遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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目標を大分オーバーしてしまい、申し訳ありませんでした(汗)



第52話 ゴースト氾濫

 

「…………」

「フレア、もう切り替えろ。お前が今悩んでいても仕方が無い」

 

 ここはシティ沿岸部WRGP特設予選会場スタジアム選手控え室。

 Hブロック第三回戦が行われるこの会場で待機している”チーム・サティスファクション”の空気は重かった。

 

「…………」

「フレア」

「今回ばかりは……抑えられないよフリント……犯人だって殆ど分かってるようなものなのに……」

 

 ベンチに座り、俯きながら怒りで肩を震わすフレア。

 今が試合前でなければ、今すぐにでもAブロック会場へのり込みに行かねない程であった。

 

「フレア、クロウの奴も言ってただろ? この借りは決闘で返すってよ。アイツがああ言ったなら、大丈夫だ」

「許せないよこんなの……アキちゃん……」

 

 先日、ハイウェイでDホイールによるクラッシュ事故が起きた。

 被害者はチーム・5D'sの”十六夜 アキ”。原因はDホイールの故障であり、練習走行中に突然ホイールがロックされた事によりクラッシュしてしまったという。

 

「フレア、お前の気持ちはよく解るぜ。俺もフリントも腸が煮えくり返ってんだからよ。”チーム・カタストロフ”、舐めた真似しやがって……!」

 

 クロウのクラッシュ、アキのクラッシュ、世間では練習中の不幸な事故とされているが、これら全てを仕組んだ黒幕が存在する。

 その黒幕の名が”チーム・カタストロフ”。大会前はまったくの無名チームであり、第一回戦も相手チームの棄権により不戦勝で勝ち上がっていた。

 表舞台に立ったのは第二回戦。遊星達と激戦を繰り広げたチーム・ユニコーンとの試合。

 どのような決闘をするのかと注目されていたチーム・カタストロフだったが、内容は平凡そのもの。これはチーム・ユニコーンの圧勝だろうと誰もが思ったその時、事は起こった。

 

「チーム・カタストロフは手も出さずに相手のホイールをロックし、クラッシュさせる……信じ難いが、ブルーノの解析に間違いはないだろう」

「しかもその原因が1体のモンスターかもしれねぇときた。本来なら笑い飛ばしちまう様な話だが……経験的に笑い飛ばせないのが、俺等なんだよな」

 

 チーム・ユニコーンのファースト・ホイーラー”アンドレ”は序盤から攻め込み、カタストロフのファースト・ホイーラーである”ハンス”に反撃の隙を与えず、まったくの無傷という状態で勝利する。

 続けてセカンド・ホイーラーである”ヘルマン”との決闘。先程のハンス戦と同様にヘルマンを追い詰め、止めを刺そうと攻撃を仕掛けた瞬間、アンドレは突然クラッシュしてしまい、交代を余儀なくされた。

 力を振り絞り、何とかピットへと戻ってきたアンドレの代わりに出走したのは、セカンド・ホイーラーであり、チームリーダーでもある”ジャン”。デットラインを超えていたヘルマンをスピード・ワールド2の効果でしとめた後、ラスト・ホイーラーにしてカタストロフのリーダーである”ニコラス”との決闘に挑む――――はずであったが、ニコラスの初ターン中にジャンもアンドレと同じ様に転倒。さらに運が悪い事に、ジャンが転倒した位置はピットから大きく離れており、SPCの差が12を超える前にピットインする事は不可能であった。

 ラスト・ホイーラーであった最後のメンバーである”ブレオ”は、病院へ搬送されていくチームメイトを呆然とした表情で見送り、その場で立ち尽くす。通過点に過ぎなかったリーグ予選で2敗を期し、本戦出場を逃しただけでなく、仲間全員が事故で重体に陥る――――これが悪夢でなくて何なのであろうか。

 試合前は万全だった。ここまであらゆる努力を尽くして来たし、DホイールもDホイーラーも、完璧と言ってよいコンディションだった。それなのに、連続で事故を起こすなんてありえない。これを事故として受け入れられなかったブレオは遊星達と協力し、事の真相を探る。

 分かった事は、アンドレもジャンもホイールがロックされた事によってクラッシュしたという事、クロウとアキのクラッシュも同じ原因だという事、そしてアンドレとジャンがクラッシュした時には常に”ヒドゥン・ナイト-フック-”というモンスターが場に存在しているという事だけであり、決定的な証拠を掴む事はできなかった。

 

 暫くして、漸く落ち着きを見せたフレアだが、今度は気を落としたまま浮かんでこない。

 それを見下ろしながら腕を組む鬼柳、そしてフレアの隣で佇むフリント。重苦しい控え室の静寂を破ったのは、フリントの溜息であった。

 

「……鬼柳、今のフレアにファースト・ホイーラーは無理だ。フレアをラストに回す」

「そうだな……じゃあ俺が今回ファーストやるぜ! もうセカンドは飽きたんだよ。第一リーダーがやる位置じゃねぇよな」

「分かった。俺がセカンドを走ろう。頼んだぞ鬼柳。……時間だ。行くぞフレア」

「うん……ごめんね二人共」

 

 フレアはゆっくりと立ち上がり、二人の後に続いて会場までの廊下を歩く。

 その途中、フリントは脚を止め、フレアに振り返った。

 

「ここまで引き摺るなんて、らしくないな」

「……うん」

「らしくない原因は、今回の事だけではないだろう?」

「……不安なの。今日の試合にでるクロウだってまだ治り切ってないし、もしかしたらまた何かよくない事が起こるんじゃないかって……」

 

 フレアは胸の前で手を握り合わせる。

 何時もならクロウやアキの回復を信じ、彼等の分まで全力で戦おうという気持ちに切り替えて決闘に挑んでいるところだろうが、何故か今は不安で仕方が無い。何故自分がこんなにも不安を感じてしまっているのか、フレア自身もよく解っておらず、そんな自分にも不安を感じてしまい、更に心が沈んでしまう。

 

「クロウなら平気だ! 多少治り切ってなくても、相手は真正面から戦う意気地もねぇ連中だ。鉄砲玉にとっては良いハンデだろうよ!」

 

 鬼柳はフレアに振り向き、笑顔を見せながら親指を立てる。

 

「それによ、クロウだって本当はお前みたいに沈んでるかもしれねぇだろ? でもアイツは肩の痛みを堪えて、十六夜の分まで走って、奴等に借りを返そうとしてんだ。お前も沈んでる場合じゃねぇだろ?」

「鬼柳……そうだね。不安なんていってる場合じゃないよね!」

 

 フレアは心を覆っていた不安を無理やり吹き飛ばすと、駆け出して二人を追い抜き、振り向いて笑顔を見せる。

 

「ごめんフリント! 私をファーストに戻して! 最初に思いっきり走って、この不安を引き離したいの!」

「分かった。思い切り走って来い。スピードの世界に、身も心も委ねてしまえ」

「うん!」

 

 

* * *

 

 

〔さぁーーーー!!! いよいよ始まるHブロック最終戦! 既に本戦出場を決めているチーム・サティスファクションと、二回戦第二試合でチーム・パワーインセクトを破ったチーム・フォーチュンナイツの試合だぁ!!〕

 

 MCがマイクに向かって、ありったけの気合を込めて叫ぶ。

 本戦の実況はAブロックのMCが務める為、彼の出番はこれが最後なのだ。気合も入るであろう。

 現在のHブロックの戦績は、サティスファクションが2勝0敗、フォーチュンナイツが1勝1敗、ムクロが宣言通り最終戦第一試合でパワーインセクトを破り2勝1敗、パワーインセクトは残念ながら0勝3敗となり、予選敗退という結果になっていた。

