「ねぇ見て見てこれ!!」
フレア達がサテライトに来てから4日目。
今日はチーム”サティスファクション”が予定通り、A地区へと遠征に向かった。
残されたフレアとフリントは居住区のジャンク置き場で、遊星の仲間であるラリー、ナーヴ、タカ、ブリッツと共に”カード漁り”を行っていた。
カード漁りとはシティから流れてきたゴミを漁り、その中からカードを見つけ出す作業の事である。
捨てられるようなカードは大抵状態が悪かったり、決闘で使い難い低ステータスのカードであるが、極稀に所謂”掘り出し物”が見つかる事がある。
「どうした? 何か良いカードあったのか?」
「凄く良いのがあったの! これ!」
フレアが嬉しそうな表情でナーヴにカードを見せる。
「何々? フレア当たり?」
「見せてくれよ!」
他のメンバーもフレアが見つけた当たりのカードに興味を抱き、集まってくる。
「お、”クイック・シンクロン”」
「遊星が持ってる奴だ! いいなぁ~!」
「いいでしょこれ~! ど真ん中ストライク! 私好みのカード!」
ゴミ山の上で器用に踊り出すフレア。
相当嬉しいようだ。
「クイック・シンクロンとは中々だな。 きっともっと良いカードがあるぞ! 他の奴等に先越される前に見つけ出すんだ!」
フレアだけでなく、遊星の仲間の4人もこのカード漁りに熱が入っていた。
それもそのはず、何と遊星はこのカード漁りだけで今のデッキを作り上げたのだという。
遊星がそれだけであの完成度を誇るデッキを作り上げたと聞けば、誰でもカード漁りに”希望”を見出すであろう。
「しかし……何故機械部品だらけのゴミ捨て場にカードが落ちているんだ?」
疑問に思ったフリントが近くにいたブリッツに尋ねる。
「ああそれはな、セキュリティが捨てているのさ」
「セキュリティが?」
「セキュリティは犯罪者から取り上げたカードを保管庫にしまっているんだけど、それが一杯になると使えるカードを横領して、使えないカードをここに捨ててるのさ。 まったく勿体無い事しやがって……」
「でも、そのおかげで俺達がこうやって助かってるんじゃないか……お、見っけ!」
タカがカードを探しつつ、話に入ってくる。
だが、見つけたカードはあまり良い物ではなかったらしく、顔を歪めている。
「破れてる……あ、そうそう。 セキュリティは使えないカードばかりをここに捨てていくんだけどな、たまに良いカードが混じってる時があるんだ。 セキュリティにうっかり者がいるのか、それとも見る眼が無い奴がいるのか、どっちかは分からないがな」
それから暫く6人でカードを漁っていると、周りに自分達以外の人間が増えてきた。
それを見たナーヴが仲間を集める。
「……そろそろ帰るぞ! もう十分拾ったし、時々性質の悪い奴とか来るからな」
* * *
「ここで4人にお願いがあります!」
「「「「お願い?」」」」
ゴミ捨て場から遊星の住処に戻ってきた6人。
帰ってきて早々、フレアが決闘銃を変形させて腕に装着する。
「私とねぇ、”ランニング・デュエルモドキ”をして欲しいの」
「「「「”ランニング・デュエルモドキ”?」」」」
フレアは4人に説明を始める。
フレアの言いたい事を要約すると、”私もフリントがやったみたいな決闘がしたいけど、走るのは大変。 だから走るのは無しにして、同じルールでやりましょ”―――という事である。
「いいね! よーし! 俺達でフレアが遊星の仲間に相応しいかテストしてやろうぜ! 俺大将!」
「でもあっちはLP8000でこっちLP2000だろ? 押し切られたら厳しいな……」
「何ビビってんだよタカ。 こっちは4人で向こうは女の子だぞ?」
「面白そうだな。 よしフレア! その勝負受けるぜ!」
「ありがとうナーヴ! 皆! よーし! 私も燃えてきた!」
・
・
・
「先鋒は俺だ。 お手柔らかにな」
「負けないよ!」
「「デュエル!!!」」
フレア対遊星の仲間達のランニング・デュエル―――もとい、”変則スタンディング・デュエル”が始まる。
4人組の先鋒はタカ。
そして先攻はフレア。
「私のターン! ドロー!」
フレア 手札:5→6
「モンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」
LP:8000
手札:3
モンスター
・セット
魔法・罠
・セット
・セット
「俺のターンっと」
タカ 手札:5→6
「《黒魔導師クラン》を召喚!」
タカの場に現れたのは、黒兎を模した可愛らしい衣装の魔法少女。
フレアの方をじっと見据えながら、手にしている鞭を構える。
