チーム・サティスファクションの初戦から数日間、彼等は特訓と情報収集に励んだ。
無論、その対象とは第二回戦の相手である”炎城 ムクロ”である。
「マシンで勝つのはまず無理だろう」
ムクロの一回戦の映像を遊星に見せたところ、この返答が帰ってきた。
遊星によると、ムクロのマシンは各パーツ自体の性能も然る事ながら、一つ一つに入念なカスタマイズが施されており、それぞれが絶妙な調和を生み出しているのだと言う。
「走りを見ただけでこれだけの事が分かるんだ。実際に調べればもっと凄まじいマシンに違いない」
遊星曰く、凄まじい研究時間と凄まじい大金をつぎ込み、そして凄まじい回数のテストを繰り返す事で、初めてあの領域に辿り着けるらしい。
「俺が初めてムクロと対戦した時から、奴のマシンの性能は目を瞠る物だった。あの時からここまでの物に仕上げたとすれば……次の試合、生半可な覚悟では勝てないぞ」
遊星にここまで言わしめたムクロの実力は相当なものだろう。
おそらく、ムクロはつぎ込めるものは全てライディング・デュエルにつぎ込んで来たに違いない。出会えるかも分からない、自分が追い求める”勝負”の為に。
* * *
「うーん、やっぱり情報は少なかったね」
数日後、WRGP予選Hブロック第二回戦会場である沿岸部スタジアムのチーム・サティスファクションピットにて、入場を終えたチーム・サティスファクションメンバー3人は持ち込んだタブレットを覗き込み、殆ど中身の無いデータベースを眺めていた。
ムクロについて、ここ数日で分かった事はまったく無いと言っていい。フォーチュンカップ以降の経歴については、公式、非公式共に殆ど出回っていなかったのである。
「いいんだよ別に。速ぇって事は分かってんだからよ!」
「二人共、最後の確認をするぞ」
フリントが手に持ったエントリー表を二人の前に置く。
ファースト・ホイーラーはフレア。セカンド・ホイーラーが鬼柳。そしてラスト・ホイーラーを務めるのがフリントとなっている。
「まずはフレア。自分の役割は覚えているな?」
「うん。……ちょっと不満だけどね」
ファースト・ホイーラーであるフレアの役割――――それは”出来るだけSPCを貯金し、絶対に引き離されない事”である。
「絶対に欲は出すな。お前のテクニックがあっても、ムクロには敵わない。だから意地でも後ろに付いて行け。それだけで、この前の試合の様な負けは無くなる。ムクロも決闘に応じるだろう」
「……でも、やってみたらいけるかも――――」
「やってみて、現実を知ってからじゃ遅い。……お前の気持ちは痛いほど解る。だがこれはチーム戦だ。遊星達もユニコーンと戦って、その重さを思い知ったと言っていただろう?」
「うん……ごめんね。私も解ってるんだけど、やっぱりあんな走りをする人っていないから……」
今やフレアも立派なDホイーラーである。
押さえつけても、”強者と正々堂々戦えるならそうしたい”という気持ちが前面に出てしまうのだ。
「すまないが、頼むぞ。お前の結果は、鬼柳の走りに響く」
「俺もこの作戦はイマイチ気に入らねぇんだよな。これ以上が無ぇから、仕方無いんだけどよ」
今回、鬼柳はファースト・ホイーラーを希望していた。
理由はフレアと同じ、”やれるなら正々堂々の真っ向勝負がしたい”からである。
「お前の大満足号がファーストでは結果が見えている。一回戦第二試合の二の舞になるだけだ」
「くっそ! 結構パワーを犠牲にして軽くしたんだけどなぁ~! これじゃあ満足できないぜ!」
作戦によると、鬼柳の大満足号では差を付けられるのは目に見えているので、フレアが溜めて来た貯金で差を縮めるのだという。
最初はフレア、フリントの順で早期決戦を行うという案もあったのだが、決闘がしたいという鬼柳と、決闘をする前にできるだけムクロのデータを集めたいというフリントの意見により、現在の形に落ち着いた。
「これで確認を終える。……二人共、俺の話を聞いてくれて感謝する。納得がいかないだろうが、俺達のチーム戦に置ける経験は遊星達よりもずっと薄い。できるだけ早い内にこの差は埋めるべきだと俺は思っている」
フリントが何時もの仏頂面で二人に語り掛ける。
笑うか、大きく感情が昂らなければフリントの表情は変わらない。おそらく、本人にとっては真剣な顔付きなのだろうが、今の顔はどう見ても普段と変わらないので、人によっては冷たい、無感情な奴だな、という印象を受けるかもしれない。
勿論、このメンバーでそういう事はありえない。
フリントの言葉を聞いた鬼柳は、ばつが悪そうに頭を掻く。
「本来ならリーダーの仕事だってのに、すまねぇなフリント。……変わるってのは難しいな。解ってても、つい我が出ちまう。それで一度失敗してるっていうのによ」
「き、鬼柳……」
「おっとフレア、心配すんな! もう堕ちたりはしねぇよ。こうやって支え合って、一緒に満足していきゃいいんだからよ!」
迷いの無い鬼柳の笑顔と言葉に、フリントとフレアは笑みを返してから頷く。
それと同時に、MCの高らかな実況が会場に響き渡った。開始の時間である。
「よっしゃ! 行けフレア!」
「頼んだぞ」
「任せて!」
フレアはヘルメットを被りながら意気揚々と駆け出し、ウィルダーネスに飛び乗る。
最初はぎこちなかったマシンチェックも慣れた手つきでこなし、すぐさま発進させてピットを飛び出し、スタートラインへと向かう。
「よお、遅かったじゃねぇか」
フレアがスタートラインに辿り着くと、そこには既に準備を終えたムクロがライン前でDホイールに跨っていた。
フレアも同じ様にウィルダーネスをライン前に着ける。
「それにしても、嬢ちゃんがファーストかよ。大丈夫なのかおい? 言っとくが、付いて来れなきゃお前等の負けだぜ?」
「そっちこそ、油断してると衝突事故が起きちゃうかもよ? 後ろからのね」
「ハッハー! 言うじゃねーか! 少なくとも、前回のエセ死神野郎よりかはやれそうだな!」
ムクロが愉快そうな笑い声を上げると同時に、MCの前置きが終了する。
カウントが表示され、一つずつゆっくりと消えて行く。そして――――最後のカウントが消え、開始の合図が会場に鳴り響いた。
[……ライディング・デュエル! アクセラレーション!!!]
