「鬼柳!」
本拠地に戻ろうとするラモン・グループ。その最後尾をDホイールで走る鬼柳を追いついてきたフレアがヘルメットを脱ぎ、大声で呼び止める。
「……?」
「鬼柳! 待ってよ!」
鬼柳はDホイールを止めてフレアに振り向くが、鬼柳は眉を顰めるだけで言葉を返さない。どうやら、自分を呼び止めた少女がかつての仲間の一人であるフレアだと解っていないらしい。最後に逢ってから4年経っているので無理もないだろう。
「鬼柳!」
「鬼柳……」
やがて遊星とフリントが追いつき、フレアの横に並ぶ。
その二人を見た鬼柳は瞠目し、その後フレアに視線を移す。漸く自分を呼び止めた少女が誰なのか理解したようだ。
「鬼柳! どうして私達のところに戻って来てくれなかったの!? どうしてこんなところでこんな事してんの!? そんなところにいないでさ! こっちに来てよ! ……また皆で”サティスファクション”しようよぉ!」
フレアが泣きそうな表情で訴えるも鬼柳は逆に無表情なままで、フレアから視線を外すと前の集団を追ってDホイールを走らせる。
「鬼柳! どうしてフレアの声に答えてやらない! 鬼柳!」
遊星も必死に呼びかけるが、鬼柳が再び振り向くことは無かった。鬼柳の背中が遠くに消えて行く。
「鬼柳……鬼柳?」
フレア達が呆然としていると、ラモン・グループのDホイールが引き返してくる。鬼柳だと思い、期待の眼差しを向けるフレアだったが、よく見ると戻ってきたDホイールは三台。その上には薄ら笑いを浮かべたラモンの手下達が乗っていた。
「やっぱりそうだ! クラッシュの孫娘だぜ! こんなとこにノコノコ現れやがった!」
「とっ捕まえてクラッシュの居場所を吐かせるぞ!」
「ヒヒヒヒヒ……!」
手下達はフレア目掛けてDホイールを走らせる。その瞬間、フリントの決闘銃から最大出力で撃ち出された
「ぐおお!? がぁ!? ……いててて……ハッ!?」
Dホイールから投げ出された手下の一人の頭にフリントの決闘銃が突きつけられる。出力は最大のままだ。
「……今、俺達の機嫌は最高に悪い。このまま大人しく変えるか、あのタイヤの様になるか、どっちか選べ」
「ひ、ひぃ~~~!? わ、悪かった! 帰る帰る! わぁ~~~!」
手下は這う様にフリントから距離を取った後、立ち上がって全速力で逃げて行く。残りの二人も怪我をした部位を庇いながら必死に後を追って行った。
フリント達三人は暫く無言でいると、丘の方からブロンソンとバーバラがこちらに向かって走ってきた。
「おー! 何で丘じゃなくてこんなとこにいんだ? まあいいや。俺は役に立てたか?」
「ああ……よくやってくれた」
「いいってことよ! それと、町の方も見てきたぜ。十字路にいた連中は全員マルコムとラモンの客だった。”夕日の決闘”で賭博やってんだとよ。胸糞悪いぜ! ……それよりももっと胸糞悪いのが、元々ここに住んでいた住人達に対する仕打ちだ! 町を見回ってきたが、いるのは老人と子供だけだった。男も女も、皆鉱山に連れて行かれちまった……!」
「そんな……!? ブロンソンさんニコは!? ウェストはカメラに映ったから分かるんだけど……」
「安心しろフレア、あの姉弟は無事だよ。ただ……セルジオさんが鉱山から戻ってきていない」
「そんな……セルジオさん……」
「フレア。ニコはお前の事、凄く心配していたぞ。今なら町に奴等はいない。逢いに行ってやれ」
「うん……」
フレアはウィルダーネスに跨り、ヘルメットを被ってから全速力でクラッシュタウンへと向かう。
「くっ……鉱夫達だけではなく、町の人達まで! ……バーバラ、君は大丈夫だったのか?」
憤慨していた遊星はふと疑問に思ってバーバラに尋ねた。男達だけでなく女達も連れて行かれたのなら、町の一般人であるバーバラも例外なく連れて行かれるのではないか。
