遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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*2万越えしてるので、ゆっくりどうぞ。


第48話 開幕

三日前――――

 

「いやーありがとうフレア! 手伝って貰っちゃって!」

「ううん! 昨日はご馳走して貰ったんだから、これくらい当然よ! それに珍しく早起きできたから、凄く気分がいいの! さ、後の皆が起きて来る前に全部作っちゃおう!」

 

 WRGP開催三日前の朝。遊星達のガレージにて、ブルーノとフレアが台所に立って朝食作りを行っていた。ブルーノは卵を焼いて目玉焼きを作り、フレアは鼻歌を歌いながらサンドイッチにした食パンを切る。

 

「それにしても本当に間に合ってよかったぁ~! 鬼柳がライセンス持ってないって言い出した時はどうしようかと思っちゃったもん」

「まさかライセンスの存在も知らなかったなんてね。なのにあの物凄いDホイールを乗りこなすんだから彼は凄いよね」

 

 そんな衝撃的な事実が発覚してから翌日、フレア達は1日で可能な限りの知識を鬼柳に叩き込み、教習所へと送り込む。結果、学科には苦戦したものの、実技で抜群の成績を残し、一週間という早さでライセンスを取得する。天性の才と積み重ねてきた努力を持っていたフレアには及ばないが、これでも相当な早さである。

 そして先日の夜、遊星達が鬼柳の為にガレージでささやかな合格祝いを行い、今に至る。

 

「おはよう二人共」

「あ、おはよう遊星!」

 

 遊星が梯子を伝って三階の寝室から降りてくる。昨日はジャック、クロウと共に遅くまで鬼柳に付き合い騒いでいた為、遊星はまだ少し眠そうな表情をしている。

 

「昨日は大変だったね遊星。鬼柳、勉強から解放されたのが凄く嬉しかったみたいで」

「ああ……だが、楽しかった。何年も逢っていなかった”懐かしい友”と、再会した様な気分だった」

 

 遊星は台所の水道で顔を軽く洗った後、辺りを見回す。

 

「他の皆は?」

「フリントとジャックはまだ起きてこないね。クロウは鬼柳を連れて、一足早く早朝練習に出かけたよ」

 

 遊星の問いに、ブルーノが焼きあがった目玉焼きを皿に移しながら答える。

 

「張り切ってるな」

「鬼柳の実践経験も兼ねてだって。遊星の言う通り、凄く張り切ってたよクロウ」

 

 

 * * *

 

 

「おお、流石は朝だな! 空いてるぜ! 思いっきり走って満足してやるぜ!」

「(本当に”あの頃”の鬼柳に戻ってんだな……)」

 

 市内レーンへとやって来た鬼柳とクロウは引き締まった朝の空気の中で、広々としたコースを眺める。

 

「さあクロウ! さっそくやろうぜ! チーム・サティスファクションリーダーの実力、思い出させてやるよ!」

「へっ! なら俺は教えてやるよ! 埋め難い経験の差って奴をな!」

 

 鬼柳とクロウは朝日の中をDホイールで進み、スタートラインへと向かう。

 その途中、クロウは先日の、合格祝い前に訪れたマーサハウスでの出来事を思い出していた。

 

 

 これを持って、皆でクロウ兄ちゃんのこと応援に行くよ!

 クロウ兄ちゃん! 頑張ってね!

 絶対に優勝だよ!

 ですの!

 

 

 子供達から受けた声援。それがクロウの闘志に火を点け、力を与える。

 

「(見てろよお前等! 絶対に優勝してみせるからな!)」

 

 強い思いを胸に、クロウは鬼柳と共にスタートラインへと並ぶ。そこでクロウがふと思い出したかのように鬼柳へと顔を向ける。

 

「鬼柳」

「うん?」

「もうお前は俺達のリーダーじゃねぇが、言わせて貰うぜ。……お帰りリーダー。逢いたかったぜ」

「……へっ! 何言ってんだ! チームが違っても、俺はお前達の仲間で、リーダーだぜ!」

「ハハッ! そうだな!」

「ハハハ! お、そうだ! 実はお前達のユニフォーム仕立て直してきたんだよ。後で渡すから絶対に着てくれよな!」

「ハハハ! ぜってぇ着ねぇよ! よっしゃ! まずは軽く走り込みと行こうぜ!」

 

 クロウと鬼柳は同時にスタートを切ると、クロウがいきなり飛び出して大満足号を引き離す。

 

「うお!? 速ぇなそれ! くそ、もうちょっとスピードでねぇのか? これじゃ満足できねぇよ!」

 

 鬼柳は悔しそうにブラック・バードを見る。大満足号は決して性能が悪いマシンではないのだが、何せこの巨体では限度がある上、新エンジンを搭載し、小回りが利くブラック・バード相手では分が悪い。

 

「ハハ! ゆっくり来いよ! 悪いが今の俺は絶好調だ! ちょいと止まれないぜ!」

 

 クロウは更にスピードを上げ、カーブに突入する。

 

「まだだ! まだ行ける!」

「おいおいあれで曲がる気か!? ……おもしれぇ! 満足させて――――!? クロウ危ねぇ!?」

 

 クロウが限界まで車体を傾け、カーブを高速で曲がり切ろうとしたその瞬間、前から一台のDホイールが逆走してくる。大きく離されていた鬼柳の位置からその様子が良く見えた。

 

「な!?」

 

 鬼柳の叫びもあって、クロウは何とか逆走してきたDホイールを避ける。相手もクロウとは逆側に避け、事故にならずに済んだ――――が、次の瞬間。

 

「!? どわぁぁぁーーー!?」

「クロウ!? (何だ今の!?)」

 

 衝突を避けたはずのクブラック・バードが突然跳ね上がり、クロウ共々空を舞う。それは何かに引っ掛かった様な、平地では明らかに不自然な跳ね上がり方であった。

 クロウは突然の事にどうする事もできず、愛機と共に地面に叩き付けられてしまった。

 

「クロウ!? しっかりしろ! ……!」

 

 鬼柳が必死になってクロウに呼びかけていると、自分の元に逆走してきたDホイールが近づいて来る。

 

「テメェがやりやがったのか! サティスファクションに喧嘩売って五体満足で帰れると思うなよ!」

 

 サテライト時代の脅し文句を口走りながら、鬼柳は逆走車に向かって突っ込む。

 逆走車のDホイーラーは大満足号を見ると、小さく舌打ちをした。

 

「(何だよこの馬鹿みたいにデケェDホイールは……こりゃ”引っ掛ける”のは無理だな)」

 

 逆走車は大満足号をヒラリと避けると、そのまま走り去ってしまった。

 

「あ!? テメェ逃げるんじゃねぇ! くそ……クロウ!」

 

 クロウの転倒地点に辿り着くと、鬼柳は大満足号から降りてクロウの元へと駆け寄る。見るとクロウは右肩を押さえて座り込んでいた。

 

「クロウ! どうした!?」

「か、肩が……俺の肩が……」

 

 鬼柳がクロウの手を退けて肩を見ると、そこには砕けた肩当と、打撲によって赤黒く晴れ上がったクロウの右肩であった。

 

「!? チクショウ! クロウ、乗れ!」

 

 鬼柳はクロウを大満足号に乗せ、遊星達に連絡しつつ、病院へと向かった。

 

 

……………………

………………

…………

……

 

現在――――

 

 

「…………」

「フレア、もう切り替えろ。お前が今悩んでいても仕方が無い」

 

 ここはシティ沿岸部WRGP特設予選会場スタジアム選手控え室。Hブロック第一試合が行われるこの会場で待機している”チーム・サティスファクション”の空気は重かった。

 

「私は大丈夫よフリント……クロウは絶対に良くなる。必ず良くなって、私達との約束を守ってくれる……」

 

 クロウ・ホーガン、全治一ヶ月の重傷。この報せは関係者全てに衝撃を与えた。

 大事なメンバーを一人欠いてしまったチーム・5D'sは現在、十六夜 アキを急遽レギュラーに迎えてAブロック予選が行われる会場であり、本戦の舞台ともなる”メモリアル・サーキット”にて強敵”チーム・ユニコーン”との第一試合に挑もうとしていた。

