「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光さす道となれ! アクセルシンクロォォォーーーー!!」
生来せよ! 《シューティング・スター・ドラゴン》!!!
* * *
雷を撒き散らす曇天が消え、蒼い澄み切った空がネオ童実野シティに戻ってくる。
その蒼い空の下、シティ沿岸部にあるデュエルレーンの上に立つのは、ネオ童実野シティを救った英雄、”不動 遊星”。
彼の視線の先で無残な姿となって倒れているのは、この事件の首謀者であり、自身もディアブロと同じアンドロイドであった”プラシド”。
そして、彼等の上空を光り輝きながら飛ぶのは、
決闘の終了と同時にシューティング・スター・ドラゴンは空へ向かって咆哮を上げると、流星の様に輝き、蒼い空の彼方へと消えていった。
重体のプラシドの元へと駆け寄る遊星。それを止める老人の声。
次の瞬間にはプラシドの体が浮かび上がり、ネオダイダロスブリッジの記念モニュメントの頂上へと運ばれる。
頂上にいたのは残る三皇帝の二人、ホセとルチアーノ。
モニュメント下には遊星と、Dホイールを飛ばして駆けつけたジャック、クロウ、そして謎のDホイーラーが集まる。
イリアステルとシグナー、ダークシグナーとの戦いから続く因縁の宿敵同士が、今ここに合間見える事となった。
ホセはルチアーノと共に名乗り上げると、遊星に問われた自分達の目的について話し始めた。
イリアステルの目的、それは”未来を変える事”であり、彼等イリアステルは”神”が創り上げた歴史を修正する為の組織なのだという。
現在のままでは歴史が良くない方へと進んでしまう為、彼等は人類の頂点に立つ者達を影で操り、原因の1つであるという”モーメント”を消す為に”ゼロ・リバース”を起こすなどをして歴史の修正を行っていたのだ。
しかし、それだけの事をしてもモーメントは失われず、歴史が変わる事はなかった。
ゼロ・リバースを起こしても変わる事のない未来。ならばゼロ・リバース以上の事を起こさねばならない。そうして出した結論が”ネオ童実野シティの消滅”であり、その為に三皇帝は暗躍を続けてきたのであった。
遊星達には明かされていないが、彼等が作ろうとしている”サーキット”は、シティを消滅させる為の大災害を起こす為の準備である。
これらの話を、ここへと向かいながら通信で聞いていたシェリーは激昂し、己達の仇の元へと特攻。ホセに対して蹴りかかるが、ホセはこれを軽くあしらい、ルチアーノと対峙していたミゾグチ共々返り討ちにされてしまった。
「ホセ! ルチアーノ! ネオ童実野シティを消滅させるとはどういう事だ!?」
「それが知りたければ、WRGPに出て来い。本戦には我々も出場する。……全ての答えはWRGPにある」
遊星の問いにホセはそう答えると、突然空から隕石が落下し、ホセの目の前で止まる。
その隕石は遊星が見た石版と同じ物であり、ホセがそこから5枚のカードを取り出すと、石版は跡形もなく砕け散った。
「これが我が力……”機皇帝グランエル”!」
ホセが腹部に搭載された決闘盤を展開させると、そこに取り出したカード5枚を全て並べる。
すると、遊星達の背後の海からワイゼルやスキエルと同じ、5つのパーツからなる起動兵器が現れる。
ワイゼルが白い人型、スキエルが青い鳥獣型のロボットだったのに対し、グランエルは黄土色のボディを持つ、人型の上半身を持った”移動砲台”の様な姿をしていた。
真実はWRGPに――――そういい残し、ホセはプラシドを回収し、ルチアーノと共に異次元の裂け目の中へと姿を消した。
* * *
「さぁーてと……こいつ直さなきゃね。でもこいつムカつくから、このままにしちゃおうか? ホセもその方が勝手にされなくていいんじゃないの? ヒャッハハハ!」
異次元の裂け目の先にある空間。そこに置かれている手術台の上に寝かせられている下半身と左手を失ったプラシドを椅子の上から見下ろし、冗談交じりな笑い声を上げるルチアーノ。
ホセはプラシドの体にケーブルを繋ぎ、蘇生の準備を進めている。
「冗談でも馬鹿な事を言うな。プラシドは我等の分身。我等の過去であり、未来でもある。こやつがいなければワシはおらず、お前の未来もなかった」
「……むしろ、いなかった方がよかったんじゃないの? 僕で終わればさ」
「……それもそうか」
一瞬だけ真面目な顔になったかと思うと、ルチアーノは再び愉快そうな顔で笑い始める。
