遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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*今回から手札の増減などの表示をLPの増減表示と同じ様にして統一させました。
手札だけだったら気にならなかったんですけど、今回ある表示を手札と同じ様にしたらとても見づらく感じたので。

追記
スピードカウンターの略を間違えていたので修正しました。
SC→SPC

追記
痛恨の設定ミス……! ちょっと手直ししました。申し訳在りません……


第3話 鉱山の決闘疾走

ここはクラッシュ・タウンの南地区。

その地区にある他の建物よりも比較的大きな店―――レストラン・サザンライト。

昼時には労働者や町民達で賑わう憩いの場。

その店の中で一人の無愛想な青年が、客の前で突っ立っていた。

 

「……注文は?」

 

「兄ちゃん……もう少し愛想よく出来ねぇか?」

 

「……うーん、フリントには悪いが、接客業はやっぱり向いてないな」

 

離れで様子を見ていたストークが苦言を洩らす。

フリントがこの町に来てから早一週間、ストークやフレアには気にしなくていいと言われたが、何もしない居候というのは居心地が悪いもので、フリントは無理を言って仕事の手伝いを申し出たのだが―――――

 

「……決闘以外はからっきしなんだよな」

 

ウエイター以外にも料理、掃除なども任せてみたが、不思議とどれも上手くいかない。

あの決闘の強さの代償なんじゃないかと思える程だ。

 

「流石に仕入れを任せる訳にはいかないし、そもそもそんなに人手に困ってる訳じゃないんだよな ~…」

 

一週間前のあの日は偶々いなかったのだが、この店にも他に従業員はいる。

現にフリント以外にも客に注文をとっている者や厨房を出入りしている者が見える。

フレアに至っては人手が足りていると言う事で、さっさと遊びにいってしまった。

 

「……フリント、仕事探してんのか?」

 

ストークの独り言を聞いていた客のブロンソンが尋ねてくる。

突然話しかけられて驚いたストークは、独り言を聞かれていたという気恥ずかしさを顔に表す。

 

「あ、ああ……俺達は別にしなくても構わないと言ったんだが、本人の希望でな……」

 

「ならさ、鉱山なんてどうだ? 重労働の力仕事だけど、今の仕事より向いてると思うぜ?」

 

「鉱山……うーん、そうだなぁ……お爺さんに頼めば何とかなるか。 よし、勧めてみよう!」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

クラッシュ・タウン  北地区  鉱山内

 

「どうだフリント? この町は?」

 

鉱山の管理人に会う為、ブロンソンの案内で鉱山内を進んでいたフリント。

歩きながら突然ブロンソンがそう聞いてきた。

 

「……最初は何故か、嫌で堪らなかった」

 

「ええ!? 何で!? (ロットンとかの事か?)」

 

「分からない……でも何故かこの町が嫌だった。 名前を聞いた瞬間、出て行きたくなった……だが今は違う、ここにはいい”決闘者”達がいる、気持ちがいい住民達もいる……ここにいればきっと”いい風”が吹く……」

 

フリントは微笑を浮かべ、ブロンソンに顔を向ける。

ブロンソンはよく解らないといった顔をしていたが、フリントの顔を見て同じ様に笑みを浮かべる。

 

「そうだよな! おっかない人とかもいるが、いい人も沢山いるよな! いいかは解らないが、風だって吹くぜ! …っと、いたいた! セルジオさん!」

 

ブロンソンが休憩所らしき場所で座っている管理者に声を掛ける。

管理人は少し頼り無さそうな印象の男だったが、人柄は良さそうだ。

 

「やあブロンソン、それと……君がフリントか。 話はクラッシュさんや子供達から聞いているよ」

 

彼の名はセルジオ。

ニコとウェストの父親であり、この鉱山の管理者の一人である。

元々この町には親友であったストークとフレアの両親を頼って妻と共にやって来た。

セルジオは元々決闘者であり、頼って来たのもシティでのデュエル事業に失敗し、仕事を失ったからである。

それ故、最初はクラッシュ・ファミリーの決闘者となっていたが、子供ができた事と、妻との死別を理由に周りから説得され、現在では鉱山の管理者という安定した立場に落ち着いている。

クラッシュも息子夫婦の親友だったという事で、信頼を置いているようだ。

 

「こっちは幾ら人手があっても困らないから大歓迎だよ。 君にはブロンソンと同じDブロックに配属してもらうよ。 …それじゃあブロンソン、後はよろしく」

 

そう言ってセルジオは仕事に戻ろうと立ち上がり、二人に背を向けるが、ふと思い出したかのように立ち止まり、再び二人へ向き直る。

 