ATK:1200
「わぁ! 可愛い娘!」
「だろ? フレアは解ってるじゃないか!」
「そうだよね。 タカとこんなにも不釣合いなモンスターはいないよね……似合ってないよ」
ラリーがタカの後ろで苦笑いし、他の2人も微妙な笑いを浮かべている。
「な、何だよ! 別にいいじゃねーか! ただでさえサテライトには可愛い娘がいないんだぞ! カードでぐらい夢見させろよ!」
タカが顔を赤くして後ろに振り返り、ラリー達に抗議する。
そんな様子を見ながら、フレアは小さく笑った。
「ふふ……私はタカに賛成! 一番決闘者らしいと思う」
「ええ!? どうして?」
「私はね、デッキを作る時に一番大事なのは強い弱いじゃなくて”どれだけ好きか”だと思うの。 自分はどのカードと一緒に決闘したい? どのカードとなら楽しい? …って。 誰が何と言おうと、そこで自分に嘘ついたら、絶対にいいデッキは出来ないと私は思うの」
フレアの考えを聞き、4人はそれぞれ考える様に眼を閉じる。
一番最初に口を開いたのはラリー。
「……そうだ、フレアの言う通りだ。 俺にだってあるよ……皆は弱い弱い言うけど、絶対に外したくないカードが……一緒に決闘したいカードが!」
ラリーは自分のデッキから1枚のカードを取り出し、全員に見えるようにかざす。
そのカードには黄色いマシンが描かれていた。
「ごめんよタカ……似合わないなんて言って……」
「気にすんなよ! ……ありがとうフレア。 さあ、再会するか! 俺は装備魔法《王女の試練》を《黒魔導師クラン》に装備! 攻撃力を800ポイントアップだ!」
ATK:1200→2000
「バトル! クランでセットモンスターを攻撃!」
「罠カード《和睦の使者》を発動! このターン戦闘ダメージを受けず、私のモンスターは戦闘破壊されない! そしてセットモンスターをリバース!」
クランが鞭を振るおうとすると、セットモンスターが姿を現す。
その正体は人間の頭よりも大きな卵。
クランがその卵を鞭で打つと卵が割れ、中から巨大なヒヨコが現れる。
「セットモンスターは《ぴよコッコ》! そのリバース効果を発動! デッキからレベル5以上のチューナー1体を特殊召喚するよ! ぴよコッコを助けに来て! 正義のガンマン、その名も―――」
生まれたばかりのぴよコッコが鳴きながら体を揺すると、その横にカウボーイハットを被り、拳銃を構えたロボットが颯爽と現れる。
「《クイック・シンクロン》! キャーカッコイイ!!!」
ATK:700
「おいおい! 今のそんなに大々的にする場面か?」
「解ってないな~ナーヴ君! 今のは正義のガンマンであるクイック・シンクロンが魔女っ子にいじめられているぴよコッコを助ける場面だよ!」
「お、おい! クランを悪役に仕立て上げる気か!? 悪役面してるのはそっちのロボットだろ! 銃を使って人質にしてるように見えるぞ! …ヒヨコだけど」
自分が好きなカードへの愛故か、フレアとタカの他人から見ればどうでもいいような論争が始まる。
それは暫く続き、とうとう痺れを切らしたナーヴから一声―――
「お前等いい加減にしろ! お前等が自分のカードが好きな事は十分解った! だが今は決闘中だろ! 後がつっかえてんだぞ!」
「あ…いけねぇ! カードを3枚伏せてターンエンド」
「……脱線しすぎだ」
ナーヴは頭を抱えて溜息をついた。
LP:2000
手札:1
モンスター
・黒魔導師クラン
魔法・罠
・王女の試練
・セット
・セット
・セット
「怒られちゃった……気を取り直して! 私のターン! ドロー!」
フレア 手札:3→4
「クイック・シンクロンの効果発動! クイック・シンクロンをシンクロ素材とする時、シンクロンと名の付くチューナーの代わりになる事が出来るよ! 私がクイック・シンクロンが代わるのは―――」
フレアの場に回転しているルーレットが現れると、クイック・シンクロンは拳銃を引き抜き、弾丸を放つ。
弾丸がルーレットを撃ち抜くと、ルーレットの回転が徐々に弱まり始める。
ルーレットの表面には複数のカードが貼り付けられており、弾丸はその内の1枚を撃ち抜いていた。
「―――《ドリル・シンクロン》! レベル1《ぴよコッコ》に、レベル5《クイック・シンクロン》をチューニング!」
クイック・シンクロンが自身を5つの光輪へと変え、ぴよコッコを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野に生まれし螺旋の槍よ、希望の道を突き進め! シンクロ召喚! 大地の戦士!