「ヒャハハ! まあどの道、僕等が未来を変えるんだから関係ないけどね! で、プラシドは何時元通りになるんだよ?」
「意識だけならば、すぐにでも戻せる。……起きろ、プラシド」
ホセが装置のスイッチを押すと、プラシドの体に大量のエネルギーが流され、プラシドは一瞬で意識を覚醒させる。
「ぐっ……ぐうっ……!」
「おっはよぉープラシド! 気分はどうだい? 僕はお前に盗られたカードが戻って来てチョーハッピーだよ! キィーヒャッハッハ!」
目を覚ましたプラシドを挑発するルチアーノだったが、プラシドは動じず、ホセへと眼を向ける。
「気分はどうだプラシド? これが独断に走った結果だ。奴等の力を――――」
「ホセ! フリントを知っているな?」
「……不動 遊星の仲間か」
「ホセ! お前は知っているんじゃないのか? あいつが何者なのかを!」
プラシドはボロボロの体を動かそうともがくが、その度に体から火花が飛び、苦しそうに顔を顰める。
「知っているのは今言った事だけだ。奴等に関しての情報なら、常に前線にいたお前の方が詳しいのではないか?」
「俺は知らない! あんな奴は! だがあの”目”は! あの”目”は――――」
「プラシド、負けたショックでどうにかなっちゃんてんじゃないの? 不動 遊星ならともかく、おまけの下っ端みたいな奴に執着しちゃってさ! ……あ、問題ないか! キィーヒャッハッハッハ!」
自分が”下っ端”と口にした時、ルチアーノは先程、プラシドに対してもそう言った事を思い出し、大笑いする。
プラシドの喚き声と、ルチアーノの笑い声。二つの騒音に挟まれながら、ホセは軽く溜息をつく。
本当はプラシドに説教をするつもりであったが、プラシドの様子がただ事ではないと感じたホセはルチアーノを黙らせた後、プラシドの話を聞く姿勢を見せる。
「一体どうしたというのだ? 我々の眼が届かぬ場所で、何があった?」
「……これを見ろ!」
プラシドが眼を見開き、ホセとルチアーノの目と交互に合わせ、メモリーに記録されていた視聴データを二人に送りつける。
二人がプラシドの眼を通して見たものは、フレアを背負って疾走り続けるフリントの目――――
「ッ!? うう……んんッ……!?」
「…………」
その目を見た瞬間、ルチアーノはプラシドと同じ様な感覚に襲われる。
ホセも顔を顰めてはいるが、二人程悩まされている様には見えなかった。
「おい……何なんだよこいつはッ!?」
「ルチアーノ! こいつは誰だか分かるだろう?」
「分かってるよんなもん! 龍亞や龍可の仲間だろ!? でも変なんだよこいつ! 何だよこれ!?」
「俺も同じ様に感じた。そしてルチアーノ、お前も思っているはずだ。”ここへ来るよりもずっと昔から、自分はこの目を知っているのではないか?”、と……」
プラシドに見透かされた事が面白くないのか、ルチアーノは顔を顰めてそっぽを向く。
予想通りと言った風に笑みを浮かべた後、プラシドはホセを睨みつけた。
「アンタが知ってるんじゃないか? ルチアーノが知らず、俺も知らない……ならば知っているのはアンタという事になる。アンタが”アンタの時代”であの目を見たという事だ! 答えて貰おうぞホセ!」
「お前の言う通りだプラシド……ワシは、”ワシ等”はあの目を知っている。忘れるはずがない……」
「何だ!?」
「何なんだよ!?」
プラシドが首を起こし、ルチアーノが詰め寄るが、ホセはそれを無視するかのように装置へと視線を落とす。
「お前達の知る事ではない……」
「はぁ!? どーいう事だよ!?」
「ふざけるな! 説明し――――」
ホセは装置を操作し、プラシドの意識を遮断させてからルチアーノを睨みつける。
ルチアーノを一瞬だけ身を竦ませた後、面白く無さそうな表情をホセに向けてから姿を消す。
ホセはプラシドの修理をしながら、先程のフリントの目を思い出していた。
「(……フリント……何故なのだ……何故……)」
* * *
「待ってくれ! ……アンタは俺がアクセル・シンクロをするのを知っていた」
グランエルが姿を消した後、遊星はDホイールに乗って去ろうとする謎のDホイーラーを呼び止める。聞きたい事は山ほどあるが、遊星が真っ先に問うたのは”機皇帝”と”アクセル・シンクロモンスター”の関連性についてであった。
遊星が揺るがなき境地で手に入れた”シューティング・スター・ドラゴン”と、ホセが手にした”機皇帝”は同じ様な石版から取り出され、それぞれに力を与えた。”シンクロの進化の果て”と”シンクロ・キラー”、相反する存在であるこの二つに一体どのような関係があると言うのか。
