遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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第2章 サテライト
第4話 鉄砲玉


サテライト  港

 

「う~ん……やっと自由だね! ワクワクしちゃう!」

 

「……そんなに喜ぶ様な所には見えないが」

 

ネオ童実野シティと海峡で隔てられた最下層地域”サテライト”。

フレアとフリントはそのサテライトに来ていた。

 

始まりは数日前、クラッシュ・タウン名産の鉱物”ダイン”の商談がシティの会社と成立し、クラッシュ自らがシティへと向かう事となった。

それを聞いたフレアが同行を願い出るが―――

 

「一度シティの味を占めちまうと帰れなくなるぞ。 ガキの内に行くべき場所じゃねぇな」

 

そう言ってクラッシュは許可しない。

実はこれは建前であり、本当の理由は別にある。

サテライト住民がシティへ渡る事は禁止されており、クラッシュ・タウンの住民も”サテライト側”に町があるというだけで同じ扱いを受けている。

それはクラッシュとて変わりはない。

つまり、クラッシュはシティへと密入するつもりなのだ。

勿論この商談も、その相手も、全うなものではない。

 

「流石にそんな目的の旅に孫は連れてけねぇな」

 

後にフリントが聞いた話である。

 

一度は祖父の言う事を聞いて引き下がったフレアだが、その好奇心を押さえ切る事が出来なかった。

その翌日、再びクラッシュに頼み込むとクラッシュはフレアにある”妥協”を持ち込む。

 

「サテライトならどうだ? 途中で降ろして、帰りに迎えに来るからよ」

 

これにフレアは喜んで承諾、旅行なら何処でもよかったようだ。

兄のストークはこれに反対するが、フレアの必死な説得とクラッシュの”そろそろ外の世界を見させてやらないか”という言葉に折れ、フリントを同行させる事を条件に承諾した。

 

さらにその翌日、クラッシュ・タウンを出発したフレアとフリントは、クラッシュに連れられてサテライトの港へと向かい、シティへ出発したクラッシュを見送って今に至る。

 

「(俺はそんなに信頼されているのか?)」

 

フリントは周りを見渡す。

フリントの予想ではクラッシュがフレアの安全の為何人か見張りを置いていくと読んでいたが、幾ら気を配っても誰一人見張りを感じない。

気配を消すのが上手い者なのかもしれないが、フリントが知る限りそこまでの者はクラッシュ・ファミリーにはいない。

 

「(本当に俺一人か……フレアに何かあったらどうするつもりだ?)」

 

「ねぇフリント! 何処行こうか?」

 

「見回るような所があるのか…………何か来るぞ!」

 

フリントは歩き出そうとするフレアを自分の側に引き寄せ、前方の道を睨む。

聞こえてくるのは小さな足音。

 

「(…子供か?)」

 

前から走ってきたのは小さい少女。

なにやら必死な様子で走っており、何度も後ろを振り返っていた。

 

「あれ? どうしたんだろあの子? 迷子かな?」

 

フレアとフリントがその少女を眺めていると、少女がこちらに気付く。

少女はフレア達の前に走り寄ると、息を整え、声を掛ける。

 

「あなた達、ちょっとお尋ねするですの」

 

「え!?」

 

少女の思わぬ口調にフレアは思わずたじろぐ。

見栄を張った喋り方だが、何処か”子供らしさ”を感じさせる。

 

「”クロウ兄ちゃん”を見ませんでした?」

 

「ク、クロウ兄ちゃん? あなたのお兄ちゃん? 誰だろう…?」

 

フレアはフリントに顔を向けるが、フリントにも分かるはずもなく、首を横に振る。

 

「え……知らないですの? ほら、オレンジ色のツンツン頭ですの……クロウ兄ちゃんは有名人だって言ってたのに……」

 

「分かんないなぁ……迷子になっちゃったの? よかったらお姉ちゃん達が一緒に探してあげようか?」

 

フレアが微笑みながらそう言うと、少女は頬を膨らませて答える。

 

「私じゃありませんですの! 迷子はクロウ兄ちゃんですの!」

 

フレアは迷子でおませな少女、”リリ”から迷子になった経緯を聞き出す。

つい先程、その”クロウ兄ちゃん”と他の子供達と共に買い物へ出かけた時の事、突然ガラの悪い集団に因縁をつけられたらしく、その集団から逃げている最中にはぐれてしまったらしい。

