遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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第64話 笑顔

「よお、そっちも片付いた様だな」

 

 遊星が元の地点へと戻ると、千切れたワイゼルTに腰掛けている鬼柳が出迎える。余裕そうな態度だが、その体には傷が多く見られ、こちらでも激戦があった事を物語っている。

 

「後はあの女見つけて、こっから出るだけだな。……フリントはどうした?」

 

 辺りを見回す鬼柳。遊星はインフィニティとの戦いと、巨大な浮き島、そしてフリントとの別れを鬼柳に告げる。

 本当は引き止めたかった。必要だろうが無かろうが、使命だろうが何だろうが、“友”と一緒にいたかった。しかし、フリントの眼から、言葉から伝わる“決意”を感じた時、決闘者として、一人の男として、友として、遊星は見送らざるを得なかった。

 

「あいつは、俺達を信じて行った。だから、俺もあいつを信じた。信じて見送った。……俺は、フリントを引き止めるべきだったろうか?」

「……いや、お前が行かせてやろうと思ったのなら、それで良いんじゃねぇか? それに、止められるとも思えないしな。ま、気にいらねぇのはリーダーの俺に黙って行った事だ。WRGPはどうすんだ……」

 

 鬼柳は拗ねた様に眉を顰める。その様子に遊星は微笑を浮かべ、見えないようにしている鬼柳の右腕を指差す。

 

「例えメンバーが揃っていてWRGPが再開しても、その腕では間に合わないだろう? 病み上がりなのに無理をしたな」

「ちっ! バレてたか……最後の最後でこいつが悪あがきしやがって、油断した結果がこれだ。あーあ! 満足出来ねぇよ!」

 

 鬼柳は椅子にしているワイゼルTを踵で蹴りつける。鬼柳の右腕には添え木代わりにした鉄の棒が包帯代わりの布で巻かれていた。これでは当分ライディングどころか、スタンディングも難しいだろう。

 

「ところで鬼柳、ブルーノは?」

「ああ、あいつは――――」

 

鬼柳によると、ブルーノは鬼柳が機皇帝を掃討した後、すぐに眼を覚ましたようだ。

最初は見知らぬ世界に戸惑っていたが、鬼柳から話を聞いて自分にも何か出来ないかと考え、シェリー探索の役を買って出たという。

 

「ブルーノを一人で行かせたのか? 危険だ!」

「心配ねーよ。“騎士”を一人付けたからな」

 

 焦る遊星を呑気に宥める鬼柳。その時、二人の後ろから聞き覚えのある声が上がる。

 

「遊星! 無事だったんだね!」

 

 噂をすれば、ブルーノが腕を高く振りながら駆けて来る。

 

「ブルーノ! お前こそ無事だったか?」

「うん! このモンスターが……って、あれ? いなくなってる……」

 

 キョロキョロと元気な様子で辺りを見回すブルーノを見て、遊星は胸を撫で下ろす。

 

「ブルーノ、フリントがあの“憎悪”は自分とブルーノに向けられていると言っていたが、何か心当たりはあるのか?」

「ああ……ごめんよ遊星。実は気絶する前の事はよく覚えてないんだ。ME社が消えちゃった所とかは覚えているんだけど……」

「そうか……とにかく、今はここから出よう! ブルーノ、シェリーは?」

 

 遊星の問いに、ブルーノは申し訳無さそうに視線を落とす。

 

「それが……何処にもいないんだ。必死に捜したんだけど……」

「何だって……!?」

 

 3人はここにいて、シェリーだけがいない。ここへ来た時間差のせいか、オーガ・ドラグーンの力のせいか、どうやらシェリーだけが何処か違う場所へ飛ばされた様だ。

 

「今度は皆で捜してみよう! きっと何処かにいるはずだ!」

 そう言って遊星が走り出そうとした瞬間、大きな地鳴りがそれを遮る。何事かと3人が辺りを見回すと、インフィニティがあった場所に亀裂が入り、大地が割れ、それが穴となって広がっていくのが見えた。鬼柳が眼を細め、穴の広がりを観察する。

 

「おいおい、こっちまで広がってくるんじゃねぇか? 結構速いぞ!」

 

 ここからインフィニティの要塞まで距離はあるが、広がるスピードが早く、数分でここまで到達しそうな勢いだった。道中でフリントが破壊した機皇帝達の残骸が瓦礫と共にバラバラと穴の中へと落ちていくのが見える。

 

「(インフィニティを破壊したのが原因か? このままではシェリーは? フリントはどうなってしまう……!?)」

 

 この緊急事態にどう対処しようと遊星が思考を巡らせていると、腕の痣が光を放つ。

 

「これは……そうか、今の俺に出来る事はこれしかない!」

 

 遊星は決闘銃を装着して変形させると、デッキから2枚のカードを取り出し、モンスターゾーンに置く。

 

「(これで本当にあれを止められるかは分からない。だが、俺は信じる! 限界を超えた俺の可能性を!)」

 

 目を閉じ、心の中で一本の道を創り出す。その道の上に雫が落ち、風が吹いた瞬間、遊星は目を見開いた。

 

「……クリア・マインド! レベル8シンクロモンスター《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング! ……アクセルシンクロォォォーーーー!!!」

 

 遊星が光の柱に包まれると、その柱の中から光り輝く一体の竜が飛び出す。どこか機械的なフォルムを持つその竜は正しくスターダスト・ドラゴンの進化形態の一つ、遊星が最初に辿り着いた“揺るがなき境地”、“シューティング・スター・ドラゴン”である。

 

「行け! シューティング・スター・ドラゴン!」

 

  シューティング・スター・ドラゴンは上空へ高く舞い上がると、要塞があった位置に向かってブレスを放つ。ブレスが穴の深くへと突き進んで見えなくなると、穴の中から凄まじい閃光が広がる。

 

 

 

 グアアァァァーーーーーー!!!?

 

 

 

 閃光と同時に断末魔が響き渡ると、閃光は穴の中から溢れ、離れにいる遊星まで飲み込んだ。

 

「くうっ!? 皆!?」

 

 遊星が振り返ると、鬼柳とブルーノも同じ様に光へ飲まれていく。光によって視界がホワイトアウトしていく中、遊星の頭に再び声が聞こえてくる。

 

 

 

 ウウウ……アアア………………ロッ……ク………バー……ナー……

 

 

 

「(この……声は……)」

 

 全てを聞き取る前に、遊星の意識は途絶えた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「――星! ――遊星!」

「ぐっ……うう……!」

 

 倒れている遊星が目を覚ますと、自分の横で名を呼ぶ声を聞いた。眼に映るのは照り付ける太陽と、それを反射して輝く金髪。顔を僅かに傾けると、ジャックの姿が映った。

 

「ジャック……」

「おお遊星! 気が付いたか!」

「ここは……?」

「港だ。……遊星、俺達も分からない事だらけなのだ。寝起きで悪いが、話して貰うぞ。……”異世界”で何があったのか。そして……”アレ”が何なのか、お前は分かるか?」

 

 遊星が目を覚ました場所は旧サテライト地区の港。近くには同じ様に倒れている鬼柳とブルーノが、ジャックの後ろには力を使い果たして何時もの姿に戻り、フリントの帽子を抱いて眠っているフレアと、それを介抱しているアキと双子が。そして、この世界の空に開いた巨大な次元の裂け目、そこから覗いて見える”巨大な浮き島”を睨みつけているクロウの姿があった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 鬼柳とフレアを救急車で病院へ送った後、目を覚ましたブルーノと連絡して呼び寄せたイェーガーとミゾグチを交え、遊星達はここまでの出来事を報告し合う。まずは遊星達から報告を行った。

 

「そんな……お嬢様が……!?」

 

 シェリーが異世界へ取り残されてしまった事を聞かされたミゾグチは頭を抱える。

 

「シェリーはまだ、死んだと決まったわけじゃない。もしかしたら、俺達とは別の場所に飛ばされているかもしれない。俺達も、彼女の消息を探る」

「遊星……お願いします」

「ううむ……歴史の改竄……シグナーの力……成る程……」

 

