遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

36 / 77
第36話 特訓

 

「研磨されし孤高の光! 真の覇者となりて大地を照らす! 光輝け! シンクロ召喚! 大いなる魂! 《セイヴァー・デモン・ドラゴン》!」

 

 ジャックの姿を模したゴーストと、それに従う3体の”レッド・デーモンズ・ドラゴン”。そしてジャックが乗っているホイール・オブ・フォーチュンと一体化し、それらの前に現れたのは光り輝く覇者の竜。

 竜は3体のレッド・デーモンズ・ドラゴンの内の1体から力を奪い取ると、烈火を纏い突撃する。

 

「光を惑わす悪しき幻影よ! 時の狭間へと消え去るがいい! 【アルティメット・パワーフォース】!」

 

 竜が3体のレッド・デーモンズ・ドラゴンをゴーストごと消し飛ばす。

 ”絆”を胸に、己の過去の幻影を撃ち破ったジャック・アトラスの完全勝利であった。

 

……………………

………………

…………

……

 

「あの時のジャック、今までに無いくらいかっこよかったよ~!」

 

「いいなぁ~俺も見たかったなぁ~!」

 

 シティ郊外にある市内デュエルレーン入口にて、フレアが双子相手にジャックの活躍を楽しげに語っていた。ジャックのゴースト戦はフレアだけではなく、遊星やクロウ、フリントも観戦していたのだ。

 

「でも本当にジャックが無実で良かった……まさかゴーストがジャックに成りすまして悪さをしていたなんて……」

 

 龍可が胸を撫で下ろす。

 今回現れたゴーストはジャックを元に作られたロボットであり、見た目やデッキ、タクティクス、Dホイールまでまったく同じであった。一つ違うところを上げるならば、内面が”絆”を信じない”昔”のジャック・アトラスだったというところであろう。

 

「はい集合~!」

 

 三人で話をしていると、クロウが手を叩いてこの場にいるメンバーを呼び寄せる。

 クロウの周りに集まったのはフレア、フリント、そして十六夜 アキの三人。双子はフレアの後ろに控えている。

 

「今日はよく集まってくれたな!」

 

「特訓する、って話だったわよね? それはいいんだけど、どうしてこのメンバーなのかしら? WRGPの特訓をするんだったら遊星やジャックも呼んだほうがいいんじゃないの?」

 

 アキはメンバーを見渡しながらクロウに尋ねる。確かにWRGPに向けて特訓をするならばチームメンバーである遊星やジャックとやるのが普通であろう。

 

「いいや、このメンバーでいいんだ。これはWRGPの特訓じゃねーからな」

 

「違うの? じゃあ何の特訓?」

 

 フレアが首を傾げて尋ねると、クロウは真剣な表情になって話し始める。

 

「俺達、今までに何回かゴーストの襲撃を受けてきたよな? んで、誰がそいつらと決闘してきた?」

 

「えーと、遊星、龍可ちゃん達、ジャックかな?」

 

「そう! つーことは、次来るとしたら俺かアキだろ?」

 

「! そうね……」

 

 そう言ったクロウに視線を向けられ、アキは緊張した表情を浮かべた。

 学校に現れ、龍可に近づいたルチアーノ、そしてジャックの偽者。ゴーストは明らかにシグナーを標的としている。

 

「だから特訓すんだよ。俺達には”セイヴァー・ドラゴン”のようなすげぇ切り札は無い……だったら、その分腕を磨いて補うしかねぇよな?」

 

「……ええ!」

 

 アキは表情から緊張の色を消し、決意を固めた様に頷く。遅れを取りたくない、遊星達の力になりたい。そんな思いがクロウとアキの中で湧き上がっていた。

 クロウはアキに頷き返した後、今度はフレアとフリントに向き直る。

 

「本当は遊星達も呼んでアドバイスでも聞こうかと思ったんだがよ。遊星は今日仕事が忙しくてな。ジャックの奴は何故か朝からどっか行っちまった。だから代わりにお前等二人を呼んだって訳だ。お前等だって狙われねぇって保障はねぇし、訓練して損はねぇだろ?」

 

「成る程! それなら喜んで協力するよ! ね、フリント!」

 

「構わないぞ」

 

「おっしゃ! それじゃあよろしく頼むぜ!」

 

「ねえクロウ! 俺達もゴーストと戦ったんだ。何か役に立つよ!」

 

 後ろにいた龍亞が前に出る。龍亞と龍可はクロウに呼ばれた訳ではなく、道中でフレアとたまたま逢って付いて来ただけであるが、龍亞は話を聞いて自分も協力したくなったようだ。

 

「おう、そういや決闘したもんな。何か気をつける事はあるか?」

 

「えーと……シンクロモンスターは吸収されちゃうよ!」

 

「……そりゃ誰でも知ってらぁ。もうちょっと違う注意点とかねぇのか?」

 

「ええ~と……」

 

 早くもネタ切れを起こした龍亞。龍可は呆れた様に溜息をついた。

 

「私達は負けちゃったんだから、いいアドバイスなんてできないでしょ? 無理しないの。私達はここで皆の決闘を見て勉強しましょ」

 

「うう……」

 

 龍可にそう言われた龍亞は項垂れて後ろに下がる。そんな龍亞を励ます様にクロウが軽く背を叩いた。

 