「私には身を守る”武器”があったから……何時の日か刺激を求めて、フレアの様に旅立とうとこつこつ溜めていた結構な額の貯金と……これでお願いして、ここで花屋を続けさせて貰ったのよ」
「……成る程」
バーバラは両手を後頭部に回してポーズを取る。それを見た遊星は納得したように頷いた。
「遊星、話がある。……新しい策を考えた」
ラモンの手下を退けてからずっと無言だったフリントが遊星に声を掛ける。
「新しい……それは、鬼柳を救い出す策か?」
遊星の眼には強い意志が現れている。鬼柳が自らの意思でラモンの下にいようと、自分達の声が届かなかろうと、遊星は絶対に鬼柳を連れ出すつもりである。生き返った大事な友を、こんなところで再び死なせる訳にはいかない。
「ああ……新しいと言っても、やる事は同じだ。聞いてくれ」
フリントは遊星達に新しく考えた単純かつ大胆な策を話す。話し終わった後、ブロンソンは飛び上がって驚き、遊星は考える様に目を閉じて静かに腕を組む。
「正気かフリント!? 信じられねぇ……ほ、本当にやるのか?」
「……思い切ったな、フリント」
「ああ……これが一番手っ取り早く鬼柳を奪還できる方法だ。……本当はジャック達を待ちたいところだが、その間に鬼柳が敗北してしまう可能性がある。俺達とて安全ではないしな。……だから今夜決行する。……ブロンソン、すまないが俺のDホイールを目立たないところに隠しておいてくれ」
そう言ってフリントが早速目的地へ向かおうとすると、遊星が肩を掴んでフリントを引き止める。
「フリント、待ってくれ! ……その作戦、俺にやらせてくれないか?」
* * *
その頃、ウィルダーネスを外の目立たない場所に隠し、ユニフォームから何時ものカウガール・スタイルに着替えたフレアは北地区を目指して走っていた。既に辺りは暗いが、夜空に輝く月と星達のおかげで暗闇に困ることはなかった。
「(やっぱりこっちではこの服の方が落ち着くなぁ)」
フレアが目指しているのはセルジオの家。ブロンソンの言葉が本当なら、そこにニコとウェストがセルジオの帰りを祈りながら待っているはずである。
「ニコー! ウェストー!」
フレアが外から呼びかけると、ニコがランタンを持って顔を出す。
「フレア! ブロンソンさんから聞いていたわ! 本当に無事でよかった……」
「ニコも無事でよかったよ! ウェストは?」
「! そうだったわ! フレア! 途中でウェストに会わなかった?」
「え? 見てないけど……一体どうしたの!?」
もしや先程決闘を観戦していた時、誰かに連れ去られてしまったのではないか――――フレアがそう思った時、ニコが顔を明るくして叫んだ。
「ウェスト! 何処に行ってたの!?」
フレアがニコの声と同時に振り向くと、ウェストがこちらへ歩いて来るのが見えた。心なしか、少し元気が無い。
「あ……姉ちゃん、に……フレア!? 無事だったんだね!」
「ウェスト! 久しぶり! ……でも、ニコに心配掛けさせたのは良くないよ? こんな時間に何処行ってたの?」
「あ……えと……”鬼柳兄ちゃん”のところに……」
「鬼柳!? ラモンのところ!? 何でそんな場所に一人で行ったの!?」
フレアがウェストの両肩を掴む。本当にそうなら、少しキツめに叱らなければならない。
「ち、違うよ!? ラモンのところじゃない! 鬼柳兄ちゃんは何時も南の丘でハーモニカ吹いてるんだ。そこへ行ったんだよ……」
「南の……」
そう呟いてウェストから手を離し、フレアは南へ駆け出そうとする。
「も、もう帰っちゃったよ! だから僕も帰ってきたんだ……」
「……そう。……ウェスト、鬼柳と何か話した? 聞かせてくれる?」
「う、うん……」
…
……