 ミゾグチが遊星の手を握る横で、イェーガーが口元を押さえながら何かを呟いている。

 

「これはやはり……」

「ええ、間違いないでしょう」

 

 イェーガーとミゾグチがお互いに眼を合わせて頷き合う。それを見たジャックが訝しげに二人を見た。

 

「何だ貴様等、何かあるのか?」

「ええ、ですが、それは皆様の話を聞き終えてからにしましょう。それにしても……本当に皆様にはあの空に”島”が浮いているのが見えるというのですか?」

 

 ミゾグチが空を見上げても、青い空と白い雲が見えるだけ。しかし、シグナー達には見える。”破滅へと導く最後のモーメント”が。

 

「見える。あれがこちらに来るのを食い止めなければならない。そう……聞こえたんだ」

 

 遊星は父からの言葉と、”友”の姿を思い出す。

 

「そして……フリントがあそこにいる」

「……奴は、一体何者だ? 遊星」

「ジャック、聞くまでもない。お前の友、俺の友……何があっても必ず戻ってくる俺達の仲間。そうだろう?」

 

 ジャックはサテライトでの一件を思い出す。所詮はサテライト育ちでもない余所者の癖に、何故自分達の問題に首を突っ込んで来るのか。そう思いながらトドメを刺し、シティへと向かったあの日の事を。ジャックだって解り切っている。フリントは自分が“生涯のライバル”と認めた男と同じくらい“絆”を重んじているという事を。

 

「そうか……そうだな。そういう奴だ、あいつは……」

「ねえ遊星……フリントは言ったのね? ”お前が行く所に俺はいる”って……」

 

 アキが尋ねると、遊星は力強く頷く。それを見たアキは安心した様に胸を撫で下ろした。

 

「よかった……もしかしたら、あの時フリントはフレアにも同じ様に言ったのかもしれないわね」

「……今度はお前達の話を聞かせてくれ。フレアは一体どうしたんだ? フリントとも会ったようだが」

 

 今度はフレア達に起こった出来事の報告が行われる。

 

「フレア姉ちゃん、凄かったんだ! 俺達や遊星のに似たドラゴンを出して、機皇帝を3体もやっつけたんだ!」

「成る程、俺がクリア・マインドを進化させた様に、フレアも成長していたんだな。フリントの言った通りだ」

 

 龍亞の熱心な解説を聞き、遊星は納得した様に頷く。だが、すぐに顔を曇らせた。

 

「しかし、お互いの情報を合わせても解らない事は多い。あの島の事、あの異世界の事、そして……量産された機皇帝についてもだ」

 

 分かっているのはイリアステルが操っているわけではないという事と、イリアステルの物とは性能が異なるという事、そしてあの”憎悪”と共に、フリント、フレア、ブルーノに強い反応を示していたという事で、その正体が何なのかは分かっていない。

 

「そ、そうなの? 全然覚えてないや……」

 

 困った様に頭を掻くブルーノ。その横でジャックが鼻で笑う。

 

「フン、敵には変わりあるまい。出てきたら倒すまで!」

「ま、考えても仕方が無ぇか。他も同じだ。この話は一旦置いておこうぜ」

 

 クロウが話を区切ると、イェーガーとミゾグチが進み出る。

 

「では、今度は残されていた私達の番でございますね……最初は訳が解らなかったのですが、今の話を聞いて漸く解りました。ヒッヒ」

「どういう事だよ妖怪ピエロ。もったいぶってないで教えてくれよ」

 

 クロウが詰め寄ろうとすると、イェーガーはそれを手で制止し、軽く咳払いを一つ。どうやら重要な報告のようだ。

 

「――――皆様、”チーム・ニューワールド”をご存知でしょうか?」

「ニューワールド? そんなチームあったか?」

 

 クロウが首を傾げながら皆を見渡すが、全員首を横に振った。

 

「チーム・ニューワールドはWRGPの最有力優勝候補であり、本戦出場チームの一つですよ。ご存知ないのですか? ヒッヒッヒ!」

「はあ? 馬鹿な事言うな! そんな聞いた事もねぇチームが本戦出場なんてあるかよ!」

「ヒッヒッヒ……そうですね。私もそう思いますが……間違っているのは私達なのですよ」

 

 イェーガーが携帯端末を取り出し、録画されたニュースを再生する。そこには空港に立つ”イリアステルの三皇帝”が映し出されていた。

 

「な、何でこいつ等がこんなとこに!?」

「彼等がチーム・ニューワールドですよ。これが”改竄”なのですね」

 

 イェーガーとミゾグチによると、フレア達が次元の裂け目に引き込まれた後、このニュースが大々的に報道されていたという。

先程の歴史改竄はクラークやインフィニティの抹消だけを目的に行った訳ではなく、ゴースト氾濫時にホセが言った“本戦出場”を現実とする為でもあったのだ。

 

「先程、対戦表を確認しましたが、私とお嬢様のチームが抹消され、代わりにこのニューワールドが登録されていました。……信じ難いですが、歴史の改竄という話は本当のようだ……」

「三皇帝が表舞台に出てきた。……フリントが言った通り、戦いは近いようだな」

 

 遊星はそう呟きながら、もう一度“島”を見上げる。すると“島”は徐々に見えなくなり、完全に消え去って青い空だけが残された。

 どうして“島”が見えなくなったのか、何故この様な形でイリアステルが決戦を求めてきたのか、何故歴史改竄で敵対する遊星達を直接始末しないのか、謎は尽きない。遊星達に出来るのは、待ち受ける決戦に備えて己を磨く事だけであった。

 

 

 * * *

 

 

 [WRGPの続行を宣言致します!!!]

 

 

 治安維持局新長官“イェーガー”の宣言がシティに響き渡る。

 イリアステルの三皇帝は歴史改竄により治安維持局長官から人気ライディングチームとなった為、長官の座はダークシグナー事件以降、空席扱いとなっていた。

 シグナー達の力で歴史改竄から逃れたイェーガーは幸いにも長期休暇扱いの行方不明となっていたので治安維持局に戻り、長官へ昇進し、ゴースト氾濫の被害により再開が危ぶまれていたWRGPの続行を推し通した。イリアステルの粛清を恐れて逃亡中のイェーガーだったが、イリアステルから大切な家族を守る為、遊星達にイリアステル討伐を託し、表舞台に姿を晒して戦う事を決意したのである。

 

「最後まで貴方方を見届けられないのが残念です。……御武運を」

 

 ミゾグチはシェリーを捜す為、旅に出た。もしかしたら遊星達の様に元の世界へ飛ばされているかもしれない。今までシェリーと共に巡ってきた世界各地を回るという。

 遊星はミゾグチを送り出した後、夕暮れの中一人遊星号を飛ばしてシティの鉄橋へとやってきていた。彼は考え事をする時、よくここへ訪れる。

夕焼けに染まったシティを見下ろしながら、遊星は夕日を背にして立つフリントの姿を思い浮かべた。

 

「(フリントは、今も戦っているのだろうか……)」

 

 そんな事を考えると、戦いの時が来るのを待つしか出来ない自分の状況に歯痒さを感じる。抑えきれない闘志と焦りが混ざり合う、そんな感覚が遊星の中にあった。

 

「(こんな時は……やはり決闘しかない!)」

 

 遊星は夕日の前で拳を握ると、踵を返して遊星号へと駆け出した。

 

 

* * *

 

 

 既に日は落ち、外灯に明かりが灯る頃、遊星がガレージに帰って来る。何時もならガレージで作業しているブルーノや、2階でくつろいでいるジャックやクロウの姿が見えるのだが、今のガレージ内は暗く、2階にも人気が無い。

 

「(誰もいないのか……?)」

 

 ガレージにある伝言板を見ると、クロウは仕事、ジャックは外出、ブルーノは就寝している事を伝える文が書かれていた。寝るにはまだ早すぎる時間だが、疲れていたのだろう。ブルーノにとって今日は大変な一日であったはずだ。