「気にすんな気にすんな! 分からねぇのは俺等も一緒だ。さて……始めっか! 誰からやる?」

 

「はい! 私やりたい!」

 

 フレアが前に出る。その時、フレアは何かを思い出した様に両手を合わせた。

 

「そう言えばクロウ、サテライトでの約束覚えてる?」

 

「ん? ……あ! そういや俺とお前、まだ一度もやったこと無かったな」

 

「そー。あの後ランニング・デュエルとかやってたからすっかり忘れちゃってたんだよね。だから私とやろうよ」

 

「おう! あの日付くはずだった白星、俺が頂くぜ!」

 

 フレアとクロウはそれぞれのDホイールの元に向かい準備を始める。

 フリントとアキはその決闘を観戦する為、それぞれのDホイールのモニターを起動させた。

 

「じゃあ、私の相手はフリントね」

 

「手加減はしないぞ」

 

 アキとフリントが言葉を交わしている間に準備を終えたフレアとクロウは使用申請したレーン内に侵入し、コーナー前のストレートでDホイールを止める。

 

「《スピード・ワールド2》、セット! 行くぜフレア! 手加減しねーからな!」

 

「勿論! 白星は私が貰うからね! ライディング・デュエル――――」

 

 

 

「「アクセラレーション!!!」」

 

 

 

 4年間実現しなかったフレアとクロウの決闘が始まる。フレアはウィルダーネスを一気に加速させ、クロウよりも先にコーナーを曲がり切り先攻を取った。

 

「(マジかよ!? あの速度で曲がれんのか!?)」

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:5→6

 

 フレア SPC:0→1

 クロウ SPC:0→1

 

「手札のモンスター1体を墓地に送り、手札から《クイック・シンクロン》を特殊召喚!」

 

 フレアの場に現れたのは”クイック・シンクロン”。銃を構え、後方で走るクロウに狙いを付ける。

 

 ATK:700 レベル5

 

「そして墓地へ送った《ダンディライオン》の効果発動! 場に綿毛トークン2体を生成!」

 

 さらにフレアの場に2体の綿毛トークンが現れる。チューナーと低ステータスのモンスター、これらに続くのはほぼ間違いなくシンクロ召喚であろう。

 

 DEF:0 レベル1

 DEF:0 レベル1

 

「レベル1《綿毛トークン》に、レベル5《クイック・シンクロン》をチューニング!」

 

 クイック・シンクロンが5つの光輪へと姿を変えると、綿毛トークンを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。

 

「荒野に生まれし螺旋の槍よ! 大地を砕き、天穹を貫け! シンクロ召喚! 破砕の戦士!  《ドリル・ウォリアー》!」

 

 光の柱から現れたのはフレアのエースモンスター”ドリル・ウォリアー”。 勇ましい掛け声と共に右腕のドリルを回転させ、クロウに対して構える。

 

 ATK:2400 レベル6

 

「ドリル・ウォリアーの効果発動! 手札を1枚捨て、次の自分のスタンバイフェイズまでゲームから除外!」

 

 ドリル・ウォリアーは地面にドリルを突き立てると、そのまま地中へと潜って行く。

 

「モンスターをセット! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:1

手札:1

モンスター

・綿毛トークン

・セット

魔法・罠

・セット

 

「(ドリル・ウォリアーっていやぁ遊星も使ってたシンクロモンスターだな。この効果は初めて見るが……消えちまってるならその隙に攻めさせてもらうぜ!) 俺のターン!」

 

 クロウ 手札:5→6

 

 フレア SPC:1→2

 クロウ SPC:1→2

 

「《BF-逆風のガスト》を特殊召喚!」

 

 クロウの場に現れたのは青と緑の鮮やかな羽を持つ鳥人。このモンスターが現れた瞬間、フレアは自分に掛かっている空気抵抗が強くなったように感じた。

 

 ATK:900 レベル2

 

「こいつは俺の場にカードが無い時に特殊召喚できる! そしてチューナーモンスター《BF-東雲のコチ》を通常召喚!」

 

 続けてクロウの場に花弁の様な羽毛を頭に生やした鳥獣が現れる。

 

 ATK:700 レベル4

 

「レベル2《BF-逆風のガスト》に、レベル4《BF-東雲のコチ》をチューニング!」

 

 コチが4つの光輪へと姿を変えると、ガストを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「漆黒の力! 大いなる翼に宿りて神風を巻きおこせ! シンクロ召喚! 吹きすさべ! 《BF-アームズ・ウィング》!」

 

 光の柱から現れたのは”BF-アームズ・ウィング”。4年前にフリントと銃弾を交えたクロウのシンクロモンスターである。

 アームズ・ウィングはその黒い翼を広げて飛び上がると、フレア達に銃を向けて狙いを定める。

 

 ATK:2300 レベル6

 

「(来たか……守りの体勢では、奴の銃弾が深く刺さるぞ。どうするフレア?)」

 

 アームズ・ウィングと対峙し、追い詰められた経験を持つフリント。そんな強敵にフレアはどう立ち向かうのか。

 

「バトル! アームズ・ウィングで綿毛トークンを攻撃! 【ブラック・チャージ】!」

 

 アームズ・ウィングがフレアを追い抜き、前に回り込むと銃を乱射しながら綿毛トークンに突進する。

 