「言い忘れていたよ……フリント、もうこの町に一週間いるのなら解っているかもしれないが、ここで働く者の大半は南地区の住民達とは違って荒くれ者だ。 クラッシュさんの後ろ盾があるとは言え、私も扱いには手を焼く。 ……気をつけるようにな」

 

そう言ってセルジオは今度こそ去っていく。

 

「…まあセルジオさんの言う通りだ。 お前も見た事あるだろ? ここの奴等……」

 

鉱山で働く荒くれ者達は、殆どがマルコム、ラモンの両ファミリーに所属する下っ端構成員であり、それをクラッシュ・ファミリーの構成員が管理するという仕組みである。

その日の労働が終わるとそれぞれの縄張りへ戻り、本拠である酒場で一杯やるのが習慣なのだが、時折酔っ払った下っ端構成員が南地区へ乗り込み、好き勝手暴れる事があるのだ。

この一週間でサザンライトにもそういった輩が2、3度乗り込んで来たが、全てフリントが撃退している。

 

「まあ俺達のDブロックは北と南の労働者達で構成されてるから心配はないけどな、行こうぜ」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「おい! どういう事だよ!」

 

「どうもこうもない! ここDブロックの前任管理者はここを辞めた! 今日からEブロックの管理者であるこの俺が纏めてここを支配するからな!」

 

「するからな! 兄貴が!」

 

フリントがここへ来て早々、問題が起こった。

Dブロックの管理者が突然鉱山の管理者を辞めてしまったらしく、Eブロックの管理者である目の前の男、”レフタ”がここを仕切ろうと出張ってきたのだ。

 

「馬鹿言うな! セルジオさんは何も言ってなかったぞ! 第一管理者は1ブロックに一人だ! あんたが後任になれる訳ないだろ!」

 

Dブロックの労働者達、その人混みの中からブロンソンが声を上げるが、レフタは笑いながらそれを一蹴する。

 

「Aブロックの管理者こそ、この事には関係ないだろ! それにここの後任は俺じゃねぇ、ここにいる弟分だ! 弟分の支配下にあるんだから俺が支配しているも同然、って訳だ!」

 

「支配するからな! 兄貴が!」

 

「おい、それはクラッシュが認めた事なのか?」

 

労働者達を掻き分けて、フリントがレフタの前に出て来て尋ねる。

 

「あん? 何ボスを呼び捨てにしてんだ? …まあいいや、ここの事を決めるのは管理長だ、管理長から許可を貰ったんだよ、わざわざボスが決める事じゃねぇな。 ……さてそれじゃあ始めるか」

 

レフタは弟分に目配せすると、弟分は大きな袋を取り出す。

 

「ここの新しい支配者であるこの俺に出す物をだしな! 決闘者ならカード、それ以外は金目の物だ! 物によっては良くしてやるぜ」

 

レフタの要求に労働者達は不満の声を上げるが、レフタが腰から抜き放った電磁銃を見て黙り込んでしまう。

 

「よーし、素直にいう事を聞けばいいんだ。 ……よし、最初はお前だ。 やたらデケェが、腰に提げてんのは決闘銃か? ならとっととカードだしな!」

 

「断る。 ……お前の様な奴と、その意見を取り入れるような奴を知っていて配下に置いているのなら、俺はクラッシュを買い被っていたようだな」

 

「ああん!? テメェ―――」

 

レフタがフリントに向けて電磁銃を構えた瞬間、フリントの決闘銃の銃口が、電磁銃の銃身を上に持ち上げていた。

あまりの早業にレフタは眼を丸くする。

 

「……俺と”決闘”しろ、俺が勝ったら大人しくEブロックへ帰るんだ。 そしてこの事はクラッシュに報告させて貰う……お前が勝ったらカードでも何でも好きに持っていけ」

 

「……面白ぇじゃねーか、受けてやるよ! こっちに来な!」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

ダイン鉱山  鉱山内頂上付近

 

「ここは……」

 

フリントと付き添いで来たブロンソンが見たのは、二本の線路に乗せられた二台のトロッコ。

そのトロッコには何故か決闘盤が取り付けられていた。

 

「おい……随分と長い線路だな」

 

ブロンソンが恐る恐る線路の先を見る。

二本の線路は鉱山の中の遥か先まで続いていた。

 

「この線路はこの鉱山の一番下まで続いている。 今からこれに乗りながら決闘だ!」

 

「何だって!? 何でそんな風にやらなきゃならないんだよ!」

 

「部外者は黙ってな! これはこの鉱山の伝統、度胸試しの決闘よ!」

 