 

「……その集団がお見えになったようだ」

 

フリントの言葉にフレアとリリが振り向くと、フリントはリリが向かって来た方角を睨む様に見ている。

その方角から数十人の男が走って来た。

 

「見つけたぞ! ”鉄砲玉のクロウ”と一緒にいたガキだ!」

 

「な、何あなた達!?」

 

リリの前にフレアが、その前にフリントが立ち塞がる。

その男達は全員岩の様にゴツイ体格をしており、先頭の男がフリントを睨みつける。

 

「おい兄ちゃん、痛い目に遭いたくなければ後ろのガキを渡しな」

 

「断る、何故お前達はこの子を追い回す」

 

フリントの言葉に男達は下品な笑いを洩らす。

 

「おいテメェ、俺達がデュエル・ギャングチーム”ゴーレム”だと知って立てついてんのか?」

 

「知らないな、俺達は……お前達に用は無ければ興味も無い!」

 

フリントが突然決闘銃を抜き放って引鉄を引くと、カードは発射されず、凄まじい発砲音だけが鳴る。

 

「うおお!!?」

 

チーム”ゴーレム”のメンバー達はフリントが本当に発砲したのだと思い込み、腰を抜かす。

その隙にフリントはリリを担ぎ上げ、フレアの背を軽く叩いてから走り出した。

発砲音に驚いて呆然としていたフレアは、背を叩かれて我に戻ると慌てて走り出し、フリントを追いかける。

 

「何今の!? びっくりした~!」

 

「……無法地帯に行くんだ、準備しておいて損は無い」

 

チーム・ゴーレムは今のが発砲音だけのものと気付くと、慌てて3人を追いかける。

 

「逃がすな! あのガキは便利な人質だ! 追え!」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「はぁ……はぁ……しつこい~!」

 

もうどれ位走ったのか、フレアは脚を休ませる為に物陰へ隠れる。

フレアは息を整えながら、チーム”ゴーレム”への怒りをにする。

 

「もう! やんなっちゃう! ねえフリント、いっその事逃げるの止めてやっつけちゃおうよ。 私とフリントなら大丈―――」

 

フレアが後ろに振り向くが、フリントとリリの姿は見当たらない。

慌てて辺りを見渡すも、この場にいるのは自分だけ。

 

「……ウソーーー!? フリントまで迷子!?」

 

「おい! こっちから声が聞こえたぞ!」

 

「!? ヤバ…!」

 

フレアは動揺する心を抑え、ふと思う。

フリントに出来るなら自分にも―――

 

「私だって…! そうよ! 私がやっつけてやる!」

 

フレアは勇ましく物陰から飛び出す―――が。

 

「(あれ? さっきの奴等じゃない……)」

 

「ああ? 何だこのガキ?」

 

「見慣れねぇ変な格好しやがって」

 

フレアはその男達を見る。

相手の数は4人、そしてその男達の姿を見てフレアは込み上げてくる笑いを抑える事が出来なかった。

 

「……ぷぷぷ……アハハハハ!!! 何その格好~!」

 

「テ、テメェ! 俺達チーム”マジシャンズ・フォー”の神聖なユニフォームを笑いやがったな!」

 

フレアが笑うのも無理は無い。

その男達は西洋の物語に出てくるようなマントと服装をしており、中心に立つリーダーらしき男に至っては魔導師の様なローブを被っている。

 

「ガキだからってゆるさねぇぞ! 覚悟しろ!」

 

男達がフレアに迫ろうとすると、フレアは一歩飛び退き、決闘銃を抜き放つ。

笑いを浮かべていたフレアの顔は、男達の顔を見た瞬間、真剣な顔付きへと変わっていた。

その男達の顔に刻まれていた印―――――マーカー。

犯罪を犯したものに付けられる前科の証である。

 

「来なさい悪党! 私がやっつけてやるんだから!」

 

そう言ってフレアは腕に決闘銃を装着するが―――――

 

「あ、あれ?」

 

装着はされたが決闘盤に変形しない。

本来は装着された瞬間に決闘盤へと変形する仕組みとなっているのだが、フレアの決闘盤は何も反応を見せない。

一度取り外してまた装着させても結果は同じ。

 

「……ウソーーー!!? こんな時に故障!?」

 