「アームズ・ウィングは貫通能力を持ち、さらに守備モンスターを攻撃するダメージステップの間、 攻撃力を500ポイントアップする! くらえ!」

 

 ATK:2300→2800

 

 アームズ・ウィングの銃撃は全てフレアに命中し、綿毛トークンは銃剣の一撃により粉々に消し飛んでしまう。

 

「きゃあああ!?」

 

 フレア LP:4000→1200

 

 旧式ルールであったらフレアのSPCは完全に無くなっていただろう。それ程の大ダメージがフレアを襲い、ウィルダーネスは安定性重視のマシンにも関わらず大きくバランスを崩してしまう。

 その隙にブラックバードがウィルダーネスを追い越した。

 

「くっ……! ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて罠カード《ダメージ・コンデンサー》を発動! ダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する! 受けたダメージは2800! 私はデッキから攻撃力2500の――――」

 

 フレアがデッキからカードを取り出して掲げると、そこから光の鳥が放たれ舞い上がる。

 舞い上がった光の鳥は閃光となって空から場に降り立ち、女神へと姿を変えた。

 

「――――《ガーディアン・エアトス》を特殊召喚!」

 

 ATK:2500 レベル8

 

「何だと!? 俺の攻撃を利用して最上級モンスターを呼び出しやがった!?」

 

『シグナーが相手ですね。そしてライディング・デュエル……フレア、気を抜かないように』

 

「(解ってる! 今回もよろしくね!)」

 

 エアトスが言葉を発してフレアと会話しているが、クロウはこれを聞き取れていない。

 龍可以外のシグナーが精霊を見るには”痣の力”が必要であり、痣が”精霊の力”に反応することで初めて精霊を見ることができるのである。

 エアトスは現在、精霊としての”力”を殆ど発していないので赤き竜の痣が反応を見せないのだ。

 

「(チキショー……LPは削れたが、結局フレアの場に2体……いや、スタンバイフェイズに3体か。戦力を削るどころか増やしちまった) ……だが! こんな事でビビるクロウ様じゃないぜ! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:2

手札:2

モンスター

・BF-アームズ・ウィング

魔法・罠

・セット

・セット

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:0→1

 

 フレア SPC:2→3

 クロウ SPC:2→3

 

「スタンバイフェイズに除外されている《ドリル・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

 地中に潜っていたドリル・ウォリアーが地面を砕いて地表へ飛び出すと、フレアの墓地に向かって左手をかざす。

 

そしてこの時、自分の墓地からモンスター1体を手札に加える! 私は《ダンディライオン》を手札に!」

 

 フレア 手札:1→2

 

「そしてドリル・ウォリアーの効果発動! 手札を1枚捨ててゲームから除外!」

 

 捨てたカード

 ダンディライオン

 

 フレアがそう宣言すると、ドリル・ウォリアーは再び地面の中へと潜って行く。

 それと同時に、墓地に送られた”ダンディライオン”の効果でフレアの場に新たな綿毛トークンが2体生成された。

 

 DEF:0 レベル1

 DEF:0 レベル1

 

「(攻撃もしねぇで除外するだぁ? 俺の罠でも警戒してんのか? ……いい勘してんじゃねぇか!)」

 

 クロウの場に伏せられているカードの1枚は”聖なるバリア -ミラーフォース-”。ここでドリル・ウォリアーを除外せずに攻撃していたら、このカードでエアトス共々破壊されていただろう。

 

「チューナーモンスター《キーマウス》を召喚!」

 

 地中へ潜ったドリル・ウォリアーの代わりに、”キーマウス”がフレアの場に現れる。

 

 ATK:100 レベル1

 

「そしてセットしていたリバースモンスター《メタモルポット》を反転召喚! リバース効果発動! お互いに手札を全て捨て、デッキから5枚ドローする!」

 

 ATK:700 レベル2

 

「いいぜ。俺にとってもありがてぇ!」

 

 フレア 手札:0→5

 クロウ 手札:2→0→5

 

「(……うん、これなら!) 《Sp-ハーフ・シーズ》を発動! SPCが3つ以上ある時、相手のモンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分だけ自分のLPを回復する! 《BF-アームズ・ウィング》の攻撃力を半分にし、その数値1150ポイントLPを回復!」

 

 ATK:2300→1150

 フレア LP:1200→2350

 

「レベル2《メタモルポット》と、レベル1《綿毛トークン》2体に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」

 

 キーマウスが首輪の錠に自分の尻尾を差込み開錠させると、1つの光輪へと姿を変え、光輪はメタモルポット達を囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

 「十の剣に名を連ねし銃士よ! 立ち塞がる敵を討ち、勝利の号砲を上げよ! シンクロ召喚! 荒野の英雄! 《X-セイバー ウェイン》!」

 

 光の柱から現れたのは”X-セイバー ウェイン”。鋭い眼光をアームズ・ウィングに向け、二丁銃剣を構える。

 

 ATK:2100 レベル5

 

「(俺のモンスターの弱体化に新しいシンクロモンスター……間違いなく攻めてくる。俺の罠を読んでた訳じゃねーみてぇだな)」

 

「ウェインの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、手札のレベル4以下の戦士族1体を特殊召喚できる! 私は《荒野の女戦士》を特殊召喚! 〈セイバーズ・テキサス〉!」

 

 ウェインが空に向けて号砲を鳴らすと、隣に”荒野の女戦士”が現れ、剣を構える。

 

