穂乃果たちの通う音ノ木坂学園の近くにある音ノ木美術館、そこには甲冑の鎧を身につけた騎士が深夜2時に出ると言う噂がある…
ー深夜2時 音ノ木美術館ー
「うひゃーおっかない…」
深夜2時の音ノ木美術館に1人の警備員の声が響いた。誰もいない夜の美術館は展示物が酷く不気味に見える。
「早く帰りたい… こんな所…」
警備員が泣き言を言うと
『………』
何処からの部屋から奇妙な声が聞こえてきた。
「な、何… 今の声…」
警備員は声が聞こえた部屋に向かった。
「こ、この部屋だ…」
警備員が声の聞こえた部屋に入ると
ガシャン… ガシャン… ガシャン…
部屋の中から何かが擦れるような音が聞こえてくる。
そう、まさに鎧をきた人間が歩いているような…
しかも、その音はだんだん近づいてくる。
ガシャン… ガシャン… ガシャン…
「な、何だ…?」
警備員は音のしている部屋を懐中電灯で照らした。
そして、懐中電灯の光に照らされて闇に浮かび上がったのは!
ガシャン!
甲冑の鎧を身につけた中世の騎士が自分にむけて剣を振り上げていた!
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
警備員の悲鳴が美術館に響き渡った。
ー1週間後ー
「ええっ⁉︎ 中世の甲冑が勝手に⁉︎」
「そうだよ! 気にならない?」
そうみんなに言っているのは穂乃果だ。
放課後、みんなでいつものように帰ろうとした時、穂乃果がみんなの顔を見渡して言ったのだ。
穂乃果は目を輝かせながら続けた。
「そうだよ! 音ノ木坂学園の近くにある美術館で警備員が見たんだって! 今、その話題で近所じゃ評判だよ‼︎」
穂乃果はそう言うとみんなを笑顔で見ながら言った。
「ねえ! 面白そうだから、今度の週末みんなで美術館に行ってみようよ‼︎」
穂乃果が言うとみんなは大笑いした。
「ハハ… そんな話を間に受けるなんて穂乃果もまだ子供ねー!」
「そうよね〜 大方美術館が逆引きのために流した作り話よ!」
にこと真姫が穂乃果に言うと穂乃果はムッとした。
「そうかな〜 にこちゃんと真姫ちゃんは本当は怖いんじゃないの〜?」
穂乃果は挑発めいた言葉をにこと真姫に投げかけると単純なにこと負けず嫌いな真姫は敏感に反応した。
「な、何ですって! 良いわよ! 行ってやるわよ!」
「そうよ! 今度の週末、音ノ木美術館に集合よ! みんないいわね! 来なかったら許さないわよ!」
にこと真姫はそう言うと海未たちを見て言った。
「「「………」」」
海未たちは半ば強制的に参加させられたことに苦笑した。
穂乃果はというとしてやったりと言うような顔をしていた。
ー日曜日ー
「わー! 綺麗な色の絵がいっぱい!」
「これは芸術の山ね!」
なんだかんだで日曜日になりμ’sの9人は音ノ木美術館にやって来た。最初は嫌々だった海未たちだったが綺麗な絵を見ているうちにそんな気もなくなった。
「綺麗な色の絵だね〜」
「そうにゃ〜」
花陽と凛が美術館のエントランスホールに飾られていた絵を見て呟いた。
その絵は真昼の高原を描いた絵だった。
「ほう… その絵が気に入ったかな? お嬢さん…」
「え?」
花陽たちの後ろから声がかけられた。
その人物は白髭を生やした年配の男性だった。
年配の男性は絵を指差しながら説明をしてくれた。
「この絵は『和やかな高原』と言ってな、レナーの代表作の一つじゃ… あまり有名ではないが、私は彼の作品のあたたかいタッチと突き抜けるような透明感が好きでの…」
年配の男性はそう言うと今度は両手を広げた。
「からの作品だけじゃない… 私はここにあるすべての作品を愛してますよ…」
そして、憂いを帯びた表情でこう言った。
「まるで、我が子のように…」
年配の男性がそう言うと凛が男性に気になっていたことを聞いた。
「あの… あなたは?」
「ああ… 私はこの美術館の館長をしている飯山です…」
凛が聞くと男性は笑顔で答えた。
「あ、館長さんでしたか! どうりで絵に詳しいわけか!」
凛と花陽が納得していると飯山館長は凛たちの後ろにある絵を説明しようとした。その絵は丁度美術館の職員の人が手入れをしようとしていたところだった。
その時、
「おい! 中原! お前何をやっとるか⁉︎」
ビクッ!
