前までのチーム戦ではWCS方式(LPが0になったら即敗者側の次走者のターンになる)で行っていましたが、WRGPからはアニメ方式(LPが0になったらエンドフェイズまで処理を行い、その後敗者側の次走者のターンとなる)でやっていきます。
「わぁ! カッコイイ!」
遊星達のガレージにて、フレアがDホイールと並んで立つ遊星とクロウを見比べながら感嘆の声を上げる。
「へへ! そうだろ!」
クロウが自身と遊星が身に纏っている新しいライディングスーツを交互に指差し、誇らしげに胸を張る。
遊星、ジャック、クロウを中心に、アキをサブメンバー、双子とブルーノをピットクルーに迎え、ついに結成されたライディングチーム”5D's”。遊星とブルーノで作り上げた新しいエンジンプログラムと、ボルガー&カンパニー社の協力により漸く完成したニューエンジン搭載のDホイールも揃い、準備万端の状態でWRGPのスタートラインへと立った。
「ねえフレア姉ちゃん……結局メンバーは見つかったの?」
「え? えーと……その……」
「おいおい!? まだ決まってないのかよ!?」
フレアが龍亞に対して答え難そうに言葉を濁していると、クロウが驚いた様子でフリントに顔を向ける。
「……一ヶ月前からずっとこの調子だ」
「馬鹿な! 登録は正午までだぞ!? まさか二人だけで出るのではあるまいな?」
ジャックが睨みつけるような表情でフレアとフリントに迫る。クロウやアキと同様、ジャックも二人との決闘を楽しみにしている。半端な戦力で挑まれたくはないのだ。
「えーと……五分五分――――」
「えーいうるさい! とにかくあと一人何処からか連れて来い! 正午までだぞ!」
そう言ってジャックは二人をガレージから追い出す。追い出された後、フレアは頬を膨らませながらガレージを睨んだ。
「何よ! 誰でもいいって訳じゃないんだから!」
「だからこそ、今悩んでいるんだからな。……フレア、俺は二人でも構わんが、やはり人数が多いに越したことはないだろう。本当にいい奴は見つからないのか?」
「いるけど……」
「いるのか? ……五分五分と言っているのは、そいつと交渉中だからなのか?」
「そういう訳じゃないの。でもその人次第かな……」
二人はそんな会話をしながら並んで歩いていると、分かれ道でフリントが時間を確認しつつ立ち止まる。
「俺はこれから仕事だ。正午までに受付所前で落ち合おう。……さっきも言ったが、俺は二人での出場でも構わない。お前が結成するチームだ。気負う必要は無いぞ」
「うん、ありがとうフリント」
* * *
「うーん……」
フリントと別れた後、特にする事の無いフレアはウィルダーネスに乗って一足先に受付所がある市内レーン前へとやって来ていた。ここで受付を済ませた後、各チームのお披露目を兼ねた
「(我侭なのは解ってるんだけど……)」
まだ受付時間には早いが、レーン内では幾つかのチームが既にレーンを確保して練習走行を行っており、フレアはそれを観客席から悩ましそうな表情で眺めている。
「(何期待してるんだろう私……返事もきてないし、大体Dホイールを持ってるかも怪しいのに……)」
フレアが溜息をついていると、後ろから嫌な笑い声と共に声を掛けられる。
「よぉ! 久しぶりじゃねーか優等生さんよぉ!」
フレアがその声に振り返ると、そこにはライディングスーツの男が三人。右側にはモミアゲが特徴的な小太りの男、左側には緑髪のすかした青年、そして中心には赤い前髪を持つ三人組みのリーダーらしき男が薄ら笑いを浮かべて立っている。フレアはその三人にどこか見覚えがあるように感じたが、はっきりと思い出せず首を傾げる。
「……誰?」
「テ、テメェ! 教習所で会っただろうが!」
「舐めやがって!」
「相変わらず変な格好しやがって!」
フレアは”教習所”という言葉を頼りにもう一度記憶を探ると、教習所のベンチ前で自分とアキに対して突っかかってきた三人組が思い浮かぶ。
「あ!? あの時の! 後変じゃないよ!」
「漸く思い出しやがったか……」
「あれ? そういえば何であなた達がライディングスーツを着てこんな所にいるの? アキちゃんからあなた達は落ちたって聞いたけど……」
フレアの言葉に男達は顔を引きつらせる。教習所にて彼等はアキと同じBクラスに入ったが、大口を叩いた割には思わしい成績を残せず、不合格となっていた。
「へっ! あの後二回受けなおして合格したんだよ!」
「馬鹿野郎! んな事堂々と言うんじゃねぇ!」
「つーわけで、晴れて俺等もDホイーラー! この三人でWRGPに出場するって事だ!」
「そうなんだ……頑張ってね」
フレアは素っ気なく言葉を返すと、興味を無くした様に彼等から視線を外す。元々フレアにとって彼等は好ましい人物ではない上、今は自分のチームの事で思い悩んでいる真っ最中。普段は人当たりの良いフレアだが、この時ばかりは相手にしなかった。
「こ、この……へっ! Sクラスを出た優等生様は俺達みてぇなドロップアウトは眼中に無いってか! 面白ぇ!」
男達のリーダー格がフレアの視界に無理やり入ると、左腕に付けたデッキホルダーを見せ付ける。
「どうだ? 俺達とライディング・デュエルしねぇか? あの時の借りを返してやるよ!」
「……今気分じゃないから、また今度ね」
「おやおや? まさかSランクの優等生様が怖気ついたのか? 俺達ドロップアウト相手に!」
「ならこんなとこいないで帰ってお人形遊びしてろよ!」
男達が一斉に笑うと、流石のフレアも頭にきたのか立ち上がって目の前のリーダー格を睨みつける。
「うるさいな! いいわよ! 相手になってあげる!」
* * *
フレア達はDホイールの準備を終えると使用レーンを申請し、スタートラインにDホイールを並べる。
「さあ! 最初の相手は誰?」
「へへ……俺だ」
フレアの横に並んだのはモミアゲの男。リーダー格の男と緑髪の男はニヤニヤしながら後ろで待機している。
「行くよ! ライディング・デュエル――――」
「「 アクセラレーション!!! 」」
フレアとモミアゲの男が同時にスタートすると、申請したレーン内へと入る。選ばれたレーンの第一コーナーが遠い為、先攻はDホイールの機能によってランダムに決定する事となった。
「よし、私の先攻――――って!?」
