遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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第46話 ロバート・ピアスン

「……着いたか」

「ああ、行くぞ」

 

 真夜中の港、そこへ寄航した船から二人の青年が飛び出し、物陰に隠れる。

 

「それじゃあ私は予定通りクラッシュ・ファミリーの元へ行く」

「……もう一度聞くが、本気かピアスン? 相手はギャングだぞ?」

 

 ピアスンと呼ばれた薄い顎鬚を生やしている青年は考える様に目を閉じ、癖のある髪を撫でながらもう一人の青年の問いに答える。

 

「これから作る試作機は全ての元となるマシンだ。それなりの物を作るには、どうしても”ダイン”が必要になる。……なーに、相手だって人間だ! 話せばきっと解ってくれる! 心配ないさボルガー!」

「……とにかく、用心してくれよ? ”俺達の夢”の実現には、お前の力が不可欠なんだからな」

 

 ボルガーと呼ばれたモヒカンの青年は溜息をついた後、ピアスンの肩に手を置いて微笑する。

 

「解っているさ! ……ボルガー、君も気をつけてな!」

「ああ! シティのDホイールがどんな物か、しっかりと見てくる! 明日、同じ時間にここで」

 

 そう言ってボルガーは闇に乗じてシティ内陸を目指す。

 彼の役目はシティ産Dホイールの視察だが、この他にも個人的な目的があった。

 

「(”最強の不良品”……そんなカードが本当に存在するのか? ……とにかく、”道”を行くなら”障害”を取り除く”力”を持たなければ……)」

 

 

* * *

 

 

「ここら辺のはずだが……」

 

 ピアスンはボルガーと別れた後、情報屋から買い取った地図を頼りに”クラッシュ・ファミリーの隠れ家”を目指して歩いていた。

 

「! あれか……」

 

 地図に記された場所に辿り着いたピアスンは、目の前に立っている古いビルを見上げる。

 

「ここにクラッシュ・ファミリーが……いるみたいだな」

 

 視線を落とすと、入口の前に屈強そうな男が二人程立っている。おそらくファミリーの構成員であろう。

 ピアスンは恐れる事無く入口に近づき、構成員達の前で頭を下げた。

 

「こんばんは。ここはクラッシュ・ファミリーの方でしょうか?」

「……何だお前は?」

 

 構成員の一人が腰から銃を抜き、ピアスンに対して突きつける。

 

「ま、待ってください!? 怪しい者ではありません! 私はダインを買いに来ただけなんです!」

「……ダインを? 何でだ? お前、何処から来た?」

「サテライトから来ました。ここの組織はサテライトに対する”偏見”が無いと聞きまして……Dホイールを作るのに必要なんです。お金なら持っています。これでダインを分けて頂けないでしょうか?」

 

 そう言ってピアスンは懐から現金が入った袋を取り出し、中身を構成員に見せる。

 構成員は袋の中を覗き込み、軽く笑った後ピアスンに袋を押し返した。

 

「これっぽっちじゃ無理だな。諦めろ」

「え!? でも聞いた相場じゃこれで数台分は――――」

「普通ならな。うちのダインはそんじょそこらのダインとは質が違う。そしてここにあるのは得意先に売るための最上品だ。見知らぬ野郎に売ってやれるもんじゃない。これの10倍積まれてもお前には売れねぇな」

「そ、そんな!?」

 

 危険な密航をしてまでやってきたのだ。手ぶらで帰る訳にはいかない。ピアスンは地べたに手を付いて頭を下げる。

 

「お願いします! お金は何とかしますから!」

「諦めな兄ちゃん。どんなに頼まれても無理なもんは無理だ」

「逆にアンタは運がいい方だぜ? 俺等は比較的穏やかなギャングだからな。普通だったらその金盗られてぶちのめされてるだろうぜ。……ま、穏やかっつっても、俺等もギャングだ。あまりしつこいと、どうなるか分からねぇぞ? ……早く帰りな」

 

 構成員達はピアスンを見下ろして威圧するが、ピアスンはそれでも引かない。

 

「ど、どうかお願いします……!」

「……どうするよ?」

「大抵の奴は逃げてくもんだが……中々肝の据わった兄ちゃんじゃねぇか。気に入ったぜ。立ちな」

 

 ピアスンは構成員の言葉に従って立ち上がると構成員の一人が銃を抜き、それを見たピアスンは咄嗟に身構える。

 

「心配すんな。銃じゃねぇよ」

 

 そう言うと銃を腕に装着し、決闘盤へと変形させる。

 

「決闘盤!?」

「さあ兄ちゃんも構えな。その腕のは飾りじゃねぇだろ? それなりの腕を見せれば、この件についてボスに掛け合ってやろう」

「本当ですか!?」

「ああ……ただし! つまらねぇ決闘をすれば……分かるな?」

「大丈夫です! これでも、決闘には自信があります!」

「そうかい……なら行くぜ!」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

 ダインの購入を掛けたピアスンと構成員の決闘が始まる。先攻は構成員。

 

「俺のターン!」

 

 構成員 手札:5→6

 

「永続魔法《冥界の宝札》を発動! そして手札から《俊足のギラザウルス》を2体特殊召喚!」

 

 構成員の場に現れたのは手札から無条件で特殊召喚できる”俊足のギラザウルス”。

 この効果を使用した場合、相手の墓地のモンスターを相手の場に特殊召喚させてしまうというデメリットがあるが、今の様に相手の墓地にモンスターがいなければデメリットは機能しない。

 

 ATK:1400 レベル3

 ATK:1400 レベル3

 

「この2体をリリース! 《超伝導恐獣(スーパーコンダクターティラノ)》をアドバンス召喚!」

 

 2体のギラザウルスが光の中へと消えると、その光の中から鎧の様な機械を取り付けられた恐竜が姿を現す。

 

 ATK:3300 レベル8

 

「いきなり最上級モンスターを……!?」

「ここで冥界の宝札の効果発動! 2体以上のリリースを必要とするアドバンス召喚に成功した時、 デッキからカードを2枚ドローする!」

 

 構成員 手札:2→4

 

「へっ! 3体目の《俊足のギラザウルス》を特殊召喚!」

 