フレアは恐る恐る前の4人を見ると、薄ら笑いを浮かべてフレアににじり寄ってきている。

 

「……イヤーーー!!!」

 

フレアは決闘銃をガンベルトに収め、一目散に逃げ出した。

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「「「くそっ! 覚えていろよ!」」」

 

チーム”ゴーレム”の最後の3人が捨て台詞を吐いて逃げ出していく。

 

「ふう……これで全部か」

 

「お、お強いですのね……」

 

フレアとはぐれた後、リリを狙ってきていたチーム”ゴーレム”は全員でフリント達を追ってきた。

フリントは高所を陣取り、チーム・ゴーレムを狙撃。

ある者の決闘盤を破壊し、ある者には掠らせる程度に狙って牽制する。

恐れをなした数十人は逃げ出し、それでも向かって来た3人は決闘で返り討ちにした。

 

「(こんなに(カード)を撃つ事になるとは思わなかったな……備えが無ければ危うく決闘も出来なくなるところだった……”備えあれば憂い無し”、心に刻んでおこう……)」

 

フリントは用意していた弾丸用の白紙のカードを、拾えるだけ拾いながらそう思った。

 

「さて……新しい迷子を捜しに行くとしよう。 無事だといいんだが―――」

 

「リリ!? 無事か!?」

 

突然後方から声が上がる。

フリント達が振り向くと、そこには袖の無いジャケットを羽織り、オレンジ色の髪を逆立てた少年が立っていた。

歳は15、6と言ったところ、腕には決闘盤、そして額には前科の証、マーカーが付けられている。

 

「うわ~~~ん!!! クロウ兄ちゃ~~ん!!!」

 

もはやませる余裕もないのか、リリは大声で泣きながらクロウに抱きつき、クロウは一度リリを抱き上げてから下ろすと、リリの頭を撫でる。

 

「心配したぞこいつ~! 大丈夫か? 怪我は無ぇか?」

 

「ぶぇーーーん!!! あの人が……あの人がぁーーー!!!」

 

リリが離れた位置にいるフリントを指差すと、クロウは険しい顔でフリントを睨みつける。

 

「あいつか! 見慣れねぇ奴だが……そうか! テメェがゴーレムの新しい頭だな! ゆるさねぇ!」

 

「!? おい待て―――――」

 

フリントの言葉よりも速く、クロウは長いワイヤーで出来た手錠をフリントに向けて投げつける。

動揺していたフリントはこれを避けられず、腕に装着したままだった決闘盤に手錠を取り付けられてしまう。

クロウは不敵な笑みを浮かべながら自分の決闘盤に反対側の手錠をつけた。

 

「その手錠は俺のダチが作った特製の拘束装置だ! 決闘に勝たなきゃはずれねぇぜ! そして負けた方の決闘盤が破壊される! 覚悟しな!」

 

「待て! 俺の話を聞け! …リリ!」

 

フリントはリリに誤解を解いてもらおうとするが、本人は泣きっぱなしでとても話せる状態ではない。

下手をすればフリントの声も届いていないかもしれない。

 

「ごちゃごちゃ抜かすんじゃねぇ! 行くぞ―――」

 

「くっ……! (やるしかないか……)」

 

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

 

誤解から始まったフリントとクロウの決闘。

通常の方式では決闘盤がランダムで先攻を選ぶ。

決闘盤が選んだ先攻はフリント。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

フリント 手札:5→6

 

「(言っても聞かないのなら、決闘で解らせてやろう……) 《ヴォルカニック・ロケット》を召喚! その効果によりデッキから《ブレイズ・キャノン》を手札に」

 

フリントの場にヴォルカニック・ロケットが現れ、炎を噴射させて舞い上がると、デッキからカードが1枚選び出され、それをフリントが手札に加える。

 

ATK:1900

 

フリント 手札:5→6

 

「カードを2枚伏せてターンエンド」

 

LP:4000

手札:4

モンスター

・ヴォルカニック・ロケット

魔法・罠

・セット

・セット

 

「へっ! 怪しい格好しやがって! リリを誘拐して何するつもりだったんだよこの変質者野郎!」

 

「……そんなものを額に付けているお前に言われたくはないな」

 

フリントはクロウの額の大きなM字マーカーを見る。

クラッシュ・タウンでは”マーカー付き”など珍しくもないが、ここまで個性的なものは中々見れない。

だが大きく目立つという事は、それだけ要注意人物だという証である。

このクロウという少年は過去に何をやらかしたのであろうか。

 