 

「死羅殿! どうしてもと言うから先陣を任せたのだ! 今回は絶対に負けられないのだぞ? 解っているな?」

「任せておけ! 一回戦での汚名返上だ! この死羅に任せろ! フフフフフ!」

 

 ジルの言葉に、スタートラインに立つ死羅が不気味な笑みを返す。

 

「おいコラ絶対に負けんじゃねーぞサティスファクション! 負けたら許さねぇぞ!」

「解ってるよムクロさん! だから応援してね!」

 

 ピットからスタートラインに向かおうとしていたフレアに、応援席の最前列に座るムクロが声を掛け、フレアはムクロに対して手を振りながらラインの前に立つ。

 

 現在、フォーチュンナイツは1勝1敗。この試合にフォーチュンナイツが勝てれば、サティスファクション、ムクロ、フォーチュンナイツの勝敗が2勝1敗で並ぶ事となる。

 そうなった場合、WRGPの大会規定により勝利試合で残っていたLPの合計が多いチームが上の順位となる。

 フォーチュンナイツは第二回戦のパワーインセクト戦にて、ファースト・ホイーラーであったボマーが脅威の3タテを達成し、10000ポイントのLPを残している。

 それに比べ、ムクロはフォーチュンナイツ戦とパワーインセクト戦で合計LPは6000。そしてサティスファクションはパワーインセクト戦とムクロ戦で合計LPは8900である。

 この試合、サティスファクションが勝利すれば目標である全勝を成し遂げて1位となり、同時にムクロの本戦出場が決定。フォーチュンナイツが勝利すれば、ムクロの敗退が決定する上、サティスファクションの全勝の夢が潰え、順位も2位まで落ちる事となる。

 本戦出場を目指すだけなら、サティスファクションにとってこの試合は消化試合に過ぎない。だが最初に立てた目標と、ムクロとの約束がある為、この試合はサティスファクションにとって重要な一戦となっていた。

 二人の準備とMCの前置きが終了すると、カウントが表示され、一つずつゆっくりと消えて行く。

 

「よーし……負けないよ死羅さん!」

「サティスファクション……サテライト時代から噂は聞いていたぞ。ムクロを倒した実力、見させてもらう!」

 

 そして――――最後のカウントが消えた。

 

 

 

[……ライディング・デュエル! アクセラレーション!!!]

 

 

 

 同時にスタートダッシュを決めた後、フレアは死羅を大きく引き離し、第一コーナーを曲がり切る。

 

「くそぉ! やはりローブは止めればよかった!」

「私のターン!」

 

 フレア 手札:5→6

 

 フレア SPC:0→1

 死羅  SPC:0→1

 

「自分の墓地にモンスターが存在しない場合、手札からこのカードを特殊召喚できる! 来て! 《ガーディアン・エアトス》!」

 

 フレアがカードを掲げると、そこから光の鳥が放たれ、空高く舞い上がる。

 舞い上がった光の鳥は閃光となって空からフレアの場へと降り、女神”ガーディアン・エアトス”へと姿を変えた。

 

 ATK:2500 レベル8

 

〔おおーっとぉ! フレア! いきなりエースモンスターを召喚だぁー!〕

 

「何ィ!?」

『フレア、もう大丈夫ですか?』

「(うん、大丈夫!) モンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:1

手札:2

モンスター

・ガーディアン・エアトス

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

 

「俺のターン!」

 

  死羅 手札:5→6

 

 フレア SPC:1→2

 死羅  SPC:1→2

 

「《死神ブーメラン》を召喚!」

 

  死羅の場に現れたのは、ムクロの時と同じ死神ブーメラン。

 高速回転しながら炎を噴き出し、死羅の横を飛ぶ。

 

 ATK:1000 レベル3

 

「カードを5枚伏せ、ターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:2

手札:0

モンスター

・死神ブーメラン

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

・セット

・セット

 

「(ふふふ……この死神罠地獄に嵌めてくれるわ!)」

「私のターン――――!?」

 

 フレアがドローしようとした瞬間、突然入場門から1台のDホイールが飛び出し、コースの中へと侵入する。

 

「ちょ!? 危ない!?」

 

 侵入してきたDホイールはフレアの前に飛び出してきたが、フレアはギリギリでそれを避ける。

 避けた瞬間に見えたDホイーラーの顔はヘルメット越しでも分かる程、恐怖で歪んでいた。

 

「(何なのこの人……怯えてる?)」

「来るっ……助けてくれぇ!!!」

 

Dホイーラー

LP:400

SPC:0

手札:0

モンスター

・無し

魔法・罠

・強制終了

 

 声や顔からして、Dホイーラーは男性のようだ。

 Dホイーラーの男はDホイールをメチャクチャに走らせたままフレア達へ通信を繋ぐと、怯えきった声で必死に呼びかけてくる。

 

「な、何だお前はぁ!? ここが何処だか分かってるのか!?」

「い、一体どうしたんですか!?」

 

 パニックに陥っているDホイーラーに言葉を返す死羅とフレア。突然の侵入者に戸惑い、歓声からざわめきへと変わった会場。訝しげに侵入者を眺めるピットのチームメイト。そして係員に指示を出すMC。

 それぞれが行動を起こす中、入場門から聞こえてくる新たなDホイールの走行音――――

 

〔これは一体どうしたことなのか……会場の皆様、一旦決闘を中断して乱入者の対処をしますので、暫くお待ち――――あっと!? 今度は何だぁ!?〕

 

 入場門から新たに飛び出してきたのは、紫色の厳ついDホイール集団。

 パッと見て数十名、全員が黒ずくめの格好をしており、よく注意してみると、体がDホイールと一体化している事が分かる。

 この場で彼等が何者なのか理解できたのは、遭遇した事のあるフリントのみであった。

 

「ゴーストだと!?」

「ゴースト!? あのKY女と遊星が話してたあれか!? こんなにいるのかよ!?」

「鬼柳! Dホイールを出すぞ! このままではフレアが、Dホイーラー達が危ない!」

 

 血相を変えてイグニッションへと駆け出したフリントを見て、鬼柳も同様に駆け出す。

 鬼柳は実物を見た事はなかったが、遊星達からどれだけ危険かという事ぐらいは聞いていた。

 その話を思い出しながら、鬼柳は急いで大満足号へと向かい、準備を始める。

 

「(この数は何だ!? 何故今になって姿を現した!? くそッ! 遊星達は大丈夫か?)」

 

 フリントが必死になってイグニッションを動かそうとしている間にも、ゴースト達は動く。

 ゴースト達は数名ずつに分かれると、それぞれDホイーラーの男、フレア、死羅を走りながら取り囲む。

 

「何だ何だ貴様等! 呪うぞ!」

『フレア! 気をつけて! この者達から人間の気配がしません!』

「人間じゃないの!? (これ……もしかして……!?)」

「ヒ、ヒァァァ!?」

「ククク……Dホイーラーが増えたか。ならば仕切りなおしと行こう!」

 

 ゴーストの1体が以前よりも滑らかになった口調で言葉を発すると、3人のモニターに”BATTLE ROYAL Mode”と表示される。

 

「何これ!? オート・パイロット!?」

「何だこれは!? 解除できん!? Dホイールが止まらん!?」

 

 突然の特殊モードの発動に慌てる二人。

 どうやら特殊な信号か何かでDホイールを暴走させられたらしく、死羅や怯えたDホイーラーは必死になってDホイールを停止させようとするが、Dホイールは変わらぬ速度で走り続けている。

 そしてDホイールを動かそうとしていたサティスファクションの二人のDホイールにも、同じ表示が浮かび上がった。

 

