遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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ちょっと長くなっているのでご注意ください。


第7話 チーム”満足” アクセラレーション?

 

Barbaric Area After Damage(バーバリック エリア アフター ダメージ)――――通称”B.A.Dエリア”。

”サテライトの危険地帯”、”地獄の一丁目”などとも呼ばれる無法地帯である。

そこの港に掛けられた、作りかけの大きな橋、”ダイダロス・ブリッジ”。

その橋の下に建てられている小屋の中で、横になりながら寝息をたてている少女が一人。

 

「う~ん……違うよフリント……それはモリンフェン……すぅ……」

 

そして小屋の入り口から、寝ている少女よりも小さい少女が展開させた決闘盤を装着し、忍び歩きで中へと入る。

その小さい少女が寝ている少女の真横に立つと、あるモンスターをディスプレイモードで召喚し、耳を押さえ、大きく息を吸って一声――――

 

「……朝ですのーーー!!!」

 

「ひゃあああ!!?」

 

小さい少女―――リリがそう叫ぶと、寝ている少女の真横で召喚されたモンスター、”リボルバー・ドラゴン”がけたたましい発砲音を鳴らした。

その音に寝ている少女―――フレアは驚いて飛び起き、動揺した様子で辺りを見渡す。

 

「おはようですの! フレア姉ちゃんが一番お寝坊さんですの!」

 

「………その起こし方止めてよ~……ってあれ? 何でその起こし方をリリちゃんが…?」

 

フレアは驚きで高鳴っている胸を押さえながら首を傾げる。

意外としっかりしているフレアだが、朝はかなり弱い。

最近ではフリントがこの方法でフレアを起こす。

 

フレアとフリントがサテライトに来てから翌日、二人とチーム”サティスファクション”はクロウの住処で朝を迎えていた。

 

何故二人がクロウの住処にいるのか、それは昨晩の事だった。

電気も水道も通らず、一部天井が崩れ、外まで吹き抜けが出来ているチーム”サティスファクション”のアジト。

鬼柳やフリントならともかく、女子のフレアがそこで寝泊りするのは色々不便だという事で、クロウがそれなりに生活環境が整っている自分の住処に二人を招いてくれたのだ。

フレアとフリントはリリの恩人として、クロウの住処に住む子供達から喜んで迎え入れられ、その晩にはチーム”サティスファクション”も交えて二人の歓迎会が行われた。

その後、フレアは疲れていた事もあってかすぐに眠り込み、寝坊して今に至るという訳である。

 

「と、とりあえず……起こしてくれてありがとう。 これから朝御飯?」

 

「朝御飯どころか、もう皆食べ終えて出かけましたですの」

 

「ええ!? 何で!? 私に黙って……」

 

「その事について、フリント兄ちゃんから言伝を受けているですの」

 

 

 

今日は鬼柳達が俺に対して”別の歓迎会”をするそうだ。 ……お前は昨日疲れている上で散々騒いでいたからな、休息の為に今回は寝坊したほうがいい。 だから起こさず置いていく。 

 

 

 

「私はフリント兄ちゃんから”これで昼時には起こしてやれ”って頼まれたけど、それじゃあフレア姉ちゃんが可哀相だと思ったから今起こしましたですの。 まだ出発したばかりだから急げば間に合うですの!」

 

「……ありがとうリリちゃん。 フリントめぇ~……そんな面白そうな事から私を除者にするなんて許さないんだから!」

 

フレアは襲ってくる眠気と空腹感を押さえ、あっという間に身支度を終える。

 

「クロウ兄ちゃんは広場に行くって言ってたですの! あ、これ”リボルバー・ドラゴン”、フリント兄ちゃんに返してほしいですの!」

 

「そこなら分かる! 行ってきます!」

 

フレアはリリからリボルバー・ドラゴンを受け取って小屋から飛び出すと、広場へと急いだ。

 

 

* * *

 

 

サテライト  広場

 

「着いたぞ! ここが歓迎会会場だ! 満足させてやるぜ!」

 

フレアより先に住処を出たチーム”サティスファクション”とフリント。

この5人は先に広場へと辿り着いていた。

 

「それで鬼柳、一体どんな歓迎をしてくれるんだ? 俺はてっきり、お前達は昨日言っていた”遠征”に行くものだと思っていたが……」

 

「ああ、あれか。 あれは―――」

 

「フリントーーー!!! 皆ーーー!!!」

 

そこへフリント達を全速力で追って来たフレアが到着する。

 

「……早かったな」

 

フレアはそう呟いたフリントの前で立ち止まり、息を整えてから恨みがましそうな顔をフリントに向ける。

 

「酷いよフリント! 気を使ってくれるのは嬉しいけど、置いていくのはあんまりよ!」

 

「……寝かせて置いた方がいいと思ってな。 ……無理はするんじゃないぞ」

 

そう言ってフリントは懐から携帯食と水筒を取り出し、フレアに差し出す。

水筒はクロウの住処から、携帯食は様々な護身用具と一緒にクラッシュ・タウンから持ってきた物である。

フリントはフレアがすぐに追ってくる事を読んでいたようだ。

フレアは頷いてからそれを受け取ると、自分もリリから受け取った”リボルバー・ドラゴン”をフリントに手渡す。

 

「すまない鬼柳、話を続けてくれ」

 

「ん? ああ、遠征の話な。 あれは後回しでいい、今はお前達と決闘してた方が面白いしな」

 

「へんへいっへ……んっ! ……昨日ジャックがしつこく言ってた奴?」

 

「しつこいとは何だ! 後、行儀が悪いぞ! 喋るか食べるかどっちかにしろ!」

 

携帯食を頬張りながら喋るフレアに、ジャックが怒りながら注意する。

その事をジャックに謝ってから、フレアがふとクロウに眼を向けると、なにやら浮かない顔をしているのが見えた。

 

「どうしたのクロウ?」

 

「ん? ああ……”遠征”なんだけどよ、俺はどうしても乗り気になれないんだよな。 遠くのA地区で好き勝手やってる連中っつっても、そこに集まってるだけの、決闘者崩れの連中だろ? 天下を狙うデュエル・ギャングでもないのに、わざわざ出向いて討伐する必要があるのかよ?」

 

「何を言っているクロウ! このサテライトは俺達が制覇したのだ! 何奴だろうと、好き勝手させていい訳があるまい! それに噂では”シティ”の方からまた罪人が流されてきたそうではないか! おそらくA地区の連中はそいつ等かもしれん! 新入りには誰が”王”なのか、解らせてやらなければな!」

 

そう言ってジャックが楽しげな笑みを浮かべる。

もしかすれば、その中に張り合いのある相手がいるかもしれない、そういった期待を込めた笑みであろう。

 

「ジャックの言う通り、このサテライトは制覇した俺等のもんだ! そこで好き勝手やるんなら容赦はしねぇ! 徹底的にぶっ潰してやるんだよぉ!」

 

「!?(ま、また……)」

 

鬼柳と決闘した時に感じた”危うさ”――――今の彼から、フレアは再びそれを感じとる。

不安に思ったフレアは、隣にいる遊星に尋ねてみた。

 

「ね、ねえ遊星……鬼柳の事なんだけど……」

 

「? 鬼柳がどうかしたのか…?」

 

「何か、感じたりしない? 何時もと違う、とか……」

 

遊星は鬼柳を見た後、少し考えてからフレアの質問に答える。

 

「……多少、憤ってはいるとは思う。 …俺達はサテライト制覇をした。 だが、それを越える明確な目標が見つからない……鬼柳はそのせいで気が立っているんだろう」

 

「そう、なのかな……」

 