《ドリル・ウォリアー》!」
光の柱から現れたのは、フレアのエースモンスターである”ドリル・ウォリアー”。
勇ましい掛け声と共に右腕のドリルを回転させる。
ATK:2400
「チューナー出した時点で想像は出来たけど、シンクロ召喚か~羨ましいぜ」
「タカは持ってないの?」
フレアがそう聞くとタカだけでなく、後ろのナーヴとブリッツも同時に頷く。
フレアやフリント、チーム”サティスファクション”は当たり前に使用しているが、シンクロモンスターはサテライトではとても希少であり、持っている事は一種のステータスにもなる。
「俺は1枚だけだけど持ってるよ! 俺の切り札なんだ!」
「へぇー! 伊達に大将じゃないねラリー! 是非見てみたいなっ! …だからこの勝負、勝ち抜かせて貰うよ! バトル! ドリル・ウォリアーでクランを攻撃! 【ドリル・ランサー】!」
ドリル・ウォリアーがドリルを回転させ、クランに向かって突撃する。
「そんな事はさせないぞ! 罠カード《サンダー・ブレイク》を発動! 手札を1枚捨てて、場のカードを1枚破壊するぞ! 破壊するのは勿論《ドリル・ウォリアー》だ!」
「そんなの駄目! 罠カード《悲劇の引き金》を発動! 自分のモンスターが”場のモンスター1体を破壊する”効果の対象となった時、その対象を相手モンスターに移し変えるよ! 新しい移し変える対象は《黒魔導師クラン》!」
突然鳴り響いてきた雷鳴を聞き、ドリル・ウォリアーが動きを止める。
その瞬間、落雷がクランを直撃、クランは破壊される。
「あ、あれェ!? 何でこうなった!?」
「これでがら空き! タカに【ドリル・ランサー】!」
動きを止めていたドリル・ウォリアーが再び突進。
タカに必殺の一撃をお見舞いする。
「うわぁ!? やられたっ!?」
タカ LP:2000→0
「おいおいタカ……大丈夫かよ?」
「うう…面目ない。 残したカード、上手く使ってくれ」
タカのLPが0になった事により、次鋒であるブリッツが前に出て次のプレイヤーとなる。
タカは伏せカード2枚をブリッツの決闘盤にセットすると、そそくさと後ろに下がっていく。
「よーし! それじゃあ―――」
フレアが手札からカードを取り出し、場にセットしようとする。
「おいおい! ターンはこっちだぞ? ルール忘れたのか?」
「あ…(すっかり忘れてた! あーん、セットしたいカードとかドリル・ウォリアーの効果とか、やりたい事がいっぱいあったのに~…)」
”満足ラッシュ方式”で行っているこの決闘では、チームプレイヤーの一人が倒され、他のメンバーと交代した場合、ターンは強制的に交代プレイヤーへと移る。
その事を忘れていたフレアは迎え撃つ準備が出来ず、場は無防備なドリル・ウォリアーのみとなってしまった。
「(…大丈夫! ドリル・ウォリアーは上級モンスターだもん! そう簡単にやられないよ!)」
「それじゃ2番手、行かせて貰うぞ! 俺のターン! ドロー!」
ブリッツ 手札:5→6
「俺はモンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
LP:2000
手札:3
モンスター
・セット
魔法・罠
・セット(タカ)
・セット(タカ)
・セット(ブリッツ)
・セット(ブリッツ)
「(ドリル・ウォリアーが無事でよかった) 私のターン! ドロー!」
フレア 手札:4→5
「バトル! ドリル・ウォリアーでセットモンスターを攻撃! 【ドリル・ランサー】!」
ドリル・ウォリアーがドリルを構え、セットモンスター目掛けて突進すると、セットモンスターが姿を現す。
セットモンスター:アステカの石像 DEF:2000
「セットモンスターは《アステカの石像》だ! そして罠カード《D2シールド》を発動! 自分の守備表示モンスター1体の元々の守備力を2倍にする!」
DEF:2000→4000
ドリル・ウォリアーがアステカの石像の石像にドリルを突き立てるも、アステカの石像を砕くどころか傷一つ付ける事が出来ない。
「嘘!? 守備力4000だなんて……と、いう事は反射ダメージが1600も―――」
「いいや、もう1600だ! アステカの石像は反射ダメージを2倍にする!」
アステカの石像は未だに砕こうと粘っているドリル・ウォリアーを弾き飛ばし、フレアに向かって衝撃波を放つ。
「きゃあああ!!?」
フレア LP:8000→4800
「どうだ! タカの分も取り返してやったぞ!」
「びっくりした~…こんな戦術もあるのね。 私は手札を1枚捨ててドリル・ウォリアーの効果発動! このカードをゲームから除外して、次の自分のスタンバイフェイズに特殊召喚するよ!」
捨てたカード:レベル・スティーラー
ドリル・ウォリアーは地面にドリルを突き立てると、そのまま地中深くへと潜っていく。
「モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド!」
LP:4800
手札:1
モンスター
・セット
魔法・罠
・セット
・セット
「俺のターン! ドロー!」
ブリッツ 手札:3→4
「攻めるばかりが手じゃない、ってね。 俺はカードを伏せてターンエンド!」
LP:2000
手札:3
モンスター
・アステカの石像
魔法・罠
・セット(タカ)
・セット(タカ)
・セット(ブリッツ)
・セット(ブリッツ)
「私のターン! ドロー!」
フレア 手札:1→2
「スタンバイフェイズ! 除外していた《ドリル・ウォリアー》を特殊召喚!」
フレアがそう宣言すると、ドリル・ウォリアーが地面を割って地中から飛び出してくる。
ATK:2400