先行していたフレアが後方へ振り向くと、そこにはモミアゲの男だけでなく、他の二人までレーン内に入り込んでいた。
「何であなた達までここにいるのよ!?」
「何って、ハンデだよハンデ! 俺達はWRGPの方式でやらせてもらうぜ! 優等生相手なら当然だろ? それとも自信無ぇのかよ!」
「くっ……! いいわよ! 纏めて相手になってあげる! ドロー!」
フレア 手札:5→6
フレア SPC:0→1
モミアゲ SPC:0→1
「手札から《星見獣ガリス》の効果発動! デッキトップのカードを墓地へ送り、そのカードがモンスターだった場合、そのレベル×200ダメージを相手に与え このカードを特殊召喚する! それ以外の場合、このカードを破壊する! デッキトップのカードは――――レベル3の《ダンディライオン》! よって600ポイントのダメージを与え、ガリスを特殊召喚!」
フレアがカードを掲げると、空から3つの流星がモミアゲの男に向かって降り注ぐ。
「どわぁ!?」
モミアゲ LP:4000→3400
流星は全てモミアゲの男に命中し、空からガリスが現れフレアの場に舞い降りる。
ATK:800 レベル3
「墓地に送られたダンディライオンの効果により綿毛トークン2体を私の場に生成! そしてチューナーモンスター《キーマウス》を召喚!」
フレアの場に綿毛トークンとキーマウスが並ぶ。
DEF:0 レベル1
DEF:0 レベル1
ATK:100 レベル1
「レベル3《星見獣ガリス》と、レベル1《綿毛トークン》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」
キーマウスが首輪の錠に自分の尻尾を差込んで開錠させると、姿を1つの光輪に変え、その光輪はガリス達を囲み、4つの光、そして光の柱へと変えていく。
「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風と交わりて、彼方へ続く地平を駆けよ! シンクロ召喚! 嘶け! 《サンダー・ユニコーン》!」
光の柱から現れたのは”サンダー・ユニコーン”。場に降りるとその鋭い角で風を裂く様に走り出す。
ATK:2200 レベル5
「カードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
SPC:1
手札:3
モンスター
・綿毛トークン
・サンダー・ユニコーン
魔法・罠
・セット
「俺のターン!」
モミアゲ 手札:5→6
フレア SPC:1→2
モミアゲ SPC:1→2
「《ゴブリン突撃部隊》を召喚!」
モミアゲの男の場に武装した4匹のゴブリンが現れる。
ATK:2300 レベル4
「シンクロモンスターが何だってんだ! 攻撃力が低くちゃ何の意味も無いぜ! バトル! 突撃部隊でサンダー・ユニコーンを攻撃!」
「罠カード《くず鉄のかかし》を発動! 相手の攻撃を一度だけ無効にし、場に再びセットする!」
ゴブリン突撃部隊がサンダー・ユニコーンに向かって一斉に跳びかかると、直前でくず鉄のかかしに阻まれ、弾き返される。
「!? チクショウ! カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
LP:3400
SPC:2
手札:3
モンスター
・ゴブリン突撃部隊
魔法・罠
・セット
・セット
「私のターン!」
フレア 手札:3→4
フレア SPC:2→3
モミアゲ SPC:2→3
「《Sp-オーバー・ブースト》を発動! 自分のSPCを6つ増やす!」
フレア SPC:3→9
「モンスターをセット! そしてサンダー・ユニコーンの効果発動! 1ターンに1度、相手のモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時まで自分の場のモンスターの数×500ポイントダウンさせる! 私の場のモンスターは3体! よって1500ポイントダウン! 〈サンダー・スクレイプ〉!」
サンダー・ユニコーンがゴブリン達に向かって電撃を浴びせると、その部隊のリーダーらしき者以外のゴブリン達は気絶して倒れてしまう。
ATK:2300→800
「こ、攻撃力が!?」
「さらに《Sp-ファイナル・アタック》を発動! SPCが5つ以上ある時、SPCを2つ取り除く事で自分の場のモンスター1体の元々の攻撃力を倍にする! サンダー・ユニコーンの攻撃力を倍に!」
フレア SPC:9→7
ATK:2200→4400
「ふ、ふざけんな!? 4400なんて――――」
「ここで《スピード・ワールド2》の効果発動! 手札のSpを1枚を相手に見せ、SPCを7つ取り除く事でデッキからカードを1枚ドロー!」
見せたカード
Sp-スピードストーム
フレア SPC:7→0 手札:1→2
「引いたカードを伏せ、バトル! サンダー・ユニコーンでゴブリン突撃部隊を攻撃! 【サンダー・スピアー】!」
サンダー・ユニコーンが全エネルギーを角に集中させると、凄まじい速さで突撃し、モミアゲの男を角で貫く。
「うわぁーーー!!?」
モミアゲ LP:3400→0
モミアゲの男のLPが0になり、Dホイールが強制停止する。
ここでDホイールに設定された”WRGPルール”が適用され、勝者であるフレアのターンが強制的にエンドフェイズまで移行し、行える処理を行った後に敗北したチームの次走者のターンとなる。
「エンドフェイズ時にファイナル・アタックの効果を受けたサンダー・ユニコーンは破壊されるよ」
先程の攻撃で全てのエネルギーを使い果たしたサンダー・ユニコーンは徐々に減速し、最後はその場に倒れて消滅する。
「そしてオーバー・ブーストを使用したターンのエンドフェイズ時、私のSPCは1となる!」
フレア SPC:0→1
「ターンエンド! ……って聞こえてるかな?」
LP:4000
SPC:1
手札:1
モンスター
・綿毛トークン
・セット
魔法・罠
・セット(くず鉄のかかし)
・セット
フレアはウィルダーネスを止めて後方を見ると、遥か後ろでセカンド・ホイーラーである緑髪の男がモミアゲの男から場のカードを取り上げて漸く走り出そうとしていた。
フレアはそれを見て溜息をつく。
「(遅~い! 何秒立ったと思ってるのよ!)」