「言ってくれるじゃねーか……見せてやる! この”鉄砲玉のクロウ”様の決闘をな! 俺のターン! ドロー!」

 

クロウ 手札:5→6

 

「《BF(ブラックフェザー)-暁のシロッコ》を召喚!」

 

黒い旋風を巻き起こし、同じく黒い羽を撒き散らしながら現れたのは1体の鳥人。

鳥と人の特徴を併せ持ったそのモンスターはフリントを睨みつけると、黒い翼を大きく広げて構える。

 

ATK:2000

 

「レベル5のモンスターだと…!」

 

「こいつは相手の場にのみモンスターがいる場合、リリース無しで召喚できる! そしてこいつ等は場に《BF》がいる時、手札から特殊召喚出来る! 来い! 《BF-疾風のゲイル》! 《BF-黒槍のブラスト》!」

 

続けてクロウの場に現れたのは大きく眼を見開いた鳥獣に、黒い大槍を持った鳥人。

ゲイルはその大きな眼を、ブラストは奥に隠れる鋭い眼光をフリントに向ける。

 

BF-疾風のゲイル  ATK:1300

BF-黒槍のブラスト ATK:1700

 

「一度に3体…!」

 

フリントが驚いている間にも、クロウはさらに手札からカードを取り出して発動する。

そのカードは本来ありえない紫のフレーム―――――

 

「発破点火オーライ! 手札から罠カード《デルタ・クロウ-アンチ・リバース》を発動だ!」

 

「手札から罠…!?」

 

「こいつはBFが場に3体いる時、手札から発動出来る罠カード! 相手のセットされた魔法・罠を全て破壊する!」

 

クロウの場にいる3体のBFから光が放たれ、フリントの場にセットされたカードを1枚吹き飛ばす。

 

破壊されたカード

・魔法の筒

 

「罠をチェーン発動! 《ライジング・エナジー》! 手札を1枚捨てる事で場のモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時まで1500ポイントアップする! 俺は《ヴォルカニック・ロケット》を選択!」

 

ライジング・エナジーの力を受けたヴォルカニック・ロケットは、全身からオーラを噴出させながら縦横無尽に飛びまわる。

 

ATK:1900→3400

 

捨てたカード

・ヴォルカニック・リボルバー

 

フリントはフリーチェーンのカードを発動させ、無駄になる事を防ぐ。

さらにクロウのモンスター達の攻撃力を大きく上回り、クロウの勢いを止める―――が、この”鉄砲玉”はそんな事で止められる様な代物ではなかった。

 

「随分と強化したようだが……そんなんで俺の攻撃はかわせねぇぜ! 疾風のゲイル効果発動!」

 

ゲイルがヴォルカニック・ロケットに向かって突風を起こすと、ヴォルカニック・ロケットを覆っていたオーラを掻き消されてしまう。

 

「ゲイルは1ターンに一度、相手モンスターの攻守を半分に出来る!」

 

「何だと…!?」

 

ヴォルカニック・ロケット ATK:3400→1700

 

「さあ、ぶち抜いてやるぜ! バトル!  暁のシロッコでヴォルカニック・ロケットを攻撃! 【ダークウィングスラッシュ】!」

 

シロッコが鋭利な黒羽をヴォルカニック・ロケットに向かって大量に飛ばすと、ヴォルカニック・ロケットは無残にも切り刻まれて破壊されてしまう。

 

「く…!」

 

フリント LP:4000→3700

 

「疾風のゲイル! 黒槍のブラスト! やっちまえ!」

 

続けてゲイルとブラストがフリントに向かって突撃する。

 

「ぐあぁ!!!……くっ!」

 

フリント LP:3700→700

 

”鉄砲玉のクロウ”、チーム・ゴーレムが人質をとってまで倒そうとした男。

まったく読めなかったその強さに、フリントは驚きを隠せない。

だがそれだけフリントは自分の中で”闘志”が沸き起こるのを感じる。

 

「カードを伏せてターンエンド! どうだ! ぶち抜かれた気分はよ!」

 

LP:4000

手札:1

モンスター

・BF-暁のシロッコ

・BF-疾風のゲイル

・BF-黒槍のブラスト

魔法・罠

・セット

 