 フレアは気持ちを整理すると、勢い良く立ち上がって笑顔を見せる。

 

「大丈夫! アキちゃんもいるし、遊星達は絶対に負けないよ! だから私達も頑張ろうね!」

「おし! よく言った! クロウを気にして負けちまったら、それこそクロウにどやされちまうからな! 全部勝って、あいつ等と本戦で戦うぞ! チーム・サティスファクション! 行くぜ!」

 

 鬼柳が拳を突き出すと、フレアとフリントも拳を突き出して合わせる。

 

「よっしゃ! それじゃ第一試合に行くぞ!」

 

 

 * * *

 

 

 WRGP予選は出場チーム32チームの内4チームずつで行うリーグ戦。それぞれAからHの8ブロックに分け、ブロック内で上位2チームがトーナメント本戦へと進む。

 

 ○月×日 Hブロックリーグ戦日程

 第一試合 サティスファクションVSパワーインセクト

 第二試合 ――――――――――――――――

 

「私達の相手は”チーム・パワーインセクト”っていうチームね。どんなチームなのかな?」

「パワーインセクトは俺達と同じ、この大会の為に結成された新生チームだ。つまり、情報はまったくない。……練習走行すら見れなかったからな」

「……悪かったよ」

 

 フリントの言葉に鬼柳は苦笑いを浮かべる。その時チーム・サティスファクションは学科勉強会の真っ最中だったのだ。

 

「ま、まあいいじゃねぇか! 向こうだって俺等の事を知らねぇんだ! 不利も有利もねぇよ! ほら行くぞお前等! 遅れるぜ!」

 

 

 * * *

 

 

「わぁ……! 凄い人だね!」

「大半は都心でやっているAブロックの試合を見に行っていると思ったが……意外だったな」

「よっしゃー! 燃えてきた! 満足してやるぜ!」

 

 シティ沿岸部会場の担当MCの挨拶が会場に鳴り響く中、選手入場門前で待機している三人。これからMCのアナウンスにしたがって入場し、試合を行う。

 

〔それでは対戦チームの紹介だぁ! 嘗てサテライトにて名を馳せた伝説のチームが、今ここに復活! ”チーム・サティスファクション”! 鬼柳 京介! フレア! フリントの三人!〕

 

 名を呼ばれると、鬼柳とフレアは意気揚々と飛び出し、観客に向かって手を振りながらピットを目指す。フリントはその後を静かに歩いた。

 聞こえてくるのはチアガールや観客の声援、そして密かな声と笑い声。

 

 

 何だありゃ? 何処の国から来たんだよ?

 何時のファッションだ?

 女の子まで着てるよ。

 アハハハハ!

 

 

「ほら見ろフリント! お前が揃えないから笑われてんじゃねーか!」

「そうよ! 後はジャケット着るだけなのに! 何で着ないの? チームでしょ!」

「色合いやジーンズは揃っているからいいだろう。それと、笑われているのは俺のせいではないぞ」

 

 そんなやり取りをしながら、三人はピットに着く。

 

〔対する相手は、今大会でデビューとなる新生チーム! ”チーム・パワーインセクト”!〕

 

 隣の入場門から現れたのは全員顔にマーカーを付けた三人組。先頭を歩くのは角の様な髪型の男。そしてその後ろから大きな顎を持つサングラスを掛けた男と、常ににやけた顔で何故か指を鉄砲の形にして立てている男が続いて歩いてくる。

 

「何か個性的な人達だね」

 

 フレア達がピットに入ったチーム・パワーインセクトを眺めていると、それに気付いた彼等がこちらへと近づいて来る。

 

「よお。お前らが一発目の対戦相手だな? 俺の名は”瓜生(うりゅう)”。パワーインセクトのリーダーだ。よろしくな」

「おう! 俺がチーム・サティスファクションのリーダー、鬼柳 京介だ! こっちこそ、よろしく頼むぜ!」

「(私がリーダーだったはずなのに……ま、いっか)」

 

 お互いのメンバー全員が自己紹介を済ませると瓜生が不敵な笑みを浮かべ、鬼柳達に向かって指を差す。

 

「悪いが、この試合は貰うぜ! リーグ戦を突破し、俺達は”不動 遊星”と戦うんだからな!」

「? 遊星を知ってんのか?」

「知ってるも何も、瓜生さんと不動 遊星は再戦を誓い合ったライバルだぜィ!」

 

 サングラスの男――――”堂島”が誇らしげに胸を張る。

 

「え? でも遊星からそんな話一度も聞いた事ないけど……」

「しししし! そりゃ誓いと言っても負けたのはこっちだし、1年半も前の話だからな! 忘れられてるかも――――しィ!?」

 

 にやけ顔の男――――”志崎”は瓜生に頭を引っ叩かれ、前のめりになって頭を押さえる。

 

「……とにかくだ。俺等はここで負けてる訳にはいかねぇんだ! チーム・サティスファクション! 俺達の勝ち星になってもらうぜ!」

「おもしれぇ、満足させてくれよ!」

 

 最後にリーダー同士で言葉を交わすと、瓜生はメンバー二人を連れてピットへと戻って行き、それと入れ替わるように大会スタッフがサティスファクションのピットへとやって来る。

 

「失礼します。そろそろ時間ですので、走順をお願いします」

「ファーストはフレア、セカンドはフリント、で俺がラストだ」

「了解しました。それではフレア選手、準備を」

「はい!」

 

 スタッフは手に持ったボードにサティスファクションの走順を書き込むと、パワーインセクトのピットへと向かっていった。

 

「……いよいよ始まるぜ! 俺達の決闘がよ! フレア、フリント! 見てみろ!」

 

 鬼柳はピットから見える観客席全体を差す様に腕を広げる。横にいるフリントも、離れたところでウィルダーネスのチェックをしているフレアもそれらを見渡す。

 

「ここにいる奴等全員が”満足”する為にここへ来てんだ! ……ならよぉ、ここにいる奴等全員、”満足(俺達の色)”で染め上げてやろうぜ! 俺達の決闘と、勝利でな!」

「ああ!」

「うん! それじゃ行ってきます!」

 

 そう言ってフレアはウィルダーネスを走らせ、スタートラインに着く。この時、会場から歓声が上がった。

 

「おお……フレア人気じゃねーか!」

「女性で、アキと並んで最年少、そして教習所での成績……一部で話題になっていたらしいな。サテライト以外では殆ど無名チームである俺達側の客席が賑わっているのも、大体はあいつのおかげだろう」

 

 フリントが情報端末を操作し、彼女が話題となっている記事を鬼柳に見せる。

 

「へぇ~…………カーリー、渚……」

「記事の記者がどうかしたか?」

「……いや、何でもねぇ。それより向こうも準備ができたみたいだぜ?」

 

 鬼柳が顎で隣のピットを差すと、サングラスを外してヘルメットを被る堂島の姿があった。

 

「おい、大丈夫か? 作戦はちゃんと頭に入ってんだろうな?」

 

 瓜生がDホイールに跨った堂島の肩を叩く。

 

「入ってますぜィ! でもこんなに沢山の観客、そして相手は美少女……うおお~緊張してきたぜィ!」

「……とにかく、上手くやれよ! ほら行け!」

 

 瓜生が力強く堂島の背を叩くと、堂島は勢い良くコースへと飛び出し、スタートラインに着く。

 

〔Hブロック第一試合! どちらに勝利の女神が微笑むのか!? 《スピード・ワールド2》! セット!〕

 

 フレアと堂島を中心にスピードの世界が作られると、カウントダウンが始まる。

 徐々に減っていく表示カウンター。そして全てのカウンターが消えた瞬間、会場内にスタート音が鳴り響いた。

 

 

 

〔ライディング・デュエル!!! アクセラレーショォーーーン!!!〕

 

 

 

 MCの掛け声と同時に、フレアと堂島はDホイールを発進させる。

 

「ぜィィ!?」

「よし! 私の先攻!」

 

 フレアの十八番である第一コーナー先攻争奪戦。堂島を一気に引き離してフレアが先攻を勝ち取ると、観客が大きく沸き立つ。

 

〔これは凄いぞぉー!? 噂に聞く天才少女の見事なライディングテクだぁーーー!!!〕

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:5→6

 

