遊戯王5D's ~荒野のデュエリスト~   作:鬼柳高原

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第70話 リバース・オブ・アルカディア

「うう……うぐぐ……」

「何時までそうしてるんです?」

 

 腹を押さえて蹲る青年”バーナード”はゆっくりと顔を上げ、ソファーでデッキを元に戻しているフレアへと視線を向ける。

 

「いいパンチだ……冗談でも容赦しないという鉄の意志を感じる……さてはフレアちゃん、心に決めた野郎がいるな……?」

「もう一発いきます?」

 

 デッキを組み終えたフレアは立ち上がり、蹲るバーナードの元へと歩を進める。

 

「ひぃぃ!? 暴力反対! そ、そうだテレビ!」

 

 バーナードは隠し持っていたテレビのリモコンのボタンを押すと、テレビが再び映像を映す。

 

〔何とかバトンは繋がったぁー! 両チーム共にラスト・ホイーラー、不動 遊星対ホセの一騎打ちとなるぞぉー!!!〕

 

「えー!? もうラスト・ホイーラー!? ジャックは!? クロウは!?」

 

 フレアの注意がテレビに逸れると、バーナードは立ち上がって装置の前に移動し、再びテレビの電源を消す。

 

「あー!?」

「ふっふっふ! フレアちゃんまだお仕事は終わってないよ。テレビはちゃんと約束を守ってからな」

 

 そう言ってバーナードは装置に手を置いて操作し始める。

 

「ロックは解いたじゃないですか! 約束は守りましたよ!」

「ちゃんと機能するかどうか確かめるまでは駄~目!」

「え~……だいたい、その装置なんなんです?」

「これはアーククレイドル内部全体の管理システムだ。これを使えば広すぎるこのアーククレイドルの何処の部屋に誰がいるのか、あっという間に分かるんだ。ルートだって示せるぞ! つまり?」

「え? つまり……フリントの居場所を!?」

「ご名答~! これで案内してあげれるよ」

 

 フレアは先程までの怒りと疑いを忘れ、表情に感動を浮かべる。バーナードは最初からフリントに会わせるつもりであり、ロックを解除させたのも自分の為ではなく、フレアの為にフリントを捜す手段を得る為だったのだ。

 

「バーナードさん……私、バーナードさんの事疑ってた……」

「気にするなよ。さあ何処かな~……ん?」

 

 表示されたアーククレイドル内のマップを見て、バーナードは顔色を変える。

 

「どうしたんですか? フリントいました?」

「……馬鹿な、ありえるのか? こんな事……」

「え、な、なんです? 何があったんですか?」

「侵入者だ。勿論、君の事じゃない」

 

 バーナードがマップ上に記されている赤い点を指差す。マップ上には他に黄色い点が1つと2つに分かれ、3つ記されていた。

 

「黄色い点はシステム上、認知されてる存在って意味だ。君とフリント、それから俺を指す」

「じゃあ赤は?」

「赤はエネミー……”招かれざる客”って事だ。しかし何だこいつは? こんな異空間の中にある場所にどうやって入ってきた?」

 

 フレアは一瞬だけ遊星達を思い浮かべたが、さっきのテレビではまだ試合中だったはず。遊星達ではない。

 

「(じゃあ”チーム・ラグナロク”? 不思議な人達だからもしや……)」

「同じ場所から動いてない。……よし、これなら」

 

 バーナードが装置にコマンドを打ち込みシステムを起動させると、装置の横に魔法陣の様な模様が浮かび上がる。

 

「侵入者をここへ転送させる! フレアちゃん下がって!」

「は、はい!」

 

 フレアが下がった瞬間、模様から眩い光が放たれる。そして光が止むと、そこには帽子、サングラス、ロングコートで身を隠した怪しい男が立っていた。

 

「な、何だ? ……ここは?」

「おい、お前は何者だ!」

 

 男はバーナードの声に振り向くと、近くにいたフレアをサングラス越しに見やる。

 

「……フレア・ヴィルアース。何故ここに……」

「え!?」

「え? 知り合い?」

 

 バーナードがきょとんとした表情でフレアを見るが、フレアは頭をぶんぶんと横に振る。

 

「フフフ……これは失礼。君とは初対面だよ」

 

 男は笑うと、帽子とサングラスを取り外す。フレアは男の顔を見た瞬間、飛び上がりそうな程驚いた。

 

「!? あ、貴方……何で……貴方が生きて……」

「おや? あの戦いの後、”皆”蘇ったじゃないか? なら私だって生きていても不思議ではないだろう?」

「でも……でも! 貴方は”地縛神”に食べられて!」

「……そんな事まで知っているとは、やはり君には”特別な力”があるようだね。調べの通りだ」

 

 顔の右半分を隠す程の赤い前髪を揺らし、男が笑みを洩らす。フレアはこの男にあった事はないが、その悪行を”夢”で目にしていた。

 

「”ディヴァイン”……!」

「フフフ……初めましてフレア。私のアキと随分仲良くしてくれてるらしいじゃないか。礼を言うよ」

 

 アキが遊星達の仲間となる前に身を寄せていたサイコ・デュエリストの集団組織”アルカディア・ムーブメント”。表向きはサイコ・デュエリストの研究・保護を目的とした組織であったが、裏では過酷な人体実験を行い、兵器として改造したサイコ・デュエリストを紛争地域に送る等、非人道的な行いを繰り返す恐るべき組織であった。

 そのアルカディア・ムーブメントの総帥である“ディヴァイン”はサイコ・デュエリスト達の力で世界を掌握しようと企んでおり、その駒としてアキを利用しようと“フォーチュンカップ”や”ダークシグナーとの戦い”でも暗躍したが、最期は遊星の作戦によって全てを自白し、ダークシグナー”ミスティ・ローラ”の逆鱗に触れ、地縛神に捕食された。その後はまったく音沙汰も無かった事から死んだと思われていたが、まさかこの様な所で目にするとは思いもしなかった。

 

「貴方のじゃないわ。誰のものでもない。アキちゃんはアキちゃんよ!」

「何を言うんだい? あの娘の力を引き出してやれるのは私だけだ。だから私のものであるべきなのだよ」

「もうアキちゃんにサイコ・デュエルの力は残ってないの! 関わらないでよ!」

「知ってるさ。力が使えなくて事故を起こしたんだってね。早く調整してあげないと」

「どうしてその事を……?」

 

 ディヴァインは懐からタブレット端末を取り出し、それに視線を落とす。

 

「あれから1年位か。蘇った私は組織の残党を集め、再建を図っていたのだ」

 

 本部を失い、大打撃を受けたディヴァインはこの1年間は表に出ず、力を蓄える事に専念していた。その際に情報収集も欠かさず、特にシグナー達の周りは徹底的に調べていた。

 

「そしたら、何とシグナー達が本格的にイリアステルと敵対し始めているじゃないか。これはチャンスだと思ってね。私にとっての障害はシグナーとイリアステル。その二つがぶつかり合っている隙に、イリアステルの本拠を叩いてしまおうと思ったわけさ」

「お前、何者だ! どうやってここまで来たんだ! 見たところお前は”こっち側”の奴じゃない。しかも一人か?」

 

 横で二人のやり取りを聞いていたバーナードが割り込む。今までの軽い雰囲気は無く、それでいて作られた雰囲気でも無い、真剣そのものの表情。これが彼の”決闘者”としての姿なのかもしれない。

 

「ああ、私は”そっち側”ではない。一人で来たんだ。ま、”腐りかけた老いぼれ”と”残りカス”の君が相手ならおじさん一人でも十分だろう?」

「貴様……何処まで知っている!?」

 

