「すまねぇ遊星……」
「アンタのせいじゃない。皆が皆、フレアを助けようと必死だった。だが、届かなかった……」
ディアブロ達との一戦後、項垂れたままスタジアムに戻ってきた牛尾を遊星が出迎えていた。
ジャックとクロウは途中で逃げ出したスタンディングタイプのディアブロを追い、イェーガーと深影は部下を引き連れて牛尾が倒したライディングタイプの回収、アキと双子は夜遅いという事でブルーノがそれぞれの家へと送り返している。このスタジアムにいるのは、遊星と牛尾、そして加勢にやってきていた”チーム・ラグナロク”の3人だけであった。
「まさか、決闘巫女を直接狙ってくるとはな……」
「まあ戦ったから解るけど、知ってりゃ誰だってほっとかねぇよ。色んな意味でな」
「我々をも一人で打倒すフレア・ヴィルアースが敵の手に渡った。これは不味い状況ではないのか? 遊星……」
ハラルドが遊星に視線を向けると、遊星は迷いの無い瞳をハラルドに返す。
「フレアの為に俺達が出来る事、それは明日の決勝戦を全力で戦い抜く事だ」
「ほう」
軽く驚いたという風に口を開くハラルドだが、その瞳は”解っていたよ”という風に細められる。
「何を遊星!? そんな事している間にフレアに何かあったら――――」
牛尾が飛びかかるような勢いで遊星に詰め寄ると、牛尾の前に3枚のカードを提示する。
「な、何だこりゃ? 暗号?」
「その通り、さっきこのスタジアムで拾ったものだ」
それぞれのカードの表にはなにやら落書きの様な物が書かれていた。
「これはフレアが落としていったものに違いない」
「こ、これが何だってんだ?」
「これはサテライト時代、俺が仲間との間で使っていた暗号だ」
当時のチーム・サティスファクションには敵が多く、襲撃や情報漏れを防ぐ為にこういった手段で連絡を取り合うことがあった。
「その時の暗号カードを昔フレアに分けた事があったんだが、まさか今でも持ち歩いているとはな」
「暗号ってこたぁ……それには何て?」
「これら3枚の暗号が示す意味……”遠征”、”留守”、”待機”」
「ど、どういう意味だ?」
”ちょっと決闘しにいくのでここはよろしくね”
「――――アイツらしく、サティスファクション流に言えば、こうだ」
「な、何ィ~?」
どんな内容かと思えば、まるで緊張感も悲壮感もない置手紙に、牛尾は脱力する。
「どうやら慌てふためいていたのは俺達だけらしい。フレアはフリントの元へと手っ取り早く向かえるチャンスだと思ったのかもな」
「! そ、そうか……俺には見えないが、あそこにはフリントが……いるんだったな?」
牛尾はフレアが消えていった空を見上げる。遊星も同じ方を見上げ見えている”島”を睨みつけながら拳を握った。
「フレアは迷わなかった。一足早く戦いに挑むつもりだろう。ならば俺たちも迷っている暇は無い」
遊星は遊星号の元へと歩き出す。
「(心配が無いと言えば嘘になる。だがフレアやフリントが無事でも、俺達が止まっては意味が無い。必ず勝つ! 勝って、友との約束を果たす! 待っていろ、イリアステル!)」
* * *
どれ位の時間が経ったのだろう。島の上にある城に入ってから、まったく景色が見えなくなってしまった。皆は無事であろうか。牛尾は無事に切り抜けただろうか。そんな事を考えながら、フレアは静かに待つ。
ガゴン、という音と同時に、自分が立っている面が地面に着いた事を確信する。真っ暗な闇の中に光が差し込む。それと同時に、フレアは銃を抜いて構えた。
「あ? 何やってんの? 決闘盤をそんな風に構えても弾が出るわけ無いじゃん」
「……わかってますぅー。まったくノリが解ってないんだから……」
決闘銃を下ろし拗ねた様に頬を膨らませるフレアに、出迎えたルチアーノが不機嫌そうに顔を歪めた。
「ハァ!? 何で僕が悪いみたいになってんだよ? やっぱりこの女訳解らないよ!」
「お前ら、無駄口を叩くんじゃない。……女、着いてきてもらおう。逆らうと……」
プラシドが剣を抜き、フレアの喉元に近づける――――が、フレアは臆さずに剣の刃を掴む。
「人にソリッド・ビジョンでもない刃物を向けないで! 常識でしょ! 言われなくても着いてってあげるわよ! それだけの理由があるんでしょ? こんな夜中に誘拐騒ぎなんて起こして!」
予想外の反撃だったのか、プラシドは目を見開いた後、ルチアーノと同様に不快を顔に表し、剣を収める。フレアは元から気の強い所があり、これまでの経験から成長しているというのもあるだろうが、この肝の太さはおそらく”祖父”の血が関係しているかもしれない。本人はそんなつもりは毛頭ないだろうが、もし”祖父”の跡を継げばストークや鬼柳よりも見事な”ボス”となるのではないか。
* * *
「よく来たフレア・ヴィルアース」
フレアが連れて来られたのは、宙に浮く透明なパネルの上。そこは3つの塔に囲まれており、それぞれの頂上を見渡せる。それぞれの塔の頂上には玉座が置かれており、フレアから見て正面の玉座にはホセ、左後ろの玉座にはプラシド、右後ろの玉座にはルチアーノが腰掛ける。足元に視線を向けると、パネル越しに巨大なネオ童実野シティの電子地図と、その上に描かれた未完成のサーキットが表示されていた。
そう、ここはアーククレイドル内部にあるイリアステル三皇帝の部屋。彼等は何時もここでネオ童実野シティを監視していたのだ。
「一体何なんです? わざわざこんな事しないで、遊星達と明日正々堂々決闘すればいいのに」
「無論そのつもりだ。お前をここへ連れて来たのは我等が創造主”ゾーン”がお前に興味を示したからだ」
「ゾーン?」
この時、一瞬だけフレアの脳裏にゾーンの姿が映る。アンモナイトの様なマシン、その中から覗く青い瞳――――
「これからお前を創造主の下へと送ろうと思っていたが……創造主は今、アーククレイドル出現の最終調整を行っている為、お前に会う事は出来ぬとおっしゃられた」
「何だと!? ならば創造主は何故俺に命じた!?」
これはプラシドも予期せぬ事態だったらしく、驚きながら玉座から立ち上がる。
「ヒャーハッハッハッハ! プラシド、からかわれたんじゃないの~?」
「黙れ! くそっ! 何の為に……」
「あの~……なら私帰っていいですか? 私も皆の所で決勝戦見たいんですけど……」
フレアがおずおずと切り出すと、ホセがゆっくりと首を振った。
「ならん。お前が異分子なのは変わらぬ事実。放って置く事は出来ぬ。プラシドも全くの無駄足ではなかったという事だな」
「……じゃあ、あれですか? そのゾーンっていう人の用事が終わるまで私を、このまま捕まえておくっていう……」
「そういう事になる」
「(やっぱりそうくるか~……)」