…………
………………
……………………
南の丘、満天の星空の下で、ハーモニカの音色が寂しく響く。
丘の上に座り、ハーモニカを吹いていた鬼柳は来客に気付くと演奏を止め、静かに振り向く。
「……またお前か」
「へへ! 凄かったよ鬼柳の兄ちゃん!」
来客――――ウェストは笑顔を浮かべると、鬼柳の隣に腰掛ける。
「流石は”サティスファクション”のリーダーだ!」
「やめろ」
触れられたくない事だからか、鬼柳は無表情ながらもはっきりとした口調でそう言い放つが、ウェストは気にも掛けずに話を続ける。
「僕もさ、鬼柳の兄ちゃんの様に強い決闘者になって、山に行った父ちゃんを連れ戻すんだ!」
「諦めろ。山に行った者は、二度と戻ることはできない……」
「そんなことないさ! 兄ちゃんの様に強くなったら――――」
「決闘は何もしてくれない」
鬼柳は無表情のままで、無情にも少年の希望を否定し続ける。だがウェストは折れない。
「あ、そうだ! 今日はちゃんと持ってきたんだ! ほらこれ見てよ! フレアから貰ったんだ!」
ウェストが取り出したのは、4年前にフレアから貰った”チーム・サティスファクションのサインカード”。ウェストはずっと大事にしてきたのか、傷も汚れもまったく無い。鬼柳が書いた大きな”満足”の二文字も色褪せることなく黒々としている。
「僕ね、中々上手くいかなかったり、失敗しちゃった時は何時もこのサインを見るんだ! これを見てると、凄く元気とやる気が出てくるんだ! こんなところで諦めて堪るか! 絶対に”満足”するんだ、ってね! だから――――」
「ウェスト」
ウェストの話が終わらないうちに、鬼柳は立ち上がって背を向けてしまう。
「お前の姉さん……そして、フレアと一緒にこの町を出ろ。……決闘に取り憑かれないうちに……」
……………………
………………
…………
……
…
「……私とは、喋ろうともしなかったくせに……」
悔しそうな表情で俯くフレア。あの時鬼柳が自分の言葉に対して何も答えてくれなかったことと、昔はあんなに大事にしていた”決闘の可能性”を否定したことによる二重の悔しさがフレアの中で渦巻く。
「……ニコ、ウェスト。今日は二人の家に泊まっていいかな? 何だか、凄く疲れちゃった……」
「うん……私達も寂しかったから、歓迎するわ。ウェスト、家に入るわよ」
「う、うん……(フレア……鬼柳兄ちゃんと何があったんだろう?)」
* * *
「チキショォーーーー!」
クラッシュタウンから離れた位置にある、元はクラッシュの別荘であり、今はマルコム・ファミリーの本拠地となっている豪邸。そこの中庭で酒をあおりながら喚くマルコムの姿があった。
「よくも! こんなにも俺様をコケにしやがって……あのラモンの野郎がぁ~!」
最初はラモン・グループを押していたマルコム・ファミリーであったが、ラモンの下に鬼柳がやってきてからは1勝もできず、現在50連敗中。これだけ惨敗しているのなら、荒れるのも無理は無い。
「どいつもこいつも役立たずばっかりじゃねーか!」
果てには酒瓶を振り回し、周りで心配そうにしている手下達に当り散らす。
「大体”ロットン”の奴は何してんだ! この”計画”を立てたのはあいつなんだぞ! 最初は上手くいったが、今はこのザマだ! 何時になったら帰ってくんだ!」
「驚きましたよね……4年くらい前に修行に出たロットンさんから急に手紙が来て――――」
兄貴、まーだラモンと爺とグダグダやってんのか? 俺に良い考えがある。まずはラモンの奴に頭下げてでも協力を要請してくれ。一時的でいい。それでまずは爺をぶっ潰せ。狙うのはダインの納品日かつ、”フリント”の糞野郎がいない時だ。それでラモンと領地を二分しろ。……後は俺が帰ったら何とかしてやる。天下取らせてやるよ。