飯山館長がさっきとは打って変わった鋭い声を中原と呼ばれた痩せた若い職員にむけて飛ばした。
飯山館長は中原を睨みつける。
「作品を扱うときは必ず手袋をつけろといつも言っとるだろーが‼︎ 作品を台無しにする気か⁉︎」
「あ… す、すみません…」
飯山館長に言われてようやく中原は手袋をしていないことに気付いたらしく飯山館長に謝った。
飯山館長はそんな中原を一瞥すると「君はもういい」と言い別の職員に仕事を命じた。
「ちっ… なんだあのジジィ…」
中原は飯山館長に対して舌打ちをしながら穂乃果たちの横を通って行った。
「何? あの態度の悪い人…」
「芸術品を台無しにされたらそりゃ怒るわよね〜」
ことりと真姫が去っていった中原を見て呟いた。
「ふん… 相変わらず寂しい客入りだな…」
中原が去った後、今度は白いスーツに身を包んだ中年男性が図面を持った男性と共に美術館を見回しながらやって来た。
「い、祝迫オーナー…」
飯山館長が中年男性を見て呟いた。
どうやらこの音ノ木美術館のオーナーらしい。
祝迫は飯山館長をジロリと細い目で見るとフンと鼻を鳴らした。
「まあ、あと10日もしたらこの音ノ木美術館は閉鎖だ… それまではしっかり頼んだよ…」
祝迫は作品をわざと手袋をしていない手で触りながら飯山館長にこう言った。
「このカビの生えたガラクタどもの面倒をな…」
「っ⁉︎」
飯山館長はそれを聞いて肩をびくりと震わせた。
周りにいる、他の美術館の職員も祝迫を睨みつけている。
祝迫はそんな飯山館長と職員を見渡すとニヤッと笑い図面を持った設計士らしい人と打ち合わせを始めた。
「……」
飯山館長たちがそんな祝迫を見ていると海未が飯山館長に尋ねた。
「あの、この美術館なくなるんですか?」
海未が聞くと飯山館長はため息をつきながら話した。
「はい… 来月には取り壊しの作業が始まると思います… なんでもここに大きなショッピングモールが建つとかで…」
飯山館長の言葉にμ’sの9人は驚いた。
「シ、ショッピングモール? なんでまた⁉︎」
にこが飯山館長に聞いた。
「実は前のオーナーの会社が経営破綻で倒産してしまって… それで、この美術館を今の祝迫オーナーに売ってしまったんです… 前のオーナーはこの美術館を続ける約束で祝迫オーナーに売ったんですが… 「あいつのせいだ…!」」
飯山館長がそこまで言ったところでさっき仕事を頼まれた美術館の職員が呟いた。
美術館の職員は悔しそうに呟く。
「あの祝迫オーナーのやつ… この美術館を買った途端『こんな美術館よりショッピングモールを建てた方が良い』と言い出したんだ……!」
「あ、有馬くん…」
有馬と呼ばれた職員は俯いた。
「あ、あいつのせいで50年の伝統を誇るこの美術館が… くっ……!」
「「「………」」」
穂乃果たちはなんとも言えない気持ちになった。
ガンッ! ドシャッ!
「「「⁉︎」」」
その時、何かが床に落ちる音が響いた。
みんなが見るとさっき絵に素手で触ろうとして飯山館長に怒られた中原と言う職員が台車に積まれていた、美術品であろう甲冑を落としていたのだ。
「あの人また作品を乱暴に扱ってるやん…」
希が思わず呟いた。
そんな中原を見て祝迫が中原に言う。
「おいおい、気をつけてくれよ… たとえガラクタだとはいえ高く売らなければならんのだからな…」
「い、祝迫オーナー…」
中原が祝迫の名を呼ぶと祝迫は中原の前に立った。
「ん? 貴方は確か中原くんだったな、噂は私もいろいろ聞いてるよ…」
「……」
中原は祝迫から顔を逸らした、祝迫は中原の肩をポンポンと叩いた。
「まあいい… 早めに金の算段をしておけよ… ハッハッハ!」
祝迫はそう言うと高笑いしながら次の設計士との打ち合わせの場所に向かった。
「〜〜〜! くそっ‼︎」
ガシャン!!!! バキッ!