 ATK:1100

 

「バトル! エアトスでアームズ・ウィングを攻撃!」

 

「へっ、甘ぇよ! 罠カード《聖なるバリア -ミラーフォース-》! そっちの攻撃力が上なのは解りきってんだ! 俺が何の用意もして無いと思ったか!」

 

 クロウが後方に張られた光の結界越しに笑みを見せると、同時にフレアも笑みを浮かべた。

 

「手札から速攻魔法《Sp-我が身を盾に》! SPCが2つ以上ある時、LPを1500ポイント払うことで”場のモンスターを破壊する”効果を持つカードの発動を無効にし、破壊する! ミラーフォースを無効に!」

 

 フレア LP:2350→850

 

「!? チクショウ読んでやがったか!?」

 

『申し訳ありませんフレア……私達を守る為にLPが……』

 

「0にならなきゃ大丈夫! さあ行ってエアトス! 【精霊のオペラ】!」

 

 ミラーフォースが消えるとエアトスは空高く舞い上がり、高らかな歌声を上げる。やがてその歌声は光の波動に変わり、それを浴びたアームズ・ウィングは同じ光となって消滅してしまった。

 

「くっ! マジかよ……」

 

 クロウ LP:4000→2650

 

 逆転のミラーフォースを破られ窮地に立ったクロウ。後の攻撃が全て通れば彼の敗北である。

 

「これで最後! ウェインで直接攻撃! 【クロス・バレット】――――」

 

 その瞬間、フレアの場が一瞬光った後大爆発を起こす。

 

「きゃあああ!?」

 

『フ、フレア――――』

 

 ウェイン、女戦士、エアトスは爆炎に包まれ破壊される。爆炎を振り切って姿を現したのはウィルダーネスに乗ったフレアのみであった。

 

「(な、何が……私のモンスターが全滅するなんて……ミラーフォース? でもそれは無効に……」

 

 フレアは斜め前を走るブラックバードに眼を向ける。そこには発動された伏せカードと、笑みを浮かべるクロウの姿があった。

 

「悪ぃな。罠カード《BF-バックフラッシュ》! 自分の墓地にBFが5体以上存在する相手の直接攻撃宣言時に発動できるカードだ。効果により、お前のモンスターを全て破壊させて貰ったぜ。……俺の方が1枚上手だったな!」

 

 クロウの墓地に存在するBF

 BF-逆風のガスト

 BF-東雲のコチ

 BF-熱風のギブリ

 BF-流離いのコガラシ

 BF-アームズ・ウィング

 

 逆転したと思いきや、一瞬で自分が窮地に立たされてしまったフレア。呆然としていた頭を切り替え、カードを手に取る。

 

「(まだ負けた訳じゃない!) カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:850

SPC:3

手札:0

モンスター

・無し

魔法・罠

・セット

・セット

 

「うわわ!? 押してたフレア姉ちゃんが一気にピンチになっちゃった!?」

 

「一つの油断が展開を大きく変える……それが決闘だ。覚えておけ」

 

 フリントが龍亞にそう言うと、龍亞は一瞬体を震わせる。今のフレアの状況を自分に置き換えて想像してしまったのだろう。

 

「でもまだ分からないわ。フレアの場には伏せカードがあるし、さっき除外したドリル・ウォリアーも健在だもの。……これからフレアはどう動くのかしら?」

 

 アキが自身の愛機”ブラッディー・キッス”のモニターを見詰めていると、クロウが決着をつける為に動き出す。

 

「俺のターン!」

 

 クロウ 手札:5→6

 

 フレア SPC:3→4

 クロウ SPC:3→4

 

「《Sp-シンクロ・リターン》発動! SPCが3つ以上ある時、ゲームから除外されている自分か相手のシンクロモンスター1体を自分の場に特殊召喚する! 俺が特殊召喚するのは、フレアが除外した《ドリル・ウォリアー》だ!」

 

 クロウが発動したSpから光が放たれ、地面を貫くと地中に潜っていたドリル・ウォリアーが地面から飛び出し、クロウの場に移動する。

 

 ATK:2400 レベル6

 

「ドリル・ウォリアー!? そんな……!?」

 

「決闘で安全な位置があると思うなよ? ゴースト達はどんな手を使ってでも、俺達のシンクロモンスターを奪いに来るに違ぇねぇ! こんな風にな!」

 

 フレアは万が一という時の為にドリル・ウォリアーをゲームから除外し、温存しておこうと考えていたのだが、その目論見はクロウにあっさりと破られてしまった。自身の中でドリル・ウォリアーによる巻き返しを考えていただけに、フレアのショックは大きい。

 

「さあ行くぜ! バトル! ドリル・ウォリアーで直接攻撃!」

 

「!? え、永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《ガーディアン・エアトス》を特殊召喚!」

 

『大地の戦士よ! 止まりなさい!』

 

 ドリル・ウォリアーがドリルを構えてフレアに迫ろうとすると、突然現れたエアトスがドリル・ウォリアーの前に立ち塞がり、行く手を阻む。

 

 ATK:2500 レベル8

 

「リビングデッドか! 直接攻撃の能力使っとくんだったぜ。中止だ!」

 

 クロウの指示に従い、ドリル・ウォリアーはドリルを下げ、大人しくクロウの場に戻る。

 

