第45話 Dボード
「……また”シェリー・ルブラン”か」
「ああ……結局、俺達もシェリーも、何も掴む事はできなかったが」
ある日の昼下がり、フリント、遊星、そしてブルーノの三人はガレージ内で昨日の出来事について話し合っていた。
それは治安維持局本部で起こった事件。
遊星とブルーノの二人がブルーノの身元調査の途中結果を治安維持局へ聞きにいったその日、治安維持局の一部が爆破されて大騒ぎになった。
局内に爆弾がまだ仕掛けられている事を知った遊星とブルーノは急いで局内から避難しようとするが、その途中で遊星が警備員に扮したシェリーとその従者”ミゾグチ”を見つける。
出口とまったく逆方向へ行こうとする二人を遊星が引き止めると、この事件を引き起こしたのが彼女等だという事を明かされ、遊星は彼女を止める為にミゾグチとの決闘に挑んだ。
「まさか、カード1枚の為に治安維持局を爆破するとは……」
シェリーの目的は治安維持局ある”スーパーコンピューター”を使い、ある”カード”の解析を行うこと。その”カード”にはシェリーの両親を殺害した”イリアステル”についての手がかりがあるのだとシェリーは睨んでいるようだ。
遊星はミゾグチを打倒し、彼と共に急いでシェリーの元へ向かうと、シェリーは先にシェリーの元へと向かっていたブルーノと共にカードの解析を終えていた。
「コンピューターが出した結果は”ノーマルカード”……何も変哲も無い普通のカードだったそうだ」
「……だがそうではなかった、という事なんだな? 遊星……」
「ああ」
コンピューターに問題無しと告げられたその瞬間、”カード”が光だし、駆けつけた遊星をも巻き込んである”光景”を見せた。
「白い床と天井が何処までも続いてる、広い空間……僕達はそんな所に立ってて、”誰か”に見られるのを感じたんだ……」
「……それは?」
「分からないんだ……あれは、誰だったんだろうか……」
ブルーノは頭を抱え込む。結局、謎を解こうとして新たな謎を知ってしまったようだ。
「そうか……(”煉獄”では無さそうだな……流石に俺には関係無いだろうが、気になる……)」
「うーん……ま、悩んでても仕方ないよね! あれ? そういえばフリント、フレアは今日一緒じゃないのかい? ここ最近一緒にメンバー探ししてるようだけど……」
「もういいそうだ」
「もういいって……メンバーは見つかったのかい?」
「さあな、あいつのチームだ。メンバーについては全部あいつに任せている」
「(大丈夫かな……)」
* * *
「ヤッホー!!!」
「凄いねフレアさん。まだこれ発売したばかりなのに……」
「へっへー! 凄いだろ天兵! フレア姉ちゃんはDホイールに乗るのも上手いんだ!」
「何で龍亞が得意げなのよ……でも本当に凄いわフレアさん」
ここはトップスエリア。龍亞達が住む場所とは別の建物の屋上。かつてはキング時代のジャックが住んでいた豪邸の周りに作られた専用練習コースであり、現在は豪邸共々改築され、予約制の
そこでフレアがDボードでの見事な跳躍を見せ、それを見ていた双子とその友達である”早野 天兵”から拍手を受けていた。
「あの変な格好が秘訣だったりするの?」
「し、失礼よ天兵! フレアさんは真剣なんだから……」
「おーい! フレア姉ちゃーん!」
龍亞が呼びかけると、フレアはDボードで三人の側へと寄る。
「うん、いいねこれ! もっと早く発売してたら、もっと早くライディング・デュエルができたのになぁ~!」
フレアと天兵が持っているのは最近発売された”量産型Dボード”。遊星が龍亞に作った物のデータを海馬コーポレーションに売り込んだ事により、同社で製造・販売がされるようになったのである。
発売後は昔のフレアの様に16歳を待てない子供達を中心に大ヒット。ここの様な専用コースまで作られた程である。
「よーし、俺達もやろうぜ! 天兵! 俺とライディング・デュエルしようよ!」
「えっと……俺まだ乗れる様になったばかりだし……一回お手本がみたいな! だから今はパス!」
「えー……じゃあ――――」
龍亞はヘルメットを脱いで一息ついているフレアへ視線を向ける。
「(新しいRDデッキ……最初は天兵で調子を見ようと思ってたけど、クロウも倒しちゃうフレア姉ちゃんに通用すれば期待以上の出来だ! よーし!) フレア姉ちゃん! 俺とライディング・デュエルしようよ!」
「私? うんいいよ!」
フレアが快諾すると、二人はそれぞれ準備に取り掛かる。