戦う覚悟でここへ来たフレアだが、出来ることなら皆の所へ戻って一緒に戦いたい。出来ることならフリントを捜したい。一番最悪なのは何も出来ないように拘束される事である。自棄気味に強行突破を考え始めたフレアに、ホセが語り掛ける。
「フレア・ヴィルアース、創造主と会わせる前に、我々もお前に聞きたい事がある」
「……何です?」
「お前は何者だ? フリントとはどの様な関係を持つ?」
「私はフレア・ヴィルアース。シグナー達の仲間の決闘者。フリントは私の家族で、”大事な人”です」
”大事な人”とフレアが口にした瞬間、三皇帝が同時に顔を引き攣らせる。先程の様な不快さからのものではなく、腫れ物に触れられた様な、チクリとした痛みを受けた反応であった。
「……そうか、ならばもう用は無い。我々も明日に向けての調整がある。お前はこの城で大人しくしていて貰うぞ」
「待って! 私も聞きたい事が――――」
問答無用、聞く耳持たず。フレアが質問しようとした瞬間、転送装置によってフレアは強制退出させられ、気付けばあからさまな”牢屋”の中に入れられていた。未来の建造物故か周りは明るく、牢屋自体も小奇麗なものであった。
「もうー! 何なのよー!」
フレアは壁に背を付けると、そのままどっかりと座り、膝を抱えた。
「これからどうなるんだろう……どうしてるかな……皆……フリント……ふあ~……眠くなってきちゃった……」
本当に肝の太い娘フレア。直前まで抱えていた不安な気持ちはどこへやら、敵地の中で堂々と眠りに就くのであった。
……おい、聞こえているか? 聞こえているならこのまま聞け。
今の時刻は……元の世界なら日が昇り始めた頃だろう。まだ決勝戦の開幕まで時間がある。その間暇だろう? アーククレイドルの中枢に向かえ。そこに俺はいる。敵地で眠りこけるその肝っ玉があれば余裕だろう。……待っているぞ、寝坊助。
「――――……ムッカーーーー!!! おのれフリント!」
フレアは”夢”から目を覚まし突然飛び起きると、牢屋の出入口となっている格子の辺りを探り始める。
「馬鹿にして! しかも何? 何でここに来てる事知ってんの? どっかで見てるんでしょコラァ!」
フレアが上を見上げて叫ぶが、返答も無く、監視カメラも見当たらない。
「悪趣味! ヘンターイ!」
フレアは思いつく罵詈雑言を並べながら、手持ちの白紙カードを適当に格子の隙間などに差し込む。すると、何故か格子のロックが外れ、格子が開く。
「解ってんなら……逢いに来てくれたっていいじゃない……!」
フレアは牢屋から飛び出し、通路を駆ける。
「……今のなし。約束だったもんね、フリント」
”お前が進む先には、必ず俺がいる。……迷わず進め。辿り着いたその時が、再会の時だ。”
「……行ってやろうじゃない、首洗って待ってなさいフリント!」
* * *
それから、フレアは長いことアーククレイドル内部を彷徨う。行けど行けども通路ばかり、中々部屋に辿り着かない。
「もう~どこ~……あ!」
ようやく見えた到着点。どうやら広い空間が広がっているらしく、やっと出逢えた変化に喜んだフレアは敵地だという事を忘れて駆け出し、広場に飛び出す。
「やったー! フリン――――んん?」
辿り着いたのはやはり広い空間。中央には巨大な機械装置が置かれており、それ以外には何も無い無駄な空間――――と、思いきや、大型テレビと施設などでよく見る休憩用ソファーが装置から少し離れた位置に置かれており、ソファーの上には人が寝転びながらテレビを見ていた。
「うーん、この時代のテレビも中々のものじゃないか。後は可愛い娘と決闘が出来れば完璧なんだけどなぁ」
「(何あれ……人?)」
ソファーの人物はフレアに気付いていないようだったので、フレアは恐る恐るソファーへと近づき、少し離れた位置から顔を覗き込む。
少しだけ筋肉質で大き目の体格、ジャケットにジーンズ、先程聞いた声の質とこれらの情報から性別はまず男で間違いないだろう。髪は金髪、あまり手入れはしないのか所々に寝癖が見え、だらしなく伸びた後髪をゴムで縛っていた。顔は美青年と言っていいだろう。もう少し身だしなみに気を使えば世の女性達はこぞって彼に嬌声を向けるかもしれない。
「(男の人だ。この人もイリアステル?)」
それにしては何て緊張感の無い人だろう、と自分の事を棚に上げて思うフレア。男は未だにテレビに夢中でフレアに気付かない。
「次何見ようかなぁ?」
「(悪者には見えないなぁ……声掛けてみようかな?)」
フレアが意を決して声を掛けようとした瞬間、視線をテレビに奪われる。
「お、決闘の大会か、いきなり決勝戦とはなぁ……」
「あー!? 決勝戦始まっちゃった!?」
「うおっ!? だ、誰?」
テレビに映っていたのはWRGP決勝戦の生中継。丁度MCが両チームの紹介を終え、決闘がスタートしようとしている所であった。
「(確か決勝戦の開始が午後からだったから……ええ~!? 私どんだけ寝て彷徨ってたのぉ~!?)」
落胆しつつもテレビから視線を外さないフレア。両チームのファースト・ホイーラーはジャックとルチアーノ。カウントが進み、今、決闘開始の合図が――――
「はいここまで~」
「ああッーーーー!!?」
無情にもブラックアウトするテレビ画面。フレアは後ろでリモコンを構えて立っている青年に怨めしい視線を向けると、青年は無邪気な笑みを返した。
「君がフレアか! 話は聞いているよ。可愛いなぁ~」
「ちょっと! 戻してよ! 始まるとこだったじゃない!」
「こんな可愛い娘と仲良くなってやがるんだから、隅におけないよな~」
「何言ってんの? テレビ見てないんなら見させてよ!」
フレアがリモコンを奪おうと飛びかかるも、青年はそれをひょいと避ける。
「まあまあ、君がここに来たのはこれ見るためじゃないだろう? 思い出してみなよ」
「あ……そ、そっか、フリント捜さなきゃ……」
「フリント? ……あーあーフリント、そっか、そいつを捜してるんだろ? ならテレビ見てる場合じゃないな~」
青年にそう言われ、落ち着きを取り戻すフレア。しかしまだ諦められないのか、テレビをちらちらと見返す。
「まあまあ、これから俺の手伝いしてくれたらフリントの居場所を案内してやるし、テレビも見させてやるからさ」
「む~……ところで、貴方は誰ですか?」
フレアは青年へと向き直る。青年の瞳はフレアと同じ綺麗な青色で、何故だかとても印象に残った。
「俺かい? 俺はここの部屋の管理をしている者だよ。ま、さっきそうなったんだけどね」
「さっきって……イリアステルの仲間じゃないんですか?」
「違うよ。敵でもないと思うけど……見つかったら偉い目に遭うかもなぁ」
「な、何それ……?」
青年の話はまったく意味が解らない。焦りと苛立ちのせいか、もしかしたら自分を意味の解らない会話で足止めする為の罠なのではないかとフレアは思えてきた。