スタートダッシュは同時。だが同時だったのはここまで。第一コーナーに辿り着くまでにムクロはフレアに対しマシン2台分程の間隔差をつけ、第一コーナーへと入る。
[炎城 ムクロ! 凄まじい速さで第一コーナーを抜けたぁー! 先攻はムクロォー! それにしても、本当に凄まじい速さ! Dホイールとはあのような速さで曲がれるものなのかぁー!?]
「改めて見てもとんでもねぇな。大丈夫かフレア?」
「この時の為にウィルダーネスの加速を可能な限り高めた。抜く事はできなくとも、フレアの腕ならばこれ以上離される事は無いはずだ」
現在、ウィルダーネスには”クイックチップⅢ”というオプションパーツが取り付けられている。
このチップはDホイールの性能を限界以上に引き上げる凄まじい高性能品であるが、一度でも失速すると階段の如く性能が右肩下がりしてしまうという、致命的な欠点を持つ玄人向けのオプションパーツである。
無謀と言える手段だが、ムクロと肩を並べて決闘するにはこれしか無かったのである。
「(やってみせる! 絶対にフリントの期待に答えてみせる!)」
「やるじゃねぇか! 口だけじゃなくて嬉しいぜ! 俺のタァーン!」
ムクロ 手札:5→6
ムクロ SPC:0→1
フレア SPC:0→1
「来い! 《
ムクロの場に現れたのは、青い髪を生やした逞しい男。
その周りには火球を漂わせ、それを自由自在に動かしている。
ATK:1500 レベル4
「カードを3枚伏せる! ターンエンドだァ!」
LP:4000
SPC:1
手札:2
モンスター
・炎を支配する者
魔法・罠
・セット
・セット
・セット
「私のターン!」
フレア 手札:5→6
「おおっと! ここで永続罠《フルスロットル》発動だぁ! お互いのスタンバイフェイズ毎に、俺のSPCを1つ増やす! これで俺のSPCは毎ターン2つずつ増えるぜ!」
ムクロ SPC:1→3
フレア SPC:1→2
いきなりSPCの差をつけスピードをアップさせるムクロ。それに負けじとフレアもウィルダーネスを加速させて後を追う。
「(やっぱり、根本は変わってないみたい)」
ムクロのフォーチュンカップ時と一回戦での戦術は、”SPCを限界まで活かす”というもの。
今の罠を見る限り、戦術は変わっていないと思われる。
「(追い付くのさえ難しいけど、止まらなければ置いては行かれない!)」
何だかんだ言って、フレアは最初から作戦に協力するつもりで会場にやって来ていた。
今日の為にRDデッキを改造し、後続の鬼柳の為にSPCを温存する為と、相手のSpを利用して一気にSPCを増やす罠カード”アクセル・ゾーン”をムクロが使ってくる事を警戒する為、Spを1枚もデッキに入れないという徹底振りである。
「自分の墓地にモンスターが存在しない場合、手札からこのカードを特殊召喚できる! 来て! 《ガーディアン・エアトス》!」
フレアがカードを掲げると、そこから光の鳥が放たれ、空高く舞い上がる。
舞い上がった光の鳥は閃光となって空からフレアの場へと降り、女神”ガーディアン・エアトス”へと姿を変えた。
ATK:2500 レベル8
「今回は一気に駆け抜けるよエアトス!」
『はい! 行きましょうフレア!』
「うん! バトル! エアトスで攻撃! 【精霊のオペラ】!」
「残念だが、届かねぇよ! 永続罠《スピード・ブースター》を発動! 1ターンに一度、自分のSPCが相手のSPCよりも多い場合、相手モンスターの攻撃を無効にできる! ヒャッハー!」
ムクロのDホイールにソリッドビジョンのブースターが取り付けられると一気に加速し、フレアを引き離す。
『くっ……あれでは届かない……!』
光を放とうと上空へ上がっていたエアトスは悔しそうに先を行くムクロを見送った後、フレアの側に戻る。
「やっぱり、簡単には捕まえられないね……モンスターをセット! カードを3枚伏せてターンエンド!」
LP:4000
SPC:2
手札:1
モンスター
・ガーディアン・エアトス
・セット
魔法・罠
・セット
・セット
・セット
「俺のターン!」
ムクロ 手札:2→3
ムクロ SPC:3→5
フレア SPC:2→3
「それじゃあ反撃と行かせて貰うぜ! 永続罠《スピード・エッジ》を発動! 自分のスタンバイフェイズ時に自分のSPCが相手よりも多かった場合、その差×200ポイントのダメージを与える! 今の俺とお前の差は2つ! よって400ポイントォ! さらにスピード・ブースターのもう一つの効果発動! 自ターンに一度、SPC差分×100ポイントのダメージを与える! よって合計600! くらいやがれ!」
ムクロのDホイールから衝撃波が、ブースターからミサイルが2発発射され、同時にウィルダーネスへと襲い掛かる。
「くっ……この程度なら大丈夫!」
フレア LP:4000→3400
フレアは失速しないよう加速を強めて衝撃波を無理やり突き抜けつつ、ミサイルを避け、その爆風を引き離す。
「おおやるじゃねぇか! 気に入ったぜ! ……それじゃあ特別に、俺のエースを拝ませてやるぜ! 炎を支配する者をリリース!」
ムクロが宣言すると、炎を支配する者は炎を操り、自分と同じ形の分身を作り上げ、共に光の中へと姿を消す。
「こいつは炎属性のアドバンス召喚を行う場合、1体で2体分のリリース素材にできる! さあ来いよ! アドバンス召喚! 《スカル・フレイム》!」
光の中から現れたのは、骨の装飾を施したボロボロのマントと衣装を身に纏ったアンデット。
完全に姿を現した瞬間、後頭部から長い髪の様な炎を噴出させる。
ATK:2600 レベル8
「エースがきやがったぜ!」
「ああ、あれがムクロの戦術の中核だ。あれを倒せるかで勝負は変わってくる。フレア、頼んだぞ……」
「(データに乗ってたエース!?) させない! 罠カード《奈落の落とし穴》発動! 相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時、そのモンスターを破壊しゲームから除外する!」
「させるかよぉ! 速攻魔法《Sp-スピード・フォース》! SPCが4つ以上存在する場合、このターン俺の場のカードは相手の魔法・罠の効果では破壊されない!」
ムクロと並んで空を飛ぶスカル・フレイムの目の前に次元の穴が現れるが、それが現れると同時にスカル・フレイムが光のバリアに覆われ、次元の穴を突き抜けて無理やり元の空間へと戻って来てしまう。