「――――何て書いてあって。凄い自信でしたよね。ロットンさん」
「昔はスゲー頼りになったから、この手紙来た時はスゲーテンション上がったもんだ。ロットンさんの言葉を信じて、俺達もメチャクチャ張り切ってクラッシュんとこ攻めたよなぁ」
「でもクラッシュの奴等、人数少ないくせにメチャクチャ強くてよ。正直駄目かと思ったぜ。はは! 何だかもうあの日が懐かしく――――」
「喧しい!」
過去の話で盛り上がる手下達を一喝するマルコム。昔は上手くいっても、今の危機を乗り越えなければ何の意味も無い。
「チキショー……はぁ~~~……うちにも鬼柳の様な”助っ人”がいれば――――」
「ならば雇ってみるか? その”助っ人”を……」
「!?」
突然中庭の入口から声が聞こえて来る。マルコム達が一斉に声の方向へと振り向くと、そこにはカウボーイ・ハットとマントを身に付けた青年が立っていた。ここにいる手下達の中には彼に痛めつけられた者も多いだろう。実際に小さく悲鳴を上げた者もいた。
「て、テメェは”フリント”!? ……クラッシュに頼まれて俺の
「違うな。俺は俺を売り込みに来たんだ。どうだ? 俺を”助っ人”として雇わないか?」
「馬鹿を言うな! クラッシュの用心棒だったテメェなんぞ信じられるか!」
「(俺は”クラッシュの”用心棒ではないが……こいつ等から見れば同じか)」
「馬鹿正直に正面から来たのが運の尽きよ! ここですっ捕らえてクラッシュの居場所を吐かせてやる! (そしてクラッシュを人質に奴のファミリーを吸収して戦力にしてやる!) セルーガ!」
マルコムが命令すると、マルコム・ファミリーの”仮”のNo.2であるセルーガが部下を二人引き連れ、フリントの正面に立つ。
「おいセルーガ! シーゲル戦といい、襲撃戦といい、腑抜けた決闘ばかり見せやがって……テメェはロットンが戻り次第に降格させることに決まりきってるが、これ以上俺を失望させれば……解ってんだろうな?」
「……解ってます、ボス……(こっちは三人……大丈夫だ! 勝てる!)」
「(一度、見せ付けてやる必要があるな……) いいだろう。三人纏めて相手してやる。来い!」
フリントとセルーガ達は決闘銃を決闘盤に変形させ、装着する。
「「「「デュエル!!!」」」」
フリントとセルーガ達の、バトルロイヤル形式による決闘が始まる。先攻はフリント。
「俺のターン!」
フリント 手札:5→6
「モンスターをセット! カードを3枚伏せ、ターンエンド!」
LP:4000
手札:2
モンスター
・セット
魔法・罠
・セット
・セット
・セット
「俺のターン!」
セルーガ 手札:5→6
「《アチャチャアーチャー》を召喚!」
セルーガの場に弓を持った戦士が現れる。
ATK:1200 レベル3
「アチャチャアーチャーの効果発動! 召喚・反転召喚に成功した時、相手に500ポイントのダメージを与える!」
アチャチャアーチャーは矢を取り出し、鏃に火を点火させると熱がりながらフリントに向けて矢を放つ。
「く……!」
フリント LP:4000→3500
「ジェンマ! ミネギシ!」
「「合点だ! 手札から《アチャチャチャンバラー》の効果発動! ダメージを与える魔法・罠・モンスター効果が発動した時、このカードを手札から特殊召喚し、相手に400ポイントのダメージを与える!」」
セルーガの部下達の場に刀と脇差を手に持った武者が現れると、フリントに向かって跳びかかり、斬りつけてから場に戻っていく。
ATK:1400 レベル3
ATK:1400 レベル3
「ぐあ……くっ!」
フリント LP:3500→3100→2700
「バトルロイヤルルールでは全員1ターン目には攻撃できない! カードを伏せてターンエンドだ!」