 またもや現れた”俊足のギラザウルス”。ピアスンは何もできないまま、このモンスターの無条件特殊召喚を許してしまう。

 

 ATK:1400 レベル3

 

「超伝導恐獣の効果発動! 1ターンに1度、こいつの攻撃権を放棄し、自分の場のモンスター1体をリリースする事で、相手に1000ポイントダメージを与える! 《俊足のギラザウルス》をリリースだ!」

 

 ギラザウルスが光となって消えると、超伝導恐獣がピアスンに向かって電撃を放つ。

 

「ぐわぁ!?」

 

 ピアスン LP:4000→3000

 

「先攻だから関係無ぇけどな。カードを伏せてターンエンド! さあ兄ちゃんの番だぜ?」

 

LP:4000

手札:2

モンスター

・超伝導恐獣

魔法・罠

・冥界の宝札

・セット

 

「(できる! ……だが勝つのは私だ!) 私のターン!」

 

 ピアスン 手札:5→6

 

「永続魔法《黒い旋風》を発動! そして相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで通常召喚できる! 来い! 《BF-暁のシロッコ》!」

 

 ピアスンの場に黒い羽を持つ鳥人”BF-暁のシロッコ”が現れる。

 

 ATK:2000 レベル5

 

「ここで黒い旋風の効果発動! 自分の場にBFが召喚された時、そのBFの攻撃力より低い攻撃力を持つBF1体をデッキから手札に加える事ができる! シロッコの攻撃力は2000! よってデッキから攻撃力1700の《BF-黒槍のブラスト》を手札に!」

 

 ピアスン 手札:4→5

 

「そして自分の場にBFが存在する場合、このモンスター達は手札から特殊召喚することができる! 来い! 《BF-黒槍のブラスト》! チューナーモンスター《BF-疾風のゲイル》!」

 

 続けてピアスンの場にブラストとゲイルが現れる。

 構成員は1ターン目から連続で特殊召喚を行い強力な最上級モンスターを呼び出したが、ピアスンのBFは展開力を活かし数を揃える。

 

 ATK:1700 レベル4

 ATK:1300 レベル3

 

「暁のシロッコの効果発動! 1ターンに一度、自分の場のBF1体を選択! 選択したBF以外の攻撃を封じる代わりに、選択したBFの攻撃力は他のBFの攻撃力の合計分アップする! 《BF-黒槍のブラスト》に攻撃力を集中!」

 

 シロッコとゲイルが自身のオーラをブラストに与えると、ブラストは不敵な笑みを浮かべて大槍を構える。

 

 ATK:1700→5000

 

「ばッ……!? 攻撃力5000だと!?」

「これがBFの結束の力! そして疾風のゲイルの効果発動! 1ターンに一度、相手のモンスター1体の攻守を半分にする!」

 

 ゲイルが超伝導恐獣に向かって突風を起こすと、風の刃によって超伝導恐獣の鎧が次々と剥ぎ取られ、丸裸にされてしまう。

 

 ATK:3300→1650

 

「何!?」

「バトル! 黒槍のブラストで超伝導恐獣を攻撃! 【ブラック・スパイラル】!」

 

 ブラストが大槍を構え、ドリルの様に回転しながら超伝導恐獣に突撃。そのまま無防備になった体を貫いて破壊する。

 

「ぐおお!? 俺のLPが一気に!?」

 

 構成員 LP:4000→650

 

「くそ! 罠カード《時の機械-タイム・マシーン》! モンスター1体が戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、そのモンスターを破壊された時のコントローラーの場に同じ表示形式で特殊召喚する! 戻れ! 《超伝導恐獣》!」

 

 構成員の場に扉の付いた大きな機械が現れると、その扉が開き、中から破壊したはずの”超伝導恐獣”が現れる。

 

 ATK:3300 レベル8

 

「バトル終了! レベル5《BF-暁のシロッコ》に、レベル3《BF-疾風のゲイル》をチューニング!」

 

 ゲイルが自身を3つの光輪へと変え、シロッコを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「黒き疾風よ! 秘めたる想いをその翼に現出せよ! シンクロ召喚! 舞い上がれ! 《ブラックフェザー・ドラゴン》!」

 

 光の柱から現れたのは黒い羽毛と白い羽を持った怪鳥の様なドラゴン。

 六本ある脚は鉤爪その物の様であり、長い尾羽が優雅に靡いている。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「シンクロ召喚だぁ!? だがもうバトルフェイズは終了してる!」

「バトルフェイズはもう必要無い! 魔法カード《アゲインスト・ウィンド》を発動! 自分の墓地に存在するBF1体を選択! 自分はその攻撃力分のダメージを受け、そのBFを手札に加える! 私は《BF-疾風のゲイル》を選択! そしてこの時、ブラックフェザー・ドラゴンの効果発動! 〈ダメージ・ドレイン〉!」

 

 ピアスンの決闘盤の墓地から光が飛び出すと、ブラックフェザー・ドラゴンはその光を受け止め、自身の羽の一部を黒く染め上げ、赤く光らせる。

 

「自分がカードの効果によってダメージを受ける場合、代わりにこのカードに黒羽カウンターを1つ置く! そしてこのカードの攻撃力は黒羽カウンターの数×700ポイントダウン!」

 

 ATK:2800→2100 黒羽カウンター:0→1

 

「じ、自分で発動させて食らったダメージを無効にして、自分のモンスターの攻撃力を下げるだぁ!? 何を考え――――」

「これで終わりだ! ブラックフェザー・ドラゴンの効果発動! 1ターンに一度、このカードに乗っている黒羽カウンターを全て取り除く事で、相手モンスター1体の攻撃力を取り除いた黒羽カウンターの数×700ポイントダウンし、ダウンした数値分のダメージを相手に与える! 〈ブラック・オーブ・バースト〉!」

 

 ATK:2100→2800 黒羽カウンター:1→0

 

 ブラックフェザー・ドラゴンが吸収したダメージを脚部に集中させると、それを一気に解き放つ。

 

「ぐああ!?」

 

 ATK:3300→2600

 構成員 LP:650→0

 

 ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 負けた構成員は決闘盤を銃に戻してガンベルトに収めると、ピアスンに向かって駆け出す。