レフタはルールを説明する。

お互いはそれぞれ挑戦者とそれの対戦者で別のトロッコに乗り、下まで続く線路を高速で下りながら決闘を行う。

制限時間は下に下り切るまで。

挑戦者が負けるか、決闘に決着が付かない場合、挑戦者側にはペナルティがある。

 

「挑戦者……つまりお前のトロッコには仕掛けがある。 それは”決闘に勝利しなければブレーキが動かない”というもんだ!」

 

「おい!? それじゃ負けたり決着が付かなければフリントは!?」

 

「安心しろ、死にはしねぇよ。 この線路の終点を抜けた先、それは”ダスト・ボックス”だ! 生ゴミが衝撃を吸収してくれるだろうよ! だが突っ込んだら地獄を見るぜ! 今のゴミは一週間分だからな!」

 

「うえぇ~~~! この線路は”ダスト・シュート”か! フリント、負けたら帰り辛いぞ!」

 

ブロンソンが想像して身震いしていると、レフタがさらに衝撃的な事を話す。

 

「後、言っておくがこれは”ライディング・デュエル”だ! トロッコの決闘盤には”スピード・ワールド”を発動出来るように改造してあるんだぜ、へっへっへ……」

 

「はあ!? ふざけんな! Dホイールも無いのにか!? これじゃ”Dトロッコ”だ! おまけにこっちはDホイーラーですらないんだぞ! お前ばっかり有利で卑怯だ!」

 

「ブロンソン、いい。 俺は大丈夫だ……やろう」

 

フリントはトロッコに乗り込むと、自分のガンベルトのケースからデッキを取り出し、トロッコの決闘盤のデッキホルダーにセットする。

 

「大丈夫ってお前……Sp(スピード・スペル)も無いんだぞ! どうやって決闘するんだよ!」

 

ライディング・デュエル―――――それはスピードの世界で進化した決闘。

Dホイールという決闘盤内臓のバイクを操り、決闘を行う。

普通の決闘には無い様々な要素があるが、一番重要な要素は”Sp(スピード・スペル)”の存在であろう。

ライディング・デュエルで普通の魔法カードを使う事は禁止されており、使うと重いペナルティが与えられる。

その代わりに存在するのがSp――――ライディング・デュエル専用の魔法カードである。

決闘中に得られる”スピードカウンター”を溜める事で使用出来るこの魔法を使いこなせるかどうかで大きく勝敗が左右される。

 

「(まさかモンスターと罠だけで決闘するつもりか…!)」

 

「いいねぇその度胸! すぐに叩きのめしてやるよ! 《スピード・ワールド》、セット!」

 

レフタが自分のトロッコに飛び乗り、デッキを決闘盤にセットすると、1枚のフィールド魔法を発動させる。

その瞬間、場はスピード・ワールドによって支配された。

 

「後悔しても遅いぜ! 行くぞ! ライディング・デュエル――――」

 

 

 

「「アクセラレーション!!!」」

 

 

 

掛け声と共にトロッコが動き出すと、決闘が開始される。

先攻は挑戦者であるフリント。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

フリント 手札:5→6

 

スピードが全ての世界、”スピード・ワールド”。

そのスタンバイフェイズに、お互いのプレイヤーに”SC(スピードカウンター)”を1つずつ齎す。

 

フリント SPC:0→1

レフタ  SPC:0→1

 

「《ヴォルカニック・エッジ》を召喚!」

 

フリントの場に現れたのはヴォルカニック・エッジ。

フリントのデッキの先鋒とも言えるヴォルカニック・エッジが真価を発揮するのは、正にこの時である。

 

「ヴォルカニック・エッジの効果発動! 1ターンに1度、このカードの攻撃を放棄する事で相手に500ポイントダメージを与える! 《ヴォルカニック・バーン》!」

 

ヴォルカニック・エッジがレフタに向かって火炎弾を吐き出す。

先攻1ターン目は元々攻撃は不可能なので、この効果のデメリットは意味を成さない。

 

「うお!? この野郎! やりやがったな!」

 

レフタ LP:4000→3500

 

「カードを伏せてターンエンド」

 

LP:4000

SPC:1

手札:4

モンスター

・ヴォルカニック・エッジ

魔法・罠

・セット

 

今やかなりの速度で線路を走っているトロッコ。

お互い度胸が据わっているのか、このスピードに臆していない。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

レフタ 手札:5→6

 

フリント SPC:1→2

レフタ  SPC:1→2

 

