遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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*この小説のライディング・デュエルはWCSのルールを採用しています。 ご了承ください。
*今回登場するアニメオリカはアニメではなく、ゲーム”タッグフォース”の効果となっています。 ご了承ください。


第28話 幽霊

 

フリントとフレアが遊星達のガレージを訪れてから数時間。

とっくに日は沈み、話題も尽き掛けてきた。

フリントはちらりと時計を見た後、立ち上がってフレアを促す。

 

「そろそろ帰るぞ」

 

「うん、そうだね。 遊星、ジャック、今日はありがとう!」

 

「ああ。 俺達も久々に楽しかった。 普段は仕事や1年後の準備であまり相手に出来ないかもしれないが、また来てくれ」

 

遊星は立ち上がると、二人の為にガレージを開ける。

 

「わ! もう外真っ暗―――じゃない!? すごーい! シティは夜でも明るいっていうのは本当だったのね!」

 

フレアは外に飛び出すと、外灯によって照らされた噴水広場と、遠くに見えるシティの夜景を眺める。

 

「上の公園に行けば、もっといい眺めが見えるぞ―――ん?」

 

突然、ガレージの電話から呼び出し音が鳴り響く。

遊星は電話に近づき表示画面を見ると、かけてきたのは先程仕事に出たクロウであった。

 

「(また仕事先で何かあったか?) クロウ、どうした?」

 

「遊星! 大変だ!」

 

クロウはシティに移り住んでからは運送業を営んでおり、3人の中で一番の稼ぎ頭となっていた。

だがクロウの性質上、性質の悪い客とよくトラブルを起こす事が多い。

今回もそんな事だろうと思いながら遊星は応答するが、聞こえてきたクロウの声は何時もと様子が違う。

 

「牛尾が”ゴースト”にやられちまった! 急いで病院に来てくれ!」

 

「何…!?」

 

 

* * *

 

 

「遊星! ジャック! おお、お前等も来たのか」

 

遊星達4人が病院に辿り着くと、通路のベンチにクロウとキャリアスーツを着た青い髪の女性が座っていた。

 

「牛尾がやられたというのは本当なのか!?」

 

「はい……」

 

ジャックの問い掛けに、女性―――狭霧 深影(さぎり みかげ)は暗い表情で頷く。

 

「容態は!?」

 

「今緊急治療中だ……!? 牛尾!」

 

クロウ達が振り返ると、後ろから満身創痍の”牛尾 哲”がストレッチャーに乗せられて運ばれて来た。

 

「牛尾! 何があった!?」

 

「退いてくれ君達! これから緊急手術を行う!」

 

道を開けろという医者の声を無視して、遊星が牛尾に問いかける。

牛尾は苦しそうに呻いた後、何とか目と口を開けて一言。

 

「遊星……ゴーストに、シンクロは使うな……」

 

「シンクロを…?」

 

牛尾はそれ以上喋れず、再び目と口を閉じる。

痺れを切らした医者達は遊星達を退けると、ストレッチャーを押して手術室へと入って行った。

 

 

* * *

 

 

牛尾に重症を負わせた謎のDホイーラー、”ゴースト”。

夜な夜なハイウェイに現れて決闘を挑んでは、相手をクラッシュに追い込むという。

ゴーストのクラッシュのさせ方は異様であり、対戦相手は”オートパイロット”という安全性を高める自動操縦装置を発動させていたにも関わらず、先程の牛尾の様な重症を負わされ、Dホイールは無残にも破壊されていた。

牛尾はこの”ゴースト”を捕らえる為に夜のハイウェイに出向き、返り討ちにされてしまったのである。

 

遊星達はフレア達が来る前に牛尾達からこの件の協力を要請されていたのだが、WRGPまでの時間を無駄にしたくないあまり、協力を断って追い返してしまったのだという。

 

「くそぉ…! 牛尾がああなったのは俺のせいだ…! 俺があの時、協力するって言ってれば…!」

 

ガレージに戻ってきた遊星達。

クロウが声を怒りで震わせながら壁を殴る。

 

「止めろクロウ! もう済んだ事だ!」

 

何かを考える様に座っていた遊星がクロウに振り向く。

 

「それに、牛尾があそこまでやられるなら、ゴーストは相当な使い手だ」

 

「だからって! このままじっとしてるっきゃねーってのか―――うお?」

 

いきり立つクロウに、フリントがヘルメットを投げ渡す。

見ると、遊星とジャックはすっかり準備を終えてクロウの前に立っていた。

 

「誰もこのままじっとしてるなんて……言ってないぜクロウ!」

 

遊星が珍しく熱い口調で握り拳を作る。

彼もまた、ゴーストに対して怒りを燃やしていたのだ。

 