「とにかく、俺は君の敵じゃないのは確かさ。むしろ君のボーイフレンドに立候補したいくらいだけど、どう?」
「……怪しい」
フレアは青年から距離を取り、腰の決闘銃に手を掛ける。それを見た青年は慌てて腕を振った。
「うわぁ~!? でゅ、決闘銃!? 待て待て撃つな! 冗談、冗談だって! それ痛いんだ! 止めて!」
「? ……あの、この銃は決闘盤で、弾は出ませんよ? 私のはですけど……」
「へ? あ、ああ……そうか、よく見たら小さいなそれ……は、はは」
青年はばつが悪そうに笑うと、咳払いをしてからフレアと向き合う。
「と、とにかく、協力して欲しい事があるんだよ! こうして自由に動けるのはイリアステルがいない今だけだし、これは君やフリントにとっても関係のある事なんだ」
「そう言われても……あの、テレビ見れないならフリント捜しに行くんで」
フレアがまた青年から距離を取ろうとすると、青年は慌ててそれを詰める。
「あー解った! 解った解った! そういや俺まだ名乗ってなかったな。失礼したよ。名乗りもしない奴なんてそりゃ信用出来ないよ!」
「いや、そう言う問題じゃ……」
「よーし、それじゃ自己紹介だ。ちゃんと胸に刻んでおいてくれよ!」
青年は一歩下がった後、礼をしてから口を開く。
「俺の名は”バーナード”、”バーナード・ブレン”! 君と同じ決闘者さ! よろしくな!」
その名を聞いた瞬間、フレアは青い瞳を見開く。
「バーナード!? バーナードって……」
忘れたくても忘れられない、異次元で聞いた”声”。憎悪に溢れたその声が呼び続けていた名前、それが”バーナード”――――
「お、ちょっとは興味持ってくれたみたいだね! 因みにバーナードって言っても犬じゃないよ、ハッハ!」
「……あ、あの、貴方って――――」
「おっと、俺ともっと親密に……もとい、俺の事を知りたかったら俺のお願いに”YES”と答える事だ!」
青年”バーナード”の出した条件に、フレアは黙って頷く。本当は今すぐにでも遊星達の状況確認かフリント捜索を行いたいところではあるが、何故かフレアは名前しか知らないこの青年を放って置いてはいけない、素通りしてはいけないと強く感じた。
「よし、それじゃさっそくお願いしよう! お願いというのはこれだ!」
青年が部屋の中央にある機械装置を指差す。
「あの装置を動かしたいんだけど、ロックが掛かっていてね。中々外れないんだ」
「ロックって……私、あんまり機械強くないですけど」
「問題ない。ここのロックって言うのは決闘で開くんだ。セキュリティプログラム相手に勝てば開く」
バーナードはフレアを連れて装置の前まで来ると、フレアを装置に備え付けられている決闘フィールドの前に立たせる。
「本当だ、決闘フィールド」
「しかし、これがまた曲者で……ある条件下での”
「制限? あれこれこーして勝てとか、何々を使うな、みたいなですか?」
「その通り。そしてその制限というのが……”魔法・罠カードのデッキ投入禁止”、つまり”フルモンデッキ”で決闘しなければならない」
フルモン――――”フルモンスター”の略称であり、魔法・罠を一切デッキに投入せず、40枚全てをモンスターで構成するという非常に思い切った戦術。全てをモンスターで構成する為強力で使いやすい魔法・罠の恩恵を受けられず、対応力と巻き返すための機動力に欠ける。しかし全てがモンスターである為戦力が途切れ難く、粘り強い戦い方が可能であり、展開の仕方によっては相手を圧倒し続ける事も出来る。デッキへの相当な自信が必要となる上級者向けの構築と言えよう。
「女の子の前で情けない話だが、俺はフルモンなんて生まれてこの方使った事なくて、プログラム相手に2連敗を期してしまった。3回連続で負けたらセキュリティが働いて当分の間はこの装置にアクセス出来なくなってしまう……そこで、君に”代打ち”って奴を頼みたいんだ」
「成る程……フルモンかぁー……出来ない事はないかも」
「本当か!? ちょっと待っててくれ!」
バーナードはソファーへと駆け寄ると、その下から大き目の箱とカードバインダーを取り出し、フレアに向かって手招きする。
「何ですかそれ?」
「俺のコレクションモンスター編さ。手持ちのカードだけじゃ足りないだろ? ここにあるの好きに使ってくれて構わないから、何としてでもロックを解除してくれ!」
* * *
「う~ん……何入れようかな~…」
床にカードを広げて真剣に悩むフレア。それの後ろでバーナードがふとテレビに視線を向ける。
「よ~く考えてくれた方が俺もありがたいが、早くしないと試合が終わっちゃうんじゃないか?」
「あ~そうだった! え~とえ~と……」
「(ありゃ……急かしちゃったな……ちゃんと作って貰って勝ってくれないと困るんだけどなぁ)」
やっちゃったという表情で頭を掻くバーナード。しかし、慌て出したフレアは急に落ち着きを取り戻すと、カードの束を持ってバーナードの前に差し出す。
「バーナードさんってこの中で好きなカードとか苦手なカードってあります?」
「何だ突然……この中で……ん~これが好き、これが苦手かな?」
バーナードは束から2枚のカードを抜き出す。
「成る程、女の子のカードが好きって言うのは解る気がしますけど、こっちは何でです?」
フレアはバーナードが苦手だと言って抜き出したカードを手に取る。
「何でって……これが好きな一般Dホイーラーはいないと思うけどな」
「あ、バーナードさんDホイーラーなんですか?」
「ああ。こいつ関係でいい思いではないな。まあお世話になった事はないが。カード自体を悪く言うつもりはないが、何でこのカードが紛れてたんだ……?」
「そうなんですか……じゃ、使わせて頂きますね」
フレアはバーナードが抜き出したカードの何枚かを構築中のデッキに投入する。
「え!? そんな決め方でいいのか!?」
「案外、こういうのが勝利の”きっかけ”になったりするんですよ」
* * *
「……よし、完成!」
デッキをフルモンへと改造し終えたフレアは装置の前に立ち、決闘フィールドにデッキを置く。
「横にゴーグルがあるだろう? それでソリッド・ビジョンが見れるからな」
バーナードに言われてフレアはゴーグルを装着する。すると目の前には広い決闘場が広がり、対戦相手の立ち位置には大きな和風の門がそびえ立っていた。
「(感覚は遊星が作ったシミュレーターに似てるかも……勝って、あの門を開けって事かな?)」
〔決闘を開始します。よろしいですか?〕
装置から聞こえてくるアナウンス。機械音声だが非情に流暢で聞き取りやすい。これも未来のテクノロジーなのかとフレアは感心しつつ、頷いた。バーナードはソファーに座るとテレビの電源をつけ、画面にフレアが見ている決闘場を表示させる。この時、バーナードの軽い顔付きが一瞬だけ鋭くなる。
「(フレア・ヴィルアース。君の実力、見させてもらおうか)」