遊星の答えに、フレアはイマイチ納得出来ていない様子。

どうして納得出来ないのか、フレア自身も解らない。

それを考えれば考える程、心の中にある”嫌な感覚”が大きくなる為、フレアはそれ以上考えるのを止めた。

 

「(もうこれ以上考えたくない……別の話しよ……)ね、ねえ、鬼柳! ”別の歓迎会”って何するの? もしかして決闘?」

 

「おっと、そうだったぜ! 勿論”決闘”だ! 俺達は決闘者だからな! だが只の決闘じゃねぇぞ!」

 

「只の決闘じゃないって……何なの?」

 

解らない、といった表情で首を傾げるフレアに、鬼柳は笑いながら一枚の地図を広げて地面に置く。

どうやら現在地である”B.A.Dエリア”の地図のようだ。

 

「いいか? お前達はこれから……まあ何日かは分からねぇが、俺達と行動するだろ? だったらよ、いっその事俺達のチームに入らねぇか?」

 

「え!? 私達がチーム”サティスファクション”に!? 入る入る!」

 

「そんな簡単に決めていいのか……まあ、断る理由は無いが」

 

二人がチーム入りを承諾すると、鬼柳は笑みを浮かべて他の3人に目配せする。

それを見た3人は鬼柳と同様の笑みを浮かべ、何故か運動前に行う様な準備体操を始める。

 

「おし! そう言うと思ってたぜ! それじゃあ”加盟テスト”と行こうか!」

 

「え!? タダじゃ入れてくれないの!? それにテスト!? 私、勉強苦手なんだけど~…」

 

テストと聞いて、フレアの表情が見る見る萎えて行く。

それを見て、鬼柳は笑いながらフレアの肩を叩いた。

 

「ハッハッハ! そっちの”テスト”じゃねぇよ! それにお前は受けなくていいぜ。 フリントがやれば十分だ」

 

「……もしや、”歓迎会”とはその”テスト”の事か?」

 

「ご名答!」

 

鬼柳が二人に説明を始める。

その”テスト”とは、チーム”サティスファクション”と行う”特殊な決闘”の事らしく、それに合格出来た者は晴れてチーム”サティスファクション”のメンバーと認められるのだという。

 

「まあ、俺達を見れば解ると思うが……そう簡単には合格出来ないぜ?」

 

「ええ!? そんなに難しいの!?」

 

チーム”サティスファクション”はサテライト制覇を成し遂げる程のチーム。

そんなチームに憧れて、仲間に入れて貰おうと寄って来る者は多いだろう。

だが、未だにチーム”サティスファクション”は立ち上げた時の4人組。

つまり、今まで合格出来た者は一人もいないのである。

 

「お前の事はクロウから聞いている。 クロウと引き分ける時点で、実力の点では十分合格レベルだ! 俺達と決闘したフレアも含めてな! だから無条件で入れてやってもいいんだが……今までやって来た事だ、せっかくだからやろうぜ!」

 

「やるのはいいが、一体どんな”テスト”なんだ? ”特殊な決闘”と言っていたが……」

 

「おう! やるのは普通の決闘じゃないぜ! その名も―――」

 

鬼柳は両腕を広げ、高らかにその決闘の名を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

「”ランニング・デュエル”だぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

フレアもフリントも、一瞬自分の耳を疑う。

”鬼柳の事だから、きっと突飛な内容の決闘だろう”――――そう予測していたが、鬼柳はさらに上を行った。

 

「…ラ、”ランニング”? ”ライディング”じゃなくて?」

 

「間違ってねぇよフレア! ”ランニング”だ! 走りながら決闘するんだよ!」

 

「……何故走りながら決闘するんだ?」

 

普通の決闘をするのに、何故走る必要があるのか。

決闘盤を構えて足踏みをする鬼柳に、フリントが当然な疑問を投げかける。

 

「いいか? デュエル・ギャングとしてやって行くにはな、ある4つの”力”が重要だ! 一つ目は言わずもかな、決闘の”実力”!」

 

「それはさっき解ってるって言ってたじゃん!」

 

「おう、解ってる。 だから後3つだ。 2つ目は”体力”! 俺達はこのサテライトを縦横無尽に駆け回る! だからこれがなきゃ話にならねぇな! 3つ目は冷静な”判断力”! 一歩間違えればチームの壊滅なんて事もあるぜ! 最後は”適応力”! 敵陣地での決闘(アウェイ)は当たり前! 敵の”地の利”なんて無くしちまえ! …とまあ、こんなところだ。 ”ランニング・デュエル”にはこの4つの要素が全部詰まっている!」

 

「成る程……それで、俺はお前達の誰とその”ランニング・デュエル”をするんだ? それとも、全員と一回ずつやるのか?」

 

フリントが決闘盤を構えてそう聞くと、鬼柳は後ろの3人を指差して笑みを浮かべる。

 

「ちょっと違うな。 …俺達全員と、いっぺんにやるんだ!」

 

「え~!? 幾らフリントでもそんなの無理よ! ズルイズルイ!」

 

「まあ待てよ、今からルール説明してやるから」

 

チーム”サティスファクション”式加盟テスト、”ランニング・デュエル”――――

メンバー4人と挑戦者1人で行う変則決闘であり、それぞれのLPは挑戦者が8000ポイント、チーム”サティスファクション”がそれぞれ2000ポイント、合計8000ポイントとなる。

 

まずは決闘開始時に5人全員が同時に走り出し、サティスファクションの一人が挑戦者に合わせて並走しながら決闘をする。

 

「決闘しながら走るコースはこんな感じだ。 ここを一周する前に、お前は俺達を倒さなければならない」

 

鬼柳は地面に広げられた地図を指でなぞる。

フリントが想像していたよりも狭い範囲であったが、その分短期決戦を求められる。

 

「さて、肝心の決闘方法だが……そういや名前付けてなかったな。 ”満足ラッシュ方式”とでも名付けるか!」

 

サティスファクション側のLPが0になった時、場のカードを次のメンバーに引継いで交代、挑戦者は手札、場のカード、墓地、LPをそのままに、次のメンバーとの決闘を行う。

 

「交代した時、ターンは強制的に俺達の方に移るからな。 倒し方にも気をつけろよ」

 

余談だが、偶然にもこの”満足ラッシュ方式”は後に開かれるライディング・デュエル大会、”WRGP”の公式ルールと、スタンディングである事以外は殆ど同じであった。

 

「ゴールまでに全員倒せばお前の勝ちだ。 因みに俺達に勝つ事が合格じゃないぞ、それじゃ誰一人合格出来る訳がないからな! 俺達を決闘で”満足”させる事! それが合格条件だ! …お前の決闘なら、出来るだろ?」

 

「……面白い。 解った、やろう。 やるからには合格……いや、”勝利”させて貰うぞ!」

 

「言うじゃねぇか! よし! それじゃ少ししたら始めるぞ! 準備運動しとけよ!」

 

そう言って鬼柳は伸脚を始める。

決闘の前に準備運動をした事が無いフレアには、その様子が少し奇妙に見えた。

 

「すまないが持っていてくれ」

 

フリントは帽子とマントを脱ぎ、それらをフレアに差し出す。

 

「脱いじゃうの?」

 

「……脱いだ方が走りやすいだろう」

 

「マントを靡かせて走った方がカッコイイよ」

 

「……風に煽られて走り辛くなる」

 

フリントはフレアの手の中に帽子とマントを押し込むと、さっさと準備運動を始める。

ここでふと、フリントはフレアに違和感を覚えた。

 

「…そういえば、珍しく”自分もやりたい”と言い出さなかったな?」

 