「へっ! 見せてやるよ! ”ライディング・デュエル”をな! 《Sp-エンジェル・バトン》を発動! こいつはSCが2つ以上ある時、カードを2枚ドロー! そして1枚手札から墓地へ送る!」

 

レフタ 手札:5→7→6

 

墓地へ送ったカード

・Sp-ジ・エンド・オブ・ストーム

 

「さあて! 俺様の華麗なマジック・コンボを見せてやる! 《カオスライダー グスタフ》を召喚!」

 

レフタの場に現れたのは悪魔の様に見える暴走族。

自慢の赤いバイクを走らせ、手に持った長柄を振り回す。

 

ATK:1400

 

「カオスライダー グスタフの効果発動! 墓地の魔法を2枚ゲームから除外! この効果によって除外したカード1枚につき、お前のターン終了時まで攻撃力を300ポイントアップする!」

 

除外したカード

・Sp-エンジェル・バトン

・Sp-ジ・エンド・オブ・ストーム

 

ATK:1400→2000

 

「さあ食らいやがれ! 《暴走上等 参連悪辰苦》!」

 

グスタフがヴォルカニック・エッジに向かってバイクを寄せると、翻弄しながら3度斬りつけて破壊する。

 

「ヴォルカニック・エッジ……」

 

フリント LP:4000→3800

 

「こんなもんだ! 俺はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:2

手札:4

モンスター

・カオスライダー グスタフ

魔法・罠

・セット

 

「俺のターン、ドロー!」

 

フリント 手札:4→5

 

フリント SPC:2→3

レフタ  SPC:2→3

 

引いたカードは緑のフレーム。

フリントはそのカードを迷わず発動させる。

 

「《Sp-エンジェル・バトン》を発動!」

 

「な、何だと!? テメェ”Dホイーラー”だったのか!?」

 

「さあな……解る事は2つ、ライディング・デュエルを俺は理解(知って)いるという事、そしてその為のデッキを持っているという事だけだ」

 

フリント 手札:4→6→5

 

墓地に送ったカード

・A・ジェネクス・ケミストリ

 

「《ツインバレル・ドラゴン》を召喚!」

 

フリントの場に現れたのはリボルバー・ドラゴンによく似た機械龍。

だがリボルバー・ドラゴンよりずっと小柄で腕も無い。

頭部はリボルバーではなく、ダブルデリンジャーとなっている。

 

ATK:1700

 

「ツインバレル・ドラゴンの効果発動! 召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、相手のカード1枚を選択、 コイントスを2回行い、2回とも表だった場合、選択したカードを破壊する! 俺は《カオスライダー グスタフ》を選択!」

 

フリントがターゲットを定めると、ツインバレル・ドラゴンの頭上に大きなコインのソリッド・ビジョンが2つ表示され、それがとてつもない速さで回転を始める。

フリントは何時の間にかトロッコの決闘盤にケーブルで連動させていた決闘銃を抜き放つと、2枚のコインに向かって引鉄を引いた。

2枚のコインの動きが止まる。

弾痕を付けられたその表面の模様は―――――2枚とも裏。

 

「ハッ! そうそう当たって堪るかよ!」

 

レフタがフリントを嘲笑うが、フリントが見ているのはそこではなく、もっと先―――

 

「《Sp-ヴィジョンウィンド》を発動! SCが2つ以上ある時、墓地のレベル2以下のモンスターを1体特殊召喚する! 《(アーリー)・ジェネクス・ケミストリ》を特殊召喚!」

 

フリントの場に現れたのは、背中に大きなボンベを背負ったロボット。

そのボンベとチューブで繋がった両腕の銃をレフタに向ける。

 

ATK:200

 

「レベル4《ツインバレル・ドラゴン》に、レベル2《A・ジェネクス・ケミストリ》をチューニング!」

 

ケミストリが自身を2つの光輪へと変えると、ツインバレル・ドラゴンを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「誇り高き炎の戦士よ、その身に宿す不屈の闘志……今こそ燃え上がらせよ! シンクロ召喚! 《フレムベル・ウルキサス》!」

 

光の柱から現れたのは両腕に炎を纏った屈強な戦士。

並走するグスタフを睨み付けると気合の表れなのか、全身から炎を吹き出す。

 

ATK:2100

 

「シンクロだぁ~? 生意気なもん使いやがって!」

 

「バトル! フレムベル・ウルキサスで攻撃! 《メテオ・ウェーブ》!」

 

ウルキサスが拳を空間に撃ち付ける様に振り下ろすと、炎の様な波動が広がる。

それに触れたグスタフは瞬時に火達磨と化し、そのまま消し炭になってしまった。

 