「……随分と鳥目な”鉄砲玉”だ……俺の”心臓”を撃ち抜き損ねるとはな。  …今度はこちらの番だ、俺のターン、ドロー!」

 

フリント 手札:3→4

 

「(へっ! 来るなら来やがれ! 俺の伏せカードは”緊急同調”だ! 攻撃して来たらいっちょ脅かして―――――)」

 

「永続魔法《ブレイズ・キャノン》を発動! 《BF-暁のシロッコ》を対象に効果を発動する!」

 

クロウが投げた手錠の拘束装置は普通、決闘盤に付けられたカードゾーンのプレートの付け根に手錠を掛ける。

だがフリントの決闘盤のプレートの付け根が太すぎた為、代わりにクロウは引っ掛かりそうなオプションパーツに手錠を掛けていた。

付け根に掛けられていては邪魔になるが、オプションパーツならば邪魔にはならない。

フリントは素早く決闘盤を決闘銃へと変形させる。

 

「な、何だ!? 何で決闘盤が銃に!?」

 

クラッシュ・タウンでは常識だが、外から見ればば非常識。

フリントの行動と見た事もない決闘盤にクロウが驚く。

 

「手札から攻撃力500以下の炎族モンスター《ヴォルカニック・バックショット》を墓地へ送り、選択した相手モンスターを破壊する。 そしてヴォルカニック・バックショットの効果発動! 墓地に送られた時、相手に500ポイントのダメージを与え、さらにそれがブレイズ・キャノンの効果により墓地に送られたのである場合、手札・デッキにあるもう2体の《ヴォルカニック・バックショット》を墓地に送る事で―――」

 

「あ~~~! 長ぇしややこしい! つまりどうなるんだよ! 結果だけ言いやがれ!」

 

「お前のモンスターを全て破壊し、1500ポイントのダメージを与える!」

 

「何じゃあそりゃあ~~~!?」

 

クロウの表情が驚愕に染まると、フリントは決闘銃に手札の1体、デッキの2体を墓地に装填し、クロウのBF達に1発ずつヴォルカニック・バックショットを放つ。

ヴォルカニック・バックショットが全弾命中すると、クロウの場は爆炎に包まれた。

 

「うおお!!!」

 

クロウ LP:4000→2500

 

火が消えた時、クロウの場のBFは1体も残ってはいなかった。

 

「くそ! 汚ねーぞ! インチキ効果もいい加減にしろ!」

 

「……お前に言われたくはない」

 

「クロウ兄ちゃんかっこ悪いですの~…」

 

見苦しくフリントを罵倒するクロウに、落ち着きを取り戻したリリが溜息をつく。

リリの言葉にビクリと反応して、ばつが悪そうな表情になる。

リリが泣き止んでいるのに気付いたフリントが、リリに誤解を解いてくれるように目配せを送るが、リリは笑いながら人差し指を口に当てる。

 

「(決闘に水を差すのはよくないですの、終わったらちゃんとクロウ兄ちゃんはお説教するから頑張るですの!)」

 

「(誤解を解くだけでいいんだがな……) モンスターをセット、カードを伏せてターンエンド」

 

LP:700

手札:0

モンスター

・セット

魔法・罠

・ブレイズ・キャノン

・セット

 

「……クロウ様ともあろう者が、油断しちまってたようだな。 …ここからが勝負だ! 俺のターン! ドロー!」

 

クロウ 手札:1→2

 

「《BF-極北のブリザード》を召喚!」

 

クロウの場に現れたのは、名前の割には黒羽が少なく、薄い水色の羽毛に覆われた鳥獣。

一旦空に飛びあがった後、クロウの決闘盤に止まる。

 

ATK:1300

 

「極北のブリザードの効果発動! 召喚に成功した時、墓地からレベル4以下のBFと名のついたモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚出来る! 墓地から《BF-黒槍のブラスト》を特殊召喚!」

 

ブリザードが2、3回クロウの決闘盤の墓地を嘴で突くと、墓地が発光し、その光の中からブラストが飛び出してくる。

 

DEF:800

 

「行くぜ! クロウ様の奥の手を見せてやる! レベル4《BF-黒槍のブラスト》に、レベル2《BF-極北のブリザード》をチューニング!」

 

ブリザードが自身を2つの光輪へと姿を変えると、ブラストを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「漆黒の力! 大いなる翼に宿りて、神風を巻きおこせ! シンクロ召喚! 吹きすさべ! 《BF-アームズ・ウィング》!」

