ダンジョンにファフニールがいるのは間違っているだろうか 作:ニャース
やる気がもりもりわいてきたので、投稿します。
「ぶほあっ!!」
上半身裸になったあなたの背に向かって、ヘスティアが盛大に噴き出した。唾が素肌に当たり、それで喜ぶ特殊な性癖を持っていないあなたは嫌そうに眉を顰める。
「な、なんだい、これーーーー!!」
ヘスティアはあろうことか唾を吐きかけるだけでなく、人差し指であなたの背中をつつき始めた。痛くはないが理不尽な主神の振る舞いに、あなたはため息をついた。
ヘスティア・ファミリアへの入団を決めたあなたは、さっそくとばかりに【恩恵】を刻まれることになった。ヘスティアとともに個室に移動し、あなたは促されるまま服を脱いだ。
しかしいざ恩恵を刻もうとした時、問題が発生した。
あなたはすでに何者かの【恩恵】が刻まれているとヘスティアが気難し気にいう。
意外な事実に、あなたは真っ先に大切な少女と、ギンヌンガの守り人のことが思い浮かんだ。
あなたの大切な少女は、カレドニア大公国の公女であるとともに『印の娘』と呼ばれる特別な存在であった。あなたは幼少の際、少女と契約を結ぶことで異形の『力』を得て、ギンヌンガの守り人の導きによってその『力』を高めてきた。
もしあなたに刻まれた【恩恵】が少女との契約を指すものなら、あなたはヘスティアから【恩恵】を刻まれることを断らなくてはならない。何故なら【恩恵】は一つしか授かることができず、少女だけの騎士であるあなたは契約を断つわけにはいかないからだ。
「安心したまえ、
ヘスティアの言葉にあなたは安堵した。同時に人――いや、この場合神か――から少女だけの騎士であるとはっきりいわれると、気恥ずかしさがわいてきた。
「まあ、要するに契約を保ったまま【
君の冒険譚を聞くに相当高いレベルだと思うぜ、というやいなや、ヘスティアは楽しみにしていたプレゼントを開けようとする子供みたいな顔で、親指に針を刺してあなたの背に血を垂らした。
そうして【恩恵】を刻まれた結果が、上記の顛末であった。
「レ、レベルはまだ……いや、ベル君と同じだなんて驚いたけど! でも、まだ納得はできる。あれだけの偉業を成し遂げた君だ! でも……でも、なんだいこのスキルは!!」
ヘスティアは紙にあなたのステータスを写し取ると、早く読めといわんばかりに押し付けてきた。
Lv.7
力 : I0(H120)
耐久 : I0
器用 : I0
敏捷 : I0
魔力 : I0(G210)
剣士 : B
魔力上昇: C
生命上昇: D
精神上昇: E
力上昇 : F
採掘 : I
≪魔法≫
【炎の王】
・速攻魔法。
・足依存。
・グリモア効果。
≪スキル≫
【刀剣マスタリー】
・剣・刀の扱いが向上。
・剣・刀装備時、物理攻撃に補正。
・刀剣スキルが使用可能になる。
【フォースマスタリー】
・フォース上昇量の増加。
・フォーススキルが使用可能になる。
【盾マスタリー】
・盾の扱いが向上。
・盾装備時に、物理攻撃を一定確率で無効。
・グリモア効果。
【ダブルアクション】
・攻撃スキル使用時、一定確率で再発動する。
・グリモア効果。
【古蛇の毒牙】
・敵複数に近接壊攻撃。
・一定確率で毒を与える。
・頭依存。
・グリモア効果。
【決死の覚悟】
・戦闘不能になる攻撃を受けた際、確率で耐える。
・グリモア効果
【グリモア生成】
・発展アビリティ・魔法・スキルの内一つを臨時で習得可能な道具を戦闘時に生成。
・自身を含む同じ眷属と、戦闘中のモンスターが対象。
・フォーススキル・フォースブレイクは対象にならない。
【フロアジャンプ】
・迷宮の階層の出入り口に転移。
・使用には階層の詳細な地図と、自身を含む同じ眷属が階層の大半を実際に踏破する必要がある。
【フォースブースト:変身】
・異形の姿に変身し、生命力・力・魔力を強化。
・変身時限定スキルの解放。
・変身時、フォースを消費する。
【フォースブレイク:アカシックノヴァ】
・変身時限定スキル。
・炎・氷・雷複合の強力な属性攻撃。
・使用後、フォースが0になりしばらくの間フォースブーストが使用不可。
・頭依存。
あなたは写し取られた紙をまじまじと見つめるも、何がおかしいのかわからなかった。強いて言えば変身ぐらいしか心当たりがない。