 

「(……急ぐ必要は無いか。明日頼むことにしよう)」

 

 湧き上がっていた闘志を一旦収め、遊星は自室へと向かう。

 部屋に入ってすぐに横になると、早々に意識が途切れようとしていた。疲れていたのはブルーノだけでない。戦い抜いてきた遊星にも相当な疲労が溜まっていたようだ。

 

「(そう言えば、フレアは今も眠っているのか……早く目を覚ますといいが……)」

 

 

* * *

 

 

「遊星、起きてるかい?」

 

 ぼんやりとした意識の中で、ドアをノックする音が聞こえてくる。それを聞き取った瞬間、遊星は意識を覚醒させ、その音に応えた。

 

「ブルーノ、今起きた。どうやら寝過ごしたようだな」

「君もかい? 僕もだよ。もうとっくに皆起きて動いてる時間さ。よっぽど疲れてたんだね。朝御飯作ったから、身支度をしたらおいでよ」

 

 ブルーノは笑いながらそう言うと、部屋の傍から離れていく。遊星は身支度を素早く済ませると、2階のリビングで遅めの朝食を取る。

 

「ブルーノ、ジャックとクロウは?」

「二人揃って旧サテライト地区へ行ったよ。何でもマーサさんに本戦出場と再開の報告をするんだって。“遊星は疲れてるだろうから俺達だけで行ってくる”って言ってたよ」

「そうか。俺の事なら心配要らない。俺も向かおう。暫くマーサと逢ってなかったからな」

 

 ついでにそこでジャックかクロウと決闘しよう。そう考えた遊星は食器を片付け、ブルーノに留守を任せてマーサハウスへと向かった。

 

 

 

* * *

 

 

 

「一歩遅かったな、遊星」

 

 遊星がマーサハウスに辿り着くと、そこに住み着いている何でも屋“雑賀”が無精髭を撫でながら出迎える。雑賀によると、マーサは子供達とジャックとクロウを連れて遊びに出掛けたらしい。

 

「遠足みたいなものだなあれは。暫く戻ってこないと思うぞ」

「そうか、ありがとう。マーサによろしく頼む」

 

 

 

* * *

 

 

 

「ここも駄目、か……」

 

 あの後、遊星は内なる闘志に背中を押され、決闘の相手を探し回った。最初は同じチームメンバーであるアキを訪ねたが、アカデミアの方で行事があり、その委員を務めているので忙しく、暫くガレージにも顔を出せないという。双子もアキ程ではないがアカデミア関係で手が離せないようで、今日は無理なようだ。

 牛尾、氷室、チーム・ユニコーンのブレオ――――このシティにいる決闘者達に声を掛けて回ったが、中々都合がつかない。

 

「(中途半端な相手では駄目だ。自分の全てをぶつけられる相手でなければ……!)」

 

 諦めずに遊星号を走らせていると、遊星号の通信機が起動し、モニターにブルーノの顔が映る。

 

[ゆ、遊星、大変だよ!]

「どうしたブルーノ、何をそんなに慌てているんだ?」

[ええと……良いニュースだけど、悪くもあって……まずは良いニュースとして、フレアが目を覚ましたって連絡があったんだ]

「それは良いニュースだ。本人の様子は? どこか悪い所は無いか?」

[それが……フレア、脱走したみたいなんだ。病院からそう連絡が来て……起きたって分かったのはそのせい……]

「何だって!? またか!」

 

 以前にもフレアが入院した時、アキから脱走をしたと聞いていた遊星。病院周辺の地図をモニターに表示させる。

 

「あの疲労状態から目を覚ましたばかりだ。少なくとも万全な体調ではないはず。遠くへは行けないはずだ。俺は病院周辺を捜してみる。ブルーノはガレージにいてくれ。もしかすれば、フレアがそこに行くかもしれない」

[分かったよ!]

 

 遊星は通信を切ると、Uターンして病院へと向かった。

 

「(確か鬼柳も同じ病院にいるはずだ。何か知っているといいが……)」

 

 

 

* * *

 

 

 

「おう遊星、待ってたぜ」

 

 遊星が病院に辿り着くと、骨折した右腕を吊った鬼柳が病院の前で出迎える。

 

「鬼柳、フレアが脱走したのは知っているな?」

「ああ知ってるぜ。そのフレアから伝言だ。“公園にて待つ”だそうだ。お前と決闘がしたいんだとよ」

「決闘? いや待て鬼柳! お前はフレアに会ったのか?」

「そりゃそうだ、脱走手伝ったんだぜ?」

「何でそんな事を? 今は安静にしていなければ……」

「そう言われるから強行手段取ったんだろうが。あいつ、もう抑えられないって感じだったぜ。決闘してやれよ」

「フレアが……?」

 

 決闘を求めている。正に今の遊星と同じ気持ちであった。

 

「確かに伝えたぜ? じゃ、今度は俺からだ。遊星、俺はそろそろ“町”に帰ろうと思う」

「“サティスファクションタウン”にか? 随分と急だな?」

「ああ、フリントはいなくなっちまうし、俺の腕はこのザマ。満足出来ねぇが、WRGPは諦めるしかねぇ」

 

 鬼柳は悔しそうに左拳を握り締める。

 

「それに、長く“町”を空け過ぎちまった。爺さんはもう年だし、戻ってやらなきゃな」

 

 ゴースト氾濫後の休止期間によって、本来ならもう優勝が決まっていてもおかしくない程の日数が経っている。鬼柳の予定していた滞在期間はとっくに過ぎてしまっていのだ。無理を言って出てきた以上、町のリーダーとしてこれ以上我侭を言う訳にはいかなかった。

 

「あの“町”は俺の守るべき場所だ。世界に危機が迫っているなら、俺は命をかけて町の皆を守らなきゃならねぇ! ……すまねぇ遊星。本当は一緒に戦いたかったが……こっちは頼んだぞ!」

「ああ! ここまで共に戦ってくれてありがとう、鬼柳!」

 

 

 

* * *

 

 

 

 鬼柳と別れた遊星は遊星号を走らせ、シティ内陸部にある大きな公園へとやって来た。遊星達の間で公園と言えば、シティの街並みを見渡せるこの公園なのである。

 遊星号から降り、決闘盤を分離させて腕に装着すると、公園内を歩いてフレアを捜す。

 

「……フレア」

 

 暫く歩いていると、芝生が広がる公園の広場に、何時ものカウガールスタイルで佇むフレアの姿を見つけた。フレアの様子は何時も通りで、特におかしな様子は見えない。

 

「あ、遊星! 来てくれたのね!」

 

 フレアも遊星に気付き、傍に駆け寄る。腕には決闘盤に変形させた決闘銃を装着していた。

 

「フレア、何故脱走なんかした? 皆も心配するぞ?」

「ごめんなさい……遊星、話は鬼柳から聞いたよ。そっちで起こった事、フリントの事……」

 

 フレアは顔を俯かせた後、真っ直ぐに遊星の目を見つめる。

 

「遊星、もう私の中では答えは出ているの。だから……後は決闘をして固めるだけ! お願い、私と決闘をして!」

「しかし……」

 

 本当は受けてやりたいが、病み上がりのフレアの体を心配し、即答しかねる遊星。そんな遊星の胸を、フレアは力強く叩く。

 

「遊星も最後に聞いたんでしょ!? あのフリントの言葉を!」

「!?」

 

 

 

お前が進む先には、必ず俺がいる。

また逢おう、友よ。お前が行く所に俺はいる。

 

 

 

「だったら私と同じ気持ちのはずでしょ? 止まってられないんでしょ? ねぇ遊星ぇ!」

「……分かった! 来いフレア! 本気で行くぞ!」

 

 遊星が決闘盤を構えると、フレアも決闘盤を構え、遊星から距離を取る。

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

 思いを共にするフレアと遊星の決闘。先攻はフレア。

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:5→6

 