「うおお!? グスタフ!?」

 

レフタ LP:3500→3400

 

「ウルキサスの効果発動! 相手に戦闘ダメージを与えた時、このカードの攻撃力は300ポイントアップする!」

 

ATK:2100→2400

 

「ターンエンド」

 

LP:3800

SPC:3

手札:3

モンスター

・フレムベル・ウルキサス

魔法・罠

・セット

 

現在トロッコは他のブロックの仕事場を通過中。

決闘中の決闘者達を乗せたトロッコが目の前を高速で横切って行くのを見た労働者達は全員目を丸くする。

 

「Spにシンクロ召喚……さっきからこっちの予定に無い事ばかりしやがって! 俺のターン! ドロー!」

 

レフタ 手札:4→5

 

フリント SPC:3→4

レフタ  SPC:3→4

 

「《Sp-サモン・スピーダー》を発動! SPCが4つ以上ある時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する! 来い! 《ダブル・コストン》!」

 

レフタの場に現れたのは黒い体色の、マンガに出てきそうな幽霊。

フリントに対して間抜けな笑顔を向ける。

 

ATK:1700

 

「ダブル・コストンは闇属性のアドバンス召喚の為のリリースとする時、1体で2体分のリリースに出来るぞ! ダブル・コストンをリリース! 《デモニック・モーター・Ω》をアドバンス召喚!」

 

ダブル・コストンが2体に分裂すると、光に包まれて姿を消す。

その光の中から現れたのは、両手足と頭部に刃を備えた、見るからに凶悪そうなロボット。

その見た目の凶悪さのあまり、まるで悪魔の様にも見える。

 

ATK:2800

 

「最上級モンスター…!」

 

「へっ! そうよ! レベルが違うんだよレベルが!  デモニック・モーター・Ωで攻撃! 《デモニック・クラッシャー》!」

 

デモニック・モーター・Ωがウルキサスに向かって腕の刃を振り下ろすと、ウルキサスは無残にも斬り伏せられてしまう。

 

「くっ…!」

 

フリント LP:3800→3400

 

「どうだ! これでターンエンド! そしてエンドフェイズ時にデモニック・モーター・Ωの効果発動! 場に《モータートークン》1体を攻撃表示で生成するぜ!」

 

レフタの場にエンジンの様なトークンが現れる。

しかし、エンジンだけだからかなのか、碌な戦闘能力を持たない。

 

ATK:200

 

「俺もエンドフェイズ時に罠カード《奇跡の残照》を発動! このターンの戦闘で破壊され墓地に送られたモンスターを特殊召喚する! 戻れ! 《フレムベル・ウルキサス》!」

 

フリントの場に光が差すと、その光の中からウルキサスが現れる。

 

ATK:2100

 

「ちっ! しぶてぇ! だがそいつじゃデモニック・モーター・Ωは倒せねぇ!」

 

LP:3400

SPC:4

手札:2

モンスター

・デモニック・モーター・Ω

・モータートークン

魔法・罠

・セット

 

「俺のターン、ドロー!」

 

フリント 手札:3→4

 

フリント SPC:4→5

レフタ  SPC:4→5

 

レフタの言う通り、ウルキサスではデモニック・モーター・Ωを倒す事は出来ない。

この状況を打開するカードも、フリントの手札には無い。

 

「(ならばせめて…) バトル! ウルキサスでモータートークンを攻撃!」

 

モータートークンの攻撃力は僅か200、ウルキサスの攻撃が通れば大ダメージを与える事が出来るが、相手はそこまで甘くは無かった。

 

「馬鹿め! こんな雑魚を無防備にしておくかよ! モータートークンをリリースし、永続罠《暴君の威圧》を発動! このカードがある限り、俺のモンスターはこれ以外の罠の効果を受けねぇぜ!」

 

”暴君の威圧”―――その効果は驚異的だが、今は問題ではない。

ウルキサスが攻撃するはずだったモンスターが消えた事により、攻撃の巻き戻しが発生する。

その場合、他のモンスター”デモニック・モーター・Ω”を攻撃対象に出来るが、それが出来るならば最初から攻撃している。

 

「……攻撃を中止、カードを伏せてターンエンド」

 

LP:3400

SPC:5

手札:3

モンスター

・フレムベル・ウルキサス

魔法・罠

・セット

 

「手も足も出ねぇようだな! 俺のターン! ドロー!」

 

レフタ 手札:2→3

 

フリント SPC:5→6

レフタ  SPC:5→6

 

「さて……お前には散々不意打ちを食らってるからな、油断はしねぇぞ! ユニオンモンスター《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を召喚し、《デモニック・モーター・Ω》に装備!」