WRGPルールでは偶然にも鬼柳が考案した”満足ラッシュ方式”と同様に敗者の場のカードが次走者へと引き継がれる様になっている。
この時、前走者と次走者が協力し合って迅速に引き継ぎを済ませるべきなのだが、モミアゲの男はあっさり負けたショックで呆然としており、緑髪の男は見苦しい程慌てながらカードを場にセットし、モタモタしながらDホイールを走らせ、リーダー格の男はフレアの横で停止し、イラつきながら緑髪の男を大声で急かしている。
「(駄目だわこの人達……これもうライセンス以前の問題よ)」
まるで協調性の無い三人に呆れながら、フレアは緑髪の男がやって来るのに合わせてウィルダーネスを走らせる。
「モミアゲ野郎を倒したくらいでいい気になるなよ! あいつが一番ビビリで弱いんだ!」
「御託はいいから! 始めましょう!」
「「 デュエル!!! 」」
続けてフレアと緑髪の男の決闘。ターンは敗北側の次走者である緑髪の男から始まる。
「俺のターン!」
緑髪 手札:5→6
フレア SPC:1→2
緑髪 SPC:3→4
「モミアゲが伏せた永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《ゴブリン突撃部隊》を特殊召喚! そして《ジャイアント・オーク》を通常召喚!」
緑髪の男の場に突撃部隊が復活し、その中心に骨の棍棒を持った巨体の怪物が現れる。
ゴブリン突撃部隊 ATK:2300 レベル4
ジャイアント・オーク ATK:2200 レベル4
「そしてもういっちょ永続罠《最終突撃命令》を発動! こいつが場にある限り、場の表側表示のモンスターは全て攻撃表示となり、表示形式を変更出来なくなる! 雑魚モンスターを無防備にしてやるぜ!」
緑髪の男が永続罠を発動させると、フレアの場にいた綿毛トークンが意を決した様な表情になり、攻撃体勢をとる。
DEF:0→ATK:0
「バトル! ゴブリン突撃部隊で綿毛トークンを攻撃!」
「《くず鉄のかかし》を発動!」
突撃した部隊がまたもやかかしに弾き返されると、ゴブリン突撃部隊は緑髪の男に白い視線を送りながら元の場へと戻る。
「あ!? くそ忘れてたぜ! だがモンスターはまだいる! ジャイアント・オーク!」
今度はジャイアント・オークが棍棒を振るい、綿毛トークンを叩き潰す。
「きゃあ!? ……くっ! 罠カード《ダメージ・ゲート》を発動! 自分が戦闘ダメージを受けた時、受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ自分の墓地のモンスター1体を特殊召喚する! 来て! 《サンダー・ユニコーン》!」
フレア LP:4000→1800
綿毛トークンがいた場所の空間が歪むと、その歪みの中からサンダー・ユニコーンが姿を現す。
ATK:2200 レベル5
「またそいつかよ!? くそ! バトルフェイズ終了! この時攻撃したジャイアント・オークは守備表示になるが、最終突撃命令の効果ですぐに攻撃表示に戻る! カードを伏せてターンエンドだ!」
LP:4000
SPC:4
手札:4
モンスター
・ゴブリン突撃部隊
・ジャイアント・オーク
魔法・罠
・リビングデッドの呼び声(ゴブリン突撃部隊)
・最終突撃命令
・セット
「私のターン!」
フレア 手札:1→2
フレア SPC:2→3
緑髪 SPC:4→5
「セットモンスター《ぴよコッコ》を反転召喚!」
フレアの場に伏せられていたぴよコッコが姿を現すと、何かを呼ぶ様に鳴き声を上げる。
ATK:300 レベル1
「ぴよコッコのリバース効果発動! デッキからレベル5以上のチューナー1体を特殊召喚! 来て! 《クイック・シンクロン》!」
ぴよコッコの声に応えてフレアの場にクイック・シンクロンが現れると、同時に現れたルーレットのドリル・シンクロンを拳銃で撃ち抜く。
ATK:700 レベル5
「レベル1《ぴよコッコ》に、レベル5《クイック・シンクロン》をチューニング!」
クイック・シンクロンが自身を5つの光輪へと変え、ぴよコッコを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野に生まれし螺旋の槍よ! 大地を砕き、天穹を貫け! シンクロ召喚! 破砕の戦士! 《ドリル・ウォリアー》!」
光の柱から現れたのはフレアのエースモンスター”ドリル・ウォリアー”。 勇ましい掛け声と共に右腕のドリルを回転させ、緑髪の男に対して構える。
ATK:2400 レベル6
「に、2体目のシンクロモンスター!?」
「《Sp-スピードストーム》発動! SPCが3つ以上在る場合、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
ウィルダーネスから竜巻が放たれ、緑髪の男を襲う。
「うわぁ!?」
緑髪 LP:4000→3000
「続けて《Sp-ラピッド・ショット・ウィング》を発動! SPCが3つ以上在る場合、自分のモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時までSPC×200ポイントアップ! 私のSPCは3つ! 《サンダー・ユニコーン》の攻撃力を600ポイントアップ!」
フレアの場にブースターが付いた飛行ユニットが現れ、サンダー・ユニコーンの背中に取り付けられる。
ATK:2200→2800
「これでサンダー・ユニコーンでもモンスターを倒せる!」
「ぐぐ……!」
「(モミアゲといい、こいつといい、あっという間に追い詰められてんじゃねぇよ。……まあいい、頃合だな)」
リーダー格の男はボタンが付いたリモコンの様な物を取り出し、ボタンを押す。
「バトル! ドリル・ウォリアーで――――!?」
突然鳴り響いた破裂音。それと同時にウィルダーネスが警告音を鳴らして強制停止する。
「何!? どういう事!?」
フレアはウィルダーネスのモニターを確認する。
”異常発生 内部パーツ破損により、セーフティ起動”
「破損……!?」
フレアがウィルダーネスの車体を見ると、一部分に黒い焦げ跡が見える。どうやら内部で小さな爆発が起こったらしく、それによりウィルダーネスの安全装置が働いて急停止したようだ。