「奴の仇をとれるのは、俺達しかいない!」

 

ヘルメットを抱えたジャックも負けてはいない。

二人は自分の後ろにある布を取り去ると、そこには遊星の闘志を現すような真っ赤なDホイールと、世界に一台しかないのも納得出来る特徴的な形をした白い一輪のDホイールが姿を現す。

これらこそが、遊星が仲間と共に作り上げた最高傑作”遊星号”と、キングの象徴”ホイール・オブ・フォーチュン”である。

 

「わぁー! カッコイイ! いいなぁ~……」

 

まだDホイールを持たないフレアは、羨ましそうにDホイールに跨った二人を眺める。

 

「遊星、俺も行こう。 相手が強敵なら、人数は多い方がいいだろう」

 

フリントはマントと帽子を脱ぐと、閉まっているガレージを開ける。

ガレージの前には赤い炎の様なDホイールと、翼を持つ黒いDホイールが並んでいた。

 

「フレア。 お前はここで待っていてくれ。 理由は解っているな?」

 

「解ってるよ。 Dホイールが無いから足手纏いなんでしょ? …悔しいけど今回は遊びじゃなくて事件だし、私は大人しくしてる。 ……皆、絶対無事に帰ってきてね!」

 

フレアの言葉に、4人は一斉に頷く。

遊星とジャックはそのままDホイールでガレージから飛び出し、フリントとクロウはそれぞれの愛機である”イグニッション”と”ブラックバード”に乗り込み、発進させた。

 

「よく見りゃごてごてしたDホイールだな! 遅れんなよ?」

 

「お前こそ、俺に当たって弾き飛ばされないようにな」

 

「ハッハッハ! 言ったなコイツ!」

 

そんな掛け合いをしながら、フリントとクロウは先に飛び出した遊星とジャックの後を追った。

 

 

* * *

 

「さあ来い! ゴースト!」

 

「俺達の前に現れやがれぇー!」

 

既に日にちが変わった時刻。

遊星達はハイウェイに到着すると、分散してゴーストを捜し始めた。

しかし、幾ら走ってもゴーストは現れず、とうとう日が上り始める。

今夜は諦めようと4人が考えていたその時―――

 

「!? 来たぞ! ゴーストだ!」

 

「何!?」

 

「現れたか!」

 

発見したのは遊星。

見知らぬDホイールが遊星の後ろから猛追してきたのだ。

他の3人は急いで遊星の元へ急行し、遊星はゴーストに対して”新たなるスピードの世界”を展開する。

 

「《スピード・ワールド2》! セット!」

 

 

デュエルモード”ON” オートパイロット スタンバイ

 

 

”スピード・ワールド2”―――新生ネオ童実野シティにて誕生した新たなるスピード・ワールド。

追加された新ルールによって、Dホイーラー達の決闘は更なる進化を遂げたのである。

 

 

「ライディング・デュエル! アクセラレーション!!!」

 

 

普通ならば有り得ないが、ここは”決闘の街”。

何よりもまず”決闘”が優先される。

治安維持局に登録されたDホイールがハイウェイでライディング・デュエルを開始すると、その場で治安維持局に信号が送られ、その場に最適なレーンを選び出し、専用のコースを作り出す。

この時、レーン上の一般車両は退避を命じられるのだ。

 

「(これで文句の一つも出ないと言う……流石は”決闘の街”だな)」

 

一番速く遊星に追いついたフリントは間近のレーンからその様子を見ていた。

因みに、この街に入った時にフリントは手続きを済ましているので、このハイウェイで決闘する事は可能である。

 

「行くぜゴースト!」

 

いよいよ遊星とゴーストの決闘が始まる。

先攻はゴースト。

 

「ワタシノターン!」

 

ゴースト 手札:5→6

 

遊星   SPC:0→1

ゴースト SPC:0→1

 

「(何だあれは…!)」

 

フリントはゴーストを見る。

全身まで黒ずくめであり、背中からは太い管の様な物が車体に伸びている。

声も機械的で、とても人間のものとは思えない。

 

「手札カラ《ワイズ・コア》ヲ召喚!」

 

ゴーストの場に現れたのは巨大な機械の卵。

その卵は上下に割れ、その中には小さな光が見える。

 

ATK:0

 

「何だあれは―――!?」

 

その卵を見た瞬間、フリントは心臓が跳ね上がった様に感じた。

その後は絶え間なく、そして激しくリズムを刻む。

 

「(何……だ……?)」

 

「カードヲ伏セテターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:1

手札:4

モンスター

・ワイズ・コア

魔法・罠

・セット

 