「……私にも分からない」
謎のDホイーラーの正直な回答に面食らう遊星達。
ここまで遊星を助けてくれた彼でさえも分からない事は多いらしく、知っているのは”遊星が何れアクセル・シンクロを完成させる”という事だけらしい。
「だが……考えられるとすれば、君に力を与えた者。それを”運命の神”と呼ぶのなら、彼は迷っているのかもしれない。進むべき道を……」
「”運命の神”……? (あの空間の……?)」
「そんな者はいない」
突如背後から聞こえてきた声。
遊星達が振り向くと、そこには帽子とマントを身に付けたフリントが佇んでいた。
「フリント!?」
「無事だったか!」
「心配してたんだぜ!? フレアと鬼柳は無事か?」
遊星、ジャック、クロウの3人がフリントの元へ駆け寄る。
「鬼柳はボマー達といる。おそらく無事だろう。フレアは重症を負ったが、今はアキと病院にいる。心配はいらない」
「いやいや待てよ! オメーボロボロじゃねーか!? まったくどいつもこいつも無茶しやがって……」
「お前が言うなクロウ! 肩がまだ痛むというのにここまで来おって!」
クロウとジャックが言い合いを始めると、遊星はフリントの顔を見詰める。どうやらフリントに対してアキと同じ違和感を感じたようだ。
「フリント……?」
「見事だったな遊星」
「フリント……さっきの言葉は、どういう意味だ?」
謎のDホイーラーに問われると、フリントは顔をそちらへと向ける。
「”運命の神”などいない。お前が言う運命の神がそうだと言うのは、大きな間違いだ」
「ど、どういう事なんだフリント?」
今までになかったフリントの迫力に押されつつも、遊星は彼の顔を覗き込む。
「お前が”あの空間”で会った者は神などではない。あれは運命に翻弄され、抗う事を諦めた憐れな男だ」
「ど、どうしてお前がそれを!?」
「フリント、君は一体――――!? ぐっ……!」
謎のDホイーラーがフリントの目を見た瞬間、頭を押さえて悶え始める。
「おい!? 大丈夫か!?」
「くっ……!」
遊星がDホイーラーの元へと駆け寄ろうとした瞬間、DホイーラーはDホイールを発進させ、逃げるようにこの場を去ってしまった。
Dホイーラーの言葉、フリントの言葉、訳の分からない事だらけの遊星は呆然としている。
「……遊星」
「!? な、何だ?」
「俺も今回は厳しかった。病院にでも行って休ませて貰う。申し訳無いが、鬼柳達の事を頼むぞ」
「あ、ああ……任せてくれ」
壮絶な死闘による疲労と、まだ少し混乱しているせいか、遊星はフリントを引き止める気になれず、遠くに停めてあったイグニッションへと向かうフリントの背中をただ見送っていた。
「(フリント……一体何があったんだ……)」
* * *
「……もう出てきたらどうだ?」
暫くイグニッションを走らせた後、フリントは人気の無い広場にてイグニッションから降り、呟く。
すると、近くの建物の影から謎のDホイーラーが現れ、フリントに左手の人差し指を突きつけた。
「お前は一体何者だ!? 答えてもらおう!」
「顔を隠しているような奴に言われたくはないな。何時もの様に、呑気な口調で喋らないのか? ブルーノ……」
フリントがブルーノの名を口にすると、Dホイーラーは明らかな動揺を見せ、躊躇いつつも顔を隠しているサングラスを外す。
そこにあったのは紛れもないブルーノの顔。しかし、今の彼は普段のおっとりとした表情ではなく、まるで正反対な鋭い真剣な表情をしており、その表情のまま鋭い視線をフリントに向けていた。
「気付いていたのか……」
「気付いたも何も、俺は昔から知っていた。ただ、忘れていただけだ」
「!? フリント……君の記憶も戻ったのか……ならば今一度聞こう! 君は一体何者だ? 何故私や”彼”の事を知っている? 返答次第では、君をこのまま見過ごす訳にはいかない!」
ブルーノはサングラスを掛け直し、動揺が混じった声をフリントにぶつけると、側にある自身のDホイールに跨る。
先程フリントの目を見た時からブルーノの心は騒ぎ続け、今でも収まる気配が無い。そして、その感覚が決して不快なものでないという事が、ブルーノを更に動揺させる。
「分からないか?」
「……私は、己の使命を思い出した。しかし、私の中に君という存在はいなかった!」
「いないだろうさ。知るはずもない。お前は”ジョニー”ではないのだからな」
「ジョニー? 一体何を言って……」