「おいおい! ちゃんと整備してないのかよ? それでも優等生……いや、Dホイーラーなのかよ?」
「可哀相にねーそのDホイールちゃん」
リーダー格の男と緑髪の男がニヤケながら近づいて来る。
「整備は一度も欠かした事なんてないわよ! 今日だってすっごく調子良かったのに、どうして……」
「おいおい言い訳かよ? これだから女はやだねぇ。偉そうな事たれてたくせに、都合が悪くなるとこれだからよ」
「そ、そんなんじゃ――――」
「もう結構だ! 見苦しいんだよ! これに懲りたら、大人しく家に帰ってお人形ごっこでもしてるんだな!」
そう言って二人は大笑いすると、フレアは涙ぐんで俯いてしまう。馬鹿にされた事もそうだが、本当の原因を知らないフレアは本気で自分の落ち度だと信じてしまい、Dホイーラーとしての”心”に大きな傷を負ってしまったようだ。
「はっはっは! ざまァねぇな――――ぎゃ!?」
「だぁ!?」
大笑いしていた二人は突然奇声を上げると、背中を押さえて悶え始める。フレアが二人の足元に目を向けると、そこには白紙のカードが2枚落ちていた。
「……大丈夫か?」
「!? フリント! どうしてここに……?」
後方からイグニッションに乗ったフリントがやってくると、フレアの前で停止する。
「どうしても何も、もうすぐ時間だぞ。時間はちゃんと確認しておけ」
フリントはイグニッションから降り、ウィルダーネスに近づいて焦げ跡付近を注視する。
「……小型爆弾だな」
「え……?」
「一般道路からこのレーンでお前が決闘しているのが見えてな。お前はあっちの緑髪とモミアゲを見ていて気付いていなかったが、あの男がお前の横で止まった時、ウィルダーネスに”何か”を取り付けていたのを見た。おそらくリモコン式の小型爆弾だろう」
「!?」
フリントが漸く落ち着きを取り戻したリーダー格の男を眼で差すと、フレアも眼を向けて男を睨みつける。
「私のDホイールになんて事するの! 最低!」
「ふざけんな! 俺がやったって証拠はあるのかよ! 大体テメェは何だ! 部外者が入ってくるんじゃねぇよ!」
「俺は部外者ではない。この娘のチームメンバー……次走者だ」
そう言うとフリントはイグニッションに跨り、ヘルメットを被る。
「続きをしよう。俺がセカンド・ホイーラーとして走る」
「は、はぁ!? 何言ってんだテメェ!」
「勿論タダでとは言わない。俺はこの娘の少なくなったLPを引き継ぎ、他の全てはリセットしよう。どうだ?」
「この決闘は俺等とこいつの決闘だ! もう勝負は終わったんだよ! 何でわざわざテメェと決闘しなくちゃならねぇんだ!」
「……そうか、”まともに決闘もできない”連中だと思ったからここまでハンデをつけてやったというのに、それでもお前達はできないのか」
「テメェ今なんつった! いいだろうやってやる! おい行くぞ!」
リーダー格の男は緑髪の男を促し、再びDホイールに跨る。
「フレア、先に戻っていろ。遊星達も来ている頃だ。ブルーノにウィルダーネスを診て貰え」
「うん……フリント、絶対にあいつをやっつけてね」
「ああ、任せろ。……行くぞ――――」
「「 デュエル!!! 」」
フリントと緑髪の男、予定外であるセカンド・ホイーラー同士の決闘が始まる。ターンプレイヤーは敗者側の次走者であるフリント。
「俺のターン!」
フリント 手札:5→6 LP:1800
フリント SPC:0→1
緑髪 SPC:5→6
「(へっ! あのLPでこっちは二人だ。負ける要素なんてねぇ!)」
フリントの実力を知らない緑髪の男は余裕そうな表情で視線をフリントに向けると、フリントはそれに対して怒りの表情を向けて返す。
「(ライディング・デュエルを汚した罪、償ってもらうぞ!) 相手の場のみモンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる! 来い! チューナーモンスター《アンノウン・シンクロン》!」
フリントの場に二本のアンテナが付いた目玉の様な機械が現れる。
ATK:0 レベル1
「そして場のモンスター1体を手札に戻すことで、手札からチューナーモンスター《A・ジェネクス・バードマン》を特殊召喚!」
アンノウン・シンクロンが風に包まれて姿を消すと、その風の中からA・ジェネクス・バードマンが姿を現す。
ATK:1400 レベル3
「そして《ヴォルカニック・エッジ》を通常召喚!」
続けてフリントの場にヴォルカニックの尖兵であるヴォルカニック・エッジが現れる。
ATK:1800 レベル4
「ヴォルカニック・エッジの効果発動! 1ターンに一度、自身の攻撃を放棄する代わりに500ポイントのダメージを相手に与える!」
ヴォルカニック・エッジが緑髪の男に向かって火炎を吐き出す。
「うお!? うぜぇ事しやがって……!」
緑髪 LP:3000→2500
「レベル4《ヴォルカニック・エッジ》に、レベル3《A・ジェネクス・バードマン》をチューニング!」
A・ジェネクス・バードマンが自身を3つの光輪へと変え、ヴォルカニック・エッジを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。
「GASシステム、起動! セットアップ”フレイム”! ……大自然より授かった英知の結晶よ、偉大なるその力を示せ! シンクロ召喚! 《A・ジェネクス・トライフォース》!」
光の柱から現れたのは”A・ジェネクス・トライフォース”。右腕の回転式レーザー砲を回転させ、上部に位置した砲口を赤く光らせる。
ATK:2500 レベル7
「自身の効果で特殊召喚されたA・ジェネクス・バードマンは場を離れた時、除外される。……カードを2枚伏せ、バトル! トライフォースでゴブリン突撃部隊を攻撃! 【トライフォース・キャノン】!」
トライフォースが突撃部隊に向かってレーザーを連射すると、一匹も洩らさずに撃ち抜いて破壊する。
「ちっ! だがこの程度何ともねぇよ!」
緑髪 LP:2500→2300
「ならこれはどうだ? トライフォースの効果発動! 炎属性をシンクロ素材とした場合、このカードが戦闘破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! 【フレムベル・フォース】!」