「逃げられた!?」
「それじゃあこいつを捉えることなんざできねぇよぉ! 行くぜ! スカル・フレイムの効果発動! 1ターンに1度、バトルフェイズを放棄する代わりに、手札から《バーニング・スカルヘッド》1体を特殊召喚するぜ!」
スカル・フレイムが両手を目の前にかざすと、そこから火を纏ったドクロが姿を現す。
DEF:800 レベル3
「バーニング・スカルヘッドの効果発動ォ! 手札から特殊召喚に成功した時、相手に1000ポイントのダメージを与える! 食らえ!」
バーニング・スカルヘッドが身に纏っていた炎をフレアに向かって放つ。
『フレア!?』
「きゃあ!? (頑張って、ウィルダーネス!)」
フレア LP:3400→2400
炎が纏わり付こうとうねるが、ウィルダーネスはそれを振り払い、加速を続ける。
「(何とかなったけど、ちょっと無理させすぎちゃった……ごめんね)」
限界以上と言うからには、マシンに掛かる負担も大きい。
下手をすれば、失速以前にマシントラブルで試合を降りなければならない事もありえる。
「随分としぶとい上、その加速……やっぱりそれクイックチップだろ? それもかなり高性能のだ!」
流石というべきか、決闘中にも関わらず、ムクロはウィルダーネスの加速の秘密を見抜く。
「随分リスキーな戦術じゃねぇか! それを選ぶ決断に至ったのは、そのマシンの頑丈さとお前の度胸のでかさってところか? ……ハハッ! この大会、お前等と戦えただけでも価値があったぜ! ターンエンドだ!」
LP:4000
SPC:5
手札:0
モンスター
・スカル・フレイム
・バーニング・スカルヘッド
魔法・罠
・フルスロットル
・スピード・ブースター
・スピード・エッジ
「私のターン!」
フレア 手札:1→2
ムクロ SPC:5→7
フレア SPC:3→4
「(厳しいなぁ……)」
反則級のスピードを誇るムクロ相手に、フレアはよく付いて行ったと言えるだろう。張ってある策を含め、役割は十分に果たした。
しかし、残念ながら決闘については完全に後れを取ったと言わざる得ない。
次のスタンバイフェイズでフレアが受けるダメージは1200。これを受ければフレアのLPは同じく1200となり、ムクロのSPC数によって上げられたデッドラインを過ぎてしまっているのである。
「(ムクロさんがSpを引いたら、そこで私の負け……引かなくても、ウィルダーネスがちょっと厳しい……)」
フレアがモニターへと眼を向けると、既に幾つかの警告が表示されている。本来なら今すぐにでもピットへ戻るべき状態であった。
「(……悔しいけど、今は少しでも良い状態で鬼柳に回す!) 手札から獣族を1体墓地へ送る事で、チューナーモンスター《虚栄の大猿》を特殊召喚!」
墓地へ送ったカード
キーマウス
フレアの場に現れたのは大きな影を持つ小猿である”虚栄の大猿”。
今回は影を大きいまま変化させる事無く、スカル・フレイム達を必死に威嚇する。
ATK:1200 レベル5
「そして《マイン・モール》を反転召喚!」
続けて姿を現したのは”マインモール”。
これら2体が出揃った以上、フレアのやる事は分かりきっていた。
ATK:1000 レベル3
「レベル3《マイン・モール》に、レベル5《虚栄の大猿》をチューニング!」
虚栄の大猿が自身を5つの光輪へと変え、マイン・モールを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野を駆ける雷よ! 常闇を貫き、閃光の如く大地を駆け抜けよ! シンクロ召喚! 照らせ! 《ライトニング・トライコーン》!」
光の柱から現れたのは”ライトニング・トライコーン”。
場に降りると、体から電気を放電させながらウィルダーネスの横を並走する。
ATK:2800 レベル8
「(これでスカル・フレイム以上のモンスターは残せた……) マイン・モールの効果発動! 獣族シンクロモンスターの素材となって墓地へ送られた時、カードを1枚ドローする!」
フレア 手札:0→1
「バトル! ライトニング・トライコーンでスカル・フレイムを攻撃! 【ギガボルト・チャージ】!」
「無駄だぁ! スピード・ブースターで無効ォ!」
ライトニング・トライコーンが角に電気を集中させ、スカル・フレイムに向かって突進する。
それに対し、ムクロはDホイールから先程とは違うミサイルを発射し、ライトニング・トライコーンの目の前で破裂させる。
怯んだライトニング・トライコーンは攻撃もせずにフレアの場へと戻って来てしまった。
「ならせめて! エアトスでバーニング・スカルヘッドを攻撃!」
ムクロがトライコーンに気を取られている隙に上空へと飛んだエアトスは、下にいるスカルヘッドに向かって光を放ち、消滅させる。
「カードを伏せてターンエンド!」
LP:2400
SPC:4
手札:0
モンスター
・ガーディアン・エアトス
・ライトニング・トライコーン
魔法・罠
・セット
・セット
・セット
「へっ! 俺のターン!」
ムクロ 手札:0→1
ムクロ SPC:7→9
フレア SPC:4→5
「ここで永続罠の効果発動ォ! スピード・エッジの効果で800! スピード・ブースターの効果で400! 合計1200のダメージだぁ!」
ムクロのDホイールから先程以上の衝撃波と、4発のミサイルが放たれる。
ウィルダーネスにはもうそれらを避けるだけの力は残されていないと判断したフレアは、それら全てを受け切った。
「くっ! ううう……!?」
フレア LP:2400→1200
『フレア!?』
「限界か……鬼柳、準備に入ってくれ」
大きく体勢を崩してしまうフレア。
それによりウィルダーネスは一気にスピードを落としていってしまう。
「さあて、ここいらで決められるかね! SPCを6つ取り除き、《Sp-シフトダウン》を発動! デッキから2枚ドローする!」
ムクロ SPC:9→3 手札:0→2
「(!? 自分からSPCを減らすなんて……)」
「(――――何て思ってるだろうな! 悪いが嬢ちゃん、俺はそこまで猪突猛進なスピード馬鹿じゃないぜ? SPCなんて何時でも取り戻せるのよ!)」
Spの効果により、少しだけ加速が弱まるムクロのDホイール。
しかし、消耗し切ったウィルダーネスの減速の方が激しく、距離は縮まるどころか開く一方であった。
[おおーとぉ!? どうした事か!? フレアの速度が落ちる一方だぁ! 何かトラブルかぁ!?]