困惑するブルーノ。その様子を見てフリントはフッと笑みを洩らす。
「まあいいさ。俺は俺だ。記憶喪失のブルーノがよく知っているフリントだ。……さて、今度はこっちの質問だ。お前は何故”この時代”にやってきた? 何の為に?」
「……私の使命は、この世界を救う事。そして遊星を助け、進化を促す事」
「本当にそれだけか?」
そう言ったフリントの真っ直ぐな視線を避ける様に、ブルーノは苦々しく顔を背ける。
「……分からない。確かにこれらは私の使命のはず。しかし……分からない事がまだ多すぎる。もしかしたら、まだ私の記憶は不完全なのかもしれない」
「または、完全なんて無いのかもな」
「……やはり、君は私の”何か”を知っているようだな」
ブルーノはヘルメットを被ると、Dホイールをフリントの側まで移動させる。
「私の”決闘者としての勘”が告げている。君をこのまま野放しにしておいてはならないと! 私と決闘だ! 私が勝った時は、君や君が知っている事を洗いざらい全て話して貰うぞ!」
「いいだろう。決闘なら何時でも受けてやる。来い」
そう言ってフリントもDホイールに跨り、二人並んでDホイールを走らせた。
* * *
「(フリント……一体何処に行ったんだ?)」
結局フリントの事が気になり、彼を捜して遊星号を走らせる遊星。
Dホイールに内蔵されている通信機で連絡を取ろうとしたが、フリントは通信機を切っている為、自力で捜すしかなかったのである。
「(……しまった。こんな所まで来てしまうとは……)」
気付くと、周りは工事の騒音が鳴り響く、開発中の街が広がっていた。フリントを捜しながら考え事をしていたせいか、遊星は何時の間にかサテライトまでやってきていたのである。
「(ん? こんな時に決闘か?)」
突然、遊星号から鳴り出す警告音。それはライディング・デュエルが行う為に治安維持局から発せられる退避警告であった。
幸いな事にサテライトはディアブロの被害を受けていない為、デュエルレーンや治安維持局のシステムは問題無く作動しているようだ。
気になったのか、遊星はデュエルが行われるレーンに近寄る。
「……フリント!? それにあの男は……!? 何故彼等が決闘を!?」
レーンの中で走っていたのはフリントと、先程走り去ったはずのDホイーラー。
遊星は咄嗟に通信を繋ごうとするが、両者共外部からの通信を遮断してしまっている。
「くっ……!」
通信を諦めた遊星は元いたコースからデュエルレーンに近いレーンへと乗り移り、二人の後を追う。
遠くから二人を眺めていると、フリントが力強く右腕を振り上げるのが見えた。どうやら既に決闘は始まっているらしい。
「俺のターン!」
フリント 手札:5→6
フリント SPC:0→1
ブルーノ SPC:0→1
「チューナーモンスター《レアル・ジェネクス・コーディネイター》を召喚!」
フリントの場に飛行円盤の様な下半身を持つ青いロボットが現れる。
ATK:200 レベル2
「コーディネイターの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、手札からレベル3以下のジェネクス1体を特殊召喚できる! 手札から《レアル・ジェネクス・マグナ》を特殊召喚!」
コーディネイターが円盤部から眩い光を放つと、その光の中からレアル融合炉を搭載したロボットが姿を現し、機体から水蒸気とマグマを噴出させる。
ATK:1000 レベル3
「レベル3《レアル・ジェネクス・マグナ》に、レベル2《レアル・ジェネクス・コーディネイター》をチューニング!」
コーディネイターが自身を2つの光輪へと変え、マグナを囲むと、3つの光、そして光の柱へと変える。
「天国と地獄、その間……輪廻を司りし番人の眷属よ! 煉獄の零門より姿を現せ! シンクロ召喚! 《転生竜サンサーラ》!」
光の柱から姿を現したのは、黒い炎の様な塊。
その中心部にはアンクの様な模様が浮かび上がっており、それが突然発光すると、黒い炎の中に竜の姿が浮かび上がる。
オーガ・ドラグーンがフリントに与えた新たな力、”転生竜サンサーラ”である。
DEF:2600 レベル5
「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
LP:4000
SPC:1
手札:2
モンスター
・転生竜サンサーラ
魔法・罠
・セット
・セット
「私のターン!」
ブルーノ 手札:5→6
フリント SPC:1→2