「何だこりゃ!? くそ! 暴走してやがる!?」

「外部からのハッキングか!?」

 

 発進前だったせいで、イグニッションと大満足号はフリントと鬼柳の意思を無視してピット内で暴走しようとする。

 

「チクショウ! フリント! どうにかならねぇのかよ!?」

「システムを強制終了させろ! 再起動させる! 信号が原因なら、それで直るはずだ!」

 

 フリントと鬼柳はイグニッションと大満足号が走り出す前にシステムを落とし、再び起動させる。

 何時もならちょっと待ってすぐに終わる作業だが、今はこの時間が永遠の様に感じられた。

 

「フリント! フレア達のも止められねぇのかよ!」

「走行中にシステムを落とすのは危険だ! 決闘に勝利するしかない!」

「くっ……! フレア! 何とか堪えてくれよ!」

 

「まずはお前からだ! 私のターン!」

 

 ゴースト 手札:5→6

 

 ゴースト達 SPC:0→1

 怯えたDホイーラー SPC:0→1

 フレア SPC:2→3

 死羅 SPC:2→3

 

「《A・O・J ガラドホルグ》を召喚! 攻撃だ!」

 

 ゴーストの場に2本のビーム・サーベルを持ったロボットが現れると、怯えたDホイーラーに向かって斬り掛かる。

 

 ATK:1600 レベル4

 

「グワァァァーーーー!!?」

 

 怯えたDホイーラー LP:400→0

 

 Dホイーラーはサーベルで斬り付けられると、本当に斬られてるかのような絶叫を上げ、クラッシュしてDホイールから投げ出される。投げ出されたDホイーラーは地面に体を打ち付けられながら転がり、そのまま動かなくなった。

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:1

手札:2

モンスター

・A・O・J ガラドホルグ

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

 この瞬間、会場から多くの悲鳴が上がった。

 MCは客を落ち着かせようと呼びかけ、スタッフは急いで客を会場施設内部へと避難させる。

 そしてその正義感からか、ジルが隙を見てコースへと飛び出し、その後を追ってきたボマーと共に倒されたDホイーラーを救助する。

 運んでいる二人の様子を見ると、幸いDホイーラーにはまだ息があるようだった。

 

「そんな……やっぱりこれって……」

「フレア! そいつ等は”ゴースト”だ! 待ってろ! すぐに加勢してやるからな!」

 

 鬼柳の言葉を聞き、フレアは確信する。これが1年前にフリント達が遭遇したというゴーストだと。

 

「私のターン!」

 

 ゴースト 手札:5→6

 

 ゴースト達 SPC:1→2

 フレア SPC:3→4

 死羅 SPC:3→4

 

 死羅の後ろに付いたゴーストがターンを始めると、死羅は小さく笑みを浮かべながら身構える。

 

「来るなら来い! この死神に対して!」

「《Sp-サモン・スピーダー》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する! 《A・O・J サウザンド・アームズ》を特殊召喚!」

 

 死羅側のゴーストの場に現れたのは、体中に刃を付けたロボット。

 腕が5本あり、それぞれに様々な種類の刃物を装備している。

 

 ATK:1700 レベル4

 

「罠発動! 《誘発召喚》! 相手の場にモンスターが特殊召喚された時、お互いは手札からレベル4以下のモンスター1体を場に特殊召喚する事ができる! 私は《A・O・J ブラインド・サッカー》を特殊召喚!」

「私も《A・O・J ブラインド・サッカー》を特殊召喚!」

 

 先程のゴーストが死羅側へと近づき罠を発動させると、ターンプレイヤーのゴーストと共に同じモンスターを手札から呼び出す。

 そのモンスターは丸い体のロボットで、腕は人型、脚は虫の様な6本脚、そして肩に大砲を二門備えていた。

 

 ATK:1600 レベル4

 

「永続罠《DNA移植手術》! 属性を1つ宣言する事で、場の全ての表側表示モンスターは宣言した属性となる! 宣言するのは、光属性!」

「相手の場に光属性を含むモンスターが2体以上存在する場合、手札の《A・O・J コズミック・クローザー》を特殊召喚できる!」

 

 続けてターンプレイヤーのゴーストの場に四脚を持つ砲身の様なロボットが現れる。

 

 ATK:2400 レベル8

 

「(な、何体出そうが同じだ!)」

「バトル! ブラインド・サッカーで死神ブーメランを攻撃!」

 

 ゴーストが宣言すると、ブラインド・サッカーが死神ブーメランに対して大砲を構える。

 

「フン、馬鹿め! 罠カード《ジャスティブレイク》! 自分の通常モンスターが攻撃された時、攻撃表示の通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する! 食らうがいい!」

「罠発動! 《トラップ・スタン》! このターン、このカード以外の場の罠の効果を無効にする!」

「!? (お、俺の罠地獄が……)」

 

 死羅が返り討ちにしようと罠を発動させるが、またしても先程のゴーストが罠を発動させ、死羅の妨害を行う。

 これに死羅は絶望した様に顔を歪ませる。どうやら伏せてあるのは全て発動タイミングが限られた罠カードだったようだ。

 

「食らえ!」

 

 ブラインド・サッカーが砲撃を行うと、死神ブーメランは粉々に粉砕されてしまった。

 

「ぐぐ!?」

 

 死羅 LP:4000→3400

 

「続けてコズミック・クローザー!」

 

  コズミック・クローザーが砲口に張られたレンズの様なものから光線を死羅に向かって放つ。

 

「ぐわぁぁぁーーーー!?」

 

  死羅 LP:3400→1000

 

 実体化した攻撃を受け、 死羅は大きくバランスを崩してしまうが、強制発動されたシステムのせいか、Dホイールが勝手に状態を建て直し、再び安定して走り出す。

 

「ぐ、が……どうなってんだぁ!?」

「(どう見ても倒れるはずだったのに、どういう事なの!? まるで私達を倒す為じゃなくて、私達に無理やり決闘をさせてるみたい!?)」

「死ね! サウザンド・アームズで攻撃!」

 

 最後に残っていたサウザンド・アームズが死羅へと斬り掛かる。

 

「ひ、ひぃ!?」

「SPCを1つ取り除き、速攻魔法《Sp-禁じられた聖槍》を発動! エンドフェイズ時まで対象としたモンスターに魔法・罠の効果を受けさせなくする代わりに、攻撃力を800ポイントダウンさせる! 対象は《A・O・J サウザンド・アームズ 》!」

 

 フレア SPC:4→3

 

 フレアの場から1本の槍が飛び出すと、攻撃に向かっていたサウザンド・アームズに突き刺さる。

 

 ATK:1700→900

 

 槍が刺さりながらもサウザンド・アームズは何とか体を動かし、死羅を斬り付ける。

 

「ぐわぁ!?」

 

 死羅 LP:1000→100

 

「チッ! ターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:2

手札:2

モンスター

・A・O・J サウザンド・アームズ

・A・O・J ブラインド・サッカー

・A・O・J コズミック・クローザー

魔法・罠

・無し

 

「死羅さん逃げて! ここは私が抑えるから!」

「ぐ、ぐぐ……そ、そうは言ってもこの人数では……」

 

 フレアは辺りを見回すと、自分達を囲っているゴーストの数が減っている事に気付く。

 見るとピットから発進したフリントと鬼柳、そしてジルとボマーがそれぞれ複数のゴーストを相手に奮戦している。

 

「皆! よかった! これなら……」

「おい見ろあれ!」

 

 安心したのも束の間。入場門から更にゴーストの集団が乗り込んでくる。

 

「な、何なんだ奴等は!? 一体何の為に……」

「(このままじゃ皆……こうなったら!) 死羅さん! 抜けるよ!」

「な、何!?」

 