トライフォースが赤く光る砲口を緑髪の男に向かって構えると、炎の様に赤い光線を放つ。
「ぐあぁーーー!!! き、効いた……」
緑髪 LP:2300→0
緑髪の男のLPが0になり、Dホイールが強制停止する。
「ターンエンドだ!」
LP:1800
SPC:1
手札:2
モンスター
・A・ジェネクス・トライフォース
魔法・罠
・セット
・セット
フリントはターンを終了させてイグニッションを停止させると、後方の二人に眼を向ける。
見ると先程のモミアゲの男の様に呆然としている緑髪の男からリーダー格の男が場のカードを奪い取り、自分の場に出際よくセットしこちらへと走り出していた。
「(密かに爆弾をセットできるだけあって、手際はいいようだな)」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ! 俺が叩き潰してやる!」
「「 デュエル!!! 」」
フリントとラスト・ホイーラーであるリーダー格の男の決闘が始まる。
「俺のターン!」
リーダー格 手札:5→6
フリント SPC:1→2
リーダー格 SPC:6→7
「! ……くっくっく! ついてるぜ! 俺の切り札を見せてやるよ! ジャイアント・オークをリリース! 《
ジャイアント・オークが光の中へと消えると、その光の中から凄まじい威圧を放つ上級悪魔が現れる。
ATK:0 レベル6
「ガーゼットの効果! こいつの攻撃力はリリース素材の攻撃力の2倍の数値となる!」
ATK:0→4400
「4400だと……!?」
「そうだ! これで俺達の勝ちだ! バトル! ガーゼットで攻撃!」
「罠カード《スキル・サクセサー》! トライフォースの攻撃力を400ポイントアップ!」
ATK:2500→2900
ガーゼットがトライフォースに向かって拳を放つと、トライフォースはバラバラに砕け散り、破片がフリントを襲う。
「ぐあぁぁぁ!!? (こ、これは……!)」
フリント LP:1800→300
攻撃を受けた瞬間、フリントの体に凄まじい痛みが走り、イグニッションは大きくバランスを崩してしまうが何とかクラッシュせずに持ちこたえる。
その隙にリーダー格の男が大笑いしながらフリントを追い抜いた。
「ハッハッハ! どうだ”最強の不良品”の一撃はよ? ここでやられときゃこれ以上痛い目に遭わずに済んだのによ!」
「”最強の不良品”……成る程、密かに出回っているという違法カードだな」
どうやらリーダー格が召喚したモンスターはボルガーが所持していた”ブラッド・メフィスト”と同じ実際のダメージを与えてしまう違法カードの一枚らしい。イグニッションのフレームは異常な程頑丈なので傷一つ付いていないが、フリントの方は痛みのせいで顔を歪めている。
「おいおい大丈夫かよ? さっきまでの威勢はどうしたんだよ?」
「心配するな。決闘は続けられる。……これで遠慮無くお前達をセキュリティにつき出せるな」
「ハッ! その前にテメェを事故に見せかけて消しちまえば問題ねぇ! 永続罠《リビングデッドの呼び声》発動! 墓地から《ジャイアント・オーク》を復活! そのままバトルだ!」
ATK:2200 レベル4
リーダー格の男が復活したジャイアント・オークに命令するが、ジャイアント・オークは尻込んで動かない。
「おい何して――――!?」
リーダー格の男がジャイアント・オークの視線の先を見ると、そこには倒れたはずの”A・ジェネクス・トライフォース”が光に包まれて立っていた。
「罠カード《奇跡の残照》を発動! ターン中に戦闘破壊されたモンスター1体を墓地から特殊召喚する! ……これでも攻撃するか?」
ATK:2500 レベル7
「くそ! 中止だ! カードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
SPC:7
手札:4
モンスター
・偉大魔獣 ガーゼット
・ジャイアント・オーク
魔法・罠
・最終突撃命令
・リビングデッドの呼び声(ジャイアント・オーク)
・セット
「俺のターン!」
フリント 手札:2→3
フリント SPC:2→3
リーダー格 SPC:7→8
「手札から《A・ジェネクス・ケミストリ》の効果発動! 属性を一つ宣言し、このカードを捨てる事で自分の場のジェネクス1体を宣言した属性に変更する! 《A・ジェネクス・トライフォース》を”風属性”へ変更!」
A・ジェネクス・トライフォース 闇属性→風属性
「チューナーモンスター《リサイクル・ジェネクス》を召喚!」
フリントの場にリサイクル・ジェネクスが現れるが、動く気力が無いのかそのまま後方へ流されていきそうになり、間一髪のところでトライフォースが掴んで助ける。
ATK:200 レベル1
「レベル7《A・ジェネクス・トライフォース》に、レベル1《リサイクル・ジェネクス》をチューニング!」
リサイクル・ジェネクスが自身を1つの光輪へと変え、トライフォースを囲み、7つの光、そして光の柱へと変える。
「R-GSシステム、起動! レアル融合炉、反応良し! ……大いなる天空を支配し、己が正義を示せ! シンクロ召喚! 舞い上がれ! 《レアル・ジェネクス・ヴィンディカイト》!」
光の柱から現れたのは緑色のジェット機。現れると同時にレアル融合炉が生み出す超出力で一気に遥か上空へと飛び立ち、急降下してフリントの横に並ぶ。
ATK:2400 レベル8
「何を出すかと思いきや、さっきの奴より弱いじゃねーか!」
「バトル! ヴィンディカイトでジャイアント・オークを攻撃! 【パーフェレイト・ヴィンディケイト】!」
ヴィンディカイトが出力を全開にしてジャイアント・オークに対して突撃し、そのまま胴体を貫いて破壊する。
「チィ! だがガーゼットを倒せないんじゃ意味がねぇなぁ!」
リーダー格 LP:4000→3800
「ヴィンディカイトの効果発動! 戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、デッキからジェネクス1体を手札に加える事ができる! 《A・ジェネクス・ドゥルダーク》を手札に! ターンエンドだ!」
フリント 手札:1→2
LP:300
SPC:3
手札:2
モンスター
・レアル・ジェネクス・ヴィンディカイト