「チューナーモンスター《BF-空風のジン》を召喚!」

 

 クロウの場に着物を纏い、腰に刀を下げた子供の様に小さい鳥人が現れる。

 

 ATK:600 レベル1

 

「それじゃ俺のエースを見せてやるぜ! レベル6《ドリル・ウォリアー》に、レベル1《BF-空風のジン》をチューニング!」

 

 ジンが1つの光輪へと姿を変えると、ドリル・ウォリアーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「黒き旋風よ! 天空へ駆け上がる翼となれ! シンクロ召喚! 《BF-アーマード・ウィング》!」

 

 光の柱から現れたのは鎧を纏った鳥人。鎧の一部の様な翼を広げ、大きな赤い一つ目でエアトスを見据えている。

 これこそがクロウと共に戦い続けていたBFのエースモンスター”BF-アーマード・ウィング”である。

 

 ATK:2500 レベル7

 

「アーマード・ウィング……!」

 

 フレアは”夢”で見たダークシグナーとの戦いでこのモンスターを見ている。なのでその名に相応しい戦闘耐性を持っていることや、手に恐ろしい”楔”を隠し持っていることも知っていた。

 

「カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

LP:2650

SPC:4

手札:1

モンスター

・BF-アーマード・ウィング

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「(私ったら、一瞬ボーっとしてた……駄目! 切り替えなきゃ!) 私のターン!」

 

 フレア 手札:0→1

 

 フレア SPC:4→5

 クロウ SPC:4→5

 

「……カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:850

SPC:5

手札:0

モンスター

・ガーディアン・エアトス

魔法・罠

・リビングデッドの呼び声(ガーディアン・エアトス)

・セット

・セット

 

「俺のターン!」

 

 クロウ 手札:1→2

 

 フレア SPC:5→6

 クロウ SPC:5→6

 

「来ねぇならこっちから行くぜ! 自分の場のモンスターがこいつ以外のBF1体のみの場合、手札から特殊召喚できる! 来い! 《BF-白夜のグラディウス》!」

 

 クロウの場に銀色の鎧を纏い、手に双剣を持った鳥人が現れる。

 

 ATK:800 レベル3

 

「この瞬間、罠カード《ブラック・リターン》を発動! BFの特殊召喚に成功した時、相手モンスター1体を選択。そのモンスターの攻撃力分だけ自分のLPを回復し、そのモンスターを手札に戻す! 手札に戻れ《ガーディアン・エアトス》!」

 

 クロウ LP:2650→5150

 

『くっ!? またしてもッ……――――』

 

「エアトス!?」

 

 ブラック・リターンの効果が発動すると、エアトスは力を吸収され、光となってフレアの手札に戻る。

 

 フレア 手札:0→1

 

「これで終わりだ! アーマード・ウィングで直接攻撃! 【ブラック・ハリケーン】!」

 

「罠カード《ガード・ブロック》を発動! ダメージを0にして1枚ドロー!」

 

 フレア 手札:1→2

 

 アーマード・ウィングは拳に黒い風を纏わせ、それをフレアに向かって突き出す。しかし、その拳は結界によって阻まれ、フレアに届くことはなかった。

 

「ならグラディウス! フレアに直接攻撃!」

 

 グラディウスは双剣を構え、フレアに向かって斬り掛かる。

 

「くっ……うう……」

 

 フレア LP:850→50

 

「(くっそ! 一歩とどかねぇ!) ターンエンド!」

 

LP:5150

SPC:6

手札:1

モンスター

・BF-アーマード・ウィング

・BF-白夜のグラディウス

魔法・罠

・セット

・セット

 

「はぁ……ドキドキする……」

 

「でも、もう決まりかもね。フレア姉ちゃんのLPはたった50しか無いし、モンスターもいない。それに比べてクロウはLP5000もあって、エースまで場にいるし」

 

 龍可は緊張して胸を押さえているが、龍亞の方は結果が見えてきたからか大分落ち着いている。確かに、フレアがこの状況から逆転できるとは思えない。

 

「そうね……もしフレアがアーマード・ウィング達を退けたとしても、クロウがSpを引いてしまえば”スピード・ワールド2”の効果でLPが0になる。……フレアも頑張ったけど、ここまで差を付けられてしまうなんて……やっぱり、経験の差かしら?」

 

 アキがフリントに視線を向けて問いかける。自分も初心者Dホイーラーとして、その事を知っておきたい。

 

「……確かに、経験は”実力”の内だろう。今の状況がその証拠だ。だが、勝敗を決するのは経験ではなく、”決闘者達の全て”だ。……まだ決着は着いていない。最後まで見届けてやろう」

 

「(まだ負けてない……まだ走れる!) 私のターン! ドロー!」

 

 フレア 手札:2→3

 

 フレア SPC:6→7

 クロウ SPC:6→7

 

「SPCを4つ取り除き、《Sp-エンジェル・バトン》を発動! デッキからカードを2枚ドローし、手札から1枚を墓地に送る! ドロー!」

 

 フレア SPC:7→3 手札:2→4

 

『フレア……もはや私は重荷に過ぎません。私を墓地に』

 

「(ごめんねエアトス……頑張ってくれたエアトスの為にも、絶対に勝つから!)」

 

 フレア 手札:4→3

 