ブルーノ SPC:1→2
「いきなりシンクロ召喚か。ならば、私はそれを超える力を見せよう! 手札からチューナーモンスター《
ブルーノの場に青い特殊アーマーに身を包んだ戦士が現れる。
ATK:800 レベル2
「ストライカーは相手の場のみモンスターが存在する時、手札から特殊召喚できる! そしてレベル4以下のモンスターの特殊召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる! 来い! 《TG ワーウルフ》!」
続けて体中に機械改造を施された狼男が現れる。
ATK:1200 レベル3
「そしてチューナーモンスター《TG サイバー・マジシャン》を通常召喚!」
ワーウルフの次に現れたのは、魔術師の装束の様な機械装甲に身を包んだ子供の魔法使い。
驚くべき事に、ブルーノは3体のモンスターを、サポートカード無しで場に揃えてしまった。
しかし、”TG”シリーズの恐ろしさはここからである。
ATK:0 レベル1
「レベル3《TG ワーウルフ》に、レベル2《TG ストライカー》をチューニング!」
ストライカーが自身を2つの光輪へと変え、ワーウルフを囲むと、3つの光、そして光の柱へと変える。
「リミッター解放、レベル5! レギュレーターオープン! スラスターウォームアップ、オーケー! アップリンク、オールクリアー! GO! シンクロ召喚! カモン! 《TG ハイパー・ライブラリアン》!」
光の柱から現れたのは、情報端末を手に持った白い衣装の魔法使い。
端末に眼を通しながら、目に付けた青いゴーグルを光らせる。
ATK:2400 レベル5
「まだ終わりではないぞ! サイバー・マジシャンをTGモンスターのシンクロ素材とする場合、手札のチューナー以外のTGを素材にする事ができる! 手札のレベル4《TG ラッシュ・ライノ》に、場のレベル1《TG サイバー・マジシャン》をチューニング!」
サイバー・マジシャンが自身を2つの光輪へと変え、ブルーノの手札から飛び出した機械改造を施されたサイを囲むと、4つの光、そして光の柱へと変える。
「リミッター解放、レベル5! ブースターランチ、OK! インクリネイション、OK! グランドサポート、オールクリアー! GO! シンクロ召喚! カモン! 《TG ワンダー・マジシャン》!」
光の柱から現れたのは、魔導装束の様な機械装甲を身に纏った少女。
少女はウィンクをすると、背中に妖精の様な機械の羽を展開し、二つに分けた桃色の後ろ髪を大きく揺らしながらフリントに対して構える。
ATK:1900 レベル5
有言実行とは正にこの事か、ブルーノは初手からいきなりシンクロモンスターを2体揃えてしまった。
これだけでもフリントを超えているが、まだ彼の動きは止まらない。
ブルーノは自身のDホイール”デルタ・イーグル”を加速させると、イグニッションを追い抜き、前を走り出す。
色々と追い抜かれている状況にも関わらず、フリントは微笑を浮かべながら、彼の背中を見送った。
「ハイパー・ライブラリアンの効果発動! シンクロ召喚が行われた時、デッキからカードを1枚ドローする!」
ブルーノ 手札:2→3
「更にワンダー・マジシャンの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、場に存在する魔法・罠1枚を選択して破壊する! 君の伏せカード1枚を破壊だ!」
ワンダー・マジシャンが手からフリントの伏せカードに向かって光弾を放つ。
「対象となった罠カード《強欲な瓶》を発動! デッキからカードを1枚ドロー!」
フリント 手札:2→3
フリントの罠が発動された後、光弾がその罠のソリッドビジョンを撃ち抜き、破壊する。
せっかくの破壊効果を無駄にされてしまったブルーノだが、表情を変える事なく加速を続け、デルタ・イーグルが切り裂く風が光を帯び始める。
「フリント! 私はこの決闘では一切手を抜かない! この”アクセルシンクロ”の力で、君を倒す!」
「やってみろ。俺も負けるつもりは無い」
「見せてやろう! クリア・マインド! レベル5《TG ハイパー・ライブラリアン》に、レベル5《TG ワンダー・マジシャン》をチューニング!」
ワンダー・マジシャンが自身を5つの光輪へと変え、ライブラリアンを囲むと、ライブラリアンが風と一体となり、光を帯び始める。