魔法・罠
・無し
新たなるシンクロモンスターを召喚して体勢を立て直そうとするフリントであったが、そのLPは既にデッドラインである800を下回ってしまっており、ここでリーダー格の男がSpを引いてしまえばその時点で防ぐ手立ての無いフリントの敗北となる。
「へっ! 結局ガーゼットは倒せないみてぇだな! これで終わりにしてやるぜ! 俺のターン!」
リーダー格 手札:4→5
フリント SPC:3→4
リーダー格 SPC:8→9
引いたカード
魔宮の賄賂
リーダー格の手札
カードガード
野望のゴーファー
遅すぎたオーク
秒殺の暗殺者
「(くそ! 何でSpがこねぇんだよ! しかも手札はモンスターばかり……)」
「来る訳がない」
「あ?」
「卑劣な行為に違法カード……まともに戦おうともしないお前を、カードは勝利へと導きはしない。決闘とはそういうものだ」
「テメェ……! 偉そうな事ぬかすんじゃねぇ! 大体来ても来なくてもこれで終わりなんだよ! バトル! ガーゼットで攻撃――――って、またかよ!? 何してんだ!」
リーダー格の男がガーゼットに攻撃命令を出すが、ガーゼットは悔しそうに上を見上げたまま動かない。その視線を辿ると、遥か上空を飛ぶヴィンディカイトの姿があった。
「ヴィンディカイトは攻撃対象に選択できない。俺の場にはヴィンディカイト1体のみ。よって、お前のモンスターは攻撃できない」
「クソが……! バトルフェイズ終了! 《カードガード》を召喚!」
リーダー格の男の場にエイの様な胸ビレを持つ紅白色の悪魔が現れる。
ATK:1600 レベル4
「こいつの召喚・特殊召喚に成功した時、こいつにガードカウンターを1つ置く。そして1つにつき攻撃力を300ポイントアップ!」
カードガード ガードカウンター:0→1 ATK:1600→1900
「そして効果発動! 1ターンに一度、このカードに乗っているガードカウンターを1つ取り除き、このカード以外の自分の場の表側表示のカード1枚にガードカウンターを1つ置く事ができる! 《偉大魔獣 ガーゼット》にガードカウンターを置くぜ!」
カードガード ガードカウンター:1→0 ATK:1900→1600
偉大魔獣 ガーゼット ガードカウンター:0→1
「カードを伏せてターンエンドだ!」
LP:3800
SPC:9
手札:3
モンスター
・偉大魔獣 ガーゼット(ガードカウンター:1)
・カードガード
魔法・罠
・最終突撃命令
・セット
・セット
「俺のターン!」
フリント 手札:2→3
フリント SPC:4→5
リーダー格 SPC:9→10
「《Sp-フォース》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、モンスター1体の攻撃力を半分にし、半分にした分だけ別のモンスターの攻撃力をアップする!」
「ああ? させねぇよ! カウンター罠《魔宮の賄賂》発動! 相手にカードを1枚ドローさせる代わりに、魔法・罠の発動を無効にして破壊だ!」
フリントが発動したSpが効果を発揮する事なく消滅すると、フリントはデッキからカードをドローし、確認した後すぐにそれを発動させる。
「《Sp-ハーフ・シーズ》を発動! SPCが3つ以上存在する場合、相手のモンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分だけ自分のLPを回復する! 《偉大魔獣 ガーゼット》の攻撃力を半分にし、その数値分だけ回復する!」
イグニッションから青い光球が放たれると、ガーゼットに命中してパワーを奪い、再びイグニッションへと戻っていく。
ATK:4400→2200
フリント LP:300→2500
「何だと!? (くそ! 何であいつにばかりSpが!)」
「《A・ジェネクス・ドゥルダーク》を召喚!」
フリントの場に青いアーマーに身を包んだ、少し暗い雰囲気のロボットが現れる。
ATK:1800 レベル4
「ドゥルダークの効果発動! 1ターンに一度、このカードと同じ属性を持つ相手の攻撃表示モンスター1体を破壊できる! ドゥルダークと同じ”闇属性”である《偉大魔獣 ガーゼット》を破壊!」
ドゥルダークがガーゼットに右掌を向けて波動を放つが、ガーゼットはその波動を受けても倒れない。
「くそ! ガードカウンターを置いたカードが破壊される場合、代わりにガードカウンターを取り除く事で破壊を免れる!」
「バトル! ヴィンディカイトでガーゼットを攻撃!」
無防備となったガーゼットにヴィンディカイトが突撃し、ジャイアント・オークと同様に胴体を貫いて破壊する。
「ガ、ガーゼットが……!?」
リーダー格 LP:3800→3600
「ヴィンディカイトの効果により、デッキから《ジェネクス・コントローラー》を手札に!」
フリント 手札:1→2
「ドゥルダークは効果を発動したターン、攻撃を行えない。ターンエンド!」
LP:2500
SPC:5
手札:2
モンスター
・レアル・ジェネクス・ヴィンディカイト
・A・ジェネクス・ドゥルダーク
魔法・罠
・無し
「ク、クソ! 俺のターン!」
リーダー格 手札:3→4
フリント SPC:5→6
リーダー格 SPC:10→11
引いたカード
Sp-エンジェル・バトン
「(遅ぇんだよクソ!) SPCを4つ取り除き、《Sp-エンジェル・バトン》を発動! カードを2枚ドローし、手札から1枚を墓地へ送る!」
リーダー格 SPC:11→7 手札:3→5→4
リーダー格の男は引いたカードを確認した瞬間、笑みを浮かべて手札のカードを墓地へと送る。
墓地へ送ったカード
秒殺の暗殺者
「へっへっへ……どうやら天は俺に味方したようだぜ! 手札を1枚捨て、《Sp-死者転生》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、墓地からモンスター1体を手札に加える! 《偉大魔獣 ガーゼット》を手札に!」
リーダー格 手札:3→2→3
捨てたカード
野望のゴーファー
「ガーゼットだと……!?」
「その通りよぉ! またくらわせてやるぜ! カードガードをリリース! 《偉大魔獣 ガーゼット》をアドバンス召喚!」