決闘に関わる事に好奇心旺盛なフレア。

フリントが鉱山でトロッコによるライディング・デュエルを行った後、”私にもやらせて”と暫くうるさかった。

今日も面白そうな予感を感じ取り、必死になってフリント達を追ってきた――――そんな彼女が今、えらく大人しい。

 

「…何か、”テスト”って響きがね。 今回はいいや、フリント頑張ってね」

 

「よっしゃ! 準備完了! フリント、もういいか?」

 

鬼柳が準備運動を終え、フリントに呼びかける。

 

「……もう少し待ってくれ」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「よし……フリント! 昨日は不覚を取っちまったが、今度はそうはいかねぇぞ!」

 

「望むところだ…!」

 

チーム”サティスファクション”のファースト・ランナーはクロウ。

スタートラインに立つのはフリントとクロウ、二人の前には鬼柳、後ろには遊星とジャックが並ぶ。

体力面を出来るだけ平等にする為、決闘していないメンバーも挑戦者や決闘しているメンバーと共に走り続けるのだ。

 

「それじゃあ合図は私がやるからね! 位置についてー……ランニング・デュエル――――」

 

フレアがスタートライン前にフリントの帽子を差し出すと、それを上へ力強く振り上げる。

 

 

 

 

「アクセラレーション!!!」

 

 

 

 

フレアの掛け声と共に、フリントとサティスファクションの面々が走り出す。

 

「道間違えないようにちゃんとついて来いよお前等!」

 

鬼柳は先頭を走り、決闘している二人が道を間違えないように誘導する。

最初の曲がり角を通り抜けた瞬間、フリントとクロウの決闘が始まった。

先攻は挑戦者であるフリント。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

フリント 手札:5→6

 

「(俺も”決闘者”だ……この”サテライト最強のチーム”から”勝ち”を取ってみたい…! その為には…) 魔法カード《手札抹殺》を発動! お互いに手札を全て捨て、その枚数分だけドローする」

 

「な、何だ? そんなに手札が悪いのか?」

 

二人は5枚の手札を墓地に送り、5枚ドローする。

 

「(よし!)《ヴォルカニック・エッジ》を召喚!」

 

フリントの場にヴォルカニックの先鋒、ヴォルカニック・エッジが現れる。

ソリッド・ビジョンシステムとはよく出来たもので、フリントが走るのに合わせて、ヴォルカニック・エッジも同様に走り出す。

 

ATK:1800

 

「ヴォルカニック・エッジの効果発動! このターンの攻撃を放棄する事で、相手に500ポイントのダメージを与える! 【ヴォルカニック・バーン】!」

 

ヴォルカニック・エッジがクロウに振り向くと、走りながら燃える岩石をクロウ目掛けて吐き出す。

 

「どわぁ! くそ! たった500でもLPが半分だからでかいぜ……」

 

クロウ LP:2000→1500

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:3

モンスター

・ヴォルカニック・エッジ

魔法・罠

・セット

 

「(このLPで、バーンデッキのフリントと決闘するのはちょいと厳しいな。 俺がフリントを倒すのは無理か……なら、やれる事を全力でやらせて貰うぜ!) 《BF-蒼炎のシュラ》を召喚!」

 

クロウの場に現れたのは、頭部に蒼い炎の様な羽毛を持った黒い鳥人。

モンスターを戦闘破壊する事でデッキからBFを特殊召喚する能力を持つ”蒼炎のシュラ”である。

 

ATK:1800

 

「(出来るだけLP削って、場にカードを展開させて次に回す! それが俺の役割だ!) 俺の場にBFが存在する時、こいつを手札から特殊召喚する事が出来る! 来い! 《BF-疾風のゲイル》!」

 

続けて現れたのは、BFのチューナーモンスター、フリントもよく知る”疾風のゲイル”。

その大きな目で、標的であるヴォルカニック・エッジを見据える。

 

ATK:1300

 

「こいつの事は覚えてるよな!  疾風のゲイル効果発動! 《ヴォルカニック・エッジ》の攻守を半分にする!」

 

ゲイルがヴォルカニック・エッジに向かって刃の様な突風を起こすと、ヴォルカニック・エッジの鎧の様な体が無残にも削られていく。

 

ATK:1800→900

 

「これで蒼炎のシュラの攻撃力が上回ったぜ! バトル! 蒼炎のシュラでヴォルカニック・エッジを攻撃!」

 

シュラが弱っているヴォルカニック・エッジに向かって飛び掛かると、突然ヴォルカニック・エッジの全身が発火し、火達磨となる。

 

「な、何だ!?」

 

やがてヴォルカニック・エッジを包む炎は大きくなり、シュラは身の危険を感じてクロウの場まで戻る。

 

「シュラが戻ってきちまった!? 一体どうなって……!?」

 

クロウが炎に眼を向けると、炎の中から気の強そうな赤髪の少女がこちらを窺っていた。

その少女がクロウにウインクした瞬間、クロウが業火に包まれる。

 

「うおぉぉぉ!!?」

 

クロウ LP:1500→0

 

「…罠カード《火霊術-「紅」》! 自分の場の炎属性モンスターをリリースし、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

リリースしたヴォルカニック・エッジの元々の攻撃力は1800。

それにより、クロウの残っていたLPを全て削り切る。

 

「クロウ! 貴様1ターンも持たせられないのか!」

 

「チ、チキショー……頼んだぞジャック!」

 

クロウは自分の決闘盤から蒼炎のシュラと疾風のゲイルをジャックの決闘盤に置き、後ろへと下がる。

 

「へぇ! バーンデッキか! 面白ぇじゃねぇか!」

 

クロウがあっという間に倒されたにも関わらず、鬼柳は余裕そうな表情で後ろを振り向く。

 

「フリント! 次は俺が相手だ!」

 

「来いジャック!」

 

続けてフリントとセカンド・ランナー、ジャックの決闘が始まる。

 

「フリント! クロウを即座に葬ったのは見事だと言っておこう! だが貴様はルールを覚えていないらしい! 俺達が交代した時、ターンは強制的にこちらの開始時となる事をな! 俺のターン!」

 

ジャック 手札:5→6

 

「お前の場にカードは1枚も無い! このジャック・アトラスに隙を見せる事が、如何に愚かな事か教えてやる! チューナーモンスター《インフルーエンス・ドラゴン》を召喚!」

 

ジャックの場に、青い体の竜人が現れる。

 

ATK:300

 

「インフルーエンス・ドラゴンの効果! 1ターンに一度、自分の場のモンスター1体の種族をドラゴン族に変更する! 《BF-蒼炎のシュラ》よ! ドラゴンとなれ!」

 

インフルーエンス・ドラゴンから体からオーラを放ち、そのオーラが蒼炎のシュラを包むと、 シュラはドラゴンの様な咆哮を上げる。

 

「レベル4《BF-蒼炎のシュラ》に、レベル3《インフルーエンス・ドラゴン》をチューニング!」

 

インフルーエンス・ドラゴンが自身の姿を3つの光輪に変えると、シュラを囲み、4つの光、そして光の柱となる。

 

「王者の叫びが木霊する! 勝利の鉄槌よ、大地を砕け! シンクロ召喚! 羽ばたけ!