 バーナードがディヴァインに向かってカードを投げると、ディヴァインは掌をかざすだけで触れずにカードを撃ち落す。おそらく彼自身のサイコ・パワーによるものだろう。アルカディア・ムーブメント総帥という肩書きは伊達ではなく、彼自身も優秀なサイコ・デュエリストなのである。

 

「教える義理は無い。だが、私だって解らない事は沢山ある。知っていればこんな傷も残らなかった――――」

 

 ディヴァインは前髪を掻き上げ、右目を囲む様にして付いた火傷の跡を見せる。

 

「ここにシグナーの仲間であるフレア・ヴィルアースがいた事も予想外だった。まったく、上手く行かない事ばかりだ」

 

 ディヴァインはやれやれと言う風に肩を竦めると、腕に装着していた決闘盤を展開する。

 

「君がいるって事は、フリントもいるのだろう? フリントは厄介だ。決闘データは少ないし、生身での戦闘力も高い。ならば……君を盾にするのが一番得策だろう」

 

 ディヴァインが決闘盤を操作した瞬間、ドーム状の光がディヴァインとフレアを閉じ込め、バーナードを閉め出す。

 

「な、何!?」

「フレアちゃん!?」

「大人しくして貰おうか。そうすれば手荒な事はしない」

 

 本性を表すかのようにディヴァインが黒い笑みを浮かべると、フレアは決闘銃を抜き、デッキをセットして決闘盤へと変形させ装着する。

 

「フレアちゃん、大丈夫か!」

「大丈夫、私に任せて!」

 

 バリアの様に堅固となった光に張り付くバーナードにフレアは安心させるように笑いかけると、ディヴァインに向き直って睨みつける。

 

「アキちゃん、カーリーさん、ミスティさん……貴方は色んな人を傷付け、利用して不幸にしてきた……」

 

 ”夢”で見た”ダークシグナーとの戦い”の光景は、フレアの心に深く焼きついている。その記憶を脳裏に映し、フレアは拳を強く握り締める。

 

「ダークシグナーとの戦いは”闇”が深くて、辛かったし、悲しかった!」

 

 ”裏切り”に絶望した鬼柳。”後悔”に押し潰されそうになった遊星。”運命”に狂わされたカーリー。

”己”に惑うジャック。”復讐心”に取り付かれたミスティとボマー。”過去”を振り切れないアキ。”闇”しか知らぬディマク。”弱さ”に悩む龍亞と龍可。”独り”となって戦いへと身を投じたクロウ。”宿命”を背負ったゴドウィン兄弟――――

 

「……でも、最後には皆の心に”光”が生まれた! シグナーにも、ダークシグナーにも!」

 

 ”本当の友情”を知った鬼柳。”絆”を見失わなかった遊星。”愛”に救われたカーリー。”己”を受け入れたジャック。”真実”を見つけたミスティとボマー。”未来”へと歩き始めたアキ。”光”の世界に解き放たれたディマク。”強さ”を結んだ龍亞と龍可。”心”を分かち合ったクロウ。”希望”を胸に旅立ったゴドウィン兄弟――――多くの光で満ち、目から涙となって溢れ出したあの日の夜を、フレアは決して忘れない。

 

「でも……貴方だけは変わっていない……! 深い闇を皆の光で乗り越えたあの戦いの結末を知っても、貴方は変わらなかった!」

「当然さ。私は不完全な人間を超越した”サイコ・デュエリスト”なんだよ。一々揺らぐ様な不安定な心は持ち合わせていない。完璧なのさ。早くアキもそうなる様に調整してあげなくてはね。フフフ……」

 

 フレアは怒りで拳を震わせ、歯を噛み締めながら帽子を押さえて深く被る。

 

「ディヴァイン! 私は貴方を絶対に許さない!」

 

 帽子を振り上げ上空に投げた瞬間、フレアの姿が決闘巫女のものへと変わる。

 

「へ、変身した……フレアちゃん、一体……」

「バーナードさん! 帽子お願い! ここは私に任せて!」

「あ、ああ! 俺の方でも何とかしてみる! 頼んだ!」

 

 呆気に取られながら光の壁から飛び出した帽子を受け止めると、バーナードは装置の前に立ち、光の壁の解析を始める。

 

「決闘よ!」

「仕方が無い。少し痛い目に遭って貰うよ」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

「私のターン」

 

 ディヴァイン 手札:5→6

 

「フィールド魔法《PSY(サイ)フレーム・サーキット》を発動」

 

 ディヴァインがフィールド魔法を発動させると、二人を閉じ込めているドーム状の光に回路の様な光の線が走る。

 

「永続魔法《コモンメンタルワールド》を発動。カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

LP:4000

手札:2

モンスター

・なし

魔法・罠

・コモンメンタルワールド

・セット

・セット

フィールド魔法

・PSYフレーム・サーキット

 

「(モンスターは……?) 私のターン!」

 

 フレア 手札:5→6

 

「自分の場にモンスターが存在しない場合、手札から《カイザー・ブラッド・ヴォルス》を特殊召喚出来る!」

 

 フレアの場に斧を手に殺気を漲らせた魔獣人が現れた瞬間、ディヴァインの場から閃光が放たれる。見ると、ディヴァインの場に電気の様なオーラを纏ったアーマーと、同じく電気オーラを纏った超能力戦士が現れていた。

 

 カイザー・ブラッド・ヴォルス ATK:1900 レベル5

 PSYフレームギア・α ATK:500 レベル1

 PSYフレーム・ドライバー ATK:2500 レベル6

 

「え!?」

「手札のチューナーモンスター《PSYフレームギア・α》は自分の場にモンスターが存在せず、相手が召喚・特殊召喚に成功した時、このカードと手札・デッキ・墓地にある《PSYフレーム・ドライバー》1体を特殊召喚し、デッキからこのカード以外の”PSYフレーム”カード1枚を手札に加える。私はデッキから《PSYフレーム・ドライバー》を場に呼び出し、《PSYフレームギア・β》を手札に加えよう」

 

 ディヴァイン 手札:1→2

 

「さらに《PSYフレーム・サーキット》の効果発動! ”PSYフレーム”が特殊召喚された場合、”PSYフレーム”のみを素材として即座にシンクロ召喚を行える!」

「相手のターンに!? これって……」

「こいつは……」

 

 相手のターンに奇襲するかの様なシンクロ召喚。フレアに、そしてバーナードの脳裏に、一つの”答え”が浮かんだ。

 

「レベル6《PSYフレーム・ドライバー》に、レベル1《PSYフレームギア・α》をチューニング!」

 

  PSYフレームギア・αが自身を光輪へと変えると、PSYフレーム・ドライバーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「心の深淵が創り出す我が憎しみの鎧よ。猛き雷を纏い、世界を蹂躙せよ!」

 

 光の柱から現れたのは、アーマーを装着したPSYフレーム・ドライバー。アーマーの一部には先ほどの PSYフレームギア・αの姿が見える。

 

「シンクロ召喚! 現れろ! 《PSYフレームロード・Ζ》!」

 

 ATK:2500 レベル7

 

「シンクロ召喚に成功した事により、永続魔法《コモンメンタルワールド》の効果発動。自分がシンクロ召喚に成功する度に相手に500ポイントのダメージを与える」

 

 ディヴァインの永続魔法から光弾が放たれると、呆気に取られていたフレアはハッと我に返り、結界を張ってサイコパワーによる実体のダメージを防ぐ。

 

 フレア LP:4000→3500

 