「行くぜぇ! 《Sp-スピードストーム》を発動! SPCが3つ以上存在する場合、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
ムクロのDホイールから突風が放たれると、遠く離れたウィルダーネスに命中し、ウィルダーネスはさらにバランスを崩して減速する。
「きゃあああ!?」
フレア LP:1200→200
そして突風が消え去った瞬間、ムクロのDホイールがウィルダーネスを抜き去る。
ムクロ SPC:3→4
「うう……!」
『フレア! もうピットに戻ってください! フリントからの指示です!』
エアトスが半周ほど離れているピットを指し示す。
フレアがそれに顔を向けると、フリントが”P Frea”と表示されたプレートを掲げて立っているのが見える。
「……分かった」
フレアは何とかスピードを上げようとするが、ウィルダーネスのスピードは中々上がらない。
そして、そんな事は気にも留めないという風にもう一周してきたムクロがウィルダーネスに迫る。
「悪いがこれは勝負だ! 逃がさないぜ! スカル・フレイムの効果発動! 2体目の《バーニング・スカルヘッド》を特殊召喚!」
DEF:800 レベル3
ムクロの場に2体目のスカルヘッドが現れると、前を行く満身創痍のウィルダーネスに向かって無情にも炎を放つ。
「あ!? きゃあああ!? と、罠――――」
フレア LP:200→0
惜しくもピットの前で追いつかれてしまったフレア。
完全に動きを止めてしまったウィルダーネスの横を、ムクロが凄まじい速さで駆け抜ける。
ムクロ SPC:4→5
[決まったぁー! 炎城 ムクロ! ここで最初の一人であるフレアを降したぞぉー!]
「嬢ちゃん! お前の走り、よかったぜ! 今度はもっと実力と色気を付けてから出直してきな!」
「フレア! 急げ!」
呆然とするフレアにフリントが呼びかけると、フレアは煙を上げているウィルダーネスを押してピットの中へと入る。
「ごめん、二人共……全然駄目だった……」
「んな事あるか! 後は任せておけ! カード借りるぞ!」
フリントが迅速にフレアの決闘盤からカードを取り出し、鬼柳の決闘盤へと移す。
「サンキューフリント! おっしゃー! 満足させてくれよ!」
そう叫んでる内に、更に一周を終えたムクロに抜かされるも、鬼柳は意気揚々とピットを飛び出して行く。
ムクロ SPC:5→6
「……俺の方こそすまなかったな、フレア。計算ではもっと持つはずだったんだが、どうやらお前のライディング・テクが想像以上だったようだ。マシンが付いて行けないほどとは、恐れ入った」
そう言いながら、フリントはウィルダーネスの状態を確かめる。
幸い深刻な損傷は無いが、修理には時間を要しそうであった。
「つまり、私はまだまだ未熟って事ね。マシンに無理させて走ったんだもの。……ごめんね、ウィルダーネス……」
フレアはウィルダーネスを軽く撫でてやると、切り替えた様にコースへと眼を向ける。
「それにしても、まさか1ポイントも削れなかったなんて……ムクロさん、本当に強いよ」
「俺も予想外だった。だが、まだ予定通りでもある。SPCに大きな差ができなかったからな。……頼んだぞ、鬼柳」
少し時間を戻し、こちらはピットから出発したばかりの鬼柳。
できる限りの改造を施したとは言え、やはり巨体の大満足号では分が悪く、追いつくどころかどんどん引き離されていってしまっているのがよく分かる。
[チーム・サティスファクション、ここからはセカンド・ホイーラーである鬼柳 京介が決闘を行うぞぉ! しかし、この大きさとスピードでは厳しいのではないかぁ?]
「うるせぇぞMC! 満足にスピードは関係ないんだよ!」
「そいつはどうだろうなぁ? 勝負にならなきゃ、結局満足なんかできねぇだろうが?」
「安心しな! この俺がテメェを引きずり込んで無理やり勝負にしてやるからよ! 行くぜ――――」
「「 デュエル!!! 」」
「俺のターン!」
鬼柳 手札:5→6
「ドローフェイズ時にSPCを3つ払い、速攻魔法《Sp-サモンクローズ》を発動! 自分の手札を1枚墓地へ送り、その後1枚ドロー! そしてテメェはこのターン、モンスターを特殊召喚できなくなるぜ!」
鬼柳 SPC:5→2 手札:5→4→5
「スタンバイフェイズ! ここで前のターンにフレアが発動していた罠カード《スリップ・ストリーム》の効果が発動するぜ!」
ムクロ SPC:6→8
鬼柳 SPC:2→3
「スリップ・ストリームだぁ!? (ちっ! 止めを刺したあの時か! スカルヘッドの炎で見えなかったぜ!)」
「フレアの奴、いい勘と仕事してるぜ! スリップ・ストリームは自分のSPCが相手のよりも少ない場合、次の自分のターンのスタンバイフェイズ時に自分のSPCを相手のSPCと同じ数にする!」
鬼柳 SPC:3→8
[おおーっとぉ! ここでチーム・サティスファクション! 連携によって大きく差を付けられたSPCを瞬く間に同等の数に揃えてしまったぁ! ムクロも凄まじいが、こちらの連携も素晴らしいぞぉ!]
「へっ! 並んだからなんだってんだ! すぐに追い抜いてやるぜ!」
そう言ったムクロは、既に鬼柳の後ろに回っている。
「簡単には抜かせねぇぞ! まずはカードを2枚セット! そしてフレアが伏せた永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から《インフェルニティ・ジェネラル》を特殊召喚!」
鬼柳の場にインフェルニティ・ジェネラルが現れると、その手に持った大剣を後ろから迫ってくるスカル・フレイムに向けて構える。
ATK:2700 レベル7
[何とぉ! 鬼柳! 先程のサモンクローズによって最上級モンスターを仕込んでいたぞぉ! これで鬼柳の場に最上級モンスターが3体だぁ!]
「さらに《インフェルニティ・ナイト》を召喚!」
続けて鬼柳の場にインフェルニティ・ナイトが現れ、ジェネラルに付き従う様に側へと控える。
ATK:1400 レベル3
「行くぜグラサン野郎! バトル! トライコーンでスカル・フレイムを攻撃!」
「チィ! ブースターで無効だ!」
トライコーンが再び突進を試みるも、またもやミサイルで追い返されてしまう。
「ならジェネラル! 【
ジェネラルが引き返してくるトライコーンを跳び越えると、その勢いで大剣をスカル・フレイムに向かって振り下ろし、両断する。
「やりやがったな! くそっ!」
ムクロ LP:4000→3900
「ナイトでバーニング・スカルヘッドを攻撃!」
ジェネラルが大胆に斬り付けたのに対し、ナイトは静かに且つ、迅速に間合いを詰め、手に持った剣でスカルヘッドを貫く。
「最後にエアトス! やっちまえ!」
『(フレアの分まで、戦い抜いてみせる!)』
エアトスが再び上空へと舞い上がり、歌声を光に変えてムクロに撃ち出す。
「ぐおお!? ……効いたぜぇ……!」
ムクロ LP:3900→1400
[ここでムクロ! 大きく削られてしまったぁ! 後にフリントが控えている今! 大丈夫なのかぁ!?]