《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》!」

 

光の柱から現れたのは、”王者の風格”を漂わせる立派な襟巻を持った黒いドラゴン。

その大きな翼を羽ばたかせ、フリントに向かって咆哮を上げる。

 

ATK:2400

 

「お! ジャックのエースモンスターが出てきやがったな! やってやれジャック!」

 

「任せろ鬼柳! 食らうがいい! 【キング・ストーム】!」

 

エクスプロード・ウィング・ドラゴンがフリントに向かって凄まじい火炎を放つと、フリントは一瞬で炎に包まれる。

 

「ぐあぁぁぁ…!」

 

フリント LP:8000→5600

 

「ハッハッハ! どうだ……うん?」

 

突然フリントを包んでいた炎が、フリントの体から離れていく。

攻撃を終え、ソリッド・ビジョンが消えていっているのではない。

何かに引き寄せられるように、その場から炎が離れているのだ。

ジャックがその炎を眼で追っていくと――――

 

「何だと!? 墓地が炎を!?」

 

炎が向かう先、それはフリントの決闘盤の墓地であった。

墓地が炎を吸い込んでいるのである。

全ての炎が墓地に吸い込まれた後、フリントは決闘盤を決闘銃へと変形させ、ジャックに照準を合わせる。

 

「墓地に存在する《ヴォルカニック・カウンター》の効果発動! 自分が戦闘ダメージを受けた時、墓地のこのカードをゲームから除外し、自分の墓地にヴォルカニック・カウンター以外の炎属性が存在する場合、自分が受けた戦闘ダメージと同じ数値のダメージを相手に与える!」

 

フリントが決闘銃から吸い込んだキング・ストームを放つと、先程のフリントの様にジャックが火炎に包まれる。

 

「ぐおぉぉぉ!!!」

 

ジャック LP:2000→0

 

フリントは”墓地に潜ませた罠”を使い、クロウに続いてジャックを打倒す。

 

「ジャック! テメーだって1ターン持ってねぇじゃねぇか!」

 

「うるさい! 俺はお前と違ってLPを削った! 仕事は果たしたのだ!」

 

フリントと後ろでカードを渡されるのを持っている遊星を余所に、ジャックとクロウが走りながら喧嘩を始める。

 

「ええい! そもそもフリント! 俺達にまともな決闘もさせぬとはどういうつもりだ!」

 

「すまないジャック、だがこれは時間制限のある”テスト”だからな。 次はまともな決闘をしよう」

 

「フリントの言う通りだジャック! 時間が無いんだ! 俺はそれを”勝利への判断力”として評価するぜ! それに次は遊星だ! 心配する事があるかよ!」

 

鬼柳がそう言うと、ジャックは納得出来ない様子ではあったが、一旦の落ち着きを見せる。

 

「むう……仕方無い、こういう時がお前の出番だ! ヘマをするんじゃないぞ遊星!」

 

ジャックはそう言ってエクスプロード・ウィング・ドラゴンとゲイルを遊星の決闘盤に置き、後ろへと下がる。

 

「任せろ、お前達の分まで戦ってみせる。 …フリント! 次は俺が相手だ!」

 

「来い遊星!」

 

続けてサード・ランナー、遊星との決闘。

先程と同様、ターンはサティスファクション側の開始からとなる。

 

「俺のターン!」

 

遊星 手札:5→6

 

「魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスターを墓地に送り、デッキ・手札からレベル1モンスターを1体特殊召喚する! デッキから《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

墓地に送ったカード

ボルト・ヘッジホッグ

 

遊星の場に現れたのは鍋を被った小さいロボット。

その名前からして、遊星が行おうとしている事が解る。

 

ATK:100

 

「チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

続けて遊星の場にジャンクのチューナーモンスター”ジャンク・シンクロン”が現れる。

 

ATK:1300

 

「ジャンク・シンクロンの効果発動! 召喚に成功した時、墓地からレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚する事が出来る! 来い! 《ボルト・ヘッジホッグ》!」

 

ジャンク・シンクロンが左隣に腕をかざすと、その場に無数のボルトが背中に刺さっているハリネズミが現れる。

 

DEF:800

 

「チューニング・サポーターのモンスター効果! シンクロ素材とする時、このカードをレベル2として扱う事が出来る! レベル2《チューニング・サポーター》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

ジャンク・シンクロンが背中に背負っているエンジンを起動させると、ジャンク・シンクロンの姿が3つの光輪へと変わる。

その3つの光輪がチューニング・サポーターを囲むと、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光さす道となれ! シンクロ召喚! いでよ! 《ジャンク・ウォリアー》!」

 

光の柱から現れたのは遊星のマイフェイバリットカードである”ジャンク・ウォリアー”。

上空へと飛び上がり、フリントに向かって大きな右拳を突き出して構える。

 

ATK:2300

 

「まずはシンクロ素材となったチューニング・サポーターの効果発動! カードを1枚ドローする!」

 

遊星 手札:3→4

 

「ジャンク・ウォリアーの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、このカードの攻撃力は自分の場に存在するレベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値分アップする! 俺の場にはレベル2、攻撃力800のボルト・ヘッジホッグがいる。 よってジャンク・ウォリアーの攻撃力は800ポイントアップする! 〈パワー・オブ・フェローズ〉!」

 

ボルト・ヘッジホッグの体から光が放たれると、その光はジャンク・ウォリアーを包み込む。

 

ATK:2300→3100

 

「フリント、これをどう防ぐ! ジャンク・ウォリアーで直接攻撃! 【スクラップ・フィスト】!」

 

ジャンク・ウォリアーが右腕を振りかぶり、フリントに向かって突撃する。

遊星の場の総攻撃力は6800、防ぐ手段が無ければフリントの敗北である。

だが、この状況に導いたのは他ならぬフリント。

この時の備えが無いはずがなかった。

 

「手札から《速攻のかかし》を捨てて効果発動! 相手の攻撃を無効にし、バトルフェイズを強制終了させる!」

 

ジャンク・ウォリアーが拳をフリントに向けて振り下ろすと、目の前に突然現れた”速攻のかかし”に攻撃を防がれる。

 

「やるな……だが俺もタダでは引かない! レベル2《ボルト・ヘッジホッグ》に、レベル3《BF-疾風のゲイル》をチューニング!」

 

ゲイルが自身を3つの光輪へと変え、ボルト・ヘッジホッグを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし心が、更なる響きを轟かす! 光さす道となれ!  シンクロ召喚! 現れよ! 《カタパルト・ウォリアー》!」

 

光の柱から現れたのは、全身を強固な装甲で覆い、両肩に射出機(カタパルト)を備えた大柄な戦士。

右肩の射出機をフリントに向けて構えると、その上にジャンク・ウォリアーが飛び乗る。

 

DEF:1500

 

「カタパルト・ウォリアーの効果発動! 1ターンに一度、自分の場のジャンクと名のつくモンスター1体をリリースする事で、リリースしたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える! 《ジャンク・ウォリアー》をリリース! 〈急降下射出(ダイブ・カタパルト)〉!」

 

射出機から勢いよくジャンク・ウォリアーが射出されると、そのままフリントにジャンク・ウォリアーが激突し、消滅する。

 

「ぐうぅ!!!」

 

フリント LP:5600→3300

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:2000

手札:2

モンスター

・エクスプロード・ウィング・ドラゴン

・カタパルト・ウォリアー

魔法・罠

・セット

・セット

 

遊星が放った一撃により、フリントのLPがとうとう標準を下回る。

そして、フリントはある事に気付いた。

 

「(このランニング・デュエル……想像以上に体力を消耗する…!)」

 

最初に見せられたコースが想像以上に狭かったので、フリントは体力についての心配はあまりしていなかった。

ところが実際にやってみると、ちょっとした動作、掛け声、そして焦りや動揺――――決闘では当たり前な事が、ことごとく自分から体力を奪っていく。

 

「(……これが必要な”体力”、そして限られた時間の中、4人もの決闘者相手に適した戦術を立てる”判断力”……この二つを保ち、不慣れなこの決闘を戦い抜く”適応力”……成る程、よく解った!)」

 

「どうしたフリント? もうバテたか? 言っておくが、ペースが落ちたら減点対象! 俺達満足出来ないぜ!」

 