カードガードが光の中へと消えると、その光の中からガーゼットが現れ、再びリーダー格の男の場に君臨する。
ATK:0→3200 レベル6
「パワーは大分下がっちまったが、十分だ! バトル! ガーゼットでドゥルダークを攻撃!」
ガーゼットがドゥルダークに拳を振るうと、ドゥルダークは無残にも砕け散り、残骸がフリントを襲う。先程の攻撃でガーゼットの力を思い知ったフリントは体を屈めて衝撃に備える。
「ぐおぉ……! ぐッ……!」
フリント LP:2500→1100
覚悟を決めて受けた事により、先程よりはバランスを崩さずにイグニッションを制御し切ったフリント。だが決してダメージは軽いものではなく、さらに優勢だった状況がまたもやピンチへと変わってしまった。
「頑張るねぇ! だが次で終わりだ! ターンエンド!」
LP:3600
SPC:7
手札:2
モンスター
・偉大魔獣 ガーゼット
魔法・罠
・最終突撃命令
・セット
先程リーダー格がエンジェル・バトンの効果でドローしたカードは”Sp-死者転生”と”Sp-死者蘇生”。そしてリーダー格はSPCを6個持つ。次のリーダー格の男のターンでSPCは9個、SPCを10個消費する”死者蘇生”は使えないが、代わりに”スピード・ワールド2”のバーン効果を2回使用でき、これが決まればフリントは1600ポイントのダメージを受けて敗北する事となる。戦闘を防げるヴィンディカイトがいても、効果ダメージは防げない。
この状況と体の痛みによって絶体絶命となったフリントだが、その表情に曇りは無い。
「俺のターン! (恐ろしい力を持つ”違法カード”……だがそれだけだ)」
フリントはデッキトップに指を掛け、力を込めて引き抜く。
「(力だけでは超えられない……”決闘者の力”を見せてやる)」
フリント 手札:2→3
フリント SPC:6→7
リーダー格 SPC:7→8
「LPを1000ポイント払い、《Sp-
フリント LP:1100→100
フリントの場の空間が渦巻くと、その中心からドラゴンを模した戦車が現れる。
ATK:1000 レベル5
「そしてチューナーモンスター《ジェネクス・コントローラー》を通常召喚!」
続けてフリントの場にジェネクス・コントローラーが現れると、隣にいたパンツァードラゴンや上空にいるヴィンディカイトとコンタクトを取ろうとしているのか、よく解らない言語と一緒に何かの電波を飛ばす。
ATK:1400 レベル3
「レベル5《重装機甲 パンツァードラゴン》に、レベル3《ジェネクス・コントローラー》をチューニング!」
ジェネクス・コントローラーが自身を3つの光輪へと変え、パンツァードラゴンを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。
「GASシステム、起動! コントロール・ユニット、セット! フルドライブ! ……偉大なる技術の結晶よ! 限界を超え、その先へと到達せよ! シンクロ召喚! 駆け抜けろ! 《A・ジェネクス・アクセル》!」
光の柱から現れたのは銀色のボディを持ち、足が車輪となっている人型起動兵器。背中の大きなリングの側面に取り付けられている二つのブースターを起動させると、Dホイールに劣らぬ速度で地面を走り、イグニッションの横に並ぶ。
ATK:2600 レベル8
「何だよまたシンクロか? どれを出しても一緒だっつーの!」
「それはどうかな? アクセルの効果発動! 1ターンに一度、手札を1枚捨てる事で自分の墓地に存在するレベル4以下の機械族1体を特殊召喚する! 来い! 《A・ジェネクス・ドゥルダーク》!」
捨てたカード
アンノウン・シンクロン
アクセルの背にあるリングが輝き出すと、リングの中からドゥルダークが飛び出してくる。
「この効果で特殊召喚されたモンスターは直接攻撃ができず、エンドフェイズ時に除外される代わりに攻撃力が倍となる!」
ATK:1800→3600 レベル4
「ば、ば、倍だとぉ!?」
「バトル! ドゥルダークでガーゼットを攻撃!」
ドゥルダークが今度は両掌をガーゼットに向けて波動を放つと、ガーゼットを跡形も無く消し飛ばす。
「ガーゼット!? ぐぐぐ……!」
リーダー格 LP:3600→3200
「アクセルで直接攻撃! 《アクセル・シュート》!」
「だがまだ手はある! 罠カード《ガード・ブロック》を発動! この戦闘でのダメージを0にして1枚ドロー!」
アクセルがありったけのスピードとパワーを込めた鋭い蹴りを放つが、リーダー格の男の前に現れた光の障壁によって弾かれてしまう。
リーダー格 手札:2→3
「ふっふっふ……温存しておいてよかったぜ! これでヴィンディカイトの攻撃を受けてもLPは残る! お前の手札は0! ワールド2の効果も使えまい! そして俺の手札にはSpがある! これで俺の勝ちだ!」
リーダー格の男が勝ち誇って笑うと、フリントは不敵な笑みを浮かべる。
「奇遇だな。俺も温存しておいたカードがある」
「は?」
「墓地から罠カード《スキル・サクセサー》を発動! このカードを墓地から除外する事で、自分のモンスター1体の攻撃力を800ポイントアップさせる! 《レアル・ジェネクス・ヴィンディカイト》の攻撃力をアップ!」
ATK:2400→3200
「あ、あ、あ、ば、馬鹿な……!?」
「これが”決闘者”とそうでない者の差だ。……【パーフェレイト・ヴィンディケイト】!」
ヴィンディカイトが出力を全開にして飛び上がると、リーダー格の男目掛けて急降下、そのまま激突する。
「ぐわぁぁぁーーーー!!?」
リーダー格 LP:3200→0
決闘が終了し、リーダー格のDホイールが強制停止する。
フリントもイグニッションを停止させて振り向くと、リーダー格の男はバランスを崩してクラッシュしたらしく、Dホイールから投げ出されて気絶していた。
フリントは市内レーンの管理局に連絡を入れてから、気絶しているリーダー格の側に立つ。
「……刑務所から出たら、アカデミア小等部からやり直して決闘者の心を学んでくるといい。教習所はその後だ」
* * *
「もー! 本当に腹立つ!」
「あの男達は治安維持局が裁く。だからもう気を静めろ」
ブルーノにウィルダーネスを預けたフレアとフリントはWRGPの参加受付所を目指して歩いていた。