「《Sp-ハイスピード・クラッシュ》を発動! SPCが2つ以上ある時、自分の場のカード1枚と場のカード1枚を破壊する! 私の場の《リビングデッドの呼び声》とクロウの場にいる《BF-アーマード・ウィング》を破壊!」

 

 フレアがSpを発動させると、フレアの場にあった”リビングデッドの呼び声”のソリッドビジョンカードが飛び、アーマード・ウィングに命中。両方とも粉々に砕け散る。

 

「アーマード・ウィング!?」

 

「墓地から地属性モンスター2体を除外して、手札から《ギガストーン・オメガ》を守備表示で特殊召喚!」

 

 除外したモンスター

 虚栄の大猿

 メタモルポット

 

 フレアがモンスターゾーンにカードを置くと、レーンの外側に”ギガストーン・オメガ”が現れる。ソリッドビジョンが大きすぎてDホイールとの並走できないモンスターはこのような配置となるのだ。

 

 DEF:2300 レベル5

 

 「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:50

SPC:3

手札:0

モンスター

・ギガストーン・オメガ

魔法・罠

・セット

・セット

 

「(守備力2300……守りを固めて時間を稼ぐつもりだな。そんな暇は与えねぇ!) 俺のターン!」

 

 クロウ 手札:1→2

 

 フレア SPC:3→4

 クロウ SPC:7→8

 

 クロウの手札

 BF-天狗風のヒレン

 

 引いたカード

 Sp-闇の誘惑

 

「(……来たぜ!) これで決着だ! 《スピード・ワールド2》の効果発動! SPCを4つ取り除き、手札のSp1枚を見せることで相手に800ポイントのダメージを与える!」

 

 クロウ SCP:8→4

 

 見せたカード

 Sp-闇の誘惑

 

 ブラックバードから光が放たれると、ウィルダーネスに向かって一直線に飛ぶ。

 

「まだ終わらない! 墓地から《プリベントマト》の効果発動! 相手ターンにこのカードを墓地から除外することで、このターン自分が受ける効果ダメージは0になる!」

 

 突然フレアの墓地からアメフトのヘルメットを被ったトマトが飛び出すと、フレアを庇って光と共に消滅する。

 

「マジかよ!? (そういや序盤に手札から色々捨ててやがったな) なら……SPCを3つ取り除き、《Sp-闇の誘惑》を発動!」

 

「この瞬間! 罠カード《アクセル・ゾーン》を発動! 相手がSpを発動した時、自分のSPCを6つ増やす!」

 

 フレア SPC:4→10

 

 フレアのSPCが一気に増えるとウィルダーネスが加速し、ブラックバードを追い抜く。

 

「(スピードを上げたって俺からは逃げられねぇぞ!) 闇の誘惑の効果! デッキからカードを2枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体を除外する!」

 

 クロウ SPC:4→1 手札:1→3→2

 

 除外したカード

 BF-天狗風のヒレン

 

「待つなんて俺の性に合わねぇ! 俺の方から攻めてやるぜ! チューナーモンスター《BF-極北のブリザード》を召喚!」

 

 クロウの場に青白い羽毛を持ち、常に体から冷気を放つBF、”極北のブリザード”が現れる。

 

 ATK:1300 レベル2

 

「極北のブリザードの効果発動! 召喚に成功した時、墓地からレベル4以下のBF1体を守備表示で特殊召喚する! 来い! 《BF-熱風のギブリ》!」

 

 続けて現れたのは赤い鬣の様な羽毛を持つ六枚羽の鳥獣。先程のブリザードとは正反対で、この鳥獣は常に熱を放っている。

 

 DEF:1600 レベル3

 

「行くぜ! レベル3《BF-白夜のグラディウス》と、レベル3《BF-熱風のギブリ》に、レベル2《BF-極北のブリザード》をチューニング!」

 

 ブリザードが2つの光輪へと姿を変えると、グラディウスとギブリを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「吹き荒べ嵐よ! 鋼鉄の意志と光の速さを得て、その姿を昇華せよ! シンクロ召喚! 出ろ! 《BF-孤高のシルバー・ウィンド》!」

 

 光の柱から現れたのはマントの様な銀色の翼と、自身の背丈程ある長い長剣を持った鳥人。これがクロウの持つ最高レベルのシンクロモンスター、”孤高のシルバー・ウィンド”である。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「孤高のシルバー・ウィンドの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、このカードの攻撃力よりも低い守備力を持つモンスターを2体まで選択し、破壊できる! 破壊するのは《ギガストーン・オメガ》1体だ! 〈パーフェクト・ストーム〉!」

 

 シルバー・ウィンドが剣を振り上げると、レーン外にいるギガストーン・オメガの周りに突風が巻き起こり、その巨大な体を切り刻む。

 

「ギガストーン・オメガの効果発動! カード効果で墓地に送られた時、相手の場の魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

 ギガストーン・オメガは力尽きる寸前に咆哮を上げると、クロウが伏せていたカードが全て破壊される。

 

 伏せていたカード

 黒羽の導き

 緊急同調

 

「構わねぇよ! ……孤高のシルバー・ウィンドの効果を使ったターンはバトルフェイズを行えない。だがこれでお前の手札とモンスターは0! 次のターンで今度こそ決着をつけてやるぜ! ターンエンド!」

 

LP:5150

SPC:1

手札:1

モンスター

・BF-孤高のシルバー・ウィンド

魔法・罠

・無し

 