「…問題はないぞ鬼柳! 必ずお前に辿り着いてみせる! 俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:2→3

 

「魔法カード《オーバーロード・フュージョン》を発動! 墓地に存在する《リボルバー・ドラゴン》、《ブローバック・ドラゴン》を除外し、この2体を融合素材とするモンスター、《ガトリング・ドラゴン》を融合召喚する! 来い! ガトリング・ドラゴン!」

 

フリントの場の空間がねじれると、そのねじれの中から、移動砲台の体にガトリング砲の様な頭を3門持つ機械龍が現れる。

 

ATK:2600

 

「墓地のモンスターで融合召喚…! (クロウの時に手札抹殺で捨てたカードか)」

 

「ガトリング・ドラゴンの効果発動! コイントスを3回行い、表が出た数だけ場のモンスターを破壊する!」

 

フリントは再び決闘盤を決闘銃に変形させ、上空に現れた回転している3つの大きなコインそれぞれ狙い撃つ。

フリントが撃ち抜いた表の数は――――

 

「……表は2つ! ガトリング・ドラゴンの効果により、《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》と《カタパルト・ウォリアー》を破壊する! 〈連発砲撃(ガトリング・キャノン・ショット)〉!」

 

ガトリング・ドラゴンが左右の首をそれぞれに向けると、弾丸の嵐を遊星のモンスターに浴びせる。

 

「くっ…! 俺達のモンスターが全滅か…!」

 

「バトル! ガトリング・ドラゴンで直接攻撃! 【竜機襲(ドラゴニック・アサルト)】!」

 

ガトリング・ドラゴンが車輪をフルパワーで回転させると、遊星に向かって突進する。

 

「罠発動! 《トゥルース・リインフォース》! デッキからレベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する! 来い! 《マッシブ・ウォリアー》!」

 

遊星が罠の効果により呼び出したのは、頭上にくりぬかれたヘリポートを持ち上げている岩石のような戦士。

そのヘリポートを盾の様に構え、ガトリング・ドラゴンに対峙する。

 

ATK:600

 

「マッシブ・ウォリアーの戦闘によって受ける自分のダメージは0となり、1ターンに一度、マッシブ・ウォリアーは戦闘で破壊されない!」

 

「防がれたか…(ならば…!) バトルフェイズを終了! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:3300

手札:1

モンスター

・ガトリング・ドラゴン

魔法・罠

・セット

 

フリントが伏せたカードは”魔法の筒(マジック・シリンダー)”、攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを与える強力なバーンカードである。

この決闘を甘く見ていた自分の体力はそう長く持たない――――フリント本人はそう感じていた。

もうすぐ息も上がってくるはず、その前に何としても鬼柳まで進んでおきたいところであった。

 

「俺のターン!」

 

遊星 手札:2→3

 

「《マックス・ウォリアー》を召喚!」

 

遊星の場に現れたのは、首に大きな数珠を掛け、特殊な鎧を纏った戦士。

その腕には刺又を持ち、ガトリング・ドラゴンに対してそれを構える。

 

ATK:1800

 

「装備魔法《シンクロ・ヒーロー》を発動! 装備モンスターのレベルを1つ上げ、攻撃力を500ポイントアップ!」

 

マックス・ウォリアー レベル4→5

ATK:1800→2300

 

「バトル! マックス・ウォリアーでガトリング・ドラゴンを攻撃!」

 

「(ガトリング・ドラゴンよりも攻撃力が低いモンスターで攻撃……カード効果での強化か? …どの道、攻撃力は2000以上……これを使わない手は無い!) 罠カード《魔法の筒(マジック・シリンダー)》を発動! 攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

 

フリントの罠、”魔法の筒”が発動すれば、遊星を倒せる。

だがその時、遊星も伏せカードを発動させた。

 

「カウンター罠! 《白銀のバリア-シルバーフォース-》! 相手のバーンカードの発動を無効にし、そのカードと表側表示の魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

「何だと…!?」

 

フリントが発動した”魔法の筒”を囲う様に白銀のバリアが張られると、マックス・ウォリアーは刺又を構え、ガトリング・ドラゴンに飛びかかる。

 

「マックス・ウォリアーの効果発動! 相手モンスターに攻撃を行うダメージステップの間、攻撃力を400ポイントアップさせる! 【スイフト・ラッシュ】!」

 

ATK:2300→2700

 

マックス・ウォリアーは刺又の連続で繰り出し、ガトリング・ドラゴンを滅多刺し。

それに耐え切れず、ガトリング・ドラゴンは爆散してしまう。

 

「くっ…! ガトリング・ドラゴン……」

 

フリント LP:3300→3200

 

「マックス・ウォリアーが戦闘でモンスターを破壊した場合、自分のスタンバイフェイズ時までレベルは2となり、元々の攻守は半分となる」

 

マックス・ウォリアー レベル5→2→3

ATK:2300→900→1400

(シンクロ・ヒーロー装備)

 

「続けてマッシブ・ウォリアーで直接攻撃!」

 

マッシブ・ウォリアーがフリントの頭上に向かってヘリポートを投げつける。

 

「うお…!」

 

フリント LP:3200→2600

 

「ターンエンド!」

 

LP:2000

手札:1

モンスター

・マッシブ・ウォリアー

・マックス・ウォリアー

魔法・罠

・シンクロ・ヒーロー

 

「(焦るな……探せ……突破口を!) 俺のターン! ドロー!」

 

フリント 手札:1→2

 

「《ヴォルカニック・ロケット》を召喚!」

 

フリントの場にヴォルカニックの翼竜、”ヴォルカニック・ロケット”が現れる。

 

ATK:1900

 

「ヴォルカニック・ロケットの効果発動! 召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからブレイズ・キャノンと名のついたカードを1枚手札に加える! 《ブレイズ・キャノン》を手札に!」

 

フリント 手札:1→2

 

「バトル! ヴォルカニック・ロケットでマックス・ウォリアーを攻撃! 【ヴォルカニック・チャージ】!」

 

ヴォルカニック・ロケットが炎を噴射させ、マックス・ウォリアーに強烈な突進をかます。

ガトリング・ドラゴンとの戦闘で力を使い果たしたマックス・ウォリアーはそれに耐え切れず、ヴォルカニック・ロケットに貫かれて破壊される。

 

「すまない、マックス・ウォリアー……」

 

遊星 LP:2000→1500

 

「ターンエンドだ!」

 

LP:2600

手札:2

モンスター

・ヴォルカニック・ロケット

魔法・罠

・無し

 

「俺のターン!」

 

遊星 手札:1→2

 

「手札からモンスターを墓地に送る事で、チューナーモンスター《クイック・シンクロン》を特殊召喚!」

 

墓地に送ったモンスター

ダメージ・イーター

 

遊星の場に現れたのは、羽の付いたカウボーイ・ハットと赤いマントを身に付け、そして腰に二丁拳銃を下げたロボット。

帽子とマントの影に隠れる青い眼でフリントを見据え、腰の拳銃に手を伸ばす。

 

ATK:700

 

「(フレアが見たら欲しがりそうなカードだ……だが、俺にとって問題なのはこのカードではない)」

 

フリントが見ているのは遊星の墓地。

クイック・シンクロンの効果により墓地に送られた”ダメージ・イーター”であった。

ダメージ・イーターは相手ターン時、相手がダメージを与える効果の魔法・罠・モンスター効果を発動した時、墓地から除外する事で”ダメージ”を”回復”に変換する効果を持つ。

発動タイミングが限定されているが、バーンを得意とするフリントにとっては厄介なカードである。

 

「(…さっきのカウンター罠といい……成る程……これが遊星の”役割”か)」

 

フリントの予想では、おそらく遊星のデッキはバーン対策の為に調整されている。

この”テスト”のルールではそれぞれのLPが少ないので、先程フリントがクロウやジャックにやったように、実力を出す前にバーンカードで押し切られてしまう可能性がある。

その対策の為、他の3人よりも攻守のバランスが取れた柔軟性のあるデッキを持つ遊星に、バーンに対するストッパーを任せているのだろう。

 

 

 

それに次は遊星だ! 心配する事があるかよ!