決闘盤を展開させ、ケーブルでDボードに接続。お互いにDボードを横に並べて位置に付く。
「「《スピード・ワールド2》! セット!」」
お互いにスピード・ワールド2を発動させると、辺りがスピードの世界に支配される。
「手加減はしないよ!」
「へへ! そんな余裕は無いと思うよ! 俺の新しい”ディフォーマー”デッキの力、見せてやる! 行くよ! ライディング・デュエル――――」
「「 アクセラレーション!!! 」」
掛け声と同時にDボードを発進させる二人。
その頃、天兵と龍可はコースを見渡せる高台の上に移動していた。
「へぇ、龍亞新しいデッキ作ったんだ? まあディフォーマーと”パワー・ツール・ドラゴン”じゃやり難いもんな」
「ところがね、そこは変わってないらしいのよ」
「ええ!? それで戦えるのかな……ライディング・デュエルじゃ装備魔法は使えないのに」
「うーん……でも、大丈夫じゃないかしら? だって龍亞、一生懸命デッキ作ってたもの。それに相手はフレアさん。きっと、いい決闘が見られるわよ」
二人が話し込んでいる間にフレアが龍亞を大きく引き離し、第一コーナーを駆け抜ける。
「くっそー!」
「私のターン!」
フレア 手札:5→6
フレア SPC:0→1
龍亞 SPC:0→1
「モンスターをセット! カードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
SPC:1
手札:4
モンスター
・セット
魔法・罠
・セット
「俺のターン! ドロー! シャッキーン――――うわわ!?」
龍亞 手札:5→6
フレア SPC:1→2
龍亞 SPC:1→2
龍亞が何時ものノリでカードをドローすると、オーバーに振った腕のせいでバランスを崩し、危うく転倒しそうになる。
それを見た龍可は小さく悲鳴を上げた後、前に乗り出して叫ぶ。
「こら龍亞! 危ないでしょ! ちゃんとやりなさい!」
「わ、分かったよ~! ふう、気を取り直して……《
龍亞の場に巨大なビデオカメラが現れると、変形して人型のロボットとなる。これこそが龍亞が愛用する、表示形式によってその姿と能力を変える”ディフォーマーシリーズ”である。
ATK:1000 レベル4
「そして《Sp-サモン・スピーダー》を発動! 自分のSPCが2つ以上ある場合、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚できるぞ!」
「この瞬間、罠カード《アクセル・ゾーン》を発動! 相手がSpを発動した時、自分のSPCを6つ増やす!」
フレアが罠を発動させると、フレアのDボードがさらに速度を上げ、龍亞をさらに引き離す。
フレア SPC:2→8
「は、速くなった……(でも大丈夫だ。Spが無効になった訳じゃない! すぐに追いついてやるぞ!) 手札からチューナーモンスター《ヴァイロン・ステラ》を特殊召喚!」
続けて龍亞の場に機械の様な星の形をした天使が現れる。
ATK:1400 レベル3
「あれ!? あんなチューナー龍亞のデッキじゃ見たことないぞ!?」
「もしかしたら、あのモンスターが龍亞のデッキの”キーカード”なのかもしれないわね」
観客の二人の様に、フレアも”ヴァイロン・ステラ”を見据える。
「(あれ……似たようなの、何処かで見たような……)」
フレアは自身の記憶を辿る。4年前、クラッシュタウン、赤いスカーフを巻いた男、そして”ヴァイロン”――――
「レベル4《D・ビデオン》に、レベル3《ヴァイロン・ステラ》をチューニング!」
ヴァイロン・ステラが自身を3つの光輪へと変え、ビデオンを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。
「世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング! シンクロ召喚! 愛と正義の使者! 《パワー・ツール・ドラゴン》!」
光の柱から現れたのは様々なツールが装備されたドラゴンを模したロボット。 尻尾にスコップ、右腕にはパワーショベル、左腕には巨大なマイナスドライバーがモーター音を鳴らしてドリルの様に回転している。
黄色のカラーリングや武器には見えない様な武装など、容姿を見ると”戦闘機械”と言うよりもまるで”玩具”のようであった。
ATK:2300 レベル7