「どうだ! 俺はこれでターンエンド!」
LP:4000
SPC:8
手札:2
モンスター
・ガーディアン・エアトス
・ライトニング・トライコーン
・インフェルニティ・ジェネラル
・インフェルニティ・ナイト
魔法・罠
・リビングデッドの呼び声(インフェルニティ・ジェネラル)
・セット
・セット
・セット
あともう少しで追いつくという位置にいたムクロであったが、今の総攻撃により大きく後退する。
だがこれにより、鬼柳の背を追うムクロの眼には、更なる闘志が宿る事となった。
「さっきの嬢ちゃんといい、面白ぇじゃねぇかチーム・サティスファクション! セカンドがこれ程なら、ラストの野郎はさぞかし強いんだろうよ」
「想像で満足してる場合かよ? このままじゃ俺で終わっちまうぜ?」
「へっ! んな訳あるかよぉ! 俺のターン!」
ムクロ 手札:0→1
ムクロ SPC:8→10
鬼柳 SPC:8→9
「ここでスピード・エッジとスピード・ブースターの効果発動! 差分は1! 合計300のダメージだ!」
ムクロが宣言すると、衝撃波と1発のミサイルが大満足号に襲い掛かる。
「うお……ちっ! こんなダメージ与えて満足できるのかよ――――ってコラおい!?」
鬼柳 LP:4000→3700
さすがに大満足号ではウィルダーネスの様な芸当はできず、ダメージをまともに受けてしまう。
その隙を突き、ムクロは鬼柳を一気に追い抜いた。
ムクロ SPC:10→11
「さてと……悪ぃな兄ちゃん。必ずしも勝ちに繋がる訳じゃねぇが、俺にはあるジンクスがある」
「ああ? 何だよ?」
「それはな……ここ重要な一戦って時に、何故か妙に運が良くなるのさ! SPCを6つ取り除き、《Sp-シフトダウン》を発動! カードを2枚ドロー!」
「何!? またかよ!」
ムクロ SPC:11→5 手札:0→2
「おおっと! まだまだ回るぜ! SPCを4つ取り除き、《Sp-エンジェル・バトン》発動! カードを2枚ドローし、手札から1枚を墓地に送る!」
ムクロ SPC:5→1 手札:1→3→2
墓地へ送ったカード
スカル・フレイム
「へっへっへ! 誰にも俺は止められねぇ! 墓地の《スカル・フレイム》を除外し、コイツを手札から特殊召喚する! いざカモォーン! 《スピード・キング☆スカル・フレイム》!」
追い詰められたムクロが繰り出したモンスター――――それはマントを纏ったスカル・フレイムの上半身と、馬の体を下半身とした半人半馬のアンデット。
場に降り立つと同時に、ムクロと並走してコースを駆ける。
ATK:2600 レベル10
「コイツ……確か遊星戦で披露したとかいう切り札だったか?」
「よく知ってるじゃねぇか! あの時はコイツの力を存分に引き出せなかったが、今は違うぜ! まずは挨拶代わりだ! スピード・キングの効果発動! 自分の墓地に存在するバーニング・スカルヘッド1体につき、相手に400ポイントのダメージを与える! 墓地にいるのは2体! 800ポイントのダメージを食らいやがれ!」
ムクロの場に2体のスカルヘッドが現れると、それぞれが大満足号目掛けて体当たりする。
「ぐわ!? ぐっ!」
鬼柳 LP:3700→2900
2体が間隔を空けず、確実に当たりに行った為、大満足号は大きく体勢を崩す。
その隙を狙って、ムクロとスピード・キングは加速し、追越しを狙おう。
「くそっ! レースゲームじゃねーんだからよ……」
「続けて行くぜぇ! バトル! スピード・キング☆スカル・フレイムでガーディアン・エアトスを攻撃!」
スピード・キングはスピードを上げると、まだ半周近く離れている鬼柳達との間合いを一気に詰める。
そして彼等の後ろを取った瞬間、口から凄まじい火炎をエアトスに向かって放ち、破壊する。
『(ここまでですか……フレア、申し訳ありません)』
「くそ! だがこっちにはまだジェネラルとトライコーンがいるぜ!」
鬼柳 LP:2900→2800
「カードを伏せる! これでターンエンドだ!」
LP:1400
SPC:1
手札:0
モンスター
・スピード・キング☆スカル・フレイム
魔法・罠
・フルスロットル
・スピード・ブースター
・スピード・エッジ
・セット
「俺のターン!」
鬼柳 手札:2→3
ムクロ SPC:1→3
鬼柳 SPC:9→10
「(ちょいと反撃を食らっちまったが、何の問題も無ぇ! SPCを使い込んでくれたおかげで、ブースターも使えねぇ! 今がチャンスだ!) バトル! トライコーンでスピード・キング☆スカル・フレイムに攻撃!」
トライコーンが角に電気を集中させて突撃すると、スピード・キングはそれを回避できず、角と電撃の鋭い一撃を受けて胴体を分断される。
「ぐう!」
ムクロ LP:1400→1200
「よっしゃ! 次で止めだ!」
「そいつはどうかなぁ!? スピード・キング☆スカル・フレイムの効果発動! 場から墓地へ送られた時、墓地に存在する《スカル・フレイム》1体を特殊召喚する! カモーン!」
分断された馬の体は消滅したが、スカル・フレイムの上半身は宙に浮き、スカル・フレイム本来の下半身を再生させる。
DEF:2000 レベル8
「こんな能力聞いてねぇぞ……遊星の時に使い切れなかった能力って事か。まあいい! 続けてジェネラル!」