「 デュエル!!! 」
〔 デュエル開始 〕
〔先攻は私から、カードドロー〕
プログラム 手札:5→6
〔自身の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する事が出来ます。《超重武者ビッグワラ-G》を特殊召喚〕
プログラムの場に一足の草鞋を組み合わせた様な姿をしたロボットが現れる。
ATK:800 レベル5
「”超重武者”? 見た事ないカード……」
「(そりゃそうだ。”こっちの時代”のカードだからな)」
テレビから聞こえてくるフレアの呟きを聞いたバーナードはフフっと笑い、側に置いておいた通信機を手に取る。
「フレアちゃん、言い忘れてたけど、相手も同じ”フルモン”だ。俺はそんな余裕なかったけど、相手の決闘を参考にして上手くフルモンを操ってくれ!」
「相手も? 了解!」
〔ビッグワラ-Gは機械族モンスターのアドバンス召喚を行う場合、1体で2体分のリリース素材となる事が出来ます。ビッグワラ-Gをリリースし、《超重武者ビッグベン-K》をアドバンス召喚〕
ビッグワラ-Gが光の中へと消えると、その光の中から刺又を手に持った巨大ロボットが現れる。
ATK:1000→DEF:3500 レベル8
〔ビッグベン-Kは召喚・特殊召喚に成功した時、表示形式が変更されます。ターンエンド〕
LP:4000
手札:4
モンスター
・超重武者ビッグベン-K
魔法・罠
・無し
「い、いきなり最上級モンスターで守備力3500!? 魔法・罠無しで突破出来るかな……私のターン!」
フレア 手札:5→6
「……大丈夫、やりようはある! 手札から《ガーディアン・エアトス》を特殊召喚!」
フレアが掲げたカードから光の鳥が飛び出すと、舞い上がって急降下。場に降り立ち、女神へと姿を変える。
ATK:2500 レベル8
「エアトスは墓地にモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚出来るよ! そして手札から《星見獣ガリス》の効果発動! デッキトップを墓地へ送り、それがモンスターだった場合、そのレベル×200のダメージを与え、ガリスを場に特殊召喚する! デッキトップは――――」
墓地へ送ったカード
メタル化寄生生物-ルナタイト レベル7
「やった! レベルは7! よって1400のダメージを与え、ガリスを特殊召喚!」
ATK:800 レベル3
フレアの場にガリスが現れると、空から隕石を7つ落とし、門にぶつける。
プログラム LP:4000→2600
「いいカードだ。フルモンだから絶対成功するじゃないか。あれは俺のカードじゃないし、最初のエアトスというモンスターからして、もしかしたら元々モンスターに軸を置いたデッキの使い手だったか?」
「そうですね! だからこの決闘、わりと自信ありました! チューナーモンスター《ドリル・シンクロン》を召喚!」
続けてフレアの場にドリル・シンクロンが現れる。
ATK:800 レベル3
「レベル3《星見獣ガリス》に、レベル3《ドリル・シンクロン》をチューニング!」
ドリル・シンクロンが自身を3つの光輪へと変えると、ガリスを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野に生まれし螺旋の槍よ! 大地を砕き、天穹を貫け! シンクロ召喚!」
光の柱から姿を現したのは大地を貫く螺旋の戦士。決闘竜達を手に入れても、永遠に変わる事の無いフレアのお気に入り、シンクロ・エース――――
「破砕の戦士! 《ドリル・ウォリアー》!」
ATK:2400 レベル6
「おおシンクロ召喚! いいなぁ! やっぱり決闘にはこれがなくちゃ!」
フレアのシンクロ召喚にバーナードが興奮して拍手を送る。
「ドリル・ウォリアーの効果発動! 攻撃力を半分にして相手に直接攻撃できる! 〈ドリル・シュート〉!」
ATK:2400→1200
ドリル・ウォリアーが地面に向かってドリルを切り離して放つと、ドリルは地面の下を進み、ビッグベン-Kの後ろから飛び出して門に突き刺さる。
プログラム LP:2600→1400
「よし! バトルフェイズを終了してドリル・ウォリアーの効果発動! 手札を1枚捨てる事で、このカードを次の自分のスタンバイフェイズまで除外する!」
フレアが手札を捨てるのと同時に、ドリル・ウォリアーがドリルで地面の中へと潜っていく。
「ターンエンド!」
LP:4000
手札:2
モンスター
・ガーディアン・エアトス
魔法・罠
・無し
「(よーし、ビッグベン-Kは守備力凄いけど、攻撃力はたった1000、ガーディアン・エアトスがいれば手出しはできないもんね! このままドリル・ウォリアーで押せれば……)」
「(……ってフレアちゃんは考えてそうだけど、それが通る程この”超重武者”は甘くないんだよな)」
〔私のターン〕
プログラム 手札:4→5
「《超重武者グロウ-V》を召喚」
プログラムの場に大きな両手を持った鎧武者のロボットが現れる。
ATK:100 レベル3
「自身の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを手札から特殊召喚できます。チューナーモンスター《超重武者ホラガ-E》を特殊召喚」
続けて足軽の様な姿をした子供の様に小さいロボットが現れる。
ATK:300 レベル2
〔レベル3《超重武者グロウ-V》に、レベル2《超重武者ホラガ-E》をチューニング〕
ホラガ-Eが手にしたホラ貝を吹き、自身を2つの光輪へと変えると、グロウ-Vを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。
〔――――シンクロ召喚〕
光の柱から姿を現したのは、二刀のブレードを手に持った侍のロボット。場に降り立つと二刀を振り回し、見事な剣さばきを見せた後、静かに構える。
〔《超重剣聖ムサ-C》〕
DEF:2300 レベル5
「向こうもシンクロ!? でもビッグベン-Kと同じタイプのモンスターみたいだけど……」
〔ムサ-Cの効果発動。シンクロ召喚に成功した時、自分の墓地から機械族モンスター1体を手札に加えます。《超重武者ビッグワラ-G》を手札に加え、そのモンスター効果により特殊召喚します〕
プログラムの場に再びビッグワラ-Gが現れる。
ATK:800 レベル5
〔バトルフェイズへと移行します。ビッグベン-Kは守備表示のまま攻撃を行う事ができ、その際は守備力を攻撃力の値として扱います〕
「ええー!? 何それー!?」
〔ビッグベン-Kでガーディアン・エアトスを攻撃〕
ビッグベン-Kが拳を地面に叩き付けると、衝撃波が地を走り、上空へ逃げようとしたエアトスを捉えて破壊する。