 

 

こういう時がお前の出番だ! ヘマをするんじゃないぞ遊星!

 

 

 

「(あの二人の言葉の意味が、ようやく解った)」

 

「俺の場にチューナーが存在する場合、墓地から《ボルト・ヘッジホッグ》を特殊召喚する事が出来る!」

 

遊星の場に再びボルト・ヘッジホッグが現れる。

 

ATK:800

 

「クイック・シンクロンの効果! このカードはシンクロンと名の付くチューナーの代わりとしてシンクロ素材にする事が出来る!」

 

クイック・シンクロンの目の前に回転しているルーレットが現れると、クイック・シンクロンはそれを拳銃から放った弾丸で撃ち抜く。

撃ち抜かれたルーレットが回転を止めると、そこには数枚のカードが貼り付けてあり、その中の1枚がルーレットと共に撃ち抜かれていた。

 

「俺はクイック・シンクロンを《ニトロ・シンクロン》の代わりとして使用する! レベル2《ボルト・ヘッジホッグ》に、レベル5《クイック・シンクロン》をチューニング!」

 

クイック・シンクロンが自身を5つの光輪へと変え、ボルト・ヘッジホッグを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし思いが、ここに新たな力となる! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ! 

《ニトロ・ウォリアー》!」

 

光の柱から現れたのは、怪物の様な姿をした緑色の戦士。

腰にはロケットエンジンの様な大きい筒、そして頭部にある管や肘から蒸気が噴出しているのが見える。

容姿だけでも恐ろしいものだが、それ以外にも何か”危険なもの”を感じさせるシンクロモンスターであった。

 

ATK:2800

 

「(ここで新しいシンクロモンスターか…!)」

 

「バトル! ニトロ・ウォリアーで攻撃! 【ダイナマイト・ナックル】!」

 

ニトロ・ウォリアーの腰の筒はやはりエンジンであったらしく、頭の管と共に炎を噴射させると、ヴォルカニック・ロケットを越えるスピードで間合いを詰め、両の拳で叩き潰す。

 

「ぐうッ…!」

 

フリント LP:2600→1700

 

「続けて……マッシブ・ウォリアー!」

 

マッシブ・ウォリアーが再びヘリポートをフリントに投げつける。

 

「く…ッ! かはッ! …ハァ…ハァ…!」

 

フリント LP:1700→1100

 

とうとうLPが2000を切り、同時にフリントの息も乱れ始めた。

一瞬焦りを覚えたフリントであったが、それはすぐに消える事となる。

 

「ターンッ……エンドッ…!」

 

LP:1500

手札:0

モンスター

・マッシブ・ウォリアー

・ニトロ・ウォリアー

魔法・罠

・無し

 

よく見ると、遊星の息も上がり始めていた。

それだけではない、前からも後ろからも、聞こえてくるのは足音と荒い口呼吸。

 

「(皆、苦しくなっているのは同じ……だが、誰一人とて脚を緩める者はいない! 俺も……カード達も!) 俺のターン! …ッドロー!」

 

フリント 手札:2→3

 

「……遊星ッ……行くぞ! 永続魔法《ブレイズ・キャノン》! これを墓地に送り……《ブレイズ・キャノン-トライデント》ッ……これも墓地に送る事で……来い! 《ヴォルカニック・デビル》!」

 

地面を割り、その中から獄炎と共に姿を現したヴォルカニックの切り札、”ヴォルカニック・デビル”。

それと対峙した遊星は、ヴォルカニック・デビルの体から発せられる炎と威圧感を、フリントがこの決闘にかける”執念”の現れの様に思えた。

 

ATK:3000

 

「やべぇ!? 気をつけろ遊星! フリントの切り札だ!」

 

クロウが遊星に向かってそう叫ぶと、遊星は走りながら身構える。

 

「バトルッ…!  ヴォルカニック・デビルでニトロ・ウォリアーを攻撃! …【ヴォルカニック・キャノン】ッ!」

 

ヴォルカニック・デビルがニトロ・ウォリアーに巨大な火炎岩を放つ。

それがニトロ・ウォリアーに直撃すると、ニトロ・ウォリアーが大爆発を起こし、マッシブ・ウォリアー諸共吹き飛んでしまう。

 

「うあぁぁぁ!!! …マッシブ・ウォリアーまでッ…!?」

 

遊星 LP:1500→1300

 

「ヴォルカニック・デビルの効果発動ッ…! 相手モンスターを戦闘破壊した時ッ…相手の場のモンスターを全て破壊! その数×500ポイントのダメージを与えるッ! 【ヴォルカニック・チェーン】ッ!」

 

ヴォルカニック・デビルが咆哮を上げると、遊星の足元から火柱が1本上がり、遊星を襲う。

さらに、発動がダメージステップとタイミングが悪く、ダメージ・イーターで身を守る事が出来ない。

遊星の攻撃(ニトロ・ウォリアー)防御(マッシブ・ウォリアー、ダメージ・イーター)を備えた堅固な布陣を、ヴォルカニック・デビルは一撃で粉砕する。

 

「ぐッ…!」

 

遊星 LP:1300→800

 

「……ターンエンドッ…!」

 

LP:1100

手札:0

モンスター

・ヴォルカニック・ロケット

魔法・罠

・無し

 

「俺のッ……ターンッ!」

 

遊星 手札:0→1

 

「(……ここまでか、後は鬼柳に…!)カードを伏せてターンエンドッ…!」

 

LP:800

手札:0

モンスター

・無し

魔法・罠

・セット

 

「俺のッ…ターンッ!」

 

フリント 手札:0→1

 

「カードを伏せるッ…! …ヴォルカニック・デビルで直接攻撃!」

 

ヴォルカニック・デビルがその大きな腕を遊星に向かって振り下ろす。

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

遊星 LP:800→0

 

「マジかよッ…! ここまで来た奴は初めてだぜッ! …頼むぞ大将ッ!」

 

クロウがそう言って後ろから遊星とフリントを追い越すと、先頭を走っている鬼柳と誘導役を交代し、鬼柳が後ろへと下がってくる。

 

「鬼柳ッ…! すまない……後を頼むッ!」

 

遊星は自分の伏せカードを鬼柳の魔法・罠ゾーンにセットすると、後方へと下がっていった。

 

「任せろッ! ……ようやくだな! 待ちくたびれた、というより、走りくたびれたぜ! これが最後だ! フリント……満足させてくれよッ!」

 

「……来いッ…! …鬼柳ッ!」

 

ランニング・デュエルもいよいよ終盤。

ラスト・ランナーにして、チーム”サティスファクション”リーダー、鬼柳との決闘が始まる。

 

「俺のターンッ! ドロー!」

 

鬼柳 手札:5→6

 

チーム”サティスファクション”のリーダーなだけあって、先導して走っていたのにも関わらず、鬼柳はまだ少し、体力に余裕があるようだ。

決闘による動揺が無かったから、という事もあるかもしれない。

 

「《ブラッド・ヴォルス》を召喚!」

 

鬼柳の場に現れたのは斧を持った魔獣人。

魔獣人”ブラッド・ヴォルス”はヴォルカニック・デビルに臆する事なく、腕に持った斧を振り回して威嚇する。

 