「その後、墓地からモンスター1体を手札に戻すよ! 《ぴよコッコ》を手札に!」
フレア 手札:2→3
「なら俺も罠発動! 《バトルマニア》! このターン、攻撃表示のドリル・ウォリアーは必ず戦闘を行わなければならない! さあ、もう一回食らって貰うぜ!」
「……なら、お言葉に甘えて攻めちゃうよ! セットモンスターをリバース! 《砂塵の騎士》のリバース効果発動! デッキから地属性モンスター1体を墓地に送るよ!」
セットされていたカードから、ゴーグルと赤いマントを身に付けた重装備の騎士が現れる。
ATK:1400
墓地に送ったカード
ダンディライオン
「墓地に送った《ダンディライオン》の効果発動! 自分の場に綿毛トークンを2体を守備表示で生成するよ!」
DEF:0
DEF:0
「チューナーモンスター《キーマウス》を召喚!」
続けてフレアの場に現れたのはチューナーモンスターであるキーマウス。
低ステータスモンスターの大量展開、そしてチューナー。
ここまで揃えれば、やる事は明白である。
「レベル1《綿毛トークン》2体と、レベル4《砂塵の騎士》に、レベル1《キーマウス》をチューニング!」
キーマウスが首輪の錠に自分の尻尾を差込んで開錠すると、キーマウスは自身を1つの光輪へと変え、光輪は砂塵の騎士と綿毛トークン2体を囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野を駆ける雷よ! 猛き烈風を切り裂き、地平の彼方に蹄を穿て! シンクロ召喚! 轟け! 《ボルテック・バイコーン》!」
光の柱から飛び出したのは、2本の角と青い鬣、そして金色に輝く胸と尾の馬毛を持ったバイコーン。
その速さはサンダー・ユニコーンを上回り、雷の様な速さで場を駆け巡る。
やがてフレアの前に止まり、嘶きを上げ、蹄を鳴らすと同時に雷鳴が轟く。
ATK:2500
「ま、またシンクロ召喚……もしかしてさ、フレアって”只者”じゃなかったりするのか?」
「そうだね、私は”只者”じゃなくて、”決闘者”だよ! カードを1枚伏せて、バトル! ボルテック・バイコーンでアステカの石像を攻撃! 【ボルテック・ツインランス】!」
ボルテック・バイコーンが一気に間合いを詰めると、アステカの石像を電気を纏った鋭い二角で突き上げる。
「ダメージステップ時に罠カード《シンクロ・ストライク》を発動! シンクロ召喚したモンスターの攻撃力を、エンドフェイズ時まで使用した素材×500ポイントアップ! ボルテック・バイコーンのシンクロ素材は4体! よって2000ポイントアップ!」
ATK:2500→4500
ボルテック・バイコーンの二角が光り輝くと、ドリルでも砕く事が出来なかったアステカの石像を粉々に粉砕する。
「わァーーー!? 嘘だろ!? む、無理やり突破してきやがった!?」
「これで二人目! ドリル・ウォリアーで直接攻撃! 【ドリル・ランサー】!」
先程のタカと同様、ドリル・ウォリアーがドリルをブリッツ目掛けて突き出す。
「ぐわぁ!? こ、ここまでか……」
ブリッツ LP:2000→0
ブリッツのLPが0になると、副将のナーヴが前に出てくる。
「お疲れ。 タカよりは持ったな」
「LPも削ったって! …正直、女だって舐めてたよ。 世の中広いもんだ。 気をつけろよ!」
ブリッツは決闘盤から伏せカード3枚を取り出し、ナーヴの決闘盤にセットしてから後ろに下がる。
ブリッツに代わって決闘場に立ったナーヴは待ちに待ったといった様子。
気合を入れるように自身の右拳を左掌に打ち付け、笑みを浮かべる。
「うし! よろしく頼むぞフレア! …俺達は遊星程強くはないが、決闘は同じ位好きなつもりだ。 負けるつもりも無い。 いい決闘にしようぜ!」
「うん! よろしくねナーヴ!」
”変則スタンディング・デュエル”もいよいよ後半戦。
副将のナーヴとの決闘が始まる。
ルール通り、ターンはナーヴに移る。
「俺のターン! ドロー!」
ナーヴ 手札:5→6
「俺は装備魔法《降格処分》を《ボルテック・バイコーン》に装備! このカードは装備モンスターのレベルを2つ下げるぞ!」
ボルテック・バイコーン レベル7→5
「(ボルテック・バイコーンのレベルを…? 何をするつもりなのかな…)」
「ここでタカが伏せた罠カード《ライバル登場!》を発動! 相手のモンスター1体を選択し、そのレベルと同じレベルのモンスターを手札から特殊召喚出来る! 俺が選択するのはレベル5の《ボルテック・バイコーン》! 同じレベル5の《カース・オブ・ドラゴン》を手札から特殊召喚だ!」
ナーヴの場に現れたのは、邪悪な姿をした金色の竜。
その竜が咆哮を上げると同時に、口から炎が漏れ出す。
ATK:2000
「さらに装備魔法《デーモンの斧》を《カース・オブ・ドラゴン》に装備! 攻撃力を1000ポイントアップ!」
現れた悪魔の斧が粒子に変わると、その粒子がカース・オブ・ドラゴンに吸収されていく。
ATK:2000→3000
「攻撃力3000!?」
「それだけじゃないぞ! 魔法カード《拘束解放波》を発動! 自分の場の装備魔法1枚と、相手の場のセットされた魔法・罠カードを全て破壊する!」
「!? 永続罠《リミット・リバース》を発動! 墓地から攻撃力1000以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚! 来て! 《キーマウス》!」
ATK:100
フレアの場に再びキーマウスが現れる。
”拘束解放波”はセットされた魔法・罠カードを破壊するカード。
表側表示となった”リミット・リバース”は破壊する事が出来ず、隣のセットカードのみを破壊する。