オラリオの冒険者であれば、誰が見てもあなたのスキルの特異さに気づくだろうが、あなたはこの世界の異邦人である故に、仕方のないことであった。
「変身? 確かに見たことも聞いたこともないレアスキルだ。強力なスキルだと思うよ。しかーし! 問題なのはそれじゃない!」
カッ! という擬音がつかんばかりに目を見開き、ヘスティアは叫んだ。
「【グリモア生成】と【フロアジャンプ】!! こんなもの他のファミリアに知られたら、殺してでも君を引き抜くに決まっている!! 春姫君の
わなわなと震える女神をよそに、あなたは今一つ言葉の真意を理解できないでいた。確かにグリモアは非常に便利だが、ハイ・ラガードの冒険者全てに普及されていたあって当たり前のものだ。
フロアジャンプもあれば便利だが、世界樹の迷宮では少々歩く必要はあるが、樹海磁軸という一瞬で町と迷宮を行き来できる装置と、迷宮に存在する抜け穴で代用可能である。
……いや、待ってほしい。この女神、たった今とんでもないことをいわなかっただろうか。
レベルが一つ上がるだけで、文字通り飛躍的に強さが上昇すると説明を受けていたあなたは、
「春姫君の
…………ようやくあなたは理解した。
やばい。頭がおかしくなるくらいにやばい。
あなたは
あなたはあずかり知らぬことであるが、春姫の元主神が知れば、殺生石なんてクソ石売ってくると言い出しかねないものであった。
「
ベルのあれがなんなのかあなたは知らないが、それでも十二分にオラリオでの【グリモア生成】スキルの凄まじさを理解した。
……いや、待ってほしい。そもそもグリモアは、装備さえしていればグリモア自体が新しいものを生み出す仕様であったはずだ。
「ヴェルフ君が、一度うちの神秘持ちの
もしそんな機能があったとわかったら、あなたが目を覚ました際にもっと騒ぎ立てていたとヘスティアは語った。
無制限にグリモアが作られなくて安心したような、残念なような。あなたの胸中は複雑だった。
【グリモア生成】スキルの理不尽さはよく理解した。しかしあなたはまだ【フロアジャンプ】のどこが厄ネタなのか、わからないでいる。
そんなあなたの疑問を、ヘスティアはいとも簡単に説明してみせた。
「オラリオの迷宮には君がいっていた樹海磁軸は存在しない。アリアドネの糸のような迷宮脱出の魔道具もない。ちなみに現在の最深層は75階層で、まだ先は続いている。ここまでいえば理解できるね?」
オラリオの迷宮は不親切だな。あなたは自棄になってすっとぼけてみた。
「ええい! こんな厄ネタ一人で抱えられるか!! ベル君とサポーター君を呼んでくる!!」
あなたの主神は肩を怒らせ、ぷりぷりしながら部屋を出て行った。
「【フロアジャンプ】は公開はしませんが、隠しもしない方針でいきます。遠征に行く際に使用すれば迷宮に潜る期間の不自然さで、どの道ばれてしまいますから。【グリモア生成】は
【フロアジャンプ】だけでもファミリア間の騒動の火種になるかもしれないですか? ありえないと断言します。ヘスティア・ファミリアはもはやロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアと肩を並べるオラリオ最強ギルドの一角です。四人……いえ、今となっては五人しかいないレベル7の眷属が二人もいて、レベル7に匹敵するアステリア様がいるんですよ。仮に喧嘩を売ってくるファミリアがいても、頭がおかしいだけですので真正面から叩き潰します。
ロキ・ファミリアかフレイア・ファミリアが相手だった場合はどうするかですか? 仮に争っても勝てずとも負ける気はしませんが、静観を決め込んだファミリアに漁夫の利をとられるのを良しとするような、おバカなファミリアじゃないので問題にすらなりません。
もっとも、春姫様の魔法や【グリモア生成】が露見すればリスクを冒してでも引き抜きを目論むかもしれませんので、これらの情報の秘匿は絶対として下さい
さて、ここまででなにか質問はありますか?」
いえ、ありませんとあなたとヘスティア、ベルは、何故か正座しながら真顔でリリルカの質問に答えた。
ヘスティア・ファミリアの副団長恐るべし。
あなたはリリルカには下手に逆らわないでおこうと固く決めた。
ヘスティア・ファミリアの真の支配者はリリ説。
書きたいことがいろいろあって、短編で収まる気がしなくなってきました。十話超えそうなら、連載に切り替えるべきか……。