 

レフタの場に1機の戦闘機が現れると、変形してデモニック・モーター・Ωに装着される。

 

「ヘビーウェポンの効果! 機械族の装備カードとなり、攻守を500ポイントアップさせる! そしてデモニック・モーター・Ωの効果発動! 攻撃力を1000ポイントアップ!」

 

ATK:2800→3300→4300

 

「どうだァ! お前が罠を仕掛けていようとも、俺のモンスターは”暴君の威圧”の効果で罠の効果を受けない! 仮にそれが強化カードだとしても、これだけの数値を上回る事は不可能だ! 覚悟しやがれ! バトル!」

 

デモニック・モーター・Ωが再びウルキサスに刃を振り下ろし、斬り捨てる。

先程以上の衝撃がフリントを襲うと、フリントの乗っているトロッコが急に減速する。

”スピード・ワールド”の発動中、一度に大きなダメージを受けると、1000ポイントにつき1つのSCを失う。

フリントが受けたダメージは2200、よって2つのSCを失う事となった。

 

「うおぉ…!」

 

フリント LP:3400→1200

 

SPC:6→4

 

「ハッハッハ! バトル終了! こいつはおまけだ! とっとけ! 《Sp-スピードストーム》を発動! SPCが3つ以上ある時、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

 

レフタが発動したSpから突風が吹き出し、フリントを襲う。

これによりフリントのトロッコは更に減速してしまう。

 

「くう…!」

 

フリント LP:1200→200

 

SPC:4→3

 

「カードを伏せてターンエンド! この時、強化能力を使ったデモニック・モーター・Ωは破壊されるが、ユニオンモンスターのヘビーウェポンの効果によりヘビーウェポンが身代わりになって破壊されるぜ! 後どうでもいいが、強制効果なんでな、トークンも生成だ」

 

デモニック・モーター・Ωが発するパワーに耐え切れなくなったのか、ヘビーウェポンは装着されたまま火を噴出し、爆散してしまう。

 

ATK:4300→2800

 

モータートークン ATK:200

 

LP:3400

SPC:6

手札:0

モンスター

・デモニック・モーター・Ω

・モータートークン

魔法・罠

・暴君の威圧

・セット

 

「どうだ! 俺様に逆らうからこんな事になったんだぜ? さっき使った”Sp-スピードストーム”はな、自分のスタンバイフェイズ時にSPCを3つ取り除く事で墓地から手札に戻すという効果があるんだよ! お前がどんなに守りを固めようとも、次で終わりだ! …もう一つ、いい事を教えてやる! もうじきゴールだぜ!」

 

もはやフリントに退路は無い。

次のターンでレフタのLPを削り切らなければならず、その方法を考えている時間もないのだ。

 

「今泣いて命乞いをするなら、サレンダーを認めてトロッコのブレーキを掛けさせてやるぜ? その後俺の奴隷として働いて貰うけどな! ハッハッハ!」

 

「…それだけの腕を持ちながら、お前は解っていない……決闘で必要なのは権力でも、強いカードでもない……本当に必要なのは、どんな窮地に立たされようとも、最後まで自分とカードを信じられる”揺ぎ無き心”だ! 俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:3→4

 

フリント SPC:3→4

レフタ  SPC:6→7

 

フリントの眼は諦めていない。

ドローしたカードを確認すると、フリントの中で自分のカードが繋がっていく。

繋がった先に見えてくるのは――――勝機。

 

「……俺はカードを信じる! 《Sp-カウントアップ》を発動! SPCが2つ以上存在する時、手札を任意の数だけ墓地に送り、墓地に送ったカード1枚につきSPCを2つ増やす! 俺は1枚墓地へ送ってSPCを2つ増やす!」

 

SPCが増えた事によりフリントのトロッコの速度が上昇するが、まだレフタのトロッコには追いつけない。

 

墓地に送ったカード

リボルバー・ドラゴン

 

SPC:4→6

 

「チューナーモンスター《ブラック・ボンバー》を召喚!」

 

フリントの場に顔の付いた大きな丸い爆弾が現れる。

その爆弾はヘラヘラ笑っているかと思えば、突然叫び声に似た機械音を上げる。

 

ATK:100

 

「ブラック・ボンバーの効果発動! 召喚に成功した時、自分の墓地から機械族・闇属性・レベル4モンスター1体を守備表示で特殊召喚出来る!  この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される……《ツインバレル・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

ブラック・ボンバーの叫び声に呼応して、ツインバレル・ドラゴンが現れて共に声を上げる。

 