 ピアスンはそれに驚いて身構えるが、飛んで来たのは拳ではなく、握手の手と構成員の笑顔だった。

 

「やるじゃねぇか! 益々気に入ったぜ!」

 

 ピアスンが呆気にとられた様子で握手に応じていると、もう一人の構成員も笑いながら近づいて来る。

 

「俺達が敬意を表する人間は2種類いてな。一つは”ボスが認めた奴”。そしてもう一つは”強い奴”だ。見事だったぜ。お前みたいな奴はマルコムやラモンのとこにもいねぇや」

「はぁ……」

「約束通り、ボスに取り次いでやるよ! 後は上手くやることだな!」

「その必要はねぇよ」

 

 構成員がビル内へと入っていこうとすると、ビルの中から老人が左右に他の構成員と思われる者を引き連れて現れる。

 

「「ボス!?」」

「上から見てたぜ。見事な”1ターンキル”だ。お前、名前は?」

「ピアスン……”ロバート・ピアスン”です」

「そうか、じゃあピアスン。話を聞こうじゃねぇか。付いてきな」

 

 老人はピアスンに手招きしてビルの奥へと入って行き、ピアスンはその後に続いてビルの中へと入る。

 

 

* * *

 

 

「……成る程、いいぜ。ただし条件がある」

 

 奥の部屋に通され、ソファーに座らせられたピアスンはここへ来た目的を老人に話すと、老人は先程の構成員達と同じ様に条件を出してくる。

 

「お前の決闘の腕を見込んで、一つ頼みてぇ事がある。いいか?」

「……まっとうで、私にできる事なら」

「なに、汚ぇ事でも難しい事でもねぇよ。助っ人として決闘して貰いてぇだけだ」

「助っ人?」

 

 老人は事の詳細をピアスンに説明する。

 現在クラッシュ・ファミリーは取引先の組織と3対3のマッチ決闘を行っており、一回戦目はクラッシュ・ファミリー側が、二回戦目は相手側が勝利を収めた。

 そして決勝戦を行う直前で相手側のスケジュールの都合により、勝負は翌日に持ち越される事となったのである。

 

「これは重要な勝負でな。相手って言うのが、相手が先代の頃から取引が続いているうちの得意先でよ。何時もならダインを売って終わりだったんだが……最近後を継いだ二代目が急に高いとぬかしやがってな。それからなんやかんやあって、決闘で決める事になった。……うちが勝ったら何時も通りでお買い上げ。向こうが勝ったら笑えねぇ程値引きされちまう」

 

 老人は苦い表情を浮かべる。

 そんな無茶を言う相手とは今すぐにでも縁を切ってやりたいが、そうする訳にもいかない。それ程、重要な取引相手なのだ。

 

「だから、絶対に負ける訳にはいかねぇ。とっとと勝って早く終わらせたい。孫を待たせてるんでな……おい」

 

 老人は後ろにいた構成員に指図すると、構成員が部屋の隅に置かれていた箱を持ってきてピアスンの前に置く。

 

「お前さんの実力はよく分かった。間違いなくうちの奴等より強ぇ。だから代行を頼みたい。……ここにあるのはDホイールの駆動パーツ。うちのダインを使った最高級品だ。勝ったらこいつをやる。代金もいらねぇ。どうだ?」

 

 ピアスンは少しの間考える様に顔を俯かせた後、顔を上げ、強い意志を宿した両眼を老人に向ける。

 

「その決闘、やりましょう。……後、パーツは結構です。私が勝ったらダインをください。代金もその分だけお支払いします」

「ほう、何でだ? ダインを一から加工するのは手間だぞ? それにお前がいるサテライトじゃ碌な設備も無いだろ? 素直にこの最高級品を受け取っておいた方が楽で、Dホイールも高性能のができるぞ」

 

 老人はパーツの入った箱を見せ付けるように軽く叩くが、ピアスンは首を左右に振る。

 

「……確かに、早く作りたいし、高性能にできるならそうしたいです。でも、それよりももっと大事な事があるんです」

「……ほう?」

 

 ピアスンは現金の入った袋と、1枚の写真を取り出して座っているソファー前のテーブルに置く。写真にはピアスンとボルガー、そして大勢の子供達が並んで写っていた。

 

「この子供達は両親を亡くした孤児達です。……私には、この子達の気持ちが痛いほど解るんです。両親を奪われ、行き場を失い、自分が何の為に生まれてきたのかさえ分からない、この子達の”痛み”が……」

 

 ピアスンの表情が哀しみを帯びる。彼もまた、サテライトの地で同じ”痛み”を受けた一人なのかもしれない。

 

「私は、子供達に知ってほしい。”自分達にも何かができる、恵まれていなくとも、サテライト住民であっても、自分達で何かを成し遂げることができる”と! ……その為に、私はできる限り自力で”Dホイール”を作り上げたいんです! 作り上げて、子供達にそのことを教えてやりたいんです!」

 

 この時、ピアスンは興奮して体をソファーから浮かせている事に気付き、慌てて座り直して頭を下げる。

 

「す、すいません……」

「なに、いいってことよ。爺にとっちゃ、その”若さと熱意”が羨ましい。……明日の決闘、頼んだぜ」

 

 老人がソファーから立ち上がり、部屋を出ようとすると、ふと思い出したかのように老人がピアスンに振り返る。

 

「そういや自己紹介がまだだったな。俺の名は”クラッシュ・ヴィルアース”。ま、ここに来る位ならもう知ってるかもしれんがな」

 

 

* * *

 

 

 翌日の正午。ピアスンはクラッシュに連れられてシティ内部にあるもっともサテライトに近い人間が集う地区”ダイモン・エリア”の地下決闘場にやって来ていた。

 ピアスンとクラッシュ以外には、彼等の後ろに護衛の構成員が数名、そして対戦相手側には厳つい男達が数名と、その中心に何処か妖艶な雰囲気を漂わせる若い美女が立っていた。

 クラッシュがその美女に対して声を掛ける。どうやら彼女が相手組織の”ボス”のようだ。

 

「ミデアさん、今回で決着だが、約束はきっちりと守ってもらうぞ」

「分かっていますわ、Mr.クラッシュ。そちらこそお忘れの無い様に……お歳ですから心配ですわ」

 