LP:4000
手札:4
モンスター
・アチャチャアーチャー
魔法・罠
・セット
「成る程……連携してのバーン戦術か。だがセルーガよ、お前は”サイレント・ソードマン”の使い手と聞いていたが?」
「ッ……! ……勝つ為には、拘ってはいられん! ジェンマ!」
「合点! 俺のターン!」
ジェンマ 手札:4→5
「アチャチャチャンバラーをリリース! デュアルモンスター《灼熱王パイロン》をアドバンス召喚!」
アチャチャチャンバラーが光の中に消えると、その光の中から炎の体を持つ男が現れる。
ATK:1500 レベル5
「魔法カード《二重召喚》を発動! これでもう一度通常召喚ができる! この通常召喚権を使い、《灼熱王パイロン》をデュアル召喚! これで効果モンスターとなるぜ!」
パイロンが再度召喚されると、パイロンの肩に同じく炎でできたマントが掛けられ、王の名に相応しい風貌となった。
「パイロンの効果発動! 1ターンに一度、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
パイロンが両手を掲げて二つの炎弾を作り出すと、それをフリントに向けて放つ。
「ぐう……!?」
フリント LP:2700→1700
「カードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
手札:2
モンスター
・灼熱王パイロン
魔法・罠
・セット
「俺のターン!」
ミネギシ 手札:4→5
その後、ミネギシはジェンマとまったく同じ手を使い、フリントにダメージを与える。
「またか……」
フリント LP:1700→700
「ターンエンド!」
LP:4000
手札:2
モンスター
・灼熱王パイロン
魔法・罠
・セット
多人数を利用したバーン戦術でフリントを追い詰めるセルーガ達。セルーガの手札にも”灼熱王パイロン”と”二重召喚”があり、さらに彼等の場には”リビングデッドの呼び声”が1枚ずつ伏せられている。フリントが彼等のモンスターを全て破壊しても次のターンのダメージは防げ無いだろう。
フリントに残されたのは僅か1ターンのみであった。
「やるな……だがその程度の”火力”では俺を倒せはしない! 俺のターン!」
フリント 手札:2→3
「永続魔法《ブレイズ・キャノン》を発動! これを墓地に送り、永続魔法《ブレイズ・キャノン-トライデント》を発動! そしてこれも墓地へ送り……現れよ! 《ヴォルカニック・デビル》!」
フリントの場を砕き、地面の下から切り札である”ヴォルカニック・デビル”が現れる。
ATK:3000 レベル8
「さらにリバースモンスター《チュウボーン》を反転召喚! 効果により、相手の場にチュウボーンJr.トークンを3体、守備表示で特殊召喚する! お前の場に特殊召喚!」
フリントの場にセットされていたカードから骨の鼠、”チュウボーン”が現れる。
そのチュウボーンが現れてからフリントがジェンマを指名すると、ジェンマの場に小さいチュウボーンが3体現れた。
チュウボーン ATK:300 レベル3
チュウボーンJr.トークン DEF:300 レベル1
チュウボーンJr.トークン DEF:300 レベル1
チュウボーンJr.トークン DEF:300 レベル1
「さらにチュウボーンをリリースし、罠カード《ナイトメア・デーモンズ》を発動! 相手の場にナイトメア・デーモン・トークンを3体、攻撃表示で特殊召喚する! 今度はお前の場だ!」
チュウボーンが消滅すると、今度はミネギシの場におどけた影の様な悪魔が3体現れる。
ATK:2000 レベル6
「な、何だ……? 何故ジェンマとミネギシの場にモンスターを……?」