「ジャジャーン! パワー・ツール・ドラゴンの登場だぁー! そして墓地に送られたヴァイロン・ステラの効果発動! モンスターゾーン上から墓地へ送られた場合、LPを500支払って自分の場のモンスターに装備できるよ! 《パワー・ツール・ドラゴン》に装備! ガッシーン!」
龍亞 LP:4000→3500
場に現れたパワー・ツール・ドラゴンが光に包まれる。
「そうか! 装備カード扱いになっているモンスターは”装備魔法”扱いになるんだ! これならパワー・ツールの能力を活かせる! 考えたじゃないか龍亞!」
「(成る程、ライセンス試験でのフレアさんの戦術を参考にしたのね。龍亞、ちゃんと勉強してるじゃない)」
「行っくぞぉ! パワー・ツール・ドラゴンでセットモンスターを攻撃! 【クラフティ・ブレイク】!」
パワー・ツール・ドラゴンが右腕のパワーショベルを振り上げ、セットモンスター”マインモール”に向かって振り下ろす。
DEF:1200
「マイン・モールは1ターンに一度、戦闘では破壊されない!」
「そうはいかないんだなぁー! 装備カードになってるヴァイロン・ステラの効果発動! 装備モンスターと戦闘を行った相手モンスターを、そのダメージステップ終了時に破壊する!」
「!?」
マイン・モールは迫り来るパワー・ツール・ドラゴンに何か特殊な”力”を感じると、つるはしで空間に穴を開け、その中へと逃げ込んでしまう。
「むむ……マイン・モールは相手のカード効果によって場から離れた場合、ゲームから除外されるよ」
「よし! カードを伏せてターンエンド!」
LP:3500
SPC:2
手札:2
モンスター
・パワー・ツール・ドラゴン
魔法・罠
・ヴァイロン・ステラ(パワー・ツール・ドラゴン)
・セット
「やるね龍亞君! 私のターン!」
フレア 手札:4→5
フレア SPC:8→9
龍亞 SPC:2→3
「SPCを4つ取り除き、《Sp-エンジェル・バトン》を発動! デッキから2枚ドローし、手札から1枚を墓地に送る!」
フレア SPC:9→5 手札:4→6→5
「墓地に送った《ダンディライオン》の効果発動! 自分の場に綿毛トークンを2体生成!」
フレアの場に綿毛のトークンが2体現れる。
DEF:0 レベル1
DEF:0 レベル1
「手札から獣族1体を墓地へ送り、手札からチューナーモンスター《虚栄の大猿》を特殊召喚!」
墓地へ送ったカード
巨大ネズミ
続けて”虚栄の大猿”が場に現れ、その大きな影でパワー・ツール・ドラゴンを威嚇する。
ATK:1200 レベル5
「レベル1《綿毛トークン》2体に、レベル5《虚栄の大猿》をチューニング!」
虚栄の大猿が自身を5つの光輪へと変え、綿毛トークン達を囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風を切り裂き、地平の彼方に蹄を穿て! シンクロ召喚! 轟け! 《ボルテック・バイコーン》!」
光の柱から現れたのは”ボルテック・バイコーン”。場に降りると雷鳴を轟かせながらフレアの横を並走する。
ATK:2500 レベル7
「シ、シンクロモンスター!?」
「さらにチューナーモンスター《キーマウス》を通常召喚!」
フレアの場に”キーマウス”が現れ、疾走しているボルテック・バイコーンの背に乗る。
ATK:100 レベル1
「レベル7《ボルテック・バイコーン》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」
キーマウスが首輪の錠に自分の尻尾を差込んで開錠させると、姿を1つの光輪に変え、その光輪はボルテック・バイコーンを囲み、7つの光、そして光の柱へと変えていく。
「荒野を駆ける雷よ! 常闇を貫き、閃光の如く大地を駆け抜けよ! シンクロ召喚! 照らせ! 《ライトニング・トライコーン》!」
光の柱から現れたのは”ライトニング・トライコーン”。場に降りると体から電気を放電させながらフレアの横を並走する。
ATK:2800 レベル8
「またシンクロ召喚!?」
「バトル! ライトニング・トライコーンでパワー・ツール・ドラゴンを攻撃! 【ギガボルト・チャージ】!」
ライトニング・トライコーンは角に電気を集中させると反転し、パワー・ツール・ドラゴンに向かって突撃する。
「わわわ!? パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! このカードが破壊される場合、代わりに装備している装備魔法1枚を墓地に送ることができる! 装備している《ヴァイロン・ステラ》を墓地へ――――うわぁ!?」