破壊されたカード
くず鉄のかかし
「ならこっちも……《ミノタウルス》を召喚!」
ナーヴが召喚したのは斧を持った牛頭人身の怪物。
サテライトに流されてしまっているが、嘗ては先のカース・オブ・ドラゴンと共にデュエルモンスターズの歴史上の最初期で活躍し、リメイクカードも作られ、現在では伝説となった決闘者も使用していた由緒正しきモンスターカードである。
ATK:1700
「装備魔法《ファイティング・スピリッツ》を《ミノタウルス》に装備! 相手モンスター1体につき攻撃力を300ポイントアップ!」
ATK:1700→2300
「厄介な罠は破壊した! これで安心して攻撃が出来る! バトルだ! ミノタウルスでキーマウスを攻撃! 【豪腕アックス】!」
ミノタウルスがキーマウス目掛けて斧を振り下ろし、破壊する。
「きゃあ!? うう……キーマウスの効果発動! 戦闘破壊された時、デッキからレベル3以下の獣族モンスターを手札に加える……私は《マイン・モール》を手札に」
フレア LP:4800→2600
ミノタウルス ATK:2300→2000
「(マイン・モール…)カース・オブ・ドラゴンでボルテック・バイコーンを攻撃! 【
続けてカース・オブ・ドラゴンが火炎を吐き出し、ボルテック・バイコーンを焼き尽くす。
「うう……ボルテック・バイコーンの効果発動! 相手によって破壊された場合、お互いのプレイヤーはデッキの上からカードを7枚墓地に送るよ!」
フレア LP:2600→2100
「な、7枚も!? …まあいいか。 俺はこれでターンエンド!」
LP:2000
手札:0
モンスター
・カース・オブ・ドラゴン
・ミノタウルス
魔法・罠
・セット(タカ)
・セット(ブリッツ)
・デーモンの斧(カース・オブ・ドラゴン)
・ファイティング・スピリッツ(ミノタウルス)
「私のターン! ドロー!」
フレア 手札:2→3
先程まで優勢だったフレアだが、ここに来て形勢を逆転されてしまう。
フレアの場に残されたのは、またしてもドリル・ウォリアー1体。
ナーヴの場には装備魔法によって攻撃力3000となったカース・オブ・ドラゴンと2000になったミノタウルス、そして後ろの二人が残した伏せカード。
この明らかに劣勢な状況をひっくり返せないかと、フレアは考え始める。
「(私の手札には1度だけ戦闘破壊されない”マイン・モール”がいる……このカードで凌いで、チャンスを待とうかな……違う、チャンスは待つものじゃない。 自分で作るもの!) バトル! ドリル・ウォリアーでミノタウルスを攻撃! 【ドリル・ランサー】!」
「おっと! ファイティング・スピリッツの効果発動! 装備モンスターが戦闘破壊される時、代わりにこのカードを破壊出来る!」
ドリル・ウォリアーがミノタウルスにドリルを突き出すが、ミノタウルスはそれを斧で受け止め、持ちこたえる。
「残念だったな。 俺の場はそう簡単には崩れない」
ナーヴ LP:2000→1600
ミノタウルス ATK:2000→1700
「(決闘において大事な事……自分を、カードを最後まで信じる事) 墓地にある《レベル・スティーラー》の効果発動! 場のレベル5以上のモンスター《ドリル・ウォリアー》のレベルを1つ下げて場に特殊召喚!」
ドリル・ウォリアー レベル6→5
フレアの場に巨大なテントウ虫が現れ、防御体勢をとる。
DEF:0
「そしてドリル・ウォリアーの効果発動! 手札を1枚捨てて除外!」
捨てたカード
リロード
ドリル・ウォリアーは先程の様に、地面にドリルを突き立て地中深くへと潜っていく。
「(そしてもう一つ大事な事、それは………カードを信じるのと同じ位、相手の決闘者を信じる事!) モンスターをセットしてターンエンド! 私のモンスターだって、そう簡単に倒せないよ!」
LP:2100
手札:1
モンスター
・レベル・スティーラー
・セット
魔法・罠
・無し
「俺のターン! ドロー!」
ナーヴ 手札:0→1
「(あのセットモンスター……さっきデッキから加えた”マイン・モール”だな。 知ってるぞ)」
ナーヴは以前にマイン・モールを見た事があり、戦闘耐性を持っている事も知っている。
レベル・スティーラーを守備表示で並べた事から、フレアはこの2体で攻撃を凌ぎ、ドリル・ウォリアーの効果で逆転の手を呼び寄せる―――ナーヴはそう考えた。
「(確かに、今の手じゃ突破は出来ない……まあとにかく、場にモンスターを残させる訳にはいかないな) 《タイガー・アックス》を召喚!」
ナーヴが召喚したのは、斧を手にした、虎の獣戦士。
レベルのわりには少々頼りないステータスだが、今の状況なら十分なモンスターである。
ATK:1300
「バトル! タイガー・アックスでレベル・スティーラーを攻撃! 【タイガー・クラッシュ】!」
タイガー・アックスが斧でレベル・スティーラーを叩き斬る。
「続けてカース・オブ・ドラゴン! セットモンスターに攻撃!」
カース・オブ・ドラゴンがセットモンスターに火炎を放つ。
リバースしたそのモンスターは―――卵。
「え!?」
「セットモンスターは《ぴよコッコ》! そのリバース効果を発動! 元気な姿を……成長した姿を見せて!」
炎が卵を包み込む。
やがて炎が消えると、その中からヒヨコではなく、一羽の丸々としたヒヨコのような鶏が現れる。
「デッキからレベル5のチューナーモンスター《こけコッコ》を特殊召喚!」
DEF:2000
「(マイン・モールじゃない……あのヒヨコ……そうだ、加えてた。 ブリッツの時……忘れていた。 守備力2000……ミノタウルスじゃ倒せない…!)」