「バトル! ヴォルカニック・デビルでアチャチャアーチャーを攻撃! 【ヴォルカニック・キャノン】!」
ヴォルカニック・デビルがアチャチャアーチャーに火炎岩を放つと、アチャチャアーチャーは熱がる間もなく押し潰されて破壊される。
「ぐあぁ!?」
セルーガ LP:4000→2200
「ヴォルカニック・デビルの効果発動! 戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、 相手の場のモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×500ポイントダメージを相手に与える!」
「何だと!? まさかジェンマとミネギシの場にモンスターを並べたのは……!?」
「この為だ! 〈ヴォルカニック・チェーン〉!」
ヴォルカニック・デビルが咆哮を上げると、ジェンマとミネギシの場から火柱が上がり、全てのモンスターを焼き払う。
「うわぁぁぁ!?」
ジェンマ LP:4000→2000
「ぎゃあああ!?」
ミネギシ LP:4000→2000→0
炎を受けたジェンマは膝をつき、ミネギシはその場に仰向けになって倒れる。
「ジェンマ!? ミネギシ!? ……破壊されたモンスターの数は同じなのに、ダメージ量が違う!? どういうことだ!?」
「そこのミネギシという男の場にいたナイトメア・デーモン・トークンは破壊された時、コントローラーに800ポイントのダメージを与える。合計2400の追加ダメージ……それにより奴のLPが尽きた」
フリントは倒れているミネギシを一瞥すると、今度は膝をついているジェンマに眼を向け、止めを刺すために罠を発動させる。
「……罠カード《破壊神の系譜》を発動! 相手の場に守備表示で存在するモンスターを破壊したターン、自分の場のレベル8モンスター1体は2回攻撃を行うことができる! 行け! ヴォルカニック・デビル!」
興奮した様子のヴォルカニック・デビルがジェンマに跳びかかり、その大きな腕で殴りつける。
「ぐああああ!?」
ジェンマ LP:2000→0
「あ……ああ……」
「セルーガよ、一つ言っておく。……己を捨てた決闘に、先は無いぞ」
「己を……俺を……」
セルーガは自分の腰に提げているデッキケースに目を落とす。その中にはマルコム・ファミリーのNo.2になり、落ちぶれるまでずっと使ってきた”サイレント・ソードマン”のデッキがあった。
「罠カード《火霊術-「紅」》を発動! 炎属性を1体リリースし、相手にその攻撃力分のダメージを与える!」
ヴォルカニック・デビルが燃え盛る強大な炎へと姿を変え、セルーガに向かって襲い掛かる。
「うわぁぁぁ!?」
セルーガ LP:2200→0
ソリッド・ビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。
マルコム・ファミリーのバーン連携を打ち破り、フリントが勝利を掴んだ。
「(己を捨てた決闘に、先は無い……鬼柳もそうだ。捨てようとしている……己自身と、俺達との”絆”を)」
「ワ、ワンターン・スリーキルゥ……くそ! テメェ等! 行け!」
マルコムが残りの部下に命令するが、全員尻込みして動かない。
「くそ! どいつもこいつも――――」
「マルコム、俺は雇われにきたんだ。戦う為じゃない。話を聞いてもらおうか」
そう言いながら、フリントは決闘盤から戻した決闘銃をマルコム達に向ける。
「いッ!? な、何だ!?」
マルコムが漸く言葉を聞く気になると、フリントは決闘銃を収める。
「結論から言えば、クラッシュ・ファミリーは再起不能だ。構成員の殆どは捕らえられ、クラッシュは弱り切り、次のボスは碌な経験もないストークだ。生還できた連中の士気も低い。とてもじゃないがマルコム・ラモン両陣営の相手にならない。……だが、俺はクラッシュ・ファミリーに恩がある。潰させたくは無い。そこでだ――――」