パワー・ツール・ドラゴンが左腕のドライバーでライトニング・トライコーンの角を受け止めると、角から発した電撃の余波が龍亞を襲う。
龍亞 LP:3500→3000
「これで装備魔法は無くなったね! 私はカードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
SPC:5
手札:1
モンスター
・ライトニング・トライコーン
魔法・罠
・セット
「(むむむ……押せてると思ったのに、しかもダメージ受けてるの俺だけじゃん! 何とかしないと) 俺のターン!」
龍亞 手札:2→3
フレア SPC:5→6
龍亞 SPC:3→4
「(よし!) チューナーモンスター《ヴァイロン・プリズム》を召喚!」
龍亞の場にマルコムの手下も使っていたヴァイロンのチューナーモンスター”ヴァイロン・プリズム”が現れる。
ATK:1500 レベル4
「《Sp-ハイスピード・クラッシュ》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、自分の場のカードを含めて、合計2枚の場のカードを破壊できる! 破壊するのは俺の場の《ヴァイロン・プリズム》とフレア姉ちゃんの《ライトニング・トライコーン》だ! 行っけぇー!」
ヴァイロン・プリズムが龍亞の場から飛び出すと、ライトニング・トライコーンに向かって激突し、お互いに破壊される。
「へっへー! LPを500支払って、ヴァイロン・プリズムの効果発動!」
龍亞 LP:3000→2500
「その効果にチェーンして、ライトニング・トライコーンの効果発動! 相手によって破壊された場合、自分の墓地のサンダー・ユニコーンかボルテック・バイコーンを1体特殊できる! 《ボルテック・バイコーン》を守備表示で特殊召喚!」
フレアの場に再び現れる”ボルテック・バイコーン”。これで龍亞の突破を防いだように見えたが、実はそうではない。フレアはそれを分かっている為、ボルテック・バイコーンを守備表示で特殊召喚したのである。
DEF:2000 レベル7
「(守備表示……ちぇ! これじゃダメージが通らないよ) ステラと同じ様に、モンスターゾーン上から墓地へ送られた場合、LPを500支払って自分の場のモンスターに装備できるよ! 《パワー・ツール・ドラゴン》に装備! ヴァイロン・プリズムを装備したモンスターはダメージステップの間だけ攻撃力が1000ポイントアップするよ! ジャジャーン!」
ステラの時と同じ様にパワー・ツール・ドラゴンの体が光に包まれた後、体中に電気が走り始める。
「バトル! パワー・ツール・ドラゴンでボルテック・バイコーンを攻撃! 【サンダー・クラフティ・ブレイク】!」
ATK:2300→3300
パワー・ツール・ドラゴンがボルテック・バイコーンに向かってパワーショベルを撃ち付けた瞬間、一瞬だけ眩い閃光が辺りを照らし、フレア達の眼を眩ませる。
閃光が収まりフレア達が眼を開けると、場からボルテック・バイコーンの姿が消えていた。
「(ボルテック・バイコーンまで……) ボルテック・バイコーンの効果発動! 相手によって破壊された場合、お互いのプレイヤーはデッキトップからカードを7枚墓地へ送る!」
「7枚も!? まあいいけどさ……」
フレアと龍亞はお互いにデッキからカードを墓地へ送る。
「これでターンエンド!」
LP:2500
SPC:4
手札:1
モンスター
・パワー・ツール・ドラゴン
魔法・罠
・セット
・ヴァイロン・プリズム(パワー・ツール・ドラゴン)
「やるなぁ今日の龍亞。LP差はまだあるけど、フレアさんを押し返したよ」
「私も驚いちゃった。もしかしたら、もしかするかも……調子に乗らなきゃね」
龍亞の奮戦に驚く二人であったが、龍可の予想通り、龍亞は自分のデッキを見ながら顔を綻ばせていた。
「(装備魔法が使えないのに、やるじゃんか俺のデッキ! これで装備魔法が使えたら敵なんていないんじゃないかなぁ~? あれ? つまり……俺スタンディングはもっと強い!?)」
「こら龍亞君! 油断が顔に出てるぞ! 私はそう簡単に勝てる相手じゃありませんからね! 私のターン!」
フレア 手札:1→2
フレア SPC:6→7
龍亞 SPC:4→5
「永続罠《リミット・リバース》を発動! 墓地から攻撃力1000以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚! 来て! 《キーマウス》!」