 幸い、バトルロイヤルモードで異常が発生するのはエンジン部のみであり、動きを止める以外の事は自由にできる。

 フレアはウィルダーネスを反転させると、ゴースト達の群れを突き抜け、死羅と共に入場門へと駆け出す。

 

「フレア!?」

「フリント! このままここにいたんじゃ、ゴースト達が雪崩れ込んで来ちゃう! 私と死羅さんが何機か引き付けるから、フリント達も隙を見て脱出して!」

「何だと!? 無茶をするなフレア!」

 

 フレアが入場門の中へと消えると、ゴースト数機がその後を追う。

 

「くっ! 何時”機皇帝”が出てくるか分からないんだぞ!」

 

 フレアの言う通り、このままここにいては何れ物量で押し潰されてしまうかもしれない。

 しかし、特訓したとはいえフレアにはゴースト戦の経験は無く、傍らには手負いの死羅が一人。外にはここ以上にゴーストが徘徊している可能性もある為、今フレアが囮となって飛び出して行く事は危険極まりない。

 

「(ゴースト達の動きも妙だ。フレアの逃走など、止めようと思えばできたはず……まずい!)」

 

 フリントはシンクロ召喚していた”A・ジェネクス・アクセル”と、その効果で特殊召喚された”A・ジェネクス・パワーコール”で自分に張り付いていたゴースト2体を蹴散らしてバトルロイヤルモードの支配下から一旦抜け出すと、フレアの後を追って入場門へと向かう。

 

「鬼柳! この場を頼んだぞ!」

「ああ任せとけ! そっちこそフレアを頼んだぞ!」

 

 鬼柳が遠くに見えるフリントの背に向かって親指を立てると同時に、インフェルニティ・デス・ドラゴンがゴーストの1体を捻じ伏せる。

 

「おし! ……にしても、満足できないぜ。試合で見たかったよ、お前等の決闘!」

 

 鬼柳が後ろを振り返ると、そこには黄金の鎧を纏った仮面の騎士と、爆撃機を模した巨大なロボットがゴースト相手に暴れまわっているのが見える。

 

「《マスクド・ナイト LV7》の効果発動! メインフェイズに1度、相手に1500ポイントのダメージを与える事ができる! 〈ペルソナー・ビッグ・ブラスト〉!」

「グアァァァ!?」

 

 ゴースト LP:1500→0

 

 ジルが剣でゴーストを指し示すと、 マスクド・ナイトが仮面から光線を放ち、ゴーストの一体を貫く。

 ゴーストは機能が停止すると、クラッシュして後方へと消えていった。

 

「続けて直接攻撃! 【ペルソナー・ビッグ・スラッシュ】!」

「ガァァ!?」

 

 ゴースト LP:2800→0

 

 マスクド・ナイトが剣を振り下ろし、ゴーストを更に一体クラッシュさせる。

 

「まさかこの様な初陣を飾る事となろうとはな! だがまあいい! これこそが騎士の役目よ! さあ掛かって来い悪党共よ!」

「ヌウウ! 私のターン!」

 

 ゴースト 手札:5→6

 

「《A・O・J サウザンド・アームズ》を召喚――――」

「〈シャープ・シューティング〉!」

「ぐわっ!?」

 

 ゴースト LP:4000→3200

 

 ゴーストの一体がサウザンド・アームズを召喚した瞬間、ボマーの場にいたロボットが機銃を連射し、サウザンド・アームズを粉々にして破壊する。

 

「《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の効果発動! 相手のターンに1度、相手が召喚・特殊召喚・セットを行った時、そのカードを破壊し、相手に800ポイントのダメージを与える! ……さあ、やる事はあるのか?」

「ぐっ……カードを伏せてターンエンド!」

「よし、私のターン!」

 

 ボマー 手札:2→3

 

「エアレイドの効果発動! 1ターンに1度、手札を1枚墓地へ送る事で、相手のカード1枚を選択して破壊する! 破壊するのは今伏せたカードだ! 〈デス・ドロップ〉!」

 

 ボマー 手札:3→2

 

 ボマーが宣言すると、ジャイアント・ボマー・エアレイドがゴーストの場に向かい、罠の上に爆弾を投下する。

 

 破壊されたカード

 攻撃の無力化

 

「何!?」

「バトル! エアレイドで直接攻撃! 【デス・エアレイド】!」

 

 がら空きになったゴーストに向かってジャイアント・ボマー・エアレイドがミサイルを放つ。

 

「更に墓地から罠カード《スキル・サクセサー》を発動! 墓地からこのカードを除外する事で、エアロイドの攻撃力を800ポイントアップさせる!」

 

 ATK:3000→3800

 

「オオオ!?」

 

 ゴースト LP:3200→0

 

 クラッシュし、後方へと流れていくゴーストを眺めながら、ボマーは思案する。

 

「(何だこのDホイーラー達は……何か異様なものを感じる……もしや、”悪なる者の意思”と? いや、それとも”あの夢”と何か関係が?)」

「オラ! ボーっとすんなよ! ハッハー!」

 

 飛び入り参戦したムクロも、大量のゴースト相手に上手く立ち回っている。

 相手はたったの4人だが、ジャイアント・ボマー・エアレイドによって展開力を大きく下げられた事により、数十体のゴースト達は徐々に押され始めていた。

 頼もし過ぎる味方達を前に、鬼柳は不敵な笑みを浮かべる。

 

「おっしゃ! 待ってろ二人共! すぐに俺も向かうからな!」

 

 

* * *

 

 

 一方、こちらは会場から飛び出したフレア達。

 ゴースト達は関係者用の準備場兼出入口まで追って来ていた。

 幸いここまでの道は狭く、決闘を行える状況ではなかったので、支配下にこそあるが強制決闘はまだ再開されていなかった。

 

「こ、このままじゃ追いつかれるぞ!?」

「(このままじゃ……死羅さん……死羅さんだけでも!)」

 

 既に満身創痍でライディングテクでも劣る死羅では、この状況を乗り切る事は難しいと判断したフレア。道の先に置かれていたあるものに眼を付けた瞬間、隣を走っていた死羅のDホイールの車体を全力で蹴る。

 

「死羅さんゴメン!」

「ぐぁぁ!? 何をッ!?」

 

 幾ら走り続けるようにハッキングされていても、車体を思い切り傾けてやれば倒れ、動きが止まる。

 派手にクラッシュするかと思われた死羅のDホイールであったが、倒れた場所にはライディング練習に使用されるクラッシュ事故防止の為のコース用クッションが置きっぱなしになっており、そのクッションに倒れこんだ事によって死羅自身は無傷で済んだ。Dホイール自体は倒れても未だにホイールだけは高速回転している。

 

「うぐぐ……こ、小娘!?」

 

 死羅が顔を上げた時には既にフレアは外に飛び出し、その後をゴースト達が追っていく。

 ゴースト達は倒れた死羅には眼もくれない。

 やがてバトルロイヤルモードの支配が解けたのか、ホイールの回転が止まった。

 

「(ディ、Dホイーラーの命を狙ってるって訳じゃないのか?)」

 

 呆然としてゴースト達を見送った死羅はハッとして今の状況を思い出し、慌てて立ち上がる。

 

「(ど、どうする? でも俺では……)」

 

 静まり返っている準備場にて死羅が行動に出かねていると、再びDホイールの走行音が聞こえてくる。

 振り向くと、死羅にも見覚えがある炎の様なDホイールが真っ直ぐ走ってきていた。

 

「あ! おーい!」

「死羅!」

 

 そのDホイールの乗者は後を追ってきたフリント。

 フリントは死羅の前で止まると、死羅が何かを言う前に死羅の胸倉を掴む。

 