 

光の柱から姿を現したのは、手に長い銃剣を持った黒い鳥人。

黒い羽を場に撒き散らすと、その手に持つ銃剣をフリントに向けて構える。

 

ATK:2300

 

「シンクロ召喚…!」

 

「どうだ! 今度こそ心臓をぶち抜いてやる! バトル!  アームズ・ウィングでセットモンスターを攻撃! 【ブラック・チャージ】!」

 

アームズ・ウィングが空高く舞い上がり、銃をセットモンスターに乱射しながら急降下する。

 

セットモンスター:チュウボーン DEF:300

 

「これで終わりだ! アームズ・ウィングは守備モンスターを攻撃するダメージステップの間、 攻撃力を500ポイントアップする! さらに貫通効果のおまけ付き! ぶち抜けーーー!!!」

 

ATK:2300→2800

 

「罠カード《ガード・ブロック》を発動! ダメージを0にし1枚ドロー!」

 

フリント 手札:0→1

 

アームズ・ウィングの乱射でセットモンスターは粉々に粉砕されるが、フリントにダメージが通る事はなかった。

 

「くっそ~! 何で通らねぇんだ! …うおっ!」

 

クロウは自分の場を見ると、何時の間にか小さな骨だけの鼠が3体居座っている事に気付く。

 

「チュウボーンのリバース効果、相手の場にチュウボーンJr.トークンを3体、守備表示で特殊召喚する」

 

DEF:300

DEF:300

DEF:300

 

「何じゃそりゃ!? 俺の場に出してどうすんだよ! …ターンエンド!」

 

LP:2500

手札:1

モンスター

・BF-アームズ・ウィング

・チュウボーンJr.トークン

・チュウボーンJr.トークン

・チュウボーンJr.トークン

魔法・罠

・セット(緊急同調)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

フリント 手札:1→2

 

「魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地からモンスターを5体デッキに戻しシャッフル、そして2枚ドローする!」

 

デッキに戻したカード

ヴォルカニック・バックショット

ヴォルカニック・バックショット

ヴォルカニック・バックショット

ヴォルカニック・ロケット

チュウボーン

 

フリント 手札:1→3

 

「(……来てくれたか)場の《ブレイズ・キャノン》を墓地に送り、永続魔法《ブレイズ・キャノン-トライデント》を発動! そして《ブレイズ・キャノン-トライデント》を墓地に送り―――」

 

フリントの場の地面が割れ、そこから炎が噴出すと中から獄炎を纏った悪魔が現れる。

 

「《ヴォルカニック・デビル》を特殊召喚!」

 

ヴォルカニック・デビルは全身から炎を噴出し、逞しい両腕と強靭な尾を地面に撃ち付けると、凄まじい咆哮を上げる。

 

ATK:3000

 

「ここで攻撃力3000だと!? ふざけんな!」

 

「こちらは大真面目だ。 バトル! ヴォルカニック・デビルでBF-アームズ・ウィングを攻撃! 【ヴォルカニック・キャノン】!」

 

ヴォルカニック・デビルが口から巨大な火炎岩をアームズ・ウィングに向かって放つ。

火炎岩がアームズ・ウィングに直撃すると、一瞬で燃え尽きてしまった。

 

「うおぉ!!!」

 

クロウ LP:2500→1800

 

「ヴォルカニック・デビルの効果発動! モンスターを戦闘破壊して墓地へ送った時、相手の場のモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×500ポイントのダメージを相手に与える! 【ヴォルカニック・チェーン】!」

 

ヴォルカニック・デビルが再び咆哮を上げると、クロウの場に3本の火柱が上がり、全てのチュウボーンJr.トークンを焼き尽くす。

 

「うおぉぉぉ!!! …これが狙いかよ! くそ!」

 

クロウ LP:1800→300

 

「カードを伏せてターンエンド」

 

LP:700

手札:0

モンスター

・ヴォルカニック・デビル

魔法・罠

・セット

 

「……なあ、テメェは一体何者だ? サテライトでこんなに強い奴は俺のダチ位しか知らねぇ…」

 

ようやく人の話を聞く気になったクロウ。

フリントとしても誤解を解いてしまいたいが、今はこの”熱”を持ったままクロウとの決着を付けたかった。

 