ブルーノによるとそれ程大きな損傷は無いとのことだが、取り替えなければならない重要なパーツがあるらしく、あり合わせのパーツではどうにもならないという。
「だって練習走行に参加出来なくなっちゃったのよ!? 最悪よ~!」
「……ほら、着いたぞ」
市内レーン管理局の前に設置された天幕。その下で受付嬢が書類を纏めている。時刻は11時50分。
「何とか間に合ったな。……チームは俺達二人、ということでいいんだな?」
「うん……」
フレアが受付の前に立つと、受付嬢が作業を中断し笑顔で応対してくれる。
「こちらWRGP参加登録受付です! ご参加ですか?」
「あ、はい。参加です」
「それではチーム・メンバーの登録名と、チーム名をどうぞ! 登録名はフルネームから普段の呼び名まで、何でも結構ですよ!」
「えっと……じゃあ”フレア”です」
「”フリント”」
「はい! ……お二人だけですか?」
「え、あ、はいそう――――」
この瞬間、凄まじいエンジン音と走行音が遠くの方で鳴り響く。この場にいた全員がその音に反応して振り向くと、音が段々こちらへ近づいて来ていることが分かる。
「な、何!?」
「……暴徒か何かか?」
音はどんどん大きくなり、そしてとうとう音の正体が姿を現した。
「ヒャッハー!!!」
「「 !? 」」
フレア達から見える曲がり角からハイテンションな奇声と共に姿を現した巨大なDホイール。フレアとフリントはそのDホイールと、車上の人物に見覚えがあった。
二人は呆気に取られながらDホイールを見ていると、車上の人物も二人に気付く。
「お! ドンピシャだぜ! よぉ~久しぶりだな! 3、4ヶ月ぶりってとこか? 元気そうじゃねぇか!」
車上の人物はDホイールから降りると、馴れ馴れしく二人に近づき、肩を叩く。
最初は呆気に取られていたフレアだったが、みるみる顔に喜色を浮かべ始める。だがフリントはまだ状況を理解し切れていないらしく、頭を抱えてから目の前の人物に向き合う。
「……色々と聞く事がある。まず一つ目。お前はここで何をやっているんだ。……”鬼柳”」
「そりゃこいつを見れば解るだろう? WRGPに参加しに来たのさ! フレアに誘われてな!」
そう言って目の前の人物――――”鬼柳 京介”は自身が乗ってきた巨大なDホイールを叩く。
「しっかしフレアよぉ、あの控えめな手紙は何だよ? もっと熱く勧誘しないと乗ってこねぇぞ?」
「……鬼柳にはサティスファクションタウンで”やる事”があるでしょ? だから誘うのに少し抵抗があって……でも鬼柳、来るなら何で返事を返してくれなかったの? 凄く不安だったんだから!」
「悪ぃ悪ぃ! 驚かせてやろうと思ってな!」
鬼柳が頭を掻きながら笑うと、フリントは呆れた様な表情で腕を組む。
「色んな意味で驚いたぞ。……フレア、お前が言っていたのは鬼柳の事だったんだな?」
「うん、でも最初は鬼柳を誘う気は無かったの。でも仲間探ししてる内に、”やっぱり鬼柳じゃないと駄目だな”って思う様になって……だから駄目元で手紙を出してみたの。返事が帰って来なかったから、駄目だったのかなって思ったけど」
「成る程、曖昧だったのはそのせいか。……鬼柳、こちらとしてはありがたいが、お前が留守にして大丈夫なのか?」
「俺も最初は迷ったけどよ、何かこう……滾って来ちまってな! 爺さんに手紙見せて頼み込んだら、大会期間中だけリーダーを変わってくれたぜ! 嫌味言われたけどな!」
引退した年寄りに仕事させやがって……大体新しい頭がそれじゃ下に示しがつかねぇだろうが。孫が関係してなかったら絶対に許さなかったからな? 覚えて置けよ?
「お爺ちゃんごめんなさい……」
「ま、何だかんだ言って町中の連中が応援してくれたぜ! だから心配はいらねぇよ!」
「……解った。鬼柳、よろしく頼む」
「おう! 任せろ! 満足させてやるぜ!」
フリントは鬼柳と握手を交わすと、一息ついてから改めて鬼柳に向き合う。
「では、次だ。鬼柳、その頭と格好はどうした?」
「どうしたって、これからライディング・デュエルの頂点取りに行くんだろ? ならこの格好だろうが! フレアだって解ってんのに何言ってんだお前は!」
現在目の前にいる鬼柳は、数ヶ月前に会った時とはまったく違う姿になって――――いや、戻っていた。
伸ばしっぱなしになっていた長髪をばっさりと切り、服装はフィンガーレスグローブにジーンズ、赤いシャツにバンダナ、そして”満足ジャケット”――――そう、今の鬼柳は4年前の、”チーム・サティスファクションのリーダー”そのものの姿となっていた。違うのは昔より少し体のサイズが大きいことと、顔にマーカーが付いていることくらいである。
「(見た目だけじゃない……性格もあの頃に戻っている)」
「またあの頃の鬼柳に逢えるなんて……私ちょっと感動しちゃった」
「ハッハッハ! もう暴走したりはしないからよ! 今度こそ皆で満足しようぜ!」
互いに笑い合う鬼柳とフレア。フリントは一息ついた後、鬼柳が乗ってきたDホイールに眼を向ける。
「……鬼柳、これは」
「おおこいつか! まあ見ての通りロットンの野郎が乗ってた奴だ」
鬼柳とロットンの決闘の後、”旧クラッシュ・ファミリー”の構成員が密かに回収していたらしく、勿体無いという事で修理と改造を施し、鬼柳が使う事にしたのだという。
「名付けて”大満足号”だ! こいつでライディング・デュエルして満足してやるぜ!」
「……お前がいいなら、それでいいが」
「あのう……ご参加の方でしょうか?」
三人が話し込んでいると、受付嬢がおそるおそる鬼柳に尋ねる。フレアはびくりと体を震わせ、時刻を確かめた。
「わぁ!? もう締め切り2分前!? ほら鬼柳急いで!」
「うお! ギリギリじゃねぇか! あれ以上道に迷ってたらアウトだったな」
鬼柳は受付の前に立ち、同じタイミングで受付に戻った受付嬢と向き合う。
「えーと、そちらの方達と同じチームの方ですか?」
「おう!」
「それでは登録名と、チーム名をお願いします!」
「ああ――――」
”鬼柳 京介”、そして”チーム・サティスファクション”だ! ……満足させてくれよ?
という訳で、最後のメンバーは不満足先生改め、満足町町長改め、”満足リーダー”です。大体皆さんの予想通りですね(笑)捻りが無くて申し訳ありません(汗)