「おい! フレアはどうした!?」

「ええ!? あ、その……お、俺から敵を引き離して外に……」

「くっ! どっちへ行った!?」

「まっすぐ……」

 

 フリントは死羅から手を離すと、全速力で外へと飛び出していった。

 

 

* * *

 

 

「(くっ……やっぱり逃げ切れない)」

 

 先に会場から飛び出し、ゴースト達を撒こうとウィルダーネスを全速力で走らせるフレア。

 だが奮闘虚しく、後ろには5体のゴーストがピッタリと付いて来ている。

 

「(……馬鹿にして!)」

 

 まだ追いつかれていないとはいえ、この距離なら強制決闘を行える範囲だという事にはフレアも解っている。ゴースト達の意図は不明だが、フレアはゴースト達が自分を追い回して遊んでいると捉えたようだ。

 

『フレア、気持ちは解りますが、今は抑えてください』

「うん……」

 

 エアトスに諌められ、フレアは一旦負けん気を抑える。

 

「(本当はやっつけてやりたいけど……今は逃げ切らなきゃ!)」

 

 流石のフレアでも5対1では勝ち目が無い。

 敵を引き付けるという目的を果たしている今、時間を稼ぎ、生き残って仲間達と合流する事をフレアは優先させる。

 

「(とは言っても、全然引き離せないし、何時仕掛けてくるか……)」

 

 フレアは全速力を出しながら後方を窺っている頃、シティにそびえ立つビルの屋上にて、白いフードを被り、右目を眼帯の様な機械で隠した男がシティ全体を見渡していた。

 見えるのはシティ中でゴースト達と決闘を行っているDホイーラー達の姿。その中にはチーム・カタストロフに勝利した遊星とジャック。カタストロフ達について調べに来ていたシェリー・ルブランとミゾグチ。そしてHブロックで戦い続けている鬼柳達の姿もあった。

 それらを見渡した後、男は不敵な笑みを浮かべる。

 

「さあ、生き残りたければ必死に”サーキット”を描け、Dホイーラー共……この”ディアボロ”達を相手にな」

 

 この男の名は”プラシド”。1年程前にシティへやってきた三人の治安維持局新長官の一人にして、裏で暗躍する謎の組織”イリアステル”の頂点に立つ”イリアステル三皇帝”の一人であり、これまでの事件の真の黒幕の一人でもある。

 最初の”ゴースト事件”、”少年ゴースト事件”、イェーガーの”エンジンデータ強奪事件”、偽ジャック事件、そしてクロウやアキを襲った”クラッシュ事件”。これら全てを辿れば、彼等イリアステルの三皇帝に行き着く。

 そんな彼等が事件を起こすのは、彼を含めるイリアステル三皇帝には何か目的があるかららしく、その為には多くの決闘者に質の高いライディング・デュエルをさせなければならない。その為に彼等は高い実力を持つシグナー達にゴーストなどの強敵をけしかけていたのだ。

 しかし、今回は何時もと違う。

 何時まで経っても目的が達成されない事に痺れを切らしたプラシドは、遊星達から奪ったエンジンデータによって強化したゴーストの完成体”ディアブロ”をシティ中に放ち、WRGP予選リーグに出場しているDホイーラー達と強制的に決闘をさせるという強攻策に出たのだ。

 

「フッフッフ……さて」

 

 ここでプラシドはディアブロから逃げるフレアに眼を向けた。

 

「(不動遊星達と共にいた女。確かフレアとかいったな。シグナーでもないのに、中々の力を持っている……クク、精々足掻いて”サーキット”を浮かび上がらせるのだな)」

 

 プラシドがディアブロ達に攻撃を命じようとすると、プラシドのレーダーが高速で移動しているDホイールを察知する。

 

「フレア! 何処だ!? 何処にいる!?」

「(あれは……フリント。不動遊星と、あの女の仲間か)」

 

 レーダーに映ったのは、フレアを助ける為にイグニッションを飛ばしているフリント。

 

「(フン……待っていろ、貴様にもすぐにディアブロを――――!?)」

 

 この瞬間、プラシドの胸にどす黒い”感情”が湧き上がって来る。

 プラシドはそれに一瞬戸惑うが、その戸惑いは理性と共に消え失せた。

 

「(フフ……そうか、あの女の事がそんなに大切か)」

 

 プラシドは残忍な笑みを浮かべると、腕から特殊な信号を送る。すると、フリントの元へと向かうはずであったディアブロ達が一斉にフレアの元へと向かい始めた。

 ディアブロ達に囲まれたフレアと、必死になって走り続けるフリントを見ながら、プラシドは無意識の内に言葉を呟く。

 

「お前達にも、同じ”絶望”を与えてやろう……」

 

 

* * *

 

 

「な、嘘!?」

『ッ……!?』

 

 前に5体、後ろに5体。総勢10体のディアブロがフレアを取り囲む。

 

「クックック……決闘!」

 

 ディアブロの1体がそう叫ぶと、フレアのバトルロイヤルモードが再開される。

 ターン順はフレア、ディアブロ3から10、ディアブロ1、2とモニターに表示された。

 

「……負けない! 絶対に負けるもんですか! エアトス!」

『ええ! フレアへ襲い掛かるダメージは私が防ぎます! フレア! 戦いましょう!』

「私のターン!」

 

フレア

LP:4000

SPC:3→4

手札:2→3

モンスター

・ガーディアン・エアトス

・セット

魔法・罠

・セット

 

ディアブロ1

LP:4000

SPC:2→3

手札:1

モンスター

・A・O・J ガラドホルグ

・A・O・J ブラインド・サッカー

魔法・罠

・DNA移植手術

 

ディアブロ2

LP:4000

SPC:2→3

手札:2

モンスター

・A・O・J サウザンド・アームズ

・A・O・J ブラインド・サッカー

・A・O・J コズミック・クローザー

魔法・罠

・無し

 

ディアブロ他8体

LP:4000

SPC:0→1

手札:5

モンスター

・無し

魔法・罠

・無し

 

「罠カード《強欲な瓶》を発動! デッキからカードを1枚ドロー!」

 

 フレア 手札:3→4

 

「SPCを4つ取り除き、《Sp-エンジェル・バトン》を発動! デッキからカードを2枚ドローし、手札から1枚墓地へ送る!」

 

 フレア SPC:4→0 手札:3→5→4

 

 捨てたカード

 砂塵の騎士

 

「手札から獣族1体を墓地に送る事で、手札からチューナーモンスター《虚栄の大猿》を召喚! そして効果発動! 墓地に送った獣族のレベル分、 虚栄の大猿のレベルを下げる」

 

 墓地へ送ったカード

 ネコマネキング レベル1

 

 フレアの場に虚栄の大猿が現れ、何時もの様に相手を影で威嚇しようとするが、周りが敵だらけだという事に気付き、怯えた様に影と体を縮込ませる。

 

 ATK:1200 レベル5→4

 

「セットしていた《マイン・モール》を反転召喚! ……レベル3《マイン・モール》に、レベル4《虚栄の大猿》をチューニング!」

 

 虚栄の大猿が自身を4つの光輪へと変え、姿を現したマイン・モールを囲むと、3つの光、そして光の柱へと変える。

 

「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風を切り裂き、地平の彼方に蹄を穿て! シンクロ召喚! 轟け! 《ボルテック・バイコーン》!」

 

 光の柱から現れたのは”ボルテック・バイコーン”。

 場に降りると、雷鳴を轟かせながらフレアの横を並走する。

 

 ATK:2500 レベル7

 

「素材としたマイン・モールの効果により、1枚ドロー!」

 

 フレア 手札:2→3

 

「チューナーモンスター《キーマウス》を召喚!」

 