「……ふう、ちょっと危ない賭けだったかな。 新しいモンスターが出てきた時はヒヤッとしちゃった(カース・オブ・ドラゴンが動いてくれてよかった……最後の挑発、効いたみたいね)」
フレアはエンド時に言った”私のモンスターだって、そう簡単に倒せないよ”という言葉にナーヴが警戒し、一番攻撃力の高いカース・オブ・ドラゴンで攻撃してきたのだと思っているようだ。
実際はマイン・モールを知っていたナーヴが警戒を解き、”マイン・モールならどのモンスターで攻撃しても変わらない”と考えていた結果である。
「(考えが甘かった……先にミノタウルスで攻撃していれば……) ターンエンド」
LP:1600
手札:0
モンスター
・カース・オブ・ドラゴン
・ミノタウルス
・タイガー・アックス
魔法・罠
・セット(タカ)
・セット(ブリッツ)
・デーモンの斧(カース・オブ・ドラゴン)
「私のターン! ドロー!」
フレア 手札:1→2
「スタンバイフェイズ! 除外した《ドリル・ウォリアー》を特殊召喚! 墓地から《ドリル・シンクロン》を手札に加えるよ!」
ATK:2400
フレア 手札:2→3
「あれ? あんなカード墓地にあったっけ?」
「ああ、あれは多分”ボルテック・バイコーン”の時に送られたカードじゃないか?」
首を傾げるラリーに、タカが思い出そうとするような仕草で答える。
「《マイン・モール》を召喚!」
フレアが召喚したのは、つるはしを手に持ち、光り輝くほどピカピカに磨かれた工事用ヘルメットを被ったモグラ。
これこそ、ナーヴがセットモンスターだと予想していた”マイン・モール”である。
ATK:1000
「レベル3《マイン・モール》に、レベル5《こけコッコ》をチューニング!」
こけコッコが自身を5つの光輪へと変え、マイン・モールを囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。
「荒野を駆ける雷よ! 常闇を貫き、閃光の如く大地を駆け抜けよ! シンクロ召喚! 照らせ! 《ライトニング・トライコーン》!」
光の柱から現れたのは、青い鬣に赤い尾、前後の足の側面に1本ずつと、頭に3本の赤く輝く角を持った金色の馬。
フレアの場に降り立つと、相手を見据えながら静かに佇む。
ATK:2800
「まだシンクロモンスターがいたのか……まるで遊星みたいだな」
「マイン・モールの効果発動! 獣族シンクロモンスターのシンクロ素材になった時、デッキから1枚ドロー! …行くよナーヴ! 魔法カード《破天荒な風》を発動! 自分のモンスター1体の攻撃力を次の自分のスタンバイフェイズまで1000ポイントアップ!」
フレアが魔法を発動すると、 ライトニング・トライコーンの周りに風が吹き出す。
ライトニング・トライコーンは前足で地面を掻き、突撃の構えを見せる。
ATK:2800→3800
「バトル! ライトニング・トライコーンでカース・オブ・ドラゴンを攻撃! 【ギガボルト・チャージ】!」
ライトニング・トライコーンは角に電気を集中させ、カース・オブ・ドラゴン目掛けて突進する。
ライトニング・トライコーンがカース・オブ・ドラゴンを角で貫くと、眩い光が一閃―――――眼を閉じていた全員が再び眼を開けると、カース・オブ・ドラゴンは既に灰と化していた。
「ぐうぅ…!」
ナーヴ LP:1600→800
「ドリル・ウォリアーでタイガー・アックスを攻撃! 【ドリル・ランサー】!」
ドリル・ウォリアーがタイガー・アックス目掛けてドリルを突き出す。
タイガー・アックスは必死に抵抗しようとするが、ミノタウルスの様にドリルを斧で受け止めるという芸当は出来ず、そのまま破壊されてしまう。
「うわぁ!!! クッ……俺も、まだまだだな……」
ナーヴ LP:800→0
「残念だったねナーヴ! 後は俺に任せなよ!」
ナーヴのLPが0になった事により、大将であるラリーが前に出てくる。
慰めてはいるが、ようやく回ってきた自分の出番にラリーは嬉しさを隠しきれず、ニコニコしている。
「ああ、気をつけろラリー。 油断したら俺みたいになるからな」
ナーヴはラリーの決闘盤にタカとブリッツが残した伏せカード2枚をセットし、ミノタウルスをモンスターゾーンに置いて後ろに下がる。
「よーし! いよいよ俺の番だ! 行くよフレア!」
「負けないよラリー!」
とうとう大将戦、フレアとラリーの決闘。
ルールによりラリーのターンから始まる。
「俺のターン! ドロー!」
ラリー 手札:5→6
「チューナーモンスター《ワンショット・ロケット》を召喚! そしてモンスターの召喚に成功したターン、このカードを特殊召喚出来る! 来い! 《ワンショット・ブースター》!」
ラリーが召喚したのは、丸い頭部と胴体で構成された本体の両側面にロケットが取り付けられた赤いマシン。
そして、次に現れたのは同じタイプのマシンだが本体は黄色く、人間の上半身に近い形をしており、その両腕にはロケットではなく、足場の様なブースターが取り付けられている。
ATK:0
ATK:0
「あ! 黄色のロボットはさっき見せてくれた”大事なカード”でしょ! それにチューナーって事は……”切り札”登場ね!」
「そうさ! 見せてやるよ! レベル1《ワンショット・ブースター》に、レベル2《ワンショット・ロケット》をチューニング!」
ワンショット・ロケットが自身を2つの光輪へと変え、ワンショット・ブースターを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。
「シンクロ召喚! これがオレの切り札だっ! 飛び出せ! 《ワンショット・キャノン》!」