 フレア SPC:0→1

 堂島  SPC:0→1

 

「モンスターをセット! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:1

手札:4

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

 

「オレのターンぜィ!」

 

 堂島 手札:5→6

 

 フレア SPC:1→2

 堂島  SPC:1→2

 

「モンスターをセット! そしてカードを5枚伏せるぜィ!」

「5枚!?」

 

〔おおーっとぉ!? 堂島! いきなりカードを5枚も伏せたぁ!? これは迂闊に動けないぞぉ!〕

 

「ターンエンドぜィ!」

 

LP:4000

SPC:2

手札:0

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

・セット

・セット

 

「何だありゃ!? 罠デッキか?」

「ブラフの可能性もある。……上手く動くんだぞ、フレア」

 

 鬼柳とフリントは堂島の場に訝しそうな視線を送る。

 罠戦術であろうがブラフ戦術であろうが、伏せカードはあればあるほど相手を威圧し、相手の動きを牽制してくれる。しかし、それによって手札を使い切るという事はそれ以上は手が無いと相手に教えるようなものであり、罠戦術の場合は伏せた罠カードを除去されてしまったら目も当てられない状況となり、ブラフであった場合は相手が恐れずに向かってくればその時点で戦術が破綻する。どちらにせよ、お互いが持つ”度胸”が試される戦術と言えるだろう。

 

「(ブラフ? それとも本当に罠?)」

 

 ブラフであれば攻撃チャンス、罠であれば大小なりとも損害を受けるであろう。今まさしく、フレアの度胸が試されようとしていた。

 

「(……私はファースト・ホイーラー! 攻めて攻めて、相手の戦術を引き出して、後に繋げるのが私の役目!) 私のターン!」

 

 フレア 手札:4→5

 

 フレア SPC:2→3

 堂島  SPC:2→3

 

「セットモンスター《ウェポンサモナー》を反転召喚!」

 

 フレアがセットしたカードからガーディアンの召喚師、ウェポンサモナーが現れる。

 

 ATK:1600 レベル4

 

『こんなにも大勢の人間を見るのは初めてですね』

「(大舞台だからね! 頼んだよ!) ウェポンサモナーのリバース効果発動! デッキからガーディアン1体を手札に加える! 《ガーディアン・エアトス》を手札に!」

『了解しました。……気高き守護者よ! 我が主の下へ!』

 

 ウェポンサモナーが呪文を詠唱し、手に持った聖剣を掲げると、フレアのデッキが光り輝き、1枚のカードを選び出される。

 

 フレア 手札:5→6

 

 フレアは選び出されたカードをデッキから引き抜いて掲げると、そこから光の鳥が放たれ、空高く舞い上がる。

 

「このカードは自分の墓地にモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる! 来て! 《ガーディアン・エアトス》!」

 

 舞い上がった光の鳥は閃光となって空から場へと降り、女神”ガーディアン・エアトス”へと姿を変えた。

 

 ATK:2500 レベル8

 

〔おおーーーっと!? ここで最上級モンスターを特殊召喚! フレア! 罠を恐れていない! 攻めるきかぁ!?〕

 

 美しい女神の登場とフレアの攻勢により、会場はさらに沸き立つ。

 

「(エアトス! 危ない道だけど、一緒に進んで!)」

『勿論ですフレア。私が剣となり、盾となり、貴女の道を切り開きましょう』

『ガーディアン・エアトス、お久しぶりです』

『武器庫の召喚師……』

 

 ウェポンサモナーがエアトスに礼を示すと、エアトスも同時に礼を返す。

 

『召喚師よ。話はフレアから聞きました。我が友人達への気遣い、感謝致します……』

『いえ、お気になさらず。私にとって、貴女も彼等も大事な”友人”ですから……』

 

 ウェポンサモナーの言葉を聞いて、エアトスは微笑み、フレアも笑顔を浮かべると、同時に堂島が敷いた”地雷原”に対して構えを取る。

 

「バトル! ガーディアン・エアトスでセットモンスターに攻撃! 【精霊のオペラ】!」

「永続罠《スターゲート》を2枚発動だぜィ! 相手モンスターが戦闘を行ったダメージステップ終了時、このカードにゲートカウンターを1個のせるぜィ!」

 

 エアトスは空高く舞い上がり、高らかな歌声を上げる。やがてその歌声は光の波動へと変わり、それを浴びせたセットモンスター”共鳴虫”を光に変えて消滅させる。

 

 DEF:1300

 

「ゲートカウンターに1個ずつカウンターを乗せるぜィ! そして《共鳴虫(ハウリング・インセクト)》の効果発動だぜィ! 戦闘破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下の昆虫族1体を特殊召喚する事ができるぜィ! 同じ《共鳴虫》を特殊召喚だぜィ!」

 

 堂島の場に巨大な青いコオロギが現れ、防御体勢を取る。

 

 DEF:1300 レベル3

 スターゲート×2 ゲートカウンター:0→1

 

「(スターゲート……何の為の永続罠かしら? 少なくとも、最上級モンスターの攻撃を通すんだから、除去系の罠は無いわね。……モンスターはリクルーターだし、ここまでかな) カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:3

手札:4

モンスター

・ウェポンサモナー

・ガーディアン・エアトス

魔法・罠

・セット

・セット

 

「オレのターンぜィ!」

 

 堂島 手札:0→1

 

 フレア SPC:3→4

 堂島  SPC:3→4

 

「共鳴虫を攻撃表示に変更だぜィ!」

 

 DEF:1300→ATK:1200

 

「バトルぜィ! 共鳴虫でウェポンサモナーを攻撃だぜィ!」

「(攻撃? まさか強化系の罠!?)」

 

 ウェポンサモナーに対して飛び掛ってくる共鳴虫。フレアはそれに対して身構えるが、共鳴虫はウェポンサモナーの魔法によってあっさりと焼き払われる。

 

「どぅ……! ととと……ゲートカウンターをそれぞれに乗せ、共鳴虫の効果発動だぜィ! 最後の《共鳴虫》を特殊召喚だぜィ!」

「え……?」

 

 堂島 LP:4000→3600

 スターゲート×2 ゲートカウンター:1→2

 ATK:1200 レベル3

 

「もう一回だぜィ! 共鳴虫でウェポンサモナーを攻撃だぜィ!」

 

 新しく現れた共鳴虫もウェポンサモナーに飛び掛かり、同様に焼き尽くされる。

 

「ぜィ! ……効果発動だぜィ! デッキから《砂漠の守護者(デザート・ガードナー)》を守備表示で特殊召喚だぜィ!」

 

 堂島 LP:3600→3200

 スターゲート×2 ゲートカウンター:2→3

 

 堂島の場に共鳴虫など比べ物にならない程巨大なザトウムシが現れる。

 

 DEF:1000 レベル4

 

「砂漠の守護者は場の魔法・罠の数×300ポイント、守備力をアップさせるぜィ!」

 

 DEF:1000→3100

 

〔おおっと!? 守備力3100!? 先程までの自爆特攻はこれを出す為だったのかぁ! ……しかし、それだけならわざわざ自爆せずとも攻撃を待てばよかったのではないのかぁ?〕

 

「MCの言う通りだぜ。……つまり、狙いはあの永続罠のカウンターか?」

「間違いないだろう。(お前も解っているな? フレア……)」

「(解ってるよ、フリント……でもまだ手が無いの)」

 

 フレアがピット前を通り過ぎる直前、フリントはフレアに視線を送り、フレアもそれに気が付いて視線を返す。

 鬼柳やフリントと同じ様にフレアも堂島の狙いに気付いたが、現在のフレアの手札では罠を破壊する事ができない。

 

「永続罠《DNA改造手術》を発動だぜィ! 種族を1つ宣言し、このカードが場に存在する限り、 場の表側表示で存在する全てのモンスターは宣言した種族になるぜィ! 宣言するのは”昆虫族”だぜィ!」

 

 堂島が宣言すると、フレアの場にいるエアトスとウェポンサモナーが緑色のオーラに包まれる。

 

『くっ! 何て不快なオーラ……』

『むう……』

「二人共!?」

 