「リミッター解放、レベル10! メイン・バスブースター・コントロール、オールクリアー! ……無限の力、今ここに解き放ち、次元の彼方へ突き進め! GO、アクセルシンクロッ!」
この瞬間、ライブラリアン、デルタ・イーグルとそれに乗ったブルーノは光に包まれ、その光ごと消え去る。
そして次の瞬間、フリントの背後からブルーノとデルタ・イーグルが姿を現し、続けて光の柱がフリント達の横を掠める。
「カモン! 《TG ブレード・ガンナー》!」
光の柱から姿を現したのは、緑のボディを輝かせる戦闘ロボット。
右腕に装備したエネルギー刃の銃剣を振りかざし、構える。
これこそがブルーノのアクセルシンクロモンスター、”TG ブレード・ガンナー”である。
ATK:3300 レベル10
「(やはりブレード・ガンナー……だが、お前は”ジョニー”ではない……) 罠発動! 《チューナー・キャプチャー》! 相手がシンクロ召喚に成功した時、そのシンクロ素材にしたチューナー1体を相手の墓地から自分の場に特殊召喚する! 《TG ワンダー・マジシャン》を守備表示で特殊召喚!」
フリントの罠からクレーンのアームが飛び出すと、ブルーノの場の地面に穴を開け、そこからワンダー・マジシャンを引っ張り出してフリントの場に引き寄せる。
DEF:0 レベル5
「私のカードを奪い、守りを固める気か? そんな弱腰の戦法では、アクセルシンクロを止める事などできない! バトル! ブレード・ガンナーで転生竜サンサーラを攻撃! 【シュート・ブレード】!」
ブレード・ガンナーが右腕の銃剣をサンサーラに向けると、銃からエネルギー刃を乱射し、サンサーラを破壊する。
「サンサーラの効果発動! 場のこのカードが相手による効果、または戦闘破壊により墓地へ送られた場合、サンサーラ以外の自分または相手の墓地のモンスター1体を特殊召喚する! お前の墓地にある《TG ハイパー・ライブラリアン》を特殊召喚! 〈輪廻転生〉!」
サンサーラがいた場所に巨大なアンクの紋章が現れると、そこからブルーノの墓地にいたライブラリアンが飛び出し、フリントの場に就く。
ATK:2400 レベル5
「私のモンスターを……姑息な! バトル終了! カードを伏せ、ターンエンド――――何だ!?」
ブルーノがエンド宣言をしようとした瞬間、フリントが先程のブルーノの様に加速し、ブルーノの前に出る。
ブルーノの負けじと速度を上げるが、今のフリントに追いつく事は出来なかった。
そして、フリントとイグニッションが風と共に光を帯び始める。
「まさか……馬鹿な!? 何故君がそれを!?」
「……クリア・マインドッ! レベル5《TG ハイパー・ライブラリアン》に、レベル5《TG ワンダー・マジシャン》をチューニング!」
ワンダー・マジシャンが自身を5つの光輪へと変え、ライブラリアンを囲むと、ライブラリアンが風と一体となり、光を帯び始める。
先程のブルーノと、まったく同じ現象であった。
「まさか……まさか!?」
「……アクセルシンクロォォォーーーー!!!」
フリントが叫んだ瞬間、ライブラリアン、イグニッションとそれに乗ったフリントは光に包まれ、その光ごと消え去る。
そして次の瞬間、ブルーノの背後からフリントとイグニッションが姿を現す――――が。
「……何!?」
「……やはり、俺では駄目か……」
光の柱から姿を現したのはブレード・ガンナーではなく、ライブラリアンとワンダー・マジシャン。
クリア・マインドが発動していたにも関わらず、フリントのアクセルシンクロは失敗していたのだ。
LP:4000
SPC:2
手札:2
モンスター
・TG ブレード・ガンナー
魔法・罠
・セット
「フリント……何故君がクリア・マインドを……」
「ブルーノ、済まなかった。決闘を続ける。……俺のターン!」
フリント 手札:3→4
フリント SPC:2→3
ブルーノ SPC:2→3
「《A・ジェネクス・チェンジャー》を召喚!」
フリントの場に、両手足に小さいパラボラアンテナの様な装置を取り付けた子供型のロボットが現れる。
ATK:1200 レベル3
「チェンジャーの効果発動! 1ターンに1度、表側表示で存在するモンスター1体を選択し、属性を1つ宣言する事で、選択したモンスターの属性はエンドフェイズ時まで宣言した属性になる! 選択するのは《TG ワンダー・マジシャン》! 宣言する属性は”闇属性”だ!」
A・ジェネクス・チェンジャーが両手足の装置をワンダー・マジシャンに向け、そこから特殊な電磁波を放つ。