「フフフ……随分と驚いているようだな?」

「! ……そんなはずは! 《俊足なカバ バリキテリウム》を特殊召喚! このカードは手札から特殊召喚出来る!」

 

 フレアの場に凄まじい速度でバリキテリウムが駆けつける。 バリキテリウムにはお互いの墓地から相手の場にレベル4モンスターを与えてしまうというデメリットがあるが、墓地には条件のモンスターは存在しない為、フレアにとってのデメリットは無くなる。

 

 ATK:1600 レベル4

 

「《クロクロークロウ》は私の場に闇属性が存在する場合、手札から特殊召喚出来る! カイザー・ブラッド・ヴォルスは闇属性! 来て!」

 

 続けて足にクローを装備した非常にアンバランスな頭でっかちのカラスが現れる。

 

 ATK:900 レベル2

 

「魔法カード《烏合の行進》を発動! 自分の場の獣族・鳥獣族・獣戦士族のどれかが存在する場合、私の場の獣族・鳥獣族・獣戦士族それぞれ1種類につき、カードを1枚ドローする! 私の場には3種族全て揃ってる! よって3枚ドロー!」

 

 フレア 手札:2→5

 

「手札から獣族1体を墓地に送り、手札からチューナーモンスター《虚栄の大猿》を特殊召喚!」

 

墓地に送ったカード

マイン・モール

 

 補充されたフレアの手札から虚栄の大猿が現れる。

 

 ATK:1200 レベル5

 

「レベル2《クロクロークロウ》に、レベル5《虚栄の大猿》をチューニング!」

 

  虚栄の大猿が自身を5つの光輪へと変えると、クロクロークロウを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「太古の森よりフィールドを制圧する精霊よ! かりそめの姿にその身をやつし、降臨せよ!」

 

 光の柱の中から現れたのはフィールドを制する”決闘竜”の一体――――

 

「シンクロ召喚! 一途なる”祈り”の決闘竜! 《妖精竜 エンシェント》!」

 

 ATK:2100 レベル7

 

「これは……シグナーの竜!?」

「(流石に私の”決闘竜”までは知らないみたいね) シンクロ召喚に成功した時、手札からチューナーモンスター《シンクロ・マグネーター》を特殊召喚!」

 

  妖精竜に追随する様に磁石をモチーフとしたロボットがフレアの場に現れる。

 

 ATK:1000 レベル3

 

「妖精竜 エンシェントの効果発動! フィールド魔法が存在する場合、場の攻撃表示モンスター1体を破壊できる! 破壊するのは《PSYフレームロード・Ζ》! 〈森葬の霊場〉!」

「データとは違う効果……という事は、似て非なる存在か、面白い。やれZ!」

 

 妖精竜がフレームロード・Ζを破壊しようと光を放った瞬間、フレームロード・Ζも同時に閃光を放つ。光が止んだ時、場から妖精竜とフレームロード・Ζは姿を消していた。

 

「何でエンシェントまで!?」

「PSYフレームロード・Ζのモンスター効果を発動したのさ。相手の特殊召喚された攻撃表示モンスター1体とこのカードを私の次のスタンバイフェイズ時まで除外する。だから姿が消えたのだ」

「相手のターンに除外して守る……やっぱりこれって」

「ククク……君が考えている通り、これは不動遊星のデータを元に創ったカードだ」

 

 フレアの考えを見抜くような視線を向け、ディヴァインは笑う。

 

「私はダークシグナーに対して2度も死の淵へと追いやられた。それは何故か? 決まっている。侮ったからさ。想像の上を行く強大な力を前に己を過信し、侮った……だから私は求めたのさ。シグナーにも機皇帝にも対抗出来る力を!」

「遊星の”アクセル・シンクロモンスター”……」

 

 チーム・太陽、チーム・ラグナロク、二つの試合で見せた遊星の進化の結晶。意表を突く相手のターンでのシンクロ召喚。そしてシンクロキラーを掻い潜る除外防御効果――――

 

「サイコ・パワーに加え、この力を得た私は完璧だ! シグナーもイリアステルも、蹂躙してやる! 我が理想の世界の為に!」

「そんな事させない! レベル5《カイザー・ブラッド・ヴォルス》に、レベル3《シンクロ・マグネーター》をチューニング!」

 

  シンクロ・マグネーターが自身を3つの光輪へと変えると、カイザー・ブラッド・ヴォルスを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ! 魂を震わし、世界に轟け!」

 

 光の柱から舞い上がるは、フレアの進化の結晶である決闘竜の一体――――

 

「シンクロ召喚! 光差す”絆”の決闘竜! 《閃珖竜 スターダスト》!」

 

 ATK:2500 レベル8

 

「(スターダスト……うん、臆さず攻める!) チューナーモンスター《極星獣グルファクシ》を召喚!」

 

 続けて現れたのはグルファクシ。盾にしかなれなかった前回の決闘のせいか、今度こそはと言わんばかりに鼻息荒く、高らかに嘶く。

 

 ATK:1600 レベル4

 

「レベル4《俊足なカバ バリキテリウム》に、レベル4《極星獣グルファクシ》をチューニング!」

 

 グルファクシが自身を4つの光輪へと変えると、バリキテリウムを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「漆黒の風を纏い……末世から飛翔せよ!」

 

 光の柱を吹き飛ばし、黒い旋風と共に”決闘竜”が姿を現す。

 

「シンクロ召喚! 思いを繋ぐ”昇華”の決闘竜! 《玄翼竜 ブラック・フェザー》!」

 

 ATK:2800 レベル8

 

「ほう、今度は別の2体……いいじゃないか、君にも大分興味が沸いてきたよ」

「バトル! ブラック・フェザーで直接攻撃! 【黒怒尖闘撃】!」

 

  玄翼竜がディヴァイン目掛けて突進する瞬間、再びディバインの場が閃光に包まれる。

 

「手札の《PSYフレームギア・β》の効果発動! 自分の場にモンスターが存在せず、相手が攻撃宣言した時、このカードと手札・デッキ・墓地にある《PSYフレーム・ドライバー》1体を特殊召喚し、攻撃モンスターを破壊する! デッキから特殊召喚!」

 

 ディヴァインの場にPSYフレームギア・αとは違う形状のアーマーがデッキから呼び出されたPSYフレーム・ドライバーと共に現れ、玄翼竜に向かって電撃を放つ。

 

 PSYフレームギア・β ATK:700 レベル1

 PSYフレーム・ドライバー ATK:2500 レベル6

 

「スターダストの効果発動! 1ターンに1度、自分の場に表側表示で存在するカード1枚を選択! 選択したカードは、このターンに1度だけ破壊されない! ブラック・フェザーを守って! 〈波動音壁〉!」

 

 閃珖竜が玄翼竜の背に付くと、光の障壁を張り、電撃から玄翼竜を守る。

 

「防いだか、そうでなくては……さて、今度はサーキットの効果発動! レベル6《PSYフレーム・ドライバー》に、レベル1《PSYフレームギア・β》をチューニング!」

 

 フレームギア・βが自身を光輪へと変えると、 フレーム・ドライバーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「尽きる事無き憎悪! シンクロ召喚! 《PSYフレームロード・Ζ》!」

 

 光の柱から現れる2体目のフレームロード・Ζ。それが引き金となり、コモンメンタルワールドからフレアへと光弾が放たれる。

 

 ATK:2500 レベル7

 フレア LP:3500→3000

 

 今度は余裕を持って光弾を防ぐフレア。その前で攻撃を止められていた玄翼竜が咆哮を上げる。

 