「……今は決闘をし、決着をつけよう。 …お前もそうしたいだろう?」

 

「……ハハッ! 違ぇねぇ! 俺のターン! ドロー!」

 

クロウ 手札:1→2

 

一気に追い詰められた窮地から形勢を逆転させたフリント。

彼はそれ程の実力を持った決闘者だが―――――クロウとて、その決闘者の一人である。

 

「魔法カード《死者蘇生》を発動! 墓地から《BF-アームズ・ウィング》を特殊召喚!」

 

クロウの場に再びアームズ・ウィングが現れる。

 

ATK:2300

 

「そしてこいつは自分の場にBFが表側表示で存在する場合、リリースなしで召喚する事が出来る! 来い! 《BF-漆黒のエルフェン》!」

 

続けて現れたのは、その名に相応しい黒羽を持った鳥人。

BFの中でも特に黒い翼を羽ばたかせ、ヴォルカニック・デビルに対して構える。

 

ATK:2200

 

「漆黒のエルフェンの効果発動! 召喚に成功した時、相手のモンスター1体の表示形式を変更出来る! 《ヴォルカニック・デビル》を守備表示に変更だ!」

 

エルフェンがヴォルカニック・デビルに向かって突風を起こすと、ヴォルカニック・デビルは風に耐える為に防御体勢をとる。

 

DEF:1800

 

「何だと…!?」

 

「この勝負もらった!  アームズ・ウィングで攻撃! 【ブラック・チャージ】!」

 

ATK:2300→2800

 

これが通れば合計1000ポイントの貫通ダメージ、フリントの敗北である。

この絶体絶命の状況で、フリントは悔しさと嬉しさが混ざった感情を抱いていた。

悔しさはこの決闘に勝てなかった事、そして嬉しさはクロウという優れた決闘者と、魂を揺さぶられる様な熱い決闘が出来た事への喜びである。

 

「……見事だクロウ、最後の最後で上を行かれてしまうとはな。 ……だが悪いな、これでも俺は”負けず嫌い”なんだ」

 

アームズ・ウィングの攻撃が届く前に、フリントは伏せていた罠を発動する。

 

「罠カード《破壊指輪(はかいリング)》を発動! 自分の場のモンスター1体を破壊し、お互いに1000ポイントのダメージを受ける!」

 

ヴォルカニック・デビルの上に小さい指輪が落ちると、フリントとクロウ、両者をも巻き込むほどの大爆発が起きる。

 

「な、何ぃぃぃ!!?」

 

「………」

 

フリント LP:700→0

クロウ  LP:300→0

 

ソリッド・ビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

フリントとクロウ、二人の決闘はフリントの自爆による引き分けに終わった。

お互いの決闘盤に掛けられた手錠が自動で外れる。

どちらも”負け”てはいないので、決闘盤が破壊される事はなかった。

 

「マジかよ……負けはしなかったとはいえ、この”鉄砲玉のクロウ様”が撃ち落されちまうなんてよ……」

 

「クロウ」

 

フリントが決闘銃を収めると、膝をついているクロウに近づき、手を差し伸べる。

 

「お前程の決闘者と決闘できてよかった……ありがとう。 次は勝たせて貰うぞ」

 

「……へっ! それはこっちの台詞だ!」

 

クロウは笑みを浮かべ、フリントの手を掴んで立ち上がると、そのまま握手を交わす。

ここでクロウが何かを思い出した様にハッとすると、手を離して一歩飛び退く。

 

「忘れるところだったぜ! おいテメェ! リリに一体何をするつもり―――」

 

「クロウ兄ちゃんのバカーーー!!!」

 

フリントに敵意を向けるクロウの横腹にリリの体当たりが炸裂する。

 

「うお! な、何すんだリリ!」

 

流石に体格差があるのでクロウはよろけた程度であったが、当たり所が悪かったのか、横腹を押さえて少し顔を顰めている。

 

「私を助けてくれた人にそんな態度は駄目ですの!」

 

「はあ?」

 

リリが今までの経緯を全てクロウに説明すると、クロウは驚いて跳びあがる。

 

「バッ…! お前! 何でもっと早く言わねぇんだよ! …す、すまねぇあんた! ガキ達の事になると頭に血が上っちまって……」

 

「いや、いい。 この事は決闘の礼という事でチャラにしよう」

 

