墓地から5枚のカードが飛び出し、光となって剣に吸収される。

 

「な、何!?」

 

ディマクはそれを見て動揺する。

クローザー・フォレストは墓地のモンスターの枚数分だけ場の獣族を強化するフィールド魔法。

墓地のモンスターが減った事により、ディマクのモンスターは弱体化してしまう。

 

猿魔王ゼーマン     ATK:3000→2500

キング・オブ・ビースト ATK:3000→2500

 

「そして! エンドフェイズ時までエアトスの攻撃力を除外したモンスターの数×500ポイントアップする!」

 

ATK:2500→5000

 

「5000だと!? …フン! ならば攻撃してくるがいい!」

 

「勿論よ! だけど、その前に……墓地から罠カード《ブレイクスルー・スキル》を発動! このカードをゲームから除外する事で、相手の場の効果モンスター1体の効果を無効にする! 対象は《猿魔王ゼーマン》!」

 

ゼーマンの足元から白い光が放たれると、ゼーマンは”力”を失い、膝をつく。

 

「何だと!? 墓地から罠……いや、それよりも! 何故貴様がゼーマンの”能力”を知っている!?」

 

”猿魔王ゼーマン”の2つ目の能力―――それは、自分の手札か場のモンスターを墓地に送る事で、相手の攻撃を無効にするというもの。

ディマクはこの能力で攻撃力5000の攻撃を凌ぎ、元に戻る次のターンで反撃しようと考えていた。

だが、その作戦はフレアに読まれていたのだ。

ディマクとフレアはこれが初対面であり、ゼーマンを使った決闘を見せた事は一度も無い。

何故、フレアがゼーマンの効果を知っていたのか。

 

「私、ゼーマンと直接戦った事があるの。 その時に―――」

 

フレアはゼーマンがレグルスを近づけまいとする為に、仲間を殺して結界を張った事を話した。

 

「だから、決闘でも同じ様な事してくるんじゃないかな? …って、思ったの」

 

「お、おのれ……!」

 

ディマクは顔に怒りと焦りを同時に浮かべる。

”経験”とは、何時活かされるか分からないもの。

フレアが経験したゼーマンとの死闘が、この戦いの”光差す道”を繋いだのだ。

 

「…私は、絶対にあなたを許さない! 犠牲になった全ての人達の為、精霊達の為、そして……エアトスの為! 私はあなたを倒す!!! バトル!!!」

 

フレアの宣言と共に、エアトスは剣を構える。

 

「エアトスでゼーマンを攻撃! エアトス!」

 

「ええ…!」

 

エアトスは頷くと、剣に”力”を集中させる。

 

 

「「【フォビドゥン・ゴスペル】!!!」」

 

 

エアトスが剣を振ると、凄まじい光の斬撃が放たれる。

 

「そ、速攻魔法! 《非常食》発動! 《クローザー・フォレスト》を墓地に送り、1000ポイントLPを回復する! やられはせんぞォーーー!!!」

 

ディマク LP:1800→2800

 

「速攻魔法《収縮》をチェーン発動! ゼーマンの元々の攻撃力を半分に!」

 

「な―――!?」

 

ATK:2500→1250

 

非常食による延命を狙ったディマクだったが、ゼーマンの攻撃力を引き下げられた事により、それは無意味となった。

斬撃はゼーマンをクローザー・フォレストごと吹き飛ばし、ディマクをも飲み込んだ。

 

「ぐぎゃあァァァーーー!!!」

 

ディマク LP:2800→0

 

ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 

「おおお!!! やりましたなお嬢サンダー!!!」

 

黒蠍盗掘団がフレアの勝利に歓喜の声を上げる。

それを見たフレアの胸にも、勝利の実感が湧き上がって来た。

 

「…勝った、勝ったのね!」

 

フレアは笑顔でエアトスに振り向く。

だが、エアトスの表情は険しいままだった。

 

「いいえ、まだです!」

 

エアトスがディマクがいた場所に剣を向ける。

フレアがその方向を見ると、そこには形を維持出来なくなった黒い塊が宙に浮いていた。

 

「な、何なの…!?」

 

 

 

ぐ、ぐうぅ……滅ぼされて堪るか! こうなれば、我自身が貴様等を取り込んでくれるわ!

 

 

 

黒い塊は形を変え、ゼーマンの姿へと変わる。

”悪なる者の意思”は”力”の大半を失った為、ディマクだけではなく、手下であるゼーマンまで取り込んだのだ。

黒いゼーマンは叫び声を上げながらフレア達へと飛びかかる。

 

「!?」

 

その時、上空からフレアに向かってイーグル・アイが急降下してきた。

フレアはイーグル・アイに飛び乗り、ゼーマンをかわして上空へと逃げる。

その後ろにはエアトスが続いた。

 

「ウオォォォ!!! 逃がさんぞォォォ!!!」

 

ゼーマンもその後を追って上空へと飛び上がる。

 

「決闘に勝ったのに……どうすればいいの?」

 

「フレア! ここで”悪なる者の意思”を消滅させます!」

 

後ろで飛んでいたエアトスがイーグル・アイに並ぶ。

 

「出来るの!? どうやって?」

 

「もう一度、私が【フォビドゥン・ゴスペル】を放ちます。 その時、あなたの持てる”思い”を全て私に込めてください! ゼーマンと私の”力”は互角……後は、”悪なる者の意思”とフレアの”思い”の差で決まります!」

 

「”思い”を…!」

 

「恐れる事はありません。 あなたの”思い”の強さを、私は知っています。 …大丈夫! フレアなら!」

 

エアトスはこれまでで一番の笑顔をフレアに向ける。

その笑顔は、フレアに限りない”勇気”を与えてくれた。

 

「うん! 行くよエアトス! 私、絶対に負けない!」

 

イーグル・アイが反転し、向かってくるゼーマンに迫る。

この一撃で、全てが決まろうとしていた。

 

 

 

一撃疾走(ワンショット・ラン)

 

 

フレア 《ガーディアン・エアトス》 ATK:2500

 

           VS

 

悪なる者の意思 《猿魔王ゼーマン》 ATK:2500

 

 

 

「ウオォォォ!!! 【アンスロポイド・エボリューション】!!!」

 

「「【フォビドゥン・ゴスペル】!!!」」

 

 

 

精霊界の西の果て。

その上空で、闇と光がぶつかり合った―――――

 




次回、ダークシグナー編最終回です。

"悪なる者の意思"は”紅蓮の悪魔のしもべ”みたいなものです。

漫画版に出てくるワードが結構出てきましたが、漫画版のとは少し設定が違ったりします。 ご了承ください。
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