 ガーディアン・エアトス 天使族→昆虫族

 ウェポンサモナー    魔法使い族→昆虫族

 

「そして《対空放花》を通常召喚だぜィ!」

 

 続けて堂島の場にマグナム・リリィの様に花の中から銃口が飛び出している植物が現れる。

 

 ATK:0 レベル3

 

「対空放花の効果発動だぜィ! 自分の場の昆虫族1体をリリースすることで相手に800ポイントのダメージを与えるぜィ! 改造手術の効果で昆虫族となったこいつ自身をリリースだぜィ!」

 

 対空放花は自らを光の球体へと変えると、フレアに向かって突撃し、消滅する。

 

「きゃあ!?」

 

 フレア LP:4000→3200

 

「ターンエンドだぜィ!」

 

LP:3200

SPC:4

手札:0

モンスター

・砂漠の守護者

魔法・罠

・スターゲート(ゲートカウンター:3)

・スターゲート(ゲートカウンター:3)

・DNA改造手術

・セット

・セット

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:4→5

 

 フレア SPC:4→5

 堂島  SPC:4→5

 

「(ワールド2の効果もあるし、モタモタしてられない! 罠を破壊できないなら、それを活かされる前に相手を倒す!) 《Sp-ダッシュ・ピルファー》を発動! SPCが4つ以上在る場合、エンドフェイズ時まで相手の表側守備表示モンスター1体のコントロールを得る!」

 

 フレアがSpを発動させると、砂漠の守護者がフレアの場に移動する。

 

「ぜィ!? オレのモンスターが!?」

「砂漠の守護者をリリース! 《ターレット・ウォリアー》をアドバンス召喚!」

 

 砂漠の守護者が光の中へと消えると、光の中からターレット・ウォリアーが姿を現す。本来の使い方ではないが、これならば素材よりも攻撃力が高く、エンドフェイズ時にモンスターが相手の場に戻ることはなくなる。

 

 ATK:1200 レベル5

 

「バトル! ウェポンサモナーで直接攻撃!」

 

 ウェポンサモナーが堂島に対して魔法弾を放つ。

 

「ぜィー!?」

 

 堂島 LP:3200→1600

 スターゲート×2 ゲートカウンター:3→4

 

「これで止め! エアトスで攻撃!」

 

 エアトスが再び舞い上がり、歌を光の波動に変えて堂島に浴びせる。

 

「グアァーーーだぜィーーー!!?」

 

 堂島 LP:1600→0

 スターゲート×2 ゲートカウンター:4→5

 

〔決まったァーーー!!! 罠も壁も物ともせずに突き進む! 期待のルーキー、フレアの勝利だぁーーー!!! 大会規定によりターンはエンドフェイズへ! そしてチーム・パワーインセクトの次走者からスタートだぁ!〕

 

「ターンエンド! (やったぁ! 公式戦初勝利!)」

 

LP:3200

SPC:5

手札:3

モンスター

・ウェポンサモナー

・ガーディアン・エアトス

・ターレット・ウォリアー

魔法・罠

・セット

・セット

 

「フフンだぜィ!」

 

 堂島は敗れたにも関わらず、逆に”やり遂げた”といった表情でピットへと入っていった。

 

「おいもうちょっと削れなかったのかよ? 俺の仕事増やすんじゃねぇぞ」

「あ、へへ瓜生さん……ですが全部揃えてきましたぜィ!」

「それならいいけどよ。……志崎! 堂島がもう揃えたらしいからよ、お前は削りつつちゃんと俺に繋げよ? やれるなら倒しちまえ! 分かったな?」

「ししししし! お任せを……」

 

 そう言って志崎はDホイールに跨り、堂島からチームステッカーを受け取り肩に貼り付けると、フレアの接近に合わせてピットからコースへと出る。

 

「次はあなたね! 勝負よ!」

「ししししし!」

 

 

 

「「 デュエル! 」」

 

 

 

 セカンド・ホイーラー”志崎”とフレアの決闘が始まる。

 

「オレのターン! ししし!」

 

 志崎 手札:5→6

 

 フレア SPC:5→6

 志崎  SPC:5→6

 

「罠カード《強欲な瓶》を発動! デッキから1枚ドロー! ししし!」

 

 志崎 手札:6→7

 

「《Sp-スピード・ジャマー》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、相手のSPCを6つ取り除く! ししししし!」

「嘘!? 6つも!?」

 

 フレア SPC:6→0

 

〔あーとっ! フレアのSPCが0に! これではSpが使えないぞぉー!〕

 

「ししししし! 《Sp-カウントアップ》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、手札を任意の数だけ墓地へ送り、1枚につきSPCを3つ増やす! オレは手札を2枚墓地へ送り、SPCを6つ増やす!

 

 志崎 手札:5→3 SPC:6→12

 

「ししーし! 永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から来い! 《ヴァリュアブル・アーマー》!」

 

 志崎の場に鋭い鎌を持った巨大なカマキリが現れる。

 

 ATK:2350 レベル5

 

「ししし! こいつはデュアルモンスターだ! 再度召喚を行い、効果を得るぞぉ~ししし!」

 

 志崎が宣言するとヴァリュアブル・アーマーの眼が赤く光り、フレアの場に対して鎌を構える。

 

「バトル! ヴァリュアブル・アーマーでターレット・ウォリアーを攻撃!」

 

 ヴァリュアブル・アーマーがターレット・ウォリアーに向かって飛び掛かり、鋭い鎌で胴体を両断してしまう。

 

「く……ターレット・ウォリアーが……」

 

 フレア LP:3200→2050

 スターゲート×2 ゲートカウンター:5→6

 

「ししし! まだまだ! 再度召喚されたヴァリュアブル・アーマーは相手モンスター全てに攻撃できるのだ! ウェポンサモナーに攻撃!」

 

 ヴァリュアブル・アーマーは返す刀でウェポンサモナーを斬り付け、破壊する。

 

『私はここまでです……申し訳ありません』

「(ここまでありがとうウェポンサモナー。後は任せて!)」

 

 フレア LP:2050→1300

 スターゲート×2 ゲートカウンター:6→7

 

「ししししし! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:12

手札:2

モンスター

・ヴァリュアブル・アーマー

魔法・罠

・スターゲート(ゲートカウンター:7)

・スターゲート(ゲートカウンター:7)

・DNA改造手術

・リビングデッドの呼び声(ヴァリュアブル・アーマー)

・セット

 

〔志崎! 反撃しただけではなくこのターンでSPCを一気に増やしてきたぞぉ! これでフレアとの差は12!〕

 

「SPCが多くたって、使わなきゃ意味無いよ! 私のターン!」

 

 フレア 手札:3→4

 

 フレア SPC:0→1

 志崎  SPC:12

 

 寂しくなってしまったフレアのSPCゲージ。それに比べて志崎のSPCは限界まで溜まり、スタンバイフェイズの補給が行われない程になっている。

 

「(! 来た!) バトル! エアトスでヴァリュアブル・アーマーを攻撃!」

 

 幾ら優れた攻撃能力を持っていても、攻撃力で劣っていてはどうしようもない。ヴァリュアブル・アーマーは為す術もなく精霊のオペラを受けて消滅する。

 

「ししィ!?」

 

 志崎 LP:4000→3850

 スターゲート×2 ゲートカウンター:7→8

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:2050

SPC:1

手札:3

モンスター

・ガーディアン・エアトス

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「オレのターン! ししし!」

 

 志崎 手札:2→3

 

 志崎がドローしたその時、フレアが伏せカードを発動させる。

 

「罠カード《荒野の大竜巻》発動! 魔法・罠ゾーンに表側表示で存在するカード1枚を破壊する! 《スターゲート》1枚を破壊!」

「ししィーーー!!! させないしィ! 永続罠《宮廷のしきたり》を発動! このカードが場に存在する限り、お互いのプレイヤーは宮廷のしきたり以外の永続罠カードを破壊できない! しししィ!」

「!? 永続罠の防御カード……」

 

 フレアの場から大竜巻が現れ、志崎の場へと向かうが、その直前で竜巻が掻き消えてしまう。

 

 フレア SPC:1→2

 志崎  SPC:12

 

「ししし! 《レッグル》を召喚!」

 

