ダンジョンにファフニールがいるのは間違っているだろうか   作:ニャース

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短くて申し訳ないですけど、キリがいいので投稿します。


第二話 入団

 あなたはヘスティア・ファミリアに入団してもいいし、しなくてもいい。

 

 ――と、いいたいところだが結論から述べよう。あなたはベルの提案を受け、ヘスティア・ファミリアの入団を決めた。

 

 もちろん考えなしに入団を決めた訳ではない。あなたはまずは念入りにベル達からこの世界の話を聞いた。

 

 ヒューマンと呼ばれるあなたの見慣れた人間以外に、リリルカのような小人族(パルゥム)やリューのようなエルフ、春姫のような狐人(ルナール)などといったデミ・ヒューマン達が共に暮らしていること。

 

 ウィーネやアステリアは異端児(ゼノス)と呼ばれていたが、彼女たちもデミ・ヒューマンではないのかと聞いてみたが、ヘスティア・ファミリアに入団しない限り詳しい事情は話せないとぼかされてしまった。

 

 ベルは申し訳なさそうに謝っていたが、あなたは友好的に会話できるのなら、なんであれ問題はないと気にしていなかった。

 

 そんなことより一番驚いたのは神が実在していて、天界から地上に降りてきていることだった。

 

 ヘスティアは頭が生暖かいお子様ではなく、実は本物の神だったのだ!

 

 あなたはただの子供扱いした非礼を詫び、深々と頭を下げた。

 

「ふふん、どうやら君もボクの神々しいオーラに気づいたようだね。いいよ、ボクは寛大な女神だから許してあげよう」

 

 ……あなたの胸中に釈然としないなにかがわいてきた。

 

 そんな胸のもやもやを務めて無視し、実際に神が地上に降りてきているのなら、いったいなにを目的に地上に来たのだと尋ねた。

 

 人々を導くためか。あるいは神の威光を示すためか。あなたの胸のもやもやが期待への高鳴りに変わったとき、ヘスティアはあっさりとこう告げた。

 

「神よっては子供たちをからかって遊びたいとか、地上で楽しいことしたいとか、子供たちと一緒に暮らしてみたいとか理由はあるけど、ぶっちゃけ暇つぶしだね」

 

 あなたはなんとも残念な生き物を見る目で、ヘスティアのことを見ると大きなため息をついた。

 

「なんだいなんだい、そのダメだこいつって顔は!! そ、そりゃあボクだってどうかとは思うけど、ボクは他の神とは違うよ! 今は立派にファミリアの主神として――」

 

「最初の頃はヘファイトス様のところで、グータラニート生活をしていた神様でしたし、駄女神と思われても残当ですね」

 

「サ、サポーター君~~~~~っ!! ちょっとは主神を敬う敬虔な心はないのかい!?」

 

「リリは真実を述べただけですから」

 

 いがみ合う二人を無視し、あなたはこの世界について説明を受け続ける。

 

 地上に降りてきた神は絶大な権能を封じ、ただの人間と変わらない力しか持っていない。

 

 しかし、神は地上の子供たち――すなわち人間に【神の恩恵】(ファルナ)を与えることができる。

 

 【神の恩恵】(ファルナ)を与えられた人間はその神の眷属となり、凄まじい力を得ることができる。更にモンスターを倒すことで経験値(エクセリア)を得て、己の器を高め飛躍的に強くなることが可能である。

 

 神は眷属たちを率いてファミリアを形成する。ファミリアの目的は様々であるが、もっとも多いものは世界最大のダンジョンであるオラリオの迷宮を攻略することであった。

 

 ヘスティア・ファミリアもダンジョン探索を目的としたファミリアである。冒険者であるあなたにとって都合の良いファミリアである。

 

 ただし、大きな問題が二つあった。

 

「問題ですか? 一応僕たちのファミリアは秘密にしてほしいことはありますが、厳しい規則もないですし、比較的自由に行動できるファミリアなんですけど……。あっ、もしかしてなにか気に入らない点でも?」

 

 しゅんとしたベルの顔色を晴らすため、いや、逆に好ましく思っていると即座にあなたは返した。

 