ジェネラルが再びスカル・フレイムに斬り掛かり、先程と同じ様に両断する。
「今度こそ止めだ! ナイトで攻撃!」
「言っただろうがぁ! 誰にも俺を止められないってなぁ! 永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 復活させるのは勿論! 《スピード・キング☆スカル・フレイム》!」
幾ら毛色が違くとも、やはりアンデットとはしつこく粘り強いもの。その例に洩れず、スピード・キングは再び鬼柳の前に立ち塞がる。
ATK:2600 レベル10
「何だと!? チクショウ! これじゃあ満足できないぜ! 攻撃は中止だ!」
鬼柳が宣言すると、ナイトは剣を納めて鬼柳の場へと戻る。
そして鬼柳は気付く、もうナイトがワンステップで場を行き来できる距離まで近づかれている事に。
「(相変わらず速ぇな……だが決闘と満足じゃ負けねぇぞ!) 罠カード《インフェルニティ・インフェルノ》を発動! 手札を2枚まで捨て、捨てた枚数分だけデッキからインフェルニティカードを墓地へ送る! 俺は2枚捨て、デッキから《インフェルニティ・リベンジャー》と《インフェルニティ・アーチャー》を墓地へ!」
鬼柳 手札:3→1
「そしてナイトをリリース! 《インフェルニティ・デストロイヤー》をアドバンス召喚!」
ナイトが光の中へと消えると、その光の中からデストロイヤーが姿を現す。
ATK:2300 レベル6
「ターンエンドだ!」
LP:2800
SPC:10
手札:0
モンスター
・ライトニング・トライコーン
・インフェルニティ・ジェネラル
・インフェルニティ・デストロイヤー
魔法・罠
・リビングデッドの呼び声(インフェルニティ・ジェネラル)
・セット
・セット
「鬼柳のハンドレス・コンボ! でも……」
一瞬、期待が現れた表情を表したフレアだったが、途端に浮かない顔になる。
「どうした?」
「うん……鬼柳のハンドレス・コンボは強いけど、だけど……ムクロさんは、それでも懐に入り込んできそうで……何か恐い感じ」
「……お前がそう思うのは、おそらくあの男がいろんな意味で規格外だからだ」
「いろんな意味で?」
「少なくとも、俺は速さで決闘に勝とうとする奴も、団体戦に一人で出る奴も、メットの下にサングラスを掛けている奴も、今まで見た事も無かった。よく解らないものは、何となく怖いものだろう」
「……ぷ、ふふふ」
「可笑しい話だったか?」
フリントが何時もの表情で僅かに首を傾げると、フレアは更に軽く噴出す。
「いや、うん、話もそうだけど、フリントがそれを持ち出してきたのが何か可笑しくて……あ、でもらしいかもね。フフッ! ……説得力あるよ」
そう言ってフリントの顔を見たフレアはまたフッと噴出し、肩を震わせながら顔を背ける。何故笑われたのか解らないフリントは僅かに眉を顰めた。
二人がそんな話をしている間にも、決闘は続く。
再び鬼柳をコーナーで抜かしたムクロはピンチなのにも関わらず、ご機嫌な様子でデッキに指を掛ける。
「ハッハー! これで3度目だぜ! 俺のターン!」
ムクロ 手札:0→1
ムクロ SPC:3→4→6
鬼柳 SPC:10→11
「まずはコイツからだ! スピード・キングの効果発動! 墓地のスカルヘッドは変わらず2体! よって800のダメージだ!」
ムクロの場に2体のスカルヘッドが現れ、再び大満足号へ体当たりを仕掛ける。
「うわ!? またかよ!」
鬼柳 LP:2800→2000
「さーらーに! 《Sp-シンクロ・デフューズ》を発動! 自分のSPCが2つ以上存在する場合、相手のシンクロモンスター1体のコントロールをエンドまで得る! こっちに来いよ! 《ライトニング・トライコーン》!」
ムクロがSpを発動させると、トライコーンが鬼柳の場を離れ、ムクロの場のスピード・キングと共に並走し始める。
「このやろ!? くそっ! (追い詰めたはずなのに、何時の間にかペースを握られてやがる!?)」
「バトルだ! トライコーンでインフェルニティ・ジェネラルを攻撃!」
トライコーンが角に電気を集中させ、先程まで共に戦っていた仲間に向かって突進し、角を突き立てて破壊する。
「く……! 墓地のインフェルニティ・リベンジャーの効果発動! リベンジャー以外の自分の場のモンスターが戦闘で破壊された時、コイツを破壊されたモンスターの元々のレベルと同じレベルにして特殊召喚する! 来い! リベンジャー!」
鬼柳 LP:2000→1900
ジェネラルが消え、代わりに場に現れたのは”インフェルニティ・リベンジャー”。
仲間に裏切られたせいか、その眼には何時も以上に復讐の業火が燃えているように見える。
DEF:0 レベル1→7
「ほう! ならスピード・キングでデストロイヤーを攻撃!」
今度はスピード・キングが突進し、一定の距離まで近づいてから火炎をデストロイヤーに向かって放つ。
デストロイヤーはこれと言って抵抗ができないまま、炎で焼き尽くされてしまった。
「チクショウ……!」
鬼柳 LP:1900→1600
[これは凄いぞぉ! 先程まで劣勢だったムクロがじわりじわりと鬼柳を追い詰める! これが一人チームのプレッシャーによる底力だと言うのかぁ!?]