「ブラック・フェザーの効果発動! 1ターンに1度、自分がダメージを受けた時、デッキトップから5枚まで墓地に送り、その中にモンスターがあった場合、このカードの攻撃力を400アップする! 私は5枚墓地へ! 〈黒翼再戦〉!」

 

 フレアはデッキトップから5枚を1度に引き抜くと、その一番下のカードを確認する。

 

「あった! モンスターカードの《こけコッコ》がある事により、400アップ!」

 

 ATK:2800→3200

 

 これで能力合戦は終了し、バトルへと戻る。バトル中に相手モンスターが特殊召喚された為、フレアは対象を選び直すかバトルを中止しなければならない。

 

「(きっと効果で避けられるけど、今の内にダメージを与えていきたい!) フレームロード・Ζを攻撃!」

 

 玄翼竜が再び襲い掛かるが、フレームロード・Ζは動こうとしない。

 

「(効果を発動しない!? 何で?)」

「迎え撃て! サーキットのもう一つの効果発動! PSYフレームが戦闘を行うダメージステップ開始時、手札の”PSYフレーム”1体を捨てる事でそのPSYフレームの攻撃力分、戦闘を行うPSYフレームの攻撃力をターン終了時までアップさせる! 攻撃力1500の《PSYフレームギア・ε》を捨て、攻撃力を1500上げる!」

 

 フィールドの模様から電気が発せられ、フレームロード・Ζにエネルギーが供給される。

 

 ATK:2500→4000

 

 フレームロード・Ζはフィールドから受け取った電気を腕に集中させると、玄翼竜に向かって放ち、撃ち落として破壊する。

 

「ブラック・フェザー!? く……ううっ!?」

 

 フレア LP:3000→2200

 

 サイキック族モンスターを介したサイコパワーは永続魔法によるバーンよりも強力であり、フレアは障壁を張っても圧され、僅かに後退する。

 

「速攻魔法《グリード・グラード》を発動。相手のシンクロモンスターを破壊している場合、2枚ドローする」

 

 ディヴァイン 手札:0→2

 

「調子に乗るんじゃない。能力を使わなくったって小娘の物真似ドラゴンなど、どうにでも出来るのだよ」

「くっ……ターンエンド」

 

LP:2200

手札:1

モンスター

・閃珖竜 スターダスト

魔法・罠

・なし

 

「私のターン!」

 

 ディヴァイン 手札:2→3

 

「スタンバイフェイズ。除外したモンスター達は場に戻る」

 

 場が閃光に包まれると、それぞれの場に妖精竜と1体目のフレームロード・Ζが戻ってくる。

 

「フレームロード・Ζ2体の効果発動! 場のモンスター全てを除外する」

「くっ!」

 

 場が再び閃光に包まれると、場からフレアの竜とディヴァインの超能力戦士達が消え去る。

 

「さあ、これでがら空きだ。もっと君の力を見てみたかったが、これで終わりにしよう。永続罠《リビングデッドの呼び声》! 墓地から《PSYフレームギア・ε》を特殊召喚!」

 

 ディヴァインの場に細長い胴体のマシンが現れる。

 

 ATK:1500 レベル2

 

「私の場にサイキック族が存在する場合、このカードはリリース無しで召喚できる! 来い、《アーマード・サイキッカー》!」

 

 続けて場に特殊装甲を纏った超能力戦士が現れる。

 

 ATK:2200 レベル6

 

「レベル6《アーマード・サイキッカー》に、レベル2《PSYフレームギア・ε》をチューニング!」

 

 PSYフレームギア・εが自身を2つの光輪へと変えると、アーマード・サイキッカーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「逆巻け、我が復讐の黒炎! シンクロ召喚!」

 

 光の柱から現れたのは、全身から電気を迸らせた悪鬼。その恐ろしい形相は耐えぬ憎悪を表し、背中の翼を広げ、フレアに向かって凄まじい咆哮を上げる。

 

「《メンタルスフィア・デーモン》!」

 

 ATK:2700 レベル8

 

 シンクロモンスター召喚により、コモンメンタルワールドの効果が発動する。

 

 フレア LP:2200→1700

 

「このモンスター……」

「私のエースモンスターさ。知ってるのかな? まあどちらでもいい。これで止めだ。バトル! メンタルスフィア・デーモンで直接攻撃!」

「墓地から罠カード《光の護封霊剣》を除外して効果発動! このターン、相手は直接攻撃できない!」

 

 メンタルスフィア・デーモンが攻撃を行おうと構えた瞬間、複数の光の剣がメンタルスフィア・デーモンを囲み、動きを封じる。

 

「小賢しい……ターンエンド!」

 

LP:4000

手札:2

モンスター

・メンタルスフィア・デーモン

魔法・罠

・コモンメンタルワールド

・リビングデッドの呼び声

フィールド魔法

・PSYフレーム・サーキット

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:1→2

 

「カードを伏せ、魔法カード《命削りの宝札》を発動! このターン、相手へのダメージと特殊召喚を放棄する事で、デッキから手札が3枚になる様にドローする! 私の手札は0枚、よって3枚ドロー!」

 

 フレア 手札:0→3

 

「モンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:1700

手札:0

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「守るので精一杯か? 私のターン!」

 

 ディヴァイン 手札:2→3

 

「スタンバイフェイズ時、全てのモンスターが場に戻る」

 

 先のターンの様に場が閃光に包まれ、閃珖竜と妖精竜が場に戻る――――そう、戻ってきたのはドラゴン達だけであった。

 

「おや?」

「ドローフェイズ時に速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動させたの。除外されていた貴方のシンクロモンスター2体を墓地へ送ったわ!」

「そうか、これを狙っていたのか。くくく……」

「…………」

 

 シンクロモンスター2体の損失はかなりの痛手のはずだが、ディヴァインの表情は崩れない。不気味な程の余裕さに気圧されるのを感じたフレアは、彼が巨大組織を纏め上げていた総帥だということを思い出す。

 

「幾ら特殊な力を持っていても、君は所詮“夢見る少女”に過ぎない」

「……何ですって?」

「アキもそうだが、力の解放の仕方が下手糞なんだよ。そう、君が私への憤りでその姿を見せた事だ」

 

 不適な笑みを浮かべながら、ディヴァインは目の前の決闘巫女を指差す。

 

「“力”というのは感情に任せて使うものであってはならない。成すべき事を成す為、効率良く利用しなければならないのだよ。私の様にね」

「そうやって、貴方は多くの人を不幸にした……!」

 

 フレアの怒気に反応したのか、PSYフレーム・サーキットがビリビリと揺れ動いて反応する。

 

「ほらそれだ。軽い引き金で簡単に発砲する。君とアキは同じだ。激しい分単純で、ちょっと囁いてやれば簡単に誘導できる……フフ、フハハハ!」

「ディヴァインッ!!!」

 

 怒り心頭のフレア。ディヴァインはそれを愉快そうに笑うと、決闘盤を構えなおした。

 

「教えてやろう、力の使い方を! 魔法カード《デビルズ・サンクチュアリ》を発動! 場に《メタルデビル・トークン》1体を特殊召喚する。そしてこれをリリースし――――」

 

 ディヴァインの場に現れたメタルデビル・トークンが光の中へと消えると、その光から一人の超能力者が現れ、両手を左右に翳す。

 

「アドバンス召喚! 《マックス・テレポーター》!」

 

 ATK:2100 レベル6

 

「マックス・テレポーターの効果発動! LPを2000払い、デッキからレベル3のサイキック族2体を特殊召喚する! 来い、《サイコ・コマンダー》! 《メンタルプロテクター》!」

 

 ディヴァイン LP:4000→2000

 