それを受けたワンダー・マジシャンの体から紫のオーラが湧き上がった。
TG ワンダー・マジシャン 光属性→闇属性
「レベル3《A・ジェネクス・チェンジャー》に、レベル5《TG ワンダー・マジシャン》をチューニング!」
ワンダー・マジシャンが自身を5つの光輪へと変え、A・ジェネクス・チェンジャーを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。
「天国と地獄、その間……死者が彷徨う荒野の龍よ! 現世の全てを無に帰せ! シンクロ召喚! 煉獄より現れよ! 《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》!」
光の柱から姿を現したのは、フリントの切り札である”オーガ・ドラグーン”。
ブレード・ガンナーを前にしても臆さず、身が竦むような咆哮を上げる。
ATK:3000 レベル8
「オーガ・ドラグーンか。だが、シンクロの限界を超えたアクセルシンクロモンスターには及ばない!」
「……それはどうかな?」
「何?」
「ライブラリアンの効果により、カードをドロー!」
フリント 手札:3→4
「《Sp-オーバー・ブースト》を発動! SPCを6つ増やす!」
フリント SPC:3→9
「《Sp-ファイナル・アタック》! SPCが5つ以上存在する時、その内の2つを取り除く事で、自分の場のモンスター1体の元々の攻撃力を倍にする! 対象は《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》!」
フリントがSpを発動させると、オーガ・ドラグーンが目を光らせ、口から獄炎を噴出させる。
ATK:3000→6000
「成る程、力押しできたか!」
「バトル! オーガ・ドラグーンでブレード・ガンナーを攻撃! 【
「そんな単純な攻撃が通る程、アクセルシンクロは甘くないぞ! ブレード・ガンナーの効果発動! 相手ターンに1度、自分の墓地に存在するTG1体をゲームから除外する事で、このカードをゲームから除外する! 墓地の《TG サイバー・マジシャン》を除外!」
オーガ・ドラグーンが口に獄炎を溜め、ブレスとして吐き出そうとした瞬間、ブレード・ガンナーは場から姿を消してしまう。
「除外したブレード・ガンナーは次のスタンバイフェイズ時、私の場に特殊召喚される。そして、Sp-ファイナル・アタックの効果を受けたモンスターは直接攻撃できず、エンドフェイズに破壊される。捨て身の攻撃だったようだが、私を倒す事はできなかったな!」
ブルーノは背後で走るフリントに振り向き不敵な笑みを浮かべる。
フリントはそれに対し、同じ様に不敵な笑みを返す。
「速攻魔法《Sp-スター・フォース》を発動! SPCが2つ以上存在する場合、自分の場の表側表示で存在するモンスター1体を除外し、自分の場に存在するもう1体のモンスターの攻撃力を除外したモンスターのレベル×200ポイントアップさせる! 除外するのは《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》! その力を与えるのは《TG ハイパー・ライブラリアン》!」
オーガ・ドラグーンが8つの光輪に姿を変えると、ライブラリアンを囲み、そのまま吸収される。
ATK:2400→4000
「攻撃力4000!? しまった!? オーガ・ドラグーンは囮か!?」
そして、ブルーノの中で更なる疑問が浮かび上がる。
「(ブレード・ガンナーの能力を知らなければ、こんな戦術は取れはしない……フリント、君は何処まで私を知っている!?)」
「ライブラリアンで直接攻撃!」
「永続罠《リミット・リバース》を発動! 墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する! 《TG ストライカー》を特殊召喚!」
ATK:800 レベル2
ライブラリアンが手に持った端末の画面をブルーノに向けると、そこから衝撃波を放つ。
衝撃波は真っ直ぐにブルーノへと迫るが、当たる直前にストライカーが現れ、ブルーノを庇って破壊される。
「ぐあぁぁぁ!?」
ブルーノ LP:4000→800
「く、くそッ! どうしたデルタ・イーグル!?」
デルタ・イーグルは大きくバランスを崩しながらも何とか持ちこたえるが、次の瞬間、小さな爆発音と共に煙を噴出し、動きが止まる。モニターには”OVERHEAT”と表示され、警告音が鳴り響いていた。