抑えようとしても、抑え切れない。

胸騒ぎが止まらない。

あれは何なのだ―――フリントの頭の中はその言葉で一杯になった。

もはや、目の前の決闘も見えていない。

 

「ぐ……くそ……」

 

勿論、そんな状態ではDホイールの運転すらまともに出来ない。

今のフリントはDホイールを制御するので精一杯であった。

どれほどの時が流れたのか、ようやく余裕が出来始めたフリントがデュエルレーンを見上げると、遊星の場から放たれたミサイルが卵を爆破していた。

 

「フフフフフ! カカッタナ!」

 

「!?」

 

「ワイズ・コアガ効果デ破壊サレタ時、自分ノ場ニ存在スル全テノモンスターヲ破壊シ、デッキ、手札カラ《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)》、《ワイゼル(トップ)》、《ワイゼル(アタック)》、《ワイゼル(ガード)》、《ワイゼル(キャリア)》ヲ特殊召喚スル!」

 

ゴーストの場に一斉に現れたのは、形がバラバラな機械。

どれもレベル1の低級モンスターであり、勿論それぞれのステータスも高くない。

 

ATK:0

ATK:500

ATK:1200

DEF:1200

ATK:800

 

「一度に5体のモンスターを召喚するだと!?」

 

「驚クノハマダ早イ! 機皇帝ワイゼル∞の効果発動!」

 

その瞬間、5つの機械は変形し、機皇帝ワイゼル∞を中心に合体を始める。

ワイゼルGが右腕に、 ワイゼルAが左腕に、ワイゼルCが脚部に、そして最後にワイゼルTが頭部となると、ゴーストの場に巨大ロボが完成する。

 

機皇帝ワイゼル∞ ATK:0→2500

 

「何だ……この巨大ロボットは……」

 

遊星が後方に聳え立つ巨大な人型ロボットを見上げていると、ようやくジャックとクロウがフリントに追いついてくる。

 

「何だありゃ!? 5枚のカードで出来ているモンスターだって!? あんなモンスター見たことねぇぜ! おいジャック! 一体何なんだあのモンスターは!?」

 

「分からん! 俺も見たことが無いモンスターだ。 フリント! お前はどう思う? ……フリント?」

 

ジャックが前方を走っているフリントに声を掛けるが、フリントはまったく反応しない。

続けてクロウも声を掛けるが、結果は同じだった。

今のフリントには、如何なる声も届かないだろう。

フリントは今、”機皇帝ワイゼル∞”を睨みつけていた。

 

「(あれは……あの機械は…!?)」

 

心臓が破裂するのではないかというくらい、激しく鼓動する。

血液が沸騰してるのではないかと思えるほど、全身が熱くなる。

自分の”全て”が、自分に対して警告する。

間違いない、あれは―――――

 

 

 

 

 

           俺の”敵”だ!!!

 

 

 

 

 

「ウオォォォォォ!!!」

 

「「フリント!?」」

 

突然フリントは叫ぶと、ウィングⅢとブースターⅠを起動させ、自分がいたレーンから遊星とゴーストがいるレーンへ飛び移る。

 

「フリント!?」

 

遊星は突然目の前に現れたフリントに驚き、決闘を中断した。

 

「オオォォォ!!!」

 

フリントは叫びながら決闘銃を引き抜くと、機皇帝ワイゼル∞に向かって弾丸(カード)を乱射するが、機皇帝ワイゼル∞はソリッドビジョンなのでカードは全てすり抜けてしまう。

それでも、フリントは狂った様にカードを撃ち続けた。

 

「オオォォォ!!!」

 

「フリント!? 一体どうしたんだ!? 落ち着くんだ! フリント!」

 

遊星が必死に呼び掛けるが、フリントは撃つのを止めない。

遊星は遊星号を寄せ、ぶつからない程度に近づき、フリントの腕を掴む。

 

「どうしたんだフリント!? 一体何があったんだ!」

 

この時、丁度フリントのカードが弾切れとなって射撃が止まる。

 

「止めるな遊星ッ!!! あれは……あれは俺の”敵”だッ!!! あれを野放しにする訳にはいかない!!! あれは……俺が破壊する!!!」

 

「邪魔ヲスルナ! 消エロ!」

 

この瞬間、機皇帝ワイゼル∞の胸から衝撃波が放たれる。

フリントは咄嗟に遊星を突き放すと、衝撃波をまともに受けてクラッシュしてしまう。

 

「「「フリント!!?」」」

 

イグニッションから投げ出されたフリントはそのまま叩きつけられ、路上に転がる。

 

「くっそぉぉぉ!!! おらぁ!!!」

 