「ちげーよ! 俺様の実力だ! ……ったく! ターンエンド!」
ムクロのエンド宣言と同時にトライコーンが正気を取り戻し、飛び跳ねる様に慌てて鬼柳の場へと戻る。
LP:1200
SPC:6
手札:0
モンスター
・スピード・キング☆スカル・フレイム
魔法・罠
・フルスロットル
・スピード・ブースター
・スピード・エッジ
・リビングデッドの呼び声(スピード・キング☆スカル・フレイム)
「俺のターン!」
鬼柳 手札:0→1
ムクロ SPC:6→8
鬼柳 SPC:11→12
引いたカード
インフェルニティ・ガーディアン
「(くそ……今日は引きがちぐはぐな気がするぜ。俺が奴のペースに引き込まれてるからか? 満足できねぇ……) バトル! トライコーンでスピード・キングを攻撃!」
2度目のトライコーンVSスピード・キング。
結果はやはりトライコーンがスピード・キングの胴体を両断し、再びスカル・フレイムになるというものであった。
「効果で《スカル・フレイム》を特殊召喚!」
ムクロ LP:1200→1000
ATK:2600 レベル8
「モンスターをセットし、ターンエンド!」
LP:1600
SPC:12
手札:0
モンスター
・ライトニング・トライコーン
・インフェルニティ・リベンジャー
・セット(インフェルニティ・ガーディアン)
魔法・罠
・セット
・セット
「俺のターン!」
ムクロ 手札:0→1
ムクロ SPC:8→10
鬼柳 SPC:12
「(ちっ! また後ろに付かれてやがる!)」
鬼柳は鬱陶しそうに後方をモニターで確認すると、そこにはムクロのにやけた顔が映っていた。
「俺等随分と粘ってきたがよ、どうやらタイムアップのようだぜ?」
そう言ってムクロは引いたカードを見せる。色は緑色――――
「!? (やっべ!? すっかり頭から抜けてたぜ!?)」
自分のLPは1600、相手のSPCは10。鬼柳は自分がデッドラインを越えている事に気付く。
「もう終わりにしようやぁ! 《スピード・ワールド2》の効果発動! SPCを4つ払い、Spを1枚見せる事で、相手に800のダメージを与える! 俺はこれを2回行い、合計1600のダメージを与える!」
見せたカード
Sp-禁じられた聖杯
ムクロ SPC:10→6→2
後方にいるムクロのDホイールから2つの光線が放たれ、最初に1発目が鬼柳に命中する。
「ぐわぁ!? ……やられて堪るかよ! 2回目の発動に罠カード《デストラクト・ポーション》をチェーン発動! 自分の場のモンスターを1体破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のLPを回復する! 《ライトニング・トライコーン》を破壊し、その攻撃力2800ポイント分、俺のLPを回復――――ぐあぁ!?」
鬼柳が罠を発動させた瞬間、トライコーンは粒子となり、大満足号に吸収される。
鬼柳 LP:1600→800→3600→2800
「……ハッハッハッハ! 熱いぜお前ぇ! 頼りのシンクロを捨ててまで生き残ろうとするなんてよ! 面白ぇ! バトルだ! スカル・フレイムでセットモンスターを攻撃!」
スカル・フレイムが手に炎を纏い、そのまま鋭い爪でセットモンスター”インフェルニティ・ガーディアン”を切りつけ、そのままムクロのDホイールと共に大満足号を追い抜くが、ガーディアンに傷一つ付ける事ができなかった。
ムクロ SPC:2→3
「俺の手札が0枚の時、インフェルニティ・ガーディアンは破壊されねぇ!」
「チッ! カードを伏せてターンエンド!」
LP:1000
SPC:3
手札:0
モンスター
・スカル・フレイム
魔法・罠
・フルスロットル
・スピード・ブースター
・スピード・エッジ
・セット(Sp-禁じられた聖杯)
「(引っ張られんな……満足できる、俺のペースを引き寄せろ!) 俺のターン!」
鬼柳 手札:0→1
ムクロ SPC:3→5
鬼柳 SPC:12
「……よっしゃ! 覚悟しやがれ! お前の場の永続罠《フルスロットル》を墓地へ送り、手札からチューナーモンスター《トラップ・イーター》を特殊召喚!」
鬼柳が決闘盤にカードを置くと、ムクロの場からトラップ・イーターが現れ、フルスロットルのソリッドビジョンを食らってから鬼柳の場に移動する。
「ニャニィ!? 俺の罠を食いやがった!?」
とにかくパワーと度胸で押しまくり、何も考えて無さそうなリーダーだが、ちゃんと彼もムクロへの対策を練って来ている。
ムクロは永続罠を多用するという遊星からの情報を聞き、鬼柳が選んだ対策がこのジャックも愛用している”トラップ・イーター”であった。
「レベル4《インフェルニティ・ガーディアン》に、レベル4《トラップ・イーター》をチューニング!」
トラップ・イーターが自身を4つの光輪へと変え、ガーディアンを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。
「死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる! シンクロ召喚! いでよ! 《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!」
光の柱から現れたのは鬼柳の切り札、”インフェルニティ・デス・ドラゴン”。
鬼柳の満足できていない心に反応したのか、少し苛立ったような咆哮を上げる。
ATK:3000 レベル8
「逢いたかったぜ相棒! お前も満足してぇか? 俺もだ!」
「チッ! ドラゴンかよ……あまりいい思い出ないんだよな」
それぞれの思いを表してデス・ドラゴンを見る二人。
デス・ドラゴンはその不気味な眼で相手のエースであるスカル・フレイムを見詰めている。
「おっしゃ行くぜ! 効果発動……って、行きたいところだが」
鬼柳はムクロの場に伏せられているSpをしっかりと覚えている。
Sp-禁じられた聖杯――――攻撃力を400ポイントアップさせるが、その対象の効果を掻き消してしまうSp。
「(効果が使えれば一撃だが……仕方無ぇ!) バトル! インフェルニティ・デス・ドラゴンでスカル・フレイムを攻撃! 【デス・ファイア・ブラスト】!」
デス・ドラゴンが火炎を放つと、スカル・フレイムはその威力に耐え切れず、消滅してしまう。
「ぐわぁ!?」
ムクロ LP:1000→600
[おお! とうとう追い詰められてしまったムクロ! このまま終わってしまうのかぁー!?]
「……騒がなくても終わらせはしねぇよ!」
「ターンエンド!」
LP:2800
SPC:12
手札:0
モンスター
・インフェルニティ・リベンジャー
・インフェルニティ・デス・ドラゴン
魔法・罠
・セット
「俺のターン!」
ムクロ 手札:0→1
ムクロ SPC:5→6
鬼柳 SPC:12
「モンスターをセット! ターンエンドだ!」
LP:600
SPC:6
手札:0
モンスター
・セット
魔法・罠
・スピード・ブースター
・スピード・エッジ
・セット(Sp-禁じられた聖杯)
[おーっと! ムクロ! ここで防戦! もう後が無いかぁ!]
「(何を企んでんだ?) 俺のターン!」
鬼柳 手札:0→1
ムクロ SPC:6→7
鬼柳 SPC:12
引いたカード
インフェルニティ・ビースト
「(Spがくりゃ一発何だがな……ん? 何かさっきからこんなんばっかだぞ?)」
この時、鬼柳はムクロが言ったある言葉を思い出す。
”ここ重要な一戦って時に、何故か妙に運が良くなるのさ!”