 志崎の場に足の無いムカデの様なモンスターが現れる。

 

 ATK:300 レベル1

 

「ししし! レッグルは直接攻撃ができる! バトル!」

『くっ! フレアに近づくな!』

 

 レッグルはその細長い体をくねらせながらエアトスの迎撃を避けると、フレアに対して鋭い顎を突き立てる。

 

「きゃ!?」

 

 フレア LP:2050→1750

 

『おのれ……!』

「(大丈夫だよエアトス。あの人はもうすぐ倒せるから。それと……ようやく分かったよ)」

 

 フレアは少し悔しそうに志崎の場を睨む。

 

「(あれは……全部ラスト・ホイーラーであるリーダーの為のカード!)」

「ししし! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:3850

SPC:12

手札:1

モンスター

・レッグル

魔法・罠

・スターゲート(ゲートカウンター:8)

・スターゲート(ゲートカウンター:8)

・DNA改造手術

・宮廷のしきたり

・セット

 

「捨て駒だぁ!? 前の二人がか?」

「場のカードの温存、ここまでのプレイング姿勢……間違いない。そしてこれを見てくれ」

 

 フレアと同じ結論に辿り着いたピットの二人。フリントが情報端末を操作してあるデータを鬼柳に見せる。

 WRGPにおいて、試合中に指定された通信機器以外の物やインターネットを利用する事は禁止されているが、前もって持参してきたデータ類を持ち込む事は許されている。先程のフレアの記事や今見せている物も、フリントが集めてきたデータの一部なのだ。

 

「うん? 何でジャックのデータなんて出してるんだよ? しかも日付古いぞ?」

「フォーチュンカップ時点のデータだからな。調べてみたら、この頃にジャックも使用していたことが分かった」

「使用してたって、何をだよ?」

「”スターゲート”だ。ここを見ろ、漸く分かったぞ。あの罠……そして今乗っているカウンター数……これは厄介な事になったかもしれん」

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:3→4

 

 フレア SPC:2→3

 志崎  SPC:12

 

「(よし!) 《Sp-カウントアップ》を発動! 手札を2枚捨て、SPCを6つ増やすよ!」

 

 フレア 手札:3→1 SPC:3→9

 

「《スピード・ワールド2》の効果発動! SPCを4つ減らし、手札のSpを1枚見せる事で相手に800ポイントのダメージを与える! 私は8つ減らして1600ポイントのダメージを相手に与える!」

 

 見せたカード

 Sp-ジ・エンド・オブ・ストーム

 フレア SPC:9→1

 

 ウィルダーネスから二つの光弾が放たれると、どちらも外れる事なく志崎へ命中する。

 

「しししィーーー!?」

 

 志崎 LP:3850→2250

 

「そしてレベル5以上のモンスターのレベルを1つ下げる事で、墓地から《レベル・スティーラー》を特殊召喚!」

『我が階級を糧とし、現れよ!』

 

 ガーディアン・エアトス レベル8→7

 

 エアトスが翼を広げて構えると、その片翼からレベル・スティーラーが飛び出す。

 

 ATK:600 レベル1

 

「バトル! ガーディアン・エアトスでレッグルを攻撃! そしてレベル・スティーラーで直接攻撃!」

 

 エアトスがレッグルを消し去った後、レベル・スティーラーが志崎に体当たりをくらわせる。

 

「しししししィーーーー!!?」

 

 志崎 LP:2250→50→0

 スターゲート×2 ゲートカウンター:8→9

 

〔決まったぁーーー!!! フレア! 初公式戦にて二人抜き! これは凄いぞぉーーー!!!〕

 

 沸き立つMC、そして観客。興奮の熱気の中、ターンはエンドフェイズとなる。

 

「ターンエンド! (狙いが分かっちゃうと、嬉しさ半減……本当に凄いのは、次に勝ってからね!)」

 

LP:1750

SPC:1

手札:1

モンスター

・ガーディアン・エアトス

・レベル・スティーラー

魔法・罠

・セット

・セット

 

 フレアはウィルダーネスを走らせながら相手のピットを窺う。そこには準備を済ませた瓜生と、ピットに戻り、瓜生に対してへコヘコしている志崎の姿があった。

 

「あと千何百じゃねーか! どうせなら倒して来いよな」

「ししし……すんません」

「まあいい。お前等、よくやってくれた! 行ってくるぜ!」

「瓜生さん! 頑張ってくださいだぜィ!」

「ししー!!」

 

 弟分達に見送られ、コースへと出てくる瓜生。中々の走りを見せ、フレアに並ぶ。

 

「ここからが本番だぜ? ……ところで見てくれよ」

 

 瓜生は自分のDホイールのモニターを見ながら両手を広げる。

 

「(場の事かな?)」

「この場! このSPC! そしてこの手札! 今、俺には”チーム・パワーインセクト”の”パワー”が全て集まっている! ……俺達のチーム名の意味、分からせてやるよ! 行くぜ――――」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

 とうとう現れたチーム・パワーインセクトの切り札にして、ラスト・ホイーラー”瓜生”との決闘が始まる。

 

「俺のターン!」

 

 瓜生 手札:5→6

 

 フレア SPC:1→2

 瓜生  SPC:12

 

「ハッハッハ! どんなSpも唱え放題だぜ! SPCを4つ取り除き、志崎が伏せた《Sp-エンジェル・バトン》発動! カードを2枚ドローし、手札から1枚墓地へ送る!」

 

 瓜生 SPC:12→8 手札:5→7→6

 

「もう一丁! 手札から《Sp-エンジェル・バトン》発動! 2枚ドローし、1枚墓地へ!」

 

 瓜生 SPC:8→4 手札:5→7→6

 

〔瓜生! 2回連続で手札交換を行ったぞぉ!? そんなに手札が悪いのかぁ!?〕

 

「(違うな……あれは”あの門”から現れる怪物を呼び寄せる為のものだ)」

 

 フリントは内心でMCにそう言いながら、席を立つ。

 

「無いと願うが、念の為準備に入る」

 

 そう言ってフリントはピットへ向かおうとするが、鬼柳に腕を掴まれて止められる。

 

「フリント、悪ぃ。すまねぇが順番代わってくれねぇか?」

「……順番を?」

「ぜってぇ出てくるだろ? ”あの門”から。そう思うとよ……やり合いたくなるじゃねぇか」

 

 鬼柳は走っている瓜生を見詰めながら、その眼に闘志を燃やしている。こうなってしまっては、もはや止める事はできないだろう。

 

「……一度登録した順番を変えるとなると、それなりの理由がいるぞ」

 

 フリントがそう言うと、鬼柳は大会スタッフに繋がる無線を手に取る。

 

「こちらサティスファクション! トラブル発生! セカンドの奴のDホイールがちょっとな。だから順番変えてくれ。……ああ、ああ……おし! 頼んだ!」

 

 鬼柳は一息ついて無線を切ると、にこやかな顔でフリントに振り返る、

 

「つーわけでフリント。暫くDホイール弄ってる振りしててくれ!」

「……まったく」

 

「さあ準備は整った! 覚悟しやがれ! 永続罠《スターゲート》の効果発動! 自分のターンのメインフェイズ時、このカードを墓地に送る事で乗っているゲートカウンターの数以下のレベルのモンスター1体を手札から特殊召喚する! 二つのスターゲートに乗っているカウンターの数は9個! よってレベル9以下のモンスター2体を手札から特殊召喚! 来い!」

 

 瓜生の場に18の星が現れると、それぞれ9個ずつに別れ、輪を作る。そして片方はスタジアム内に、もう片方の輪はスタジアムの外へ飛び出し、大きく広がって眩い光を放つ。

 

〔……おおーーっと!? こ、これは!? 大樹だ! 大樹がそびえ立っている!? これは一体……〕

 

 光が止むと、スタジアム内には鋼鉄の装甲に覆われた大きな昆虫が、そしてスタジアム外には巨大な機がそびえ立っていた。これにはMCも観客も驚いて呆然としてしまう。

 

 鉄鋼装甲虫(メタルアーマードバグ) ATK:2800 レベル8

 

「タダのでかい樹じゃないぜ? 見てみな!」

 