「自分墓地にモンスターが存在しない時、このカードは手札から特殊召喚できる! 来て! 《ガーディアン・エアトス》!」

 

 掲げたカードから光の鳥が舞い上がり、場へと急降下して降り立ち、フレアのエースモンスター“ガーディアン・エアトス”へと姿を変える。

 

 ATK:2500 レベル8

 

「いきなり最上級モンスターか……」

「遊星! 私は最初から全力全開よ! もたもたしてると置いてっちゃうから! モンスターをセット、永続魔法《強欲なカケラ》を発動し、カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:0

モンスター

・ガーディアン・エアトス

・セット

魔法・罠

・強欲なカケラ

・セット

・セット

・セット

 

「俺のターン!」

 

 遊星 手札:5→6

 

「魔法カード《調和の宝札》を発動! 手札の攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨て、デッキから2枚ドロー!」

 

 捨てたカード

 デブリ・ドラゴン

 

遊星 手札:4→6

 

「魔法カード《調律》を発動! デッキからシンクロン1体を手札に加え、シャッフル! その後デッキトップから1枚墓地へ送る! 《ジャンク・シンクロン》を手札に!」

 

 墓地に送られたカード

 チューニング・サポーター

 

「このカードは自分の場にモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚出来る! 《ジャンク・フォアード》を特殊召喚!」

 

遊星の場に白いアーマーを纏った素早い戦士が現れる。

 

ATK:900 レベル3

 

「そしてチューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚! 効果でレベル2以下のモンスターを墓地から守備表示で特殊召喚! 来い、《チューニング・サポーター》!」

 

 続けて遊星の場に現れるジャンク・シンクロンとチューニング・サポーター。これで遊星の場にシンクロ召喚の素材が揃った。

 

ジャンク・シンクロン ATK:1300 レベル3

チューニング・サポーター DEF:300 レベル1

 

「レベル3《ジャンク・フォアード》と、レベル1《チューニング・サポーター》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが背中のリコイルスターターを引っ張り、エンジンを起動させると、3つの光輪へと姿を変える。その光輪が2体のモンスターを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし怒りが、忘我の戦士に鬼神を宿す……光差す道となれ! シンクロ召喚! 吠えろ! 《ジャンク・バーサーカー》!」

 

 柱の中から現れたのは、赤い鎧で身を包み、巨大な斧を担いだ戦士。その顔は正に“鬼”の様。背中の翼を大きく展開しながら怒りの咆哮を上げる。

 

 ATK:2700 レベル7

 

「チューニング・サポーターの効果により1枚ドロー!」

 

 遊星 手札:4→5

 

「(見たこと無いシンクロモンスター……絶対に攻めて来る!)」

「ジャンク・バーサーカーの効果発動! 墓地のジャンクを除外する事で、除外したジャンクの攻撃力分だけ相手モンスター1体の攻撃力を下げる! 墓地の《ジャンク・フォアード》を除外し、《ガーディアン・エアトス》の攻撃力を900下げる! 〈バーサーカー・コーション〉!」

 

 ジャンク・バーサーカーがエアトスに向かって咆哮を上げると、エアトスは気圧されて身を引く。

 

 ATK:2500→1600

 

「エアトス!?」

「この差をどう埋める? バトル! ジャンク・バーサーカーでガーディアン・エアトスを攻撃!」

 

 斧を振り被り、ジャンク・バーサーカーがエアトスへと突進する。

 

「罠カード《聖なるバリア -ミラーフォース-》! 相手の攻撃表示モンスターを全て破壊するよ!」

「手札から速攻魔法《禁じられた聖槍》を発動! ジャンク・バーサーカーは攻撃力が800下がり、魔法・罠の効果を受けなくなる」

「ええっ!? な、なんの! 速攻魔法《天使のサイコロ》発動! 自分の場のモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時までサイコロの目×100ポイントアップさせる! 天使さんお願いしまーす!」

 

 天使族であるエアトスの前に大きなサイコロが現れると、エアトスはそれを手に取り、地面に向かって放り投げる。ジャンク・バーサーカーが手に取った槍でミラーフォースを砕いた瞬間、サイコロが地面で静止した。

 

 出た目:3

 

ガーディアン・エアトス ATK:1600→1900

ジャンク・バーサーカー ATK:2700→1900

 

 ジャンク・バーサーカーは怒りの叫びを、エアトスは光の歌声を放つと、お互いがそれぞれの声に耐え切れず、消滅する。

 

「相打ちか……カードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

LP:4000

手札:1

モンスター

・無し

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「だけど、私はタダでは転ばないよ! 速攻魔法《グリード・グラード》を発動! 相手のシンクロモンスターを破壊したターン、私は2枚ドローする!」

 

 フレア 手札:0→2

 

「そして私のターン!」

 

 フレア 手札:2→3

 

 強欲のカケラ 強欲カウンター:0→1

 

 戦闘こそ相打ちで終わったが、場にモンスターを残し、ターンを迎えたフレアが有利である。それを理解しているフレアは手札を補充し、反撃の準備を進める。

 

「手札の獣族モンスター1体を墓地へ送り、手札から《虚栄の大猿》を特殊召喚! そして効果発動! 特殊召喚の為に墓地へ送った獣族のレベル分だけ、このカードのレベルを上げ下げ出来る! 大猿のレベルを下げるよ!」

 

 墓地に送ったカード

 ダーク砂バク レベル2

 

 フレアの場に虚栄の大猿が現れると、遊星を威嚇しながらその影を二周りほど小さくする。

 

 ATK:1200 レベル5→3

 

「カードを伏せて、セットしておいた《メタモルポット》を反転召喚!」

 

 フレアの場にセットされていたメタモルポットが姿を現すと、ゲラゲラ笑いながら住処である壺を揺らす。

 

 ATK:700 レベル2

 

「メタモルポットのリバース効果発動! お互いに手札を全て捨て、5枚ドロー! 私は手札0だからそのままドローね!」

「俺は1枚捨て、5枚ドロー」

 

 フレア 手札:0→5

 遊星 手札:1→0→5

 

 捨てたカード

 ジャンク・コレクター

 

「どんどん行くよ! レベル2《メタモルポット》に、レベル3《虚栄の大猿》をチューニング!」

 

 虚栄の大猿が自身を3つの光輪へと変えると、メタモルポットを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風と交わりて、彼方へ続く地平を駆けよ! シンクロ召喚! 嘶け! 《サンダー・ユニコーン》!」

 

 柱の中から姿を現したのはサンダー・ユニコーン。場に降りると同時に嘶きを上げ、鋭い角を遊星に対して構える。

 

 ATK:2200 レベル5

 

「魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスター1体を墓地に送り、デッキ・手札からレベル1モンスター1体を特殊召喚する! デッキから《キーマウス》を特殊召喚!」

 

 墓地に送ったカード

 レベル・スティーラー

 

 フレアの場に現れたのは小さな鍵付き鼠“キーマウス”。サンダー・ユニコーンの背に駆け上り、遊星の様子を伺う。

 

 ATK:100 レベル1

 

「魔法カード《武闘円舞》を発動! 自分の場のシンクロモンスター1体と同じ種族、属性、レベル、攻守を持った《ワルツトークン》1体を特殊召喚する!」

 

 続けてフレアの場に白いサンダー・ユニコーンが現れる。

 

 ATK:2200 レベル5

 

「そしてレベル5のサンダー・ユニコーンのレベルを一つ下げて、墓地の《レベル・スティーラー》を特殊召喚!」

 

 サンダー・ユニコーンの体を擦り抜け、巨大な天道虫であるレベル・スティーラーが現れる。

 

サンダー・ユニコーン レベル5→4

レベル・スティーラー ATK:600 レベル1

 

「レベル5《ワルツトークン》と、レベル1《レベル・スティーラー》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」

 

 キーマウスが自身の尻尾を首に下げている錠前に差し込むと、体が光輪へと変わる。光輪はトークンとレベル・スティーラーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風を切り裂き、地平の彼方に蹄を穿て! シンクロ召喚! 轟け! 《ボルテック・バイコーン》!」