「きゃあ!? エアトス!? そんな……これじゃ実質攻撃力3500だよ」
フレア LP:4000→3000
呆然とビッグベン-Kを見上げるフレア。そして、その横のムサ-Cも動き始める。
「(ビッグベン-Kと同じタイプのモンスター……い、いけない!?)」
〔ムサ-Cは守備表示のまま攻撃を行え、その際は守備力の値を攻撃力として扱います。プレイヤーを直接攻撃〕
ムサ-Cが背中のジェットを噴射させ、フレアに向かって斬り掛かる。
「ぼ、墓地の《クリアクリボー》の効果発動! 相手の直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外する事で自分はデッキから1枚ドロー!」
フレア 手札:2→3
「引いたカードがモンスターの場合、自分の場に特殊召喚でき、攻撃対象をそのモンスターへと移し変える! 私が引いたカードは《聖鳥クレイン》! 守備表示で特殊召喚!」
フレアの場に聖鳥クレインが現れると、飛びまわってムサ-Cの気を引き、フレアから気を逸らさせる。
DEF:400 レベル4
「クレインの特殊召喚に成功した時、1枚ドローする!」
フレア 手札:2→3
フレアを狙いから逸らさせるという役目を果たしたクレインは、無残にもムサ-Cの二刀によって斬り捨てられてしまう。
〔ビッグワラ-Gで直接攻撃〕
ビッグワラ-Gは目から光線を放ち、フレアを攻撃する。
「くっ!? ううん……」
フレア LP:3000→2200
〔ターンエンド〕
LP:1400
手札:4
モンスター
・超重武者ビッグベン-K
・超重剣聖ムサ-C
・超重武者ビッグワラ-G
魔法・罠
・無し
「(び、びっくりした! まさか守備表示で攻撃してくるなんて……でも、凌げたから問題なし!) 私のターン!」
フレア 手札:3→4
「スタンバイフェイズ時、《ドリル・ウォリアー》帰還!」
フレアの場の地面を砕き、その下からドリル・ウォリアーが飛び出す。
ATK:2400 レベル6
「ドリル・ウォリアーの効果発動! 自分の効果で帰還した時、墓地のモンスター1体を手札に加える! 《星見獣ガリス》を手札に!」
フレア 手札:4→5
「よーし、手札の《星見獣ガリス》の効果発動! デッキトップは―――」
相手のLPは残り1400。レベル7以上のモンスターが出ればフレアの勝利である。
墓地に送ったカード
ボルト・ヘッジホッグ レベル2
「うーん……でもいっか! レベルは2! 400ポイントのダメージを与えてガリスを守備表示で特殊召喚!」
DEF:800 レベル3
フレアの場にガリスが現れ、2つの隕石を門へと落とす。
プログラム LP:1400→1000
「ドリル・ウォリアーの効果発動! 攻撃力を半分にして直接攻撃するよ! 〈ドリル・シュート〉!」
ATK:2400→1200
ドリル・ウォリアーが再びドリルを地面に向かって放つ。
〔相手の直接攻撃宣言時、墓地から《超重武者グロウ-V》を除外して効果を発動。デッキトップをめくり、それが”超重武者”だった場合、手札に加え、攻撃モンスターの攻撃力を0にします〕
めくったカード
超重武者装留シャイン・クロー
「デッキトップのカードは《超重武者装留シャイン・クロー》。よってこのカードを手札に加え、《ドリル・ウォリアー》の攻撃力を0にします」
プログラム 手札:4→5
ATK:1200→0
「ええ~!?」
ドリルは先程の様にビッグベン-Kを潜り抜けて飛び出すが、門に傷を付けるどころかあっさりと弾き返されてしまう。
モンスター同士の戦闘では何が起こるか解らないと考えたフレアはビッグワラ-Gを狙わずに直接門を狙ったのだが、それが裏目に出てしまった。
「(そんなぁ……これで決着だと思ったのに)」
想定外の事態に混乱する頭を切り替え、フレアは急いで先の手を考え出す。
「まずは……バトルフェイズを終了し、ドリル・ウォリアーの効果発動! 手札を1枚捨てて除外!」
攻撃力が無くなり、壁としても機能しなくなったドリル・ウォリアーを場に残しておく意味は無い。攻撃力を戻すためにドリル・ウォリアーを除外した後、フレアは唯一場に残ったガリスを見る。
「(……お願い、防いで!) モンスターをセット! ターンエンド!」
LP:2200
手札:3
モンスター
・星見獣ガリス
・セット
魔法・罠
・無し
〔私のターン〕
プログラム 手札:5→6
〔《超重武者ホラガ-E》を特殊召喚〕
プログラムの場に新たなホラガ-Eが現れる。
ATK:300 レベル2
〔このカードは場・手札から”超重武者”1体に装備させる事ができます。《超重武者装留シャイン・クロー》を《超重武者ホラガ-E》に装備。シャイン・クローの効果を発動。このカードの効果で装備されている場合、1ターンに1度だけ装備を解除して場に特殊召喚する事が出来ます〕
場に現れたのは鋭い鉤爪が付いた腕の形をした超重武者の強化ユニット。1度ホラガ-Eをその手で掴んだ後、離れて場に留まる。
ATK:500 レベル2
〔レベル5《超重武者ビッグワラ-G》と、レベル2《超重武者装留シャイン・クロー》に、レベル2《超重武者ホラガ-E》をチューニング〕
ホラガ-Eが自身を2つの光輪へと変えると、ビッグワラ-Gとシャイン・クローを囲み、7つの光、そして光の柱へと変える。
〔シンクロ召喚〕
光の柱から姿を現したのは、杖を持った半人半狐の白いロボット。下半身である狐体の臀部に付いた9本の管から噴出されて揺らめく9つの炎はまるで”狐の尾”のように美しかった。
〔《超重魔獣キュウ-B》〕
DEF:2500 レベル9
「今度はレベル9のシンクロ……!?」
〔自分の墓地に魔法・罠が存在しない場合、キュウ-Bの守備力は相手の場の特殊召喚されたモンスター1体につき、900ポイントアップします〕
超重魔獣キュウ-B DEF:2500→3400
〔手札から《超重武者装留ダブル・ホーン》の効果発動。場の”超重武者”1体に手札のこのカードを装備。このカードを装備したモンスターはバトルフェイズ時に2度攻撃を行う事ができます。自身の効果により”超重武者”として扱われる《超重魔獣キュウ-B》に装備〕
キュウ-Bの頭部に、厳つい角が付けられた兜が被せられる。
「バトルフェイズに移行します。キュウ-Bは守備表示のまま攻撃を行え、その際は守備力の値を攻撃力として扱います。セットモンスターを攻撃」
キュウ-Bは杖の先端をセットモンスターへと向けると、そこから炎を放って焼き尽くす。
セットモンスター:マシュマカロン DEF:200
「セットモンスターは《マシュマカロン》! マシュマカロンは破壊された時、1ターンに1度だけ自分のデッキ・手札・墓地からこのカード以外の《マシュマカロン》を2体まで選んで特殊召喚できる!」