クロウがブラックバードの翼を展開させると、フリントがやった様にレーンを飛び移り、フリントの元へ向かう。

 

「おい!? しっかりしろ! フリント―――!?」

 

クロウはブラックバードから降り、倒れているフリントを助けようとするが、何とフリントは自力で立ち上がり、倒れているイグニッションの元へ歩こうとしていた。

だがすぐに崩れ落ちてしまい、クロウに支えられる。

 

「(マジかよ…!? 今のだったら手足の2、3本はいってるはずだぜ…!? 何で立てんだ!?)」

 

「あれを……破壊しなければ……」

 

「!? おい!」

 

フリントは側に落ちている決闘銃に手を伸ばすが、クロウに遮られる。

満身創痍になりながらも、フリントはまだ戦うつもりであった。

 

「無理すんじゃねぇ! 今は遊星とジャックに任せて、病院に行くぞ!」

 

クロウはフリントを担ごうとするが、フリントはクロウの腕を振り払い、クロウのブラックバードにしがみ付く。

 

「待ってくれ……せめて……見届けたい……」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ! 早く病院にいかねぇとお前が―――」

 

「クロウ! 頼む!!!」

 

フリントの凄まじい気迫に押され、クロウはそれ以上何も言えなかった。

フリントはブラックバードのモニターに映っている遊星の決闘を凝視する。

 

「頼む……遊星……必ずあれを……」

 

「!? おいフリント!?」

 

クロウはブラックバードから滑り落ちたフリントを再び支える。

見ると、フリントは気絶していた。

クロウはフリントの決闘銃をガンベルトに収めると、フリントを持ち上げてブラックバードに乗せる。

 

「…ジャック! 俺はフリントを病院に連れて行く! 後は頼んだぜ!」

 

クロウはブラックバードの通信でジャックに連絡を入れた後、全速力でその場を去った。

 

 

* * *

 

 

「ここは……どこだ……」

 

何時の間にか、フリントは見知らぬ場所にいた。

辺りは霧に包まれていてよく見えない。

すぐに気を巡らせると、何かがこちらに近づいて来るのを感じた。

 

「誰だ!」

 

フリントは決闘銃を前方に構え、接近してくるものが見えるまで待った。

やがて、霧の中から巨大なロボットが現れる。

 

「!?  機皇帝ワイゼル…!?」

 

目の前に聳え立つ”敵”。

そして、その足元には黒い人影が立っていた。

辛うじて人間の形をしているのが分かるが、それ以外のことは何も分からない。

 

「お前は……俺が破壊する!!!」

 

フリントは決闘銃を変形させ、腕に装着する。

それと同時に、人影の腕が決闘盤を装着している様な形に変化した。

 

 

「デュエル!!!」

 

 

突然始まったフリントと機皇帝ワイゼル∞の決闘。

フリントが決闘盤の表示を見ると、既に相手のターンは終了し、自分のターンとなっていた。

 

相手の場

LP:4000

手札:3

モンスター

・機皇帝ワイゼル∞

・ワイゼルT

・ワイゼルA

・ワイゼルG

・ワイゼルC

魔法・罠

・セット

 

「俺のターン!」

 

フリント 手札:5→6

 

「《ヴォルカニック・エッジ》を召喚!」

 

フリントの場にヴォルカニックの尖兵、”ヴォルカニック・エッジ”が現れる。

 

ATK:1800

 

「永続魔法《ブレイズ・キャノン》を発動! 相手モンスター1体を選択し、手札から攻撃力500以下の炎族1体を墓地へ送り、 選択した相手モンスターを破壊する! 俺が破壊するのは―――」

 

フリントは決闘銃を構え、照準を心臓である機皇帝ワイゼル∞に向けようとするが、中々狙いが定まらない。

 

「(本体は効果対象にならないのか…!? ならば!) 俺は《ワイゼルA》を選択! 手札から《ヴォルカニック・バレット》を墓地に送り……食らえ!」

 

フリントは攻撃の要である左腕、”ワイゼルA”を狙う。

これを破壊出来れば、機皇帝ワイゼル∞の攻撃力を半分近く削り取れる。

だが、フリントが放った弾丸(ヴォルカニック・バレット)は突然現れたシールドに弾き返されてしまう。

 

「何!?」

 

フリントが相手の場を見ると、1枚の罠カードが発動されていた。

 

「《シフトチェンジ》…!? あれでブレイズ・キャノンの効果対象を移したのか!? だが、奴は無傷……」

 

フリントは決闘盤の記録を確認すると、シフトチェンジの効果により、対象を《ワイゼルC》に変更されていた。

 