 

 柱の中から姿を現したのはボルテック・バイコーン。サンダー・ユニコーンの隣に並び、揃って嘶きを上げる。

 

 ATK:2500 レベル7

 

「シンクロモンスターが2体か……」

「そう、これで攻撃が通れば私の勝ちよ! ……そして、がら空きの場をそのままにしておく遊星じゃないわ」

 

 フレアは不敵な笑みを浮かべると、手札から1枚の魔法を取り出す。

 

「魔法カード《ハーピィの羽根箒》! 相手の場の魔法・罠を全て破壊するよ!」

 

 遊星なら、必ず罠を仕掛けているはず。そう考えたフレアは罠を一掃し、安全に攻撃を通そうとしたのである。そして、フレアの予想通り、遊星は罠を仕掛けていた。

 

「それはどうかな?」

「え?」

 

 今度は遊星が不敵に笑う。

遊星は罠を仕掛けていた。だが、それは攻撃に対してではない。

 

「罠カード《スターライト・ロード》を発動! 自分の場のカードを2枚以上破壊する効果が発動した時、その効果を無効にして破壊する!」

 

 遊星が発動した罠から光が放たれると、フレアの魔法を消滅させてしまう。

 

「ええ~!?」

「そしてエクストラデッキから《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

 光の中からスターダスト・ドラゴンが現れ、フレアの角獣達と対峙する。

 

 ATK:2500 レベル8

 

「むむむ……やられた。流石遊星……でも、私が有利なのは変わらないよ! サンダー・ユニコーンの効果発動! 相手のモンスター1体の攻撃力を、私の場のモンスター1体につき500ポイントダウンさせる! 私の場には2体のモンスター、よって1000ポイント《スターダスト・ドラゴン》の攻撃力を下げるよ! 〈サンダー・スクレイプ〉!」

 

 サンダー・ユニコーンが角から電撃を放ち、感電させてスターダスト・ドラゴンの動きを鈍らせる。

 

 ATK:2500→1500

 

「その代わり、このターンはサンダー・ユニコーンしかバトル出来ないよ! バトル! サンダー・ユニコーンでスターダストを攻撃! 【サンダー・スピアー】!」

 

 サンダー・ユニコーンが飛び上がり、電気を纏わせた角でスターダスト・ドラゴンを斬り裂く。スターダスト・ドラゴンは悲鳴を上げながら倒れ、消滅した。

 

「スターダスト……!」

 

 遊星 LP:4000→3300

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:4000

手札:0

モンスター

・サンダー・ユニコーン

・ボルテック・バイコーン

魔法・罠

・強欲なカケラ

・セット

 

 先手を取ったのはフレア。だが、遊星に動揺は無い。むしろ望んでいた手強い相手との決闘に更なる闘志を燃やす。

 

「エンドフェイズ時に罠カード《トゥルース・リインフォース》を発動! デッキからレベル2以下の戦士族を1体特殊召喚する! チューナーモンスター《ジャンク・アンカー》を特殊召喚!」

 

 遊星の場にジャンクパーツで組み上げられたロボット戦士が現れる。

 

 ATK:0 レベル2

 

「今度はこちらの番だ! 俺のターン!」

 

 遊星 手札:5→6

 

「手札を1枚捨て、ジャンク・アンカーの効果発動! 墓地のジャンク1体を特殊召喚し、このカードと共にシンクロンをチューナーとするシンクロモンスターのシンクロ召喚を行う! 墓地の《ジャンク・コレクター》を特殊召喚!」

 

 捨てたカード

 スピード・ウォリアー

 

 遊星の場にボロのコートを羽織い、背中に大きな鞄を背負った機械戦士が現れる。その手や鞄の中には様々なジャンク品が溢れていた。

 

 ATK:1000 レベル5

 

「レベル5《ジャンク・コレクター》に、レベル2《ジャンク・アンカー》をチューニング!」

 

 ジャンク・アンカーが自身を2つの光輪に姿を変えると、ジャンク・コレクターを囲み、5つの光、そして光の柱へと姿を変える。

 

「集いし思いが、ここに新たな力となる……光差す道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ! 《ニトロ・ウォリアー》!」

 

 柱の中から現れたのはニトロ・ウォリアー。頭と背中の筒から蒸気を噴出し、その逞しい体躯と恐ろしい形相で角獣達を威圧する。

 

 ATK:2800 レベル7

 

「魔法カード《戦士の生還》を発動! 墓地の戦士族1体を手札に加える! 《ジャンク・シンクロン》を手札に、そして召喚! 効果で《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 遊星の場に再びジャンク・シンクロンとチューニング・サポーターが現れる。

 

ジャンク・シンクロン ATK:1300 レベル3

チューニング・サポーター DEF:300 レベル1

 

「永続罠《エンジェル・リフト》を発動! 墓地からレベル2以下のモンスターを特殊召喚! 来い、《スピード・ウォリアー》!」

 

 遊星の場にスピード・ウォリアーが現れ、先の2体と並ぶ。

 

 ATK:900 レベル2

 

「レベル1《チューニング・サポーター》と、レベル2《スピード・ウォリアー》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが再び3つの光輪へと姿を変えると、その光輪が2体のモンスターを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。

 

「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる! 光差す道となれ!  シンクロ召喚! 現れよ、《ジャンク・ガードナー》!」

 

 柱の中から現れたのは、厚い装甲を身に付けた深緑の戦士。その姿は正に“要塞”と言うにふさわしい。

 

 ATK:1400 レベル6

 

「チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー!」

 

 遊星 手札:4→5

 

「(ジャンク・ガードナー……このモンスターも見た事ないなぁ……)」

「ジャンク・ガードナーの効果発動! 1ターンに1度、相手モンスター1体の表示形式を変更出来る! 《ボルテック・バイコーン》を守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ガードナーが跳び上がり、着地して地面を揺らすと、ボルテック・バイコーンがバランスを崩し、守備体勢となってしまう。

 

ATK:2500→DEF:2000

 

「守備表示……あ!?」

「気付いたようだな。行くぞ、バトル! ニトロ・ウォリアーでサンダー・ユニコーンを攻撃! 自分のターン時、自分が魔法を発動した場合、ニトロ・ウォリアーの攻撃力はダメージ計算時に1度だけ1000ポイントアップする! 【ダイナマイト・ナックル】!」

 

 ATK:2800→3800

 

 ニトロ・ウォリアーが両腕を引くと、腕にあるジェットを噴射させ、凄まじい勢いで拳を突き出し突進。サンダー・ユニコーンを殴り飛ばして破壊する。

 

「きゃあ!?」

 

 フレア LP:4000→2400

 

「ニトロ・ウォリアーの効果発動! このカードの攻撃で相手を破壊したダメージ計算後、相手の表側守備表示モンスター1体を攻撃表示に変更し、続けて攻撃出来る! 〈ダイナマイト・インパクト〉!」

 

 ニトロ・ウォリアーがボルテック・バイコーンに向かって光線を放つと、ボルテック・バイコーンが勝手に立ち上がってしまう。

 

 DEF:2000→ATK:2500

 

 ニトロ・ウォリアーが再び構え、同じ様に殴り飛ばしてボルテック・バイコーンを破壊する。

 

「くっ! ボルテック・バイコーンの効果発動! 相手によって破壊された場合、お互いのデッキトップから7枚墓地へ送る!」

 

 フレア LP:2400→2100

 

 遊星は自分のデッキからカードを7枚墓地へ送り、フレアも同じ様に7枚墓地へ送ったのを確認すると、ジャンク・ガードナーに向かって手を翳す。

 

「ジャンク・ガードナーで直接攻撃!」

 

 ジャンク・ガードナーが再び跳び上がり、フレアの目の前で勢いよく着地する。フレアはそれに驚き、尻餅をついて倒れてしまう。

 

「きゃあ!? ……い、いったぁ~……!」

 