 マックス・テレポーターの両手から光が放たれると、その両隣に宙に浮いた砲台に乗った軍人の様なチューナーモンスターと、特殊な電波で体を覆った金色のロボットが現れる。

 

サイコ・コマンダー ATK:1400 レベル3

メンタルプロテクター ATK:0 レベル3

 

「レベル3《メンタルプロテクター》に、レベル3《サイコ・コマンダー》をチューニング!」

 

 サイコ・コマンダーが自身を3つの光輪へと変えると、メンタルプロテクターを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。

 

「心の深淵に刻まれし黒き意志よ、世界を震わす地鳴りとなりて全てを崩せ!」

 

 光の柱の中から現れたのは頭と四肢に鉱石の角を生やした機械獣。機体に薄らと光を点すと同時に、空間を振るわせる凄まじい咆哮を上げる。

 

「シンクロ召喚! 来い、《超念導体(サイコンダクター)ビヒーマス》!」

 

 ATK:2400 レベル6

 

ビヒーマスの召喚と同時に、コモンメンタルワールドの効果が発動する。

 

 フレア LP:1700→1200

 

「バトルだ! ビヒーマスで閃珖竜 スターダストを攻撃!」

「(攻撃力の低いモンスターで!?) スターダストの効果発動! スターダストを守るわ! 〈波動音壁〉!」

 

 ビヒーマスが閃珖竜の波動音壁に触れた瞬間、2体の間の空間が捻じ曲がり、共に巻き込まれて消えてしまった。

 

「えっ!?」

「ビヒーマスは戦闘を行ったモンスターと共に除外する事が出来る。小賢しいドラゴンには消えて貰った。……戦闘時に攻撃力を上げるか相手を破壊する効果だと思ったのか?」

 

 ディヴァイン LP:2000→1900

 

 ディヴァインの言葉にフレアは歯を噛み締める。破壊でなければ閃珖竜の効果は意味を成さない。フレアはディヴァインの手を読み違えたのである。

 

「メンタルスフィア・デーモンで妖精竜 エンシェントを攻撃!」

「罠カード《ドレインシールド》!」

「無駄だ! メンタルスフィア・デーモンはLPを1000払う事でサイキック族1体を対象とする魔法・罠の発動を無効にして破壊する!」

 

 ディヴァイン LP:1900→900

 

 メンタルスフィア・デーモンが口から黒い霧のブレスを放つと、ドレインシールドごと妖精竜を消し飛ばし、障壁を張って身を守っているフレアを包み込む。

 

「く、うううっ……!」

 

 フレア LP:1200→600

 

「メンタルスフィアのもう一つの効果発動! 破壊し墓地へ送ったモンスターの元々の攻撃力分だけLPを回復する」

 

 ディヴァイン LP:900→3000

 

「マックス・テレポーターでセットモンスターを攻撃!」

 

 マックス・テレポーターが手から念弾を放つと、セットされていたモンスターが粉砕される。

 

「セットモンスターはリバースモンスター《メタモルポット》! お互いに手札を全て捨て、5枚ドロー!」

 

フレア 手札:0→5

ディヴァイン 手札:1→0→5

 

「やれやれ、まだ諦めていないと見える」

「当たり前よ。まだ終わっていないんだから」

 

 ディヴァインは仕方がないと言う風に肩をすくめると、墓地から2枚のカードを取り出す。

 

「言っておくが、君にチャンスなどない。君は最初からずっと追い込まれたままなのだよ。私は墓地から《PSYフレームロード・Ζ》2体の効果を発動! 墓地のこのカードをエクストラデッキに戻し、墓地の“PSYフレーム”1枚を手札に加える。私は《PSYフレームギア・α》と《PSYフレームギア・β》を手札に加える」

 

 ディヴァイン 手札:5→7

 

 再びディヴァインの手札に加わった2体の“PSYフレームギア”。これではメンタルスフィア・デーモン達を突破しても、攻撃か召喚を行えば再び“PSYフレームロード“が現れてしまう。

 

「私はカードを2枚伏せ、これでターンエンド。これでも抵抗するだけ無駄だと思えないか?」

 

LP:3000

手札:5

モンスター

・メンタルスフィア・デーモン

・マックス・テレポーター

魔法・罠

・コモンメンタルワールド

・リビングデッドの呼び声

・セット

・セット

フィールド魔法

・PSYフレーム・サーキット

 

 ディヴァインの言う通り、フレアはここまで巻き返せず、追い詰められたまま窮地に陥っていた。手札はあるがモンスターは場になく、LPはたったの600。LPを多く保ち、エースモンスターと大量の手札、後続のシンクロ召喚まで備えたディヴァインに対抗出来るとはとても思えない。

 

「それでも……私は貴方と戦うッ! 私のターン!」

 

 フレア 手札:5→6

 

「魔法カード《トレード・イン》! 手札のレベル8モンスター1体を捨て、2枚ドロー!」

 

捨てたカード

ガーディアン・エアトス

 

フレア 手札:4→6

 

「魔法カード《死者蘇生》! 墓地から《ガーディアン・エアトス》を特殊召喚!」

 

 フレアの墓地から光が放たれると、その光が鳥の姿へと変わり、場に舞い降りて女神へと姿を変える。

 

 ATK:2500 レベル8

 

「それは確か、君のエースモンスターだったかな?」

「バトル! エアトスでメンタルスフィア・デーモンを攻撃! 【精霊のオペラ】!」

 

 エアトスが空中へと舞い上がると高らかに歌声を上げ、その歌声を光に変えてメンタルスフィア・デーモンへと放つ。

 

「攻撃力はこちらの方が上だ! 迎え撃て!」

 

 メンタルスフィア・デーモンも負けじと黒い霧のブレスを放つが、光によって簡単に掻き消され、自身も光の中へと消えていった。

 

「何? ……やはり罠か」

「墓地から罠カード《スキル・サクセサー》を発動! このカードを除外し、エアトスの攻撃力をエンドフェイズ時まで800アップする!」

 

 ATK:2500→3300

 

 ディヴァイン LP:3000→2400

 

「魔法カード《ソウルテイカー》! 相手の場の表側モンスター1体を破壊し、相手のLPを1000回復させる!」

 

 フレアが魔法を発動すると、ディヴァインの場のマックス・テレポーターが突然消滅して光となり、ディヴァインの体に吸収される。

 

 ディヴァイン LP:2400→3400

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

LP:600

手札:2

モンスター

・ガーディアン・エアトス

魔法・罠

・セット

・セット

 

「やれやれ、ここまで強情だとは……私のターン!」

 

 ディヴァイン 手札:5→6

 

「もう結構だ。私も暇ではないのでね。君ばかりを相手にしている訳にはいかないのだよ。このターンで引導を渡してやる。永続魔法《アポート》を発動! 自分の場のみモンスターが存在しない場合、LPを800支払う事で手札からサイキック族を1体特殊召喚出来る! 《PSYフレーム・ドライバー》!」

 

 ディヴァイン LP:3400→2600

 

 ディヴァインの場に3体目のPSYフレーム・ドライバーが現れ、不気味な笑みを浮かべて構える。

 

 ATK:2500 レベル6

 

「チューナーモンスター《サイコジャンパー》を召喚!」

 

 ディヴァインの場に超能力装置とサングラスを身につけ、ジャンパーを羽織った血色の悪いやせ細った男が現れる。

 

 ATK:100 レベル2

 

「レベル6《PSYフレーム・ドライバー》に、レベル2《サイコジャンパー》をチューニング!」

 