 ミデアがそう言った瞬間、構成員達が怒号が飛ばすがクラッシュはそれを腕で制す。

 

「なら、とっとと始めましょうや。……ピアスン」

「はい!」

 

 クラッシュに目配せされると、ピアスンは前に出て決闘場に立ち、黒い特徴的な形状をした決闘盤を展開させる。

 

「さあ、そっちは誰が出るんだ?」

「私ですわ」

 

 そう言ってミデアは決闘盤を腕に装着し、展開させてからピアスンと同じ様に決闘場へと立つ。

 

「……驚いたぜ。まさかアンタ自身が出てくるとはな」

「フフフ……強くなければ、組織の頭は務まりませんもの。ミスターの様に、そんな”サテライトのクズ”に頼る必要はありませんわ」

「!?」

 

 ミデアはピアスンに対して挑発的な視線を向けると、クラッシュは忌々しそうに舌打ちをする。

 

「(ちっ! 昨日の夜、こっちを見張ってやがったな!) ……もう話はいいでしょう。始めましょうや」

「ええ。……では始めましょう。クズはクズなりに、精々足掻いて見せなさい」

「……私は……絶対に負けはしない!」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

 取引先の女ボス”ミデア”と、クラッシュ・ファミリー決闘者代行”ロバート・ピアスン”の決闘が始まる。先攻はピアスン。

 

「私のターン!」

 

 ピアスン 手札:5→6

 

「永続魔法《黒い旋風》を発動! そして《BF-蒼炎のシュラ》を召喚!」

 

 ピアスンの場に蒼い羽毛を持つ鳥人”蒼炎のシュラ”が現れる。

 

 ATK:1800 レベル4

 

「あら、何て野蛮で醜いモンスター。汚らわしいサテライトのクズにはお似合いね」

「ッ!? ……黒い旋風の効果発動! 自分の場にBFが召喚された時、そのBFの攻撃力より低い攻撃力を持つBF1体をデッキから手札に加える事ができる! シュラの攻撃力は1800! よってデッキから攻撃力1400の《BF-月影のカルート》を手札に!」

 

 ピアスン 手札:4→5

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:3

モンスター

・BF-蒼炎のシュラ

魔法・罠

・黒い旋風

・セット

・セット

 

「私のターン!」

 

 ミデア 手札:5→6

 

「フィールド魔法《ハーピィの狩場》を発動!」

 

 ミデアがフィールド魔法を発動させると、ピアスンは急に辺りからこちらを狙っているかのような鋭い視線を感じるようになる。

 

「(何だ……?)」

「ハーピィの狩場が存在する限り、場の鳥獣族モンスターの攻守は200ポイントアップ!」

 

 BF-蒼炎のシュラ ATK:1800→2000

 

「(私の場のBFを強化するだと……!?)」

「フフフ、これから狩られる憐れなサテライトのクズに対しての情けよ。……《ハーピィ・レディ1》を召喚!」

 

 ミデアの場に現れたのは露出度の高い、魅惑的な姿をした女性の鳥人。明るく、色鮮やかな長髪と翼、そして女性であることなど、ピアスンのBFとは対照的なモンスターである。

 

 ATK:1300 レベル4

 

「ハーピィ・レディ1は名称”ハーピィ・レディ”として扱う。ここでハーピィの狩場の効果発動! ”ハーピィ・レディ”、または”ハーピィ・レディ三姉妹”が場に召喚・特殊召喚された時、場に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する! 左の伏せカードを破壊!」

 

 ハーピィ・レディ1がピアスンの場へ飛びかかると、伏せカード”ブラック・リターン”をその鋭い爪で切り裂き、破壊する。

 

「ぐっ……」

「そしてハーピィ・レディ1の効果! このカードが場に存在する限り、場の風属性の攻撃力を300ポイントアップ! よって風属性であるハーピィ・レディ1の攻撃力はハーピィの狩場の効果と合わせて500ポイントアップ!」

 

 ATK:1300→1800

 

「だがシュラの攻撃力と――――」

「これで終わりだなんて何時言ったかしら? 永続魔法《ヒステリック・サイン》を発動! このカードを発動した時、自分のデッキ・墓地から魔法カード《万華鏡-華麗なる分身-》を1枚を選んで手札に加えるわ! デッキから手札に! そして発動!」

 

 ミデアが手札に加えた魔法を発動させると、場にいたハーピィ・レディ1が4体のハーピィに分身し、新しく現れたハーピィ3体が一組に纏まる。

 

「ふ、増えた!?」

「《万華鏡-華麗なる分身-》は場に”ハーピィ・レディ”が存在する場合、手札・デッキから”ハーピィ・レディ”、または”ハーピィ・レディ三姉妹”を特殊召喚する! よってデッキから《ハーピィ・レディ三姉妹》を特殊召喚!」

 

 ATK:1950→2450 レベル6

 

「そしてハーピィの狩場の効果発動! 右の伏せカードを破壊!」

 

 三姉妹が一斉にピアスンの伏せカード”デルタ・クロウ-アンチ・リバース”へ飛びかかり、爪で切り裂いて破壊する。

 

「バトル! ハーピィ・レディ三姉妹で攻撃! 【トリプル・スクラッチ・クラッシャー】!」

 

 三姉妹が鋭い爪を光らせると、罠を破壊した時の様にシュラに向かって飛び掛かる。

 

「ダメージステップ時に手札から《BF-月影のカルート》の効果発動! このカードを手札から墓地へ送り、戦闘を行っているBFの攻撃力をエンドフェイズ時まで1400ポイントアップする!」

 

 ATK:2000→3400

 

 爪を向けて迫ってくる三姉妹に対し、シュラはカルートの力によって強化された自らの爪を振るい、見事返り討ちにする。

 

「くっ……! クズの癖に小賢しい手を……」

 

 ミデア LP:4000→3050

 

「ここでBF-蒼炎のシュラの効果発動! 戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキから攻撃力1500以下のBF1体を効果を無効にして特殊召喚できる! 《BF-銀盾のミストラル》を守備表示で特殊召喚!」

 