フレアの場に再び”キーマウス”が現れる。
ATK:100 レベル1
「そして《ウェポンサモナー》を通常召喚!」
続けてフレアの場に現れたのは”ウェポン・サモナー”。場に降りるとフレアの方へ向き直り、礼を示す。
ATK:1600 レベル4
「(あ! あのモンスター精霊だわ……それも結構”力”のある)」
「? どうしたの龍可?」
これ程の精霊がフレアの近くにいたというのに、今まで感じることができなかったことを不思議に思う龍可。
それもそのはず、彼は今までカードから出ず、人前に姿を現したことが無かったのである。
『お久しぶりです、
「(本当よ……こっちに来てから一度も出て来なかったけど、どうして?)」
『”戦士達”の話し相手になっていました。”魂”となり、武器に宿った”彼等”の相手をできるのは、私だけですから……』
「(! そっか……ありがとうウェポン・サモナー! これからもよろしくね!)」
『了解しました。……今の私の役目は”同調”ですね?』
「(うん! 頼んだよ!) レベル4《ウェポン・サモナー》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」
キーマウスが首輪の錠に自分の尻尾を差込んで開錠させると、姿を1つの光輪に変え、その光輪はウェポン・サモナーを囲み、4つの光、そして光の柱へと変えていく。
「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風と交わりて、彼方へ続く地平を駆けよ! シンクロ召喚! 嘶け! 《サンダー・ユニコーン》!」
光の柱から現れたのは”サンダー・ユニコーン”。場に降りるとその鋭い角で風を裂く様に走り出す。
ATK:2200 レベル5
「ま、またシンクロモンスター!? でもその攻撃力じゃパワー・ツールは倒せないぞ!」
「分かってるよ! だから倒せるようにするの! 墓地の《レベル・スティーラー》の効果発動! 自分の場に存在するレベル5以上のモンスターのレベルを一つ下げることで墓地から特殊召喚!」
サンダー・ユニコーン レベル5→4
サンダー・ユニコーンの体を突き抜けて現れたのは巨大なテントウ虫”レベル・スティーラー”。ボルテック・バイコーンの効果で墓地に送られていたカードの中の1枚である。
DEF:0 レベル1
「サンダー・ユニコーンの効果発動! 1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に相手の場の表側表示で存在するモンスター1体を選択! 選択したモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時まで、自分の場に存在するモンスターの数×500ポイントダウンさせる! 〈サンダー・スクレイプ〉!」
サンダー・ユニコーンがパワー・ツール・ドラゴンに向かって電撃を浴びせると、パワー・ツール・ドラゴンは体から火花を散らし、煙を発し始める。
ATK:2300→1300
「パ、パワー・ツール・ドラゴン!? でもまだヴァイロン・プリズムの効果が――――」
「問題無し! バトル! サンダー・ユニコーンでパワー・ツール・ドラゴンを攻撃!」
サンダー・ユニコーンは角に電気を集中させると反転し、パワー・ツール・ドラゴンに向かって突進する。
「返り討ちだパワー・ツール・ドラゴン! 行けぇ!」
ATK:1300→2300
「ダメージステップ時! 墓地から罠カード《スキル・サクセサー》を発動! このカードを除外することで、自分のモンスター1体の攻撃力を800ポイントアップ! 【サンダー・スピアー】!」
ATK:2200→3000
パワー・ツール・ドラゴンがパワーショベルで迎撃するが、サンダー・ユニコーンはそれをかわし、さらに輝きを増した角をパワー・ツール・ドラゴンに突き立てる。
「えええ~!? パ、パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 装備魔法を墓地に送ってパワー・ツール・ドラゴンの破壊を無効――――わぁあ!?」
角がパワー・ツール・ドラゴンの体を貫く事は無かったが、ライトニング・トライコーンとのぶつかり合いの時のように発生した電撃の余波が龍亞を襲う。
龍亞 LP:2500→1800
「カードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