フリントは不敵な笑みを浮かべると、再び決闘銃を抜き、変形させて腕に装着する。
「お前達は鬼柳という男に困っているのだろう? その鬼柳、俺が決闘で倒してやろう。報酬はクラッシュ・ファミリーとその関係者の身の安全の保障……どうだ?」
「な、何だと!?」
「ボス! こいつはいいですぜ! たったそれだけの条件でこんな強い奴雇えるなら――――」
「馬鹿! こいつが誰だか解ってんのか! クラッシュの用心棒だぞ! 騙すに決まってる!」
マルコムの手下達がフリントを迎えるか、迎えないかで二つに分かれる。マルコム本人は腕を組んで悩みを見せていた。
「マルコム、この話は前にラモンにも持ちかけた。”マルコムを潰すのを手伝うから、こちらの安全を保障してくれ”、とな」
「な、何ィ!?」
「だがラモンには既に鬼柳がいたせいで、まったく話にならない。それどころか、クラッシュの身内が奴等に襲われそうになった。奴等は信頼できない。だから奴等の一部を叩きのめし、こちらへ話を持ってきた」
この話は半分嘘で半分真実。話は持ちかけていないが、実際にフレアが襲われかけ、フリントがラモンの手下を叩きのめして追い返している。
「嘘をつくんじゃねぇ! きっとラモン達と手を組んで俺達を中から潰す気ですぜ!」
反対派の手下がそう言った時、外に出ていたマルコム・ファミリーの一人が中庭に入り、マルコムに何かを耳打ちする。それを聞いた瞬間、マルコムは急ににやけた面で揉み手をし、フリントに近づいた。
「いやぁ~先生! 任せてください! あの憎たらしい鬼柳を何とかしてくださるなら、クラッシュ・ファミリーのことは保障しましょう!」
「ボ、ボス!? 何故……」
「今見回りから連絡が来た。どうやら今の話は本当らしい。ラモンのとこの奴等がこのフリント先生とクラッシュの孫娘……先生が言っていた身内のことだな。叩きのめされたことへの報復の為に探し回ってんだとよ」
その言葉を聞いて反対派の手下達は大人しくなる。まだ疑いはあるが、話していた事が真実だと思われる事と、ラモンと敵対しているという事で、雇っても問題ないと判断したのだろう。マルコムも同じ考えであった。
「(まだちょいと怪しいところはあるが……あの”舞台”で決闘するならわざと負けようだなんて思わねぇだろう。……あの強さ、利用しない手はねぇ!)」
「漸く話がついたな。……さて、先程は俺が鬼柳を倒すと言ったが、実は俺以上の適任者がいてな。そいつを推薦しよう。……遊星!」
フリントが呼びかけると、建物の影からポンチョを着てクラッシュタウンらしい格好になった遊星が姿を現した。
「な、何ですかいあいつは……」
「奴の名は不動 遊星。俺をも倒す、旅の決闘者だ」
「な、何だって!? 先生よりも強いと!?」
「ああ。さらに鬼柳が使う”ハンドレス・コンボ”にも詳しい。……奴なら間違いなく鬼柳を倒すことができるだろう。どうだ?」
「ええ勿論! まったく異論はありませんぜ!」
マルコムは腰を低くして遊星に近づく。
「あのフリント先生にそこまで言わせるなら間違いねぇ! お願いしますぜ!」
「ああ……だが俺はレアだぜ? ……報酬は高いぞ」
こうしてフリントの力添えにより、遊星はマルコム・ファミリーの助っ人となった。勿論マルコムに天下を取らせたくてやっているのではなく、鬼柳を救う為である。
遊星とフリントは自らの命を賭け、鬼柳救出作戦を始動させたのであった。
バトルロイヤルルールに関してですが、効果の判定で”おかしくね?””ご都合だな”と思われるところがあるかもしれませんが、まあそこはこの小説でのルールだと思ってください(汗)