 続けてフレアの場にキーマウスが現れ、バイコーンの背に飛び乗る。

 

 ATK:100 レベル1

 

「レベル7《ボルテック・バイコーン》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」

 

キーマウスが首輪の錠に自分の尻尾を差込んで開錠させると、1つの光輪へと姿を変え、ボルテック・バイコーンを囲み、7つの光、そして光の柱へと変えて行く。

 

「荒野を駆ける雷よ! 常闇を貫き、閃光の如く大地を駆け抜けよ! シンクロ召喚! 照らせ! 《ライトニング・トライコーン》!」

 

 光の柱から現れたのは”ライトニング・トライコーン”。

 場に降りると、体から電気を放電させながらフレアの横を並走する。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「これで……揃った!」

 

 この瞬間、フレアの頭上にカードのソリッドビジョンが5枚表示される。

 

砂塵の騎士

ネコマネキング

マイン・モール

虚栄の大猿

キーマウス

 

「今、私の墓地に存在する地属性は5体! この時、手札からこのモンスターを特殊召喚できる!」

 

 フレアがカードを場に出すと、突然地鳴りが起こり始める。

 

「5つの叫びが木霊する時、大いなる大地が怒号を放つ! 生命を司る地霊の神よ! 今ここに姿を現せ! 《地霊神グランソイル》!」

 

 フレア達が走る道の先、遠く離れた場所にグランソイルがそびえ立つ。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「グランソイルの効果発動! 特殊召喚に成功した時、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択し、自分の場に特殊召喚できる! 私の墓地から《ボルテック・バイコーン》を特殊召喚! 〈グランド・リライブ〉!」

 

 グランソイルが光り輝く右掌をフレアの方へと向けると、ボルテック・バイコーンが地面を割って飛び出し、再びフレアの横で駆け始める。

 

 ATK:2500 レベル7

 

「バトル!」

 

 一気にモンスターを展開し、フレアはバトルフェイズへ突入する。

 狙いを定めたのは、厄介な”DNA移植手術”を擁するディアブロ1。

 

「エアトスでブラインド・サッカーを! ボルテック・バイコーンでガラドホルグを攻撃!」

「ガラドホルグは光属性と戦闘を行う場合、ダメージステップの間、攻撃力が200ポイントアップする!」

 

 ATK:1600→1800

 

 エアトスがブラインド・サッカーを精霊のオペラで消滅させ、ボルテック・バイコーンがガラドホルグを角で貫き、破壊する。

 

「グッ……!」

 

 ディアブロ1 LP:4000→3100→2400

 

「グランソイルで直接攻撃! 【天地雷鳴撃】!」

 

 グランソイルの頭上に雷雲が現れると、避雷針の様に尖ったグランソイルの両肩に無数の雷が落ち、その雷によって生まれたエネルギーが銃口のようになっている指先に集められる。

 グランソイルはその指先をディアブロ達へと向けると、十本の指から一斉に光線を放った。

 

「グァァァァ!?」

 

 ディアブロ1 LP:2400→0

 

 大きく力を失っているとはいえ、グランソイルは高位精霊が宿ったカード。力をコントロールする事でダメージを実体化させる事が可能であり、グランソイルの一撃はディアボロ1を倒しただけでなく、近くにいたディアブロ8、9、10も同時に吹き飛ばしてしまった。

 

「(凄い……これならいけるかも!) 続けてライトニング・トライコーン! コズミック・クローザーに攻撃! 【ギガボルト・チャージ】!」

 

 次の標的は先程の攻撃から逃れていたディアブロ2。

 トライコーンは角に電気を纏わせ、コズミック・クローザーに向かって突進。角で機体を貫き、破壊する。

 

「ヌウ……!」

 

 ディアブロ2 LP:4000→3600

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:0

手札:0

モンスター

・ガーディアン・エアトス

・ライトニング・トライコーン

・地霊神グランソイル

・ボルテック・バイコーン

魔法・罠

・セット

 

「……無駄だ。その程度ではディアブロからは逃れられん。……クックック、フレアよ、絶望しろ! 非力な身で戦場へと出てきた事に! 絶望しろフリント! 女一人も守れない自分にな! ハッハッハッハ!」

 

 今のプラシドは本来の目的を忘れ、無意識に口を開き、言葉を放っている。

 そんな彼を動かしているのは、魂に刻まれた”遠い記憶の欠片”――――そこから沸きあがってくる、怒りと悲しみであった。

 

「私のターン!」

 

 ディアブロ3 手札:5→6

 

 ディアブロ3 SPC:1→2

 フレア SPC:0→1

 

 カードを引いたのは、まだ決闘に参加していなかったディアブロ3。

 仲間が4人も倒されたにも関わらず、余裕そうな笑みを浮かべている。

 

「《Sp-二重召喚》! SPCが2つ以上存在する場合、このターン私は通常召喚を2回行う事ができる。《A・ボム》を2体召喚!」

 

 ディアブロ3の場に高エネルギーを秘めた球体が2つ現れる。

 フレアはそれを見た瞬間、嫌なものを感じ取った。

 

 ATK:400 レベル2

 ATK:400 レベル2

 

「(何……あれ?)」

「バトル! A・ボム2体でボルテック・バイコーンに攻撃!」

「!? 何で攻撃を……」

 

 A・ボムがそれぞれに突撃すると、ボルテック・バイコーンはそれを角で迎撃する。

 

「(何か……何!?) 駄目! ボルテック・バイコーン!」

 

 フレアが叫ぶも、ボルテック・バイコーンは向かって来たA・ボムを2体同時に角で貫いてしまう。

 その瞬間、大爆炎が場を包んだ。

 

「きゃあああ!? ……エアトス! ありがとう……エアトス!?」

 

 フレアにも爆炎が襲いかかろうとしたが、その直前でエアトスが間に入り、フレアを衝撃から守る。

 しかし、エアトスの体は半透明であり、それは既にエアトスが場に存在していない事を意味していた。

 

「どうしてエアトスが破壊されて……」

『……私だけではありません。見てください』

 

 爆炎から飛び出し、フレアは辺りを見渡す。

 そこにはエアトスだけではなく、バイコーンとトライコーン、そして遠くにいたはずのグランソイルまでいなくなっていた。

 

「そんな!? 私のモンスターが……」

「クックック……光属性との戦闘で破壊され墓地に送られたA・ボムは、場のカード2枚を道……連れに……スル……」

 

 ディアブロ3 LP:4000→1900→0

 

 LPが0になった事でディアブロ3の機能が停止し、クラッシュして後方へと流れていく。

 

「自分を犠牲にしてまで……!? くっ! ボルテック・バイコーンの効果発動! 相手によって破壊された時、お互いのデッキトップからカードを7枚墓地へ送る!」

 

 フレアがそう宣言すると、ディアブロ3の後方にいたディアブロ4が前に出て処理を行い、フレアも同様にカードを墓地へと送る。

 

「(伏せカードと、このカード達が私の生命線……!)墓地に送られた《ダンディライオン》の効果発動! 場に綿毛トークン2体を生成!」

 

 フレアの場に綿毛トークンが2体現れる。

 頼りない壁だが、この状況では頼らざるを得ない。まだ、ディアブロが5体も残っているのだ。

 

 DEF:0 レベル1

 DEF:0 レベル1

 

「クックック……私のターン!」

 

 ディアブロ4 手札:5→6

 

 ディアブロ4 SPC:2→3

 フレア SPC:1→2

 

「チューナーモンスター《A・O・J サイクロン・クリエイター》を召喚!」

 

 ディアブロ4の場に、両翼にプロペラを備えた鳥獣型のロボットが現れる。

 

 ATK:1400 レベル3

 