 瓜生にそう言われ、MCは状況確認用の望遠鏡を取り出してその大樹をよく見ると、覆い茂る木の葉の間から光るものが見える。

 

〔あ、あれは……眼!? 眼だぁ!? これは樹ではない! モンスターだぁ!?〕

 

「その通り! あれは樹じゃねぇ! 首だ!」

「首!? それじゃ体はどれだけ大きいの……!?」

 

 フレアもMCと同様に驚く。少なくとも、縦の大きさだけならグランソイルに匹敵するからだ。

 

「これこそ打倒”不動 遊星”の為に手に入れた俺の新切り札! 《森の聖獣 アルパカリブ》だ!」

 

 ATK:2700 レベル7

 

 アルパカリブが瓜生の声に反応し、木の葉の茂みの中からトナカイの様な巨大な顔を出す。

 

「まだ終わりじゃないぜ! ああいうでかい樹には大量の虫が住んでるってのがお約束だ! ……それ相応のがな! 墓地の昆虫族2体を除外し、手札から《デビルドーザー》を特殊召喚!」

 

 瓜生がエンジェル・バトンで墓地へ送ったカードを除外しモンスターを特殊召喚すると、アルパカリブから何かが飛び出し、瓜生の場に落下。見るとそれは巨大な赤ムカデであった。

 これにより、会場の所々から悲鳴が聞こえて来る。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「(ああ……ああいうの苦手な人、多いよね)」

 

 フレアはもがきながら体勢を直そうとしているデビルドーザーを見詰める。

 

「何だ何だ? 樹から虫1匹落ちてきたぐらいで騒ぎやがって……まあいい! カードを2枚伏せる! バトルだ! アルパカリブでガーディアン・エアトスを攻撃!」

 

 アルパカリブの葉の茂みの中から無数の鳥や虫が飛び出し、エアトスへ襲い掛かる。

 

「(ここまでか……ならせめて1体でも削ってフリントに!) させない! 速攻魔法《Sp-スター・フォース》発動! SPCが2つ以上在る場合、自分の場のモンスター1体を除外することで自分の場のモンスター1体の攻撃力を除外したモンスターのレベル×200ポイント攻撃力をアップさせる! レベル1の《レベル・スティーラー》を除外し、《ガーディアン・エアトス》の攻撃力を200ポイントアップ!」

 

 エアトスが手に聖剣を持つと、レベル・スティーラーが1つの星へと姿を変え、剣に吸収される。

 

 ATK:2500→2700

 

『フォビドゥン・ゴスペル!!!』

 

 エアトスは剣から光の斬撃を放つと、鳥や虫をなぎ払い、アルパカリブに命中させる。

 

『ここまでです、フレア――――』

 

 エアトスは今の攻撃で力を使い果たしたのか、空中でバランスを崩し、そのまま消滅する。

 

「エアトス……ありがとう、これで――――!?」

 

 フレアがアルパカリブを見上げると、アルパカリブはその場に傷一つ無くそびえ立っていた。

 

〔なんとぉー!? 無傷! アルパカリブは無傷だぁー! 本来なら相打ちのはず!? これは一体どういう事だぁ!?〕

 

「教えてやるよ。アルパカリブのモンスター効果! 攻撃表示の時、自分の場に攻撃表示で存在する鳥獣族・昆虫族・植物族は戦闘破壊されない! そして俺の場には昆虫族を指定した”DNA改造手術”がある……つまり、アルパカリブ自身も昆虫族! よって戦闘で破壊されない! これが無敵の”パワーインセクト”軍団だ! 食らえ! 鉄鋼装甲虫で直接攻撃!」

 

 鉄鋼装甲虫がフレアに向かって突進し、その大きな体をぶつける。

 

「きゃあああ!?」

 

 フレア LP:1750→0

 

〔決まったぁーーー!!! ここまで戦い抜いたスーパールーキーフレア! だが力及ばずここでリタイアだぁ!〕

 

「へへ! ターンエンドだ!」

 

LP:4000

SPC:4

手札:1

モンスター

・鉄鋼装甲虫

・森の聖獣 アルパカリブ

・デビルドーザー

魔法・罠

・DNA改造手術

・宮廷のしきたり

・セット

・セット

 

 大迫力にして大パワーの”パワーインセクトコンボ”により、会場に更なる興奮が巻き起こる。そんな中、フレアは自身のチームのピットに戻ると、近くの観客席からフレアへ拍手と称賛の声が送られる。

 

「皆さん! 応援ありがとうございまーす! ……あれ? 何で鬼柳がDホイールに? セカンド・ホイーラーはフリントじゃなかったっけ?」

「ちょいとフリントに代わって貰ったんだよ! パワーインセクト軍団……おもしれぇじゃねーか! ぶっ倒してくるぜ!」

 

 鬼柳はフレアから1枚の伏せカードとチームステッカーを受け取り、ステッカーを肩に貼り付けると、大満足号のエンジン音を鳴らしてコースへと躍り出る。

 

「皆ビックリするだろうね。あのDホイールじゃ」

「そうだな。……とにかく、よくやってくれたフレア。後は鬼柳が何とかするだろう」

「フリントはよかったの? フリントも決闘したかったんでしょ?」

「あんな眼をしていたら、断っても無理やり出て行ってしまうだろう。……今回俺の出番は無しだ」

「そう……ん? ”俺の出番は無し”って事は……」

「ああ、勝って来るぞ、今のアイツは……」

 

「ヒャッハー!!!」

 

〔何とぉ!? 鬼柳 京介! 規格外のDホイールに乗って登場だぁ! この二人はリーダー同士! 一体どの様な決闘を見せてくれるのかぁー!〕

 

「待たせたな! 満足させてくれよ!」

「(でっけぇなおい……) 悪ぃが、そんな暇も無いと思うぜ! この軍団に押し潰されるんだからな! 行くぜ――――」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

 ”サティスファクション”リーダー、鬼柳 京介。”パワーインセクト”リーダー、瓜生。お互いのリーダー同士による決闘が始まる。

 

「俺のターン!」

 

 鬼柳 手札:5→6

 

 鬼柳 SPC:2→3

 瓜生 SPC:4→5

 

「まずはアルパカ野郎! テメェから消えて貰うぜ! 手札を1枚捨て、《Sp-死者への手向け》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、場のモンスター1体を破壊する! 《森の聖獣 アルパカリブ》を破壊!」

 

 鬼柳の場から無数の包帯が現れ、アルパカリブに向かって伸びて行く。

 

「罠発動! 《幻蝶の護り》! 攻撃表示のモンスターを守備表示に変更する! 《森の聖獣 アルパカリブ》を守備表示に変更!」

 

 ATK:2700→DEF:2100

 

「それがどうした――――何!?」

 

  アルパカリブが防御体勢を取った瞬間、包帯が全て消滅する。

 

「残念だったな! アルパカリブのもう一つの効果! 守備表示の時、自分の場に表側守備表示で存在する鳥獣族・昆虫族・植物族はカードの効果の対象にならず、カードの効果では破壊されない!」

「チッ! まあいい! それ位じゃなきゃ張り合いが無ぇ! モンスターをセット! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:3

手札:2

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

 

〔凄いぞアルパカリブ! 戦闘破壊だけでなく、効果破壊まで止めてしまったぁー! チーム・サティスファクション! これを突破する術はあるのかぁ!?〕

 

「俺のターン!」

 

 瓜生 手札:1→2

 

 鬼柳 SPC:3→4

 瓜生 SPC:5→6

 

「アルパカリブを攻撃表示に変更! バトルだ! アルパカリブで攻撃!」

 

 アルパカリブから再び鳥や虫が飛び出すと、鬼柳のセットモンスター”インフェルニティ・ナイト”に群がり、破壊する。

 

「インフェルニティ・ナイトの効果発動! フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、 手札を2枚捨てる事でこのカードを墓地から特殊召喚する! さらに墓地の《インフェルニティ・リベンジャー》の効果発動! こいつが墓地に存在し、手札が0枚の場合、こいつ以外の自分のモンスターが相手との戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、こいつを墓地から特殊召喚する! 来いお前等!」

 

 鬼柳 手札:2→0

 

 鬼柳の場にナイトとリベンジャーの2体が並ぶ。

 