「(まさかな……) 《インフェルニティ・ビースト》を召喚!」
鬼柳の場に”インフェルニティ・ビースト”が現れ、大満足号の横で並走する。
ATK:1600 レベル3
「(裏側じゃダメージは通らねぇが……リバースは面倒だ!) インフェルニティ・デス・ドラゴンの効果発動! 自分の手札が0の場合、1ターンに一度、相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える!」
「SPCを一つ取り除き、速攻魔法《Sp-禁じられた聖杯》を発動! 対象モンスターの効果を無効にし、攻撃力を400アップ! 対象は《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!」
デス・ドラゴンがブレスを放とうと構えた瞬間、頭上に大きな聖杯が現れ、中の液体がこぼれてデス・ドラゴンへと降り注ぐ。
SPC:7→6 ATK:3000→3400
「……やっぱりリバースモンスターか?」
「へへ、どうだろうなぁ?」
「いいぜ! 乗ってやるよ! 墓地のジェネラルの効果発動! 手札が0の時、こいつを除外する事で、自分の墓地に存在するレベル3以下のインフェルニティ2体を効果を無効にし、墓地から特殊召喚する! 来い! 《インフェルニティ・ナイト》! 《インフェルニティ・ネクロマンサー》!」
鬼柳の場にナイトと”インフェルニティ・ネクロマンサー”が現れる。
ネクロマンサーは完全に数合わせだが、ナイトが加わった事により、自身の制約によって動けなくなったデス・ドラゴンの代わりに攻撃が行える。
インフェルニティ・ナイト ATK:1400 レベル3
インフェルニティ・ネクロマンサー DEF:2000 レベル3
「バトル! ビーストでセットモンスターを攻撃! 【ヘル・ハウリング】!」
ビーストがセットモンスターに向かって火炎を吐き出すと、セットモンスター”メタモルポット”は簡単に砕けて消滅する。
「!? メタモルポット……だと!?」
「その通りよぉ! リバース効果発動! お互いのプレイヤーは手札を全て捨て、デッキからカードを5枚ドローする!」
ムクロは嬉々として、鬼柳は複雑そうにカードをドローする。
普通なら喜びそうな事だが、ハンドレス・コンボの使い手であり、優勢の立場であった鬼柳にとっては問題でしかなかった。
鬼柳の手札
インフェルニティ・ミラージュ
インフェルニティ・リローダー
インフェルニティ・ドワーフ
ハンドレス・フェイク
アクセル・ゾーン
「(これでSpが1枚も無いなんてな……いやまだだ!) まだナイトの攻撃が残っている! ナイトで攻撃!」
「俺はとまらねぇ! 手札から《バトルフェーダー》の効果発動! こいつを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!」
ムクロの場にバトルフェーダーが現れ、鐘の音を鳴らすと、ナイトは大人しく引き下がってしまう。
ATK:0 レベル1
「ぐっ……カードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」
LP:2800
SPC:12
手札:3
モンスター
・インフェルニティ・リベンジャー
・インフェルニティ・デス・ドラゴン
・インフェルニティ・ビースト
・インフェルニティ・ナイト
・インフェルニティ・ネクロマンサー
魔法・罠
・セット
・セット
・セット
「俺のターン!」
ムクロ 手札:4→5
ムクロ SPC:6→7
鬼柳 SPC:12
「行くぜぇ! SPCを1つ取り除き、《Sp-デビルズ・サンクチュアリ》を発動! トークンを生成! そしてトークンとバトルフェーダーをリリース! 3体目の《スカル・フレイム》をアドバンス召喚!」
ムクロ SPC:7→6
ムクロの場にメタルデビル・トークンが現れ、バトルフェーダーと共に光の中へと消えると、その中からスカル・フレイムが現れる。
ATK:2600 レベル8
「スカル・フレイムの効果発動! 手札から《バーニング・スカルヘッド》を特殊召喚! スカルヘッドの効果により、相手に1000ポイントのダメージ!」
スカル・フレイムがスカルヘッドを呼び出すと、スカルヘッドは纏っていた炎を大満足号に向かって放つ。
DEF:800 レベル3
「ぐわぁぁぁ!?」
鬼柳 LP:2800→1800
「バトルだ! スカル・フレイムでインフェルニティ・ビーストを攻撃!」
スカル・フレイムが手に炎を纏い、その鋭い爪でビーストを切り裂く。
「ち、ちくしょう……!」
鬼柳 LP:1800→800
「カードを伏せる! ……鬼柳 京介! 長い戦いだったが……俺の勝ちだぁー! 《スピード・ワールド2》の効果発動! SPCを4つ取り除き、手札のSpを1枚見せる事で、相手に800ポイントのダメージを与える!」
見せたカード
Sp-スケープ・ゴート
ムクロ SPC:6→2
ムクロのDホイールから光が放たれると、それは狂い無く大満足号へと命中した。
「こんなんじゃ……満足できねぇぜ……」
鬼柳 LP:800→0
[決まったぁー! 接戦に次ぐ接戦の末、勝利したのは炎城 ムクロォー! もしや、もしかするのかぁ!? まさかの一人出場からの3人抜きという快挙を成し遂げてくれるのかぁ!]
MCは勿論、会場にいる殆どの観客がムクロの色に染まった。
最初はありえないと思われていたムクロの3連勝。だが、ここに来て一回戦で好成績を上げたフレアと鬼柳が連続して敗れてしまったのである。夢想が現実味を帯びた瞬間であった。
「すまねぇ……俺自身は満足できたが、チームとしては嫌な空気を作っちまった。……総合的には、やっぱり満足できないぜ」
ピットに戻った鬼柳は項垂れつつ、フリントへの引継ぎを行う。
その間、ムクロは観客の声援に応える為にゆっくりと周回している為、少し余裕があった。
その様子を、フレアがピットから眺めている。
「流石プロだね。何だっけ? ジャックが言ってた……エンターテイィーメントだっけ?」
「余裕だな。……俺の初手にSp-があれば即負けるかもしれない状況だというのに」
会場の人間は興奮のせいで忘れているようだが、ムクロのLPはとっくにデッドラインを越えている。
ターンは次走者から始まるので、フリントの手札にSpがあり、何も対策がなければ即負けなのである。
もし対策があったとしても、多くの手札とLPを保有するフリントの攻撃からたった600ポイントのLPを守り切るのは至難の業であろう。
「気をつけろよフリント。今のアイツは異様についてるらしい。こっちの手まで狂わされちまう程にな」
「ああ、油断はしない。……お前達の奮闘は、無駄にしない。俺が必ず勝つ。行ってくる」
そう言うとフリントはイグニッションを走らせてピットを飛び出し、ファンサービスに努めていたムクロの元へと合流する。
フリントの初公式戦にして、二回戦の勝敗が掛かった大勝負。サティスファクション対ムクロの、最後の勝負が今、始まろうとしていた。
久々の投稿だというのに、自分は何をやっているのだろう(泣)
というわけでお待たせしました。次話です。
予告を破ってしまい、申し訳ありませんでした。
今回は珍しく決闘の途中で終了しています。
自分的には何時も1話に纏める方が好きなのですが、今回は鬼柳戦が結構グダグダになってしまったのと、この先のフリント戦と決闘後パートが長くなり、もしかしたら3万文字を越えてしまうのではないかと思ったので、これは一旦区切りやすく無理の無いところで区切った方がいいな、という訳です。
まあこれは自分の纏め方が下手なのと、好みの問題なのですが、皆さんはどうなんでしょうかね? 毎回1万から2万は長すぎるでしょうか?