SPC:7
手札:0
モンスター
・サンダー・ユニコーン
・レベル・スティーラー
魔法・罠
・リミット・リバース
・セット
「う~ん……また押し返されちゃった。龍亞も押し返しはするけど、”追い詰める”まで行ってないし……やっぱりDホイーラー相手は厳しいのかな」
「でも天兵、龍亞の顔見てみて。まだ諦めた顔じゃないわ。むしろ、眼が覚めた見たいね」
龍可が指差す龍亞の表情は真剣そのもの。攻撃によって崩れた体勢を冷静に直そうとする彼の姿は、先程までニヤケながら妄想していた少年とは別人のようである。
「……ほんとだ。何時もなら焦ってたり暗い表情だったりするのに」
「多分、フレアさんのおかげよ。諦められない、負けたくない、そんな風に思わせてくれる一進一退の決闘をフレアさんがしてくれているから、龍亞は立ち上がれるの。やっぱり凄いわ、フレアさん」
「へぇ~成る程……」
天兵が意外そうな視線をフレアに向けると同時に、龍亞も体勢を立て直し、デッキに指を掛ける。
「俺のターン!」
龍亞 手札:1→2
フレア SPC:7→8
龍亞 SPC:5→6
「(忘れてたよ……相手はクロウやアキ姉ちゃんにも並ぶフレア姉ちゃんなんだ! ……大丈夫さ! ここまでやれたんだ! カードを信じればきっと勝てる!) 行くぞ! 《D・モバホン》を召喚!」
龍亞の場に巨大な携帯電話が現れると、変形して人型のロボットとなる。
ATK:100 レベル1
「モバホンの効果発動! モバホンが攻撃表示の時、ダイヤルで止まった数字分のカードをデッキからめくり、その中にレベル4以下のディフォーマーがあれば1体だけ特殊召喚ができる! 〈ダイヤル・オン〉!」
龍亞の掛け声と同時に、モバホンの胸のパネルがランダムに点滅し始める。やがて点滅が止まると、”5”と書かれたパネルのみが光っていた。
「やった”5”だ! これだけあれば!」
龍亞は自分のデッキトップから5枚めくると、その中から1枚を取り出して決闘盤に置く。
「チューナーモンスター《D・スコープン》を特殊召喚!」
龍亞の場に巨大な顕微鏡が現れると、変形して人型のロボットとなる。
ATK:800 レベル3
「レベル1《D・モバホン》に、レベル3《D・スコープン》をチューニング!」
スコープンが自身を3つの光輪へと変え、モバホンを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。
「来い! パワー・ツール・ドラゴンの最強装備! シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》!」
光の柱から現れたのは巨大な腕”アームズ・エイド”。遊星も使用する、強力な攻撃サポートモンスターである。
ATK:1800 レベル4
「(!? これ遊星も使ってた――――)」
「(遊星が薦めてくれたこいつなら!)」
* * *
「遊星! こういう戦術がしたいんだけど、何かいいカード無いかな?」
「ふふっ……”アームズ・エイド”なんてどうだ?」
* * *
「行くぞ! アームズ・エイドの効果発動! 1ターンに一度、場のモンスター1体に装備できる! 《パワー・ツール・ドラゴン》に装備! このカードを装備したモンスターは攻撃力が1000ポイントアップするぞ!」
「(いけない!) 墓地から《プリベントマト》の効果をチェーン発動! 除外することでこのターン自分が受ける効果ダメージを0にできる!」
フレアが墓地からプリベントマトを取り除くと同時に、パワー・ツール・ドラゴンの左腕からドライバーが取り外され、代わりにアームズ・エイドが取り付けられる。
ATK:2300→3300
「(アームズ・エイドの効果がばれてる!? でも――――) バトル! パワー・ツール・ドラゴンでサンダー・ユニコーンを攻撃! 【パワーギア・ブレイク】!」
パワー・ツール・ドラゴンがサンダー・ユニコーンに向かってアームズ・エイドの拳を突き出す。
「これで決着だ! SPCを6つ取り除き、速攻魔法《Sp-リミッター解除》を発動! 俺の場の機械族の攻撃力を2倍にする! これでパワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は2倍だ!」
龍亞 SPC:6→0
ATK:3300→6600
龍亞がリミッターを解除した瞬間、パワー・ツール・ドラゴンの眼が赤く光り、アームズ・エイドから巨大な光の腕が放たれる。