DEF:200

 

「《Sp-チューンナップ123》を発動! SPCが4つ以上ある時、サイコロを1回振り、1~2なら1つ、3~4なら2つ、5~6なら3つ、自分の場のモンスター1体のレベルを上げる! 俺が選択するのは《ブラック・ボンバー》!」

 

ブラック・ボンバーの頭上にソリッド・ビジョンのサイコロが現れる。

ツインバレル・ドラゴンのコインの時と同様に、フリントが決闘銃の引鉄を引くと、サイコロの表面に弾痕が付けられる。

その付けられた表面の数字は―――

 

「出た目は1! よってブラック・ボンバーのレベルは1つ上がる!」

 

ブラック・ボンバー レベル3→4

 

「これが決着を付ける俺の切り札! 行くぞ! レベル4《ツインバレル・ドラゴン》に、レベル4《ブラック・ボンバー》をチューニング!」

 

ブラック・ボンバーの導火線に火が点くと、ブラック・ボンバーが4つの光輪に姿を変え、ツインバレル・ドラゴンを囲み、4つの光、そして光の柱へと姿を変える。

 

「天国と地獄、その間……死者が彷徨う荒野の龍よ! 現世の全てを無に帰せ!」

 

光の柱から現れたのは禍々しい姿をした赤黒い龍。

その禍々しさはデモニック・モーター・Ωの比ではない。

例えるなら、”悪魔”か”鬼”か―――――”死神”と言っても相応しいかもしれない。

 

「シンクロ召喚! 煉獄より現れよ! 《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》!」

 

その龍は長い尾を撓らせ、鋭い爪を光らせると、レフタに対して凄まじい咆哮を上げる。

 

ATK:3000

 

「ひ、ひぃ~!? な、何だこのドラゴンは!? 攻撃力3000だと!?」

 

自身の後ろから追いかけてくる恐ろしい巨龍を見て、レフタは怯えた様な声を上げる。

度胸があっても、この様な怪物に追いかけられれば誰でも動揺はするだろう。

 

「バトル! オーガ・ドラグーンでモータートークンを攻撃!」

 

「こ、こんなドラゴンが何だってんだ! 消えろ! 罠カード《聖なるバリア-ミラーフォース-》発動! これでお前のドラゴンは破壊だ! ハッハッハ!」

 

「煉獄龍 オーガ・ドラグーンの効果発動! 手札が0枚の場合、1ターンに一度だけ相手の魔法・罠の発動を無効にし、破壊する! 焼き尽くせ! 煉獄の混沌却火(インフェルニティ・カオス・バースト)!」

 

オーガ・ドラグーンがその尾でミラーフォースを叩き割ると、レフタにモータートークンごと口から放った獄炎を浴びせる。

 

「これで止めだ! ダメージステップ時に速攻魔法《Sp-ラピッド・ショットウィング》を発動! SPCが5つ以上ある時、自分のモンスター1体の攻撃力をSPCの数×100ポイントアップさせる! 俺のSPCは6つ! 攻撃力を600ポイントアップ!」

 

ATK:3000→3600

 

「ぐわぁぁぁーーー!!!」

 

レフタ LP:3400→0

 

 

ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴る。

大ダメージにより減速したレフタのトロッコをフリントのトロッコが追い抜く。

 

「フリント―――――」

 

フリントのトロッコが移動用のエレベーターを使って先に下りて来ていたブロンソンの前を横切る。

フリントの前方には大きな穴、ブロンソンの様子からして、それがゴールである事を悟ると、動くようになったブレーキを強く掛ける。

 

「させるかよ!」

 

その時、後ろから迫ってきていたレフタが電磁銃を手に取り、フリントを撃とうとする―――が、それを読んでいたフリントが先に決闘銃からカードを撃ち出すと、レフタの電磁銃を弾き飛ばす。

 

「うお! くそ! やりやがっ――!? し、しまった!?」

 

フリントを助からせまいと躍起になっていたレフタは、自分のトロッコのブレーキをまだ引いていない事に気付く。

慌ててブレーキを引いたが、時既に遅し。

もはやトロッコから飛び降りる事も出来ず、そのままトロッコごと穴に”ダスト・シュート”されてしまう。

 

「ぎゃあぁぁぁーーー!!!」

 

やがて凄まじい悲鳴が聞こえてきた。

鉱山内、トロッコによるライディング・デュエルはフリントの勝利である。

穴の目の前、ギリギリで止まったトロッコからフリントが下りると、その大穴から凄まじい悪臭が漂ってきたので、すぐさまその場を離れた。

 