「うわ! まただ!」
祝迫が去った後、祝迫の言っていた言葉が気に障ったのか中原がさっき台車から落とした甲冑を乱暴に台車に乗せた。
乱暴に台車に乗せたせいで甲冑から変な音がした。
しかし、中原はそれを気に留めずにさっさと運んで行ってしまった。
「あの人、本当に作品を大事にする気あるのかしら?」
真姫が呟くと飯山館長がため息を吐いた。
「あの中原くんの癖はどうにかならんのかのぅ…」
飯山館長はそう言うと穂乃果たちに笑顔を向けた。
「まあ、みなさん、ごゆっくり鑑賞したいってください…」
飯山館長はそう言うと、有馬の肩を支えながら去って行った。
(あれ? さっきはあんなに怒っていたのに… 何でだろ…)
穂乃果はさっきは素手で絵に触ったことであんなに中原に怒っていたのに、甲冑を乱暴に扱ったことに対しては何もいわなかった館長に首を傾げた。
「穂乃果、行きますよ」
「う、うん…」
海未が穂乃果に言うと穂乃果は気にはなったがあとについて行った。
それから穂乃果たちは学年ごとにわかれて見終わったら美術館のエントランスホールに集合と言う約束をして美術館を見て回った。
ペガサスの剥製や天使が描かれている絵画などが展示されている天空の間、
王冠や隕石やお城が描かれている絵画が展示されている大地の間、
海賊船の模型やポセイドンが描かれている絵画が展示されている海原の間、
部屋ごとに名前が付けられその名前に合ったさまざまな美術品が展示されていてμ’sのメンバーは興味津々だった。
「えーと… 次は…」
海原の間を見終わったら後、穂乃果たちが次の部屋に移動しようとすると、
「ん? あれは…?」
通路の先にことりが何かを見つけた。
「立ち入り禁止?」
海原の間の隣にある廊下に立ち入り禁止の看板が建っていた、どうやらそこから先には行けないらしい。
「変だなー この先にはもう一つ部屋があるはずなのに…」
穂乃果が呟くと海未が仕方ないと言いその部屋を飛ばし、別の部屋に移動した。
ーPM 5時10分ー
「ふ〜… ひと通り回ったね!」
「面白かったね!」
「そうですね!」
穂乃果たちが一番乗りでエントランスホールに着き他のメンバーを待っていると、後から1年生組と3年生組が到着した。
「全部見て回ったからそろそろ帰る?」
「そうね… もう5時過ぎてるし…」
「そうだね!」
みんなが帰ろうと荷物をまとめると、
「ん?」
その時、穂乃果が何かに気付いたらしくエントランスホールからの出口とは反対方向に歩いて行った。
「ち、ちょっと、穂乃果ー!」
みんなも慌ててその後を追いかけた。
みんなが穂乃果に追いつくと、穂乃果はエントランスホールから1番近くにある海原の間の隣にある通路に立っていた。
「どうしたの?」
ことりが聞くと穂乃果はことりを見て答えた。
「ここにあったさっきは立ち入り禁止の看板があったのになくなってるんだよ… おかしいな、立ち入り禁止だったのに…」
穂乃果が言うとみんなも言い出した。
「私たちが来たときもそうだったわよ」
「ウチらが来たときも」
真姫たちが来たときも希たちが来たときも立ち入り禁止の看板は建っていたらしい。
その時、凛がみんなに言った。
「ねえねえ! せっかく来たんだからこの部屋にも行ってみようよ!」
凛の提案に気になっていたのだろうみんなが賛成した。
そして、みんなで最後の部屋に向かった。
「さ、最後の部屋って、ここ…?」
穂乃果が代表で口を開く。
最後の部屋は今までの明るい雰囲気の部屋とはかけ離れた部屋だった。
部屋全体が薄暗く、斧や鎌が壁には飾られており魔物のような置物が周りには置かれており見るからに不気味な雰囲気が出ている部屋だ。
そう、この部屋は『地獄の間』だ。
「ず、随分怖い部屋ね…」
「じ、地獄の間だからね…」
今までの部屋との雰囲気の違いに穂乃果たちが戸惑いながら部屋の美術品を見始める。
ジーーッ…
そんな、穂乃果たちを天井近くにある防犯カメラが静かに撮っていた。
「ねえ! これ見て!」
それぞれが美術品を見ていると花陽が入り口からの正面に壁に飾られている大きな絵を指差した。
花陽が指差したその絵をみんなが見る。
「うわー…」
「大きな絵ねー…」
「まさに地獄絵やね…」
みんながその大きな絵についての感想を述べた。
花陽が指差した大きな絵は正義の騎士が悪魔を剣で葬っている絵だった。
騎士の剣は悪魔のノド元を一突きにしていた。
迫力はあるがとてもグロテスクな絵だ。
穂乃果が作品のネームプレートを見た。
「この絵の題名は『天罰』って言うみたいだよ! 正義の騎士が悪魔を聖なる剣で封じ込めた様を描いた作品だって!」
穂乃果が作品の説明をした時…
ピチャン… ピチャン…
「ん?」
「どうしたの?」
凛が何かに気付いたらしく声をあげた。
声をあげた凛にどうしたのかと真姫が聞く。
「何か変な音聞こえない…? 水が滴るような…」
凛が言うとみんなが耳をすませた。
確かに水音のような音が聞こえる。
「何か変な匂いもしない…?」
絵里が鼻をつまみながら言った。
確かに鼻につく嫌な匂いがする。
普通の女子高生ならこの匂いがなんなのかわからないが穂乃果たちにはすぐにこの匂いがなんなのか分かった。
「これ… 血の匂いよ!」
「「「⁉︎」」」
真姫が言うとみんなは「やっぱり!」というような顔になった。
「で、でもその血はどこに…?」
海未が血を探すために部屋を見渡した。
すると部屋の一番奥に何かがぶら下がっていた。
「ん?」
海未がそれが何なのかを確かめに行くと…
ピチャン… ピチャン…
「ひっ… あ…あ… あ…」
海未はそれが何なのかを見て声が出なかった。
「どうしたの? 海未ちゃん?」
「原因見つけたの?」
残りの8人が海未のもとにやってきた。
「あ、あれ…」
海未が指差した方を見るとそこにあったのは…!
身体中を滅多刺しにされ、首に剣を刺されて壁に突き刺されている祝迫オーナーの死体あったのだ!
「い、祝迫オーナー⁉︎」
「ひっ!」
「うわァァァァ‼︎」
ご指摘、感想お待ちしております。