 不動の一番はあなたと仲間たちが結成したギルドであるが、ヘスティア・ファミリアとして活動するのも面白そうだ。あなたは短い交流ではあるが、彼ら彼女らの人となりを気に入っている。

 

 じゃあなにが問題なんだろうと首を捻るベルに、リリルカがあきれ顔をしていた。ただ馬鹿にしたものではなく、この人は(リリ)がいないとダメだなという、惚気のこもった優しいものではあった。

 

「ベル様、あくまで元の世界に帰ることがこの方の目的ですから、手段を見つければすぐに退団されてしまいますよ」

 

 あっ、とベルは今更ながら気づいた。そう、大きな問題の一つはそれだ。あなたの心根がどうであれ、あなたは帰るためにヘスティア・ファミリアを利用して、用が済めばさよならするようなものなのだ。

 

「入団している間、ファミリアの貢献に勤めることで、目的が叶えば退団するというデメリットと相殺する方法もありますが……」

 

 リューが助け舟を出すも、ヴェルフが「まあ、最終的に決めるのはヘスティア様だけどな」とばっさり切り捨てた。

 

 敬愛する神様を無視して勝手にあなたの入団を勧めたことを恥じながらも、でも期待も込めた目で「神様……」とベルが懇願する。

 

 大好きな眷属におねだりされて、落ちないヘスティアではなかった。

 

「よし! 入団を許可しよう!」

 

 ヘスティアはベルに向かって親指を立て、満面の笑みで快諾した。

 

 なんとチョロい神様か……。

 

 あなたは受け入れられた嬉しさもあるが、思春期の少女そのものの神の言動を嘆いた。

 

「では、これで新しい団員が増えますね。歓迎会の準備、誠心誠意努めさせていただきます」

 

「私も春姫のお手伝いする」

 

「あっ、いえ、春姫殿、ウィーネ殿。まだ入団されると決まったわけではありませんよ。問題は二つあるとおっしゃてましたし」

 

 命の言う通り、あなたはまだヘスティア・ファミリアの入団を是とする訳にはいかなかった。あなたは二つ目の問題点を挙げる。

 

 オラリオの迷宮を攻略することは、あなたが元の世界に帰る手段になりうるか。

 

 手がかりが何一つないとはいえ一つところに留まって、それが無駄足なら目も当てられない。オラリオの迷宮が難攻不落で、未だ全容が明かされていないとすればなおさらだ。

 

 あなたは冒険者であるが、大切な少女との約束を果たすためには慎重にならざるをえなかった。

 

「うーん、君の懸念はもっともだ。あまり貸しは作りたくないけど、世界中を旅しているヘルメスから情報を仕入れることも可能ではあるけど……」

 

「――その必要はない」

 

 黙して語らずにいたアステリアが、ヘスティアの言葉を制した。怪訝な顔でみながアステリアを見遣ると、厳かに衝撃的な発言をする。

 

「おまえが所持していた、魔物図鑑。アレに書かれていた同種と、迷宮の深層で対峙したことがある」

 

 あの時は打ち倒せず、逃がしてしまったがと続けるアステリアの言葉はあなたの耳に入ってこなかった。

 

 偶然、同じモンスターが生まれただけかもしれない。似ていただけで、アステリアが勘違いしただけかもしれない。そもそも世界樹のモンスターがオラリオの迷宮にいたとして、帰る手段があるとは限らない。

 

 そんな下らない懸念を、あなたは一瞬で投げ捨てた。

 

 何度でもいうが、あなたは冒険者である。

 

 たとえ僅かな可能性であろうと、可能性があるのならば挑むのが冒険者だ。

 

 オラリオの迷宮は難攻不落? 誰も踏破したことがない?

 

 そんなことは関係ない。それに、あなたは誰もたどり着いたことのない、世界樹の迷宮を、あの天空の城を踏破する偉業を成し遂げているのだ。

 

 ならばあとは、武器を持ち未知なる道を切り開くのみである。

 

 さあ、冒険をしよう。

 

 こうしてあなたはヘスティア・ファミリアに入団した。

 




第六層さん「あの……」

しっ、今いい場面だから黙ってて。
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