「効果発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で、場のチューナーの数だけ、場の魔法・罠を選んで持ち主の手札に戻す! 場にはチューナーが1体! お前の伏せカードを手札に戻す!」

 

 ディアブロ4 手札:5→4

 

「!? 罠カード《和睦の使者》をチェーン発動! このターン、私はダメージを受けず、私のモンスターは戦闘では破壊されない!」

「チッ! カードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:3

手札:1

モンスター

・A・O・J サイクロン・クリエイター

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「私のターン!」

 

 ディアブロ5 手札:5→6

 

 ディアブロ5 SPC:3→4

 フレア SPC:2→3

 

「モンスターをセット! そしてSPCを3つ取り除き、《Sp-強制転移》を発動! お互いはそれぞれ自分の場のモンスター1体を選び、そのモンスターのコントロールを入れ替える! バトルロイヤルルールの場合、その対象は発動プレイヤーが選択する! 強制転移の対象となるのはお前だ!」

 

 ディアブロ5 SPC:4→1

 

 そう言ってディアブロ5はディアブロ2を指名する。

 

「いいだろう! 私がコントロールを移すのは《A・O・J サウザンド・アームズ》!」

 

 ディアブロ2が自身の場からセットモンスターを指名すると、サウザンド・アームズとセットモンスターの配置が一瞬で入れ替わった。

 それを確認したディアブロ4は間髪入れずに伏せカードを発動させる。

 

「永続罠《DNA移植手術》! 光属性だ!」

「また!?」

「クックック……サウザンド・アームズは相手の場の光属性全てに1度ずつ攻撃できる! バトル!」

 

 サウザンド・アームズが5本の刃物を振り回し、綿毛トークン2体を切り刻む。

 

「そんな……(何てコンビネーションなの……)」

「ターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:1

手札:4

モンスター

・A・O・J サウザンド・アームズ

魔法・罠

・無し

 

「私のターン!」

 

 ディアブロ6 手札:5→6

 

 ディアブロ6 SPC:4→5

 フレア SPC:3→4

 

「罠カード《ギブ&テイク》を発動! 自分の墓地のモンスター1体を相手の場に守備表示で特殊召喚し、その特殊召喚したモンスターのレベル分だけ、自分の場のモンスター1体のレベルを上げる!」

 

 動いたのはディアブロ4。

 伏せていた罠を発動させ、すぐさまディアブロ6のサポートに入る。

 

「墓地のレベル6モンスター《A・O・J クラウソラス》を奴の場に特殊召喚し、私の場の《A・O・J サイクロン・クリエイター》のレベルを6つ上げる!」

 

 A・O・J サイクロン・クリエイター レベル3→9

 

 ギブ&テイクの効果により現れたのは、サイクロン・クリエイターよりも大きい機械の怪鳥。

 鳥獣らしい奇声を上げながら、ディアブロ6の頭上を飛ぶ。

 

 DEF:1200 レベル6

 

「クク……《Sp-オーバー・ブースト》を発動! SPCを6つ増やす!」

 

 ディアブロ6 SPC:5→11

 

「更にSPCを6つ取り除き、《Sp-洗脳-ブレインコントロール》を発動! 相手の表側表示モンスター1体のコントロールを得る! 《A・O・J ブラインド・サッカー》のコントロールを得る!」

 

 ディアブロ6 SPC:11→5

 

 ディアブロ6が発動させたSpのソリッドビジョンから放たれた光線がディアブロ2のブラインド・サッカーに命中すると、ブラインド・サッカーがディアブロ6の場に移動する。

 

「ブラインド・サッカーをリリースし、《A・O・J エネミー・キャッチャー》をアドバンス召喚!」

 

 ディアブロ6の場に移ったブラインド・サッカーが光の中へと消えると、その光の中から巨大なイカの様なロボットが現れる。

 

 ATK:1800 レベル6

 

「エネミー・キャッチャーの効果発動! 召喚に成功した時、相手の場に裏側守備表示で存在するモンスター1体を選択し、エンドフェイズ時までコントロールを得る事ができる!」

 

 ディアブロ6が宣言すると、エネミー・キャッチャーはディアブロ2の場にあるディアブロ5がセットしたモンスターのソリッドビジョンを触手で絡め取り、ディアブロ6の場へと移動させた。

 

「コントロールを得たセットモンスター《A・O・J アンノウン・クラッシャー》を反転召喚!」

 

 ATK:1200 レベル3

 

 ディアブロ6の場にマンモスのロボットが姿を現す。

 それに合わせる様にディアブロ4が伏せカードを発動させた。

 

「速攻魔法《Sp-エネミーコントローラー》を発動! SPCが3つ以上存在する場合、相手の場の表側表示モンスター1体の表示形式を変更できる! 《A・O・J クラウソラス》を攻撃表示に変更!」

 

 DEF:1200→ATK:2300

 

 これでディアブロ6の場に総攻撃力4000を軽く越えるモンスター軍団が揃った。

 ディアブロ6は滑らかながらも機械らしい声で笑った後、バトルフェイズへ突入する。

 

「フハハハハ! これで終わりだ! 死ね! 一斉攻撃!」

 

 ディアブロ6のA・O・J軍団がフレアに飛びかかった瞬間、磁力を帯びた亀の甲羅がフレアの場に現れ、A・O・J達を全て弾き返してしまった。

 攻撃を防いだ後、甲羅は消滅する。

 

「何!?」

「墓地の《超電磁タートル》の効果発動! 相手ターンのバトルフェイズ時に墓地のこのカードを除外する事で、そのバトルフェイズを終了する!」

「……ターンエンド! オーバー・ブーストの効果により、私のSPCは1つとなる」

 

 SPC:5→1

 

 ディアブロ6がターンを終了させると、エネミー・キャッチャーの効果によりアンノウン・クラッシャー はディアブロ2の場へと戻っていく。

 

LP:4000

SPC:1

手札:3

モンスター

・A・O・J クラウソラス

・A・O・J エネミー・キャッチャー

魔法・罠

・無し

 

「(私のターンまで、後2体……キツイ……でも、ここで負ける訳には……!)」

「私のターン!」

 

 ディアブロ7 手札:5→6

 

 ディアブロ7 SPC:5→6

 フレア SPC:4→5

 

「《A・O・J コアデストロイ》を召喚!」

 

 ディアブロ7の場に魚の様な胴体と馬の様な四脚を持つロボットが現れる。

 

 ATK:1200 レベル3

 

「バトル! コアデストロイで直接攻撃! そしてこのダメージステップ時にSPCを6つ取り除き、速攻魔法《Sp-リミッター解除》を発動! 私の場の機械族の攻撃力を倍にする! やれ! コアデストロイ!」

 

 ディアブロ7 SPC:6→0

 ATK:1200→2400

 

 ディアブロ7が速攻魔法を発動させると、コアデストロイの機体が赤く染まり、フレアに向かって接近しながら、全体から火花を散らし始める。どうやら自爆しようとしているようだ。

 

「(クックック……リミッター解除からの直接攻撃を受ければ、幾らLPが残っていようとも無事では済まん。さあ、死ぬがいいフレア!)」

 

 プラシドが狂気に満ちた表情で見下ろす中、コアデストロイはフレアの目の前で大爆発を起こす。

 

『させません!』

「エアトス!?」

 

 フレアが爆風に飲まれる瞬間、半透明のエアトスが姿を現し、結界を張ってフレアを実体化したダメージから守る。

 

 フレア LP:4000→1600

 

「(何だと!? どうなっている!?)」

 

 無事な姿で爆炎から姿を現したフレアを見て、プラシドは左眼を剥く。

 