ATK:1900

 

「装備魔法《デーモンの斧》、《悪魔のくちづけ》の2枚を《ブラッド・ヴォルス》に装備! これで攻撃力1700ポイントアップだぁ!」

 

鬼柳の場に斧を持った妖艶な女性の悪魔が現れると、ブラッド・ヴォルスに斧を手渡し、頬に口付けをして姿を消す。

口付けをされたブラッド・ヴォルスは、興奮したように2本の斧を振り回す。

 

ATK:1900→3600

 

「行くぜぇ! バトル! ブラッド・ヴォルスで攻撃!」

 

ブラッド・ヴォルスが2本の斧を振り上げ、ヴォルカニック・デビルに斬り掛かる。

 

「罠発動ッ! 《プライドの咆哮》ッ! …攻撃モンスターとの攻撃力の差分だけLPを払いッ…ダメージ計算時のみ、攻撃対象モンスターの攻撃力を相手よりも300高い数値まで上げるッ!」

 

フリント LP:1100→500

ヴォルカニック・デビル ATK:3000→3900

 

ヴォルカニック・デビルが今までで一番大きな咆哮を上げると、斬りかかって来たブラッド・ヴォルスに向かって火炎を放ち、焼殺する。

 

「うおぉ!? …そうこなくっちゃなぁ!」

 

鬼柳 LP:2000→1700

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンドォ!」

 

LP:1700

手札:1

モンスター

・無し

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「俺のッ……ターンッ!」

 

フリント 手札:0→1

 

既に限界が近いフリント。

声を出すのもきつくなってきた。

だが、それでもフリントは声を張り上げる。

 

「ヴォルカニック・デビルで攻撃ッ…!」

 

「まだ終わらねぇよ! 遊星が伏せた罠カード《ダメージ・ダイエット》を発動! このターンのダメージを全て半分にする!」

 

ヴォルカニック・デビルが右腕を振り上げ、鬼柳を殴りつけるが、ダメージ・ダイエットの効果により止めを刺すには至らなかった。

 

「うおぉぉぉ!!!」

 

鬼柳 LP:1700→200

 

「(倒せないか…!)カードを伏せてエンドッ…!」

 

LP:500

手札:0

モンスター

・ヴォルカニック・デビル

魔法・罠

・セット

 

「ハッハッハ! いいぜフリントォー! お前といい、フレアといい、満足させてくれるじゃねぇか! だがここで悪い知らせだ! ゴールが近いぜ!」

 

鬼柳の言葉に、フリントがハッとして辺りを見渡す。

そこに広がっているのは、広場近くの見覚えがある風景であった。

 

「ゴールしちまえば俺達の勝ちだが……それじゃあ満足出来ねぇ! ゴール前に決着をつけてやるぜぇぇぇ!!! 俺のターン!」

 

鬼柳 手札:1→2

 

「永続罠《リビングデッドの呼び声》発動! 墓地から《ブラッド・ヴォルス》を特殊召喚ッ! そして魔法カード《デビルズ・サンクチュアリ》を発動! メタルデビル・トークンを生成! この2体をリリース! 《ヘル・エンプレス・デーモン》をアドバンス召喚ッ!」

 

ブラッド・ヴォルスとメタルデビル・トークンが光に包まれて姿を消すと、その光の中から禍々しい気を放つ女性の悪魔が現れる。

体こそ人間に近い姿をしているが、その”力”は並みの悪魔を軽く凌駕する。

これこそデーモンの女帝、”ヘル・エンプレス・デーモン”である。

 

ATK:2900

 

「(最上級モンスター…! だがヴォルカニック・デビルには―――)」

 

「バトル!  ヘル・エンプレス・デーモンで攻撃ィ!」

 

「!? む…向かい撃てッ…!」

 

ヘル・エンプレス・デーモンが掌をヴォルカニック・デビルに向かってかざし、黒い波動を放つ。

ヴォルカニック・デビルが口から火炎岩を放って応戦すると、火炎岩が黒い波動を掻き消し、そのままヘル・エンプレス・デーモンに直撃、消滅させる。

 

「うおぉ…!」

 

鬼柳 LP:200→100

 

ここに来て鬼柳の自爆特攻。

だが、鬼柳が勝負を捨てるような決闘者では無い事をフリントは解っている。

間違いなく、この行動には意味があるはずであった。

 

「……ここからが本番だァ! 速攻魔法《デーモンとの駆け引き》を発動ォ! 俺の場のレベル8以上のモンスターが墓地に送られたターン、手札・デッキから《バーサーク・デッド・ドラゴン》を特殊召喚出来るッ! 来い! 《バーサーク・デッド・ドラゴン》ッ!」

 

場に突然黒い穴が現れると、その中から先程のヘル・エンプレス・デーモン以上の禍々しい気と”力”を感じさせるドラゴンが這い出してくる。

完全に姿を見せると、上空へ飛び上がり、おぞましい咆哮を上げる。

 

ATK:3500

 

「(攻撃力3500…!?)」

 

「ヒャーハッハッハ! どうだぁ! こいつを防げるかフリントォー!!! 【バーサーク・デッド・ストリーム】!!!」

 

バーサーク・デッド・ドラゴンがヴォルカニック・デビル目掛け、口からブレスを放つ。

ヴォルカニック・デビルの攻撃力は3000、残りLPは500、これを受ければフリントの敗北である。

 

「俺はッ……負けはしないッ! 罠カード《フォーチュン・スリップ》を発動ッ! 相手の攻撃を無効にし、攻撃対象となった自分のモンスターを次のスタンバイフェイズまで除外するッ!」

 

ヴォルカニック・デビルが突然現れた時空の歪みに飲み込まれて姿を消すと、バーサーク・デッド・ドラゴンのブレスが空を切る。

 

「マ…マジかよ……凌がれちまった……」

 

先日のフレア戦と同様、異様に高揚していた鬼柳であったが、これで決着という所で勝機を逃した為、暴走気味であったテンションが一気にクールダウンした。

だからと言って、この決闘に対する熱が冷めたわけではない。

 

「…すげぇじゃねぇかフリントッ! まさかここまでやるなんてなッ…! 最後まで……その”力”ッ……見せてみろッ! ターンエンドッ!」

 

先程のハイテンションが祟ったのか、鬼柳の息が荒くなっている。

そして、それは鬼柳だけではなかった。

 

「ここでバーサーク・デッド・ドラゴンの効果発動……こいつは地獄の竜ッ…! 現世では力を保てないッ…! エンド毎に攻撃力が500ポイント下がるぜッ…!」

 

ATK:3500→3000

 

バーサーク・デッド・ドラゴンの攻撃力がヴォルカニック・デビルと並ぶ。

次のターン、フリントが通常召喚可能な攻撃力100以上のモンスターをドロー出来れば、フリントの勝利である、が―――――

 

「見えてきたッ! …広場だッ!」

 

先頭を走るクロウが叫ぶ。

その言葉を聞いてもフリントは動じず、指先に力をこめる。

 

「……俺のターーーン!!!」

 

フリント 手札:0→1

 

フリントは全ての力を振り絞るようにカードをドローした。

このドローが、全てを決める。

 

「スタンバイフェイズッ…! ヴォルカニック・デビルが俺の場に帰還するッ…!」

 

再び次元の歪みが現れると、中からヴォルカニック・デビルが姿を現す。

 

ATK:3000

 

「フリントはッ……フリントは何を引いたッ!?」

 

フリントはドローしたカードを、決闘盤のモンスターゾーンへと置く。

現れたのは火を纏いし弾丸――――

 

「……《ヴォルカニック・バレット》を召喚ッ!」

 