放たれた光の腕はサンダー・ユニコーンを包み込み、握りつぶそうと指を曲げる。
「!? 負けない! 罠カード《シンクロ・ストライク》! シンクロ召喚したモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時までシンクロ素材の数×500ポイントアップ! サンダー・ユニコーンのシンクロ素材は2体! よって1000ポイントアップ!」
ATK:2200→3200
サンダー・ユニコーンは最期までもがき続けたが、あえなくも光の腕によって握りつぶされ、消滅する。
「きゃあああ!?」
フレア LP:4000→600
アームズ・エイドは装備モンスターが相手のモンスターを戦闘破壊した時、その破壊した攻撃力分の効果ダメージを与える能力を持ち、その効果を”プリベントマト”で防いだフレアであったが、予想していなかった戦闘大ダメージによってバランスを崩し、大きく後退する。
その隙を見て龍亞がフレアを追い抜いた。
「倒せなかった!? だけど追い越したぞ! カードを伏せてターンエンド! この時、リミッター解除の効果を受けた機械族は破壊されるけど、パワー・ツール・ドラゴンはそれを無効にできる!」
パワー・ツール・ドラゴンが機体をクールダウンさせると、左腕のアームズ・エイドが粉々に砕け散る。
ATK:6600→2300
LP:1800
SPC:0
手札:0
モンスター
・パワー・ツール・ドラゴン
魔法・罠
・セット
「……凄いよ龍亞君! こんなにライディング・デュエルが強いなんて! これでもし龍亞君が大人だったら絶対チームにスカウトするのになぁ~」
「え!? 本当!? いやぁ、ははは!」
龍亞が照れた様に笑うと、同時にフレアも不敵な笑みを浮かべる。
「でも、勝つのは私! 私のターン!」
フレア 手札:0→1
フレア SPC:8→9
龍亞 SPC:0→1
「……よし! 《スピード・ワールド2》の効果発動! SPCを7つ取り除き、手札にあるSpを1枚見せることでカードを1枚ドローする!」
見せたカード
Sp-貪欲な壺
フレア SPC:9→2 手札:1→2
「そしてSPCを2つ取り除き、《Sp-貪欲な壺》を発動! 墓地からモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! そして2枚ドロー!」
戻したカード
サンダー・ユニコーン
ボルテック・バイコーン
ライトニング・トライコーン
ダンディライオン
巨大ネズミ
フレア SPC:2→0 手札:1→3
「勝負よ龍亞君! 手札から《星見獣ガリス》の効果発動! デッキトップのカードを墓地へ送り、そのカードがモンスターだった場合、そのモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手に与え このカードを特殊召喚する! モンスター以外の場合、このカードを破壊する! デッキトップのカードは――――レベル3の《星見鳥ラリス》! よって600ダメージを与え、ガリスを特殊召喚!」
フレアがカードを掲げると、空から3つの流星が龍亞に向かって飛び、体を掠めて地面に突き刺さる。
「うわぁ!? 危ない!?」
龍亞 LP:1800→1200
龍亞は何とかバランスを保ち、一息ついて後ろの空を見上げると、そこには星を落とした張本人”星見獣ガリス”がフレアの頭上を飛んでいた。
ATK:800 レベル3
「このぉ! 危ないじゃないか!」
「よそ見してちゃ駄目だよ! 手札のモンスターを墓地へ送り、手札からチューナーモンスター《クイック・シンクロン》を特殊召喚!」
墓地へ送ったカード
ぴよコッコ
続けてフレアの場に現れたのはロボットガンマン”クイック・シンクロン”。
目の前にルーレットを出現させ、何時ものカード――――”ドリル・シンクロン”を銃で撃ち抜く。
ATK:700 レベル5
「レベル1《レベル・スティーラー》に、レベル5《クイック・シンクロン》をチューニング!」
クイック・シンクロンが自身を5つの光輪へと変え、レベル・スティーラーを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野に生まれし螺旋の槍よ! 大地を砕き、天穹を貫け! シンクロ召喚! 破砕の戦士! 《ドリル・ウォリアー》!」