「あのパーツ、破壊耐性をもつのか…!? …ヴォルカニック・エッジの効果を発動! 相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

ヴォルカニック・エッジはワイゼルの足元にいる人影に向かって火球を放つが、命中してもその人影は微動だにしない。

 

??? LP:4000→3500

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

LP:4000

手札:1

モンスター

・ヴォルカニック・エッジ

魔法・罠

・ブレイズ・キャノン

・セット

・セット

 

フリントがターンを終了させると、人影はカードをドローする。

 

??? 手札:4→5

 

その瞬間、ワイゼルの下半身が光の中へと消え、光の中から別のモンスターが現れる。

 

「何だと!?」

 

何と相手はワイゼルのパーツをリリースし、アドバンス召喚を行ったのだ。

現れたのは異様な力を感じさせる球体の機械。

機体のあちこちからはコードの様なものが伸びている。

 

A・マインド ATK:1800

機皇帝ワイゼル∞ ATK:2500→1700

 

「何故だ……何をする気だ…?」

 

その瞬間、A・マインドがワイゼルTに触手の様なコードを絡ませてもぎ取ると、自身を5つの光輪へと変え、もぎ取ったワイゼルTを囲み、光の柱となる。

 

「これは…!?」

 

光の柱から現れたのは、体に大きな鎖を巻いたドラゴン。

鎖をこすらせながら、フリントに対して咆哮を上げる。

 

(チェーン)・ドラゴン ATK:2500

機皇帝ワイゼル∞ ATK:1700→1200

 

「シンクロ召喚…!?」

 

続けて人影は魔法カードを発動させる。

その瞬間、ヴォルカニック・エッジとC・ドラゴンが別々の黒い大きな箱に囚われ、ヴォルカニック・エッジは箱に入れられたまま剣で串刺しにされた。

 

「ヴォルカニック・エッジ!?」

 

剣が引き抜かれ、箱がゆっくりと開くと、中にいたのはヴォルカニック・エッジではなく無傷のC・ドラゴンであった。

 

「《死のマジック・ボックス》…!?」

 

その効果によりヴォルカニック・エッジは破壊され、C・ドラゴンのコントロールがフリントに移ったのである。

 

「だが何故シンクロモンスターを俺の場に―――!?」

 

この瞬間、フリントの脳裏に牛尾の言葉が過る。

 

 

ゴーストに、シンクロは使うな……

 

 

フリントが気が付いた時にはもう遅かった。

機皇帝ワイゼル∞が胸から光の触手を数本伸ばし、C・ドラゴンを捕らえる。

C・ドラゴンはそのまま胸の中へ取り込れて形を失い、ワイゼルのコアと同化してしまった。

 

ATK:1200→3700

 

「こういう事か…!」

 

フリントは牛尾が言っていた言葉の意味を理解した。

この機皇帝ワイゼル∞はシンクロモンスターを取り込み、自分の”力”とする。

これでフリントの場にモンスターが消え、相手は強力な力を得る事となってしまった。

ワイゼルは胸のコアを光らせると、フリントに向かって凄まじい衝撃波を放つ。

 

「ぐあぁぁぁ!!!」

 

フリント LP:4000→300

 

恐るべきワイゼルの一撃。

フリントは吹き飛ばされながらも立ち上がり、罠を発動させる。

 

「罠発動! 《ダメージ・コンデンサー》! 手札を1枚捨て、デッキから受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスターを攻撃表示で特殊召喚する! 来い! 《ヴォルカニック・ロケット》!」

 

フリントの場にヴォルカニックのアタッカー、”ヴォルカニック・ロケット”が現れる。

相手の場にはまだワイゼルAが残っていたが、攻撃力がヴォルカニック・ロケットより劣っているので、ワイゼルAは攻撃せずにバトルフェイズを終えた。

 

ATK:1900

 

「ヴォルカニック・ロケットの効果発動! 召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分のデッキ・墓地からブレイズ・キャノンと名のついたカード1枚を選んで手札に加える! 俺はデッキから《ブレイズ・キャノン-トライデント》を手札に!」

 

フリント 手札:0→1

 

相手はこのままターンを終えるかと思いきや、突然ワイゼルGが消滅し、新たな腕がワイゼルに取り付けられる。

どうやらリリースによる特殊召喚のようだ。

 

ワイゼルG3 DEF:2000

 

人影はカードを1枚伏せ、ターンを終了させた。

 

LP:3500

手札:1

モンスター

・機皇帝ワイゼル∞

・ワイゼルA

・ワイゼルG3

魔法・罠

・C・ドラゴン(機皇帝ワイゼル∞)

・セット

 