「リミッター解除の効果により、効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

SPC:0

手札:3

モンスター

・無し

魔法・罠

・セット

 

「よかった……7体目は手札が悪かったみたい」

『ええ、ですが油断はしないようにフレア。もう少し……もう少しです!』

 

 フレア達はガムシャラにディアブロ達から逃げている様に見えるが、実はそうではない。

 フレア達は”海”を目指して走っていたのだ。

 水の中ならクラッシュしても損傷は無く、カードやウィルダーネスの大事な機関はエアトスの結界を強めれば水から保護できる。そして何より、ロボットであるディアブロ達では水の中まで追ってこれないだろうというのが、この作戦の決め手であった。

 

「(気付かれないようにする為、大分遠回りしちゃったけど、後もう少し……!)」

 

 ターンプレイヤーになれば、この決闘の主導権を握れる。何とか後の2体を凌ぎ、ターンプレイヤーとなって海に突っ込めれば、フレアの作戦は成功となるのだ。

 

「私のターン!」

 

 ディアブロ2 手札:2→3

 

 ディアブロ2 SPC:8→9

 フレア SPC:5→6

 

「これで終わりにしてやる! 《スピード・ワールド2》の効果発動! SPCを4つ取り除き、手札のSPCを1枚見せる事で、相手に800ポイントのダメージを与える!」

 

 ディアブロ2 SPC:9→5

 

 見せたカード

 Sp-大嵐

 

 ディアブロ8からフレアに向かって光線が放たる。

 

「墓地から《プリベントマト》の効果発動! このカードをゲームから除外する事で、このターン自分が受けるダメージを0にする!」

 

 フレアの前にプリベントマトが現れると、フレアの代わりに光線を受け、消滅する。

 

「何!? くっ……!」

 

 フレアにダメージを防がれると、ディアブロ2は苦々しく口元を歪めた。それもそのはず、ディアブロ2の手札にはモンスターが存在せず、場にいるのは攻撃力1200のアンノウン・クラッシャーのみ。これではフレアに止めを刺す事ができないのである。

 

「(やった! 防ぎ切った!)」

「お前にターンは回さん!」

 

 勝利を確信したフレアに対し、ディアブロ2の後ろにいるディアブロ7が不敵な笑みを浮かべる。

 

「罠カード《強欲な贈り物》を発動! 相手はカードを2枚ドローする! 対象はターンプレイヤー!」

「ッ!? 仲間の手札を……!?」

「ドロー!」

 

 ディアブロ2 手札:3→5

 

「フフフ……《A・O・J ガラドホルグ》を召喚!」

 

 ディアブロ8が召喚したのは、攻撃力1600のガラドホルグ。

 これでディアブロ2の場の総攻撃力がフレアのLPを上回った。

 

 ATK:1600 レベル4

 

「(そんな……もう墓地にカードは……)」

「随分と手間を掛けさせられたが、これで終わりだ! 死ね! バトル!」

「(もう……無理なの……? フリント……!)」

 

 完全に手が尽きたフレア。

 祈る様に目を閉じた瞬間、それに応えるかの様な叫びが聞こえてくる。

 

「フレアーーーー!!」

「……フリントッ!?」

 

 フレアの後ろを走るディアブロ達の後方に、イグニッションを駆るフリントの姿が見えた。

 

「待っていろ! すぐに助けてやる!」

「遅い! A・O・J ガラドホルグで直接攻撃!」

 

 フリントがイグニッションを加速させて間合いを徐々に縮めていくが、それを待つほどディアブロ達は甘くはない。

 ガラドホルグがフレアに向かって剣を振り上げ、突撃する。

 

「間に合わないっ……!」

『フレア! LPが0になったら、フリントのDホイールに向かって跳んでください!』

「え!?」

『彼がこちらに辿り着くまで、私が攻撃を防ぎます! 彼なら必ずやり遂げる! あの時の……クラッシュタウンの時の様に……』

「エアトス……」

 

 今までフリントの事を警戒し、信頼を寄せていなかったエアトス。そんな彼女がフリントを信頼した事に、フレアは嬉しくなる。

 

「うん! エアトス、お願い!」

『はい!』

 

 ガラドホルグのサーベルがエアトスの結界に当たると、フレアのLPが徐々に減り始める。結界の力が決闘に干渉し、フレアへの実体ダメージとLPの減りを抑えているのだ。

 その様子を見たフリントは、”何故?”と考える前に行動を起こす。

 

「うおお!」

 

 フリントは全神経をイグニッションに集中させると、目の前に並ぶディアブロ達を追い抜き、フレアの元へと進んで行く。

 

「フリント!」

『フリント! 来なさい!』

「フレア!」

 

 ディアブロ達を抜け、フレアの後ろに迫るフリント。

 フレアへと手を伸ばした瞬間、フリントの視界にあるものが映る。

 

「!!? き、”機皇帝”ッ!?」

 

 それは巨大な鳥の様な姿をした青い機皇帝。

 下腹部に取り付けられた砲身をフレアに向け、エネルギーを充填し始めている。

 ビルの屋上にいるプラシドは、モンスターカードが5枚出されている決闘盤を構えながらその様子を食い入るように見下ろしていた。

 

「ダメージを防いでいる何かがいる……! 俺の邪魔をするなァーーーー!!!」

 

 プラシドの叫びと同時に、機皇帝は砲身から赤い光線を放った。

 

「!? フレアァーーーー避けろォーーーー!!!」

「え?」

 

 光線はウィルダーネスの足元の道路を砕くと、ウィルダーネスとフレアはその衝撃で吹き飛ばされる。

 その瞬間、フリントは時間が止まったかのような感覚に襲われた。

 

「(何……?)」

 

 正確には止まったのではなく、時間の流れが非常にゆっくりと感じられているのである。

 自分の前で宙に浮かぶウィルダーネスとフレア。そして後ろにいた自分も衝撃の余波を受けて後方へと吹き飛ばされる。

 

「(くっ……何!?)」

 

 ゆっくりと後方へと飛ばされるフリントだったが、空中でウィルダーネスから投げ出されたフレアの体はフリントよりも速く後方へと流れて行く。

 フリントは中々動かない自身の首を何とか動かし、フレアを眼で追った。

 

「(フ、フレア)」

 

 後方へと飛び続ける自分達を避け、前方へと走って行くディアブロ達。

 そして、飛ばされていたフレアと自分の体が道路に触れた瞬間――――時が元に戻る。

 

「ぐあぁぁぁ!?」

 

 凄まじい激痛が体を襲う。

 何度も地面を転がり、そして止まる。

 

「ぐ……うう……」

 

 常人ならば最悪死に至り、そうでなくても意識を失うか、立ち上がる事もできなくなるだろう。しかし、常人離れの体を持つフリントは意識を保ち、ふらつきながらも何とか立ち上がる。

 

「くっ……! フレア!」

 

 フリントは痛む体を無理やり動かし、辺りを見渡す。

 

「何処だ!? 何処にいるフレ――――」

 

 後ろへと振り返えると、少し離れた位置に少女が横たわっていた。

 少女はピクリとも動かず、体の下から赤い液体が流れ出ている。

 それを見たフリントは一瞬で体中の熱が引き、凍る様な間隔を覚える。

 

「あ……ああ……!?」

 

 それを自覚した瞬間、今度は心を砕く様な凄まじい”痛み”が全身を駆け巡り――――フリントの口から一気に放たれた。

 

 

 

 

「……フレアァァァァァーーーーー!!!」

 

 

 

 

 




作中でおかしな処理やルール(A・ボムの破壊効果、LP0になったのに効果処理が続行、プレイヤー対象など)がありますが、バトルロイヤルという特殊ルールである事と、テンポを優先した結果です。ご了承ください。
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