光の柱から現れたのはフレアのエースモンスター”ドリル・ウォリアー”。 勇ましい掛け声と共に右腕のドリルを回転させ、龍亞に対して構える。
ATK:2400 レベル6
「あ!? それ!」
「龍亞君なら知ってるよね? ドリル・ウォリアーの効果発動! 攻撃力を半分にすることでこのターン、相手に直接攻撃ができる!」
龍亞の現在のLPは1200。この直接攻撃を受ければ龍亞の敗北である。
「(や、やばい!? えーと……そうだ! これが!) SPCを一つ取り除き、速攻魔法《Sp-禁じられた聖杯》をチェーン発動! 対象モンスターの攻撃力を400ポイント上げる代わりに、その効果をエンドフェイズ時まで無効にする! 対象は《ドリル・ウォリアー》! これで直接攻撃はできないぞ! まだまだ終わらないもんね!」
龍亞 SPC:1→0
ATK:2400→2800
ドリル・ウォリアーの頭上に大きな聖杯が現れると、中に入っていた聖水がこぼれ、ドリル・ウォリアーに降り注ぐ。
フレアはその様子を微妙な表情で見ていた。
「えっと……うん、いい判断だとは思うけど、結果は変わらないよ?」
「へ?」
「自分のLPと、場の攻撃力を見てごらん」
「えっと……1200……パワー・ツールが2300で、2800と800……あ!?」
「残念ながら待ったは無し! バトル! ドリル・ウォリアーでパワー・ツール・ドラゴンを攻撃! 【ドリル・ランサー】!」
ドリル・ウォリアーが右腕のドリルを回転させると、パワー・ツール・ドラゴンに向かって突撃し、胴体に風穴を開けて爆散させる。
「わぁ~!? パワー・ツール・ドラゴーーーン!」
龍亞 LP:1200→700
「これで最後! 星見獣ガリスで直接攻撃! 【スターフォール・アタック】!」
ガリスが咆哮を上げると、龍亞の頭上から無数の星がマシンガンの様に降り注ぐ。
「うわぁ~~~!?」
龍亞 LP:700→0
ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。
「うう……負けちゃった……」
「龍亞!? 前見て!」
「うわわ!? とっ!」
落胆していた龍亞は龍可に声を掛けられ、迫っていたコーナーをコースアウトギリギリで曲がり切る。
Dホイールとは違い、Dボードによるライディング・デュエルでは敗者のDボードが強制停止する事は無い。Dホイールよりも搭乗者の安定性が悪いDボードでは逆に危ないからである。
龍亞とフレアはお互いにスピードを緩め、Dボードから降りて観戦していた二人と合流する。
「もう! 危なっかしいんだから! 計算も間違えてるし……」
「ごめんよ龍可……でも楽しかったよ! 俺も絶対にDホイーラーになる!」
「ふふ! 何時の日か、Dホイールでやろうね!」
「うん! ……そう言えばフレア姉ちゃん、WRGPの最後のメンバーはもう決まったの? 登録日は来月だったよね?」
「あー……うん、それはね……」
フレアは少々調子が悪そうに頬を掻く。
「まあ……五分五分?」
「え? どういう事?」
「運次第っていうか……下手したら二人だけで出るかも」
「ええ!? それは止めといた方がいいですよ! 人数的なこともありますけど、LPまで一人分減らされちゃうんですから! 絶対不利になっちゃいますよ?」
アカデミア小等部でも情報通として知られる天兵はその辺りについても詳しい。
「うん……でもやっぱり”これ!”って人じゃなきゃ組んでも仕方が無いし……あ!」
フレアはふと時計に眼をやると、慌てながら子供三人をまとめ、その背を押す。
「もう利用時間過ぎちゃってるよ! 急いで出なきゃ!」
「え? フレア姉ちゃんチームは――――」
「大丈夫! きっと何とかなるから! ほら、次の人が来る前に早く行こう!」
三人を急かしながら足早にコースを出るフレア。
WRGP参加受付まで後一月。それまでにフレアは最後の一人を得る事ができるのか――――
前回までのクラッシュタウン編で力を使いすぎた為、今回はあまりストーリーに絡まず、ストーリーも少ないデュエル回となりました。何気に龍亞は一度も決闘してなく、出番も龍可よりずっと少なかったので、今回決闘してもらいました。
後、以前この作品内で”Sp-デッド・シンクロン”を使用したのですが、作者がWCSのレースをやりこんでいなかったせいでこのカードがWCSに収録されていることに気付かず、アニメ効果で使用していました。これからはWCS効果で使って行きたいと思います。(非常に使いにくくなっていたので、これから使うかは分かりませんが……)