 サイコジャンパーが自身を2つの光輪へと変えると、PSYフレーム・ドライバーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「心の深淵が創り出す我が憎しみの鎧よ。雷の如き速さを持って、醜き世界を蹂躙せよ!」

 

 光の柱から現れたのはPSYフレームギア・εの上に立ち、まだ現れた事のないPSYフレームギア2体を装備したPSYフレームロード・Ζ。宙に浮かび、先程よりも強力な念を放ちながらフレアを見下ろす。

 

「シンクロ召喚! 現れろ、《PSYフレームロード・Ω》!」

 

 ATK:2800 レベル8

 

 シンクロ召喚に成功した事により、コモンメンタルワールドの効果がフレアに襲い掛かる。

 

「くっ……!」

 

 フレア LP:600→100

 

 残りLPは100ポイント。吹けば吹き飛ぶ数値を前に、ディヴァインは愉快そうな笑い声を上げる。

 

「ハッハッハ! さあどうする? また攻撃力を上げるか? それともΩを除去するか? どの様な手で抵抗して生きながらえても、お前に待っているのは敗北だけだ! 消えろ! Ωでガーディアン・エアトスを攻撃!」

「罠カード《魔法の筒》! 攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 PSYフレームロード・Ωが電撃を放つと、エアトスの前に大きな筒が現れて電撃を中に収納し、そのままディヴァインへと放つ。

 

「!? チッ……罠カード《サイコ・ソウル》! 自分の場のサイキック族1体をリリースし、そのレベル×300ポイントのLPを回復する! レベル8のΩをリリースし、2400ポイント回復する!」

 

 ディヴァインが自らPSYフレームロード・Ωを消滅させて吸収すると、魔法の筒で返した電撃も同時に消滅する。

 

 ディヴァイン LP:2600→5000

 

「……《魔法の筒》、成程。この状況で一発逆転を狙える数少ない罠だ。それを仕組んでいたとは、やはり君は特異な決闘者という事なのだろう……だが結果は変わらなかった。これが現実なのだよ。カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:5000

手札:2

モンスター

・なし

魔法・罠

・コモンメンタルワールド

・リビングデッドの呼び声

・アポート

・セット

・セット

フィールド魔法

・PSYフレーム・サーキット

 

「何て事だ……実質、あれがラストチャンスだったんじゃないのか?」

 

 バーナードが苦悶を表情に浮かべて頭を押える。

 現在ディバインの手札にはモンスター不在時に相手の召喚と攻撃に反応してシンクロ素材を揃えるPSYフレームギア・αとβが存在する。つまり、フレアが反撃に転じようとした瞬間、フィールド魔法の効果でシンクロ召喚が行われ、永続魔法の効果で敗北が決まる。結果としてモンスターを取り除くだけに終わったフレアの一発逆転のカウンターは、敗北の条件を一歩早く揃えさせただけに過ぎなかったのである。

 

「無理をする事はない。さあ、サレンダーを――――」

「私のターン!」

 

 フレア 手札:2→3

 

 ディヴァインの言葉を遮ってドローしたフレアはカードを確認すると、不敵な笑みを浮かべる。

 

「……貴方、何も学習してないのね?」

「何?」

 

 怪訝そうな表情のディヴァインに、フレアは嘲笑する様な笑みを返す。らしくないフレアのこの様子は、どこか“もう一人の彼女”を思い起こさせる。

 

「完璧だなんて笑っちゃう。貴方が何でカーリーさんやミスティさんに倒されたのか解らないの?」

「何が言いたい?」

「貴方、実は女の子にモテないでしょ?」

「は?」

 

 怪訝を通り越して呆気に取られた表情のディヴァイン。本気でフレアが何を言いたいのか解っていない様子であった。

 

「教えてあげる。何で貴方が負けるのか、どうしてモテないのか……それはね」

 

 フレアは手札から1枚のカードを取り出し、発動しながらディヴァインをキッと睨みつける。

 

「女の子の前で余計な事をベラベラ喋るからよッ!!! 装備魔法《女神の聖剣-エアトス》を《ガーディアン・エアトス》に装備! そしてエアトスのモンスター効果発動!」

 

 エアトスが聖剣を手に取ると、それを掲げて光を放つ。

 

「このカードの装備魔法を1枚墓地に送る事で、相手の墓地のモンスター3体を除外し、攻撃力をこのターンの間、1体につき500ポイントアップする!」

「その能力はデータにある。驚異的な強化だが、この状況では――――」

「除外するのは3体の《PSYフレーム・ドライバー》!」

「ッ!?  し、しまった!?」

 

 ようやく、ようやく崩れたディヴァインの表情。ハチドリの地縛神と相対した時にも、トカゲの地縛神に捕まった時にも見せた焦りの表情。

 

「“PSYフレームギア”の共通する発動条件は、“自分の場にモンスターがいない”事と“手札・場・墓地に《PSYフレーム・ドライバー》が存在する”事! 3体全てを除外してしまえばもう効果でシンクロ召喚をすることは出来ない!」

「ぐうぅッ!?」

「全部、貴方が説明してくれたことよ? ……エアトス!」

 

 ディヴァインの墓地からPSYフレーム・ドライバー達の魂が飛び出すと、エアトスが掲げた聖剣に吸収される。

 

 ATK:2500→4000

 

「しまった……墓地に全て送っていた……そこを突かれた……!?」

「(ディヴァイン……自らに力に溺れ、他を見下す貴方から、“侮り”という隙が消える事はない)」

 

 呆然とするディヴァインを見据えながら、フレアは手札からもう一枚のカードを取り出す。

 

「(でも貴方は手強い! だから私は侮らない。出来る事全て、貴方にぶつける!)」

 

 フレアはエアトスを見上げると、エアトスは理解したと頷き、静かに呪文を詠唱し始めた。

 

「(……精霊世界に漂う役目を終えし“名も無き竜”の魂よ。世界を守る為、今一度、力をお貸しください……) 魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地からモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! 2枚ドロー!」

 

戻したカード

玄翼竜 ブラック・フェザー

妖精竜 エンシェント

メタモルポット

極星獣グルファクシ

マインモール

 

 フレアが1枚目を引いた瞬間、2枚目のカードが光り輝く。フレアはそれを引き、即座に発動させた。

 

「《ヘルモスの爪》! このカードと手札・場のモンスター1体を融合させる! 私は手札の《黒蠍-棘のミーネ》と《ヘルモスの爪》を融合!」

 

 フレアはヘルモスの爪をモンスターゾーンに置き、その上にミーネのカードを重ねる。

 

「来て! 《女神の聖弓-アルテミス》!」

 

 ATK:1500 レベル4

 

 現れたのは、聖なる光で輝く弓と矢。エアトスはそれを手に取り、ディヴァインに向かって構え、弓を引く。

 

「アルテミスは特殊召喚に成功した時、装備カードとなる! アルテミスを装備したエアトスで直接攻撃! 【フォビドゥン・サーム】!」

 

 エアトスは迷いの無い瞳でディヴァインを捉えた瞬間、矢を放つ。

 

「!? 私は負けん! 勝つのは私だ! 手札を1枚捨て、罠カード《レインボー・ライフ》を発動! このターンのダメージは全て回復へと変わる! 私のLPは4000回復だ!」

「アルテミスの効果発動! 相手がバトルフェイズ中に発動した効果を1度だけ無効に出来る!」

 

 エアトスが放った矢はディバインが発動した罠をいともたやすく貫通し、ディヴァインの胸に突き刺さる。

 

「ぐあぁぁぁーーーー!?」

 

 ディヴァイン LP:5000→1000

 

 ソリッドビジョンなので突き刺さった矢はすぐに消滅したが、ディヴァインはまだそこに矢が刺さっているかのように苦しみ、跪く。

 