 何とかここまで凌いできたフレア。だが、次のターンが限界であろう。

 シルバー・ウィンドは攻撃力2800の最上級モンスターであり、1ターンに一度、BFに戦闘破壊耐性を持たせる効果を持つので容易には突破できない。突破したとしても、その先には5150という大量のLPが待っているのだ。

 さらにクロウの手札にはSPCが3つ以上あれば発動でき、相手に1000ポイントのダメージを与える”Sp-スピード・ストーム”が存在する。次のクロウのターンでSPCは3となるので、その時にこのSpによってフレアのLPは0にされるだろう。

 

「(絶体絶命……でも、負けじゃない。負けてないなら、何とかできる!)」

 

 もうこれ以上のピンチは無い。後はチャンスが巡ってくるだけ――――そう考えたフレアの心に勇気が湧いてきた。

 

「(勝利への”道”は……ただ一つ!)」

 

 フレアはデッキトップに指を掛け、何も無い空間を思い浮かべる。

 フレアのデッキに入っている全てのカード。それらの中から必要なカードを空間の中に浮かべ、光で繋いで道を作って行く。

 その道が”終点”に達した時、フレアはデッキからカードを引き抜いた。

 

「(お願い! 繋がって!) 私のターン! ドロー!」

 

 フレア 手札:0→1

 

 フレア SPC:10→11

 クロウ SPC:1→2

 

「SPCを6つ取り除き、《Sp-シフト・ダウン》を発動! デッキからカードを2枚ドロー!」

 

 フレア SPC:11→5 手札:0→2

 

 フレアは引いたカードを確認する。1枚はユニオンモンスター”アーマー・ブレイカー”、そしてもう1枚はクラッシュから渡された母の形見の1枚――――

 

「(……待ってたよ!) 永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《ドリル・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

 フレアの場に”ドリル・ウォリアー”が再び現れる。

 

 ATK:2400 レベル6

 

「ドリル・ウォリアーだぁ? 直接攻撃でも――――!?」

 

 この瞬間、フレアの頭上にカードのソリッドビジョンが5枚表示される。

 

 表示されているカード

 ダンディライオン

 キーマウス

 X-セイバー ウェイン

 荒野の女戦士

 ギガストーン・オメガ

 

「今、私の墓地に存在する地属性モンスターは5体! この時、手札からこのモンスターを特殊召喚できる!」

 

 フレアがカードを場に出すと、突然地鳴りが起こる。

 

「な、何だ!? 何が出てくんだ!?」

 

「五つの叫びが木霊する時、大いなる大地が怒号を放つ! 生命を司る地霊の神よ! 今ここに姿を現せ! 《地霊神グランソイル》!」

 

 地鳴りがさらに大きくなると、天高くそびえ立つ、荘厳な鎧を身に纏った巨人がレーン外に現れる。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「う、う、うわぁ~!? ”地縛神”だぁ~!?」

 

「違うわ龍亞! 確かに似てるけど……このモンスターは違う……」

 

 龍可は巨人が漂わせている神聖な気を感じ取ると、不思議な安らぎを覚える。昔からこの巨人を知っていた様な、不思議な懐かしさ――――

 

『グランソイル……無事だったのですね……』

 

 その時、龍可の痣が疼き、光を放つ。それと同時に聞こえてきた声に振り向くと、そこにはエンシェント・フェアリー・ドラゴンが姿を現していた。側にはレグルスが控えている。

 

「エンシェント・フェアリー! あのモンスターを知ってるの?」

 

『あの者は四霊神の1体にして、ナスカの地で”地縛神”の封印を管理していた大地の精霊。”悪なる者の意思”との戦いに敗れ、消息を絶っていたのです……』

 

『グランソイルは地に属する精霊達の偉大なる神にして、最大の戦士。戦いによって大きく”力”を消耗なされているが……よくぞ……よくぞご無事で!』

 

 レグルスがグランソイルに対して深く頭を下げると、2体は同時に姿を消した。あまり長く姿を現していると龍可に負担を掛けてしまうからである。

 

「(そんな精霊がフレアさんに……やっぱり、フレアさんって凄い)」

 

 龍可が疾走しているフレアへ敬意の眼差しを向けている中、クロウはそびえ立つグランソイルを見上げていた。

 

「(おいおいおい! 何だこいつは! ”地縛神”かよ!? ……だが攻撃力は2800。シルバー・ウィンドを倒すにゃ足りねーな)」

 

「グランソイルの効果発動! 特殊召喚に成功した時、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択し、自分の場に特殊召喚できる! 私はクロウの墓地から《BF-アーマード・ウィング》を特殊召喚する! ……母なる大地に眠りし者よ、今再び生命を与えん! 蘇れ! 〈グランド・リライブ〉!」

 

 グランソイルが光り輝く右掌をフレア達が走るレーンに向けると、破壊され墓地に送られたはずのアーマード・ウィングが地面を割って現れる。

 アーマード・ウィングはグランソイルに礼を示すと、フレアの場に付いた。

 

 ATK:2500 レベル7

 

「ア、アーマード・ウィング!? ……最上級モンスターをコスト無しで特殊召喚した挙句、”死者蘇生”のおまけ付きだぁ!? インチキ効果も――――」

 