「こんな時に……!?」
ディアブロ達との激戦、そして2回に渡るクリア・マインドにより、どうやらデルタ・イーグルは限界を迎えてしまったようだ。
そして、フリントもブルーノの前方で同じ様にイグニッションから煙を噴出させていた。
治安維持局のデュエル・システムは決闘続行不可能と判断し、両者のモニターに”DRAW”と表示した後、デュエルモードを強制終了させる。
「無理をさせ過ぎてしまったな。済まん」
フリントはそう呟いた後、イグニッションから降り、そのままブルーノの元へと歩み寄る。
手には最後の手札、”Sp-エンジェル・バトン”が握られていた。
「Sp……スピード・ワールド2の効果により、私の負けか……」
ブルーノは俯かせていた顔を上げると、サングラスを外してフリントを見上げる。
その顔は、皆がよく知るブルーノの優しげな顔であった。
「使命を果たす為に、不穏分子は取り除かなくてはならない……でも、どうしても僕は君を嫌いになる事ができないんだ。今の決闘で、それがハッキリしたんだ。……ねえフリント、君が何者なのか、どうしても話してはくれないのかい? 僕は……不安でしょうがないんだ」
「……こればかりは、俺の口からは言えない。俺は、お前に気付いてほしいんだ。……だがなブルーノ、これだけは言える」
フリントは手に持ったエンジェル・バトンをブルーノに差し出す。
「俺はフリント。チーム・サティスファクションの一員で、遊星の、ブルーノの、”チーム5D's”の友だ。俺が何者であろうと、これだけは変わらない」
「フリント……そっか」
ブルーノはエンジェル・バトンを受け取ると、デルタ・イーグルの9システムを再起動させる。
どうやらデルタ・イーグルには自動修復装置が備わっているらしく、走れるようにするだけなら短時間で直してしまえるようだ。勿論、今の時代では到底ありえない技術である。
「ありがとうフリント! 君を信じるよ! ……もうすぐ遊星が追いついてくる。僕は行くね」
「ああ。……これからも遊星を頼むぞ」
「うん! ……っと、そうだ。何故君は僕にこのカードを?」
そう言ってブルーノは手渡されたエンジェル・バトンをフリントに向かって掲げる。
「餞別だ。お前はもっと上手くSpを使った方が良い。お前、スピード・ワールド2の効果を使う為だけにSpをデッキに入れているだろう? それも、ほんの数枚だけ」
フリントにそう言われると、ブルーノは気まずそうに視線を逸らす。
「ぼ、僕のデッキとSpって何だか相性が悪い気がするんだよ……それにSPCの計算って何か面倒くさいし……いいじゃないか使わなくっても……」
「……く、くく……アッハッハッハッハッハ!」
ブルーノが呟いた瞬間、フリントは瞠目した後、急に笑い声を上げる。
その顔は本当に愉快そうで、同時に嬉しそうな表情であった。
「な、何だよ……そんなに笑わなくても」
「クックック……いや済まん。ほら遊星が来たぞ。行け」
ブルーノは慌ててサングラスを掛け直すと、エンジェル・バトンをしまい、急いでデルタ・イーグルを走らせ、姿を消す。それと入れ替わるように、遊星がフリントの元へとやってきた。
「フリント……」
先程の決闘の終始を見ていた遊星。複雑そうな眼をフリントに向けていたが、軽く息を吹いた後、微笑を浮かべる。
「……クリア・マインドが使えて、あの男とも何か関係がある。それでもお前が何も話さないのは、何か訳があるからなんだな?」
「ああ……」
「フリント、俺はお前を信じる。お前が誰であろうとも、お前は俺の友だ。……待っているぞ」
「ああ……ありがとう、遊星。時がきたら、必ず話す」
遊星が差し出した右手を握り返し、フリントも微笑を浮かべる。
フリントが何者であろうと、遊星とフリントの友情は揺らがない。3年前のサテライトで、フリントが遊星の為に流した涙を、ぶつけた言葉を、遊星は一時だって忘れた事はないのである。
「帰ろうフリント。きっと皆待っている。イグニッションはブルーノに修理してもらおう」
そう言って遊星はイグニッションと遊星号を牽引する為のロープで繋ぐ。
フリントは遊星号に引かれたイグニッションに乗りながら、シティの青い空を見上げる。
「(……来るなら来い。俺は、最後まで抗い続けてみせるぞ。”ゾーン”……)」
荒野の決闘者も、段々と終わりに近づいてきたって感じですね。
多分70話過ぎるくらいで終わると思います。
ゴールまで頑張って行きたいとおもいます!