「この効果を適用したバトルフェイズ中、装備モンスターは2回攻撃する事が出来る! エアトス!」

 

 エアトスが蹲るディヴァインに向かって即座に矢を放つと、ディヴァインは顔を上げてエアトスを睨み返し、もう1枚の伏せカードを発動させる。

 

「速攻魔法《非常食》! 自分の場の魔法・罠を墓地に送り、1枚につき1000ポイントのLPを回復する! 私の魔法・罠を全て墓地に送り、LPを4000回復させる!」

 

ディヴァインの場の魔法・罠

コモンメンタルワールド

リビングデッドの呼び声

アポート

PSYフレーム・サーキット

 

 ディヴァイン LP:1000→5000

 

 場を包んでいたサーキットとディヴァインの魔法・罠が光となってディヴァインに吸収される。

LPが回復した瞬間、ディヴァインの左肩に命中した。今度はサイコパワーのバリアを張っていたようだが、矢はそれをも砕き、ディヴァインを貫いた。

 

「ぎゃあああ!?」

 

ディヴァイン LP:5000→1000

 

「凌がれた!? ……カードを伏せて、ターンエンド!」

 

LP:100

手札:0

モンスター

・ガーディアン・エアトス

魔法・罠

・女神の聖弓-アルテミス(装備:ガーディアン・エアトス)

・セット

・セット

 

「ぐ、ぐ、ぐ……」

 

 ディヴァインの中で、2度も死にかけた時の記憶が過ぎる。また負けるのか――――

 

「……くっくっく、本当に、ままならぬ世界だ。何が起こるか、何が敗北に繋がるのか、まったく分からない……だからこそ、私の理想に染め上げなければならない」

「まだそんな事を……!」

「当然だ。私は特別な存在なのだ。負けはしても、ここまで生きてきた。それには必ず意味があるのだよ」

 

 ディヴァインは鬼気迫る表情でデッキトップに指を掛ける。

 

「そうだ! 私が力を持つのは、生きているのは、全ては己の理想を創り上げるため! 私は……決して“異端者”などではない……私は選ばれた人間なのだぁーーーー!!!」

 

 ディヴァイン 手札:1→2

 

 ドローしたカードを見つめ、笑みを浮かべるディヴァイン。フレアはこの決闘の決着はまだ着かない事を確信した。

 

「……やはり、結果は変わらない。勝つのは私だ! 最後の切り札を見せてやる! 魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動! 墓地から融合素材を除外し、シンクロモンスターを素材とする融合モンスターを融合召喚する!」

「!? これって……」

「そうさ! これも不動 遊星から得た機皇帝への対抗手段だ! 偶然にもセキュリティも同じ研究をしていてね。データを得るのは簡単だった! さあ見るがいい!」

 

 墓地から《メンタルスフィア・デーモン》と《PSYフレームロード・Ω》のカードを取り出すと、ディヴァインは両腕を大きく広げる。

 

「我が復讐の黒炎よ! 我が憎しみの鎧よ! 今一つとなりて全てを喰らう悪鬼と化せ!」

 

 ディヴァインの場にメンタルスフィア・デーモンとPSYフレームロード・Ωが現れると、2体は次元の渦に飲まれる。その後、渦から閃光が放たれ、中から異常なパワーを発する半鬼半竜の姿となったメンタルスフィア・デーモンが姿を現した。

 

「融合召喚! 我が心の深遠に住み着く怪物、《アルティメットサイキッカー》!!!」

 

 ATK:2900 レベル10

 

「こ、これがディヴァインの切り札……!?」

「バトル! アルティメットサイキッカーでガーディアン・エアトスを攻撃!」

 

 アルティメットサイキッカーがおぞましい咆哮を上げると、エアトスに向かって飛び掛る。

 

「罠カード《万能地雷グレイモヤ》! アルティメットサイキッカーを破壊!」

「無駄だ! アルティメットサイキッカーは効果で破壊されない! 死ね!」

「永続罠――――」

 

 アルティメットサイキッカーがエアトスの手前で爆炎に包まれるが、傷一つ負わずに炎の中から飛び出し、エアトスを殴り落として破壊する。

 攻撃による衝撃がフレアへと向かうが、エアトスが破壊される前に残していった光の障壁によって防がれた。

 

「――――《女神の加護》を発動! LPを3000ポイント回復!」

 

 フレア LP:100→3100→2700

 

「アルティメットサイキッカーの効果発動! 破壊し墓地へ送ったモンスターの攻撃力分、私のLPを回復する!」

 

 ディヴァイン LP:1000→3500

 

「ハッハッハッハッハ! 逆転だ! 場もLPも覆した! 更にこのアルティメットサイキッカーは貫通能力も備えている完璧なモンスターだ! もはやお前に勝ち目はない! ターンエンド!」

 

LP:3500

手札:1

モンスター

・アルティメットサイキッカー

魔法・罠

・なし

 

「……私のターン!」

 

 フレア 手札:0→1

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

LP:100

手札:0

モンスター

・なし

魔法・罠

・女神の加護

・セット

 

「ハハハ! 何も出来まい! 私のターン!」

 

 ディヴァイン 手札:1→2

 

「バトルだ! アルティメットサイキッカーで直接攻撃!」

「罠カード《カウンター・ゲート》! 相手の直接攻撃を無効にし、1枚ドロー!」

 

 フレア 手札:0→1

 

「また防ぐか……!」

「そしてドローしたカードがモンスターだった場合、表側攻撃表示で通常召喚できる! 来て、《クリバンデット》!」

 

 フレアの場に牙を生やし、バンダナと眼帯を身につけた毛玉の悪魔が現れる。

 

 ATK:1000 レベル3

 

「そんな雑魚で何ができる! カードを伏せてターンエンドだ!」

 

LP:3500

手札:1

モンスター

・アルティメットサイキッカー

魔法・罠

・セット

 

「このエンドフェイズ時、クリバンデットの効果発動! 召喚されたターンのエンドフェイズにこのカードをリリースし、デッキトップから5枚のカードを確認。その中から魔法・罠カード1枚を手札に加え、残りを墓地へ送る!」

 

 クリバンデットが場から姿を消すと、上空に5枚のカードのソリッドビジョンが映し出される。

 

デッキトップのカード

一騎加勢

チューニング・サポーター

星墜つる地に立つ閃珖

破天荒な風

ダンディライオン

 

「私は魔法カード《一騎加勢》を手札に加え、残りを墓地へ! そして墓地へ送られた《ダンディライオン》の効果発動! 場に《綿毛トークン》2体を生成!」

 

 フレア 手札:0→1

 

 DEF:0 レベル1

 DEF:0 レベル1

 

「私のターン!」

 

 フレア 手札:1→2

 

「……ディヴァイン、決着をつけましょう」

「何だと? 馬鹿な、倒せるものか! この私を! アルティメットサイキッカーを!」

「チューナーモンスター《デブリ・ドラゴン》を召喚! その効果で墓地から攻撃力500以下の《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 フレアの場にデブリ・ドラゴンとチューニング・サポーターが現れる。

 

デブリ・ドラゴン ATK:1000 レベル4

チューニング・サポーター ATK:100 レベル1

 

「レベル1《チューニング・サポーター》と《綿毛トークン》2体に、レベル4《デブリ・ドラゴン》をチューニング!」

 

 デブリ・ドラゴンが自身を4つの光輪へと変えると、モンスター達を囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。

 

「清廉なる花園に芽吹き漆黒の薔薇よ! 若き月の雫を得て、ここに開花せよ!」

 