LPを大幅に削り取られ、追い詰められたフリント。

彼は険しい顔で、もはや人型ロボットとは言えない姿になっているワイゼルを見上げた。

 

「(こいつは俺の”敵”……間違いない。 だが、俺は何故こいつを憎む? 俺は何故こいつと戦っていたんだ? 解らない……)」

 

フリントは悔しそうに俯く。

何時も肝心な事が思い出せない自分に苛立ちを感じた。

 

「(解らないのなら……先へ行くしかない!) 俺のターン!」

 

フリント 手札:1→2

 

今は進まなければならない。

決闘者が求める答えは、何時だって決闘の先にある。

フリントはそう信じ、デッキからカードをドローした。

 

「(とにかく削る!) バトル! ヴォルカニック・ロケットでワイゼルAを攻撃! 【ヴォルカニック・チャージ】!」

 

ヴォルカニック・ロケットが炎を噴射させ、ワイゼルの左腕に突進する。

しかし、ワイゼルは体を捻り、右腕のワイゼルG3でヴォルカニック・ロケットを受け止める。

 

DEF:2000

 

「(攻撃対象をワイゼルGに変更するだと…!?)」

 

フリント LP:300→200

 

ヴォルカニック・ロケットは弾き返され、フリントの場へと戻る。

 

「……カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:200

手札:1

モンスター

・ヴォルカニック・ロケット

魔法・罠

・ブレイズ・キャノン

・セット

・セット

 

フリントがターンを終了させると、人影がカードをドローする。

 

??? 手札:1→2

 

人影は手札からモンスターを召喚し、さらに伏せていた永続罠《血の代償》を発動させる。

最初の召喚は2体目の《ワイゼルC》。

そして血の代償はLPを500ポイント払うことで、もう一度通常召喚が行えるようになるカード。

その効果で手札から同じく2体目の《ワイゼルT》を通常召喚する。

 

??? LP:3500→3000

 

全てのパーツが揃った機皇帝ワイゼル∞は完全に修復され、先程よりも強化されたロボットとなった。

 

機皇帝ワイゼル∞ ATK:3700→5000

 

「攻撃力5000…!」

 

五体満足となったワイゼルはフリントを見下ろし、攻撃体勢に移る。

 

「罠カード《攻撃の無敵化》を発動! バトルフェイズ中に2つある効果の内、一つ選択して発動する! 俺が発動するのは、”このバトルフェイズ中のダメージを0にする”効果!」

 

ワイゼルがヴォルカニック・ロケットに向かって衝撃波を放つと、ヴォルカニック・ロケットは跡形も無く吹き飛ばし、フリントをも巻き込もうとするが、結界に阻まれてフリントにダメージを与える事は出来なかった。

ワイゼルはこれ以上の攻撃は無駄だと判断し、バトルフェイズとターンを終了させる。

 

LP:3000

手札:0

モンスター

・機皇帝ワイゼル∞

・ワイゼルA

・ワイゼルG3

・ワイゼルC

・ワイゼルT

魔法・罠

・C・ドラゴン(機皇帝ワイゼル∞)

・血の代償

 

「俺のターン!」

 

フリント 手札:1→2

 

「(…ここで勝負を決める!) 罠カード《無謀な欲張り》を発動! この先2ターンのドローフェイズをスキップする代わりに2枚ドロー!」

 

フリント 手札:2→4

 

「《ブレイズ・キャノン》を墓地に送り、永続魔法《ブレイズ・キャノン-トライデント》を発動! そしてこれを墓地に送り……現れろ! 《ヴォルカニック・デビル》!」

 

地面を割り、火柱と共に姿を現したのは”ヴォルカニック・デビル”。

これこそがフリントに勝利をもたらす”切り札”である。

 

ATK:3000

 

「……俺はお前を倒し、その先へ行く! バトル! ヴォルカニック・デビルでワイゼルTを攻撃! 【ヴォルカニック・キャノン】!」

 

フリントが攻撃宣言を行うと、ヴォルカニック・デビルはワイゼルTに向かって口から巨大な火炎岩を放つ。

ヴォルカニック・デビルは相手モンスターを戦闘破壊した時、相手の他のモンスターを全て破壊し、1体につき500ポイントのダメージを与える能力を持つ。

つまり、このまま攻撃が通ればワイゼルを完全に破壊した上で、相手のLPを0に出来る。

 

しかし、ワイゼルも黙ってやられるような相手ではない。

ワイゼルは先程のヴォルカニック・ロケットの時の様に、ワイゼルG3で火炎岩を受けた。

 

「(それでもワイゼルを一掃出来る!)」

 

ヴォルカニック・デビルの攻撃力は3000。

ワイゼルG3の守備力を大幅に上回っている。

このターン中にLPは削り切れないが、それでもワイゼルを破壊出来るのだ。

 