光の柱から現れたのは、先の2体と同タイプの白いマシン。
両側面にはロケットでもブースターでもなく、キャノン砲が取り付けられている。
ATK:0
「これがラリーのシンクロモンスター……レベルが3で攻撃力が0のシンクロモンスターなんて初めて見た」
「へへ! 甘く見てると痛い目に遭うよ! ワンショット・キャノンの効果発動! 場に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊し、そのコントローラーに破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える! 《ライトニング・トライコーン》を破壊だぁ! 〈ファイナル・ショット〉!」
ワンショット・キャノンが両方のキャノンから光線を発射すると、ライトニング・トライコーンを跡形も無く吹き飛ばす。
「きゃあああ!!? …そ、そんな効果を持ってるなんて!? …でも、まだ負けない! ライトニング・トライコーンの効果発動! このカードが相手によって破壊された場合、自分の墓地にあるサンダー・ユニコーンかボルテック・バイコーン 、どちらか1体を選択して特殊召喚する事が出来る! 来て! 《ボルテック・バイコーン》!」
フレア LP:2100→200
ライトニング・トライコーンが爆散した後に場を包んでいた黒煙の中から、同じ様に黒いボルテック・バイコーンが飛び出す。
ATK:2500
「あ! そっちこそそんな効果を! …よーし、それなら……《ミノタウルス》をリリースして魔法カード《痛み分け》を発動! 相手はモンスター1体をリリースしなくちゃならないんだ! さあフレア、どっちかリリースしてよ!」
「え~!? うーん……ごめん! 《ボルテック・バイコーン》をリリース!」
フレアはボルテック・バイコーンに向かって手を合わせて宣言すると、ボルテック・バイコーンが消滅する。
「さらに永続魔法《ゼロゼロック》を発動! このカードがある限り、フレアは攻撃力0のモンスターを攻撃対象にする事が出来ない!」
モンスターへの攻撃対象が制限された時、他に正しく対象に出来るモンスターが存在しない場合、攻撃を行う事は出来ない。
ラリーの場には攻撃力0のワンショット・キャノンのみ。
よって、フレアは他の対象が現れない限り、通常攻撃が出来なくなった。
「さあ、これでフレアは攻撃出来ないぞ! 俺のコンボは完璧! 場も万全! 次のターンで俺達の勝ちだ! ターンエンド!」
LP:2000
手札:2
モンスター
・ワンショット・キャノン
魔法・罠
・セット(タカ)
・セット(ブリッツ)
・ゼロゼロック
ラリーの自信満々の態度が示すように、その布陣はほぼ完璧と言ってよいものとなっていた。
まずはワンショット・キャノンとゼロゼロックによる攻撃封じ。
そしてタカが伏せた効果ダメージを防ぐ《ピケルの魔法陣》。
ブリッツがアステカの石像を守る為に伏せていた《デストラクション・ジャマー》。
ビートダウン、バーン、破壊―――勝利に必要な要素を3つも封じる事が出来るのだ。
「(そして俺の手札にはフレアのLPを削り切れるモンスターと、裏側モンスターを表側にする魔法カード”闇をかき消す光”がある! ドリル・ウォリアーを逃がしても、モンスターをセットしても無駄だぞ!)」
「(これが多分、ラストターン……)」
フレアは前にいるドリル・ウォリアーの背中を見る。
ドリル・ウォリアーとはこの決闘中、ずっと共に戦ってきた。
「(…お疲れ様! 絶対に勝とうね!)」
フレアはカードを信じて、デッキトップに指を掛ける。
「私のターン! ドロー!」
フレア 手札:2→3
「……行くよ! チューナーモンスター《ドリル・シンクロン》を召喚!」
フレアが召喚したのは、チューナーモンスター”ドリル・シンクロン”。
だが、フレアはシンクロ召喚をする訳ではない。
ATK:800
「ドリル・シンクロンが場に存在する限り、私の場の戦士族は貫通効果を得るんだよ!」
「貫通って……守備表示でもダメージを与えるっていう? でもワンショット・キャノンは攻撃表示だし、そもそもゼロゼロックの効果で攻撃出来ないよ! 意味無いじゃん!」
「そうだね。 でも……このカードが意味を与えてくれるよ! 速攻魔法《月の書》を発動! 場のモンスター1体を裏側守備表示に変更するよ! 対象は《ワンショット・キャノン》!」
フレアが魔法を発動させると、ワンショット・キャノンの下に開いた大きな本が現れると、そのまま ワンショット・キャノンを挟むように本が閉じる。
やがて本が開くと、ワンショット・キャノンが挟まれたページにカードのソリッドビジョンが張り付いていて、本はそのソリッドビジョンを残して消滅する。
「ああ~! ワンショット・キャノンが裏側……あ!?」
「気付いたね! これでゼロゼロックの効果は無くなって、私は攻撃が出来る!」
ゼロゼロックは”攻撃表示”の攻撃力0モンスターを戦闘から守る永続魔法。
守備表示にしてしまえば何も問題は無い。
しかも、フレアの場にはドリル・シンクロンと戦士族のドリル・ウォリアー。
「これで最後! バッチリ決めるよ! ドリル・ウォリアーで攻撃! 【ドリル・ランサー】!!!」
ドリル・ウォリアーが空高く飛び上がると、ドリルを下に向け、真下にいるセットモンスター目掛けて急降下。
そのまま地面ごと、セットモンスターであるワンショット・キャノンを貫き、爆散させる。
「うわぁぁぁーーー!!!」
ラリー LP:2000→0
ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響いた。
”変則スタンディング・デュエル”、勝者はフレア。
「やったーーー!!! サテライトでの初白星! MVPはドリル・ウォリアー!」
決闘盤とカードを収めたフレアは跳び上がって勝利を喜ぶ。
この頃は負け続きだったので、喜びも一入のようだ。
「そんな~…負けるなんて……フレアって強いんだね」
「そういえばチーム”サティスファクション”のメンバーだもんな。 そりゃ強いぜ」
ラリーが地面に手を突いて落ち込み、ブリッツは納得した様に頷く。
「でも、フレアがこんなに強いとは思わなかったよな!」
「ああ。 …俺、この決闘やってよかったと思う。 自分に何が足りないのか、よく解ったからな」
タカは驚きが混じった笑顔を浮かべ、ナーヴは真剣な表情で腕を組む。
負けてしまったが、落ち込んでるラリーも含め、全員がこの結果に納得出来たようだった。
「皆ありがとう! とっても楽しかったよ! フリントもどうだった? 今の決闘!」
フレアはフリントに感想を聞こうと辺りを見渡すが、フリントの姿は見えない。
「あ、あれ? フリントどこ行っちゃったの?」
「そういえば、フレアが決闘しようって言った頃からいなかった気がするな。 トイレにしては長いし……」
そう言ったナーヴが他の3人を見渡すが、全員首を横に振る。
「……て、いう事は何? フリントは今の決闘を見てなかったわけ!? 信じらんない! せっかく私の初勝利だったのに~~~!!!」
さっきの喜びようとは一変、フレアは悔しそうな唸り声を上げ、走るように地団駄を踏む。
「おいおい! 落ち着け落ち着け! フリントは一体何所へ行ったんだ?」
「何を騒いでいるんだ?」
フレアを宥めているナーヴの後ろから、フリントが声を掛けながら歩いてくる。
「フリント! 何所行ってたのよ! せっかく私の初勝利だったのに!」
「決闘してたのか? …それは見たかったな」
「フリント、何所行ってたか話してよ!」
「何をそんなに腹を立てているんだ? …最初はトイレ、その後に人と合っていた。 フレア、お前にも重要な話だ」
そう言ってフリントは懐から一通の手紙を取り出し、フレアに手渡す。
フレアは一旦怒りを沈め、手紙を受け取る。
「これ誰から?」
「クラッシュからだ。 奴の隣にいた側近が、これを渡す為に俺達を探し回っていたんだ」
「お爺ちゃんから!? まさか……」
「そのまさかだ。 読んでみろ」
フレアは封筒の中から手紙を取り出し、読み始める。
内容は商談が上手くいったという事と、明日迎えに行けるという事を伝えるものだった。
「因みに、側近は俺達を見つけるのに1日掛かったらしい。 つまり、明日というのは今日だ。 午後7時に港にて合流との事だ」
「そうなんだ……もうちょっといたかったな」
フレアは寂しそうな表情をする。
親しい友を作り、ようやく”これからだ”というところだったので、無理も無いだろう。
「フレアとフリント……もう帰っちゃうの?」
横で話を聞いていたラリーが不安そうに尋ねる。
「うん……」
「そう深く考えるな。 乗り物さえあれば日帰り出来る距離だ。 少し先になるだろうが、また機会はあるだろう」
「…そうだねフリント。 うん! ラリー、ナーヴ、ブリッツ、タカ……今日は本当にありがとう! また必ず来るね!」
フレアは目の前の4人と、このサテライトでの出会いに感謝しながら、笑顔で再会を誓う。
「うん! 絶対だよ!」
「何時でも来い! 歓迎するからな!」
「また一緒にカードを漁ろうぜ!」
「ついでに、今度来る時はクラッシュタウンの土産なんかもよろしくな!」
最後は全員で笑い合い、ついでにラリーがタカの尻を蹴り上げた。
* * *
「午後7時かぁ……皆間に合うかなぁ?」
「遠征と言っても、このサテライトはそこまで広くない。 慣れた土地だろうし、朝早く行ったのだから、てこずっていたとしても夕方には必ず帰ってくるだろう」
遊星の住処を後にした二人は、クロウの住処を目指して歩いていた。
本来はサティスファクションのアジトに集まるのだが、クロウの住処にいるフレアとフリントが移動する手間を省く為、今回はクロウの住処に集まるのだという。
「一体どんな話が聞けるんだろうね! ……そういえばフリント、ただ手紙を受け取るだけなのに随分と時間掛かってたよね?」
「ああ、クラッシュと話をしていた。 側近の携帯電話を使ってな。 言いたい事や聞きたい事が山ほどあったんだ」
「え~ズルイ! お爺ちゃんと何話していたの?」
「色々だ。 お前の教育方針はどうなっているとか、何故こんな便利な物を渡さなかった、とかな」
「それ全部フリントの愚痴じゃないの……確かに大変な目に遭ったりしたけど、結局無事だったし、皆とも出会えてよかったでしょ?」
「それは否定しないが……」
二人は暫く歩き続け、クロウの住処へと辿り着く。
子供達にクラッシュタウンへと帰る事を告げ、共に別れを惜しみながら鬼柳達が帰るのを待った。
第9話にして、ようやくフレアが勝ちました(笑)
4人のデッキはそれぞれ
ラリー:原作とイメージ
ナーヴ、ブリッツ:WCS2009のデッキをベースにちょいちょい変えて
タカ:魔法王女シリーズ
となっています。
タカが魔法王女シリーズになっているのは、原作でラリーたちがそのシリーズをばら撒いてるシーンがあったので、誰かしらがそのデッキを使っているんだな、と。
作中フレアが使用した”こけコッコ”は日本未発売カードである《Cockadoodledoo》のことです。 日本名はぴよコッコから連想して勝手につけました。 来日してきたらその時の名前に変えます。