 光の柱から現れたのは、美しき黒薔薇の決闘竜――――

 

「シンクロ召喚! 麗しき”光”の決闘竜! 《月華竜 ブラック・ローズ》!」

 

 ATK:2400 レベル7

 

「素材となったチューニング・サポーターの効果により1枚ドロー!」

 

 フレア 手札:1→2

 

「ブラック・ローズ……フフフ、フハハハハ!」

 

 現れたブラック・ローズ・ドラゴンにそっくりな竜を見て、ディヴァインは堪え切れない笑い声を上げた。

 

「ブラック・ローズ! よりにもよってブラック・ローズか! 馬鹿め! アルティメットサイキッカーは効果で破壊されない! アキの話で頭に血でも上っていたか? 所詮、お前も小娘に過ぎんと言う事だ! ハッハッハッハッハ!」

「ブラック・ローズの効果発動! 特殊召喚に成功した時、相手の場の特殊召喚されたモンスター1体を手札に戻す! 〈退華の叙事歌〉!」

 

月華竜が黄金の眼を光らせると、アルティメットサイキッカーを中心に光の渦を発生させて取り込み、そのまま消滅させる。

 

「は? ……な、何? ブラック・ローズが……破壊ではなく手札に戻すだと!?」

 

 笑顔から一変、表情を固まらせながら顔を上げ、消えていくアルティメットサイキッカーを呆然と見つめるディヴァイン。その様子を、フレアは哀れむような表情で見ていた。

 

「ディヴァイン……変わらないのは貴方だけ。アキちゃんは、もう破壊を繰り返す魔女ではないの。学校に行って、勉強して、遊んで、決闘して……夢を見て、恋だってする……女の子なの」

 

 狼狽するディヴァインに語りかけながら、フレアは手札を1枚手に取る。

 

「魔法カード《一騎加勢》! モンスター1体の攻撃力をこのターン中のみ1500ポイントアップする!」

 

 ATK:2400→3900

 

「違う……アキは私の物だ! 私が一番アキの力を引き出せるんだ! アキの力は私の理想の為に……サイコ・デュエリストの為に使われるべきなのだ!」

「……アキちゃんは、変わろうって思った後も、貴方の事を気にしてた。利用されていたと分かっても、貴方の事を……アキちゃん!」

 

 フレアが構えると、月華竜も同時に構える。

 

「私が決着をつける! 全ての願いを込めて! バトル! ブラック・ローズで直接攻撃! 【散華の鎮魂歌】!」

 

 月華竜がディヴァインに向かって光のブレスを放つ。

 

「認めん! これ以上の敗北は認めない! 罠カード《奇策》! 手札のモンスター1体を捨て、その攻撃力分だけ場のモンスター1体の攻撃力を下げる! 手札から攻撃力700の《PSYフレームギア・β》を捨て、攻撃力700ダウンだ!」

「速攻魔法《突進》! ブラック・ローズの攻撃力を700アップ!」

 

 ATK:3900→3200→3900

 

 ディヴァインの罠により一度は弱まるブレスだったが、フレアの一押しで威力を取り戻し、ディヴァインを飲み込む。

 

「うわぁぁぁーーーーーー!!!?」

 

ディヴァイン LP:3500→0

 

 ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 ディヴァインはその場に崩れ落ちて膝を着き、二人を包んでいた結界が消滅する。

 

「フレアちゃん! 大丈夫か!?」

 

 そこへバーナードが駆け寄ってきた。フレアは変身を解いて元の姿に戻ると、心配かけまいと笑顔で彼を迎える。

 

「うん、大丈夫です。……ディヴァイン」

 

 フレアは項垂れているディヴァインに声を掛ける。ダメージは大きいが、どうやら意識はあるようだ。

 

「……《ファイヤー・ボール》!!!」

「ッ!? あぶない!」

 

 ディヴァインは隠し持っていた魔法カードをサイコパワーで実体化させてフレアを攻撃するが、間一髪のところでバーナードがフレアを押し倒して避ける。

 

「すまないフレアちゃん、大丈夫か?」

「は、はい、ありがとうございます」

 

 バーナードはフレアを助け起し、ディヴァインを睨みつける。

 

「貴様! まだやる気か!」

「外したか……フフ、今のが最後のサイコパワーだ。……降参するよ」

 

 バーナードは力なく笑うディヴァインを睨みながら装置へと移動する。

 

「今からこいつを外へ追い出す。異次元を漂いやがれ! いいなフレアちゃん?」

「待ってバーナードさん。私がいた世界に戻すことって出来る?」

「え? 出来ないことはないが……何だってこんな奴を?」

「……いいの、元いた世界に返してあげて」

「……分かった、ちょっと待っててくれ」

 

 バーナードが装置の設定のやり直しを始めると、今度はフレアにディヴァインが話しかけてきた。

 

「フレア・ヴィルアース……君は自分の存在に疑問を持った事はないのか?」

「……何で?」

「何故自分がこの様な能力を持って生まれて来たのか? 何故大衆は自分と同じ能力を持っていないのか? 何故自分でなければならなかった……のか」

「…………」

 

 フレア自身も思わなかった事ではない。だが、今のフレアに迷いは無い。己の力で大切なものを守る為に戦える。フレアはディヴァインに向かって首を横に振る。

 

「そうか……フレア・ヴィルアース、覚えておくがいい。君やサイコ・デュエリスト達……“我ら”が生まれるのには訳がある。“世界”にとってそれだけの能力を持った者が必要な“訳”がな……そして“我ら”は決して“世界”に受け入れられる事はない。大衆が“黒薔薇の魔女”を恐れたようにな」

 

 ディヴァインはダメージと疲労で引き攣る顔に無理やり笑みを浮かべる。

「何れお前達は後悔する事になる。私の理想を阻んだ事を! 愚かで醜い今の“世界”を選んだ事を!」

「後悔なんてしない。私達は信じてる。私達が選んだ“未来”を……」

「……フフフ……フッフッフ……フーハッハッハ! 愚か者めぇ! ハッハッハッハッハ!」

 

 たがが外れた様にディヴァインが笑い出した瞬間、設定を終えたバーナードが装置を起動し、ディヴァインは元の世界へと送り返される。フレアはバーナードが駆け寄ってくるまで、ディヴァインがいた場所をじっと見つめていた。

 

「フレアちゃん……今更だけど本当によかったのか? あんな奴を帰しちまって……また懲りずに世界征服とか言い出すんじゃないか?」

「……その時は、またやっつけます。それに……ディヴァインには世界征服は無理です。少なくとも、西の方は」

「西? 何でだ?」

「だって――――」

 

 

 

 

西部劇じゃ口数が少ないのが主役の条件ですから

 

 

 

 

 




一応オーバーザネクサスだったはずなのにリバースオブアルカディアとはこれ如何に?

どうも、遅くなって申し訳ありませんが、ようやく70話です。

何故今まで名前でしかでてこなかったおじさんが今更出てきたのかと言うと、実は海外版では大人の都合でアポリア編でゴッズが打ち切りになっておりまして、なので大幅にストーリー変更。遊星達がアポリアと戦っている間に何とおじさんが裏でイリアステルの計画を阻止してゾーンを死に追いやってしまうんですよね。おじさん怖すぎ。
なのでこの小説ではその設定を取り上げ、野望の為にイリアステル討伐に来たおじさんを偶然居合わせたフレアとオリキャラが倒して野望を阻止してしまおう、ということになりました。なのであの時フレアがおじさんに負けていたら海外版エンドでした。ゾーンと一緒にフリントも憤死してたかも(汗)
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