 ピアスンの場に盾の様な姿をした銀色の鳥獣が現れる。

 攻撃を完全に止められたミデアはピアスンを憎らしそうに睨んだ。

 

 DEF:1800→2000 レベル2

 

「忌々しい……手札から速攻魔法《スワローズ・ネスト》を発動! 自分の場に表側表示で存在する鳥獣族1体をリリースし、リリースした鳥獣族と同じレベルの鳥獣族1体をデッキから特殊召喚する! 《ハーピィ・レディ1》をリリースし、デッキから同じレベル4の《ハーピィ・チャネラー》を特殊召喚!」

 

 ハーピィ・レディ1が光の中へと消えると、その光の中から杖と首輪を持ったハーピィが現れる。

 

 ATK:1400→1600 レベル4

 

「このカードの名称は場・墓地に存在する限り”ハーピィ・レディ”として扱うわ! よってハーピィの狩場の効果発動! 《黒い旋風》を破壊!」

 

  ハーピィ・チャネラーが紫の翼を羽ばたかせて飛び上がると、杖から光を放ち、”黒い旋風”を消滅させる。

 

「くっ! 黒い旋風まで……」

「カードを伏せてターンエンド! ……サテライトのクズの分際で、私に傷を負わせた罪は重いわよ?」

 

LP:3050

手札:1

モンスター

・ハーピィ・チャネラー

魔法・罠

・ヒステリック・サイン

・セット

フィールド魔法

・ハーピィの狩場

 

「私のターン!」

 

 ピアスン 手札:2→3

 

「(受けの姿勢では駄目だ!) 《BF-精鋭のゼピュロス》を召喚!」 

 

 ピアスンの場にアーマーを身に付け、黒い翼を背に生やした鳥人が現れる。

 

 ATK:1600→1800 レベル4

 

「バトル! シュラでハーピィ・チャネラーを攻撃!」

「永続罠《強制終了》を発動! 自分の場のカード1枚を墓地へ送り、このターンのバトルフェイズを終了させる! 《ヒステリック・サイン》を墓地へ!」

 

 ミデアが永続罠を発動させると、ハーピィ・チャネラーに迫っていたシュラは急に動きを止め、ピアスンの場へと戻ってしまう。

 

「くっ! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:1

モンスター

・BF-蒼炎のシュラ

・BF-銀盾のミストラル

・BF-精鋭のゼピュロス

魔法・罠

・セット

 

「このエンドフェイズ時に、墓地へ送った《ヒステリック・サイン》の効果発動! このカードが手札、または場から墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、デッキからカード名が異なるハーピィと名のついたカードを3枚まで選び、手札に加える! 私はデッキから《ハーピィ・クィーン》、《ハーピィ・ダンサー》、《ハーピィズペット竜》を手札に!」

 

 ミデア 手札:1→4

 

「一気にモンスターを3体も!?」

「フフフ……私のターン!」

 

 ミデア 手札:4→5

 

「魔法カード《マジック・プランター》を発動! 自分の場の表側表示の永続罠《強制終了》を墓地へ送り、デッキから2枚ドロー!」

 

 ミデア 手札:4→6

 

「フフ……今の手札の状況、私達と同じじゃない? サテライトのクズとして産まれたあなたと、大組織の頭の娘として産まれた私との差……それを表してるみたい」

「……どうしてあなたの様なシティの人間はそうやって優劣を付けたがるんだ? サテライトにいるというだけで、何故私達を蔑む!」

 

 今まで何を言われても言い返さなかったピアスンだったが、とうとうミデアに対し怒りの表情で問いかける。それに対してミデアは嘲笑で返した。

 

「私がそれだけの”力”を持つからよ。これは”力”を持つ者の特権……”力”の無いあなたとは永遠に縮まる事の無い差が私達の間にはあるのよ! サテライトのゴミ溜めと、どんなに手を伸ばしても届かない大空のように!」

「そんな事は無い! ……確かに私達にはあなたの言う”力”は無いかもしれない。だが人間誰しも”可能性”を持っているんだ! 可能性があれば、ゴミ溜めだろうがどこだろうが飛び出して行ける! どんな高い空でも羽ばたいて行ける!」

「惨めね、クズの妄想は。……ハーピィ・チャネラーの効果発動! 1ターンに一度、手札からハーピィと名のついたカード1枚を捨て、デッキからハーピィ・チャネラー以外のハーピィと名のついたモンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 来なさい! 《ハーピィ・レディ1》!」

 

 捨てたカード

 ハーピィズペット竜

 

 ハーピィ・チャネラーが杖を構えて呪文を唱えると、ミデアの場に2体目の”ハーピィ・レディ1”が現れ、防御体勢を取る。

 

 ハーピィ・レディ1  DEF:1400→1600 レベル4

 ハーピィ・チャネラー ATK:1600→1900(ハーピィ・レディ1の効果により)

 

「ハーピィの狩場の効果発動! あなたの場の伏せカードを破壊するわ!」

 

 ハーピィ・レディ1がピアスンの伏せカード目掛けて飛び掛かる。

 

「罠カード《八汰烏の骸》をチェーン発動! デッキからカードを1枚ドロー!」

 

 ピアスン 手札:1→2

 

 ピアスンがドローした後、ハーピィ・レディ1の爪が八汰烏の骸を切り裂く。

 

「《ハーピィ・クィーン》を通常召喚!」

 

 続けてミデアの場に純白の翼を持った、妖艶さと高貴さを兼ね備えたハーピィが現れる。

 

 ATK:1900→2400 レベル4

 

「もうこの世界は用済みね。ハーピィの狩場の効果で、《ハーピィの狩場》を破壊!」

 

 ミデアがそう宣言すると、ピアスンが辺りから感じていた鋭い視線が消える。

 

 ハーピィ・チャネラー ATK:1900→1700

 ハーピィ・レディ1  DEF:1600→1400

 ハーピィ・クィーン  ATK:2400→2200

 

 BF-蒼炎のシュラ   ATK:2000→1800

 BF-銀盾のミストラル DEF:2000→1800

 BF-精鋭のゼピュロス ATK:1800→1600

 

「2枚目の魔法カード《万華鏡-華麗なる分身-》を発動! デッキから《ハーピィ・レディ・SB(サイバー・ボンテージ)》を特殊召喚!」

 