フレアの場のセットモンスターが焼き尽くされると、その焼け跡から目と口が付いたピンク色の巨大なマカロンの形をしたマシュマロが2体現れる。
DEF:200 レベル1
DEF:200 レベル1
「(よし! これで2回攻撃でも防ぎきれる! 後はドリル・ウォリアーで――――)」
フレアが超重武者達に対して構えながら思考を巡らせていると、まだ攻撃の途中であったはずのキュウ-Bが動きを止める。
「あ、あれ?」
〔バトルフェイズを終了。メインフェイズ2へ移行します。自分の墓地に魔法・罠が存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚出来ます。《超重武者ヒキャ-Q》を特殊召喚〕
プログラムの場に荷を括りつけた棒を担いだ赤いロボットが現れる。
ATK:1200 レベル5
〔ヒキャ-Qの効果発動。自分の墓地に魔法・罠が存在しない場合、このカードをリリースする事で手札のモンスター2体を相手の場に守備表示で特殊召喚します。手札から《超重武者カブー10》と《超重武者装留ブレイク・アーマー》を相手プレイヤーの場に特殊召喚〕
フレアの場に兜を被り、大金槌を持った武者ロボットと、怪しい気を纏った鎧が現れる。
超重武者カブー10 DEF:2000 レベル4
超重武者装留ブレイク・アーマー DEF:500 レベル1
「ど、どうして私の場に!?」
「(……やられた)」
プログラムは攻撃してくるどころか、フレアの場にモンスターを増やしてきた。そう攻撃だと構えていたフレアは呆気に取られていたが、バーナードは気付いた様子で、深く溜息を付いた。
〔そして特殊召喚した数だけデッキからカードをドローします〕
プログラム 手札:0→2
「(手札交換の為? それにしてはリスキーな……)」
〔ターンエンド〕
LP:1000
手札:2
モンスター
・超重武者ビッグベン-K
・超重剣聖ムサ-C
・超重魔獣キュウ-B
魔法・罠
・超重武者装留ダブル・ホーン(超重魔獣キュウ-B)
「私のターン!」
フレア 手札:3→4
「ここで――――あっ!?」
フレアはここで気付く。超重武者が仕掛けてきた罠に。
「モ、モンスターゾーンの空きが無い……”ドリル・ウォリアー”が戻って来れない……」
超重武者の攻守一体の壁。それを崩すのは難しく、そんな状況でも唯一壁をすり抜けて攻撃出来る”ドリル・ウォリアー”こそが勝利の鍵であった。しかし、それを放って置く超重武者達ではなく、相手にモンスターを押し付けるという強引な戦術でドリル・ウォリアーを地面の下に閉じ込めてしまったのである。ドリル・ウォリアーがいなければ高威力の直接攻撃は出来ず、ガリスを使いまわす事だって出来ない。LPやカードアドバンテージこそフレアの方が上だが、最高戦術を取り上げられ、キーカードが無い今、フレアにはもう追い詰められていくしか道が残されていないのだ。
「(直接攻撃、バーンという裏道を潰された今、残るは正攻法のビートダウンだが……高守備力が何体も守備で並んでちゃどうしようもない。魔法も罠も無いから強化も除去もし難いし……厳しいな~後少しなのにっ!)」
バーナードは悔しそうにテレビ画面を睨む。
「(……諦めちゃ駄目! 何か、何か手を――――)」
フレアは自分の場を確認する。あるのはガリス、2体のマシュマカロン、そして押し付けられた”超重武者”2体。
「(超重武者……超重武者装留……確か) 《超重武者装留ブレイク・アーマー》を《超重武者カブー10》に装備!」
フレアが号令を掛けると、ブレイク・アーマーはカブー10に取り付き、力を吸い上げる。
超重武者カブー10 DEF:2000→1000
「あ、あれ? 守備力が下がっちゃった……」
「いや、それでいい! ブレイク・アーマーは守備力を1000下げる代わりに戦闘破壊耐性を装備モンスターに与える! それで暫く持たせるんだ!」
「は、はい! 私は……モンスターをセットし、ターンエンド!」
LP:2200
手札:3
モンスター
・星見獣ガリス
・マシュマカロン
・マシュマカロン
・超重武者カブー10
・セット
魔法・罠
・超重武者装留ブレイク・アーマー(超重武者カブー10)
〔私のターン〕
プログラム 手札:2→3
〔チューナーモンスター《超重武者ツヅ-3》を召喚。そして《超重武者ホラガ-E》を特殊召喚します〕
プログラムの場に機械で作られた鼓と3体目のホラガ-Eが姿を現す。
超重武者ツヅ-3 ATK:300 レベル1
超重武者ホラガ-E ATK:300 レベル2
〔レベル5《超重剣聖ムサ-C》に、レベル1《超重武者ツヅ-3》をチューニング〕
ツヅ-3が自身を光輪へと変えると、ムサ-Cを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。
〔シンクロ召喚〕
光の柱の中から現れたのは、武者ではなく赤鬼のロボット。大きな金棒と角の生えた頭を振り回し、ロボットとは思えないような咆哮を上げる。
〔《超重神鬼シュテンドウ-G》〕
DEF:2500 レベル6
〔自分の墓地に魔法・罠が存在しない場合、シュテンドウ-Gのモンスター効果を発動出来ます。シンクロ召喚に成功した時、相手の場の魔法・罠を全て破壊します〕
シュテンドウ-Gがカブー10を睨みつけ咆哮を上げると、カブー10に取り付いていたブレイク・アーマーが粉々に砕け散る。
DEF:1000→2000
「ブレイク・アーマー!?」
「くそ、そっちの壁は中々砕けないくせに、こっちのは易々砕いて来るんだあいつら。フレアちゃん気をつけろ!」
バーナードの言葉でフレアは身構えるも、超重武者達はまだ動かない。
〔レベル8《超重武者ビッグベン-K》に、レベル2《超重武者ホラガ-E》をチューニング〕
ホラガ-Eが自身を2つの光輪に変えると、ビッグベン-Kを囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。
〔シンクロ召喚〕
光の柱の中から現れたのは、ビッグベン-K以上の気を放つ荒武者。どっしりとその場に座り込み、手に持った巨大な長刀を立てる。
〔《超重荒神スサノ-O》〕
DEF:3800 レベル10
〔手札から《超重武者装留ダブル・ホーン》を自身の効果により”超重武者”として扱われる《超重荒神スサノ-O》に装備〕
先程のキュウ-Bの様に、ダブル・ホーンがスサノ-Oに装備される。
「これでスサノ-Oも2回攻撃……合計5回!」
〔バトルフェイズに移行します。キュウ-Bでカブー10、マシュマカロンを攻撃〕
キュウ-Bが杖から炎を放ち、カブー10と2対目のマシュマカロンを焼き払う。
キュウ-B DEF:6100→4300