「行け!!!」

 

火炎岩はワイゼルG3と衝突した瞬間、爆発を起こし、黒い煙がワイゼルを覆った。

煙が晴れれば、そこには右腕を失ったワイゼルがいるはずだった、が―――

 

「……何!?」

 

そこにいたのは、無傷のままワイゼルG3を構えているワイゼルだった。

 

「馬鹿な…!? 戦闘破壊耐性…!?」

 

戦闘破壊出来なければ、ヴォルカニック・デビルの効果は発動しない。

フリントの起死回生の反撃は、失敗に終わったのである。

 

「……カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

LP:200

手札:0

モンスター

・ヴォルカニック・デビル

魔法・罠

・セット

・セット

 

フリントがターンを終えると、人影がカードをドローする。

 

??? 手札:0→1

 

人影がドローした瞬間、ワイゼルは迷わずフリントに止めを刺そうと動き出す。

この絶望的な状況の中、フリントはワイゼルを見上げたまま動かない。

ワイゼルが胸のコアから衝撃波を放つと、目の前のヴォルカニック・デビル消し飛ばし、後方にいたフリントをも吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

フリント LP:200→3200→1200

 

 

 

 

 

「え、永続罠……《女神の加護》! LPを3000ポイント回復する…!」

 

衝撃波が来る前にLPを回復し、何とか攻撃を防いだフリント。

体を起こし、何とか立ち上がる。

そこへワイゼルが今度こそ止めを刺そうとワイゼルAのブレードを展開させ、フリントに向かって振り下ろそうとする―――が、フリントが最後の伏せカードを発動させた瞬間、動きを止める。

 

「俺は何も覚えてはないが、俺の体と心がお前に限りない憎悪を向けている。 ……昔、俺とお前の間に何があったんだろうな」

 

フリントはワイゼルを見上げる。

その視線はワイゼルを貫き、さらにその先を見ている様だった。

 

「何にせよ、ここまでの憎悪は初めてだ。 俺自身も驚いている。 俺達はそれ程の”宿敵”だったに違いない。 …お前に一つ言っておこう」

 

フリントは決闘盤を変形させて決闘銃に戻すと、それをワイゼルに対して構える。

 

「俺は絶対に負けん! お前が何度現れようとも、何度俺を倒そうとも、俺は必ず立ち上がり、お前を倒して先を行く! 永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《ヴォルカニック・デビル》を復活させる!」

 

フリントとワイゼルの間に、 ヴォルカニック・デビルが地面を割って這い出てくる。

 

ATK:3000

 

ヴォルカニック・デビルはワイゼルと対峙すると、凄まじい咆哮を上げる。

その瞬間、地面から2体を取り囲む様に火柱が上がり、逃げ場を塞ぐ。

 

「ヴォルカニック・デビルの効果……相手はバトルフェイズ中、攻撃表示モンスターが存在する場合、このカードを攻撃しなければならない。 ……終わりだ」

 

フリントがそう言った瞬間、ワイゼルから煙が上がり始める。

ヴォルカニック・デビルが作り上げた炎の檻によって、ワイゼルが熱暴走を起こしたのだ。

もはや制御が利かなくなったワイゼルはワイゼルAのブレードを振りあげ、ヴォルカニック・デビルに斬り掛かる。

 

「【ヴォルカニック・キャノン】!!!」

 

それに対してヴォルカニック・デビルが火炎岩を放ち、左半身ごとワイゼルAを爆散させる。

 

??? LP:3000→1200

 

「ヴォルカニック・デビルの効果発動! 相手のモンスターを全て破壊し、1体につき500ポイントのダメージを与える! 【ヴォルカニック・チェーン】!」

 

その瞬間、大きく抉れたワイゼルの左半身が誘爆を起こし、機皇帝ワイゼル∞を含める4パーツ全てが跡形も無く吹き飛んだ。

 

??? LP:1200→0

 

 

決闘が終了しても、辺りにはヴォルカニック・デビルが発生させた炎が燃え盛っている。

機皇帝ワイゼル∞は倒し、決闘に勝利したフリントだったが、気を緩める様子を見せずに、炎の中に佇む人影を睨みつけている。

ワイゼルが消滅しても、あの人影は消滅していなかったのだ。

 

「お前は……一体何者だ?」

 

フリントは決闘銃を構えながら、人影に尋ねる。

すると、今まで一言も喋らなかった人影が声を発した。

 

「お前こそ、誰だよ? ずっと一緒だったのに、何で解らないんだよ? 本当にお前なのかよ? なあ―――」

 