「クロウ! ゴースト達はどんな手を使ってでも、私達のシンクロモンスターを奪いに来るよ! こんな風にね!」

 

「ぐ……だがどうする気だ? 俺のシルバー・ウィンドの攻撃力は2800。さらに1度だけだが戦闘破壊耐性付きだ。アーマード・ウィングを加えても、このターンで俺をぶち抜くにゃ力不足なんじゃねぇか?」

 

「ぶち抜くのはグランソイルでもアーマード・ウィングでもないよ。その為の武器を持ってるのはこっち! ユニオンモンスター《アーマー・ブレイカー》を召喚! そして《ドリル・ウォリアー》に装備!」

 

 フレアの場に”アーマー・ブレイカー”が現れるとハンマー形態に変形し、それをドリル・ウォリアーが手にする。

 

「アーマー・ブレイカーは戦士族モンスターに装備させることができるユニオンモンスター! そして装備モンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時、場のカードを1枚破壊できる」

 

「戦闘ダメージ……あ!?」

 

「ドリル・ウォリアーの効果発動! 攻撃力を半分にすることで、このターン相手に直接攻撃ができるようになる! バトル!」

 

 ATK:2400→1200

 

「ドリル・ウォリアーで直接攻撃! 【ドリル・シュート】!」

 

 ドリル・ウォリアーが右腕のドリルを射出すると、ドリルは一直線にクロウへと突き進む。

 

「チィ!」

 

 クロウはそれをかわすが、ドリルは地面に潜った後、地中の中で旋回し、死角から飛び出してクロウを襲う。

 

「ぐわぁ!?」

 

 クロウ LP:5150→3950

 

 クロウを貫いたドリルはそのまま飛び上がり、直線上に位置していたシルバー・ウィンドを貫こうとするが、シルバー・ウィンドは突風を起こしてドリルの動きを止める。

 

「アーマー・ブレイカーの効果発動! 《BF-孤高のシルバー・ウィンド》を破壊!」

 

 ドリル・ウォリアーが左手でハンマーを振り上げ、シルバー・ウィンドの前まで飛び上がると、全力でハンマーを振るい、先を相手に向けたまま止まっているドリルをシルバー・ウィンドの体に打ち込む。

 ドリルはシルバー・ウィンドの細い体を突き破り、上下真っ二つにして破壊してしまった。

 

「くっ! シルバー・ウィンドがぶち抜かれちまうなんて……」

 

「これで攻撃が通る! アーマード・ウィングで直接攻撃! 【ブラック・ハリケーン】!」

 

 アーマード・ウィングが拳に黒い風を纏わせると、持ち主であるクロウ相手に迷いの無い一撃をくらわせる。

 

「うおぉぉぉ!? ……ぐっ! 効いたぜ……さすがは俺のエース」

 

 クロウ LP:3950→1450

 

「これで最後! グランソイルで直接攻撃! 【天地雷鳴撃】!」

 

 グランソイルの頭上に雷雲が現れると、避雷針の様に尖ったグランソイルの両肩に無数の雷が落ち、そのエネルギーが銃口のようになっている指先に集められる。

 グランソイルはその指先をクロウに向けると、十本の指から一斉に光線を放った。

 

「ぐわぁぁぁ!」

 

 クロウ LP:1450→0

 

 決闘が終了し、ソリッドビジョンが消える。

 決闘に敗北したクロウのブラックバードは強制停止し、それに合わせてフレアもウィルダーネスを停止させた。

 

「マジかよ……あの状況から、このクロウ様が負けちまうなんて……」

 

「クロウ!」

 

 フレアはヘルメットを脱いでウィルダーネスから降り、クロウの元へと駆け寄った。クロウはそれを笑顔で迎える。

 

「おう、驚いたぜ。ここまで強い……いや、強くなってたなんてな。負けちまったが、楽しかったぜ」

 

 クロウもヘルメットを脱いで立ち上がると、フレアに右手を差し出す。フレアも右手を差し出し、握手を交わした。

 

「うん! 私も楽しかったよ! ありがとうクロウ!」

 

「うし、じゃあ皆のとこ戻るか!」

 

 クロウはそう言って再びヘルメットを被り、ブラックバードに跨る。フレアも同様にウィルダーネスに乗り込み、共に入口を目指してDホイールを走らせた。

 その道中、クロウは仲間達の決闘を振り返る。

 遊星とジャックの”セイヴァー・ドラゴン”、そしてフレアの”グランソイル”――――

 

「(BF達は最高の相棒だ。他に劣ってるとは思わねぇ。だから特訓ばかりしてりゃいいと思っていたが……ゴーストと戦って行くには”力”が必要なのかもしれねぇな。BFの新しい戦術……”切り札”が……)」

 

 そう考えたクロウの脳裏に、自分が尊敬していたBF使いの男と、その男の切り札である”黒羽のドラゴン”の姿が過ぎった。

 忘れはしない。親友がセキュリティに連れて行かれた”あの日”を思い出させる、3年半前の雨の日。自分達を苦しめていた悪人に決闘を挑んだ男とドラゴンの勇姿を――――

 

 

「(ピアスン……)」

 

 




相変わらずBFって難しいです。何度クロウが勝ってしまったか(汗)

原作で最初にエアトスの”精霊のオペラ”を見た時、ギャグかと思いました。ブレスかよ……

何かガ○シュ思い出しました(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。