 インフェルニティ・ナイト    DEF:400 レベル3

 インフェルニティ・リベンジャー DEF:0   レベル1

 

「インフェルニティ・リベンジャーは自身の効果で復活した時、破壊されたモンスターの元々のレベルと同じレベルになる!」

 

 インフェルニティ・リベンジャー レベル1→3

 

「! フリント見て! 鬼柳の手札!」

「ハンドレス・コンボ……」

 

「へっ! 手札を使い切って壁を張っただけじゃねーか! 踏み潰してやるぜ! デビルドーザーでインフェルニティ・ナイトを攻撃!」

「させるかオラァ! カウンター罠《攻撃の無力化》! 攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!」

 

 デビルドーザーがナイトに向かって跳びかかるが、目の前のところで急にデビルドーザーの体が制止し、瓜生の場まで弾き飛ばされる。

 

「何だと!? くそ! (墓地からあいつ(リベンジャー)を呼ぶのが目的か? 何をしてきやがる……) ターンエンドだ!」

 

LP:4000

SPC:6

手札:2

モンスター

・鉄鋼装甲虫

・森の聖獣 アルパカリブ

・デビルドーザー

魔法・罠

・DNA改造手術

・宮廷のしきたり

・セット

 

「俺のターン!」

 

 鬼柳 手札:0→1

 

 鬼柳 SPC:4→5

 瓜生 SPC:6→7

 

「パワーインセクト軍団、確かに強ぇが……そんなの俺には関係ねぇ!」

「ああ?」

「破壊できねぇ? パワーが高ぇ? んな事気にする事じゃねぇんだよ! 俺は俺の決闘をするだけだ! レベル3《インフェルニティ・ナイト》に、レベル3《インフェルニティ・リベンジャー》をチューニング!」

 

 リベンジャーが自身を3つの光輪へと変え、ナイトを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。

 

「戦いを求める炎の戦士よ! 俺と一緒に満足しようぜ! シンクロ召喚! 《フレムベル・ウルキサス》!」

 

 光の柱から現れたのはフレムベル・ウルキサス。鬼柳の闘志を反映させるかのように体から炎を噴出させる。

 

 ATK:2100 レベル6

 

「あれ!? フリント、あれって……」

「鬼柳のインフェルニティは驚異的な展開力を誇る、シンクロ召喚に適したデッキだ。……それなのに鬼柳は”インフェルニティ・デス・ドラゴン”以外のシンクロモンスターを持っていないと言う。だから俺のシンクロを分けてやったんだ」

「成る程……」

 

 フレアが納得している中、会場は今回一発目のシンクロ召喚に沸き立つ。MCも同様であった。

 

〔キターーー!!! シンクロ召喚! さあチーム・サティスファクション! ここからが反撃か!?〕

 

「圧倒的な力で! 度胸で! 押しまくってやるぜ! ウルキサスでアルパカリブを攻撃!」

「自棄にでもなったか? パワーはアルパカリブの方が上だ! 返り討ちにしろ!」

 

 アルパカリブに向かって跳びあがるウルキサス。それに対し、アルパカリブは鳥や虫を放って迎撃する。

 

「ダメージステップ時に墓地から罠カード《スキル・サクセサー》を発動! このカードを除外する事で、自分のモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時まで800ポイントアップ!」

 

 ATK:2100→2900

 

「墓地から罠だと!? そうかあの時!?」

 

 インフェルニティ・ナイトの効果により墓地へ送られていたスキル・サクセサー。鬼柳の奇襲強化によりパワーを上げたウルキサスは炎で迫ってきた鳥と虫を焼き払うと、アルパカリブの首に拳を叩き込む。

 アルパカリブは僅かに揺れるが倒れることはなく、首に小さな焦げ後が付いただけであった。

 

「へっ! 驚かされはしたが、こいつの効果で俺の場の攻撃表示の虫は戦闘破壊されねぇ! 無駄な攻撃と罠だぜ!」

 

 瓜生 LP:4000→3800

 

「へへ! まだまだ満足できねぇ! お前もそうだろ? ウルキサス!」

 

 鬼柳が声を掛けた瞬間、ウルキサスは雄叫びを上げ、筋肉を膨張させる。

 

 ATK:2900→3200

 

「何!? 攻撃力が上がりやがった!?」

「ウルキサスの効果! こいつが相手に戦闘ダメージを与えた時、こいつの攻撃力は300ポイントアップする! カードを伏せてターンエンド!」

 

 ATK:3200→2400

 

LP:4000

SPC:5

手札:0

モンスター

・フレムベル・ウルキサス

魔法・罠

・セット

・セット

 

「どんどん強くなるってか。なら強くなるその前に倒しちまえば済む事だぜ! 俺のターン!」

 

 瓜生 手札:2→3

 

 鬼柳 SPC:5→6

 瓜生 SPC:7→8

 

「バトルだ! デビルドーザーでフレムベル・ウルキサスを攻撃!」

 

 デビルドーザーが大きく開いた口をウルキサスに向け、エネルギーを溜め始める。

 

「負けねぇよ! SPCを1つ取り除き、速攻魔法《Sp-シルバー・コントレイル》を発動! 自分のモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時まで1000ポイントアップ!」

 

 鬼柳 SPC:6→5

 ATK:2400→3400

 

 ウルキサスは更にパワーを上げると、攻撃体勢のデビルドーザーに向かって突撃する。

 

「ハッ! 読めてんだよ! こっちも手札から速攻魔法《Sp-シルバー・コントレイル》! 吹き飛ばせデビルドーザー!」

 

 瓜生 SPC:8→7

 ATK:2800→3800

 

 デビルドーザーの口に更なるエネルギーが追加されると、それを向かってくるウルキサスに向かって一気に放つ。

 

「おもしれぇ! パワーでの押し合いだ! フレアが伏せた罠カード《シンクロ・ストライク》を発動! シンクロモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時まで素材×500アップさせる! ウルキサスの素材は2体! よって1000ポイント追加でアップだ!」

 

 ATK:3400→4400

 

「何だとぉ!?」

 

 ウルキサスが拳でエネルギー波を弾くと、そのままデビルドーザーを殴り飛ばす。

 

「ぐあ!?」

 

 瓜生 LP:3800→3200

 

〔パワーとパワーのぶつかり合い! それを制したのは鬼柳 京介! 圧倒的パワー軍団で優勢かと思われた瓜生だったが、これは面白くなってきたぞぉーーー!!!〕

 

「効果によりウルキサスのパワーが上がるぜ!」

 

 ATK:4400→4700

 

「ぐ……ターンエンド!」

 

 デビルドーザー     ATK:3800→2800

 フレムベル・ウルキサス ATK:4700→2700

 

LP:3200

SPC:7

手札:2

モンスター

・鉄鋼装甲虫

・森の聖獣 アルパカリブ

・デビルドーザー

魔法・罠

・DNA改造手術

・宮廷のしきたり

・セット

 

「俺のターン!」

 

 鬼柳 手札:0→1

 

 鬼柳 SPC:5→6

 瓜生 SPC:7→8

 

「バトル! ウルキサスでアルパカリブを攻撃!」

「!? ま、また……」

「ダメージステップ時に《Sp-イージー・チューニング》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、自分の墓地からチューナー1体を除外! その除外したチューナーの攻撃力分だけ自分のモンスター1体の攻撃力を上げる! 俺が墓地から除外するのは攻撃力1200の《インフェルニティ・ビートル》! よってウルキサスの攻撃力は1200ポイントアップ!」

 

 ATK:2700→3900

 

 ウルキサスが再びアルパカリブの元へと飛び掛かって首を殴りつけると、アルパカリブは先程よりも大きく揺れ、首の一部が大きく陥没する。

 

「うおぉ!?」

 

 瓜生 LP:3200→2000

 

「ウルキサスの攻撃力をアップ! ターンエンドだ!」

 

 ATK:3900→4200

 

LP:4000

SPC:6

手札:0

モンスター

・フレムベル・ウルキサス

魔法・罠

・無し

 

〔とうとうウルキサスのパワーが4000を超えたぁー! 瓜生はこのまま押し切られてしまうのか!?〕

 