 フレア LP:2100→700

 

「大丈夫か? やれるな?」

「勿論!」

 

 そう言ってフレアは元気良く立ち上がる。

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

LP:3300

手札:2

モンスター

・ニトロ・ウォリアー

・ジャンク・ガードナー

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「やっぱり遊星は強いね……でも、私だって止まれない! 負ける訳にはいかないんだから! 私のターン!」

 

 フレア 手札:0→1

 

強欲なカケラ 強欲カウンター:1→2

 

「永続魔法《強欲なカケラ》の効果発動! カウンターが2つ溜まったこのカードを墓地へ送る事で、2枚ドロー!」

 

 フレア 手札:1→3

 

「《ロックキャット》を通常召喚!」

 

 フレアの場に、錠前の付いた首輪を巻いた白猫が現れる。

 

 ATK:1200 レベル3

 

「ロックキャットの効果発動! 召喚に成功した時、墓地からレベル1獣族1体を選択。効果を無効にして、表側守備表示で特殊召喚出来る! チューナーモンスターの《キーマウス》を特殊召喚!」

 

 フレアの場に再びキーマウスが現れると、ロックキャットの錠前に尻尾の鍵を差込み、錠前を外す。錠前が外れたロックキャットは嬉しそうに猫撫で声を上げた。

 

 DEF:100 レベル1

 

「そして場に獣族が2体存在する場合、墓地から《チェーンドッグ》を特殊召喚出来る!」

 

 続けてフレアの場に胴体を鎖で巻かれている犬が現れる。キーマウスがロックキャットと同じ様にチェーンドッグの首元にある錠前を外すと、チェーンドッグは身を捩って器用に鎖を外す。

 

 ATK:1600 レベル4

 

「行くよ! レベル3《ロックキャット》と、レベル4《チェーンドッグ》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」

 

 最後にキーマウスが自身の錠前を外すと、光輪へと姿を変える。光輪はロックキャットとチェーンドッグを囲み、7つの光、そして光の柱へと変える。

 

「荒野を駆ける雷よ、常闇を貫き、閃光の如く大地を駆け抜けよ! シンクロ召喚! 照らせ! 《ライトニング・トライコーン》!」

 

 柱の中から姿を現したのは、ライトニング・トライコーン。場に立つと体中に電気を走らせながら遊星を静かに見据える。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「魔法カード《破天荒な風》と《能力調整》を発動! 破天荒な風の効果でトライコーンの攻撃力を次の自分のスタンバイフェイズまで1000ポイントアップし、能力調整の効果でレベルをエンドフェイズ時まで1つ下げるよ!」

 

 フレアが魔法を発動すると、ライトニング・トライコーンの体を荒々しい風が包み込む。

 

 ATK:2800→3800 レベル8→7

 

「罠カード《裁きの天秤》を発動! 相手の場のカードが自分の手札・場のカードの枚数よりも多い場合、私はその差だけドローする事が出来る! 遊星の場には5枚、私の手札は0で場には2枚、よって3枚ドロー!」

 

 フレア 手札:0→3

 

「手札からモンスター1体を捨てて、魔法カード《ダブルアタック》を発動! 捨てたモンスターのレベルより低いレベルを持つモンスター1体はこのターン、2回攻撃出来る! 捨てたモンスターはレベル8の《ガーディアン・オブ・オーダー》! よってレベル7のトライコーンは2回攻撃が出来るよ! バトル!」

「(2回攻撃……フレアはこのターンで決着を着ける気か)」

 

 このまま遊星のモンスター2体にトライコーンの攻撃が通れば、遊星のLPは0となる。勝利を目前とし、意気揚々とバトルフェイズへと突入するフレアに、遊星は不敵な笑みを浮かべて対峙する。

 

「トライコーンでニトロ・ウォリアーを攻撃!」

「悪いが、そう簡単に突破されてやる訳にはいかないな。ジャンク・ガードナーの効果発動! 《ライトノング・トライコーン》を守備表示に変更する!」

 

 トライコーンが駆け出す瞬間、ジャンク・ガードナーがそれを止める為に再び跳び上がる。

 

「あ、やっぱり相手のターンでも使えるんだ?」

 

 ジャンク・ガードナーが地面を揺さぶろうと着地した瞬間、地面の空間が割れ、出来た空間の隙間にジャンク・ガードナーがはまって動けなくなる。

 

「何!?」

「そう来ると思ってたよ! 墓地から罠カード《ブレイクスルー・スキル》を発動! このカードをゲームから除外する事で、相手モンスター1体の効果をエンドフェイズ時まで無効にする!」

 

 フレアがジャンク・ガードナーを封じると、トライコーンの攻撃が続行される。

 

「やるな。だが、これで終わりじゃない! 永続罠《リミット・リバース》を発動! 墓地の攻撃力1000以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する! 《ガントレット・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

 遊星の場に巨大な右腕に同じく巨大なガントレットを装着した戦士が現れる。その戦士の登場により、トライコーンは動きを止め、一旦フレアの場へと飛び退いた。

 

 ATK:400 レベル3

 

「ガントレット・ウォリアーの効果発動! リリースする事で自分の場の戦士族の攻守をダメージステップ終了時まで500ポイントアップさせる!」

 

 ガントレット・ウォリアーが消滅すると、ニトロ・ウォリアーの右腕とジャンク・ガードナーの装甲にガントレットが装着される。

 

 ニトロ・ウォリアー ATK:2800→3300

 ガントレット・ウォリアー ATK:1400→1900

 

「それじゃトライコーンは止められないよ! バトル続行! ニトロ・ウォリアーを攻撃! 【ギガボルト・チャージ】!」

 

 トライコーンが角に電気を集中させ、ニトロ・ウォリアーへと突撃する。ニトロ・ウォリアーはそれを迎え撃とうと拳を構えた。

 

「ガントレット・ウォリアーを使ったのはダメージを減らして生き延びる為じゃない……迎え撃つ為だ! 罠カード《シンクロ・ストライク》! ニトロ・ウォリアーの攻撃力をそのシンクロ素材1つにつき500ポイントアップ! 迎え撃て! 【ダイナマイト・ナックル】!」

 

 ATK:3300→4300

 

 ニトロ・ウォリアーが突き出した拳と、トライコーンが突き出した角がぶつかり合う。火花を散らす押し合いが続いた後、ニトロ・ウォリアーが押し勝ってトライコーンを跳ね除け、殴りかかる。

 

「墓地から罠カード《スキル・サクセサー》を発動! トライコーンの攻撃力をエンドフェイズ時まで800ポイントアップ!」

「何だと!?」

 

 ATK:3800→4600

 

 トライコーンは拳を紙一重で避けると、角をニトロ・ウォリアーの体に突き立て、電撃を浴びせる。それによりニトロ・ウォリアーは爆散し、消滅する。

 

「ニトロ・ウォリアー……驚いた、まさかここで上を行かれるとは……!」

 

 遊星 LP:3300→3000

 

「今の私なら、何処までだって行ける! 遊星、貴方の上だって! ジャンク・ガードナーに攻撃!」

 

 トライコーンが動けないジャンク・ガードナーに向かって突進すると、角で装甲を貫き、破壊する。

 

「くうぅ!? ……ぐっ!」

 

 遊星 LP:3000→300

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:700

手札:0

モンスター

・ライトニング・トライコーン

魔法・罠

・セット

 

 追い詰められたフレアの猛反撃により立場を入れ替えられた遊星。だが、遊星の顔には今までの不敵なものとは違う、柔らかい笑みが浮かべられていた。

 

「(強くなったな。サテライトで出会った頃とは比べ物にならない。……だが、それは俺も同じだ!) 俺のターン!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「(共に強くなろう。友が待つ先へ辿り着く為に!) 罠カード《無謀な欲張り》を発動! デッキからカードを2枚ドローし、以降のドローフェイズを2回スキップする!」

 

 遊星 手札:3→5

 

「チューナーモンスター《ターボ・シンクロン》を召喚!」

 