「……欲にまみれた結果がこれか」

 

フリントは撃ち出したカードを回収すると、ブロンソンの元へと戻っていった。

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

クラッシュ・タウン  南地区  レストラン・サザンライト

 

「……俺も耄碌したか、他人に管理を任せすぎたのか、そんな奴が俺のファミリーにいたなんてな。 …すまなかったフリント、そして礼を言うぜ。 後始末はこっちでしっかりとやっておく」

 

「ああ、頼む。 これで皆安心して働けるだろう」

 

鉱山から南地区へと戻ったフリントとブロンソンは、偶然サザンライトで居合わせたクラッシュに全ての事を報告した。

レフタとその弟分、そしてその悪行を見逃していた管理長をファミリーから追放させるという。

 

「それにしてもいいなぁ~フリント。 ライディング・デュエル私もやってみたいよ~…」

 

「馬鹿いうな、お前にはまだ10年早い」

 

「冗談でしょ兄さん!? バイクに乗っていいのって16歳からなんでしょ! 10年なんて待ったら私23歳じゃない! 何でそんなに遅いのよ~!」

 

店内の掃除をしている兄の背をポカポカと叩くフレア。

ストークはそれを鬱陶しそうに払い除け、フレアの額に指を突きつける。

 

「16歳からってのはな、体だけじゃなくて、ここもそうじゃなきゃならないんだよ! 俺からすればお前のここが16になるのは後10年先と見ている」

 

フレアは暫く目を丸くしていたが、やがて顔を赤くするとストークの手を払い除ける。

 

「ひっどーい! 実の妹に何てこと言うの!? もう頭きた! 仕事しないで遊びにいってやる!」

 

「おい!? さっき遊んできたばっかだろ! 今の時間でシフト入ってる人少ないんだから手伝え! そんなんだから10年早いと―――」

 

店の外に飛び出していったフレアを追いかけていくストーク。

静かになった店内の中、クラッシュが立ち上がる。

 

「それじゃ俺も行くぜ、やる事が増えちまったからな」

 

そう言って外で待っていた側近と共に北地区へと戻っていった。

それを見送ると、ブロンソンがフリントに向き直る。

 

「フリント、俺思うんだけどさ、お前は無理に働く必要はないと思うぜ?」

 

「…何故だ?」

 

「だってお前十分役に立ってるって、ギャングは撃退するし、今回だって鉱山の問題を一つ片付けちまっただろ? ストークやフレアだってそれを解ってるから仕事を頼まないんじゃないかな?」

 

「…そうか」

 

「まああれだ! お前はつるはし構えてるよりも決闘銃構えてる方が様になるって事さ! じゃあ俺も鉱山に戻るよ! セルジオさんには俺から伝えておくから! じゃあな!」

 

そう言ってブロンソンもクラッシュの後を追いかけるように北地区へと向かっていった。

店先に一人立つフリントは今日のライディング・デュエルの事を思い出していた。

 

「(俺が覚えているのは自分の名前と決闘の事だけ……勿論ライディング・デュエルの事も覚えている……だが妙だ)」

 

フリントはガンベルトからライディング・デュエル用のデッキを取り出し、そこから1枚のカードを抜き出す。

 

「(このカードだけはまったく覚えが無い……)」

 

そのカードは”煉獄龍 オーガ・ドラグーン”。

フリントを勝利に導いたドラゴンである。

 

「(他のカードは解る。 だがこれは何なんだ? …そして一番不可解なのは、知らないはずのこのカードを俺が使いこなした事だ。 何故使いこなせる? 解らない……)」

 

フリントはオーガ・ドラグーンを掲げて見詰める。

恐ろしく、禍々しい姿をしているのに、何故かフリントはその姿が気に入った。

 

「(解らない事だらけだな、お前は……俺も同じ様なものか、似たもの同士だ…………解らない事だらけの相棒よ、これからも頼むぞ)」

 

 

 

フリントはオーガ・ドラグーンに微笑を向けるとデッキにしまい、サザンライトの中で出て行った二人の帰りを静かに待った。

 

 




初めてライディングを書きましたが、思ったよりやりやすかったです。
何せSpは意外と壊れ性能が多いですからね(今回はバトンくらいでしたが)結構展開を左右させやすいです。 まあ現段階では、ですが。

因みにSpは基本アニメ基準、ゲームで速攻魔法、または”これ速攻でも問題なくね?”というものは速攻魔法にしてあります。

フリントのRDデッキは元のデッキからヴォルカニック要素を少し減らしてチューナーとシンクロを少し入れたイメージです。
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