〔スサノ-Oは守備表示のまま攻撃を行う事ができ、その際は守備力を攻撃力の値として扱います。マシュマカロンを攻撃〕
スサノ-Oは長刀を一閃させ、マシュマカロンを粉々に吹き飛ばす。
キュウ-B DEF:4300→3400
「(そうだろうと思ったから一々言わなくてもいいよっ!) 破壊されたマシュマカロンの効果発動! 墓地から《マシュマカロン》2体を特殊召喚!」
フレアの場に再びマシュマカロンが現れる。
DEF:100 レベル1
DEF:100 レベル1
キュウ-B DEF:3400→5200
〔スサノ-Oでマシュマカロンを攻撃〕
長刀一閃。マシュマカロン粉砕。同じ光景が繰り返される。
キュウ-B DEF:5200→4300
〔シュテンドウ-Gは守備表示のまま攻撃を行う事ができ、その際は守備力を攻撃力の値として扱います。マシュマカロンを攻撃〕
シュテンドウ-Gがマシュマカロンに向かって金棒の先端を向けると、金棒の先が射出され、マシュマカロンを押し潰す。
キュウ-B DEF:4300→3400
〔ターンエンド〕
LP:1000
手札:0
モンスター
・超重魔獣キュウ-B
・超重神鬼シュテンドウ-G
・超重荒神スサノ-O
魔法・罠
・超重武者装留ダブル・ホーン(超重魔獣キュウ-B)
・超重武者装留ダブル・ホーン(超重荒神スサノ-O)
「ふう、思ったよりは余裕があったな。でもフレアちゃん、相手のこの勢いじゃ、もう1ターンの猶予もないぞ」
「解ってます! 私のターン!」
フレア 手札:3→4
「(チューナーが来ない……)」
流石に組んだばかりのデッキでは感覚が掴み難いのか、中々チューナーを呼び込めないフレア。少ない構築時間、フルモンという初めてのデッキ構成というのもあって、デッキそのもののバランスが歪になっているのかもしれない。
「モンスターをセットしてターンエンド!」
LP:2200
手札:3
モンスター
・星見獣ガリス
・セット
・セット
魔法・罠
・なし
〔私のターン〕
プログラム 手札:0→1
〔チューナーモンスター《超重武者タマ-C》を召喚〕
プログラムの場に球体に短い手足が付いた様な足軽ロボットが現れる。潜水服にも見えなくないその機体を揺すりながら、手に持った槍でフレアの場のガリスを指し示す。
ARK:100 レベル2
〔タマ-Cのモンスター効果を発動。自分の場が”超重武者”のみで墓地に魔法・罠が存在しない場合、相手のモンスター1体とこのカードを墓地へ送り、そのレベル合計と同じレベルの”超重武者”として扱われるシンクロモンスター1体をシンクロ召喚します。このカードと相手の場の《星見獣ガリス》を墓地へ〕
タマ-Cが自身を2つの光輪へと変えると、ガリスを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。
「ガリス!?」
〔シンクロ召喚。《超重剣聖ムサ-C》〕
光の柱からムサ-Cが現われ、二刀を構える。
DEF:2300 レベル5
〔ムサ-Cのモンスター効果を発動。墓地から《超重武者装留シャイン・クロー》を手札に加え、ムサ-Cに装備。シャイン・クローを装備したモンスターは攻守が500ポイントアップし、戦闘で破壊されなくなります〕
場にシャイン・クローが現れると、ムサ-Cは右手のブレードを収め、シャイン・クローを装着する。
DEF:2300→2800
〔バトルフェイズに移行します。スサノ-Oでセットモンスターを攻撃〕
スサノ-Oが長刀を一閃させ、セットモンスターの1体を破壊する。
「戦闘破壊された《マッド・リローダー》の効果発動! 自分の手札を2枚墓地へ送り、2枚ドロー!」
フレア 手札:3→1→3
フレアは手札から2枚墓地へ送り、デッキトップから2枚引き抜くと、フレアの体が光に包まれ、場に2つの巨大な綿毛が舞い降りる。
「この時墓地に送った《髑髏顔 天道虫》と《ダンディライオン》の効果発動! LPを1000ポイント回復し、私の場に《綿毛トークン》2体を特殊召喚!」
フレア LP:2200→3200
DEF:0 レベル1
DEF:0 レベル1
〔キュウ-Bで綿毛トークン2体を攻撃〕
キュウ-Bが炎で綿毛トークンを焼き尽くす。
〔シュテンドウ-Gでセットモンスターを攻撃〕
シュテンドウ-Gがセットモンスターに向かって金棒を向けると、金棒の先端を射出し、セットモンスターを粉砕する。
「こっちも《マッド・リローダー》! 自分の手札を2枚墓地へ送り、2枚ドロー!」
フレア 手札:3→1→3
〔スサノ-Oで直接攻撃〕
「墓地へ送った《ネクロ・ガードナー》の効果発動! 除外する事で相手の攻撃を1度だけ無効にする!」
スサノ-Oがフレアに向かって長刀を振りかぶった瞬間、ネクロ・ガードナーの影がスサノ-Oの視界を閉ざし、動揺したスサノ-Oの長刀は明後日の方向へと振り抜ける。
〔ムサ-Cで直接攻撃〕
ムサ-Cがジェットエンジンを起動させて一気に間合いを詰めると、右腕のシャイン・クローでフレアを斬る。
「きゃあああ!? く……うう……!」
フレア LP:3200→400
〔ターンエンド〕
LP:1000
手札:0
モンスター
・超重魔獣キュウ-B
・超重神鬼シュテンドウ-G
・超重荒神スサノ-O
・超重剣聖ムサ-C
魔法・罠
・超重武者装留ダブル・ホーン(超重魔獣キュウ-B)
・超重武者装留ダブル・ホーン(超重荒神スサノ-O)
・超重武者装留シャイン・クロー(超重剣聖ムサ-C)
「何とか耐え切ったが、さっきのターンより更に厳しくなったぞ。どうする? ……残念だが、諦めるのも仕方が無いと思う。君の判断に任せよう」
「何とかして見せます。遊星達だって今頃、厳しい戦いの中で頑張っているはずです! だから……私は諦めません! 私のターン!」
フレア 手札:3→4
フレアの闘志は死んでいない。それを見たバーナードは嬉しそうに頷いていた。
「相手の場のみにシンクロモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚出来る! チューナーモンスター《極星獣グルファクシ》!」
フレアの場にドラガンから授けられたグルファクシが現われ、防御体勢を取る。
DEF:1000 レベル4
「自分の場にチューナーが存在する場合、墓地からこのカードを特殊召喚出来る! 《ボルト・ヘッジホッグ》を特殊召喚!」
続けてボルト・ヘッジホッグが現われ、同じ様に防御体勢を取る。
DEF:800 レベル2
「相手の場にシンクロモンスターが存在し、自分の場には存在しない場合、手札から《リード・バタフライ》を特殊召喚出来る!」
場に巨大だが綺麗な青い色をした蝶が現われ、フレアの場を飛びまわる。
DEF:600 レベル1