 遊星の場にターボ・シンクロンが現れ、自身のエンジンを吹かす。

 

 ATK:100 レベル1

 

「自分の場の魔法・罠1枚を墓地に送る事で、手札から《カード・ブレイカー》を特殊召喚する!」

 

 遊星の場の《リミット・リバース》を突き破り、大きな拳とチェーンが付いた杖を持つ褐色の戦士が現れる。

 

 ATK:100 レベル2

 

「戦士族をリリースする事で、このカードを特殊召喚出来る! カード・ブレイカーをリリースし、現れろ、《ターレット・ウォリアー》!」

 

  戦士族であるカード・ブレイカーが光の中へと消えると、その光の中からターレット・ウォリアーが現れる。

 

 ATK:1200→1300 レベル5

 

「レベル5《ターレット・ウォリアー》に、レベル1《ターボ・シンクロン》をチューニング!」

 

 ターボ・ウォリアーが頭のバイザーを下ろしてからエンジンを再び吹かせると、自身の姿を光輪へと変える。光輪は ターレット・ウォリアーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし絆が、更なる力を紡ぎだす……光さ差す道となれ! シンクロ召喚! 轟け! 《ターボ・ウォリアー》!」

 

 柱の中から現れたのは、赤いボディの車を模した戦士。リーゼントの様な頭部を振り上げ、背中のターボエンジンを吹かせながら構えを取る。

 

 ATK:2500 レベル6

 

「(また見た事の無いシンクロモンスター……遊星は何体くらい持ってるのかな?)」

「魔法カード《武闘円舞》を発動! ターボ・ウォリアーと同じステータスの《ワルツトークン》を特殊召喚!」

 

 遊星の場に白みが掛かったターボ・ウォリアーが現れ、本物と共に並び立つ。

 

 ATK:2500 レベル6

 

「バトル! ターボ・ウォリアーでライトニング・トライコーンを攻撃! この攻撃宣言時、ターボ・ウォリアーの効果発動! レベル6以上のシンクロモンスターを攻撃する場合、そのモンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで半分にする! 〈ハイレート・パワー〉!」

 

 ターボ・シンクロンが腕から黒いオーラを放つと、それがトライコーンに纏わり付き、動きを鈍くする。

 

 ATK:3800→1900

 

「トライコーン!?」

「行け、ターボ・ウォリアー! 【アクセル・スラッシュ】!」

 

 ターボ・ウォリアーがトライコーンとの間合いを一気に詰めると、首に向かって鋭い突きを放ち、破壊する。

 

「きゃあ!? ……くっ! トライコーンの効果発動! 相手によって破壊された場合、墓地から《サンダー・ユニコーン》か《ボルテック・バイコーン》を特殊召喚する! 《ボルテック・バイコーン》を特殊召喚!」

 

 フレア LP:700→100

 

 ATK:2500 レベル7

 

「ならばワルツトークンで攻撃!」

 

 フレアの場にバイコーンが現れた瞬間、ワルツトークンがバイコーンに突進して激突し、共に破壊される。

 

「ボルテック・バイコーンの効果でお互いにデッキから7枚墓地へ!」

「カードを伏せ、ターンエンド!」

 

LP:300

手札:0

モンスター

・ターボ・ウォリアー

魔法・罠

・セット

 

「フレア、俺は全力を出し切った。お前も全てをぶつけて来い!」

「(全て……か、よーし!)私のターン!」

 

 フレア 手札:0→1

 

「……フフフ」

 

 ドローしたカードを確認すると、フレアは静かな笑いを洩らす。それは何処か”もう一人のフレア”を思わせる笑い方であった。

 

「(雰囲気が……変わった?)」

「魔法カード《死者蘇生》を発動。《ライトニング・トライコーン》を特殊召喚するわ」

 

 フレアの場に再びライトニング・トライコーンが現れる。

 

 ATK:2800 レベル8

 

「(ここに来て“死者蘇生”とは……そして“ライトニング・トライコーン”)」

 

 遊星のカードの引きも相当なものだが、フレアはその上を行くかもしれない。反撃が行われる状況に遊星は冷や汗を流すが、その目は決して諦めてはいなかった。

 

「バトル、ライトニング・トライコーンで攻撃」

「罠カード《シンクロン・リフレクト》! 自分のシンクロモンスターに対する攻撃を無効にし、相手モンスター1体を破壊する!」

 

 トライコーンがターボ・ウォリアーに突進するが、光の障壁に阻まれて激突し、そのまま破壊されてしまう。何とか攻撃を凌いだ遊星だが、伏せカードはこれが最後であり、フレアにはまだ攻撃出来る手段が残されていた。

 

「(ターボ・ウォリアーを破壊されれば、俺にはもう打つ手が無い。どうする……)」

「ライトニング・トライコーンの効果発動。墓地の《ボルテック・バイコーン》を特殊召喚」

 

 3度目となるボルテック・バイコーンの特殊召喚。嘶きを上げた後、ターボ・ウォリアーに向かって突進する。

 

 ATK:2500 レベル7

 

「ボルテック・バイコーンでターボ・ウォリアーを攻撃」

「(墓地から特殊召喚……墓地!?)」

 

 遊星は自分の決闘盤を見る。目の前の決闘に熱くなり過ぎて見えていなかった。“あの”カードが墓地へ送られていた事を。バイコーンの角とターボ・ウォリアーの突きが場の中央でぶつかり合った瞬間、遊星はそれを墓地から取り出す。

 

「これが最後の希望! 墓地の《シールド・ウォリアー》の効果発動! ダメージ計算時にこのカードを除外する事で、この戦闘では俺のモンスターは戦闘破壊されない!」

 

 ぶつかり合う2体の前にシールド・ウォリアーが現れると、手に持った槍で文字通り“横槍”を入れる。それに怯んだバイコーンの隙を突き、ターボ・ウォリアーがアクセル・スラッシュでバイコーンを破壊する。

 

「これで俺のターボ・ウォリアーは生き残り、お前のモンスターは全滅した。さあ、どうする?」

「フフフ……」

 

 返り討ちにされたフレアだが、遊星に返したのは余裕な笑い。フレアは遊星に対してデッキを軽く叩いて見せる。

 

「倒せなかったのは残念だけど、本当の狙いはこっち。ボルテック・バイコーンの効果発動。お互いにデッキから7枚を墓地へ送る」

「7枚……そうか、そういう事か」

 

 遊星のデッキも、フレアのデッキも、既に7枚を切っている。お互いに残ったカードを墓地へ送ると、決闘盤のデッキホルダーの底が顕になる。デッキ0枚。“デッキ破壊”の完了である。

 この時、フレアが墓地に送ったカードの中に《ダンディライオン》があった様で、フレアの場に2体の《綿毛トークン》が2体現れる。

 

DEF:0 レベル1

DEF:0 レベル1

 

「私もデッキ0だけど、関係無いわ。だって次のターンは遊星、貴方だもの」

 

 怪しく笑うフレア。遊星はその様子に違和感を感じつつも、真顔のままで込み上げる笑いを抑えるのに必死であった。

 

「あまり気持ちの良い勝ち方じゃないけれど、これも立派な戦術……と言う訳で! 私の勝ち! ターンエンドー!」

 

LP:100

手札:0

モンスター

・綿毛トークン

・綿毛トークン

魔法・罠

・セット

 

最後の最後に元の様子に戻るフレア。顔は子供っぽい満面の笑顔。今まで勝てなかった遊星に勝った事が余程嬉しいのだろう。

遊星はとうとう堪え切れず、噴出して笑い出した。

 

「フ、フッフ……ハッハッハッハ!」

 

 遊星にしては珍しい爽やかな笑顔。これにはフレアも呆気に取られる。

 

「な、どうしたの遊星……そんなに爽やカニ……」

「ハッハッハ……いや、済まない。だがなフレア、思い出してみろ」

「何を?」

「俺が前のターンに何を発動していたか」

「え? 武闘円舞? 後は……あーーーーっ!!?」

 

 フレアは遊星が発動していたカードを思い出し、跳び上がる。遊星だけではなく、このフレアも決闘に熱中するあまり、忘れていた。あるカードの存在を――――

 

 

 

罠カード《無謀な欲張り》を発動! デッキからカードを2枚ドローし、以降のドローフェイズを2回スキップする!