 ミデアの場のハーピィ・レディ1が2体に分裂すると、その内の1体に鎧の様なボンテージが装備される。これでハーピィ達の数がBFの数を追い抜いた。

 

 ATK:1800→2100 レベル4

 

「くっ……!」

「まだ終わりじゃないわ! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地から《ハーピィズペット(ドラゴン)》を特殊召喚!」

 

 最後に首輪を付けられた首の長い赤い翼竜が現れる。

 

 ATK:2000→2300(ハーピィ・レディ1の効果により) レベル7

 

「ハーピィズペット竜の効果! このカードの攻守は場のハーピィ・レディの数×300ポイントアップ! そして私の場にいるペット竜以外のモンスターは全て”ハーピィ・レディ”として扱われる能力を持つ! よって攻撃力は――――」

 

 ATK:2300→3500

 

「3500……!?」

「そしてどうでもいい効果だけど、ハーピィ・チャネラーは自分の場にドラゴン族が存在する場合、レベル7となるわ」

 

 ハーピィ・チャネラー レベル4→7

 

「さあ覚悟なさい! バトル! ハーピィズペット竜で蒼炎のシュラを攻撃! 【セイント・ファイアー・ギガ】!」

 

 ハーピィズペット竜が凄まじい火炎を吐き出し、シュラを焼き尽くす。

 

「ぐうぅ!?」

 

 ピアスン LP:4000→2300

 

「フフフ! ハーピィ・クィーンで精鋭のゼピュロスを攻撃! 【クイーンズ・スクラッチ・クラッシャー】!」

 

 ハーピィ・クイーンとゼピュロス、2体の鳥人が爪を振り抜いてすれ違うと、お互いの白と黒の羽が舞う。倒れたのは――――

 

「くっ……ゼピュロス……」

 

 ピアスン LP:2300→1700

 

「これで攻撃モンスターがいなくなったわね! 後はゴミ掃除よ! ハーピィ・レディ・SBで銀盾のミストラルを攻撃! 【スクラッチ・クラッシャー】!」

 

 ハーピィ・レディ・SBは爪で堅いミストラルの体を容易く切り裂き、破壊する。

 

「これで解ったかしら? サテライトのクズに”可能性”なんて無いのよ! 行きなさいハーピィ・チャネラー! 直接攻撃!」

 

 ハーピィ・チャネラーが杖を振り上げ呪文を唱えると、杖の先をピアスンに向けて光弾を放つ。攻撃力は1700丁度。これが通ればピアスンの敗北である。

 

「銀盾のミストラルの効果発動! 場に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、このターン自分が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする!」

 

 ピアスンの前にミストラルが現れると、光弾を受け止めてそのまま消滅する。

 

「ッ!? ……しつこいわね。まるでゴキブリの様だわ。カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:3050

手札:1

モンスター

・ハーピィ・チャネラー

・ハーピィ・レディ1

・ハーピィ・クィーン

・ハーピィ・レディ・SB

・ハーピィズペット竜

魔法・罠

・セット

 

「負けはしない……私達には”可能性”がある! 私のターン!」

 

 ピアスン 手札:2→3

 

「チューナーモンスター《BF-東雲のコチ》を召喚!」

 

 ピアスンの場に花弁の様な羽毛を頭に生やした鳥獣”東雲のコチ”が現れる。

 

 ATK:700 レベル4

 

「そして場に他のBFが存在することにより、手札から《BF-黒槍のブラスト》を特殊召喚!」

 

 続けてブラストが自らの能力によって場に現れる。

 

 ATK:1700 レベル4

 

「行くぞ! レベル4《BF-黒槍のブラスト》に、レベル4《BF-東雲のコチ》をチューニング!」

 

 コチが自身を4つの光輪へと変え、ブラストを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「黒き疾風よ! 秘めたる想いをその翼に現出せよ! シンクロ召喚! 舞い上がれ! 《ブラックフェザー・ドラゴン》!」

 

 光の柱から現れたのはBFの、そしてロバート・ピアスンの切り札”ブラックフェザー・ドラゴン”。場に降りると眼を赤く光らせ、咆哮を上げて空気を震わす。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「(ブラックフェザー・ドラゴン……報告にあったカードね。サテライトのクズの癖に、何でこんなカードを持っているのかしら?)」

「魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地からモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! そしてカードを2枚ドロー!」

 

 戻したカード

 BF-蒼炎のシュラ

 BF-銀盾のミストラル

 BF-月影のカルート

 BF-東雲のコチ

 BF-黒槍のブラスト

 

 ピアスン 手札:0→2

 

「バトル! ブラックフェザー・ドラゴンでハーピィ・チャネラーを攻撃! 【ノーブルストリーム】!」

「少しでもダメージを与えようとでも? ……気安く触れないで頂戴! 永続罠《六芒星の呪縛》! 相手のモンスター1体の攻撃を封じ、表示形式の変更もできなくさせる!」

 

 ブラックフェザー・ドラゴンがブレスを放とうと口を開けた瞬間、六芒星の魔法陣がブラックフェザー・ドラゴンの下に現れ、その呪いによって動きを封じ込める。

 

「ほら、諦めなさい。何をやっても無駄よ」

「無駄ではない! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:1700

手札:0

モンスター

・ブラックフェザー・ドラゴン

魔法・罠

・セット

・セット

 

「私のターン!」

 

 ミデア 手札:1→2

 

「これで終わりにしてあげるわ! ハーピィズペット竜でブラックフェザー・ドラゴンを攻撃!」

「カウンター罠《攻撃の無力化》! 相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!」

 

 ハーピィズペット竜が火炎を吐き出すが、その火炎はブラックフェザー・ドラゴンの前に現れた次元の渦によって吸収される。

 

「ッ!!? ……ここまで私を不愉快にさせたクズは初めてよ。魔法カード《光の護封剣》を発動! これにより相手のターンで数えて3ターンの間、あなたは攻撃できないわ」

 

 ピアスンの場に光で作られた剣が3本突き刺さる。

 

「もう諦めて、ハーピィ達に狩られなさい! ターンエンド!」

 