 

 

 

                   友よ。

 

 

 

 

 

その瞬間、フリントは決闘銃の引き金を引いた。

 

 

* * *

 

 

「お、気が付いたぞ!」

 

フリントが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋の天井が見えた。

自分は今、ベッドの上で横になっている。

首を動かすと、そこには遊星、クロウ、そしてベッドに寄りかかって眠るフレアが見えた。

 

「おう、フリント。 気分はどうだ?」

 

手にマグカップを持ったクロウがフリントに声をかける。

 

「ああ……問題無い」

 

「そりゃそうだよな。 医者にもそう言われたからな。 ……なあフリント。 お前って一体何者なんだ?」

 

「……俺が知りたいくらいだ」

 

あの後、フリントを病院へ連れて行ったクロウは医者に驚くべき診断結果を聞かされる。

 

 

擦り傷や打撲傷はありますが、まあ大した事はありませんね。 軽症です。

 

 

「正直ありえねぇだろ。 あれだけ派手にクラッシュしておいて、たったそんだけの傷で済むなんてよ」

 

クロウが興味有り気にフリントの体を見回す。

確かに、クラッシュした時はとても強い衝撃を受け、歩くこともままならない程であった。

しかし、今は何とも無い。

フリントは医者の腕が良いのだと思っていたが、どうやら違うようだ。

 

「とにかく、よかった。 フレアも心配していたぞ。 今は疲れて眠っているが……」

 

遊星がフレアの肩からずれている布を掛け直す。

よく見ると、その布はフリントのマントであった。

 

「……遊星。 あれからどれ位経った? 決闘はどうなった?」

 

フリントに尋ねられ、遊星は順にそれを伝えていく。

 

まずここは病院。

クロウに連れて来られてから丸1日は立っている。

 

「そんなに長く眠っていたのか……心配を掛けてしまったな」

 

そして、ゴーストとの決闘。

フリントと同様に、機皇帝ワイゼル∞に苦戦し、スターダスト・ドラゴンまで奪われた遊星だったが、シグナー達の絆の力によって呼び出した”セイヴァー・スター・ドラゴン”の活躍によって勝利を掴む事が出来た。

 

「フリント……”機皇帝ワイゼル”とは一体何なんだ? あの様子からして、お前はあれを知っているようだったが……」

 

「ホント、らしくなかったぜお前。 あんなに切れたお前を見るのは初めてだ。 あれと昔何があったんだよ?」

 

「あの時は、取り乱してしまってすまない。 もう大丈夫だ。 ……奴についてだが、知っていることはお前達と変わらない。 解るのは、俺の敵であるということだけだ。 …ゴーストはどうなった?」

 

自分の宿敵であるワイゼルを操るDホイーラー。

その存在が気にならないはずはない。

 

「……奴は、”ロボット”だった」

 

「何…!?」

 

「今は調査中だが、詳しいことが分かり次第、深影さんが連絡をくれるそうだ」

 

「……カードは? ”機皇帝ワイゼル”は?」

 

「……ゴーストのLPを0にした時、奴はコースから飛び出して落下した。 俺達は急いで駆けつけたんだが……あったのは大破したゴーストだけだった」

 

「……そうか」

 

「…うし! じゃあそろそろ俺達は行くぜ! 仕事溜まってるからな!」

 

クロウは遊星を促して立ち上がった。

よく見ると、遊星は片手に工具箱を、クロウは何時もとは違う黄色いジャケットとヘルメットを付けている。

どうやら二人は仕事の合間を使ってフリントの見舞いに来たらしい。

 

「二人共、昨日から世話を掛けたな」

 

「気にするな。 お前も俺達の”仲間”なのだからな」

 

「何時でも退院出来るそうだが、一応今日は安静にしてろよ! じゃあな!」

 

遊星とクロウはそう言って病室から出て行く。

フリントは側で寝ているフレアを起こさないようにベッドから抜け出し、部屋の窓際に立つ。

 

「(あの夢は、何だったんだ?)」

 

フリントの脳裏に、先程まで見ていた決闘の夢が鮮明に浮かび上がる。

だが、決闘の後の”人影とのやり取り”だけは、フリントの記憶から完全に抜け落ちていた。

 

「(何が来ようと、俺は負けない! 過去も未来も、全て掴み取ってみせる!)」

 

突如現れた強敵にして、フリントの過去に潜む宿敵、”機皇帝ワイゼル∞”。

フリントはシティの青空を見上げながら、新たなる戦いへと身を投じる決意を固めるのであった。

 




ちょっとだけフリントの過去に迫りました。
結構複線はってきたので、未回収などの漏れがない様に気をつけます(汗)
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