 

 

 

「《無謀な欲張り》……遊星、ドローしないじゃん……」

「そういう訳だ。俺のターン」

 

 遊星 手札:0→0

 

 あまりにも、あまりにも間抜けな結末。フレアはあまりの事にうろたえ、オロオロと場とデッキを見回している。その姿を見た遊星はサテライト時代を思い出し、フッと笑いを漏らした。

 

「(成長しても、変わらないものはあるんだな) バトル! ターボ・ウォリアーで綿毛トークンを攻撃!」

「あうう……うう~……きゃあ!?」

 

 ターボ・ウォリアーの一撃が綿毛トークン1体を吹き飛ばすと、その衝撃でフレアを現実へと引き戻す。

 

「さあ、もう俺に出来る事は無い。ターンを終了させよう」

「あ、待って待って! 今どうしようか考えてるところだから!」

 

 フレアは何も考えていなかった訳ではない。デッキ破壊を狙おうと考えた先程の自分のターン。遊星ならば、どんな状況でも覆してしまうかもしれない。だから1ターンくらいは延命の手段をとるかもしれない――――その時の為の伏せカード。だが、遊星が延命したのは2ターン。

 

「(うう……こんなに上手く行かなかったの初めて……諦めちゃ駄目! きっと、きっと何か――――)」

「ターンエンド!」

「ぎゃーーーー!?」

 

LP:300

手札:0

モンスター

・ターボ・ウォリアー

魔法・罠

・無し

 

 来る、来る、回って来る。ターンが、敗北のターンが。考えが纏まらず、フレアは自棄気味に伏せカードを発動させる。

 

「エンドフェイズ時に速攻魔法《リバースソウル》を発動! 墓地からリバースモンスター1体を選択し、デッキトップに戻す! え~~~……あ、《メタモルポット》をデッキトップに!」

 

 そして回って来たフレアのターン。

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:0→1

 

「デッキ切れを回避したか。驚いたな」

「だったらもっと驚いた顔したら!? モンスターをセットしてターンエンド!」

 

LP:100

手札:0

モンスター

・綿毛トークン

・セット(メタモルポット)

魔法・罠

・無し

 

「俺のターンだな」

 

 遊星 手札:0→0

 

「ヘイ遊星バッチコーイ! セットモンスター! セットモンスター!」

 

 必死なフレア。それもそのはず、セットされているリバースモンスターのメタモルポットは強制的に手札を捨てさせ、5枚ドローさせる効果を持つ。これが発動すればお互いにドローが出来ず、決闘は引き分けとなるのだ。

 

「バトル! ターボ・ウォリアーで綿毛トークンを攻撃!」

「ああん……」

 

 遊星の無慈悲な攻撃。ターボ・ウォリアーはセットモンスターを無視して最後の綿毛トークンを吹き飛ばした。

 

「悪いが、真剣勝負だからな」

「ハイ……」

「ターンエンド」

「私のターン……カード無いよ……ドロー出来ない……」

 

 ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 フレアは勢い良く芝生の上に仰向けになって寝転ぶ。

 

「はー……負けちゃった」

「良い決闘だった。だが、お互いに反省が残る決闘でもあったな」

 

 遊星が寝転がっているフレアに近寄り、上から見下ろす。

 

「うん。でも……何だかすっきりしたね! こんな決闘久しぶりかも!」

「そうだな。あんなに笑ったのは、サテライト以来だ」

 

 本当に、こんな決闘は久しぶりかもしれない。遊星もフレアも、ここ最近は傷付け、傷付けられて、泣いたり、怒ったり、そんな決闘ばかりだった。今の決闘の様な、皆で笑い合いながらやる、当たり前の決闘が好きなのに。

 

「……遊星は、もう大丈夫?」

「ああ」

「そっか、私もオッケー! じゃ、帰ろうか! 皆のところに!」

「……フレア、一つ聞かせてくれ」

 

 フレアは起き上がると、公園の出口へと歩き始めた。遊星はふと疑問を思い出し、フレアを呼び止める。

 

「決闘中、お前の様子が変わった時があったが……あれは一体何だったんだ?」

「あれ? あれは遊星が全てを出し切って来いって言うから、“全て”を出しただけだよ?」

「全て……あれもお前の“力”……なのか?」

「うん、“もう一人の私”」

 

 そう言って、フレアは再び歩き始める。

 

「(上手く出来たかな? 私、忘れてないからね)」

 

 

 

* * *

 

 

 

「こんにちはー!」

 

数日後、無事退院したフレアがガレージを訪れる。ガレージには作業をしている遊星と、遊びに来ていた双子がいた。

 

「フレア姉ちゃんこんちはー! ……あれ? その帽子!」

 

 龍亜がフレアを見て頭を指差す。そこに立っていたフレアは何時もの姿とは少し違っていた。

服装こそは何時ものカウガールスタイルだが、後頭部の高い位置で縛っていた後ろ髪の位置を下げ、少しサイズの大きいカウボーイハットを被っていた。

 

「うん、フリントの帽子。昔被った時はぶかぶか過ぎて被れなかったけど、今は何とか。……どうかな」

 

 フレアは照れくさそうに帽子を取ると、下に隠れていた金髪と背中に流れる後ろ髪がガレージ内に差し込む日の光を反射しながら揺れる。

 

「似合ってるよ! かっこいい!」

「うん、私もそう思う! その髪型もお姉さんっぽくていいかも!」

「えへへ……そうかな?」

 

 双子に褒められ、赤くなった顔の目から下を帽子で隠す。

 そんな風に3人ではしゃいでいると、作業を中断させた遊星が近付いて来た。

 

「フレア、前に話した件はどうだ?」

「うん、決めたよ。私……チーム・5D'sのピットに入る」

「フレア姉ちゃんが!? じゃ、じゃあフレア姉ちゃんもうちで決闘してくれるの?」

 

 龍亜が期待の眼差しを向けるが、フレアは首を振る。

 

「入るのはピットメンバーとして。選手ではないわ」

「ええー!? フレア姉ちゃんが入れば百人力なのに、どうして?」

「私は、“サティスファクション”の選手だから……大会が終わるまでは、そうでいたいの」

 

 シティに来てから、ずっと夢焦がれてきたWRGP。その棄権は、誰よりもフレアが一番辛かったはず。フリントと鬼柳と一緒に戦ってきたチームにも深い愛着があった。だから、例え棄権しても最後まで“チーム・サティスファクション”の決闘者でありたい。それがフレアの希望であった。

 

「……だけど、このまま外で見ているだけじゃ駄目なの。フリントの所に行くには、皆と一緒にいなくちゃ行けない。何となくだけど、そう思ったの」

 

 フレアは再び帽子を被る。

 

「WRGP本戦……例え決闘が出来なくても、私には何か“役割”がある気がする。成長した私にしか出来ない、何か……フリントが私を置いて行ったのは、きっとそれが理由だから」

「……共に戦おう、フレア。俺達チーム・5D'sは、“チーム・サティスファクション”のフレアを歓迎する」

 

 遊星が5D'sのユニフォームの上着を差し出すと、フレアはそれを受け取って羽織る。

 

「うん。必ず、イリアステルを倒そう。そして……こんな時だけど、必ず優勝して……素敵な大会にしようね!」

 

 決して忘れない。笑った事も、泣いた事も、怒った事も、恥ずかしかった事も、全て覚えておこう。全てを胸に、こうして笑えたのなら、それはきっと“成長”の証なのだから――――

 




今回の決闘の最後はすんません(汗)
再開してからずっとシリアスが続いていたからつい……
もうクライマックス近いけど、ちょくちょくこういうノリをやっていきたいなぁ。
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