LP:3050

手札:1

モンスター

・ハーピィ・チャネラー

・ハーピィ・レディ1

・ハーピィ・クィーン

・ハーピィ・レディ・SB

・ハーピィズペット竜

魔法・罠

・六芒星の呪縛

・光の護封剣

 

「攻撃を封じられようとも……”可能性”を封じられた訳ではない! エンドフェイズ時に永続罠《破滅へのクイック・ドロー》を発動! お互いのプレイヤーはドローフェイズ開始時に手札が0枚だった場合、通常のドローに加えてもう1枚ドローすることができる! 私のターン!」

 

 ピアスン 手札:0→2

 

「……私達の”可能性”を、証明してみせる! 手札から魔法カード《アゲインスト・ウィンド》を発動! 自分の墓地に存在するBF1体を選択し、自分はそのBFの攻撃力分のダメージを受け、そのモンスターを手札に加える! 墓地に存在する《BF-精鋭のゼピュロス》を選択! その攻撃力1600ポイント分のダメージを受ける!」

 

 この瞬間、墓地から光が飛び出し、ブラックフェザー・ドラゴンに命中する。

 

「アゲインスト・ウィンドによってダメージが発生したこの瞬間、ブラックフェザー・ドラゴンの効果によってダメージを受ける代わりに、このカードに黒羽カウンターを1つ置く! これによりダメージを与えられなかった”アゲインスト・ウィンド”の効果は不発となり、墓地のBFを手札に加えることはできない」

 

 ブラックフェザー・ドラゴンは受けた光を全て吸収すると、羽の一部が黒く染まり、赤く光る。

 

「ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力は乗っている黒羽カウンター×700ポイント下がる!」

 

 黒羽カウンター:0→1

 ATK:2800→2100

 

「墓地に存在する《BF-精鋭のゼピュロス》の効果発動! 自分の場に表側表示で存在するカード1枚を手札に戻すことでこのカードを墓地から特殊召喚し、自分は400ポイントダメージを受ける! 戻すカードは永続罠《破滅へのクイック・ドロー》!」

 

 この時、ピアスンの場から離れようとしていた”破滅へのクイック・ドロー”から先程の様な光が放たれ、またしてもブラックフェザー・ドラゴンに命中する。

 

「破滅へのクイック・ドローの効果! 表側表示で存在するこのカードが場を離れた時、自分は3000ポイントのダメージを受ける! だがブラックフェザー・ドラゴンの効果によりダメージを受ける代わりに2つ目の黒羽カウンターを乗せる!」

 

 ブラックフェザー・ドラゴンは破滅へのクイック・ドローのダメージを全て吸収すると、先程よりも羽を黒く染め、さらに赤い光を放つ。

 

 黒羽カウンター:1→2

 ATK:2100→1400

 

「そして蘇れ! 《BF-精鋭のゼピュロス》!」

 

 ピアスンの場に再びゼピュロスが現れるとその体からダメージの光を発し、それをブラックフェザー・ドラゴンが吸収する。

 

「ゼピュロスの効果によって発生したダメージを受ける代わりに、3つ目の黒羽カウンターをブラックフェザー・ドラゴンに乗せる!」

 

 黒羽カウンター:2→3

 ATK:1400→700

 

 羽の大半が黒く染まり、赤い光を放ち続けるブラックフェザー・ドラゴン。それを見ていたミデアは表情に焦りを浮かべる。

 

「(確かあのドラゴンの効果は……でも、相手は攻撃できない! ダメージだって、これだけやったのならもう――――)」

「これが最後のカード……魔法カード《火炎地獄》を発動! 相手に1000ポイントダメージを与え、自分は500ポイントのダメージを受ける!」

 

 場の中心から火炎が広がり、ミデアを襲う。

 

「あああ!?」

 

 ミデア LP:3050→2050

 

 そして火炎はピアスンにも迫っていたが、ブラックフェザー・ドラゴンがピアスンを庇う様に火炎へと突っ込み、全て吸収する。

 

 黒羽カウンター:3→4

 ATK:700→0

 

 ブラックフェザー・ドラゴンに4つのカウンターが乗ると、その名の如く全ての羽が黒く染まり、その眼光と同じ様に羽全体が赤い光を放つ。

 

「な、何て事なの……!?」

「これがブラックフェザー・ドラゴンの真の姿だ。ブラックフェザー・ドラゴンは痛みを吸収し、その翼を黒く染める……私達サテライト住民と同じだ!」

 

 ピアスンは胸を押さえて俯く。その”痛み”を、”哀しみ”を思い出しているかのように。

 

「どんなに奪われようとも、どんなに蔑まれようとも、私達はその”痛み”を、”哀しみ”を背負って生きて行く! 誰もが平等で、皆が認め合える世界ができるまで……シティとサテライトが一つとなるその日まで! ……ブラックフェザー・ドラゴン!」

 

 ピアスンが命令すると、ブラックフェザー・ドラゴンは脚部に全ダメージエネルギーを集中させる。

 

「黒羽カウンターを全て取り除く事で、相手のモンスター1体を選択し、その攻撃力を取り除いた黒羽カウンターの数×700ポイントダウンさせ、その数値分のダメージを相手に与える! ……一度受けてみろ、私達の”痛み”を! 〈ブラック・オーブ・バースト〉!!! 」

 

 ブラックフェザー・ドラゴンが集中された全エネルギーを解き放つと、ハーピィズペット竜ごとミデアを吹き飛ばす。

 

「あああああ!!?」

 

 ハーピィズペット竜 ATK:3500→700

 ミデア LP:2050→0

 

 ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 

「(……必ず、そんな世界を作ってみせる! Dホイール作りを通して……!)」

 

 ピアスンは決闘盤を収めて後方へ振り返ると、構成員達の歓声に迎えられる。その中心でクラッシュが拍手を送っていた。

 

「よくやってくれた。約束通りダインを売ってやろう」

「ありがとうございます」

「しかし……随分と偏屈な奴が後を継いだもんだ。こんなんじゃ、この場は何とかなっても、この先上手くはやっていけねぇだろうなァ……」

 