「モンスターをセット! ターンエンド!」
「(やっとチューナーが来たのに、シンクロしないのか? これはいよいよ不味いか……)」
LP:400
手札:1
モンスター
・極星獣グルファクシ
・ボルト・ヘッジホッグ
・リード・バタフライ
・セット
魔法・罠
・なし
〔私のターン〕
プログラム 手札:0→1
〔手札の《超重武者装留マカルガエシ》を自身の効果によって”超重武者”として扱われる《超重荒神スサノ-O》に装備。このカードを装備したモンスターは1ターンに1度、効果では破壊されない〕
場に機械部品で出来た首飾りが現れると、スサノ-Oの首に掛けられる。
〔バトルフェイズに移行します。キュウ-Bで極星獣グルファクシとボルト・ヘッジホッグを攻撃〕
超重魔獣キュウ-B DEF:6100
キュウ-Bが炎を放ち、グルファクシとボルト・ヘッジホッグを焼き払う。
DEF:6100→4300
〔シュテンドウ-Gでリード・バタフライを攻撃。ムサ-Cでセットモンスターを攻撃〕
シュテンドウ-Gが金棒でリード・バタフライを叩き落し、ムサ-Cはブレードでセットモンスターを両断する。
「セットモンスター《占術姫コインノーマ》のリバース効果発動! 手札・デッキからレベル3以上のリバースモンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚する! 私はデッキから《占術姫コインノーマ》を特殊召喚!」
フレアの場にコインを持った小さい精霊の少女が現れると、姿を消してセットカードとなる。
DEF:1400 レベル3
〔スサノ-Oでセットモンスターを攻撃〕
「コインノーマの効果発動! デッキから《占術姫コインノーマ》を特殊召喚!」
スサノ-Oが長刀でセットされたコインノーマを破壊すると、フレアは3体目のコインノーマを場に特殊召喚してセットする。
DEF:1400 レベル3
〔スサノ-Oでセットモンスターを攻撃〕
「コインノーマの効果発動! 《地霊使いアウス》を特殊召喚!」
スサノ-Oが最後のコインノーマを破壊すると、フレアの場に”地”の力を宿した杖を持つ魔法使いの少女が現れる。最初はリバースもしないでいきなり姿を晒した事に驚いていたが、状況を理解すると自身を落ち着かせる様に癖の強い茶髪を撫で、掛けている眼鏡の位置を直し、着ているコートを翻して姿をセットカードへと変える。
DEF:1500 レベル3
〔ターンエンド〕
LP:1000
手札:0
モンスター
・超重魔獣キュウ-B
・超重神鬼シュテンドウ-G
・超重荒神スサノ-O
・超重剣聖ムサ-C
魔法・罠
・超重武者装留ダブル・ホーン(超重魔獣キュウ-B)
・超重武者装留ダブル・ホーン(超重荒神スサノ-O)
・超重武者装留シャイン・クロー(超重剣聖ムサ-C)
・超重武者装留マカルガエシ(超重荒神スサノ-O)
「(さっきセットしたカード、俺が選んだ奴だ。確かに”超重武者”相手なら通用するが……)」
”地霊使いアウス”はリバースした時、相手の地属性モンスター1体のコントロールをアウスが存在している間だけ得る能力を持つ。”超重武者”は大半が地属性の為、このカードで奪い取る事が可能である。
「(一番強いのを奪い取っても相手は守備表示、ダメージは与えられない。しかも全員を倒し切ることだって出来ないから返しのターンで無防備なアウスを狙われて終わりだ……) 何か手はあるのか……?」
「あります」
思わず呟いたバーナードの言葉に、フレアは頷いて答える。
「格好良く言うならば、勝利の方程式は全て揃いました!」
「な、何だって!? この状況をどうやって切り抜けるんだ?」
「それは……私のターン!」
フレア 手札:1→2
「一つ目はこの《地霊使いアウス》!」
フレアはアウスを反転召喚させると、場に再びアウスが姿を現す。
ATK:500 レベル3
「アウスのリバース効果発動! 相手の地属性モンスター1体のコントロールを得る! 2つ目は《超重魔獣キュウ-B》!」
アウスが杖を振りかざし、呪文を唱える。するとキュウ-Bは突然システムダウンを起こし、再起動してフレアの場へと移動する。
「キュウ-Bの効果により、相手の場の特殊召喚されたモンスター1体につき守備力を900ポイントアップ!」
DEF:2500→5200
「だがそれだけじゃ勝てないぞ!」
「そう、だからもう一つ……3つ目の鍵、それは”バーナードさんが苦手”なカード!」
「な、何!?」
「行くよ! 《チェイス・スカッド》を召喚!」
フレアの場に現れたのは、パトカーを模した追跡ロボット。セキュリティの”デュエル・チェイサーズ”が愛用している”ポリスモンスター”の1体、”チェイス・スカッド”である。後ろめたさの無い一般市民ならそんな事はないかもしれないが、ちょっとやんちゃなDホイーラーなら確かに苦手意識はあるかもしれない。
ATK:1400 レベル3
「バトル! キュウ-Bでスサノ-Oを攻撃!」
キュウ-Bがスサノ-Oに炎を放つと、スサノ-Oは長刀を振るって抵抗するが振り切れず、装甲が溶け始め、最後は爆散してしまう。
DEF:5200→4300
「チェイス・スカッドのモンスター効果発動! 守備表示モンスターが戦闘破壊されて墓地へ送られた時、相手に500ポイントのダメージを与える!」
チェイス・スカッドがスサノ-Oの爆散をセンサーで感知すると、門に向かってレーザーを放つ。
プログラム LP:1000→500
「そうか! これならば守備表示でもダメージを与えられる! しかもキュウ-Bは装備カードの効果で2回攻撃が可能!」
「キュウ-Bでシュテンドウ-Gを攻撃!」
キュウ-Bがシュテンドウ-Gを焼き尽くし、チェイス・スカッドがレーザーを門に向かって放つと、門を閉ざしていた鍵がとうとうダメージに耐え切れなくなり、壊れて門を開け放つ。
プログラム LP:500→0
ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。
フレアはゴーグルを取ると、目の前の装置に視線を向けた。
〔ロック解除〕
装置はそれだけアナウンスすると、ソリッドビジョンモニターを表示し、素人が見ても訳の解らない操作画面を映す。
「ふう……これでいいのかな?」
「ブラボーーーー!!! 完全に予想の遥か上を行ったな! ラストチャンスでよくやってくれた!」
「あ、バーナードさんこれで――――」
「フレアちゃん素敵! 惚れちまうぜ! 抱いて!」
未知のカードカテゴリー”超重武者”に不慣れな条件で勝利したフレア。勝利の余韻に浸る間もなく、腕を広げて駆け寄ってくるバーナードを無言で避けると、フレアは満足ボディーブローをバーナードの腹に放つのであった。
前回まででかなり間が空いたので早めの更新です。