フリントは微笑を浮かべてそう言うが、大事な家族を助けて貰っておきながら、その相手に喧嘩を売ったのだ。

クロウにとって、そうは行かない。

 

「それじゃ俺が納得いかねぇよ……そうだ! あんたの連れを探すの手伝ってやるよ! サテライトは俺の庭みてぇなもんだからな! このクロウ様は頼りになるぜ! 一旦リリを置いてきてからだが、どうだい……っと、そういや名前もまだ聞いてなかったな」

 

「俺はフリント、クラッシュ・タウンのフリントだ……よろしく頼む」

 

「クラッシュ・タウン……通りで聞いた事も無いはずだぜ。 …んじゃ、俺も改めて! 俺の名はクロウ! ”クロウ・ホーガン”! チーム”サティスファクション”の鉄砲玉だ! こっちこそよろしくな!」

 

クロウも笑顔を浮かべ、二人はもう一度握手を交わす。

ここでふと、フリントは頭に引っ掛かるものを感じる。

昔の記憶―――――とは違う、最近聞いたもの。

 

「(チーム”サティスファクション”……聞き覚えがある。 何処で聞いた?)」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「はあ……はあ……あ!?」

 

「見つけたぞ……ふっふっふ」

 

フリントがクロウと決闘を始める頃、こちらではフレアが港にあるコンテナ置き場の間を逃げ回っていた。

だが、コンテナで出来上がったT字路を南に曲がったところでチーム”マジシャンズ・フォー”のリーダーであるローブの男と鉢合わせてしまう。

西の先にはコンテナがあって行き止まり。

引き返せば、今度は自分を追ってきている他のメンバーと鉢合わせてしまう。

進退窮まったフレアは北側のコンテナに背をつける。

 

「さあ観念しろ……そして魔術の生贄となるのだ!」

 

訳の解らない事を言いながら近づいて来るローブの男。

フレアは座り込んで縮こまる。

恐怖と悔しさで、その目から涙が浮かんできた。

 

「(戦えればこんな奴……うう―――)」

 

 

 

フリントーーーーー!!!

 

 

 

最後の抵抗と言わんばかりに、フレアは大声でフリントの名を叫ぶ。

初めて会ったあの時の様に、カードが飛んで来ると願って。

 

「うお……でかい声を出しやがって! まずはその口を―――」

 

その瞬間、ローブの男の背中に何かが落ち、男は地面に倒れる。

 

「ぐえっ! な、なん……!? おい!」

 

男の上に落ちてきたのは、同じ様な格好をした太った男―――――つまり、チーム”マジシャンズ・フォー”のメンバー。

 

「まだここで群れてやがったのかマジシャン野郎」

 

突然、上から聞こえてきた声。

ローブの男が上に被さっているメンバーをどけ、フレアは涙を拭いて振り返り、それぞれ上を見上げると、フレアが背をつけているコンテナの上に男が立ち、下を見下ろしている。

水色の髪、額にバンダナ、袖の無いジャケット、そして腕には決闘盤。

そんな男を見たローブの男は、顔を恐怖で引きつらせている。

 

「…またこんな雑魚の相手をしなければならんとはな、魂に何一つ響かん……そうは思わんか? 遊星……」

 

「そうだな、こっちには一人いた。 …そこの2人と……ジャックの相手を合わせれば、これで全部だ」

 

次は西と東、背の高い金髪の男が西のコンテナの上から、奇抜な髪型をした冷静そうな男が東から、それぞれやって来る。

二人とも北の男と同様に袖の無いジャケットを羽織り、決闘盤を腕に装着している。

大人びて見えるが、この2人はまだ16と15の少年である。

 

「よージャックに遊星。 こっちも一人……で、こいつが最後だ」

 

北の男が笑みを浮かべてローブの男を見ると、ローブの男は後ずさりを始める。

 

「……だ、誰? あなた達……」

 

フレアが左右の二人を見た後、上にいる男を見上げる。

フレアに気付いた男はニッと笑うと、名乗りを上げた。

 

 

 

 

「チーム”サティスファクション”リーダー、”鬼柳 京介”……満足させてくれよ?」

 

 

 

 

 




今回からサテライト編に入ります。
いよいよ原作の主要キャラを書いていく訳ですが………大丈夫かな~(汗)
出来るだけイメージは崩さないで書いていきたいと思います(汗)
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