フリントが引き当てたのは攻撃力100のヴォルカニック・バレット。

これにより、”決闘自体”の勝者が決まった。

 

「広場に入るぞッ!」

 

クロウの掛け声と共に、5人は広場へと入る。

クロウの視線の先には――――

 

「みてみて! 似合う?」

 

「ぶかぶかですのー」

 

スタートライン、そしてフリントの帽子とマントを身に付けて遊んでいるフレアと、リリを初めとする様子を見に来たアジトの子供達が見えた。

 

「へへッ…! 何時の間にか観客と妙なレースクイーンがいやがる…! …うおぉぉぉ!!!」

 

クロウは一気にスピードを上げ、他の4人を引き離すとスタートラインの側に滑り込む。

 

「きゃあ!? ク、クロウ? ていう事は……皆!? 嘘!? 決着付いてないの!?」

 

「フレア! 横から見とけ! フリントが止めを刺すのが先か! ゴールするのが先か!」

 

クロウが荒い息を必死に抑えながら、フレアにも確認するよう促す。

 

「!? フリント急いでーーー……って、急いじゃ駄目ーーー!!! ああもうどっちーーー!!?」

 

突然な事に混乱しているフレア。

そして、ゴール目前にてフリントの攻撃が始まる。

 

「ヴォルカニック・デビルでバーサーク・デッド・ドラゴンを攻撃ッ!  ヴォルカニック・バレットで直接攻撃ッ!」

 

ヴォルカニック・デビルがバーサーク・デッド・ドラゴンに組み付き、共に噛み付き合って消滅すると、ヴォルカニック・バレットが一直線に鬼柳へと突撃、そして―――――フリントの足がラインを踏んだ。

 

「ぐあぁ!!!」

 

鬼柳 LP:100→0

 

ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響いた。

二人はラインを超えると、そのまま地面に倒れ込む。

荒い息のまま、二人は立ち上がろうとしない。

文字通り、全力を出し切ったのだ。

後ろの遊星とジャックもラインの側で膝に手をついて息を整えている。

 

「「クロウ! 結果は!?」」

 

遊星とジャックが同時に尋ねると、クロウは神妙な顔付きで、ゆっくりと答える。

 

「……フリントがラインを踏んだ瞬間、鬼柳の腹にバレットが刺さった。 で、次にLPが減る……つまり、決闘が終わるよりも早く、フリントがゴールした……俺達の勝ちだ」

 

クロウ、遊星、ジャックがフレアに顔を向ける。

フレアは真剣な表情でラインを見詰めていたが、やがてクロウに顔を向け、ゆっくりと頷く。

 

「……俺の……負けか……」

 

「……フリント、結果発表だ」

 

倒れていたフリントと鬼柳が上体を起こす。

 

「実力、体力、判断力、適応力……どれも問題ねぇ、決闘自体は勝ってたしな。 …だが、俺はこれらでお前を評価したくない」

 

「? どういう事だ…?」

 

鬼柳は立ち上がり、フリントの前に立つ。

その時の鬼柳の眼にはフリントに対する敬意が込められていた。

 

「お前はこの”ランニング・デュエル”において、常に全力だった。 あの時、お前がちょっとでも走る速度を緩めていれば、俺達の負けだった。 だけど、お前はこの決闘中、一度もペースを落とさず、常に全力で走っていた! …そうだよなお前等!」

 

「ああ!」

 

「フン! 俺との決闘には納得できんがな」

 

「俺、一度もスピードを調整しなかったぜ。 正直、追いかけるので一杯一杯だったな……普通に競争すれば、体力は俺達以上かもな」

 

3人に同意を求める鬼柳。

それに対し、遊星とジャックは笑みを浮かべ、クロウは素直にフリントを称賛する。

 

「……フリント、俺達はお前の”決闘者としての魂”を認め、フレアと共にチーム”サティスファクション”に迎え入れる! フリント、お前は最ッ高だぜ! これからも満足させてくれよ!」

 

そう言って、鬼柳が右拳をフリントの前に出す。

 

「フリント!!! やったーーー!!!」

 

「ぐふっ…!?」

 

合格に歓喜したフレアが勢いよくフリントの背中に抱きつく。

座ったままのフリントは一瞬息が詰まるが何とか持ちこたえ、微笑を浮かべると鬼柳の拳に自分の右拳を合わせた。

 

 

* * *

 

 

「ああ、今日は満足したぜ。 明日は”オフ”だし、今日はもう解散するか」

 

熱いランニング・デュエルの後、クロウのアジトへと戻った一行。

現在は昼食を終え、各々の時間を過ごしていた。

クロウは子供達の相手を、遊星は頼まれていた拘束装置の修理と改造を、ジャックは何処からか拾ってきた一人用のソファーに腰掛けてふんぞり返り、鬼柳は自分のデッキを調整しながらそう呟いていた。

 

「オフって何?」

 

子供達に混じって遊んでいたフレアが鬼柳の呟きを聞き取り、それについて質問する。

 

「”休み”の事だ。 俺達だって活動しっぱなしじゃ疲れちまうからな。 お前達も明日は好きなように過ごせよ……って、フリントは何処行った?」

 

鬼柳が辺りを見渡しても、フリントの姿が見えない事に気付く。

 

「フリントは小屋の中で寝ちゃったよ。 本当に全力だったのね」

 

「そうだよなぁ、フリントの奴、馬鹿正直というかなんというか、最後の最後までペースを落とさないなんてよ。 俺が同じ立場だったら、最後の最後でちょいと緩めちまってるな」

 

クロウが子供達にトランプを配りながらそう呟く。

 

「フリント曰くねぇ……――――

 

 

あの”テスト”は全力を出し切ってこそ、意味があるのだと俺は思う。

 

 

――――……だって。 (あ! 凄くいい手札……)」

 

フレアが配られたトランプの手札を確認しながら、フリントから聞いた言葉を口にする。

 

「……そんな事言われたら、緩めちまうなんて言った俺がメチャクチャかっこ悪いじゃねぇか……」

 

クロウが落ち込みながらそう言うと、トランプの円陣を組んでいた子供達が一斉に笑い出す。

 

「(それにしても、”オフ”……お休みか~……フリントと一緒にサテライト探検でもしてみようかな!)」

 

まだ昼時だというのに、フレアは明日への期待を膨らませながら、自信のある手札をショーダウンさせた。

 

「ストレートフラッシュ!!!」

 

 




すいません、ちょっとふざけてみたくなったんです。
感想のほうで”次はランニング・デュエル”という感想を見て、電流が走ったんです。 ランニングをやりたいと(笑)
で、やってしまった訳ですが……非常に難しく感じました(汗)
アクションって凄く難しい(汗)
正直距離感とかおかしいかもしれませんね……もうちょっとコースの描写をいれるとか……そもそも走らせてどうするとか(これを言ったら元も子もないですが)……要勉強ですね。

遊星に先のカードとかパラレルの世界のカードとか使わせておいてあれなのですが、遊星が現時点で持っているシンクロはフォーチュンカップ時点で登場したもの(カタパルト以外)だという事でお願いします。 

最近”アニメオリカに頼りすぎなのでは?”と言った感想を頂きました。
そうですよね~~(汗)使いすぎだよバレット&カートリッジ。
二人にあってるから、って理由をつけて連発してました。
前作でもあったんですが、自分は使えるッ! と思ったカードを連発するくせがあるんですよね。(今作ならガード・ブロックとかですかね)それだと決闘がワンパターンになるのは明らかなので、この癖を直していけるようにするのと、出来るだけバレット&カートリッジを連発しないようにしていきたいと思います。

後は文章能力か~…(汗) 課題だらけです(恥)
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