 クラッシュは負けたショックでその場に座り込んでいるミデアに眼を向ける。顔は真っ青であり、組織の構成員達も思いがけない事に困惑しつつ、ボスであるミデアを助け起こそうとしている。

 

「(……暫くはピアスンの周りを見てやった方が良さそうだな。執念深くなけりゃいいんだがなぁ)」

「あ、あの……」

 

 クラッシュがミデア達による”ピアスンへの報復”を心配している中、ピアスンが遠慮がちな声で話し掛けてくる。

 

「ん? 何だ?」

「……私の夢は工場をサテライトに建てて、サテライト産のDホイールを作り、それを世界に売り出す事です。世界に認められる程のDホイールを私達だけで作りあげれば、きっとシティの人々もサテライトを認めてくれると思うんです。そうなれば、シティとサテライトを繋ぐ事だって夢じゃない!」

 

 決闘後だからか、ピアスンの言葉には興奮した様に熱が入っている。クラッシュは微笑を浮かべながら、ピアスンの言葉を黙って聞いていた。

 

「今はまだ試作機1台を作るのが精一杯の小さい工房ですけど、何時かは友人や子供達と共に大きな工場にして見せます! ですから……その時は私達との取引をよろしくお願いします!」

「……はっはっは! 言ったなコイツ! 約束だ! 必ずでかい工場にして、俺に儲けさせろよ!」

 

 

こうして、ロバート・ピアスンのシティでの短い冒険の幕が下りた。

 1年後、ピアスンはシティでボルガーが集めた情報を活かし、不動 遊星よりも先に初のサテライト産Dホイール試作機”ブラック・バード”を作り上げ、それに続いて2号機であり、量産試作型でもあるボルガー機”PXV-0”を完成させる。

 次はいよいよ量産機。”クロウ・ホーガン”という新たな仲間を加え、ピアスン達は夢に向かって走り続けて行くのであった。

 

……………………

………………

…………

……

 

「――――これが、私が昔お爺ちゃんから聞いたピアスンのお話。お爺ちゃん、話してる時とっても楽しそうだった」

「……そうか、そんな事があったんだな」

 

 時は流れて現在、ピアスンの新たな仲間であったクロウ・ホーガンは現在の仲間達、遊星、ジャック、フリント、フレアと共にシティ沿岸部にある墓地に来ていた。

 クロウはそこにあるピアスンの墓前で屈みながら、”ブラックフェザー・ドラゴン”のカードを手に持っていた。

 

「まさか、話に聞いていたピアスンがクロウの仲間だったなんてね……」

「俺も驚いたよ。人って奴はどこで繋がってんだか分かんねぇもんだな」

 

 3年前のある日、ある誤解からボルガーがピアスンを殺害し、量産型Dホイールのデータを奪った。

 そして現在、Dホイール製造No.1の大企業”ボルガー&カンパニー社”の社長となっていたボルガーは工場運営の為の莫大な資金を得る為、資産家に融資を求めたところ、その資産家はある”条件”を提示してきた。

 

「それにしても、たった1枚のカードと引き換えにあれだけの額を貸すとはな。伊達に”シグナーの竜”ではないという訳か」

 

 ジャックがクロウの手にある”ブラックフェザー・ドラゴン”を覗き込む。

 ミデアの口から広がり、裏の世界で”最強のレアカード”として名が広がっていた”ブラックフェザー・ドラゴン”。資産家はそれを入手してくるのなら融資をするとボルガーに持ちかけた。

 そしてボルガーは知っていた。ピアスンを殺害した時、工房内で偶然起こしてしまった火事によって燃え尽きたと思われていた”ブラックフェザー・ドラゴン”が死の間際であったピアスンによって愛機”ブラック・バード”と共に”クロウ・ホーガン”へと託されていたことを。

 そこでボルガーは丁度自分に逢いに来たクロウに勝負を持ちかける。自分が勝ったらクロウが持っているはずの”ブラックフェザー・ドラゴン”を自分に渡し、負けたら自分が知っているピアスンを殺した犯人についてクロウに教えるというもの。クロウはブラック・バードだけでカードは受け取っていないと言うが、ボルガーはそれを聞かず、勝負を強行させた。

 

「ピアスンは素晴らしい腕のメカニックだな。サテライト初を先越されただけではなく、俺とブルーノでも解除できない特殊なプロテクトを掛け、カードを隠しておくあの技術……一度、会って話がしてみたかったな」

 

 遊星が残念そうにピアスンの墓を見詰める。

 ボルガーはカード同士の連携を断ち切る、所謂”BFアンチ”の能力を持つ”WW(ホワイトウォリアーズ)”と、相手に実際のダメージを与える危険なカードであり、ピアスンを死に至らしめた違法カードである”ブラッド・メフィスト”を操り、クロウを追い詰めて行く。

 そして決闘中にボルガーから明かされた衝撃の事実。クロウはそれに悲しみ、激昂すると同時に、ピアスンによってブラック・バードに封印されていた”ブラックフェザー・ドラゴン”をシグナーの竜として覚醒させ、自分の場に呼び出す。

 クロウはブラックフェザー・ドラゴンを通して知った”ピアスンの遺志と痛み”をボルガーに伝え、ブラッド・メフィストを倒して勝負を決めた。

 

「……一時期、フレアが近づけない程クラッシュの機嫌が悪い時があってな。俺がその訳を聞いた時、奴は――――」

 

 

 

    何でもねぇよ。……”得意先予定”だった相手を、()られただけだ……!

 

 

 

「――――まさか、こういう事だったとはな」

 

 フリントは晴れ渡った大空を見上げた後、帽子を外して胸に当て黙祷する。

 

「……ピアスン、ボルガーが自首したよ。アンタの思いがきっと通じたんだな。……アンタの遺志は俺が受け継ぐぜ……! ピアスン……!」

 

 クロウは手に持ったブラックフェザー・ドラゴンを折れないように握る。

 ロバート・ピアスンの”遺志”は、これからもずっと受け継がれて行くだろう。”可能性”を信じ、未来へと進んで行く”決闘者”達によって――――

 




ボルガーといい鬼柳といい、本当に誤解が多いですね(汗)
お互い余裕が無かったと言え……おい、お話しろよ。決闘の前に。会話のキャッチボールって奴をよぉ。
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