「(く、くそ……このままじゃ殴り潰される! 完璧な作戦だったはずなのに……お前等、すまねぇ……)」

 

 俯いて弟分達に謝る瓜生。そんな瓜生を見て鬼柳は大声で呼びかける。

 

「おい何やってんだよ! お前のターンだ! もっとぶつけて来いよ! お前のパワーをよ!」

「何……?」

「楽しくて仕方が無ぇや! 俺の仲間を除いて、こんなに熱い決闘をできる奴はサテライトでもお目にかかれねぇ! このままずっとお前と殴り合いが出来れば、俺も満足できるかもな!」

「…………」

「だがそうはいかねぇのが決闘だ! 何れ決着は着く! だからありったけのパワーを込めて掛かって来い! 見せてくれよ! お前の全力全開のパワーって奴をよ!」

「……ふっ! テメェといい、不動 遊星といい……いいだろう! 見せてやる! 俺のターン!」

 

 瓜生 手札:2→3

 

 鬼柳 SPC:6→7

 瓜生 SPC:8→9

 

「(よっしゃ!) 《Sp-トレード・イン》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、手札からレベル8のモンスターを捨て、カードを2枚ドローする!」

 

 瓜生 手札:2→1→3

 

「永続罠《リビングデッドの呼び声》発動! 今捨てた《デスサイズ・キラー》を墓地から特殊召喚!」

 

 瓜生の場に全身が緑の甲殻に覆われ、大鎌を手に持つ人型の上半身とカマキリの下半身という姿をした怪物が現れる。

 

 ATK:2300 レベル8

 

「さらに《共鳴虫》を通常召喚!」

 

 続けて現れた共鳴虫。これで瓜生のモンスターゾーンは5体のモンスターで埋まった。

 

 ATK:1200 レベル3

 

「行くぜ! デスサイズ・キラーの効果発動! 自分の場の昆虫族1体をリリースする事で、ターン終了時まで攻撃力を500ポイントアップする! 俺はデスサイズ以外のモンスター全てをリリースし、攻撃力を2000ポイントアップする!」

 

 デスサイズ・キラーが大鎌を大きく一振りすると、瓜生の場の他の昆虫達全てが両断され、昆虫族となっていたアルパカリブも例外なく消滅する。全てのモンスターが消え去った後、デスサイズ・キラーの大鎌には虫の体液が滴っていた。

 

 ATK:2300→4300

 

「ウルキサスを上回りやがった!?」

「バトルだ! デスサイズ・キラーでフレムベル・ウルキサスを攻撃! 【地獄の大鎌(デスサイズ・ヘル)】!」

 

 デスサイズ・キラーがウルキサスに向かって跳びかかり大鎌を振るうと、ウルキサスは胴体を大きく斬り裂かれ、破壊される。

 

「くっ……! 墓地の《インフェルニティ・リベンジャー》の効果発動! ウルキサスと同じレベルにして特殊召喚!」

 

 鬼柳 LP:4000→3900

 

 鬼柳の場に再びインフェルニティ・リベンジャーが現れ、その目に恨みの炎を燈す。

 

 ATK:0 レベル:1→6

 

「これが正真正銘、俺の全力パワーだ! ターンエンド!」

 

 ATK:4300→2300

 

LP:2000

SPC:9

手札:2

モンスター

・デスサイズ・キラー

魔法・罠

・DNA改造手術

・宮廷のしきたり

・リビングデッドの呼び声(デスサイズ・キラー)

 

〔な、何というパワー勝負!? 押しつ押されつの大攻防! 勝利の女神はどちらへ微笑むのかぁーーー!!!〕

 

「すげぇ! 危うく満足しちまうところだった! だがな、やっぱり俺はまだ満足できねぇ! 本当の満足は、”この先”にあるんだからよ! そこへ辿り着く為に、この勝負、俺達が勝つ! 俺のターン!」

 

 鬼柳 手札:0→1

 

「引いたカードは《インフェルニティ・デーモン》! 手札が0枚の場合にこいつをドローした時、このカードを相手に見せる事で手札から特殊召喚できる! 来い! 《インフェルニティ・デーモン》!」

 

 鬼柳の場にインフェルニティ・デーモンが現れると、鬼柳のデッキに向かって手をかざす。

 

 ATK:1800 レベル4

 

「さらに効果発動! こいつが特殊召喚に成功した時、自分の手札が0枚の場合、デッキからインフェルニティと名のついたカード1枚を手札に加える事ができる! 俺は《インフェルニティ・ドワーフ》を手札に! そして通常召喚!」

 

 続けて鬼柳の場にインフェルニティ・ドワーフが現れ、鬼柳の場にインフェルニティが3体並ぶ。

 

 ATK:800 レベル2

 

「行くぜ! レベル2《インフェルニティ・ドワーフ》に、レベル6《インフェルニティ・リベンジャー》をチューニング!」

 

 リベンジャーが自身を6つの光輪へと変え、ドワーフを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる! シンクロ召喚! いでよ! 《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!」

 

 光の柱から現れたのは鬼柳の切り札、インフェルニティ・デス・ドラゴン。相変わらず醜悪な姿をしているが、持ち主の鬼柳が”自分”を取り戻したせいなのか旧クラッシュタウンで発せられていた不快感やおぞましさは和らいでいた。

 

 ATK:3000 レベル8

 

「な、何だこいつ……」

「インフェルニティ・デス・ドラゴンにはモンスター効果があるが……お前とは最後まで殴り合いのガチンコ勝負でいくぜ! バトル! インフェルニティ・デス・ドラゴンでデスサイズ・キラーを攻撃!」

 

 鬼柳の気持ちに応えたのか、インフェルニティ・デス・ドラゴンは鋏の様な腕でデスサイズ・キラーの大鎌を奪い取り、それをへし折って投げ捨てた後、デスサイズ・キラーを殴り飛ばして破壊する。

 

「ぐあぁ!?」

 

 瓜生 LP:2000→1300

 

「止めだ! インフェルニティ・デーモンで直接攻撃! 【ヘル・プレッシャー】!」

 

 インフェルニティ・デーモンが魔法陣を描き、瓜生の上空に展開させると、その魔法陣の中から巨大な炎の腕が現れて瓜生に掴みかかる。

 

「うわぁぁぁーーーー!!?」

 

 瓜生 LP:1300→0

 

〔決まったぁーーーー!!! 遂に決着! WRGPリーグ予選第一試合勝者! ”チーム・サティスファクション”! メンバーを一人残しての勝利です!〕

 

「ふぅーーー……負けちまったか」

 

 瓜生と鬼柳は同時に止まると、瓜生が大きな溜息を吐いてからDホイールから降り、鬼柳が乗っている大満足号へと近づく。

 

「よお、楽しかったぜアンタ! 今回は負けちまったが、俺等はまだ諦めるつもりはねぇ! 遊星やアンタともう一度戦う為、本戦を目指すぜ!」

「おう! 楽しみにしてるぜ! それはそうとアンタ、サテライトの何処のチームにいたんだ? アンタ程の奴なら名前くらい聞こえてても不思議じゃねぇんだけどな?」

「……ま、まあコイツつけてりゃ勘違いされても仕方がねぇけどよ、俺はシティ出身だ。送られた事はあるが、サテライトには一ヶ月もいなかったぜ。……それじゃあな」

 

 瓜生は顔に付いたマーカーを軽く掻きながらDホイールを押し、チームのピットへと戻っていく。鬼柳も大満足号を走らせ、自身のチームのピットへと戻った。

 

「鬼柳ーーー!!! やったね!」

 

 鬼柳が大満足号から降りると、フレアとフリントが出迎える。フレアの笑顔とフリントの微笑に応える様に、鬼柳も笑みを浮かべてリーグ戦表を取り出し、ペンである一部分を黒く塗りつぶした。

 

「後二箇所! ”チーム・サティスファクション”が黒く塗りつぶし、リーグ戦を制覇して本戦に行くぞ!」

「おー!」

「おう!」

 




WRGP、いよいよ開幕です!
でもやっぱりチーム戦は長くなりますね(汗)
できれば一試合は1話に纏めたいので、ここからもしかすると2~3話は2万越えの話がでるかもしれません(汗)
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